JP3457494B2 - 高強度pc鋼棒およびその製造方法 - Google Patents

高強度pc鋼棒およびその製造方法

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JP3457494B2 JP07088397A JP7088397A JP3457494B2 JP 3457494 B2 JP3457494 B2 JP 3457494B2 JP 07088397 A JP07088397 A JP 07088397A JP 7088397 A JP7088397 A JP 7088397A JP 3457494 B2 JP3457494 B2 JP 3457494B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポール、パイルお
よび建築、橋梁等のプレストレストコンクリート構造物
の補強材として広く使われているPC鋼棒に関わるもの
であり、特にスポット溶接が可能で引張強さが1230
MPa以上であるとともに遅れ破壊特性および一様伸び
に優れた高強度PC鋼棒およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】ポール、パイルおよび建築、橋梁等のプ
レストレストコンクリート構造物の補強材として広く使
われているPC鋼材は、通常、PC鋼線及びPC鋼より
線、PC鋼棒が使われている。PC鋼線は、パテンティ
ング処理をした後、伸線加工することにより製造され
る。
【0003】一方、PC鋼棒は、例えば特公平5−41
684号公報に記載されているように、C量が0.25
〜0.35%の中炭素鋼を用いて熱間圧延後、焼入れ・
焼戻し処理をすることによって製造されている。PC鋼
線の強度はPC鋼棒に比べ高いものの、C含有量が高い
ためにスポット溶接ができないという欠点がある。
【0004】これに対して、PC鋼棒のスポット溶接性
はPC鋼線に比べ良好であるが、「プレストレストコン
クリート設計施工規準・同解説」(日本建築学会編集、
丸善)の43〜45頁に記載されているように、強度が
1275MPa(130kgf/mm2)を超えるよう
な高強度PC鋼棒は、PC鋼線に比べて遅れ破壊特性が
劣っている。
【0005】また、特公平5−59967号公報に記載
されているように、スポット溶接部は急冷されるためマ
ルテンサイトを主体とした組織となり、スポット溶接部
で遅れ破壊が発生しやすくなるという問題点がある。更
に、最近では、特開平7−3396号公報に記載されて
いるように、パイルなどの用途に対して曲げ靭性を向上
させるために一様伸びの優れたPC鋼棒の開発が要請さ
れている。
【0006】PC鋼棒の遅れ破壊特性を向上させる従来
の知見として、例えば、特公平5−59967号公報で
は、P、S含有量を低減することが有効であると提案し
ている。確かに、低P、低S化は遅れ破壊に対して有効
であるが、現行のPC鋼棒のP、S含有量はいずれも既
に0.01%前後となっている。P、S含有量を更に低
減することは可能であるが、製造コストが高くなる欠点
がある。特公平5−41684号公報では、Si、Mn
含有量を規制するとともに焼入れ処理後、焼戻し工程中
で曲げ加工または引き抜き加工を施すことが提案されて
いる。また、特開平5−7963号公報では、PC鋼棒
と鉄線とのスポット溶接部周辺に樹脂被覆層を設けて遅
れ破壊に対する感受性を低下させることが提案されてい
る。更に、特開平6−212346号公報では、Niな
どの合金元素の添加によって遅れ破壊特性を向上させる
手段が提案されている。しかしながら、いずれの提案も
大幅な遅れ破壊特性の改善には至っていない。
【0007】一方、PC鋼棒の一様伸びを向上させる従
来の知見として、例えば、特開平7−3396号公報で
は焼戻し温度を500℃以上の高温で行う方法が提案さ
れているが、C量が0.45%以上と高いためにスポッ
ト溶接が出来ないと言う欠点がある。また、特開平8−
158010号公報では、SiおよびAlの多量添加が
一様伸びの向上に対して有効であると述べている。しか
し、Si、Alを多量に添加すると、スポット溶接部の
遅れ破壊特性が低下し、また製造コストも高くなる欠点
がある。
【0008】以上のように従来技術では、スポット溶接
が可能な高強度PC鋼棒において、遅れ破壊特性と一様
伸びの個々の課題は勿論のこと、この両者を抜本的に向
上させた高強度PC鋼棒を製造することに限界があっ
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如き実
状に鑑みなされたものであって、スポット溶接が可能で
且つ遅れ破壊特性と一様伸びの良好な強度が1230M
Pa以上の高強度のPC鋼棒を実現するとともにその製
造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、まず圧延
後、焼入れ・焼戻し処理によって製造した種々の強度レ
ベルのPC鋼棒を用いて、遅れ破壊挙動を詳細に解析し
た。遅れ破壊は鋼材中の水素に起因して発生しているこ
とは既に明らかにされており、そこで、本解析では遅れ
破壊特性を遅れ破壊が発生しない「限界拡散性水素量」
を求めることにより評価した。この方法は、電解水素チ
ャージにより種々のレベルの拡散性水素量を試料に含有
させた後、遅れ破壊試験中に試料から大気中に水素が抜
けることを防止するためにCdめっきを施し、その後、
大気中で所定の荷重を負荷し、遅れ破壊が発生しなくな
る拡散性水素量を評価するものである。
【0011】図1に拡散性水素量と遅れ破壊に至るまで
の破断時間の関係について解析した一例を示す。試料中
に含まれる拡散性水素量が少なくなるほど遅れ破壊に至
るまでの時間が長くなり、拡散性水素量がある値以下で
は遅れ破壊が発生しなくなることがわかる。この水素量
を「限界拡散性水素量」と定義する。限界拡散性水素量
が高いほど鋼材の耐遅れ破壊特性は良好であり、鋼材の
成分、熱処理等の製造条件によって決まる鋼材固有の値
である。なお、試料中の拡散性水素量はガスクロマトグ
ラフで容易に測定することができる。
【0012】高強度PC鋼棒の限界拡散性水素量を増加
させる手段、即ち遅れ破壊特性をならびに一様伸びを向
上させるために組織形態の観点から種々検討を重ねた結
果、PC鋼棒の長手方向(L方向)に配向したマルテン
サイトもしくは焼戻しマルテンサイトとフェライトから
なる層状組織を形成させれば、1230MPaを超える
ような高強度域でも、限界拡散性水素量が高く、遅れ破
壊特性が大幅に向上すると言う全く新たな知見を見い出
した。また、このような層状組織に制御することによ
り、一様伸びも格段に向上することを見い出した。更
に、PC鋼棒の長手方向に配向したマルテンサイトもし
くは焼戻しマルテンサイトとフェライトからなる層状組
織と遅れ破壊特性ならびに一様伸びの関係を詳細に解析
し、その最適な製造条件を確立し、本発明をなしたもの
である。
【0013】本発明は以上の知見に基づいてなされたも
のであって、その要旨とするところは下記の通りであ
る。
【0014】(1) 質量%で、 C:0.2〜0.4%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、鋼
の組織が PC鋼棒の長手方向に配向した実質的にマルテ
ンサイトとフェライトの層状組織からなり、マルテンサ
イト間の平均間隔が10μm以下であることを特徴とす
る高強度PC鋼棒。
【0015】(2) 質量%で、 C:0.2〜0.4%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、鋼
の組織が PC鋼棒の長手方向に配向した実質的に焼戻し
マルテンサイトとフェライトの層状組織からなり、マル
テンサイト間の平均間隔が10μm以下であることを特
徴する高強度PC鋼棒。
【0016】(3) 質量%で、更に (A) Cr:0.05〜2.0%、 Mo:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜5.0%、 Cu:0.05〜1.0%、 W:0.05〜0.5%、 B:0.0003〜0.0050% の1種または2種以上、あるいは (B) V:0.05〜0.3%、 Nb:0.005〜0.1%、 Ti:0.005〜0.05%、 Ta:0.005〜0.5% の1種または2種以上の(A)、(B)の群の一方また
は両方 を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりな
ることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の高強度
PC鋼棒。
【0017】(4)フェライト分率が10〜70%の範
囲であることを特徴とする上記(1)〜(3)の内いず
れか一つに記載の高強度PC鋼棒。
【0018】(5) 質量%で、 C:0.2〜0.4%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼をA
C1〜AC3の温度範囲に加熱し、20%以上の圧下率
で熱間加工を行った後、20℃/秒以上の冷却速度で冷
却することを特徴とする高強度PC鋼棒の製造方法。
【0019】(6) 上記(5)記載の製造方法に次い
で200〜600℃の温度範囲で焼き戻すことを特徴と
する高強度PC鋼棒の製造方法。
【0020】(7) 上記(5)記載の製造方法に次い
で0.3%以上の塑性歪みを付与し、引き続き200〜
600℃の温度範囲で焼き戻すことを特徴とする高強度
PC鋼棒の製造方法。
【0021】(8) 上記(5)記載の製造方法に次い
で200〜600℃の温度範囲に加熱し0.3%以上の
塑性歪みを付与することを特徴とする高強度PC鋼棒の
製造方法。
【0022】(9) 質量%で、 (A) C:0.2〜0.4%、 Si:3.0%以下、 Cr:0.05〜2.0%、 Mo:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜5.0%、 Cu:0.05〜1.0%、 W:0.05〜0.5%、 B:0.0003〜0.0050% の1種または2種以上、あるいは (B) V:0.05〜0.3%、 Nb:0.005〜0.1%、 Ti:0.005〜0.05%、 Ta:0.005〜0.5% の1種または2種以上の(A)、(B)の群の一方また
は両方を含有することを特徴とする上記(5)、
(6)、(7)、(8)の内いずれか一つに記載の高強
度PC鋼棒の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て説明する。
【0024】まず、本発明で目的とする高強度PC鋼棒
の遅れ破壊特性と一様伸びの向上に対して最も重要な点
である組織形態の限定理由について述べる。本発明で限
定しているPC鋼棒の長手方向(L方向)に配向したマ
ルテンサイトもしくは焼戻しマルテンサイトとフェライ
トの層状組織の走査型電子顕微鏡写真の一例を図2に示
す。
【0025】図2はマルテンサイトとフェライトの場合
であるが、マルテンサイトとフェライトは微細な層状組
織になっており、しかもPC鋼棒の長手方向(L方向)
に配向していることがわかる。なお、この組織を焼き戻
すと焼戻しマルテンサイトとフェライトの層状組織とな
る。マルテンサイトもしくは焼戻しマルテンサイトとフ
ェライトの微細な層状組織に制御することによって、遅
れ破壊特性と一様伸びの両者を同時に向上させることが
可能となる。
【0026】遅れ破壊特性と一様伸びに及ぼす組織形態
の影響について解析した一例を図3、図4に示す。PC
鋼棒の長手方向に配向したマルテンサイトもしくは焼戻
しマルテンサイトとフェライトの層状組織にすることに
よって、限界拡散性水素量が高く、また一様伸びが大幅
に向上することがわかる。これに対して、従来の焼入れ
・焼戻し方法による焼戻しマルテンサイトの単一の組織
では、限界拡散性水素量と一様伸びが低い。なお、高強
度で且つ遅れ破壊特性と一様伸びを大幅に向上させるた
めには、マルテンサイトもしくは焼戻しマルテンサイト
とフェライトの層状組織において、マルテンサイト間も
しくは焼戻しマルテンサイト間の平均間隔は10μm以
下が好ましく、より好ましい条件は5μm以下である。
平均間隔は、図2示した写真において、長手方向(L方
向)に垂直な方向で切断法によって測定することができ
る。
【0027】また、層状組織のマルテンサイトもしくは
焼戻しマルテンサイト中に残留オーステナイトあるいは
少量のベイナイト、パーライトが存在していても、一様
伸び、遅れ破壊特性に対して何ら差し支えがない。マル
テンサイトもしくは焼戻しマルテンサイトとフェライト
の層状組織は、PC鋼棒の全断面にわたって生成させる
必要はなく、PC鋼棒の表層から少なくてもPC鋼棒の
半径の15%の領域で生成していれば、遅れ破壊特性と
一様伸びを向上させる効果がある。
【0028】また、マルテンサイトもしくは焼戻しマル
テンサイトの層状組織において、フェライト分率は10
〜70%の範囲が好ましい条件である。これは、フェラ
イト分率が10%未満では、大幅な一様伸びの向上が期
待できず、一方、70%を越えると1230MPa以上
の高強度にすることが困難になるためである。PC鋼棒
の高強度化および遅れ破壊特性と一様伸びの向上を同時
に達成する点で、より好ましいフェライト分率の範囲
は、20〜60%である。
【0029】次に、本発明の対象とする鋼の成分の限定
理由について述べる。
【0030】C:CはPC鋼棒の強度を確保する上で必
須の元素であるが、0.2%未満では目的とする高強度
のPC鋼棒が得られず、一方0.4%を越えるとスポッ
ト溶接性が著しく劣化するため、0.2〜0.4%の範
囲に制限した。
【0031】Si:Siはリラクゼーション特性を向上
させるとともに固溶体硬化作用によって強度を高める作
用がある。3%を超えても添加量に見合う効果が期待で
きず、スポット溶接部の遅れ破壊特性が低下するため、
3%以下の範囲に制限した。好ましい範囲は、0.2〜
2.5%である。
【0032】Mn:Mnは脱酸、脱硫のために必要であ
るばかりでなく、焼入性を高めるために有効な元素であ
るが、0.2%未満では上記の効果が得られず、一方
2.0%を越えるとスポット溶接性が悪化するために、
0.2〜2.0%の範囲に制限した。
【0033】Al:Alは脱酸およびAlNを形成する
ことによりオーステナイト粒の粗大化を防止する効果を
有しているが、0.005%未満ではこれらの効果が発
揮されず、0.1%を越えても効果が飽和するため0.
005〜0.1%の範囲に限定した。
【0034】以上が本発明の対象とする鋼の基本成分で
あるが、本発明においては、更にこの鋼に (A) Cr:0.05〜2.0%、Mo:0.05〜1.0
%、Ni:0.05〜5.0%、Cu:0.05〜1.
0%、W:0.05〜0.5%、B:0.0003〜
0.0050%の1種または2種以上、あるいは (B) V:0.05〜0.3%、Nb:0.005〜0.1
%、Ti:0.005〜0.05%、Ta:0.005
〜0.5%の1種または2種以上の(A)、(B)の群
の一方または両方を含有せしめることができる。(A)
群の元素は主に焼入れ性と遅れ破壊特性を向上させる目
的で添加するものである。一方、(B)群の元素は主と
して、結晶粒を微細化させるためと、マルテンサイトも
しくは焼戻しマルテンサイトとフェライトの層状組織に
おいて、フェライト中に炭窒化物を生成させ降伏強度の
増加とリラクゼーション特性を向上させることを目的に
添加するものである。
【0035】Cr:Crは焼入性と遅れ破壊特性を向上
させるとともに焼戻し処理時の軟化抵抗を増加させるた
めに有効な元素であるが、0.05%未満ではその効果
が十分に発揮できず、一方2.0%を超えるとスポット
溶接性が劣化するために0.05〜2.0%に限定し
た。
【0036】Mo:MoはCrと同様に焼入れ性と遅れ
破壊特性を向上させ、強い焼戻し軟化抵抗を有し熱処理
後の引張強さを高めるために有効な元素であり、更にリ
ラクゼーション特性を向上させる効果も有しているが、
0.05%未満ではその効果が少なく、一方1.0%を
越えて添加してもその効果が飽和するため、0.05〜
1.0%の範囲に制限した。
【0037】Ni:Niは焼入性と遅れ破壊特性を高め
るために添加するが、0.05%未満ではその効果が少
なく、一方5.0%を越えても添加量にみあう効果が発
揮できないため、0.05〜5.0%の範囲に制限し
た。
【0038】Cu:Cuは焼入れ性と焼戻しマルテンサ
イトの強度を高めるために有効な元素であるが、0.0
5%未満では効果が発揮できず、1.0%を超えると熱
間加工性が劣化するため、0.05〜1.0%に制限し
た。
【0039】B:Bは、遅れ破壊特性を向上させる効果
があり、更に焼入性を著しく高める効果も有している
が、Bが0.0003%未満では前記の効果が発揮され
ず、0.0050%を超えても効果が飽和するため0.
0003〜0.0050%に制限した。
【0040】V:Vは炭窒化物を生成することにより結
晶粒を微細化させるとともに降伏強度の増加とリラクゼ
ーション特性を向上させる効果があるが、0.05%未
満では前記作用の効果が得られず、一方0.3%を越え
ても効果が飽和するため0.05〜0.3%に限定し
た。
【0041】Nb:NbもVと同様に炭窒化物を生成す
ることにより結晶粒を微細化させるとともに降伏強度の
増加とリラクゼーション特性を向上させる効果がある。
0.005%未満では上記効果が不十分であり、一方
0.1%を越えるとこの効果が飽和するため0.005
〜0.1%に制限した。
【0042】Ti:Tiは脱酸および炭窒化物を形成す
ることにより結晶粒の粗大化を防止する効果とともに降
伏強度の増加とリラクゼーション特性の向上に有効な元
素であるが、0.005%未満ではこれらの効果が発揮
されず、0.05%を越えても効果が飽和するため0.
005〜0.05%の範囲に限定した。
【0043】Ta:TaもVと同様に炭窒化物を生成す
ることにより結晶粒粒を微細化させるとともに降伏強度
の増加とリラクゼーション特性を向上させる効果がある
が、0.005%未満では前記の効果が発揮されず、
0.5%を越えて添加しても効果が飽和するため、0.
005〜0.5%に限定した。
【0044】P、Sについては特に制限しないものの、
PC鋼棒の遅れ破壊特性を向上させる観点から、それぞ
れ0.015%以下が好ましい範囲である。また、Nは
Al、V、Nb、Tiの窒化物を生成することにより結
晶粒の細粒化、降伏強度の増加、リラクゼーション特性
の向上効果があるため、0.002〜0.015%が好
ましい範囲である。
【0045】本発明の高強度PC鋼棒の製造方法では、
上記成分の鋼をAc1〜Ac3の温度範囲に加熱し20%
以上の圧下率で熱間加工を行った後、20℃/秒以上の
冷却速度で冷却するか、あるいは冷却後に200〜60
0℃の温度範囲で焼き戻すか、または冷却後に0.3%
以上の塑性歪みを付与し引き続き200〜600℃の温
度範囲で焼き戻すか、もしくは冷却後に200〜600
℃の温度範囲に加熱し0.3%以上の塑性歪みを付与す
るものである。以下に製造条件の限定理由を述べる。
【0046】鋼材はフェライトとオーステナイトの二相
領域に加熱するものである。この際、加熱温度がAc1
未満あるいはAc3を越えると、最終的にマルテンサイ
トもしくは焼戻しマルテンサイトとフェライトの層状組
織が得られないため、加熱温度範囲をAc1〜Ac3に限
定した。なお、(Ac1+10)〜(Ac3−10)℃の
範囲がより好ましい条件である。また、マルテンサイト
もしくは焼戻しマルテンサイトとフェライトの層状組織
の微細化を図る上で、加熱する前の鋼は、マルテンサイ
トまたは焼戻しマルテンサイトあるいはベイナイトもし
くはパーライトを主体とした組織に調整しておくことが
望ましく、この際のフェライト分率は、10%未満がよ
り好ましい条件である。なお、加熱前の組織を制御する
手段としては、熱間圧延後の冷却速度の調整、あるいは
通常の焼入れ・焼戻し、オーステナイト化処理後の冷却
速度の調整などがあり、いずれの方法でもかまわない。
【0047】熱間加工の圧下率(断面縮小率)は、20
%未満であるとPC鋼棒の長手方向に配向した層状組織
が得られないため、圧下率の下限を20%に限定した。
微細な層状組織化の観点から、30%以上の圧下率が好
ましい条件である。さらに、通常のフェライト・パーラ
イト組織を有する鋼を使用する場合は、微細な層状組織
化を実現するために、50%以上の圧下率で熱間加工を
行うことが好ましい。なお、熱間加工は、いかなる方法
を使っても良い。
【0048】熱間加工後の冷却速度が20℃/秒未満で
あると、冷却中に多量のフェライト、パーライト、ベイ
ナイトが生成し強度が低下する可能性が高くなるため、
冷却速度の下限を20℃/秒に限定した。冷却中に生成
しやすいフェライト、パーライト、ベイナイトを出来る
だけ防止する観点で、好ましい冷却速度は50℃/秒以
上である。なお、冷却の終了温度は、マルテンサイト変
態温度以下(Ms点以下)である。
【0049】冷却後の焼戻しは、降伏強度の増加とリラ
クゼーション特性を向上させるために行うものである。
特に、V、Nb、Ti、Taを含む鋼では、焼戻し処理
によってフェライト中にこれらの合金元素の炭窒化物が
生成するため、降伏強度が増加し、リラクゼーション特
性の向上効果がある。この際、200℃未満では焼戻し
の効果が少なく、一方、600℃を越えると強度が低下
し高強度のPC鋼棒の製造が困難になるため、焼戻し温
度範囲を200〜600℃に限定した。なお、遅れ破壊
特性の向上の点で、焼戻し時の加熱速度は20℃/秒以
上が好ましい条件である。
【0050】本発明では、冷却後にPC鋼棒に0.3%
以上の塑性歪みを付与し、その後に焼き戻すか、焼戻し
の際に0.3%以上の塑性歪みを付与しても良い。この
目的は、降伏強度の増加とリラクゼーション特性を向上
させるためである。0.3%未満では、上記の効果が少
ないため、下限を0.3%に限定した。なお、塑性歪み
を付与する手段は、引張り歪み、矯直加工による歪みな
ど、いかなる方法でも良い。
【0051】本発明では熱間加工前または熱間加後もし
くは冷却後あるいは焼戻し処理後に線径調整、異形加工
などの目的で軽度の伸線加工あるいは塑性加工を行って
も遅れ破壊特性、一様伸びの顕著な劣化はなく、なんら
制限を受けるものではない。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【実施例】以下、実施例により本発明の効果をさらに具
体的に説明する。
【0056】表1に示す化学組成を有する鋼材を熱間圧
延後の冷却速度の調整あるいはオーステナイト化処理後
の焼入れ、焼戻しによって種々の組織形態にした後、A
1〜Ac3の温度範囲に加熱し熱間加工を行い、その
後、冷却した。焼戻しは高周波加熱で行い、塑性歪み
は、引張り試験機を使って付与した。
【0057】上記の試料を用いて、組織形態、機械的性
質、遅れ破壊特性、リラクゼーション特性について評価
した。遅れ破壊特性は、スポット溶接を施した試料を用
いて、前に述べた限界拡散性水素量で評価を行い、負荷
応力は引張強さの80%の条件で実施した。リラクゼー
ション試験は、JIS G 3137の方法で行った。
これらの結果を、表2、表3に示す。
【0058】表2の試験No.1〜16が本発明例で、
表3のNo.17〜24は比較例である。同表に見られ
るように本発明例はいずれもPC鋼棒の引張強さが12
30MPa以上であるとともに、PC鋼棒の長手方向に
配向したマルテンサイトもしくは焼戻しマルテンサイト
とフェライトの微細な層状組織にすることにより、従来
のPC鋼棒に比べ限界拡散性水素量が高く遅れ破壊特性
に優れ、しかも、高い一様伸びのPC鋼棒が実現されて
いる。また、リラクゼーションも従来PC鋼棒と同レベ
ルにある。
【0059】これに対して比較例であるNo.17、1
8、19は、いずれも従来の製造方法で製造したもので
ある。即ち、通常の焼入れ・焼戻し処理によって製造し
たものであり、組織が焼戻しマルテンサイトの例であ
る。このため、限界拡散性水素量が低くスポット溶接部
の遅れ破壊特性は本発明例に比べ劣っている。また一様
伸びも低い。
【0060】比較例であるNo.20、21は、熱間加
工の際の加熱温度が不適切な例である。No.20は、
加熱温度がAc3を越えているために、オーステナイト
の単相になり、焼戻しマルテンサイトとフェライトの層
状組織が達成出来なかった例であり、遅れ破壊特性と一
様伸びの大幅な向上が達成できていない。また、No.
21は加熱温度がAc1以下であるために、フェライト
と球状化したパーライト組織となり、高強度化が達成出
来ていない。
【0061】また、比較例であるNo.22は、熱間加
工の圧下率が不適切な例である。即ち、圧下率が少なす
ぎるために、PC鋼棒の長手方向に配向した焼戻しマル
テンサイトとフェライトの層状組織にならず、遅れ破壊
特性と一様伸びの向上効果が少ない。
【0062】No.23は、熱間加工後の冷却速度が低
すぎるために、冷却途中に多量のフェライトおよびパー
ライトが生成し、強度が低下した例である。
【0063】更に、比較例であるNo.24は、鋼のC
含有量が高すぎるために、スポット溶接性が劣化しスポ
ット溶接部に亀裂が発生した例である。この結果、限界
拡散性水素量が著しく低下し、スポット溶接部の遅れ破
壊特性が劣化している。
【0064】
【発明の効果】以上の実施例からも明かなごとく、本発
明は、PC鋼棒の長手方向に配向したマルテンサイトも
しくは焼戻しマルテンサイトとフェライトの微細な層状
組織にすることにより、スポット溶接が可能で且つ高強
度PC鋼棒の遅れ破壊特性と一様伸びを大幅に向上させ
ることを可能にするとともに、鋼の化学成分、熱間加工
条件、熱処理条件等を最適に選択することによって、そ
の製造方法を確立したものであり、産業上の効果は極め
て顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】拡散性水素量と遅れ破壊時間の関係の一例を示
す図である。
【図2】PC鋼棒の長手方向に配向したマルテンサイト
とフェライトの層状組織の一例を示す走査型電子顕微鏡
写真である。
【図3】遅れ破壊特性とPC鋼棒の組織形態の関係の一
例を示す図である。
【図4】一様伸びとPC鋼棒の組織形態の関係の一例を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 8/08 C21D 9/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.2〜0.4%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、鋼
    の組織が PC鋼棒の長手方向に配向した実質的にマルテ
    ンサイトとフェライトの層状組織からなり、マルテンサ
    イト間の平均間隔が10μm以下であることを特徴とす
    る高強度PC鋼棒。
  2. 【請求項2】 質量%で、 C:0.2〜0.4%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、鋼
    の組織が PC鋼棒の長手方向に配向した実質的に焼戻し
    マルテンサイトとフェライトの層状組織からなり、マル
    テンサイト間の平均間隔が10μm以下であることを特
    徴する高強度PC鋼棒。
  3. 【請求項3】 質量%で、更に (A) Cr:0.05〜2.0%、 Mo:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜5.0%、 Cu:0.05〜1.0%、 W:0.05〜0.5%、 B:0.0003〜0.0050% の1種または2種以上、あるいは (B) V:0.05〜0.3%、 Nb:0.005〜0.1%、 Ti:0.005〜0.05%、 Ta:0.005〜0.5% の1種または2種以上の(A)、(B)の群の一方また
    は両方を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりな
    ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高強度
    PC鋼棒。
  4. 【請求項4】 フェライト分率が10〜70%の範囲で
    あることを特徴する請求項1、2、3の内いずれか一つ
    に記載の高強度PC鋼棒。
  5. 【請求項5】 質量%で、 C:0.2〜0.4%、 Si:3.0%以下、 Mn:0.2〜2.0%、 Al:0.005〜0.1% を含有し残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼をA
    C1〜AC3の温度範囲に加熱し、20%以上の圧下率
    で熱間加工を行った後、20℃/秒以上の冷却速度で冷
    却することを特徴とする高強度PC鋼棒の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の製造方法に次いで200
    〜600℃の温度範囲で焼き戻すことを特徴とする高強
    度PC鋼棒の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5記載の製造方法に次いで0.3
    %以上の塑性歪みを付与し、引き続き200〜600℃
    の温度範囲で焼き戻すことを特徴とする高強度PC鋼棒
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項5記載の製造方法に次いで200
    〜600℃の温度範囲に加熱し0.3%以上の塑性歪み
    を付与することを特徴とする高強度PC鋼棒の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 質量%で、 (A) Cr:0.05〜2.0%、 Mo:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜5.0%、 Cu:0.05〜1.0%、 W:0.05〜0.5%、 B:0.0003〜0.0050% の1種または2種以上、あるいは (B) V:0.05〜0.3%、 Nb:0.005〜0.1%、 Ti:0.005〜0.05%、 Ta:0.005〜0.5% の1種または2種以上の(A)、(B)の群の一方また
    は両方を含有することを特徴とする請求項5、6、7、
    8の内いずれか一つに記載の高強度PC鋼棒の製造方
    法。
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