JPH10324700A - 新規抗hiv複合体及び医薬組成物 - Google Patents

新規抗hiv複合体及び医薬組成物

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JPH10324700A
JPH10324700A JP10098185A JP9818598A JPH10324700A JP H10324700 A JPH10324700 A JP H10324700A JP 10098185 A JP10098185 A JP 10098185A JP 9818598 A JP9818598 A JP 9818598A JP H10324700 A JPH10324700 A JP H10324700A
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JP
Japan
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hiv
residue
amino acid
group
polypeptide
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JP10098185A
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English (en)
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Nobutaka Fujii
信孝 藤井
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Seikagaku Corp
Original Assignee
Seikagaku Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 毒性が低く、抗HIV効果の高い物質を提供
する。 【解決手段】 HIV表面タンパク質gp120及び/
又はHIV宿主標的細胞表面タンパク質CD4に親和性
を持つポリペプチド、例えば下記式(A)で示されるポ
リペプチドに、逆転写酵素阻害剤及び/又はHIVプロ
テアーゼ阻害剤が化学的結合した複合体、及び当該複合
体又はその薬理学的許容塩を有効成分とする医薬組生
物。 【化1】 (式(A)中、Arg,Tyr,Cys,Lys、DL
ys及びProはアミノ酸残基を示し、3位と11位の
システイン残基間の実線はジスルフィド結合を示す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗HIV活性を有
する新規物質及び当該物質を有効成分として含有する医
薬組成物に関する。更に詳しくは抗HIV活性を有する
ポリペプチドに、逆転写酵素阻害剤及び/又はHIVプ
ロテアーゼ阻害剤が化学的結合により結合した複合体、
及び当該物質を有効成分として含有する抗HIV剤等の
医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、後
天性免疫不全症候群(AIDS)やAIDS関連症候群
等の様々な臨床症状を引き起こすことが知られている。
抗HIV剤として、HIVの増殖の各段階を阻害する薬
剤が知られているが、実際に薬として認可されている
か、あるいは臨床試験が行なわれている薬剤としては、
逆転写酵素阻害剤(例えば、ヌクレオシド系の3’−ア
ジド−3’−デオキシチミジン(以下AZTとも記載す
る)、2’,3’−デオキシイノシン(以下ddIとも
記載する)、2’,3’−デオキシシチジン(以下dd
Cとも記載する)等)やHIVプロテアーゼ阻害剤
(N’−〔1(S)−ベンジル−3−〔4a(S),8
a(S),3(S)−(tert−ブチルカルバモイル)デ
カヒドロイソキノリン−2−イル〕−2(R)−ヒドロ
キシプロピル〕−N”−キノリン−2−イルカルバモイ
ル)−L−アスパラギンアミド(以下Ro 31−89
59とも記載する)等)が知られている。
【0003】通常、これらの抗HIV剤は、大量にしか
も長期間投与することが必要であるため、副作用(例え
ば骨髄障害など)や、逆転写酵素あるいはHIVプロテ
アーゼのアミノ酸変異による薬剤耐性ウイルスの出現等
の問題が生じていた。これらの問題の解決および抗ウイ
ルス効果の増強を目的として、AZTと、ddIあるい
はddCとを組合せて使用すること(HIV感染症・A
IDS,日本臨床社,p316-326(1993))、Ro 31−
8959と、AZTあるいはddCとを組合せて使用す
ること(J.Infect.Dis.,166(5),p1143-1146(1992))お
よび3TCとAZT、ddIあるいはRo 31−89
59とを組合せて使用すること(特開平6−23464
1)が知られている。しかしながら、これらの組合せに
よる使用においても、抗ウイルス活性は不十分であり、
しかも上記問題の解決も不十分である。ところで、抗ウ
イルス活性を有する新規なポリペプチド及びこのポリペ
プチドを有効成分とする抗HIV剤が知られており(国
際公開WO92/04374、特開平5−16329
8、国際公開WO95/10534)、当該ポリペプチ
ドはAZTと比して同程度の抗HIV活性を示すことが
知られており、逆転写酵素阻害剤やHIVプロテアーゼ
阻害剤と組み合わせて投与することにより優れた抗HI
V活性を示すことも知られている(特開平9−2524
0)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】逆転写酵素阻害剤やH
IVプロテアーゼ阻害剤などの毒性による副作用は、上
記抗HIV活性を有するポリペプチドと逆転写酵素阻害
剤またはHIVプロテアーゼ阻害剤等とを組み合わせた
投与によっても低減することはできず、解決すべき問題
点として未だに残されており、より毒性の低い抗HIV
剤が期待されている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は優れた抗HI
V活性を保持し、且つより副作用の少ない抗HIV剤と
して有用な複合体を得るべく、抗HIV活性を有しHI
V表面タンパク質に親和性が高いポリペプチドを基に鋭
意研究した結果、当該ポリペプチドのアミノ(N)末端
に逆転写酵素阻害剤またはHIVプロテアーゼ阻害剤等
の抗HIV活性物質を化学的に結合した複合体は、抗H
IV剤として使用した場合に優れた抗HIV活性を示
し、副作用も低減する事が可能であることを見いだし本
発明を完成した。
【0006】即ち、本発明はHIV表面タンパク質に親
和性を持つ下記式(1)のポリペプチドに、1又は2種
以上の抗HIV活性物質(逆転写酵素阻害剤及び/又は
HIVプロテアーゼ阻害剤)が化学的結合により結合し
てなる複合体及び該複合体を有効成分とする医薬組成物
からなる。
【化3】 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 A1-A2-Cys-A2-A3-A3-Y-A2-A3-A3-Cys-A4−A5 ・・・・・(1) [式中、A1はH−(A2のアミノ基由来)或いはリジ
ン、アルギニンおよびオルニチンから選ばれる1個の塩
基性アミノ酸又はこれらのアミノ酸残基から選択された
同一又は異なるアミノ酸残基を少なくとも2個有するペ
プチド残基、或いは該塩基性アミノ酸残基若しくはペプ
チド残基のアミノ末端アミノ酸残基のN−α位の水素原
子がアシル基若しくは置換チオカルバモイル基で置換さ
れているN−αアシル置換アミノ酸残基、N−αアシル
置換ペプチド残基、N−α置換チオカルバモイル化アミ
ノ酸残基またはN−α置換チオカルバモイル化ペプチド
残基を示し;
【0007】A2は独立してチロシン、フェニルアラニ
ンまたはトリプトファン残基を示し;A3は独立してリ
ジンまたはアルギニン残基を示し;A4はリジンおよび
アルギニンから選ばれるアミノ酸の少なくとも1個を有
するアミノ酸残基またはペプチド残基を示し;A5は−
OH(A4のカルボキシル基由来)又は−NH2(A4の
カルボキシル基の酸アミド由来)を示し;Yは下記式
(a)で示されるペプチド残基
【化4】 1’ 2’ 3’ 4’ 5’ 6’ −A6-A2-A3-Gly-A7-A6− (a) (式中、A2及びA3は上記(1)式におけると同義で
ある。A6は独立してアラニン、バリン、ロイシン、イ
ソロイシン、セリン、システインまたはメチオニン残基
を示し、A7はチロシン、フェニルアラニン、トリプト
ファン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、
セリン、システインまたはメチオニン残基を示し、Gl
yはグリシン残基を示す。但し、1’位と6’位が共に
システイン残基である場合にはこれらはジスルフィド結
合により連結していてもよい。)、または
【0008】D−オルニチル−プロリン、プロリル−D
−オルニチン、プロリル−D−リジン、プロリル−D−
アルギニン、D−リジル−プロリン、D−アルギニル−
プロリン、グリシル−リジン、グリシル−アルギニン、
オルニチル−グリシン、グリシル−オルニチン、リジル
−グリシン及びアルギニル−グリシンで示される2個の
アミノ酸から構成されたジペプチドから選ばれるもので
あり、且つその構成アミノ酸であるD−リジン、リジ
ン、D−オルニチン又はオルニチンの側鎖ω−アミノ基
の水素原子はアシル基で置換されていてもよいペプチド
残基を示し;Cysはシステイン残基を示し、3位と1
1位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結し
ていてもよい]
【0009】本発明の複合体は、少なくとも上述のポリ
ペプチドと、AZT等の抗HIV活性物質とが化学的結
合により結合されていることにより、生体内においてH
IV感染の標的となるCD4陽性細胞へ抗HIV活性物
質を運搬し、当該細胞内において抗HIV活性物質を遊
離して優れた抗HIV活性を示すものであり、また、こ
の新規複合体を有効成分として含有する組成物は安全性
が高く、より副作用の少ない抗HIV剤などの医薬組成
物として有効である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明を更に詳細に説明す
る。本発明の新規複合体(以下本発明物質と記載するこ
ともある。)はHIV表面タンパク質gp120及び/
又はHIV標的細胞表面タンパク質CD4に親和性を有
するポリペプチドに、1又は2種以上の逆転写酵素阻害
剤及び/又はHIVプロテアーゼ阻害剤が化学的結合に
より結合している複合体である。本発明を構成するポリ
ペプチドは、HIV表面タンパク質gp120及び/又
はHIV宿主標的細胞表面タンパク質CD4に対して親
和性を有するポリペプチドであれば特に限定はされず、
そのようなポリペプチドとして、例えば抗体或いは下記
式(1)で表されるポリペプチドなどが挙げられるが、
HIVの宿主標的であるCD4陽性細胞(宿主標的細
胞)の細胞表面タンパク質CD4とも親和性を有し(Bi
ochem. Biophys. Res. Commun.,219,555-559(1996),Bio
chem. Biophys. Acta.,1298.37-44(1996))、それ自体
抗HIV活性を有する下記式(1)で表されるポリペプ
チドが好ましい。
【0011】
【化5】 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 A1-A2-Cys-A2-A3-A3-Y-A2-A3-A3-Cys-A4−A5 ・・・・・(1) [式中、A1はH−(A2アミノ基由来)或いはリジ
ン、アルギニンおよびオルニチンから選ばれる1個の塩
基性アミノ酸又はこれらのアミノ酸残基から選択される
同一又は異なるアミノ酸残基を少なくとも2個有するペ
プチド残基、或いは該塩基性アミノ酸残基若しくはペプ
チド残基のアミノ末端アミノ酸残基のN−α位の水素原
子がアシル基若しくは置換チオカルバモイル基で置換さ
れているN−αアシル置換アミノ酸残基、N−αアシル
置換ペプチド残基、N−α置換チオカルバモイル化アミ
ノ酸残基またはN−α置換チオカルバモイル化ペプチド
残基を示し;A2は独立してチロシン、フェニルアラニ
ンまたはトリプトファン残基を示し;A3は独立してリ
ジンまたはアルギニン残基を示し;A4はリジンおよび
アルギニンから選ばれるアミノ酸の1個または少なくと
も2個を有するアミノ酸残基またはペプチド残基を示
し;A5は−OH(A4のカルボキシル基由来)又は−
NH2(A4のカルボキシル基の酸アミド由来)を示し;
【0012】Yは下記式(a)で示されるペプチド残基
【化6】 1’ 2’ 3’ 4’ 5’ 6’ −A6-A2-A3-Gly-A7-A6− (a) (式中、A2及びA3は上記(1)式におけると同義で
ある。A6は独立してアラニン、バリン、ロイシン、イ
ソロイシン、セリン、システインまたはメチオニン残基
を示し;A7はチロシン、フェニルアラニン、トリプト
ファン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、
セリン、システインまたはメチオニン残基を示し;Gl
yはグリシン残基を示す。但し、1’位と6’位が共に
システイン残基である場合にはこれらはジスルフィド結
合により連結していてもよい。)、または
【0013】D−オルニチル−プロリン、プロリル−D
−オルニチン、プロリル−D−リジン、プロリル−D−
アルギニン、D−リジル−プロリン、D−アルギニル−
プロリン、グリシル−リジン、グリシル−アルギニン、
オルニチル−グリシン、グリシル−オルニチン、リジル
−グリシン及びアルギニル−グリシンで示される2個の
アミノ酸から構成されるジペプチドから選ばれるもので
あり、且つその構成アミノ酸であるD−リジン、リジ
ン、D−オルニチン又はオルニチンの側鎖ω−アミノ基
の水素原子はアシル基で置換されていてもよいペプチド
残基を示し;Cysはシステイン残基を示し、3位と1
1位のシステイン残基はジスルフィド結合により連結し
ていてもよい]。
【0014】式(1)で表されるポリペプチドは、カブ
トガニ由来のタキプレシン族ポリペプチドを基に合成さ
れたポリペプチドであるため、カブトガニ由来のタキプ
レシンI、タキプレシンII、タキプレシンIII、ポリフ
ェムシンI又はポリフェムシンII(代謝,26,p429-439(1
989))等を上記ポリペプチドの代替として使用すること
も可能である。
【0015】本明細書中における抗HIV活性を有する
とは、HIVの感染を抑制する、HIVの増殖を抑制す
る、HIVを減少させるなどの効果を発現する性能を有
することを意味する。上記式(1)で表されるポリペプ
チド(以下便宜上ポリペプチド鎖と記載する)は、それ
自体公知のポリペプチド合成法、特に液相合成法あるい
は固相合成法(新生化学実験講座1 タンパク質VI,東
京化学同人,p3-29(1992))によって製造することができ
る。また、これらのポリペプチドのアミノ酸配列をコー
ドするDNAを遺伝子組み換え技術により宿主細胞に導
入し、発現させる方法によっても合成できる。すなわち
例えば固相合成法の場合、例えばポリペプチド鎖のカル
ボキシル末端アミノ酸残基に対応する、N-保護アミノ
酸のカルボキシル基を直接、あるいは場合により介在物
を介して、アミノ基あるいは水酸基等の適宜な官能基を
有する不溶性樹脂に結合させた後、前記式(1)で示さ
れるアミノ酸配列の11位から1位までの各保護アミノ
酸を固相合成法に従って順次結合し保護基保護化ペプチ
ド樹脂とする。
【0016】不溶性樹脂としては、カルボキシル(C)
末端のN−保護アミノ酸のカルボキシル基と直接、ある
いは場合により介在物を介して共有結合が可能であり、
且つ、その後脱離可能なものであれば特に限定はされな
い。このような不溶性樹脂としては、当該不溶性樹脂を
脱離後にアミノ酸あるいはペプチド酸を遊離する樹脂あ
るいはアルコキシ型樹脂(Alko−resin等)、
又は脱離後にアミノ酸アミドあるいはペプチドアミドを
遊離するアミド型樹脂(Rink amideresi
n等)が挙げられる。具体的には、アミノ酸あるいはペ
プチド酸を遊離する樹脂としてはクロロメチル樹脂、オ
キシメチル樹脂、PAM(4-(ヒドロキシメチル)フェニ
ルアセトアミドメチル)樹脂及びAlko−resin
としては、p−アルコキシベンジルアルコール(Wan
g)樹脂、ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸(HMP
A)樹脂、ジアルコキシベンジルアルコール型樹脂、ト
リアルコキシジフェニルメチルアルコール型樹脂等が挙
げられ、アミド型樹脂としては、ベンズヒドリルアミン
(BHA)樹脂、p−メチルベンズヒドリルアミン(M
BHA)樹脂、トリアルコキシベンズヒドリルアミン型
樹脂、PAL(peptide amide link
er)樹脂及びRink amide resin(4-
(2',4'-ジメトキシフェニル−アミノメチル)−フェノ
キシ樹脂等)等が挙げられる。
【0017】保護アミノ酸とは、官能基を公知の方法に
より保護基で保護したアミノ酸であり、各種の保護アミ
ノ酸が市販されている。保護基は、ペプチドの合成条件
に応じ適当な物をそれ自体公知の中から選択することが
好ましい。保護アミノ酸の結合は、通常の縮合法に従っ
て行うことができるが、DCC(ジシクロヘキシルカル
ボジイミド)法、DCC−HOBt(1−ヒドロキシベ
ンゾトリアゾール)法、DIPCI(N,N−ジイソプ
ロピルカルボジイミド)−HOBt法、BOP(ベンゾ
トリアゾール−N−ヒドロキシトリスジメチルアミノホ
スホニウムヘキサフルオロリン化物塩)−HOBt法、
HBTU(2−(1H)−ベンゾトリアゾール−1−イ
ル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサ
フルオロホスフェート)−HOBt法、対称無水物法等
が好ましい。これらの縮合反応は、通常、ジクロロメタ
ン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロ
リドン(NMP)等の有機溶媒又はそれらの混合物中で
行われる。
【0018】式(1)中A1においてアミノ末端アミノ
酸残基のN−α位の水素原子がアシル基で置換されてい
るN−α−アシルアミノ酸残基またはN−α−アシルペ
プチド残基を選択する場合は、目的とする上記保護基保
護化ペプチド樹脂又は該保護基保護化ポリペプチド樹脂
より遊離させたペプチドと、該当するアシル基の酸無水
物または該当するカルボン酸により、縮合剤を用いてペ
プチド樹脂又はペプチドのN末端遊離アミノ基をアシル
化し、N−アシル化ペプチド樹脂とする。また、前記式
(1)中A1においてアミノ末端N−α位の水素原子が
置換チオカルバモイル基で置換されているN−α−置換
チオカルバモイル化アミノ酸残基またはN−α−置換チ
オカルバモイル化ペプチド残基を選択する場合は、目的
とする保護基保護化ペプチド樹脂または該保護基保護化
ポリペプチド樹脂より遊離させたペプチドと置換イソチ
オシアネート化合物を微アルカリ条件下に反応すること
により本発明物質のN末端N−α−置換チオカルバモイ
ル化ポリペプチドを得ることができる。この場合不溶性
樹脂を適宜選択することにより13位のアミノ酸残基の
カルボキシル末端はフリー(式(1)においてA5が−O
Hに相当)であることもできるし、あるいは酸アミド
(式(1)においてA5が−NH2に相当)に変換すること
もできる。当該保護基を有し、不溶性樹脂に結合したポ
リペプチドは以下保護基保護化ポリペプチド樹脂とも記
載する。
【0019】該保護基保護化ポリペプチド樹脂を構成す
るポリペプチド鎖(保護基は記載せず)の具体例として
は、下記表1に示すものを挙げることができる。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】同様に、表1においてカルボキシ末端にカ
ルボキシル基をもつポリペプチド鎖(式(1)においてA
5が−OHに相当)も挙げることができる。本明細書の
ポリペプチドの標記において、各記号は国際的に認めら
れた三文字表示によるアミノ酸残基または置換アミノ酸
残基を表し、各記号は下記アミノ酸残基または置換アミ
ノ酸残基を示す。尚、アミノ酸表示の前に「D−」がな
い場合は、全て「L−」体であることを意味する。 Arg:アルギニン、Trp:トリプトファン、Cy
s:システイン、Tyr:チロシン、Lys:リジン、
Gly:グリシン、Phe:フェニルアラニン、Il
e:イソロイシン、Ser:セリン、Leu:ロイシ
ン、Met:メチオニン、Val:バリン、Ala:ア
ラニン、Pro:プロリン、Orn:オルニチン、DO
rn:D−オルニチン、DArg:D−アルギニン、D
Lys:D−リジン、Ac−Arg:N−α−アセチル
アルギニン、Oct−Arg:N−α−オクタノイルア
ルギニン、Laur−Arg:N−α−ラウリルアルギ
ニン、Myr−Arg:N−α−ミリスチルアルギニ
ン、Parm−Arg:N−α−パルミトイルアルギニ
ン、FTC−Arg:N−α−フルオレセインチオカル
バミン化アルギニン、PTC−Arg:N−α−フェニ
ルチオカルバミン化アルギニン、Nicot−Arg:
N−α−ニコチニルアルギニン、ε−N−Ac−DLy
s:ε−N−ω−アミノアセチル−D−リジン、ε−N
−But−DLys:ε−N−ω−アミノブチリル−D
−リジン、Parm−Orn:N−α−パルミトイルオ
ルニチン また、アミノ酸の側鎖官能基の保護基として用いられる
ものとして、例えば次ぎのものが例示される。 But:第三ブチル、Boc:t−ブトキシカルボニ
ル、Fmoc:2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-ス
ルホ
【0026】当該保護基保護化ポリペプチド樹脂からポ
リペプチド鎖のみを得る方法としては、公知の方法及び
後述の一工程による保護基及び不溶性樹脂の脱離とジス
ルフィド結合の形成方法が挙げられる。すなわち、α−
アミノ基の保護基の脱離試薬としては、TFA(トリフ
ルオロ酢酸)/ジクロロメタン、HCl/ジオキサン、
ピペリジン/DMF又はピペリジン/NMP等が用いら
れ、該保護基の種類により適宜選択する。保護基保護化
ポリペプチド樹脂は、フッ化水素、TFMSA(トリフ
ルオロメタンスルホン酸)、TMSOTf(トリメチル
シリルトリフラート)、TMSBr(トリメチルシリル
ブロミド)、TMSCl(トリメチルシリルクロリド)
又はTFAなどで処理することにより、樹脂及び保護基
を同時に脱離させることができる。上記の脱離試薬は、
合成ストラテジー(Boc法又はFmoc法)、使用す
る不溶性樹脂、保護基の種類により適宜選択する。
【0027】さらに得られたポリペプチド鎖は、その3
位と11位、または場合により1’位と6’位のシステ
イン間において、メルカプト基を介してジスルフィド結
合(−S−S−)を形成させることができる。これらの
ジスルフイド結合は、それ自体公知の方法、例えば、温
和な空気酸化等により形成することができる。通常、大
気中の酸素やフェリシアン酸塩(例えば、フェリシアン
化カリウム)のような酸化剤を用いる。このようにして
保護基、樹脂を脱離し、ジスルフィド結合を形成して生
じたポリペプチドはさらに公知の方法により単離精製す
ることができるが、逆相高速液体クロマトグラフィーに
よる方法が最も効果的である。
【0028】本発明物質において、上記保護基保護化ポ
リペプチド樹脂に、抗HIV活性物質である逆転写酵素
阻害剤又はHIVプロテアーゼ阻害剤を化学的に結合す
る。逆転写酵素阻害剤は、HIVの逆転写酵素の活性を
阻害する物質であって、ヌクレオシド系の該阻害剤及び
非ヌクレオシド系の該阻害剤に分けられる。ヌクレオシ
ド系の該阻害剤は、ピリミジン塩基、プリン塩基、イミ
ダゾール塩基又はトリアゾール塩基のいずれかの塩基
と、少なくとも一つの水酸基を有するフラノース又はそ
のアシクロ体とから構成されるヌクレオシド又はその類
縁体が好ましく、例えば、AZT(CAS REGISTRY NUMBE
RS: 30516-87-1:ジドブジン(zidovudine))、ddI
(CAS REGISTRY NUMBERS: 69655-05-6:ジダノシン(did
anosine))、ddC(CAS REGISTRY NUMBERS: 7481-89-
2:ザルシタビン(zalcitabine))、2’,3’−ジデヒ
ドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(CAS REGISTRY
NUMBERS: 3056-17-5:d4T:スタブジン(stavudin
e))、3’−チア−2’,3’−ジデオキシシチジン
(CAS REGISTRY NUMBERS: 134678-17-4:3TC:ラミ
ブジン(lamivudine))、2’−β−フルオロ−ddC、
3’−フルオロチミジン(CAS REGISTRY NUMBERS: 2552
6-93-6:FLT)、9−(2−ホスホニル−メトキシエ
チル)−アデニン(CAS REGISTRY NUMBERS: 106941-25-
7:PMEA)、6−Cl−ddI、6−Cl−ddC
等が挙げられる。
【0029】また非ヌクレオシド系の該阻害剤としては
例えば、テトラヒドロ−イミダゾ−ベンゾ−ジアゼピン
−オンもしくは−チオン(TIBO)誘導体(具体的に
は、(+)−S−4,5,6,7−テトラヒドロ−5−
メチル−6−(3−メチル−2−ブテニル)イミダゾ
〔4,5,1−jk〕〔1,4〕ベンゾジアゼピン−2
(1H)−チオン)(CAS REGISTRY NUMBERS: 167206-2
9-3:R82913)、ヒドロキシエトキシ−メチルフ
ェニルチオチミン(HEPT)誘導体、ネビラピン(Ne
virapine)(CAS REGISTRY NUMBERS: 129618-40-2)、
ピリジノン誘導体等が挙げられる。これらのうち、上記
ポリペプチド鎖との結合の容易性と、DNA中に取り込
まれることによって効果的にDNA合成を阻害する機序
を考慮すると、ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害剤が好
ましく、ヌクレオシド系のHIV転写酵素阻害剤の中で
も、好ましくはすでに臨床においてヒトに投与されてい
るAZT、ddI、ddC、d4T又は3TCであり、
より好ましくは、該ポリペプチド鎖との化学的に結合し
て本発明物質とした際に特に相乗的に抗ウイルス活性が
増強されるAZTである。これらのヌクレオシド系逆転
写酵素阻害剤等はHIVがRNAから逆転写によってD
NAを合成する際にDNA中に取り込まれ、その結果D
NAの合成を阻害するために非天然型ヌクレオシド又は
ヌクレオシドアナローグであることが好ましい。上記ヌ
クレオシドアナローグとは、ヌクレオシドと類似の立体
構造をもつ非ヌクレオシド化合物を指す。また、これら
の逆転写酵素阻害剤は、市販のものあるいは既知の合成
法に従って調製したものを使用することが可能である。
【0030】また、HIVプロテアーゼ阻害剤として
は、HIVのプロテアーゼの活性を阻害する物質であっ
て、該プロテアーゼの基質遷移状態ミミック化合物であ
る阻害剤が好ましい。基質遷移状態ミミックとは、酵素
の基質結合部位に結合可能な物質で、酵素基質複合体に
おける基質と類似の立体構造を有する物質を指す。例え
ば、Ro 31−8959(CAS REGISTRY NUMBERS: 127
779-20-8:サキナビル(saquinavir))、A−77003
(CAS REGISTRY NUMBERS: 134878-17-4)、A−809
87(CAS REGISTRY NUMBERS: 144141-97-9)、KNI
−93(CAS REGISTRY NUMBERS: 138258-64-7)、KN
I−102(CAS REGISTRY NUMBERS: 139694-65-8)、
KNI−174、KNI−227(CAS REGISTRY NUMBE
RS: 147384-69-8)、KNI−272(CAS REGISTRY NU
MBERS: 147318-81-8)、L−735527(CAS REGIST
RY NUMBERS: 150378-17-9 :インジナビル(indinavi
r))、SC−52151(CAS REGISTRY NUMBERS: 1432
24-34-4 :テリナビル(Telinavir))、VX−478、
ABT−538(CAS REGISTRY NUMBERS: 155213-67-
5:リトナビル(ritonavir))、DMP−323(CAS RE
GISTRY NUMBERS: 151867-81-1)、U−96988(CAS
REGISTRY NUMBERS: 149394-65-0)等が挙げられる。よ
り好ましくは高い抗ウイルス活性を有するRo 31−
8959、L−735527及びKN−272が好まし
いが特に限定はされない。これらHIVプロテアーゼ阻
害剤としては、市販のものあるいは既知の合成法に従っ
て調製したものを使用することができる。Ro 31−
8959については例えば、J.Med.Chem.36,p2300-2310
(1993)に記載の調製法が挙げられる。
【0031】本発明物質では、上記ポリペプチド鎖と上
記抗HIV活性物質とが化学的に結合しているが、その
結合が化学的に形成された結合であれば特に限定はされ
ず、具体的には、エステル結合、アミド結合、エーテル
結合、ジスルフィド結合等が挙げられるが、これらのう
ちエステル結合は、結合した抗HIV活性物質が生体内
の標的細胞内に運搬された後、細胞内エステラーゼ等で
切断が可能な結合であり抗HIV活性物質の作用点近傍
で該抗HIV活性物質を遊離しうる。エステル結合は運
搬中に容易に切断されることがない程度の安定性を有す
る結合であるので好ましいがこれに限定はされない。
【0032】本発明物質において該抗HIV物質と結合
する該ポリペプチド鎖の部位は特に限定されないが、該
ポリペプチド鎖自体とHIV表面タンパク質gp120
及び宿主標的細胞であるCD4陽性細胞の細胞表面タン
パク質CD4との親和性を維持することが可能なアミノ
末端部位が好ましい。具体的には、アミノ末端部のアミ
ノ酸のα−アミノ基又はω−アミノ基、或いはTamが
抗体作成のために開発したMAPシステム(multiple a
ntigenic peptide system)(J.P.Tam、Proc.Natl.Acad.Sc
i.U.S.A.、85,5409ー5413(1988);J.P.Tam、"Peptides:synt
hesis、structures,and applications"(B.Gutte、ed.)、p
p.456-500、Academic Press,Inc.、New York(1995))の放
射状に分枝したリジンを用いた樹枝状の構造(dendrime
r)を、上記Tamの方法によって上記ポリペプチド鎖
のアミノ末端部に作成し、その末端及び側鎖に存在する
複数のアミノ基に複数の抗HIV活性物質を結合してポ
リペプチド鎖一分子あたり複数の抗HIV活性物質を結
合させることも可能である。当該樹枝状構造の形成に使
用する物質は、上記リジンが最も好ましいが、リジン以
外にもオルニチン等の塩基性アミノ酸或いは合成により
調製したアミノ酸等であってもアミノ基を2個以上含有
する物質であれば使用可能であり好ましい。
【0033】該ポリペプチド鎖のアミノ基に結合する抗
HIV活性物質の結合部位は、結合する該活性物質の種
類により適宜選択されるべきであるが、当該物質中にカ
ルボキシル基または水酸基が存在する場合はこれらの官
能基を介して形成される化学的結合が好ましく、特に水
酸基を介した化学的結合が好ましい。また、当該官能基
の位置が抗HIV活性の中心的役割を有する部位であっ
たとしても、標的細胞中で化学的結合が切断される為、
結合する部位となる当該官能基の分子中での位置は特に
限定はされない。例えば、抗HIV活性物質をその物質
中のカルボキシル基を介してポリペプチド鎖に結合させ
て本発明物質を得る場合は、前記保護基保護化ポリペプ
チド樹脂のアミノ末端部アミノ基と抗HIV活性物質の
カルボキシル基の間でアミド結合を形成させ、直接的に
結合させることも可能であり、また適切なスペーサー物
質を介して生体内で切断が容易な化学的結合を形成させ
ることも可能である。
【0034】また、抗HIV活性物質をその物質中の水
酸基を介してポリペプチド鎖に結合させて本発明物質を
得る場合は、保護基保護化ポリペプチド樹脂のアミノ末
端部の官能基と抗HIV活性物質の水酸基の両方に対し
て化学的に結合可能な官能基を有する多官能性スペーサ
ーを介して結合させることができる。このような多官能
性スペーサーとしては、使用するポリペプチド鎖のアミ
ノ末端部のアミノ基と結合が可能な一方のカルボキシル
基を有し、さらに上記抗HIV活性物質中の水酸基とも
エステル結合を形成することができる上記とは異なるカ
ルボキシル基を有することが好ましく、具体的にはカル
ボキシル基を2個以上有する芳香族化合物或いは脂肪族
化合物等が挙げられるが、鎖状構造を形成していること
から脂肪族化合物が好ましい。
【0035】即ち、多官能性スペーサーとしてジカルボ
ン酸を用いた場合、一方のカルボキシル基と前記ポリペ
プチド鎖のアミノ末端部のアミノ基とでアミド結合を形
成し、他方のカルボキシル基と前記抗HIV活性物質中
の水酸基とでエステル結合を形成することによりポリペ
プチド鎖と前記抗HIV活性物質を結合することができ
る。多官能性スペーサーとしては、合成の簡便性、生体
内での酵素による切断の容易性、本発明物質の抗HIV
活性などを考慮すると、炭素数4〜12の脂肪族ジカル
ボン酸が好ましく、炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸
がより好ましい。ジカルボン酸でも安定性や取り扱いの
簡便性からコハク酸あるいはグルタル酸が特に好まし
い。なお、ジカルボン酸はポリペプチド鎖及び抗HIV
活性物質の結合を妨げない限り他の官能基を有していて
も良い。
【0036】前記保護基保護化ポリペプチド樹脂とAZ
Tとを、ジカルボン酸(例えばコハク酸あるいはグルタ
ル酸)を多官能性スペーサーとして結合する方法として
は、まずAZTと多官能性スペーサーの結合体を形成す
る。すなわち、例えばジメチルアミノピリジン存在下で
AZTを無水コハク酸あるいは無水グルタル酸と反応さ
せ、常法処理後、AZTにコハク酸あるいはグルタル酸
がエステル結合したAZTと多官能性スペーサーの結合
体を得る。次いで、このAZT−多官能性スペーサー結
合体を、前記保護基保護化ポリペプチド樹脂のN末端部
のアミノ酸のα−アミノ基若しくはω−アミノ基、ある
いは該アミノ酸にdendrimer状に結合した樹枝
状構造の末端及び側鎖に存在する複数のアミノ基に公知
の方法、例えばDIPCI−HOBt法などにより縮合
させて結合することができる(この物質を保護基保護化
ポリペプチド樹脂−スペーサー−AZT複合体とも記載
する)。
【0037】上記の如くして得られた保護基保護化ポリ
ペプチド樹脂−スペーサー−AZT複合体は、例えば以
下の方法により不溶性樹脂及び保護基の脱離及びジスル
フィド結合の形成を一工程で行うことにより、本発明物
質とすることができる。すなわち、例えば保護基保護化
ポリペプチド樹脂−スペーサー−AZT複合体に10%
以下、好ましくは5%未満、さらに好ましくは0.5〜
1.5%(v/v)のアニソール、1当量以上、好まし
くは5〜15当量、より好ましくは8〜12当量のTM
SCl(トリメチルシリルクロリド)、TFAを加えて
5分以上、好ましくは30〜120分間、0〜80℃、
好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃
条件下で反応させ、続いて好ましくは10℃以下、より
好ましくは氷冷下で100当量以上、好ましくは200
〜400当量のDMSOを添加し20分以上、好ましく
は30〜120分、より好ましくは60〜100分間反
応することにより脱保護基、脱樹脂及びジスルフィド結
合の形成が一工程でなされる。当該保護基、樹脂の脱離
を行い、ジスルフィド結合の形成を行う系を以下TMS
Cl−DMSO/TFA系と記載する。抗HIV活性物
質を複数結合した本発明物質を調製する際は、本発明物
質の分子の大きさを考慮すると、一つのポリペプチド鎖
あたり32個以下の抗HIV活性物質を結合することが
好ましく、より好ましくは16個以下である。このよう
にして得られた本発明物質は、公知の方法により単離精
製することができるが、逆相高速液体クロマトグラフィ
ーによる方法が最も効果的である。
【0038】本発明の医薬組成物の有効成分は上記本発
明物質又はその薬理学的に許容されうる塩である。薬理
学的に許容されうる塩とは、例えば無機酸(塩酸、臭化
水素酸、リン酸、硝酸、硫酸など)、有機カルボン酸
(酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ
酸、クエン酸、酒石酸、サリチル酸など)、酸性糖(グ
ルクロン酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、アスコルビ
ン酸など)、または有機スルホン酸(メタンスルホン
酸、p−トルエンスルホン酸など)等との塩が挙げら
れ、また、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、
マグネシウム塩等も挙げられるが、特に限定はされな
い。本発明物質をそのままとして投与することも可能で
あるが、さらに薬剤の投与方法及び投与形態に応じて選
択された薬理学上許容されうる担体を加えた医薬組成物
としてもよい。この医薬組成物としては、治療法などに
応じて経口的或いは非経口的に投与され、その投与方法
に応じて適宜な薬物担体により、注射薬、内用薬、外用
薬、坐薬(例えば粉末、顆粒、注射用若しくは内服用液
剤、錠剤、ペッサリー、軟膏、クリーム、エアゾール
等)の製剤とすることができる。本発明の医薬組成物を
例えば注射剤として直接、生体に投与する場合には、薬
剤成分として1日あたりヒト体重1Kgに対して10m
g〜5gを投与することができる。
【0039】本発明の医薬組成物の示す抗HIV活性
は、少なくともHIV表面タンパク質に親和性を示すポ
リペプチド鎖による抗HIV活性物質の標的細胞内への
運搬と、標的細胞上でのポリペプチド鎖と抗HIV活性
物質との化学的結合の切断によって、ポリペプチド鎖と
抗HIV活性物質という作用機序の異なる抗HIV剤、
即ち、HIVのCD4陽性細胞への吸着、融合及び侵入
段階を抑制すると考えられるポリペプチドと、HIV逆
転写酵素あるいはHIVプロテアーゼの酵素活性を阻害
する抗HIV剤とが組み合わせられることで生じるもの
と考えられる。すなわち、本発明物質の単体により多剤
併用療法と同等の治療効果が期待される。また、従来の
抗HIV剤と比して毒性が低下している理由は、それ自
体に細胞毒性を持つAZT等の抗HIV活性物質を化学
的に結合させ、標的細胞に的確に送り込むことによって
薬剤有効濃度を抑え、正常細胞への毒性を抑えるためで
あると考えられる。
【0040】
【実施例】以下に、本発明を実施例により更に詳細に説
明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらに限
定されるものではない。 試験例1 TMSCl−DMSO−TFA系の脱側鎖保護能力 Fmoc−Asp(But)−OH、Fmoc−Glu
(But)−OH、Fmoc−His(Boc)−O
H、Fmoc−Ser(But)−OH、Fmoc−T
hr(But)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−
OH、Fmoc−Arg(Pmc)−OH各6mgにT
MSCl(42μl)、DMSO(762μl)、及び
TFA(5.2ml)を加え、4℃下で処理して5、1
0、30、60、90分後に100μlずつサンプリン
グしてH2O−MeCN(1:1)で1mlに希釈し、
その溶液の一部をHPLCにインジェクションして、F
mocアミノ酸、側鎖保護Fmocアミノ酸を定量し
た。以下においてHPLC分析は、Cosmosil
5C18−AR(4.6×150mm)カラムを使用
し、流速1ml/minで行った。溶出は、0.1%
(v/v)TFA−H2Oと0.1%(v/v)TFA
−MeCN(アセトニトリル)の直線勾配により行っ
た。HPLCでの分取にはCosmosil C18−
AR(2.0×25cm)を流速7ml/minで使用
した。その結果、何れの側鎖保護基も、この切断試薬系
で60分以内に定量的に除去できることが判明した。
【0041】試験例2 TMSCl−DMSO−TFA系の樹脂からのアミノ酸
遊離能力 切断処理によりアミノ酸或いはペプチド酸を遊離するア
ルコキシル型樹脂にLeuを結合したH−Leu−Al
ko resin(0.60mmol/g,2μmo
l)、或いは切断処理によりアミノ酸アミド或いはペプ
チドアミドを遊離するアミド型樹脂にArg(Pmc)
を結合したH−Arg(Pmc)−Rink amid
e resin(0.32mmol/g,2μmol)
に内部標準としてBoc−Gly−OH(3μmol)
を加え、TMSCl(7μl,750eq)とTFA
(870μl)を加えて、室温下で1時間撹拌後、DM
SO(127μl,750eq)を加え、更に1時間撹
拌した。30、60、90、120分後にそれぞれ10
0μlずつサンプリングして蒸留水で1mlに希釈し
た。アミノ酸分析機により再生アミノ酸を定量した。そ
の結果、2時間処理した後のアミノ酸の再生率は、Le
u:100%、Arg:87%であった。このことよ
り、この切断試薬系で、Alko resin及びRi
nk amide resinに結合したアミノ酸が定
量的に切断、遊離できることが判明した。
【0042】調製例1 下記式(A)のポリペプチド鎖を持つ保護基保護化ポリ
ペプチド樹脂の調製
【0043】
【化7】 (式中、Arg、Tyr、Cys、Lys、DLysおよびProは前記し
たアミノ酸残基を示し、3位と11位のCys間の実線
はジスルフィド結合をしめす。) 式(A)のポリペプチド鎖を持つ保護基保護化ポリペプ
チド樹脂の調製は、Fmoc型固相合成法を用いて手動
で行った。ペプチド合成用樹脂として、Fmoc−Ar
g(Pmc)−Alko resin(Arg換算で
0.52mmol/g)を使用した。20%ピペリジン
/DMFで15分間処理し、Fmoc基の除去を行っ
た。Fmocアミノ酸の縮合には、DIPCI−HOB
t/DMFを使用した。Fmocアミノ酸及び縮合試薬
等はそれぞれ樹脂に対して2.5当量使用した。以下、
このように合成された物質を便宜上保護基保護化ポリペ
プチド樹脂1と記載する。また、上記式(A)の13位
がNH2となったポリペプチド鎖のアミド体を生成する
保護基保護化ポリペプチド樹脂を、ペプチド合成用樹脂
としてFmoc−Arg(Pmc)−Rink ami
de resin(Arg換算で0.34mmol/
g)を用いて上記と同様のFmoc型固相合成法により
合成した。
【0044】さらに、下記式(B)のポリペプチド鎖を
持つ保護基保護化ポリペプチド樹脂はペプチド合成用樹
脂として切断処理によりアミノ酸アミド或いはペプチド
アミドを遊離するFmoc−PAL(peptide
amide linker)resin(アミノ基換算
で0.38mmol/g)を用いて上記と同様のFmo
c型固相合成法により合成した。このようにして合成さ
れた当該物質を便宜上保護基保護化ポリペプチド樹脂2
と記載する。
【0045】
【化8】 (式中、Arg、Trp、Tyr、Cys、Gly及びLysは前記のアミ
ノ酸残基を示し、3位と11位間、両7位間のCysを
結ぶ実線はジスルフィド結合を示す。) なお、固相合成における各アミノ酸縮合反応は表2に示
す操作条件に従って行った。
【0046】
【表6】
【0047】調製例2 3’−アジド−3’−デオキシチミジン−5’−モノス
クシネート(AZTコハク酸エステル)の調製 3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)(5
34.8mg、2mmol)をTHF(10ml)に溶
解し、4℃で無水コハク酸(200.1mg、2mmo
l)、ついでジメチルアミノピリジン(48.8mg,
0.4mmol)を加え、48時間攪拌した。 更に、
無水コハク酸(400.2mg、4mmol)を追加し
24時間撹拌した。反応液をAcOEt(酢酸エチル:
50ml)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した
後、飽和NaHCO3水溶液を加え分液した。水層にク
エン酸を加えてpH4に調整し、AcOEt(50ml
×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無
水MgSO4で乾燥、MgSO4を濾過し、濾液を減圧留
去し、目的のAZTコハク酸エステルの結晶を得た(5
67.8mg、収率77.3%)。1 H NMR(270MHz、CDCl3)δ1.86
(d,3H)、2.6−2.9(m、6H)、4.11−
4.13(m,1H)、4.23−4.29(dd,1
H)、4.34−4.39(m,1H)、4.82−4.8
8(dd,1H)、5.88−5.93(q,1H)、7.
45(d,1H)、10.68(s,1H)
【0048】調製例3 3’−アジド−3’−デオキシチミジン−5’−モノグ
ルタレート(AZTグルタル酸エステル)の調製 調製例2のAZTコハク酸エステルの調製と同様の反応
条件及び同様の反応操作により、AZT(534.8m
g、2mmol)と無水グルタル酸(228.2mg、
2mmol)を反応させ、同様の処理後、目的のAZT
グルタル酸エステルの結晶を得た(収率80.0%)。1 H NMR(270MHz、CDCl3)δ1.91
(s,3H)、1.96−2.05(m、2H)、2.3
6−2.57(m,6H)、3.98−4.08(m,1
H)、4.24−4.33(m,2H)、4.51−4.5
5(dt,1H)、6.05−6.09(t,1H)、7.
39(s,1H)、10.27(s,1H)
【0049】調製例4 保護基保護化ポリペプチド樹脂からのポリペプチドの調
製 上記調製例1で調製した保護基保護化ポリペプチド樹脂
1(50mg、9.6mmol)に、アニソール(0.
15ml)、TMSCl(0.105ml、10eq)
及びTFA(13ml)を加えて室温下で1時間撹拌し
た。次いで、4℃でDMSO(1.9ml、300e
q)を加えて1時間30分撹拌した。反応後、冷エーテ
ル(50ml)を加えてポリペプチドを析出させ、遠心
分離操作により該ポリペプチドを得た。この粗ポリペプ
チドをエーテル(50ml×3)で洗浄した後、風乾さ
せた。HPLCを用いて精製し、凍結乾燥の後、目的の
上記式(A)のポリペプチドを得た(6.2mg,収率
33%)。以下のイオンスプレーマススペクトル(IS
−MS)の測定はトリプルステージ四重極型質量分析装
置APIIIE型(Perkin−Elmer Scie
x社製)で行った。IS−MS(reconstructed)m/z:F
ound 1974.0(1973.2 Calc. for C86H140N32P18S2)、
[α]26 D=-24.5°(c=0.2, H2O)、10〜40%の30分
間のアセトニトリル濃度勾配、流速1ml/minでのWat
ers μBondasphere 5μC18−10
0Å(3.9×150mm、日本ミリポア製)による分析的H
PLCでの保持時間は14.2分、6N HClによる加水
分解物のアミノ酸分析(カッコ内の数値は理論値)では
Cys未決定(1)、Tyr3.00(3)、Lys及
びD−Lys2.86(3)、Arg5.11(5)、
Pro0.95(1)。上記と同様な反応操作により、
上記式(A)のポリペプチドアミド体(保護基保護化ポ
リペプチド樹脂(Rink amide 樹脂を使用)
からの収率56%(8.4mg))を得た。IS−MS
(reconstructed)m/z:Found 1972.5(1972.1 Calc. for
C86H141N33P17S2)、[α]26 D=-18.8°(c=0.2, H2O)、1
0〜40%の30分間のアセトニトリル濃度勾配、流速
1ml/minでのWaters μBondasphere
5μC18−100Å(3.9×150mm、日本ミリポア
製)による分析的HPLCでの保持時間は14.8分、6N
HClによる加水分解物のアミノ酸分析(カッコ内の
数値は理論値)ではCys未決定(1)、Tyr3.0
0(3)、Lys及びD−Lys2.80(3)、Ar
g5.13(5)、Pro0.88(1)。同様にして
上記式(B)のポリペプチドアミド体(保護基保護化ポ
リペプチド2からの収率43%)を得た。以下便宜上本
方法により得た物質を合成ポリペプチドと記載し、上記
式(A)のポリペプチド鎖を持つ合成ポリペプチド(T
131)を合成ポリペプチド1、上記式(B)のポリペ
プチド鎖を持つ保護基保護化ポリペプチド樹脂2を用い
て上記と同様の方法により調製した合成ポリペプチド
(T22)を合成ポリペプチド2と記載する。
【0050】調製例5 本発明物質(ポリペプチド−AZTコハク酸エステル複
合体)の調製 上記調製例1で調製した保護基保護化ポリペプチド樹脂
1あるいは2のN末端のアミノ酸のα−アミノ基に、上
記調製例2で調製したAZTコハク酸エステル(2.5
eq)のカルボキシル基をDIPCI−HOBt法によ
り縮合した。このようにして得た保護基保護化ポリペプ
チド−AZTコハク酸エステル複合体樹脂(50mg)
を調製例4の合成ポリペプチドの調製法と同様の脱保
護、脱樹脂、ジスルフィド結合形成を行い、同様の単
離、精製法により、目的のポリペプチド−AZTコハク
酸エステル複合体の本発明物質を得た。以下便宜上本調
製方法による本発明物質を本発明物質1と記載し、上記
式(A)のポリペプチド鎖を持つ本発明物質1(AZT-Su
c-T131)を本発明物質11、上記式(B)のポリペプチ
ド鎖を持つ本発明物質1(AZT-Suc-T22)を本発明物質
12と記載する。 本発明物質11:収率29.99%(5.5mg)、I
S−MS(reconstructed)m/z: Found 2323.23(2322.1 C
alc. for C100H155N37O24S2, [α]18 D=-16.7°(c=0.1,1
N AcOH)、10〜50%の30分間のアセトニトリル濃
度勾配、流速1ml/minでのWaters μBonda
sphere 5μC18−100Å(3.9×150mm、日
本ミリポア製)による分析的HPLCでの保持時間は1
7.5分、6N HClによる加水分解物のアミノ酸分
析(カッコ内の数値は理論値)では、Cys未決定
(1)、Tyr3.00(3)、Lys及びD−Lys
3.00(3)、Arg5.37(5)、Pro1.2
4(1)。 本発明物質12:収率2.76%、IS−MS(reconst
ructed)m/z: Found 2834.47(2836.3 Calc. for C123H
179N43O28S4, [α]20 D=47.8°(c=0.01,1N AcOH)
【0051】調製例6 本発明物質(ポリペプチド−AZTグルタル酸エステル
複合体)の調製 上記調製例1で調製した保護基保護化ポリペプチド樹脂
1あるいは2のN末端アミノ酸のα−アミノ基に、上記
調製例3で調製したAZTグルタル酸エステル(2.5
eq)のカルボキシル基をDIPCI−HOBt法によ
り縮合した。このようにして得た保護基保護化ポリペプ
チド樹脂−AZTグルタル酸エステル複合体を調製例4
の合成ポリペプチドの調製と同様の調製法により、目的
のポリペプチド−AZTグルタル酸エステル複合体の本
発明物質を得た。以下便宜上本調製方法による本発明物
質を本発明物質2と記載し、上記式(A)のポリペプチ
ド鎖を持つ本発明物質2(AZT-Glu-T131)を本発明物質
21、上記式(B)のポリペプチド鎖を持つ本発明物質
2(AZT-Glu-T22)を本発明物質22と記載する。 本発明物質21:収率6.27%(2.3mg)、IS
−MS(reconstructed)m/z: Found 2337.73(2336.2 Cal
c. for C101H157N37O24S2, [α]20 D=-38.2°(c=0.3,1N
AcOH)、10〜50%の30分間のアセトニトリル濃度
勾配、流速1ml/minでのWaters μBondas
phere 5μC18−100Å(3.9×150mm、日本
ミリポア製)による分析的HPLCでの保持時間は1
7.4分、6N HClによる加水分解物のアミノ酸分
析(カッコ内の数値は理論値)では、Cys未決定
(1)、Tyr2.92(3)、Lys及びD−Lys
3.00(3)、Arg5.08(5)、Pro1.2
2(1)であった。 本発明物質22:収率8.81%、IS−MS(reconst
ructed)m/z: Found 2849.97(2850.3 Calc. for C121H
181N43O28S4, [α]20 D=21.4°(c=0.1,1N AcOH)
【0052】調製例7 Dendrimer型本発明物質の調製 上記調製例1で作製した保護基保護化ポリペプチド樹脂
1あるいは2のN末端アミノ酸のα−アミノ基にさらに
同様のアミノ酸縮合法(DIPCI−HOBt法等)を
用いて保護アミノ酸であるFmoc−Lys(Fmo
c)を結合した。更に、脱Fmoc基操作及びFmoc
−Lys(Fmoc)の導入を2回繰り返し、該ポリペ
プチドのアミノ末端部にLysが7個導入された樹枝状
の構造をもつLys導入保護基保護化ポリペプチド樹脂
を調製した。以下、調製例1で得た保護基保護化ポリペ
プチド1から調製した該樹脂をLys導入保護基保護化
ポリペプチド樹脂1とし、保護基保護化ポリペプチド2
から調製した該樹脂をLys導入保護基保護化ポリペプ
チド樹脂2と記載する。上記Lys導入保護基保護化ポ
リペプチド樹脂1のFmoc基を除去し、調製例5と同
様にして調製例2で調製したAZTコハク酸エステル
(2.5eq)をDIPCI−HOBt法により縮合し
た。このようにして得たLys導入保護基保護化ポリペ
プチド樹脂−AZTコハク酸エステル複合体を、調製例
4の合成ポリペプチド1の調製法と同様の脱保護、脱樹
脂、ジスルフィド結合形成を行い、同様の単離、精製法
により目的のAZTが8個導入されたdendrime
r型の本発明物質を得た。以下便宜上本調製方法による
本発明物質をdendrimer型本発明物質1と記載
する。 dendrimer型本発明物質1:収率13.18%
(7.3mg)、IS−MS(reconstructed)m/z: Fou
nd 5665.47(5664.5 Calc. for C240H346N86O73S2、[α]
18 D=22.6゜(c=0.1,1N AcOH)、10〜50%の30分間
のアセトニトリル濃度勾配、流速1ml/minでのWate
rs μBondasphere 5μC18−100
Å(3.9×150mm、日本ミリポア製)による分析的HPL
Cでの保持時間は26.5分、6N HClによる加水
分解物のアミノ酸分析(カッコ内の数値は理論値)で
は、Cys未決定(1)、Tyr2.87(3)、Ly
s及びD−Lys10.00(10)、Arg5.42
(5)、Pro1.26(1)。
【0053】上記と同様にして、Lys導入保護基保護
化ポリペプチド樹脂1に調製法3で調製したAZTグル
タル酸エステルを結合し、同様な脱保護、脱樹脂、ジス
ルフィド結合形成、単離、精製を行い目的の本発明物質
を得た。以下、本発明物質をdendrimer型本発
明物質2と記載する。 dendrimer型本発明物質2:収率0.72%、
IS−MS(reconstructed)m/z: Found 5775.22(5780.
3 Calc. for C248H362N86O73S2, [α]20 D=-12.3゜(c=0.
05,1N AcOH) 上記と同様にして、Lys導入保護基保護化ポリペプチ
ド樹脂2に調製例2で調製したAZTコハク酸エステル
を結合した。得られたLys導入保護基保護化ポリペプ
チド−AZTコハク酸エステル複合体樹脂(100m
g)にm−クレゾール(300μl)、1,2−エタン
ジチオール(300μl)、チオアニソール(300μ
l)、TFA(4.8ml)、蒸留水(300μl)を
加えて室温下で2時間撹拌して脱保護、脱樹脂後、調製
例4の合成ポリペプチド1または2の調製操作法に準じ
て処理操作、風乾を行い、得られた粗ペプチド誘導体を
1NAcOH(3ml)に溶解し、超純水で40mlに
希釈した。この溶液に4℃でDMSO(10ml)を加
え、室温下で24時間放置し、ジスルフィド結合を形成
させた。さらにHPLCを用いて単離、精製を行い、凍
結乾燥後、目的のAZTが8個導入されたdendri
mer型の本発明物質を得た。以下、便宜上本調製方法
による本発明物質をdendrimer型本発明物質3
と記載する。但し、ジスルフィド異性体2種が得られた
ので、それぞれ異性体1および2と表記する。
【0054】dendrimer型本発明物質3:ジス
ルフィド異性体の2種の化合物が得られた。 異性体1:収率2.62%、IS−MS(reconstructe
d)m/z: Found 6178.22(6180.7 Calc. for C263H370N92O
77S4, [α]20 D=3.1゜(c=0.1,1N AcOH) 異性体2:収率4.31%、[α]20 D=-15.4°(c=0.1,1N
AcOH) 上記と同様にして、Lys導入保護基保護化ポリペプチ
ド樹脂2に調製例3で調製したAZTグルタル酸エステ
ルを結合し、同様な脱保護、脱樹脂、ジスルフィド結合
形成、単離、精製を行い目的の本発明物質を得た。以
下、本発明物質をdendrimer型本発明物質4と
記載する。 dendrimer型本発明物質4:収率6.20%、
IS−MS(reconstructed)m/z: Found 6292.97(6292.
9 Calc/ for C271H386N92O77S4, [α]20 D=10.3°(c=0.
2,1N AcOH)
【0055】実施例1 本発明物質のgp120及びCD4への親和性の測定 調製例5及び6で得た本発明物質12(AZT-Suc-T22)
及び22(AZT-Glu-T22)のgp120及びCD4への
親和性を表面プラズモン共鳴を利用して測定するバイオ
センサー、BIAcorTM biosensor(Pharmacia Bios
ensorAB製)用いてBiochem. Biophys. Res. Commun.,21
9,555-559(1996)、Biochem. Biopys. Acta.,1298,37-44
(1996)の方法に準じて測定、解析した(図1)。その結
果、本発明物質12のgp120及びCD4に対する親
和定数(Kaff)は、それぞれ2.20×107Mと
3.44×106Mであった。同様に本発明物質22の
gp120及びCD4に対するKaffは、それぞれ
6.05×106M及び1.07×107Mであった。こ
れらの親和定数は、調製例4で得た合成ポリペプチド2
のgp120及びCD4に対するKaff(それぞれ
5.99×106Mと9.90×106M:Biochem. Bio
phys. Res. Commun.,219,555-559(1996)、Biochem. Bio
pys. Acta.,1298,37-44(1996))に匹敵し、本発明物質
12及び22がgp120及びCD4に高い親和性を示
すことが明らかになった。
【0056】実施例2 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する抗ウイルス活
性 上記調製例4で得た合成ポリペプチド1(T131)及び2
(T22)、上記調製例5で得た本発明物質11(AZT-Suc
-T131)、上記調製例7で得たdendrimer型本
発明物質1及びAZTのHIVに対する抗ウイルス活性
を以下の方法に従い試験し評価した。すなわち96穴マ
イクロタイタープレートに、種々の濃度の試験物質と共
にHIV感染MT−4細胞(2.5×104個/well、
感染多重度(MOI):0.001)を感染直後に加え
る。CO2インキュベーター中、37℃で5日間培養し
た後、生存細胞数をMTT法(Pauwel et. al.,J.Viro
l.Methods 20, 309-321(1988))で測定した。抗ウイル
ス活性は、HIV感染による細胞死を50%抑制する濃
度(EC50:50% effective concentration)で表す。
一方、試験物質のMT−4細胞に対する細胞毒性を知る
ために、ウイルス非感染細胞を上記と同様に種々の濃度
の試験物質と共に培養を行った。細胞毒性は試験物質に
よる50%細胞障害濃度(CC50:50% cytotoxic conc
entration)で表す。また、CC50とEC50の概略比
(CC50/EC50)を選択係数(S.I.)として表し
た。抗HIV活性測定の結果を表3に示す。本発明物質
11の抗HIV活性はAZTの抗HIV活性と比較して
2倍であり(EC50値比較)、選択係数も2倍以上であ
り抗HIV活性の明らかな増強を認めた。また既知の抗
HIV活性ポリペプチドである合成ポリペプチド1より
も抗HIV活性は高い。更に、dendrimer型本
発明物質1が最も高い抗HIV活性を示した。
【0057】
【表7】
【0058】実施例3 HIV感染阻害活性 上記調製例4で得た合成ポリペプチド1及び2、上記調
製例4、5、6で得た本発明物質11、22及びden
drimer型本発明物質1、及びAZTの、HIV感
染阻害活性を以下の方法に従い試験し評価した。すなわ
ち、T細胞株指向性HIV−1(NL4−3)及びマク
ロファージ指向性HIV−1(JR−CSF)を用い、
PHA(Phaseolus vulgaris agglutinin)活性化PB
MC(peripheral blood mononuclear cells)へのHI
V−1感染阻害活性能を、HIV−1のp24抗原への
抗体を用いるELISA法によるp24抗原発現抑制試
験により測定した。すなわち種々の濃度の試験物質をH
IV−1感染直後のMT−4細胞に加え、CO2インキュ
ベーター中、37℃で3日間(場合により4日間或いは
7日間)培養した後、培養上澄液中のHIV由来のp2
4抗原量をELISAキット(Cellular Pr
oducts製)で測定した。その結果を表4に示す。
上記調製例4で得た合成ポリペプチド1及び2が本来抗
HIV活性を全く示さないマクロファージ指向性HIV
−1であるJR−CSFに対し、本発明物質はいずれも
AZTと同様に抗HIV活性を示し、マクロファージ指
向性のHIV−1に対しても有効であることが判明し
た。
【0059】
【表8】
【0060】
【発明の効果】本発明物質により、CD4陽性細胞表面
タンパク質及びHIV表面タンパク質への親和性により
抗HIV活性物質を効果的に標的細胞上へ誘導し、高い
抗HIV活性を有する医薬組成物を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明物質12(AZT−Suc-T22)及び2
2(AZT-Glu-T22)のgp120及びCD4への親和性
を表すBIAcore分析図。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 HIV表面タンパク質gp120及び/
    又はHIV宿主標的細胞表面タンパク質CD4に親和性
    を有するポリペプチドに、1又は2種以上の逆転写酵素
    阻害剤及び/又はHIVプロテアーゼ阻害剤が化学的結
    合により結合していることを特徴とする複合体。
  2. 【請求項2】 HIV表面タンパク質gp120及び/
    又はHIV宿主標的細胞表面タンパク質CD4に親和性
    を有するポリペプチドが下記式(1)で表されるポリペ
    プチドであることを特徴とする請求項1記載の複合体。 【化1】 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 A1-A2-Cys-A2-A3-A3-Y-A2-A3-A3-Cys-A4−A5 ・・・・・(1) [式中、A1はH−(A2のアミノ基由来)或いはリジ
    ン、アルギニンおよびオルニチンから選ばれる1個の塩
    基性アミノ酸残基又はこれらのアミノ酸残基から選択さ
    れた同一又は異なるアミノ酸残基少なくとも2個を有す
    るペプチド残基、或いは該塩基性アミノ酸残基若しくは
    ペプチド残基のアミノ末端アミノ酸残基のN−α位の水
    素原子がアシル基若しくは置換チオカルバモイル基で置
    換されているN−αアシル置換アミノ酸残基、N−αア
    シル置換ペプチド残基、N−α置換チオカルバモイル化
    アミノ酸残基またはN−α置換チオカルバモイル化ペプ
    チド残基を示し;A2は独立してチロシン、フェニルア
    ラニンまたはトリプトファン残基を示し;A3は独立し
    てリジンまたはアルギニン残基を示し;A4はリジンお
    よびアルギニンから選ばれるアミノ酸の少なくとも1個
    を有するアミノ酸残基またはペプチド残基を示し;A5
    は−OH(A4のカルボキシル基由来)又は−NH
    2(A4のカルボキシル基の酸アミド由来)を示し;Y
    は下記式(a)で示されるペプチド残基 【化2】 1’ 2’ 3’ 4’ 5’ 6’ −A6-A2-A3-Gly-A7-A6− (a) (式中、A2及びA3は上記(1)式におけると同義で
    あり、 A6は独立してアラニン、バリン、ロイシン、イソロイ
    シン、セリン、システインまたはメチオニン残基を示
    し;A7はチロシン、フェニルアラニン、トリプトファ
    ン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリ
    ン、システインまたはメチオニン残基を示し;Glyは
    グリシン残基を示す。但し、1’位と6’位が共にシス
    テイン残基である場合にはこれらはジスルフィド結合に
    より連結していてもよい。)、またはD−オルニチル−
    プロリン、プロリル−D−オルニチン、プロリル−D−
    リジン、プロリル−D−アルギニン、D−リジル−プロ
    リン、D−アルギニル−プロリン、グリシル−リジン、
    グリシル−アルギニン、オルニチル−グリシン、グリシ
    ル−オルニチン、リジル−グリシン及びアルギニル−グ
    リシンで示される2個のアミノ酸から構成されたジペプ
    チドから選ばれるものであり、且つその構成アミノ酸で
    あるD−リジン、リジン、D−オルニチン又はオルニチ
    ンの側鎖ω−アミノ基の水素原子はアシル基で置換され
    ていてもよいペプチド残基を示し;Cysはシステイン
    残基を示し、3位と11位のシステイン残基はジスルフ
    ィド結合により連結していてもよい]。
  3. 【請求項3】 化学的結合が、上記式(1)で表される
    ポリペプチドのアミノ末端アミノ酸のα及びωアミノ基
    の少なくとも一方と、逆転写酵素阻害剤及び/又はHI
    Vプロテアーゼ阻害剤との、多官能性スペーサーを介し
    た結合であることを特徴とする請求項2記載の複合体。
  4. 【請求項4】 多官能性スペーサーがアミノ基及び水酸
    基の双方に結合することが可能な物質であることを特徴
    とする請求項3記載の複合体。
  5. 【請求項5】 多官能性スペーサーが少なくとも2個の
    カルボキシル基を有する化合物であることを特徴とする
    請求項3又は4記載の複合体。
  6. 【請求項6】 多官能性スペーサーが脂肪族ジカルボン
    酸であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項
    記載の複合体。
  7. 【請求項7】 逆転写酵素阻害剤が、ヌクレオシド系逆
    転写酵素阻害剤であることを特徴とする請求項1〜6の
    いずれか一項記載の複合体。
  8. 【請求項8】 ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤が非天
    然型ヌクレオシド又はヌクレオシドアナローグであるこ
    とを特徴とする請求項7記載の複合体。
  9. 【請求項9】 ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤がピリ
    ミジン塩基、プリン塩基、イミダゾール塩基及びトリア
    ゾール塩基からなる群から選ばれた塩基と、少なくとも
    1個の水酸基を有するフラノース又はそのアシクロ体か
    らなるヌクレオシドもしくはその類縁体であることを特
    徴とする請求項7記載の複合体。
  10. 【請求項10】 ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤が、
    3’−アジド−3’−デオキシチミジンである請求項7
    記載の複合体。
  11. 【請求項11】 HIVプロテアーゼ阻害剤が、HIV
    プロテアーゼの基質遷移状態ミミック化合物であること
    を特徴とする請求項1又は2記載の複合体。
  12. 【請求項12】 HIVプロテアーゼ阻害剤が、Ro
    31−8959、A−77003、KNI−93、KN
    I−102、KNI−174、KNI−227、KNI
    −272、L−735527、SC−52151、VX
    −478、ABT−538、DMP−323及びU−9
    6988から成る物質群より選択される1又は2以上の
    物質である請求項1〜6のいずれか一項記載の複合体。
  13. 【請求項13】 請求項1〜12のいずれか一項記載の
    複合体またはその薬理学的に許容されうる塩を有効成分
    として含有する医薬組成物。
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WO2012138911A2 (en) * 2011-04-05 2012-10-11 The Administrators Of The Tulane Educational Fund Conjugates of anti-hiv drugs and somatostatin analogs
WO2012138911A3 (en) * 2011-04-05 2012-12-27 The Administrators Of The Tulane Educational Fund Conjugates of anti-hiv drugs and somatostatin analogs

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