JPWO2018110567A1 - 窒化ケイ素粉末、多結晶シリコンインゴット用離型剤及び多結晶シリコンインゴットの製造方法 - Google Patents

窒化ケイ素粉末、多結晶シリコンインゴット用離型剤及び多結晶シリコンインゴットの製造方法 Download PDF

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Abstract

一方向凝固時のシリコンの溶融温度を高くした場合でも、あるいはシリコンの溶融時間を長くした場合でも、多結晶シリコンインゴットの離型性が良好な、多結晶シリコンインゴットの離型剤として好適に使用することができる窒化ケイ素粉末を提供することを目的とする。比表面積が2m2/g以上13m2/g以下であり、β型窒化ケイ素の割合が50質量%以上であり、β型窒化ケイ素の結晶子径DCが150nm以上であり、比表面積相当径DBETとDCとの比DBET/DC(nm/nm)が3以下であり、粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が二つのピークを有し、該ピークのピークトップが、0.5〜2μmの範囲と、6〜30μmの範囲にあり、前記ピークトップの頻度の比が0.1〜1であることを特徴とする窒化ケイ素粉末を提供する。

Description

本発明は、鋳型への密着性と離型性が良好な離型層を鋳型に形成し得る窒化ケイ素粉末に関し、特に多結晶シリコンインゴットの離型剤として好適な窒化ケイ素粉末に関する。
太陽電池に用いられる多結晶シリコン基板は、通常、縦型ブリッジマン炉を用いて、溶融シリコンを一方向凝固させることにより製造される多結晶シリコンインゴットより採取される。多結晶シリコン基板においては高性能化と低コスト化が要求されており、その要求に応えるには、溶融シリコンの一方向凝固時の多結晶シリコンインゴットへの不純物混入の抑制と、多結晶シリコンインゴットの歩留まりの向上が重要である。縦型ブリッジマン法による溶融シリコンの一方向凝固においては、石英製などの鋳型が用いられるが、多結晶シリコンインゴットの歩留まりを高くするために、鋳型には多結晶シリコンインゴットの離型性が良いことが求められ、窒化ケイ素粉末を含む離型剤が内壁(溶融シリコンと接触する面)に塗布された鋳型が一般的に用いられている。
縦型ブリッジマン炉は、その構造上、鋳型底面より下方に向かって熱が逃げるため、鋳型には上下方向に大きな温度勾配が生じ、鋳型上部の温度が相対的に高くなる。近年太陽電池基板向けの多結晶シリコンインゴットはますます大型化する傾向にあり、鋳型底部のシリコン(融点;1414℃)が十分溶融するまで温度を上げると、ブリッジマン炉の構造によっては鋳型上部の温度は1500℃以上のような高温になることもある。このような場合、温度が高い鋳型上部では、多結晶シリコンインゴットの離型性が悪くなる、また離型層が鋳型から剥がれて多結晶シリコンインゴットに付着する、などの問題が生じることがある。したがって、多結晶シリコンインゴットの離型層には、高い温度、例えば1500℃以上で一方向凝固を行っても、多結晶シリコンインゴットの離型性や、離型層の鋳型への密着性が良いことが求められる。
このような背景から、太陽電池の基板に適用可能な多結晶シリコンインゴットの歩留まりを向上させるために一方向凝固時のシリコンの溶融温度を高くしても、多結晶シリコンインゴットの離型性と、鋳型への密着性が良好な離型層を形成し得る窒化ケイ素粉末の開発が望まれている。また、長尺の多結晶シリコンインゴットを得るために、上下方向に寸法が大きい鋳型を用いると、鋳型上部は特に長時間高温に曝されることになるので、一方向凝固時のシリコンの溶融時間が長くても、多結晶シリコンインゴットの離型性と、鋳型への密着性が良好な離型層を形成し得る窒化ケイ素粉末の開発が望まれている。
例えば特許文献1には、レーザ回折散乱法による90%粒子径が3.0〜10μm、α相の比率が20〜60%、鉄の含有量が100ppm以下である窒化ケイ素粉末であり、粒度分布が2つの極大値を有し、ひとつが0.2μm以上1.0μm未満(極大値1)、もうひとつが1.0μm以上8.0μm以下(極大値2)にあり、かつ極大値1と2の各頻度の比率{(極大値2の頻度)/(極大値1の頻度)}が1.0〜5.0、極大値1と2の間隔が0.8〜7.8μmである窒化ケイ素粉末が、多結晶シリコンインゴットの離型剤として用いられた場合に、塗布時の作業性が改善され、離型剤の剥がれが抑制されることで多結晶シリコンインゴットへの不純物混入が低減できることが記載されている。
また特許文献2には、多結晶シリコンインゴットの凝固に用いる坩堝に形成される離型層で、1μm以下の粒子と、2μm〜50μmの範囲、好ましくは2μm〜5μmの範囲の粒子とを含む窒化ケイ素系の離型層が、強度があり(はがれや薄片になって落ちるのを避けることができ)、機械的な耐磨耗性に優れることが記載されている。
特開2014−9111号公報 特表2009−510387号公報
特許文献1には、α相の比率が特定の範囲にある場合に、粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が二つのピークを有し、そのピークのピークトップが特定の範囲にある窒化ケイ素粉末が、離型剤の剥がれが抑制され、多結晶シリコンインゴットへの不純物混入が低減できる効果は記載されているものの、粒子径が大きい方のピークトップが8.0μmより大きくなるとその効果がないことも示されている。また、窒化ケイ素の結晶子径や、そのBET径との比などについては記載されておらず、シリコンの溶融温度を高くしたり、あるいはシリコンの溶融時間を長くしたりした場合の多結晶シリコンインゴットの離型性や離型層の鋳型への密着性についても記載されていない。
また特許文献2には、1μm以下の粒子と、それより大きい2μm〜50μmの粒子とを含む場合に、剥がれにくい離型層になることが記載されているものの、大きい粒子の範囲は、小さい粒子より大きい広い範囲を記載したに過ぎず、具体的に二種類の大きさの粒子を併用した場合の効果は示されていないし、大きい粒子の好ましい範囲としても2μm〜5μmとされているに過ぎない。また、窒化ケイ素の結晶子径や、そのBET径との比などについては記載されておらず、シリコンの溶融温度を高くしたり、あるいはシリコンの溶融時間を長くしたりした場合の多結晶シリコンインゴットの離型性や離型層の鋳型への密着性についても記載されていない。
そこで本発明は、一方向凝固時のシリコンの溶融温度を高くした場合でも、あるいはシリコンの溶融時間を長くした場合でも、多結晶シリコンインゴットの離型性が良好な、多結晶シリコンインゴットの離型剤として好適に使用することができる窒化ケイ素粉末を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ね、特定の比表面積、特定のβ型窒化ケイ素の割合、特定の結晶子径およびそれと比表面積相当径との比を有し、特定の粒度分布、特に、頻度分布曲線が二つのピークを有し、大きい方のピークのピークトップが大きい範囲にある窒化ケイ素粉末を用いて多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型の離型層を形成すると、一方向凝固時のシリコンの溶融温度を高くしても、多結晶シリコンインゴットの離型性、および離型層の鋳型への密着性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の事項に関する。
(1) BET法により測定される比表面積が2m/g以上13m/g以下であり、β型窒化ケイ素の割合が50質量%以上であり、β型窒化ケイ素の粉末X線回折パターンよりWilliamson−Hall式を用いて算出されるβ型窒化ケイ素の結晶子径をDとしたときに、Dが150nm以上であり、前記比表面積より算出される比表面積相当径をDBETとしたときに、DBET/D(nm/nm)が3以下であり、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が、二つのピークを有し、該ピークのピークトップが、0.5〜2μmの範囲と、6〜30μmの範囲にあり、前記ピークトップの頻度の比(粒子径0.5〜2μmの範囲のピークトップの頻度/粒子径6〜30μmの範囲のピークトップの頻度)が0.1〜1であることを特徴とする窒化ケイ素粉末。
(2) β型窒化ケイ素の粉末X線回折パターンよりWilliamson−Hall式を用いて算出されるβ型窒化ケイ素の結晶歪が1.5×10−4以下であることを特徴とする上記(1)の窒化ケイ素粉末。
(3) 前記ピークトップが、0.5〜2μmの範囲と、9〜30μmの範囲にあることを特徴とする上記(1)または(2)の窒化ケイ素粉末。
(4) β型窒化ケイ素の割合が70質量%以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれかの窒化ケイ素粉末。
(5) 前記比表面積が2m/g以上10m/g以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれかの窒化ケイ素粉末。
(6) Feの含有割合が100ppm以下であり、Alの含有割合が100ppm以下であり、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合の合計が100ppm以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)いずれかの窒化ケイ素粉末。
(7) 上記(1)〜(6)いずれかの窒化ケイ素粉末を含む多結晶シリコンインゴット用離型剤。
(8) 鋳型内に収容された溶融シリコンを凝固させる多結晶シリコンインゴットの製造方法であって、前記鋳型として、前記溶融シリコンとの接触面に上記(1)〜(6)いずれか窒化ケイ素粉末が塗布された鋳型を用いることを特徴とするシリコンインゴットの製造方法。
本発明の窒化ケイ素粉末によれば、一方向凝固時のシリコンの溶融温度を高くしても、あるいはシリコンの溶融時間を長くしても、多結晶シリコンインゴットの離型性と、離型層の鋳型への密着性を向上させることができる、多結晶シリコンインゴットの離型剤として好適な窒化ケイ素粉末を提供することができる。
実施例1〜11および比較例1〜3、及び比較例6〜13の窒化ケイ素粉末の製造に用いた燃焼合成反応装置の模式図である。
本発明の窒化ケイ素粉末の実施形態について詳しく説明する。
(窒化ケイ素粉末)
本発明の窒化ケイ素粉末は、BET法により測定される比表面積が2m/g以上13m/g以下であり、β型窒化ケイ素の割合が50質量%以上であり、β型窒化ケイ素の粉末X線回折パターンよりWilliamson−Hall式を用いて算出されるβ型窒化ケイ素の結晶子径をDとしたときに、Dが150nm以上であり、前記比表面積より算出される比表面積相当径をDBETとしたときに、DBET/D(nm/nm)が3以下であり、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が、二つのピークを有し、該ピークのピークトップが、0.5〜2μmの範囲と、6〜30μmの範囲にあり、(粒子径0.5〜2μmの範囲のピークトップの頻度/粒子径6〜30μmの範囲のピークトップの頻度)が0.1〜1であることを特徴とする。前記ピークトップの頻度の比は、1.0未満、0.95以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下であってもよい。
本発明の窒化ケイ素粉末は、BET法により測定される比表面積が2m/g以上13m/g以下である。比表面積がこの範囲であれば、鋳型への密着性が良好な離型層を形成することができる。この観点から、比表面積は2m/g以上10m/g以下であることがさらに好ましい。窒化ケイ素粉末のBET法により測定される比表面積は、8m/g以下、6m/g以下、4m/g以下であってもよい。
本発明の窒化ケイ素粉末は、β型窒化ケイ素の割合が50質量%以上である。β型窒化ケイ素の割合がこの範囲であれば、多結晶シリコンインゴットの離型性も、鋳型への密着性も良好な離型層を形成することができる。この観点から、β型窒化ケイ素の割合は70質量%より大きいことがさらに好ましい。β型窒化ケイ素の割合は、60質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であってもよく、100質量%であることもできる。
窒化ケイ素以外の成分は3質量%未満、さらには1質量%未満、特に0.1質量%未満が好ましい。窒化ケイ素以外の成分が存在すると、本願発明のような一方向凝時のシリコンの溶融温度を高くした場合でも、あるいはシリコンの溶融時間を長くした場合でも、多結晶シリコンインゴットの良好な離型性が得られなくなる恐れがある。
β型窒化ケイ素の粉末X線回折パターンよりWilliamson−Hall式を用いて算出されるβ型窒化ケイ素の結晶子径をDとしたとき、本発明の窒化ケイ素粉末は、Dが150nm以上である。Dがこの範囲であれば、シリコンの溶融温度を高くしたり、溶融時間を長くしたりしても、多結晶シリコンインゴットの離型性も、鋳型への密着性も良好な離型層を形成することができる。Dを150nm以上とすることで、例えば1500℃以上の高温で溶融シリコンと長時間接触しても、本発明の窒化ケイ素粉末は結晶の構造的安定性を維持できるものと推察される。この観点から、Dは300nm以上であることが好ましく、500nm以上であることがさらに好ましい。Dは、180nm以上、200nm以上、250nm以上、400nm以上であってもよい。
本発明の窒化ケイ素粉末は、前記比表面積より算出される比表面積相当径をDBETとしたときに、DBET/D(nm/nm)が3以下であることが好ましい。DBET/D(nm/nm)がこの範囲であれば、シリコンの溶融温度をより高くしても、多結晶シリコンインゴットの離型性も、鋳型への密着性も良好な離型層を形成することができる。その理由は定かではないが、窒化ケイ素粉末を構成する窒化ケイ素の一粒子中の結晶子の界面の面積が小さい方が、高温で溶融シリコンと長時間接触した場合の、窒化ケイ素の結晶の構造的安定性をより高めるのではないかと推察される。DBET/D(nm/nm)は、2以下、1.8以下、1.5以下であることも可能である。
本発明の窒化ケイ素粉末は、レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が、二つのピークを有し、該ピークのピークトップが、0.5〜2μmの範囲と、6〜30μmの範囲にあり、前記ピークトップの頻度の比(粒子径0.5〜2μmの範囲のピークトップの頻度/粒子径6〜30μmの範囲のピークトップの頻度)が0.1〜1である。前記頻度分布曲線が二つのピークを有し、二つの前記ピークトップが各々前記範囲にあり、その頻度の比が前記範囲にあれば、離型層が緻密になり、多結晶シリコンインゴットの離型性も、離型層の鋳型への密着性も向上する。
二つのピークトップのうち、ピークトップが0.5〜2μmの範囲の粒子は、窒化ケイ素粒子同士の密着性と、窒化ケイ素粒子と鋳型の密着性を高める効果と、緻密な離型層を形成する効果を持つ。よって、ピークトップが0.5〜2μmの範囲であれば、離型性が良好な離型層を形成することができる。一方、ピークトップが6〜30μmの範囲の粒子は、離型層の耐熱性を高める効果を持つ。よって、ピークトップが6〜30μmの範囲であれば、1500℃以上の高温でシリコンを溶融させても、離型層の剥れがなく、良好な離型層を形成することができる。粒子径が小さい方のピークトップは1.5μm以下、1.0μm以下、0.9μm以下であってもよい。粒子径が大きい方のピークトップは、9μm以上、10μm以上、11μm以上、13μm以上、15μm以上であってもよく、あるいは25μm以下、20μm以下であってもよい。ここで、粒径が小さい方のピークトップの範囲と、粒径が大きい方のピークトップの範囲とは、それぞれについて上記した各種の範囲の任意の組合せであることができる。また、前記ピークトップの頻度の比(粒子径0.5〜2μmの範囲のピークトップの頻度/粒子径6〜30μmの範囲のピークトップの頻度)が0.1〜1であれば、それぞれの粒子の効果を最大限にすることが出来、窒化ケイ素粒子同士の密着性も、窒化ケイ素粒子と鋳型の密着性も良く、また緻密な離型層を形成できるので、多結晶シリコンインゴットの離型性が良好な離型層を形成することができる。前記ピークトップの頻度の比(粒子径0.5〜2μmの範囲のピークトップの頻度/粒子径6〜30μmの範囲のピークトップの頻度)は、1.0未満、0.95以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下であってもよい。粒径が小さい方のピークトップは0.6μm〜1.5μmの範囲であることもでき、また粒径が大きい方のピークトップは11μm〜29μmの範囲であることもできる。
本発明の窒化ケイ素粉末は、β型窒化ケイ素の粉末X線回折パターンよりWilliamson−Hall式を用いて算出されるβ型窒化ケイ素の結晶歪が1.5×10−4以下であることが好ましい。β型窒化ケイ素の結晶歪がこの範囲であれば、シリコンの溶融温度をより高くしても、多結晶シリコンインゴットの離型性も、鋳型への密着性も良好な離型層を形成することができる。前記結晶歪を1.5×10−4以下とすることで、より高温で溶融シリコンと長時間接触しても、本発明の窒化ケイ素粉末は結晶の構造的安定性を維持できるものと推察される。この観点から、前記結晶歪は1.2×10−4以下であることがさらに好ましく、1.0×10−4以下であることが特に好ましい。β型窒化ケイ素の結晶歪は1.5×10−4以下、1.4×10−4以下、1.2×10−4以下、1.0×10−4以下、0.8×10−4以下、0.7×10−4以下であることができる。
本発明の窒化ケイ素粉末は、Feの含有割合が100ppm以下である。Feの含有割合がこの範囲であれば、多結晶シリコンインゴットへのFeの混入を抑制することができるので、太陽電池用途に適用可能な多結晶シリコンインゴットの歩留まりが高くなる。Feの含有割合は50ppm以下、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。また、本発明の窒化ケイ素粉末は、Alの含有割合が100ppm以下である。Alの含有割合がこの範囲であれば、多結晶シリコンインゴットへのAlの混入を抑制することができるので、太陽電池用途に適用可能な多結晶シリコンインゴットの歩留まりが高くなる。Alの含有割合は50ppm以下、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。また、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合の合計が100ppm以下である。FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合がこの範囲であれば、多結晶シリコンインゴットへのFeおよびAl以外の金属不純物の混入を抑制することができるので、太陽電池用途に適用可能な多結晶シリコンインゴットの歩留まりが高くなる。FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合は50ppm以下、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。
(多結晶シリコンインゴット用離型剤)
本発明の多結晶シリコンインゴット用離型剤は、本発明の窒化ケイ素粉末を含む。本発明の多結晶シリコンインゴット用離型剤は、本発明の窒化ケイ素粉末が主成分であれば良く、窒化ケイ素以外の成分を含んでいても良いが、本発明の窒化ケイ素粉末のみからなっていても良い。
(多結晶シリコンインゴットの製造方法)
本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法を以下に説明する。本発明の多結晶シリコンインゴットの製造方法は、鋳型内に収容された溶融シリコンを凝固(特に一方向凝固)させる多結晶シリコンインゴットの製造方法であって、前記鋳型として、前記溶融シリコンとの接触面に本発明の窒化ケイ素粉末が塗布された鋳型を用いることを特徴とする。
(窒化ケイ素粉末の製造方法)
本発明の窒化ケイ素粉末の製造方法の一例を以下に説明する。本発明の窒化ケイ素粉末は、例えば、シリコンの燃焼反応に伴う自己発熱および伝播現象を利用した燃焼合成法により窒化ケイ素を合成する窒化ケイ素の燃焼合成プロセスにおいて、特定の製造条件を用い、具体的には、原料のシリコン粉末に希釈剤として窒化ケイ素粉末を特定の割合で混合し、原料のシリコン粉末と希釈剤として窒化ケイ素粉末の金属不純物の含有割合が少なく、シリコン粉末と窒化ケイ素粉末との混合物の充填密度を小さくして燃焼反応を行って圧壊強度が小さい燃焼生成物を作製し、得られた圧壊強度が小さい燃焼生成物を、粉砕エネルギーが小さく金属不純物が混入し難い方法を用い且つ特定の粉砕条件に調整して粉砕することによって、金属不純物の含有割合が少なく、β型窒化ケイ素の含有割合が大きく、本発明で特定する比表面積及び粒径分布を有し、結晶子径が大きく結晶歪が小さい等の特徴を有する窒化ケイ素粉末を製造することができる。以下、その製造方法の一例を具体的に説明する。
<混合原料粉末の調製工程>
はじめに、シリコン粉末と、希釈剤の窒化ケイ素粉末とを混合して、混合原料粉末を調製する。燃焼合成反応は1800℃以上の高温となるため、燃焼反応する部分でシリコンの溶融・溶着が起こることがある。これを抑制する目的で、燃焼反応の自己伝播を妨げない範囲で、原料粉末に希釈剤として窒化ケイ素粉末を添加することが好ましい。希釈剤の添加率は、通常、10〜50質量%(シリコン:窒化ケイ素の質量比が90:10〜50:50)、さらには15〜40質量%である。また、燃焼合成反応で得られる燃焼生成物のβ型窒化ケイ素の割合を調整する上で、NHClやNaClなどを添加しても良い。これらの添加物は顕熱、潜熱および吸熱反応により反応温度を下げる効果がある。ここで、得られる混合原料粉末における、Feの含有割合、Alの含有割合、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合は、それぞれ100ppm以下、さらには50ppμm以下、10ppm以下とすることが好ましい。したがって、シリコン粉末にも、希釈剤の窒化ケイ素粉末にも、金属不純物の含有割合が少ない高純度な粉末を用いることが好ましい。また、原料粉末の混合に用いる混合容器の内面と混合メディアなどの、原料粉末と接触する箇所は、AlおよびFeなどの含有割合が少ない非金属製の素材であることが好ましい。原料粉末の混合方法は特に制限されないが、例えばボールミル混合を採用する場合は、混合容器の内面は樹脂製であることが好ましく、混合メディアの外面は窒化ケイ素製であることが好ましい。また、混合原料粉末のかさ密度を0.5g/cm未満とすることが好ましい。混合原料粉末のかさ密度を0.5g/cm未満にするには、かさ密度が0.45g/cm以下のシリコン粉末を原料粉末として用いることが好ましい。混合原料粉末のかさ密度が0.5g/cm未満ならば、後述する<燃焼合成反応工程>にて得られる塊状の燃焼生成物の圧壊強度を4MPa以下にすることが容易である。
<燃焼合成反応工程>
次いで、得られた混合原料粉末を窒素含有雰囲気にて燃焼させて、窒化ケイ素からなる塊状の燃焼生成物を作製する。例えば、混合原料粉末を黒鉛製などの容器に着火剤と一緒に収容し、燃焼合成反応装置内で、着火剤に着火し、着火剤の窒化燃焼熱によって混合原料粉末中のシリコンの窒化反応を開始させ、同反応をシリコン全体に自己伝播させて燃焼合成反応を完了させ、窒化ケイ素からなる塊状の燃焼生成物を得る。
ここで、得られる燃焼生成物は、その圧壊強度が4MPa以下であることが好ましい。燃焼生成物の圧壊強度が4MPa以下ならば、後述する<燃焼生成物の粉砕・分級工程>にて、金属不純物の混入が多くなるような、また窒化ケイ素粉末の結晶性が低下するような粉砕エネルギーの大きい粉砕を行わなくても、本発明にて特定する比表面積または二つのピークトップを有する粒度分布の窒化ケイ素粉末を得ることが容易になる。
<燃焼生成物の粉砕・分級工程>
次いで、得られた塊状の燃焼生成物を粗粉砕する。粗粉砕の粉砕手段に特に制限はないが、粉砕メディアとして、AlおよびFeなどの含有割合が少ない硬質な非金属製の素材を用いることが好ましく、窒化ケイ素製の粉砕メディアを用いることがさらに好ましい。燃焼生成物が塊状であることから、ロールクラッシャーによる粉砕が効率的であり、ロールクラッシャーとしては、窒化ケイ素などのセラミックス製のロールを供えていることが好ましい。
以上のような粗粉砕によって得られた窒化ケイ素粉末を篩通して、特に粗大な粒子などを除去する。篩通しに用いる篩は、AlおよびFeなどの含有割合が少ない非金属製であることが好ましく、樹脂製であることが好ましい。
次に、粗粉砕によって得られた窒化ケイ素粉末を微粉砕する。微粉砕の手段に特に制限はないが、振動ミルによる粉砕が好ましい。振動ミルによる粉砕を行う場合は、振動ミル用のポットの内面と混合メディアなどの、原料粉末と接触する箇所は、AlおよびFeなどの含有割合が少ない非金属製の素材であることが好ましい。ポットの内面は樹脂製であることが好ましく、混合メディアは窒化ケイ素製であることが好ましい。振動ミルの条件(振幅、振動数、粉砕時間)を適宜調節することで、比表面積、粒度分布測定により得られる頻度分布曲線における二つのピークのピークトップ、およびそれらの頻度の比を調節することができる。比較的破壊エネルギーが小さくなる条件、例えば振動数や粉砕時間が短い条件で微粉砕を行うことが好ましい。
以上のように、本発明の窒化ケイ素粉末は、シリコン粉末と、希釈剤の窒化ケイ素粉末とを混合し、得られた混合原料粉末を容器に充填して燃焼反応に伴う自己発熱および伝播現象を利用した燃焼合成法により前記シリコン粉末を燃焼させ、得られた燃焼生成物を粉砕する窒化ケイ素粉末の製造方法において、前記混合原料粉末は、Feの含有割合、Alの含有割合、およびFeとAl以外の金属不純物の含有割合が、それぞれ100ppm以下で、かさ密度が0.5g/cm未満である窒化ケイ素粉末の製造方法により製造されることが好ましく、さらに、前記燃焼生成物の圧壊強度が4MPa以下であることが好ましく、特に、前記燃焼生成物の粉砕に窒化ケイ素製の粉砕メディアを用いることが好ましい。
<平均粒径が異なる粉末を混合する工程>
本発明の窒化ケイ素粉末は、燃焼生成物を粗粉砕し、比較的破壊エネルギーが小さい条件で微粉砕して得ることができるが、平均粒径が異なる窒化ケイ素粉末を混合するなどして得ることもできる。例えば、燃焼生成物を粗粉砕し分級して得られた窒化ケイ素粉末と、微粉砕まで行った窒化ケイ素粉末、あるいは微粉砕後に分級して粒度を調節した窒化ケイ素粉末とを混合するなどして得ることもできる。この場合、粗粉砕後の分級の条件、微粉砕の条件と微粉砕後の分級の条件、混合比率などを適宜調節することで、比表面積、粒度分布測定により得られる頻度分布曲線における二つのピークのピークトップ、およびそれらの頻度の比を調節することができる。また、燃焼生成物を粗粉砕し分級して得られた窒化ケイ素粉末、微粉砕後に分級して粒度を調節した窒化ケイ素粉末、あるいは微粉砕後に分級して粒度を調節した窒化ケイ素粉末と、公知の窒化ケイ素粉末とを混合することで、比表面積、ピークトップおよびそれらの頻度の比を調節することもできる。
以下に具体例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の窒化ケイ素粉末、原料粉末として用いたシリコン粉末、原料混合粉末および燃焼生成物の物性測定と、本発明の窒化ケイ素粉末を鋳型の離型剤に適用した場合の多結晶シリコンインゴットの離型性の評価は、以下の方法により行った。
(窒化ケイ素粉末の比表面積の測定方法、および比表面積相当径DBETの算出方法)
本発明の窒化ケイ素粉末の比表面積は、Mountech社製Macsorbを用いて、窒素ガス吸着によるBET1点法にて測定して求めた。
また、比表面積相当径DBETは、粉末を構成する全ての粒子が同一径の球と仮定して、下記の式(1)より求めた。
BET=6/(ρ×S)・・・(1)
ここで、ρは窒化ケイ素の真密度(α-Siの真密度3186kg/m、β-Siの真密度3192kg/mと、α相とβ相との比により平均真密度を算出し、真密度とした。)、Sは比表面積(m/g)である。
(窒化ケイ素粉末のβ型窒化ケイ素の割合の測定方法)
本発明の窒化ケイ素粉末のβ型窒化ケイ素粉末の割合は以下のようにして算出した。本発明の窒化ケイ素粉末について、銅の管球からなるターゲットおよびグラファイトモノクロームメーターを使用して、回折角(2θ)15〜80°の範囲を0.02°刻みでX線検出器をステップスキャンする定時ステップ走査法にてX線回折測定を行った。窒化ケイ素粉末が窒化ケイ素以外の成分を含む場合には、それらの成分のピークをそれらの成分の標準試料の対応するピークと対比することでそれらの成分の割合を求めることができる。以下のすべての実施例及び比較例では、得られた粉末X線回折パターンより、本発明の窒化ケイ素粉末がα型窒化ケイ素とβ型窒化ケイ素のみから構成されていることを確認した。その上で、本発明の窒化ケイ素粉末のβ型窒化ケイ素の割合は、G.P.Gazzara and D.P.Messier,“Determination of Phase Content of Si3N4 by X−ray Diffraction Analysis”,Am. Ceram.Soc.Bull.,56[9]777−80(1977)に記載されたGazzara & Messierの方法により、算出した。
(β型窒化ケイ素の結晶子径Dおよび結晶歪の測定方法)
本発明の窒化ケイ素粉末のβ型窒化ケイ素の結晶子径Dおよび結晶歪は、次のようにして測定した。本発明の窒化ケイ素粉末について、銅の管球からなるターゲットおよびグラファイトモノクロームメーターを使用して、回折角(2θ)15〜80°の範囲を0.02°刻みでX線検出器をステップスキャンする定時ステップ走査法にてX線回折測定を行った。得られた本発明の窒化ケイ素粉末のX線回折パターンより、β型窒化ケイ素の(101)、(110)、(200)、(201)および(210)面のそれぞれの積分幅を算出し、前記積分幅を下記式(1)のWilliamson−Hall式に代入した。下記の式(2)における「2sinθ/λ」をx軸、「βcosθ/λ」をy軸としてプロットし、最小二乗法を用いて、このWilliamson−Hall式より得られる直線の切片および傾きを求めた。そして、前記切片よりβ型窒化ケイ素の結晶子径Dcを、また、前記傾きよりβ型窒化ケイ素の結晶歪を算出した。
βcosθ/λ=η×(2sinθ/λ)+(1/Dc)・・・(2)
(β;積分幅(rad)、θ;ブラッグ角(rad)、η;結晶歪、λ;X線源の波長(nm)、Dc;結晶子径(nm))
(窒化ケイ素粉末の粒度分布、およびピークトップの測定方法)
本発明の窒化ケイ素粉末、本発明で原料として使用したシリコン粉末の粒度分布は、以下のようにして測定した。前記粉末を、ヘキサメタリン酸ソーダ0.2質量%水溶液中に投入して、直径26mmのステンレス製センターコーンを取り付けた超音波ホモジナイザーを用いて300Wの出力で6分間分散処理して希薄溶液を調製し、測定試料とした。レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラックMT3000)を用いて測定試料の粒度分布を測定し、体積基準の粒度分布曲線とそのデータを得た。得られた粒度分布曲線とそのデータより、本発明の窒化ケイ素粉末のピークトップの粒子径と、頻度(体積%)を求めた。
(窒化ケイ素粉末、シリコン粉末および原料混合粉末のFe、AlおよびFeとAl以外の金属不純物の含有割合の測定方法)
本発明の窒化ケイ素粉末、本発明で原料として使用したシリコン粉末、および原料混合粉末のFeおよびAl、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合は、以下のようにして測定した。フッ酸と硝酸とを混合した液を収容した容器に、上記粉末を投入し密栓して、同容器にマイクロ波を照射して加熱し、窒化ケイ素またはシリコンを完全に分解し、得られた分解液を超純水で定容して検液とした。エスアイアイ・ナノテクノロジー社製ICP−AES(SPS5100型)を用いて、検出された波長とその発光強度から検液中のFe、AlおよびFeとAl以外の金属不純物を定量し、Fe、AlおよびFeとAl以外の金属不純物の含有割合を算出した。
(混合原料粉末のかさ密度の測定方法)
本発明で得られる混合原料粉末のかさ密度は、JIS R1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に準拠した方法により求めた。
(燃焼生成物の圧壊強度の測定方法)
本発明で得られる燃焼生成物の圧壊強度は、以下のようにして測定した。燃焼生成物より、一辺が10mmの立方体を5個切り出して測定試料とした。手動式圧壊強度測定装置(アイコーエンジニアリング株式会社製、MODEL-1334型)を用いて前記測定試料の圧壊強度を測定した。台座に載置した測定試料に荷重を印加して圧縮試験を行い、測定された最大荷重より圧壊強度を算出した。本発明で得られる燃焼生成物の圧壊強度は、5個の測定試料の圧壊強度の平均値とした。
(多結晶シリコンインゴットの離型性の評価方法)
本発明においては、本発明の窒化ケイ素粉末を離型剤として塗布して作製した鋳型を用いて多結晶シリコンインゴットの一方向凝固実験を行い、多結晶シリコンインゴットを鋳型から離型して、以下のようにして本発明の窒化ケイ素粉末を評価した。多結晶シリコンインゴットが鋳型から離型でき、多結晶シリコンインゴットに離型層の付着が確認されない場合を○、多結晶シリコンインゴットが鋳型から離型できるものの、多結晶シリコンインゴットに離型層の付着が確認される場合を△、多結晶シリコンインゴットが鋳型から離型できないか、離型できても多結晶シリコンインゴットに割れまたは欠けが生じる場合を×とした。
(多結晶シリコンインゴットに含まれる金属不純物の測定方法)
一方向凝固実験にて得られた多結晶シリコンインゴットに含まれるFe、AlおよびFeとAl以外の金属不純物を、以下のようにして測定した。得られた多結晶シリコンインゴットを、切断面が凝固方向に対して平行になるように二分割し、その切断面の中心軸上で、底から1cm上の位置を測定位置として、飛行時間型二次イオン質量分析法(アルバック・ファイ社製(TRIFT V nano TOF型))にて表面分析を行った。Fe、AlおよびFeとAl以外の金属不純物の二次質量スペクトルの規格化二次イオン強度が1×10−4以上の場合を検出、1×10−4未満の場合を未検出とした。ここで、規格化二次イオン強度とは、各スペクトルの二次イオン強度を、検出された全スペクトルの二次イオン強度で除したものである。
(実施例1−1)
D50が4.0μm、かさ密度が0.40g/cmで、Feの含有割合が3ppm、Alの含有割合が4ppm、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合が3ppmのシリコン粉末に、希釈剤として、窒化ケイ素粉末(宇部興産株式会社製、製品名「SN−E10」(Feの含有割合;9ppm、Alの含有割合;2ppm、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合;4ppm))を、窒化ケイ素の添加率が20質量%(シリコン:窒化ケイ素の質量比が80:20)になるように添加して原料粉末とした。前記原料粉末を、窒化ケイ素製ボールが充填された、内壁面がウレタンでライニングされたナイロン製のポットに収容して、バッチ式振動ミルを用いて、振動数1200cpm、振幅8mmで0.5時間混合し、混合原料粉末を得た。
図1に、本実施例にてシリコンの燃焼合成反応に用いた燃焼合成反応装置1を示す。前記原料粉末を混合して得られた混合原料粉末2を、底面が200×400mmで、深さが30mmで、厚みが10mmの角サヤ状の黒鉛製容器3に収容した。このとき混合原料粉末のかさ密度は0.45g/cmであった。チタン粉末とカーボン粉末とをチタン:カーボンが4:1の質量比で混合し成形して、燃焼合成反応に用いる着火剤4を調製し、着火剤4を混合原料粉末2の上に載置した。次いで、混合原料粉末2および着火剤4が収容された黒鉛製容器3を、着火剤加熱用のカーボンヒータ5を備えた耐圧性容器6内に、着火剤4の直上にカーボンヒータ5が位置するように収容した。
耐圧性容器6内を、真空ポンプ7を用いて脱気した後、前記反応容器内に窒素ボンベ8より窒素ガスを導入して雰囲気圧力を0.6MPaとした。次に、カーボンヒータ5に通電して着火剤4を加熱し、前記混合原料粉末を着火させ、燃焼合成反応を開始させた。燃焼合成反応中、耐圧性容器6の窒素雰囲気圧力は0.6MPaでほぼ一定であった。覗き窓9から耐圧性容器6の内部を観察したところ、燃焼合成反応は、約20分継続した後、終了した。反応終了後、耐圧性容器6から黒鉛製容器3を取り出し、塊状の燃焼生成物を回収した。
得られた燃焼生成物から着火剤近傍部分を除去し、残りの部分を、内面がウレタンコーティングされ、窒化ケイ素製ロールを備えたロールクラッシャーで粗粉砕して、目開きが100μmのナイロン製篩で篩通しし、篩下の粉末を回収した。得られた粉末を、窒化ケイ素製ボールが充填された、内壁面がウレタンでライニングされたアルミナ製のポットに収容し、バッチ式振動ミルを用いて、振動数1200cpm、振幅8mmで、0.25時間微粉砕して、実施例1−1の窒化ケイ素粉末を得た。バッチ式振動ミルでの粉砕の際には、粉砕助剤として粉末に対して1質量%のエタノールを添加した。
実施例1−1における、原料粉末に用いたシリコン粉末および希釈剤の物性値と、混合原料粉末の物性値と、燃焼生成物の圧壊強度を表1に、また、窒化ケイ素粉末の物性値を表2に示す。
Figure 2018110567
Figure 2018110567
実施例1−1の窒化ケイ素粉末の多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型の離型剤としての評価は、以下のように実施した。
実施例1−1の窒化ケイ素粉末を、密栓できるポリエチレン製容器に収容し、水を添加することで窒化ケイ素粉末の混合比が20質量%となるように調製した。窒化ケイ素粉末と水を収納した容器に、窒化ケイ素製ボールを投入して密栓し、バッチ式振動ミルを用いて、振幅5mm、振動数1780cpmで5分間混合し、窒化ケイ素スラリーを得た。
得られた実施例1−1の窒化ケイ素スラリーを、予め90℃に加温した、気孔率16%で、底面が100mmの正方形で、深さ100mmの石英製坩堝の内面にスプレー塗布し、次いで90℃で15時間乾燥した。このときの離型層の厚みは約0.2mmであった。さらに、大気雰囲気炉を用いて、空気中1100℃で3時間保持して加熱処理し、実施例1−1の窒化ケイ素粉末を離型層に適用した多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を得た。
前記鋳型に、純度が7Nで、大きさが2〜5mmのシリコン顆粒を300g充填し、ブリッジマン炉に収容した。大気圧のアルゴン流通下で1500℃でまで5時間かけて炉内を昇温してシリコン顆粒を溶融させた。1500℃で24時間保持した後、50mm/hの引き下げ速度で前記鋳型を引き下げることで、溶融シリコンを一方向凝固させ、さらに室温まで冷却した。また、実施例1−1の多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型をもう一つ作製し、その鋳型を用いて、保持温度を1550℃に変更したこと以外は、前記一方向凝固実験と同様の方法で一方向凝固実験を行った。
取り出した前記鋳型から多結晶シリコンインゴットを離型し、「多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型の評価方法」で説明した方法で、実施例1−1の多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型および多結晶シリコンインゴットを評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2018110567
(実施例1−2〜1−6)
実施例1−2〜1−6の微粉砕の時間を、実施例1−2から順に、0.30時間、1.50時間、2.50時間、4.00時間、6.00時間にしたこと以外は実施例1−1と同様にして実施例1−2〜1−6の窒化ケイ素粉末を得た。そして、得られた各実施例の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を各々2個作製した。各実施例において、実施例1−1と同様の二通りの炉内温度での一方向凝固実験を、それらの鋳型を用いて実施例1−1と同様の方法で行い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を評価した。
(実施例1−7)
実施例1−4の窒化ケイ素粉末を、目開きが40μmのナイロン製篩で篩通しし、篩下の粉末を回収して実施例1−7の窒化ケイ素粉末を得た。そして、得られた実施例1−7の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を2個作製した。1500℃および1525℃の二通りの炉内温度での一方向凝固実験を、それらの鋳型を用いて実施例1−1と同様の方法で行い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を評価した。
(実施例1−8)
原料粉末に、添加剤として、塩化アンモニウム(和光純薬製、純度99.9%)を、12.4質量%(シリコンと窒化ケイ素の混合粉末と塩化アンモニウムの質量比が87.6:12.4になるように)さらに添加したこと以外は実施例1−3と同様にして、実施例1−8の窒化ケイ素粉末を作製した。そして、得られた実施例1−8の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を2個作製した。実施例1−1と同様の二通りの炉内温度での一方向凝固実験を、それらの鋳型を用いて実施例1−1と同様の方法で行い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を評価した。
(実施例1−9)
実施例1−2の窒化ケイ素粉末を、空気分級機(日清エンジニアリング社製商品名「ターボクラシファイア」)を用いてカットポイントを2μmに設定して分級し、粒子径が大きい窒化ケイ素粉末と小さい窒化ケイ素粉末とを得た。粒子径が大きい方の窒化ケイ素粉末を回収し、その窒化ケイ素粉末と、市販の窒化ケイ素粉末(宇部興産株式会社製、製品名「SN−E10」(Feの含有割合;9ppm、Alの含有割合;2ppm、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合;4ppm))とを、質量比1:1の割合で、内面をウレタンでコーティングしたV型混合機を用いて0.17時間混合した。そして、得られた実施例1−9の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を2個作製した。実施例1−1と同様の二通りの炉内温度での一方向凝固実験を、それらの鋳型を用いて実施例1−1と同様の方法で行い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を評価した。
(実施例1−10)
粗粉砕後、接吻部に窒化ケイ素製のライナーを備えた気流式粉砕機(日清エンジリング株式会社製SJ−1500型)を使用して、必要空気量3.0m/分、原料供給速度250g/分程度の条件で粉砕して得られた窒化ケイ素粉末と、市販の窒化ケイ素粉末(宇部興産株式会社製、製品名「SN−E10」(Feの含有割合;9ppm、Alの含有割合;2ppm、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合;4ppm))とを、質量比2:1の割合で、内面をウレタンでコーティングしたV型混合機を用いて0.17時間混合して実施例1−10の窒化ケイ素粉末を得た。そして、得られた実施例1−10の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を2個作製した。実施例1−1と同様の二通りの炉内温度での一方向凝固実験を、それらの鋳型を用いて実施例1−1と同様の方法で行い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を評価した。
(実施例1−11)
粗粉砕後、接吻部に窒化ケイ素製のライナーを備えた気流式粉砕機(日清エンジリング株式会社製SJ−1500型)を使用して、必要空気量3.0m/分、原料供給速度250g/分程度の条件で粉砕して得られた窒化ケイ素粉末と、市販の窒化ケイ素粉末(宇部興産株式会社製、製品名「SN−E10」(Feの含有割合;9ppm、Alの含有割合;2ppm、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合;4ppm))とを、質量比1:1の割合で、内面をウレタンでコーティングしたV型混合機を用いて0.17時間混合して実施例1−11の窒化ケイ素粉末を得た。そして、得られた実施例1−11の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を2個作製した。実施例1−7と同様の二通りの炉内温度での一方向凝固実験を、それらの鋳型を用いて実施例1−1と同様の方法で行い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を評価した。
(比較例1−1、1−2)
微粉砕の時間を、比較例1−1では0.16時間に、比較例1−2では12.00時間にしたこと以外は実施例1−1と同様にして比較例1−1および1−2の窒化ケイ素粉末を得た。表2に見られるように、比較例1−1の窒化ケイ素粉末は比表面積が1.8m/gと小さい粉末であり、比較例1−2の窒化ケイ素粉末は比表面積が14.8m/gと大きい粉末であった。そして、得られた各比較例の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。各比較例において、その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−3)
原料粉末に、添加剤として塩化アンモニウム(和光純薬製、純度99.9%)を16.7質量%(シリコンと窒化ケイ素の混合粉末と塩化アンモニウムの質量比が83.3:16.7になるように)さらに添加したこと以外は、実施例1−3と同様にして比較例1−3の窒化ケイ素粉末を得た。比較例1−3の窒化ケイ素粉末は、表2に見られるように、β型窒化ケイ素の割合が46%と少ない粉末であった。そして、得られた比較例1−3の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−4、比較例1−5)
D50が2.5μm、かさ密度が0.26g/cm、Feの含有割合が2ppm、Alの含有割合が3ppm、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合が3ppmのシリコン粉末を内径30mmの金型に充填し、1500kg/cmの圧力で一軸成型し、シリコン粉末の一軸成型体を得た。前記成型体を黒鉛製容器に充填し、それをバッチ式窒化炉に収容して、炉内を窒素雰囲気に置換した後、窒素雰囲気下で、1450℃まで昇温し、3時間保持した。室温まで冷却させた後に、窒化生成物を取り出した。得られた窒化生成物を、内面がウレタンコーティングされた、窒化ケイ素製ロールを備えたロールクラッシャーで粗粉砕して、目開きが100μmのナイロン製篩で篩通しし、篩下の粉末を回収した。次に、前記粉末を、窒化ケイ素ボールが充填された、内面がウレタンでライニングされたアルミナ製のポットに収容して、バッチ式振動ミルで振動数1200cpm、振幅8mmの条件で微粉砕した。微粉砕の時間を、比較例1−4では0.33時間、比較例1−5では2.00時間として、各比較例の窒化ケイ素粉末を得た。燃焼合成法でない直接窒化法による比較例1−4及び比較例1−5の窒化ケイ素粉末は、表2に見られるように、それぞれ、結晶子径Dが50nm及び45nmと小さく、結晶歪が2.55×10−4及び2.20×10−4と大きく、DBET/Dが11.0及び4.6と大きい粉末であった。そして、得られた各比較例の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。各比較例において、その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−6)
実施例1−4の窒化ケイ素粉末を、空気分級機(日清エンジニアリング社製商品名「ターボクラシファイア」)を用いてカットポイントを1μmに設定して分級し、粒子径が大きい窒化ケイ素粉末と小さい窒化ケイ素粉末とを得た。粒子径が大きい方の窒化ケイ素粉末を回収して比較例1−6の窒化ケイ素粉末を得た。比較例1−6の窒化ケイ素粉末は、表2に見られるように、粒径が小さい方のピークトップが3.5μmと大きい粉末であった。そして、得られた比較例1−6の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−7)
微粉砕の時間を0.2時間にしたこと以外は実施例1−1と同様にして窒化ケイ素粉末を得た。得られた窒化ケイ素粉末を、空気分級機(日清エンジニアリング社製商品名「ターボクラシファイア」)を用いてカットポイントを2μmに設定して分級し、粒子径が大きい窒化ケイ素粉末と小さい窒化ケイ素粉末とを得た。粒子径が大きい方の窒化ケイ素粉末を回収し、その窒化ケイ素粉末と、市販の窒化ケイ素粉末(宇部興産株式会社製、製品名「SN−E10」(Feの含有割合;9ppm、Alの含有割合;2ppm、FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合;4ppm))とを、質量比で1:1の割合で、内面がウレタンでコーティングされたV型混合機を用いて0.17時間混合して、比較例1−7の窒化ケイ素粉末を得た。比較例1−7の窒化ケイ素粉末は、表2に見られるように、粒径が小さい方のピークトップが32.3μmと大きい粉末であった。そして、得られた比較例1−8の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−8)
実施例1−3の窒化ケイ素粉末を、空気分級機(日清エンジニアリング社製商品名「ターボクラシファイア」)を用いてカットポイントを12μmに設定して分級し、粒子径が大きい窒化ケイ素粉末と小さい窒化ケイ素粉末とを得た。粒子径が小さい方の窒化ケイ素粉末を回収して比較例1−8の窒化ケイ素粉末を得た。比較例1−8の窒化ケイ素粉末は、表2に見られるように、粒径が小さい方のピークトップの頻度の粒径と大きい方のピークトップの頻度との比が1.54と大きい粉末であった。そして、得られた比較例1−8の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−9)
比較例1−8の窒化ケイ素粉末を、空気分級機(日清エンジニアリング社製 商品名「ターボクラシファイア」)を用いてカットポイントを2μmに設定して分級し、粒子径が大きい窒化ケイ素粉末と小さい窒化ケイ素粉末とを得た。粒子径が小さい方の窒化ケイ素粉末を回収して比較例1−9の窒化ケイ素粉末を得た。比較例1−9の窒化ケイ素粉末は、粒径のピークトップが1つの粉末であった。そして、得られた比較例1−9の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−10〜1−12)
原料シリコン粉末として表1に示す粉末を使用したこと以外は実施例1−4と同様にして、比較例1−10〜1−12の窒化ケイ素粉末を得た。比較例1−10〜1−12の窒化ケイ素粉末は、それぞれ、Feの含有量、Alの含有量、及び、Fe,Al以外の金属不純物の含有量が、159ppm、140ppm、及び、134ppmと、多い粉末であった。そして、得られた比較例1−10〜1−12の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を各々1個作製した。各実施例において、その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
(比較例1−13)
燃焼生成物の粗粉砕にアルミナ製ロールを備えたロールクラッシャーを用いたことと、バッチ式振動ミルによる微粉砕に、アルミナ製ボールが充填されたアルミナ製のポットを用いたこと以外は実施例1−4と同様にして、比較例1−13の窒化ケイ素粉末を作製した。比較例1−13の窒化ケイ素粉末は、Feの含有量、Alの含有量、及びFe,Al以外の金属不純物の含有量が、240ppm、3700ppm、129ppmのいずれも多い粉末であった。そして、得られた比較例1−13の窒化ケイ素粉末を離型剤として用いて実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を1個作製した。その鋳型を用い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型とシリコンインゴットを評価した。
実施例1−2〜1−11および比較例1−1〜1−13における、原料粉末に用いたシリコン粉末、および添加剤の物性値と、混合原料粉末の物性値と、記燃焼生成物の圧壊強度を表1に、また、窒化ケイ素粉末の物性値を表2に示す。また、実施例1−2〜1−11および比較例1−1〜1−13の多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型および多結晶シリコンインゴットの評価結果を表3に示す。
(実施例2−1)
以下に述べる手法で、実施例1−1の窒化ケイ素粉末を含む離型層を具えた多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を作製し、多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型、およびシリコンインゴットの評価を実施した。
実施例1−1の窒化ケイ素粉末を、密封できるポリエチレン製容器に収容し、シリカ濃度20質量%のシリカゾル(扶桑化学社製、製品名「PL−3」)と水を添加した。このとき、質量比で、窒化ケイ素:シリカゾル:水が20:8:72となるように混合した。次に、窒化ケイ素粉末とシリカゾルと水を収容した容器に、窒化ケイ素製ボールを投入して密封し、バッチ式振動ミルを用いて、振幅5mm、振動数1780cpmで5分間混合し、窒化ケイ素スラリーを得た。
得られた実施例2−1の窒化ケイ素スラリーを、予め90℃に加温した、気孔率16%で、底面が100mmの正方形で、深さ100mmの石英製坩堝の内面にスプレー塗布し、次いで90℃で15時間乾燥し、実施例2−1の窒化ケイ素粉末を含む離型層を具えた多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を得た。このときの離型層の厚みは約0.2mmであった。
得られた実施例2−1の多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を用いて実施例1−1と同様にして一方向凝固実験を行い、実施例1−1と同様の方法で実施例2−1の多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型、およびシリコンインゴットを評価した。その結果を表4に示す。
Figure 2018110567
(実施例2−2〜2−11、比較例2−1〜2−13)
表4に示す窒化ケイ素粉末を用いたこと以外は実施例2−1と同様の手法で、窒化ケイ素スラリーを作製し、多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を製造した。得られた各実施例および各比較例の多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型を用いて、実施例1−1と同様にして一方向凝固実験を行い、実施例1−1と同様の方法で多結晶シリコンインゴット鋳造用鋳型およびシリコンインゴットを評価した。その結果を表4に示す。
以上の通り、本発明の窒化ケイ素粉末は、鋳型に塗布した後に高温で熱処理することで、実質的にそれ単独で密着性と離型性が良好な離型層を鋳型に形成し得ること、また、シリカゾルと混合して鋳型に塗布することで、高温の熱処理を行わなくても密着性と離型性が良好な離型層を鋳型に形成し得ることがわかった。
本発明の窒化ケイ素粉末は、鋳型への密着性と離型性が良好な離型層を鋳型に形成し得る離型剤として有用であり、特に、太陽電池用の高品質なシリコン基板を高い歩留まりで採取し得る多結晶シリコンインゴットの離型剤として有用である。また、本発明の窒化ケイ素粉末は、緻密な離型層を形成し得ること、結晶性が高いことから、高温で高強度を発現する窒化ケイ素焼結体の原料としても有用である。
1 燃焼合成反応装置
2 混合原料粉末
3 黒鉛製容器
4 着火剤
5 カーボンヒータ
6 耐圧性容器
7 真空ポンプ
8 窒素ボンベ
9 覗き窓

Claims (8)

  1. BET法により測定される比表面積が2m/g以上13m/g以下であり、
    β型窒化ケイ素の割合が50質量%以上であり、
    β型窒化ケイ素の粉末X線回折パターンよりWilliamson−Hall式を用いて算出されるβ型窒化ケイ素の結晶子径をDとしたときに、Dが150nm以上であり、
    前記比表面積より算出される比表面積相当径をDBETとしたときに、DBET/D(nm/nm)が3以下であり、
    レーザ回折散乱法による体積基準の粒度分布測定により得られる頻度分布曲線が二つのピークを有し、
    該ピークのピークトップが、0.5〜2μmの範囲と、6〜30μmの範囲にあり、
    前記ピークトップの頻度の比(粒子径0.5〜2μmの範囲のピークトップの頻度/粒子径6〜30μmの範囲のピークトップの頻度)が0.1〜1であることを特徴とする窒化ケイ素粉末。
  2. β型窒化ケイ素の粉末X線回折パターンよりWilliamson−Hall式を用いて算出されるβ型窒化ケイ素の結晶歪が1.5×10−4以下であることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素粉末。
  3. 前記ピークトップが、0.5〜2μmの範囲と、9〜30μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2記載の窒化ケイ素粉末。
  4. β型窒化ケイ素の割合が70質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の窒化ケイ素粉末。
  5. 前記比表面積が2m/g以上10m/g以下であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載の窒化ケイ素粉末。
  6. Feの含有割合が100ppm以下であり、
    Alの含有割合が100ppm以下であり、
    FeおよびAl以外の金属不純物の含有割合の合計が100ppm以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項に記載の窒化ケイ素粉末。
  7. 請求項1〜6いずれか一項に記載の窒化ケイ素粉末を含む多結晶シリコンインゴット用離型剤。
  8. 鋳型内に収容された溶融シリコンを凝固させるシリコンインゴットの製造方法であって、前記鋳型として、前記溶融シリコンとの接触面に請求項1〜6いずれか一項に記載の窒化ケイ素粉末が塗布された鋳型を用いることを特徴とするシリコンインゴットの製造方法。
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