明 細 書 新規ポリペプチド及びこれを含む抗 H I V剤 技術分野
本発明は、 新規ポリペプチド及び該ポリペプチドを有効成分とする抗 H I Vウィルス剤等の医薬に関する。
カブトガニ (Tacliypleus属、 Limulus属並びに Carcinoscopius属) から分 離されたエンドトキシン親和性ポリペプチドの抗ウィルス活性 (特開平 2— 167230号及び特表平 2— 500194号) が見出されて以来、 これら の化学修飾、 低分子量化及び上記ポリペプチドの構造を一部改変して新規な 抗ウィルス性ポリべプチドの合成が試みられている (WO 92/04374, 特開平 5— 163298及び特表平 8— 504837) 。 最近、 新規な低分 子量抗ウィルス性ポリペプチド T 134及び T 140が、 細胞毒性が低く、 優れた抗 H I Vウィルス活性を有するポリべプチドであることが見出された (H. Tama丽 aら ; Biochemical and Biophysical Research Commun. , 253, 8 77-882 (1998) ) 。 しかしながら、 これらの T 134及び T 140も、 医 薬として用いるには満足できるものではなかった。
したがって、 本発明の目的は優れた抗 H I Vウィルス活性を有し、 且つ細 胞毒性が低いポリぺプチドを提供することである。
本発明者は上記課題の解決に鑑み、 鋭意探索を行った。 その結果、 従来よ り CXCR 4リガンドに特異的に結合して H I Vの感染を阻害することが知 られていた Τ 140のアミノ酸配列を基に、 一部のアミノ酸を他のアミノ酸 に置換した新たなポリペプチドが優れた抗 H I Vウィルス活性を有し、 かつ 細胞毒性が低いことを見い出して本発明を完成した。 発明の開示
すなわち本発明は下記式 (I)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
Al-Arg-A2-Cys-Tyr-A3-A4~X-A5-A6-Cit-Cys-A7
(式中、
A lは、 水素原子或いはアルギニン、 リジン、 オル二チン、 シトルリン若 しくはァラニン残基、 又はこれらのアミノ酸の N— «置換誘導体残基を表 し ;
A 2は、 芳香族アミノ酸残基を表し ;
A 3、 A 4及び A 6は、 独立して、 アルギニン、 リジン、 オル二チン、 シ トルリン又はァラニン残基を表し ;
A 5は、 チロシン、 フエ二ルァラニン、 ァラニン、 ナフチルァラニン又は シトルリン残基を表し ;
A 7は、 力ルポキシル基がアミ ド化されていてもよい、 リジン又はアルギ ニン残基を表し ;
Xは、 下記式 (a) :
1' V 3' 4' 5' 6'
-A8-A9-A10-G1Y-A11-A12- (a)
(式中、
A 8及び A 1 2は、 独立して、 ァラニン、 バリン、 ロイシン、 イソロイシン, セリン、 システィン、 又はメチォニン残基を表し ;
A 9は、 芳香族アミノ酸残基を表し、 A 1 0は、 A 3と同一のアミノ酸残 基から選択され、 A l lは、 チロシン、 フエ二ルァラニン、 トリブトファン、 ァラニン、 バリン、 ロイシン、 イソロイシン、 セリン、 システィン又はメチ ォニン残基を表すが、 但し、 1 ' 位と 6 ' 位が共にシスティン残基である場 合には、 これらは、 ジスルフイ ド結合により連結していても良い) で示され るペプチド残基、 或いは D—オル二チル—プロリン、 プロリル一 D—オル二 チン、 D—リジループ口リン、 プロリル一 D—リジン、 D—アルギニル—プ 口リン、 プロリルー D—アルギニン、 D—シトルリループ口リン、 D—シ卜 ルリルーァラニン、 D—ァラニル一シトルリン、 プロリルー D—シトルリン, グリシルーオル二チン、 オルニチルーグリシン、 グリシルーリジン、 リジル 一グリシン、 グリシル—アルギニン、 アルギニル一グリシン、 グリシルーシ
トルリン、 シトルリル一グリシン、 D—ァラニループ口リン、 及び D—リジ ルーァラニンからなる群より選択されるペプチド残基であり、 該ペプチド残 基の構成アミノ酸である D—アルギニン、 L 一アルギニン、 D—リジン、 L 一リジン、 D—オル二チン又は L 一オル二チンの側鎖 ω—ァミノ基の水素原 子は ω—アミノアシル基で置換されていてもよく、 これらペプチド残基は 7 位と 9位のアミソ酸残基をペプチド結合を介して連結しているペプチド残基 を示し;
上記式中、 A r gはアルギニン残基を示し、 C y sはシスティン残基を示 し、 T y rはチロシン残基を示し、 C i tはシトルリン残基を示し、 G 1 y はグリシン残基を示し、 4位と 1 2位のシスティン残基はジスルフイ ド結合 により連結していても良く ;
但し、 上記ポリペプチド又はその塩においては '
A l、 A 3、 A 4、 A 5、 A 6及び A 7のいずれかのアミノ酸残基がァラ ニン若しくはシ卜ルリン残基であるか、 又は;
Xが D—シトルリン、 D—ァラニン、 シトルリン、 若しくはァラニン残基 を含むペプチド残基である) で示されるポリペプチド又はその塩に関する。 本発明の式 ( I ) のポリペプチドにおいて、 A 1は、 好ましくはアルギニ ン、 ァラニン又はシトルリン残基であり ; A 2は好ましくはトリブトファン 又はナフチルァラニン残基であり ; A 3は好ましくはアルギニン、 ァラニン 又はシトルリン残基であり ; A 4は、 好ましくは、 リジン、 ァラニン又はシ トルリン残基であり ; Xは好ましくは、 D—リジル—プロリン、 D -ァラニ ループ口リン、 D—リジル—ァラニン又は D—シトルリル一プロリン残基で あり ; A 5は、 好ましくはチロシン又はァラニン残基であり ; A 6は好まし くはアルギニン、 ァラニン又はシトルリン残基であり ; A 7は好ましくはァ ルギニン残基である。
本発明の最も好ましいポリペプチドの具体例は、 A l、 A 6及び A 7がァ ルギニン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A 3がシ卜ルリ ン残基であり、 A 4がリジン残基であり、 Xが D—リジル—プロリン残基で あり、 A 5がチロシン残基である式 ( I ) のポリペプチド、 A l、 A 3、 A
6及び A 7がアルギニン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A 4がリジン残基であり、 Xが D—シトルリル—プロリン残基であり、 A 5 がチロシン残基である式 ( I ) のポリペプチド、 Al、 A 6及び A 7がアル ギニン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A 3がシトルリン 残基であり、 A 4がリジン残基であり、 Xが D—シトルリループ口リン残基 であり、 A 5がチロシン残基である式 ( I ) のポリペプチド、 及び A 1がシ トルリン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A3、 A 6及び A 7がアルギニン残基であり、 A4がリジン残基であり、 Xが D—シトリレリ ループ口リン残基であり、 A 5がチロシン残基である式 ( I ) のポリべプチ ドである。
本発明の好ましいポリペプチドの他の態様としては、 A l、 A 6及び A 7 がアルギニン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A 3がァラ ニン残基であり、 A 4がリジン残基であり、 Xが D—リジル—プロリン残基 であり、 A 5がチロシン残基である式 ( I ) のポリペプチド、 A 1がシトル リン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A 3、 A 6及び A 7 がアルギニン残基であり、 A 4がリジン残基であり、 Xが D—リジループ口 リン残基であり、 A 5がチロシン残基である式 ( I ) のポリペプチド、 A l、 A 3及び A 7がアルギニン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A 4がリジン残基であり、 Xが D—リジル—プロリン残基であり、 A 5がチ 口シン残基であり、 A 6がシトルリン残基である式 ( I ) のポリペプチド、 A 1及ぴ A 3がシトルリン残基であり、 A 2がナフチルァラニン残基であり、 A 4がリジン残基であり、 Xが D—リジル—プロリン残基であり、 A 5がチ 口シン残基であり、 A 6及び A 7がアルギニン残基である式 (I ) のポリべ プチド、 及び A l、 A 3及び A 7がアルギニン残基であり、 A 2がナフチル ァラニン残基であり、 A4がリジン残基であり、 Xが D—シトルリループ口 リン残基であり、 A5がチロシン残基であり、 A6がシトルリン残基である 式 ( I ) のポリペプチドが例示される。
尚、 本発明のポリペプチドにおいて A 7のアミノ酸は、 ポリペプチドの血 清中等生体内における安定性の向上の点から、 力ルポキシル基がアミ ド化さ
れていることが好ましい。
本発明のポリぺプチドの代表的具体例を、 公知の T 1 3 4及び T 1 4 0の ポリペプチドと合わせて下記表 1に示した。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 (Al) (A2) (A3) (A4) X (A5) (A6) (A7)
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑩ ⑬ ⑭
T134- Η - Arg - Arg - r - Cys -Tyr-Arg-Lys -DLys - Pro-Tyr-Arg - Cit - Cys -Arg-OH Τ140, H-Arg -Arg -Nal -Cys -Tyr -Arg -Lys -DLys -Pro -Tyr -Arg -Cit -Cys -Arg -OH
TA14001 H-Ala- Arg ■Nal- Cys Tyr - Arg - Lys - DLys■ Pro - yr-Arg -Cit- Cys -Arg-OH TA14005 H-Arg- Arg -Nal - Cys , Tyr- Ala- Lys - DLys · Pro - yr-Arg -Cit- Cys -Arg-OH TA14006 H-Arg- Arg -Nal- Cys . Tyr - Arg- Ala- DLys - Pro -Tyr-Arg Cit- Cys -Arg-OH TA14007 H-Arg - Arg -Nal- Cys Tyr - Arg- Lys - DAla- Pro■Tyr-Arg■Cit- Cys -Arg-OH TA14008 H-Arg - Arg -Nal- Cys Tyr - Arg- Lys - DLys - Ala• Tyr-Arg Cit- Cys -Arg-OH TA14009 H-Arg- Arg■Nal- Cys Tyr - Arg - Lys - DLys Pro -Ala -Arg■Cit- Cys -Arg-OH TA14010 H-Arg- Arg■Nal- Cys■ Tyr - Arg- Lys - DLys · Pro -Tyr- Ala■Cit■ Cys -Arg-OH TC14001 H-Cit■ Arg -Nal- Cys Tyr - Arg- Lys - DLys Pro -Tyr-Arg -Cit- Cys -Arg-OH TC14003 H-Arg- Arg -Nal- Cys■ Tyr - Cit■ Lys■ DLys ' Pro , Tyr-Arg Cit■ Cys -Arg-OH TN14003 H- Arg- Arg■Nal- Cys Tyr - Cit- Lys - DLys - Pro■Tyr-Arg Cit- Cys -Arg-NH2 TC14004 H-Arg- Arg -Nal- Cys Tyr - Arg- Cit- DLys Pro -Tyr-Arg Cit- Cys -Arg-OH TC14005 H-Arg- Arg -Nal- Cys . Tyr - Arg■ Lys - DCit- Pro -Tyr-Arg■Cit- Cys -Arg-OH TN14005 H-Arg- Arg■Nal- Cys Tyr - Arg - Lys - DCit- Pro■Tyr-Arg•Cit. Cys -Arg-NH2 TC14006 H-Arg- Arg■Nal- Cys . Tyr - Arg - Lys - DLys - Pro -Tyr-Cit Cit- Cys -Arg-OH TC14011 H-Arg- Arg -Nal - Cys ' Tyr - Cit. Lys - DCit- Pro - yr-Arg•Cit- Cys -Arg-OH TC14012 H-Arg- Arg■Nal- Cys ' Tyr - Cit- Lys - DCit- Pro■Tyr-Arg•Cit■ Cys -Arg-NH2 TC14018 H-Cit- Arg -Nal- Cys■ Tyr- Arg- Lys - DCit- Pro•Tyr-Arg Cit■ Cys -Arg-NH2
上記式のポリべプチドにおいて各記号は国際的に認められた三文字表示に
よるアミノ酸残基であり、 該三文字の前に 「D」 を付した D—アミノ酸以外
は全て L一アミノ酸を示し、 N a 1は L— 3— (2—ナフチル) ァラニンを
表し、 C i tは、 L—シトルリン 〔= 2—ァミノ一 5—ウレイドバレリアン
5 酸〕 を表す。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明のポリペプチド TC 14003及び TC 1400 5、 並び
に T 140の CDスぺクトルである。
10 図 2は、 本発明のポリペプチド TC 140 1 2並びに T 140の血清中で
の安定性を示す HP CLチャートである。 発明を実施するための最良の形態
本発明の式 ( I ) のポリペプチドは、 ポリペプチド合成法、 例えば固相べ
15 プチド合成法、 液相ペプチド合成法などによって製造することができる。 例
えば、 固相合成法では、 A 7に対応するアミノ酸のひ—アミノ基を 9一フル
ォレニルメチルォキシカルボニル (Fmo c) 基等のウレタン型保護基で保
護した N—保護アルギニン (又はリジン) のカルボキシル基を、 場合により
. カルボキシル基と結合し得るスぺーサーを介して (すなわち、 アルギニン
20 (又はリジン) のカルボキシル基を p—カルボキシメチルベンジルエステル
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
Al-Arg-A2-Cys-Tyr-A3-A4-X-A5-A6-Cit-Cys-A7 ( I ) (式中、
A lは、 水素原子或いはアルギニン、 リジン、 オル二チン、 シトルリン若 しくはァラニン残基、 又はこれらのアミノ酸の N— α置換誘導体残基を表 し ;
Α2は、 芳香族アミノ酸残基、 好ましくはチロシン、 フエ二ルァラニン、 トリブトファン又はナフチルァラニン残基を表し ;
A3、 A 4及び A 6は、 独立して、 アルギニン、 リジン、 オル二チン、 シ トルリン又はァラニン残基を表し ;
A 5はチロシン、 フエ二ルァラニン、 ァラニン、 ナフチルァラニン又はシ トルリン残基を表し ;
A7は、 力ルポキシル基がアミ ド化されていてもよい、 リジン又はアルギ ニン残基を表し ;
Xは、 下記式 (a) : で表されるペプチド残基
1' 2' 3' 4' 5' 6'
-A8-A9-A10-Gly-All-A12- (a)
(式中、
A 8又は A 1 2は、 ァラニン、 バリン、 ロイシン、 イソロイシン、 セリン, システィン、 又はメチォニン残基を表し ;
A9は、 芳香族アミノ酸残基を表し、 A 1 0は、 A3と同一のアミノ酸残 基から選択され、
A 1 1は、 チロシン、 フエ二ルァラニン、 トリプトファン、 ァラニン、 バ リン、 ロイシン、 イソロイシン、 セリン、 システィン又はメチォニン残基を 示すが、 但し、 1 ' 位と 6 ' 位が共にシスティン残基である場合にはこれら はジスルフィ ド結合により連結していても良い) で示されるペプチド残基、 或いは D—オルニチループ口リン、 プロリル一 D—オル二チン、 D—リジル 一プロリン、 プロリル一 D—リジン、 D—アルギニル一プロリン、 プロリル 一 D—アルギニン、 D—シトルリル—プロリン、 プロリル一 D—シトルリン,
D—シトルリル—ァラニン、 D—ァラニル―シトルリン、 グリシル—オル二 チン、 オルニチルーダリシン、 グリシルーリジン、 リジルーグリシン、 ダリ シル一アルギニン、 アルギニル一グリシン、 グリシルーシトルリン、 シトル リル—グリシン、 D—ァラニループ口リン、 及び D—リジルーァラニンから なる群より選択されるペプチド残基であり、 該ペプチド残基の構成アミノ酸 である D—アルギニン、 L—アルギニン、 D—リジン、 L—リジン、 D—ォ ルニチン又は L—オル二チンの側鎖 ω—ァミノ基の水素原子は ω—アミノア シル基で置換されていてもよく、 これらべプチド残基は 7位と 9位のアミノ 酸残基をペプチド結合を介して連結しているペプチド残基を示し ;
上記式中、 A r gはアルギニン残基を示し、 C y sはシスティン残基を示 し、 Ty rはチロシン残基を示し、 C i tはシトルリン残基を示し、 G l y はダリシン残基を表し ;
上記ポリぺプチド又はその塩においては
A l、 A3、 A4、 A5、 A 6及び A 7のいずれかのアミノ酸残基がァラ ニン又はシトルリン残基であるか、 又は;
Xが D—シトルリン、 D—ァラニン、 シトルリン、 又はァラニン残基を含 むペプチド残基である) 。
前記のアミノ基を有する不溶性樹脂としては、 C末端の N—保護アルギニ ン (又はリジン) のカルボキシル基又は場合によりこれに結合しているスぺ ーサー (架橋基) と結合可能であり、 且つ、 ポリペプチド合成後脱離可能な ものであれば如何なるものでもよい。
このような不溶性樹脂としては、 例えば、 アルコ樹脂 (p—べンジルォキ シアルコール樹脂) 、 ベンズヒドリルァミン樹脂、 メチルベンズヒドリルァ ミン樹脂、 アミノメチルフエノーキシメチル樹脂、 Fmo c— NH— SAL 樹脂 〔 (4一 (2 ' , 4 ' —ジメトキシフエ二ル— Fmo c—アミノエチ ル) フエノキシリンカ一樹脂) 、 H. Rink, Tetrahedron Lett. , 28: 3787
(1987) , 0. 68龍016 〕 及びこれらの誘導体等が挙げられる。 'これらの 樹脂を用いれば開裂によっていずれも直接目的物を与えるが、 収率の点から はアルコ樹脂又は Fmo c— NH— S AL樹脂が好ましい。
前述の、 場合により c末端のアミノ酸の力ルポキシル基と結合しているス ぺーサ一としては力ルポキシル基と結合しうる官能基及び力ルポキシル基を 有するスぺーサ一が挙げられ、 例えばアルギニン (又はリジン) のカルポキ シル基を p—力ルポキシメチルベンジルエステルに変換しうるものが挙げら れるが特に制限はない。
本発明のポリペプチドの合成に用いる保護アミノ酸とは官能基を既知の方 法により保護基で保護したアミノ酸であり、 各種の保護アミノ酸が市販され ている。 本発明のポリペプチドを合成する場合には、 以下に示す保護基のい ずれかを選択するのが好ましい。 まず、 アミノ酸のひーァミノ基の保護基と しては B o c ( t一ブチルォキシカルボニル) 又は Fmo c (9一フルォレ ニルメチルォキシカルポニル) が好ましい。 アルギニン (A r g) のグァニ ジノ基の保護基としては T o s (トシル) 、 N02 (ニトロ) 、 M t r (4 ーメ 卜キシ一 2, 3, 6—卜リメトチルベンゼンスルホニル) 、 Pmc (2 , 2, 5, 7 , 8 _ペン夕メチルクロマン _ 6 _スルホニル) 又は P b f ( 2 , 2, 4, 6, 7—ペン夕ヒドロキシジヒドロべンゾフラン一 6—スルホニ ル) が好ましい。 システィン (Cy s ) のメルカプト基の保護基としては B z 1 (ベンジル) 、 4— Me OB z 1 (4ーメ卜キシベンジル) 、 4— Me B z 1 (4一メチルベンジル) 、 Acm (ァセタミ ドメチル) 、 T r t (ト リチル) 、 Np y s (3—二トロ— 2—ピリジンスルフエニル) 、 t - B u ( t一プチル) 、 t -B u S ( t一プチルチオ) が挙げられるが、 4一 Me B z し Acm、 Np y sが好ましい。 チロシン (Ty r ) の水酸基の保護 基としては B z l、 C 12B z 1 (2 , 6—ジクロロベンジル) 、 t一 B u が挙げられるが、 保護しなくてもよい。 リジン (Ly s ) の εアミノ基の保 護基としては Ζ (ベンジルォキシカルボニル) 、 2— C 1 Z (2—クロ口べ ンジルォキシ力ルポニル) 、 B o c、 Np y sが挙げられる。 各保護基は、 ペプチドの合成条件に応じ適当なものをそれ自体既知の保護基の中から選択 することが好ましい。
ペプチド合成に際し、 保護アミノ酸の結合は、 通常の縮合法、 例えば、 D CC (ジシクロへキシルカルポジイミ ド) 法、 D I P CD I (ジイソプロピ
ルカルポジイミ ド) 法 〔Tartar, A. ら: J. Org. Chem. 44, 5000 (197 9) 〕 、 活性エステル法、 混合あるいは対称酸無水物法、 力ルポニルジイミ ダゾール法、 DCC— HOB t (1—ヒドロキシベンゾトリァゾール) 法 CKeonig, W. ら: Chem. Ber., 103, 788, 2024, 2034 ( 1970) 〕 、 ジフエ二 ルホスホリルアジド法等に従って行なうことができるが、 DCC法、 DCC 一 HOB t法、 D I P CD I — HOB t法、 対称酸無水物法が好ましい。 こ れらの縮合反応は、 通常、 ジクロロメタン、 ジメチルホルムアミド等の有機 溶媒又はこれらの混合溶媒中で行なわれる。 α—ァミノ基の保護基の脱離試 薬としては、 トリフルォロ酢酸/ジクロロメタン、 HC 1 /ジォキサン、 ピ ペリジン/ジメチルホルムアミ ド等が用いられ、 該保護基の種類により適宜 選択する。 また、 合成の各段階 fcおける縮合反応の進行の程度は、 E.カイサ 一らの方法 〔Anal, Biochem. , 34, 595 (1970) 〕 (ニンヒドリン反応法) に より調べることができる。
上記のようにして、 所望のアミノ酸配列を有する保護ポリペプチドを得る ことができる。
不溶性樹脂としてアミノメチル樹脂誘導体を用いた場合には、 例えば適当 な溶媒中においてアンモニアで処理することにより該樹脂から保護ポリぺプ チドを脱離させることができる。 次いで、 フッ化水素で処理すること.により、 前記式で示される、 全ての保護基が脱離したポリべプチドアミドが得られる: 不溶性樹脂としてべンズヒドリルァミン樹脂、 メチルベンズヒドリルァミン 樹脂、 アミノメチルフエノキシメチル榭脂、 DMBHA樹脂 〔Funakoshi. S. ら; J. Chem. So , C em. Commun. , 1988, 382] を用いた場合には、 フッ 化水素、 TFMSA (トリフルォロメタンスルホン酸) [Academic Press発 行、 E. Gross編集、 Yajima, H. ; "The Peptides" vol 5, P65 ( 1983) 〕 、 TMSOT f (トリメチルシリルトリフラート) 〔Fujii, N. ら;; Γ. Chem. So , Che. Commun. , 1987、 274] 又は TMS B r (トリメチルシリルブロミ ド) 〔Fujii、 Nら; Chem. Pharm. Bull., 35, 3880 (1987) 〕 などで処理す ることにより、 該樹脂及び保護基を同時に脱離させることができる。
次いで、 所望により、 2 _メルカプトエタノール、 DTT (ジチオスレィ
トール) などで還元することによりシスティンのメルカプト基を還元型とし た後、 酸化処理することによりジスルフイ ド結合を形成させ、 環状ポリぺプ チドを得ることができる。
この際の酸化処理は、 既知の方法を用いることができ、 通常、 大気中の酸 素やフェリシアン酸塩 (例えば、 フェリシアン化カリウム) のような酸化剤 を用いる。
尚、 上記ポリペプチドが樹脂に結合した状態で、 抗 H I V物質を結合させ、 本発明のポリペプチドと抗 H I V物質の複合体とすることができる。 上記抗 H I V物質としては、 例えば、 逆転写酵素阻害剤や H I Vプロテアーゼ阻害 剤などが挙げられる。
上記逆転写酵素阻害剤としては、 H I Vの逆転写酵素の活性を阻害する物 質であって、 ヌクレオシド系及び非ヌクレオシド系の物質が挙げられる。 ヌ クレオシド系の該阻害剤としては、 ピリミジン塩基、 プリン塩基、 イミダゾ ール塩基又はトリアゾール塩基のいずれかの塩基と、 少なくとも一つの水酸 基を有するフラノ一ス又はそのァシク口体とから構成されるヌクレオシド又 はその類縁体が好ましく、 例えば、 AZT (CAS REGISTRY NUMBERS: 30516- 87-1: ジドブジン (zidovudine) ) 、 d d I (CAS REGISTRY NUMBERS: 6965 5-05-6: ジダノシン (didanosine) ) 、 d d C (CAS REGISTRY NUMBERS: 74 81-89-2:ザルシタビン (zalcitabine) ) 、 2 ' , 3 ' —ジデヒドロー 2 ' , 3 ' —ジデォキシチミジン (CAS REGISTRY NUMBERS: 3056-17-5: d 4 T : スタブジン (stavudine) ) 、 3 ' 一チア一 2 ' , 3 ' ージデォキシシチジ ン (CAS REGISTRY N擺 BERS: 134678-17-4: 3 TC : ラミブジン (lamivudin e) ) 、 2 ' - j3—フルオロー d d C、 3 ' 一フルォロチミジン (CAS REGIS TRY NUMBERS: 25526-93-6: FLT) 、 9 - ( 2—ホスホニル—メトキシェ チル) —アデニン (CAS REGISTRY NUMBERS: 106941-25-7: PMEA) 、 6 一 C l _d d l、 6— C 1 _ d d C等が挙げられる。
また非ヌクレオシド系の該阻害剤としては例えば、 テトラヒドローイミダ ゾ—ベンゾ—ジァゼピン一オンもしくはーチオン (T I BO) 誘導体 (具体 的には、 (+ ) — S— 4, 5, 6, 7—テトラヒドロー 5—メチルー 6—
(3—メチルー 2—ブテニル) イミダゾ 〔4, 5, l _ j k〕 〔1 , 4〕 ベ ンゾジァゼピン— 2 (1 H) ーチオン) (CAS REGISTRY NUMBERS: 167206-2 9-3: R 8 29 1 3) 、
ヒドロキシエトキシーメチルフエ二ルチオチミン (HEPT) 誘導体、 ネビ ラピン (Nevirapine) (CAS REGISTRY NUMBERS: 129618-40-2) 、 ピリジノ ン誘導体
等が挙げられる。
これらのうち、 上記ポリペプチドとの結合の容易性と DN A中に取り込ま れることによる効果的な DNA合成の阻害機序を考慮すると、 ヌクレオシド 系の逆転写酵素阻害剤が好ましく、 ヌクレオシド系の H I V転写酵素阻害剤 の中でも、 好ましくはすでに臨床においてヒトに投与されている AZ T、 d d l、 d dC、 d 4T又は 3 TCであり、 より好ましくは、 該ポリペプチド と化学的に結合して本発明物質とした際に特に相乗的に抗ウィルス活性が増 強される AZ Tである。 これらのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤等は H I Vが RN Aから逆転写によって DN Aを合成する際に DN A中に取り込まれ、 その結果 D N Aの合成を阻害するために非天然型ヌクレオシド又はヌクレオ シドアナローグであることが好ましい。 上記ヌクレオシドアナローグとは、 ヌクレオシドと類似の立体構造をもつ非ヌクレオシド化合物を指す。 また、 これらの逆転写酵素阻害剤は、 市販のものあるいは既知の合成法に従って調 製したものを使用することが可能である。
また、 H I Vプロテアーゼ阻害剤としては、 H I Vのプロテアーゼの活性 を阻害する物質であって、 該プロテア一ゼの基質遷移状態ミミック化合物で ある阻害剤が好ましい。 基質遷移状態ミミックとは、 酵素の基質結合部位に 結合可能な物質で、 酵素基質複合体における基質と類似の立体構造を有する 物質を指す。 例えば、 Ro 3 1 - 8 9 5 9 (CAS REGISTRY NUMBERS: 12777 9-20-8:サキナビル (sanuinavir) ) 、 A- 77003 (CAS REGISTRY NUM BERS: 134878-17-4) 、 A- 8 098 7 (CAS REGISTRY NUMBERS: 144141-9 7-9) 、 KN I - 93 (CAS REGISTRY NUMBERS: 138258-64-7) 、 KN I - 1 02 (CAS REGISTRY NUMBERS: 139694-65-8) 、 KN I _ 1 74、 KN I—
22 7 (CAS REGISTRY NUMBERS: 147384-69-8) 、 KN I - 27 2 (CAS REG ISTRY NUMBERS: 147318-81-8) 、 L- 7 3 5527 (CAS REGISTRY NUMBER S: 150378-17-9 :インジナビル (indinavir) ) 、 S C— 52 1 5 1 (CAS REGISTRY NUMBERS: 143224-34-4 :テリナビル (Telinavir) ) 、 VX- 4 7 8、 ABT— 538 (CAS REGISTRY NUMBERS: 155213-67-5: リ トナビル (ritonavir) ) 、 DMP - 323 (CAS REGISTRY NUMBERS: 151867-81-1) 、 U- 96 9 8 8 (CAS REGISTRY丽 MBERS: 149394-65-0) 等が挙げられる。 より好ましくは高い抗ウィルス活性を有する Ro 3 1— 8959、 L - 7
3 5 52 7及び KN— 272が好ましいが特に限定はされない。 これら H I Vプロテア一ゼ阻害剤としては、 市販のものあるいは既知の合成法に従って 調製したものを使用することができる。 Ro 3 1 _ 89 59については例 えば、 J. Med. Chem.36, p2300-2310 (1993) に記載の調製法が挙げられる。 上記複合体では、 上記ポリペプチドと上記抗 H I V活性物質とが化学的に 結合しているが、 その結合が化学的に形成された結合であれば特に限定はさ れず、 具体的には、 エステル結合、 アミド結合、 エーテル結合、 ジスルフィ ド結合等が挙げられる。 これらのうちエステル結合は、 結合した抗 H I V活 性物質が生体内の標的細胞内に運搬された後、 細胞内エステラーゼ等で切断 が可能な結合であり抗 H I V活性物質の作用点近傍で該抗 H I V活性物質を 遊離しうるが、 標的細胞への運搬途中においては容易に切断されることがな い程度の安定性を有する結合である。 したがってエステル結合が最も好まし い。
上記複合体の調製方法としては、 例えば AZTなどの抗 H I V物質とピリ ジンなどの有機溶媒中で結合させ、 ポリペプチドのァミノ末端又はカルボキ シル末端と上記抗 H I V物質との複合体を調製することも可能である。 この ような複合体を調製するに当たっては、 例えばコハク酸やダルタル酸等のス ぺ一サーをポリペプチドと抗 H I V物質との間に使用することができる。 そ の場合は、 例えば AZTなどの抗 H I V物質にジメチルァミノピリジン存在 下で、 コハク酸或いはダルタル酸の無水物を用いてこれらのカルボン酸をェ ステル結合させ、 次いでその複合体と、 上記樹脂に結合した状態のポリぺプ
チドの N末端部のアミノ酸の α—アミノ基若しくは ω—ァミノ基とを結合さ せることができる。 本発明のポリべプチドのァミノ末端のアルギニン残基に 樹枝状のスぺーサ一 (例えばポリリジンなど) を公知の方法により予め調製 しておき、 公知の方法 (例えば D I P C I— H O B t法) により縮合させて 結合させることがも可能である。
尚、 上記抗 H I V物質の結合と同様の方法により、 本発明物質にポリェチ レングリコール (米国特許第 5 3 4 2 9 4 0号等) 又はその誘導体、 コンド ロイチン等のダリコサミノダリカン (米国特許第 5 3 1 0 8 8 1号、 米国特 許第 4 5 8 5 7 5 4号等) 、 レシチン (米国特許第 5 1 0 9 1 1 8号、 5 3 1 0 9 5 8号、 5 3 6 2 4 9 1号等) 等の脂質、 各種オリゴ糖を結合したス チレン誘導体ポリマ一 (Polym. L, 17 : 567, 1985等) 等の生体内半減期延 長作用物質を結合させることで、 本発明物質の生体内での半減期を延長する ことも可能である。
このようにして得られたポリぺプチドは、 それ自体既知のポリぺプチドの 単離精製手段、 例えば、 抽出、 再結晶、 各種クロマトグラフィー (ゲルろ過, イオン交換、 分配、 吸着、 逆相) 、 電気泳動、 向流分配等により単離精製す ることができるが、 とりわけ逆相高速液体クロマトグラフィーによる方法が 最も効果的である。
また、, このようにして得られたポリペプチドは、 カブトガニ由来の公知の ポリペプチド、 T 1 3 4及び T 1 4 0と同様に、 エンドトキシン結合能、 抗 菌活性、 エンドトキシン感作血球溶血性、 抗ウィルス活性を有していると考 えられるが、 殊にヒト免疫不全ウィルス (H I V ) に対して良好な抗ウィル ス活性を示し、 その細胞毒性は、 従来の T 1 3 4及び T 1 4 0に比べて大幅 に減少した。
本発明の、 式 ( I ) で示されるポリペプチドは、 構成するアミノ酸の特徴 から塩基性を示すので酸付加により形成した塩の形態としてもよい。 例えば, 式 ( I ) で示されたポリペプチドは無機酸 (塩酸、 臭化水素酸、 リン酸、 硝 酸、 硫酸など、 ) 又は有機カルボン酸 (酢酸、 プロピオン酸、 マレイン酸、 コハク酸、 リンゴ酸、 クェン酸、 酒石酸、 サリチル酸など) 若しくは有機ス
ルホン酸 (メタンスルホン酸、 ρ—トルエンスルホン酸など) との塩を形成 する。 本発明の式 (I) で示されるポリペプチドは、 これらの医薬として許 容し得る塩として医薬組成物の有効成分として用いることができる。
尚、 式 (I) のポリペプチドは、 CXCR4リガンドに特異的に結合する 働きを有しており、 その特異性により抗 H I Vウィ ス活性を示すと考えら れるが、 抗 H I Vウィルス剤の他にも CXCR 4リガンドが関与している疾. 病であるガン、 急性リンパ腫、 骨肉腫、 異所性骨形成、 リウマチなどの治療 のための医薬組成物として利用することもできると考えられる。 実施例
<ポリペプチドの製造 >
ポリペプチド T C 14005の製造
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Arg-Lys-DC i t-Pro-Tyr-Arg-C i t-Cys-Arg-OH (TC14 005)
1. TC 14005保護ポリペプチド樹脂の合成
最初の 14位 (式 (I) の 13位) アルギニンを導入したアルコ榭脂の F mo c—Ag r (Pb f) —OH (0. 74 mg/g) 270 mg (0. 2画 1) から Fmo c基を 20 %ピペリジン ZDMFで除去後、 アルコ樹脂に対し、
13位 (式 (I) の 12位) に相当する Fmo c— Cy s (Tr t) 一 OH (2. 5ea) を加え DMF中、 D I P C D I— HO B t法により縮合反応を 行った。 縮合反応の進行の程度は、 Kaiser. Eら (Anal. Biochem. , 34:595 (1
970) ) のニンヒドリン試験により調べた。
2. 12位〜 1位アミノ酸の導入
以下同様にして、 順次に、 Cit、 Arg (Pbf) 、 Tyr (t-Bu) 、 Pro、 D - Cit、 Lys (Boc) 、 Arg (Pbf) 、 Tyr (t-Bu) 、 Cys (Trt) 、 Nal、 Arg (Pbf) 、 Ar g (Pbf) 残基を DMBHA樹脂に導入して保護基保護化ポリペプチド (I) 樹脂を得た。
3. 脱保護基、 樹脂からのポリペプチドの分離及び精製
保護基保護化ポリペプチド (1) 樹脂は、 20 %ピぺリジン/ DMF処理
により Fmo c基を除去し、 次いで該樹脂 10 Omg当り 1M— TMS B r _ チオア二ソ一ル /T FA (卜リフルォロ酢酸) 系 (m—クレゾール (100 e ) 、 エタンジチオール (300 eQ) が存在するトリフルォロ酢酸 10 ml) で 25 :、 2時間反応させた。 反応混合物から樹脂を濾別し、 トリフルォロ 酢酸 lmlで 2回洗浄し、 濾液、 洗液を合わせたものに氷冷乾燥エーテル 10 0mlを加え、 生じた沈殿物を遠心分離し、 残查をデカンテーシヨンにより上 澄みから分離した。 得られた残查を冷エーテルで洗浄し、 4N酢酸 10mlに 溶解し、 83 Omg (8 Oe ) のジチオスレィトールを加え、 その混合溶液を 1夜攪拌した。 反応溶液を遠心分離し、 上澄みをセフアデックス G_ 10 (フアルマシア社製: 3. 7 X 50cm) で処理し、 4N酢酸でゲル濾過し、 素通り画分である主溶出部分を集め、 凍結乾燥して粉末状の部分精製未環化 ポリペプチド T C 14005を得た。
4. 空気酸化による環化
上述のポリペプチドの 1Z2量を濃アンモニア水で pH7. 5に調整し、 通 気による空気酸化を行い環化させた。 空気酸化終了後、 環化されたポリぺプ チドをダイァオン HP— 20樹脂 (三菱化学株式会社製) 10 gに吸着させ, 次いで 60%ァセトニトリル (1N酢酸中) を用いて脱着溶出した。 該溶出 液を室温下で減圧濃縮してァセトニトリルを除去し、 更に凍結乾燥により粉 末とした。 更に、 該粉末を水に溶解し、 HPLC (コスモジール 5C 18ARI Iカラム:ァセトニトリル傾斜溶出) により精製し単一ピークのポリべプチ ドを得た。 純度は、 HP LCにより確認した。
〔 〕 D ( c . 0. 1 : H20) : + 42. 73
イオンスプレーマススペクトル ( I S— MS) : (C9。H14。N34019S2) 計算値: 2066. 43 実測値: 2067
(トリプルステージ四重極型質量分析装置 A P III (Perkin-Elmer Scie X)
ポリペプチド TC 14012の製造
H-Arg-Arg-Nal-Cys-Tyr-Cit-Lys-DCit-Pro-Tyr-Arg-Cit-Cys-Arg-NH2 (TCI 4012)
1. TC 1 40 1 2保護ポリペプチド樹脂の合成
Fmo c— NH— S AL樹脂 (0. 6 8匪0 / ) 1. 47g ( lmmole) の Fmoc基を 20 %ピぺリジン /DMFで除去後、 NH- SAL樹脂に対して 14位に相 当する Fmoc- Arg (Pbf) -OH (2. 5 e ) を加え DIPCDI- HOBUこより縮合反応 を つた。
2. 1 3位〜 1位アミノ酸の導入
以下同様にして、 順次に、 Cys (Trt) , Cit, Arg (Pbf) , Tyr (t-Bu) , Pro, D-Cit, Lys (Boc) , Cit, Tyr (t-Bu) , Cys (Trt) , Nal, Arg (Pb f) , Arg (Pbf) 残基を丽 -SAL樹脂に導入して官能基保護化ポリペプチド樹 '脂を得た。
その後、 TC 140 0 5の合成の時と同様にして、 脱保護基、 樹脂からの ポリべプチドの分離及び精製を行い、 空気酸化によって環化を行って TC 1 40 1 2を得た。
収量 1. 43 2 g (収率 59%)
〔《〕 D (c 0. 4 1 : H20) : — 60. 67
イオンスプレーマススぺクトル ( I S— MS) : (C 90H140N34O!
9 S 2)
計算値: 206 6. 43 実測値: 206 5. 7 3
(トリプルステージ四重極型質量分析装置 A P III (Perkin-Elmer Scie X)
同様にして、 表 1に示した本発明の他のポリペプチドを合成し、 I S— M Sを下記表 2に示した。
なお、 旋光度として、 以下の値を得た。
TC14003: 〔ひ〕 D (c. 0. 1 : H20) : 0
TC14011: 〔ひ〕 D (c . 0. 1 : H 20 ) : - 47. 6 1
TC14018: 〔Q!〕 D (c. 0·、 1 : Η2Ο) : — 2 5. 5 1
TC14020: ία) D (c. 0. 1 : H20) : -41. 74
TN14003: Ca] D (c. 0. 1 : H20) : - 3 7. 0 9
TN14005: 〔a〕 D (c. 0. 1 : H 2 O ) : - 27. 58
本発明のポリペプチド TC 1400 3及び TC 1400 5の CDスぺクト ルを測定した。 1 cmセルを用いて J— 720 spectropolarimeter (JASC0社 製) を用い、 lnm間隔で 5回測定し、 5回の平均値を求め、 従来の T 140 の CDスぺクトルと一緒に図 1に示した。 2 1 0 nm近辺のマイナスピークと 1 9 7胆近辺の強いプラスピークが観察されたので、 これらのペプチドが /3 —シ一ト構造を有していることが明らかとなった。
<抗11 I V活性及び細胞毒性 >
H I V— 1に予め感染させた M〇L TZH I V— 1 (ΙΠΒ) 細胞から得ら れた H I V— 1 (IIIB) 株を使用した。 H I V感染させた MT— 4細胞に、 本発明のポリべプチドを種々の濃度で添加し、 3.7°Cで 5日間培養した後の 生存細胞数を 3 ' 一 (4, 5 _ジメチルチアゾール _ 2—ィル) 一 2, 5一 ジフエ二ルテトラゾリ二ゥムブロミド (MTT) 法を用いて決定した。 抗 H I V活性は、 H I V感染による MT— 4細胞死を 50 %抑制する濃度 (E C 50値) で表す。 本発明のペプチドの細胞毒性は、 種々な濃度の本発明のポ リぺプチドをウィルス非感染 MT— 4細胞と共に培養し、 生存細胞数を MT T法を用いて決定し、 50 %生存濃度で表した (試験 I : CC5 ()値) 。 更 に、 ヒト抹消血単球 (PBMC) での生存数をトリパンブル一染色法により 決定し、 5 0 %生存濃度でも表した (試験 II: CC50値) 。 各 CC50値と EC5。値の比を、 選択係数 (S I) として表した。 公知のポリペプチド T 1 34及び T 140、 並びに医薬品と使用されている抗 H I V化合物: 3 ' 一アジドー 2 ' , 3 ' —ジデォキシチミジン (AZT) を対照の抗 H I V剤 として得た値を表にまとめた。
CC50 ( M) SI
EC50
化合物 何 CC50 (試験 I) CC50 (試験 π)
(nM) (試験 I) (試験 II)
EC 50 /EC
X134 7 8.3 »1 190 》120 23000
T140 7 3.3 »1 96 》300 29000
TA14001 6 56 >40 N. T. 〉750 N. T.
ΤΛ14005 fi >40 N. T. >4500 N. T. i υj u 47 〉80 N. T. 〉1800 N. T.
ΤΑ14ΠΠ7 u u >80 N. T. 〉5200 N. T.
TA14008 7 17 >80 N. T. >4700 N. T.
7 17 >80 N. T. 〉4500 N. T.
TA14niO R 1 δ >80 N. T. >4800 N. T.
u 9 S >80 310 )29000 160000
ΤΠ4ΠΠ4 u 1 fi u >80 270 >5000 16000
fi u 4 n >80 280 )20000 69000 ^"t u u u fi υ 1 R >80 310 >5300 20000
TC14011 5 0.5 >100 N. T. )200000 N. T.
TC14012 6 0.4 〉100 N. T. )250000 N. T.
TC14018 6 1.2 MOO N. T. )83000 N. T.
TC14020 6 2.7 〉100 N. T. )37000 N. T.
TN14003 6 0.6 〉100 N. T. )166000 N. T.
TN14005 6 4.6 >100 N. T. >21000 N. T.
AZT 48 190 く 20 4000 く 410
荷電は、 それぞれのペプチドの全陽荷電の数であり ;全ての値は、 少なく とも 3回の測定値の平均値であり ; NTは、 試験されていないこと示す。 上記の表から、 本願の化合物、 特に T C 14003、 TC 1400 5、 T C 14020、 及び TN 140 0 5は、 公知ので 140に比べ、 抗 H I V活 性はほぼ同等であるが、 細胞毒性が大幅に低下していることが明らかである c そして、 TC 140 1 1、 TC 140 1 2、 TC 140 1 8、 T C 1402 0、 及び TN I 4003は、 細胞毒性の低下に加え、 更に高い抗 H I V活性 を有していることが明かである。
<血清中での安定性 >
T 140、 又は TC 140 1 2を 1 0 Onmolでネコ血清 (1 0 0 L/1 0 0 ill Water) に溶解し、 37°Cで保温した。 0時間、 1時間、 2時間、 5 時間、 及び 1 6時間経過後、 それぞれ 8 xLずつ採取し、 1 6 %ァセトニト リルを使用した逆相 HP LCにより解析した。 その結果、 T 140は 1 6時 間経過時点で、 約 70 %が分解していたのに対し、 TC 1401 2はほとん ど分解が観察されなかった (図 2) 。 >
このことは本発明のポリペプチドのカルポキシル末端をアミド化すること が、 血清中でのポリぺプチドの安定性を格段に向上することを示している。 配列表フリ一テキスト
配列番号 1 :カブトガ二のタキプレシンファミリ一ポリペプチドに基づきデ ザインしたペプチド、 8 X a a : D - L y s , 1 2 X a a : Lーシトルリン 配列番号 2 :カブトガ二の夕キプレシンファミリ一ポリペプチドに基づきデ ザインしたぺプチド、 3 X a a : L— 3— (2—ナフチル) ァラニン、 1 2
X a a : L—シトルリン
配列番号 3 :カブトガエのタキプレシンファミリーポリペプチドに基づきデ ザインしたペプチド、 3 X a a : L— 3— (2—ナフチル) ァラニン、 8X a a : D— Ly s、 1 2 X a a : L—シトルリン
配列番号 4 :カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づきデ ザインしたペプチド、 3 X a a : L- 3 - (2—ナフチル) ァラニン、 8 X
a a : D— L y s、 1 2 X a a : L一シ卜ルリン
配列番号 5 :カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づきデ ザインしたペプチド、 3 X a a : L— 3 — (2—ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D— L y s、 1 2 X a a : Lーシトルリン
配列番号 6 :カブトガ二の夕キプレシンファミリ一ポリペプチドに基づきデ ザインしたぺプチド、 3 X a a : L - 3 - (2—ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D - L y s , 1 2 X a a : L—シトルリン
配列番号 7 :カブトガ二のタキプレシンファミリ一ポリペプチドに基づきデ ザインしたペプチド、 3 X a a : L— 3 _ ( 2 _ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D-L y s , 1 2 X a a : L—シ卜ルリン
配列番号 8 :カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づきデ ザインしたペプチド、 3 X a a : L - 3 - ( 2—ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D-L y s 1 2 X a a : L—シトルリン
配列番号 9 :カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づきデ ザインしたペプチド、 3 X a a : L - 3 - ( 2—ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D - L y s , 1 2 X a a : L—シトルリン
配列番号 1 0 :カブトガ二の夕キプレシンフアミリーポリペプチドに基づき デザインしたペプチド、 1 X a a : L—シトルリン、 3 X a a : L— 3— ( 2一ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D— L y s、 1 2 X a a : L—シト ルリン
配列番号 1 1 :カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づき デザインしたぺプチド、 3 X a a : L— 3— ( 2—ナフチル) ァラニン、 6 X a a : L—シトルリン、 8 X a a : D— L y s、 1 2 X a a : L—シトル Uン
配列番号 1 2 :カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づき デザインしたペプチド、 3 X a a : L— 3— (2—ナフチル) ァラニン、 7 X a a : Lーシトルリン、 8 X a a : D— L y s、 1 2 X a a : Lーシトル リン
配列番号 1 3 :カブトガ二の夕キプレシンフアミリーポリペプチドに基づき
デザインしたペプチド、 3 X a a : L— 3— ( 2—ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D—シトルリン、 1 2 X a a : Lーシトルリン
配列番号 14 : カブトガ二の夕キプレシンフアミリーポリペプチドに基づき デザインしたペプチド、 3 X a a : L _ 3— ( 2—ナフチル) ァラニン、 8 Xa a : D-L y s , l l Xa a : L—シトルリン、 1 2 Xa a : L—シト ルリン
配列番号 1 5 :カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づき デザインしたぺプチド、 3 X a a : L— 3— ( 2—ナフチル) ァラニン、 6 X a a : L—シトルリン、 8 X a a : L— Ly s、 1 2X a a : L—シトル リン
配列番号 1 6 : カブトガ二のタキプレシンファミリーポリペプチドに基づき デザインしたペプチド、 l Xa a : L—シトルリン、 3 X a a : L— 3— (2—ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D—シトルリン、 1 2X a a : L_ シトルリン
配列番号 1 7 : カプトガ二の夕キプレシンファミリーポリペプチドに基づき デザインしたペプチド、 3 X a a : L— 3— ( 2—ナフチル) ァラニン、 8 X a a : D—シトルリン、 1 1 X a a : L—シトルリン、 1 2 X a a : L— シトルリン 産業上の利用可能性
本発明によれば、 低細胞毒性であり、 かつ高い抗 H I V活性を有する新規 を提供できる。