JPWO2018066688A1 - バチルス属細菌の培養方法および有用物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一般的にバチルス属細菌の培養には主に糖などの炭素源、アミノ酸や無機アンモニウム塩などの窒素源およびミネラルなどを含む液体培地が使用される。
非特許文献1においては、これらの成分を含む液体培地で回分培養法によりバチルス属細菌を培養した際に、芽胞が3.5E+09spore/ml程度得られたことが開示されている。
そこで、バチルス属細菌の芽胞形成を阻害することなく、一度に高濃度のバチルス属細菌の芽胞や代謝物を得るために、流加培養(半回分培養)が行われる。この手法では培養過程で消失した栄養基質を適切な濃度および適切なタイミングで添加することで、添加しなった場合と比べて高濃度の菌体や代謝物を得ることができる。
非特許文献1では流加培養により、回分培養時よりも大幅に菌体の生産性が向上し、高濃度のバチルス細菌の芽胞が得られたことが開示されている。しかし、この文献においては、グルコースが20g/L以上含まれる培地では芽胞化が阻害されることが示されており、培養開始時の糖濃度を低くし、糖源原料及び窒素源が低濃度で推移するように流加しているが、これにより、添加時間が長期化し最終的に60時間もの培養時間が必要となってしまっている。また、ここで用いられている培地成分は、化学的に純粋な化合物を組み合わせた培地、即ち完全合成培地を用いており、産業利用のために大規模にバチルス属細菌を培養して芽胞を得るためには多大なコストがかかってしまう。そのため、例えば食品などの大規模な製造の工程で排出される残渣、あるいは脱脂大豆粉や酵母エキスなど、製造に大きな労力を要しない混合物からなる原料を用いて培養することが望ましいが、これらを高濃度に含む培地を用いてバチルス属細菌芽胞を効率的に得る方法についてはこれまでに報告例がない。
[1]培養開始時の糖または糖源原料の濃度が50.1g/L〜100g/Lである液体培地でバチルス属細菌を培養し、培養途中で、糖または糖源原料および含窒素化合物を含み、炭素原子と窒素原子の重量比(C/N比)が5.5〜13.5である流加培地を前記液体培地に供給して培養することを特徴とする、バチルス属細菌の培養方法。
[2]炭素原子と窒素原子の重量比(C/N比)が5.5〜12である流加培地を前記液体培地に供給して培養することを特徴とする、[1]に記載のバチルス属細菌の培養方法。
[3]培養終了時までに流加培地により供給される糖または糖源原料の総量が、流加前の培地1Lあたり、100g以下である、[1]または[2]に記載のバチルス属細菌の培養方法。
[4]前記流加培地の供給を、バチルス属細菌の酸素消費速度が最大となる時点の前後7時間の間で行う、[1]〜[3]のいずれかに記載のバチルス属細菌の培養方法。
[5]前記流加培地の供給を、培養開始後3時間〜30時間の間で行う、[1]〜[4]のいずれかに記載のバチルス属細菌の培養方法。
[6]前記流加培地は糖または糖源原料および含窒素化合物を含む溶液を加熱滅菌して得られたものである、[1]〜[5]のいずれかに記載のバチルス属細菌の培養方法。
[7]糖または糖源原料が非還元糖である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]非還元糖が、スクロース、トレハロース、ケストース、メレチトース、ゲンチアノース、ネオビフルコース、フンギテトラオース、プランテオース、ラフィノース、スタキオースおよびビフルコースからなる群から選択される少なくとも1種である、[7]に記載のバチルス属細菌の培養方法。
[9]含窒素化合物が、アンモニウム塩、アンモニアからなる無機窒素化合物群および、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、尿素、脱脂大豆粉、大豆由来成分、酵母由来成分、コーン浸漬液、コーン浸漬液乾燥粉末、コーン由来成分、動植物タンパク質またはその分解物からなる有機窒素化合物群より少なくとも1種選択される、[1]〜[8]のいずれかに記載のバチルス属細菌の培養方法。
[10]液体培地の溶存酸素濃度を10%以上に保持することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載のバチルス属細菌の培養方法。
[11]液体培地の温度を20〜60℃の間で制御しバチルス属細菌の増殖をコントロールする、[1]〜[10]のいずれかに記載のバチルス属細菌の培養方法。
[12]バチルス属細菌の対数増殖期に28〜32℃で培養を行い、その後、35〜39℃で培養を行う、[11]に記載のバチルス属細菌の培養方法。
[13] バチルス属細菌がバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・シンプレックス(Bacillus simplex)、バチルス レンタス(Bacillus lentus)、バチルス ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス アルベイ(Bacillus alvei)、バチルス・ポピリエ(Bacillus popilliae)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alcalophilus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・サイアメンシス(Bacillus siamensis)、バチルス ロータス(Bacillus lautus)、バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・チューリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・ファーマス(Bacillus firmus)、バチルス・ベレゼンシス(Bacillus velezensis)、バチルス・ピチノティ(Bacillus pichinotyi)、バチルス・アシドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius)、バチルス・アルカリコラ(Bacillus alkalicola)、バチルス・アゾトフォーマンス(Bacillus azotoformans)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・バディウス(Bacillus badius)、バチルス・バタビエンシス(Bacillus bataviensis)、バチルス・シクロヘプタニカス(Bacillus cycloheptanicus)、バチルス・ アネウリニリティカス(Bacillus aneurinilyticus)、バチルス・ミグラヌス(Bacillus migulanus)、バチルス・アビッサリス(Bacillus abyssalis)、バチルス・アエスツアリイ(Bacillus aestuarii)、バチルス・ポリミグザ(Bacillus polymyxa)、またはバチルス・エスピー(Bacillus sp.)からなる群より選択される、[1]〜[12]のいずれかに記載のバチルス属細菌の培養方法。
[14][1]〜[13]のいずれか一項に記載の培養方法を用いて、前記液体培地中に有用物質を生成させることを特徴とする、有用物質の製造方法。
[15]前記有用物質がバチルス属細菌の芽胞である、[14]に記載の有用物質の製造方法。
[16]前記有用物質がバチルス属細菌の代謝物である、[14]に記載の有用物質の製造方法。
[17]前記代謝物が環状リポペプチドである、[16]に記載の有用物質の製造方法。
[18]前記環状リポペプチドが、イツリン、サーファクチン、プリパスタチン、フェンジシン、バシロマイシン、リチェニシン、クルスタキン、マイコサブチリン、コリスチン、フザリシジン、パエニバクテリン、ポリミキシンおよびピュミラシジンからなる群から選択される少なくとも1種である、[17]に記載の有用物質の製造方法。
本発明のバチルス属細菌の培養方法を用いることにより、液体培地中に高い割合で芽胞や代謝物などの有用物質を生成させることができる。
バチルス属細菌の代謝物である環状リポペプチドとしては、イツリン、サーファクチン、プリパスタチン、フェンジシン、バシロマイシン、リチェニシン、クルスタキン、マイコサブチリン、コリスチン、フザリシジン、パエニバクテリン、ポリミキシンおよびピュミラシジンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
培養に用いる炭素源はバチルス属細菌が異化しうるものを使用することができるが、異化可能な炭素源して、バチルス属細菌が異化しうる糖(グルコース、ラクトース、グリセロール、アラビノース、リボース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、セロビオース、マルトース、スクロース、トレハロース、キシリトールなど)もしくは糖源原料が例示される。糖源原料とは、バチルス属細菌を含む多くの微生物が生産するアミラーゼやセルラーゼ等の酵素により上述の異化しうる糖を遊離する基質であり、デンプン、セルロース、ペクチン、キチンなどの多糖および稲わら、麦わら、もみ殻、食品廃棄物、建設発生木材、製材工場残材などのバイオマスを例とする原料を指す。この中では、非還元糖が好ましく、具体的には、スクロース、トレハロース、ケストース、メレチトース、ゲンチアノース、ネオビフルコース、フンギテトラオース、プランテオース、ラフィノース、スタキオースおよびビフルコースからなる群から選択される少なくとも1種の非還元糖が例示される。
培養開始時の培地に含窒素化合物の量は好ましくは8〜72g/Lであり、培養開始時の培地のC/N比は好ましくは5.5〜13.5である。
なお、C/N比は以下の通り算出される。
C/N比=各培地成分に含まれる炭素含量の合計÷各培地成分に含まれる窒素含量の合計。
培地成分のうち天然系原料の炭素含量は、それぞれ全糖量の40%重量および全タンパク質量の50%重量として概算できる。全糖量は、酸中で100℃、2.5時間加水分解後、ソモギー法にて還元糖濃度として定量できる。全タンパク質量はまずケルダール法による全窒素量の定量後、換算係数6.25を乗じることで概算できる。
培地成分については通常、培養開始前にオートクレーブなどの加熱滅菌処理を施すが、還元性を有する糖と窒素源が共存する条件でオートクレーブを行うとそれらが基質となってメイラード反応を起こし、生育に必要な栄養成分が他の化合物へと変換されてしまい、本来の栄養源としての機能を失ってしまう。これにより、バチルス属細菌は効率的な増殖が困難となり、十分な菌体や代謝物などの有用物質が得られなくなってしまう。そのため、糖源と窒素源は別々に加熱滅菌を行い、十分に冷却されたのちに両者を混合し、培養に供する方法が一般的である。この混合工程では、滅菌状態が保たれた系を開放することから、コンタミネーションのリスクが向上し、また、必要となる設備や作業工程も増えてしまう。
これに対し、本発明の方法では、スクロースなどの非還元糖を用いることにより、炭素源と窒素源を同時に加熱滅菌してもメイラード反応等を起こさないため、培地の調製が容易である。
なお培養液中の溶存酸素濃度は、隔膜ガルバニ電極式センサー等により、リアルタイムでモニタリングができる。
さらに培養は好気条件(例えば、酸素濃度10%以上、好ましくは15〜50%)で撹拌しつつ行うことが好ましく、培地のpHは6.5〜8.5が好ましく、7.0〜8.0がより好ましい。
なお、上記糖または糖源原料の濃度が50.1g/L〜100g/Lである液体培地で培養する前に、前培養を行ってもよい。
500mL容三角フラスコに作成した表1の培地条件1に記載の終濃度となるよう、グルコース(和光純薬)、CSL(ROQUETTE)、MnCl2(和光純薬)、KH2PO4(和光純薬)を含有させた培地をそれぞれ100mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。普通寒天平板培地上に生育させたBacillus subtilis MBI-600のコロニーより1白金耳をとって、表1の培地条件1に記載の培地に無菌的に稙菌し、30℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。
5L容培養槽を用い、表1の培地条件2(試験番号2)および3(試験番号3)に記載の終濃度となるように2Lの培地を2本作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合し、スクロース(和光純薬)は全ての培地成分と予め混合して滅菌した)。
上記で得られたBacillus subtilis MBI-600の前培養液よりそれぞれ100mlを、5L容培養槽に無菌的に稙菌し、30℃、500rpmの条件で培養を開始し、溶存酸素濃度が10%を下回らぬよう酸素供給量を調整した。溶存酸素濃度とは、単位体積当たりの培養液に溶存している酸素の量を百分率で表した数値であり、これを計測するために例えば、卓上型培養装置(MDL−8C)(株式会社丸菱バイオエンジ社製)等の機器で測定することができる。
34時間培養後、得られた培養液について、滅菌水で希釈したのち、普通ブイヨン寒天培地(栄研化学株式会社)に塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して菌体数を測定した。また、先に調製した希釈液を80℃で30分加熱したのちに同様に普通ブイヨン寒天培地へ塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して耐熱菌数を測定し、これらの結果から芽胞形成率を算出した。その結果を表2に示す。
500mL容三角フラスコに作成した表1の培地条件1に記載の終濃度となるよう調整した培地をそれぞれ100mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。これに対し普通寒天平板培地上に生育させたBacillus subtilis MBI-600のコロニーより1白金耳をとって無菌的に稙菌し、30℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。
5L容培養槽を用い、表1の培地条件3に記載の終濃度となるように2Lの培地を2本作成し、オートクレーブ滅菌を行った(全ての培地成分は予め混合してオートクレーブ滅菌した)。
500mL容デュラン瓶を用い表1の培地条件4に記載の終濃度となるように0.4Lの培地を1本作成した。これを培地条件3の培地が入った5L容培養槽に流加できるように予めチューブで接続し、オートクレーブを行った(全ての培地成分は予め混合してオートクレーブ滅菌した)。
得られた前培養液よりそれぞれ100mlを、上記2Lの培地を含む5L容培養槽に無菌的に稙菌し、37℃の条件で培養を開始した。培養開始から5時間後に、5L容培養槽のうちの一方に培地条件4の培地を2時間毎に100mLずつ4回に分けて添加した。添加を開始してから培養温度を30℃に下げて培養した。この際、培養液中の溶存酸素濃度が10%を下回らぬよう回転数をコントロールし酸素供給量を調整した。酸素消費速度は培養開始約8 時間後に最大となった。培養開始から24時間経過後、培養温度を37℃に上げて培養した。
34時間培養後、得られた培養液について、滅菌水で希釈したのち、普通ブイヨン寒天培地に塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して菌体数を測定した。また、先に調製した希釈液を80℃で30分加熱したのちに同様に普通ブイヨン寒天培地へ塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して耐熱菌数を測定し、これらの結果から芽胞形成率を算出した。その結果を表3に示す。
500mL容三角フラスコに表1の培地条件1に記載の終濃度となるよう調整した培地を100mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。これに対し普通寒天平板培地上に生育させたBacillus subtilis MBI-600のコロニーより1白金耳をとって無菌的に稙菌し、30℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。
5L容培養槽に、表1の培地条件2および3に記載の終濃度となるようにそれぞれ調整した培地を2Lずつ作成した(グルコースおよびスクロースは全ての培地成分と予め混合して滅菌した)。
500mL容デュラン瓶を用い、表1の培地条件4および5に記載の終濃度となるようにそれぞれ調整した培地を0.4Lずつ作成した。培地条件4の培地は培地条件2の成分が入った5L容培養槽へ、培地条件5の培地は培地条件3の成分が入った5L容培養槽へ流加できるように予めチューブで接続し、オートクレーブを行った(グルコースおよびスクロースは全ての培地成分と予め混合して滅菌した)。
得られた前培養液よりそれぞれ100mlを、上記2Lの培地を含む5L容培養槽に無菌的に稙菌し、37℃の条件で培養を開始した。培養開始から5時間後に、培地条件3の培地には培地条件4を、培地条件2の培地には培地条件5の培地を2時間毎に100mLずつ4回に分けて添加した。添加を開始してから培養温度を30℃に下げて培養した。この際、培養液中の溶存酸素濃度が10%を下回らぬよう回転数をコントロールし酸素供給量を調整した。流加を開始した時、培地条件2で培養した培養液のグルコース濃度は40g/Lを下回っており、また、酸素消費速度は培養開始約8 時間後に最大となった。培養開始から24時間経過後、培養温度を37℃に上げて培養した。
34時間培養後、得られた培養液について、滅菌水で希釈したのち、普通ブイヨン寒天培地に塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して菌体数を測定した。また、先に調製した希釈液を80℃で30分加熱したのちに同様に普通ブイヨン寒天培地へ塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して耐熱菌数を測定し、これらの結果から芽胞形成率を算出した。その結果を表4に示す。
500mL容三角フラスコに表1の培地条件1に記載の終濃度となるよう調整した培地を100mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。これに対し普通寒天平板培地上に生育させたBacillus thuringiensis NBRC 101235のコロニーより1白金耳をとって無菌的に稙菌し、30℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。
5L容培養槽に、表1の培地条件2に記載の終濃度となるように調整した培地を2Lずつ合計3本作成した(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。
500mL容デュラン瓶を用い、表1の培地条件4および5に記載の終濃度となるようにそれぞれ調整した培地を0.4Lずつ作成した。培地条件4および5の培地は培地条件2の成分が入ったそれぞれの5L容培養槽へ流加できるように予めチューブで接続し、オートクレーブを行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合し、スクロースは全ての培地成分と予め混合して滅菌した)。また、流加培養を行わない培地条件2の培地をコントロールとした。
得られた前培養液よりそれぞれ100mlを、上記2Lの培地を含む5L容培養槽に無菌的に稙菌し、37℃の条件で培養を開始した。培養開始から6時間後に、5L容培養槽のうちの2本にそれぞれ培地条件4または培地条件5の培地を2時間毎に100mLずつ、4回に分けてそれぞれ添加した。添加を開始してから培養温度を30℃に下げて培養した。この際、培養液中の溶存酸素濃度が10%を下回らぬよう回転数をコントロールして酸素供給量を調整するとともに、それぞれの発酵槽に10%塩酸水溶液および2M水酸化ナトリウム溶液を添加して培養中の培養液のpHが6.7〜7.3となるように調節した。流加を開始した時、培地条件2で培養した培養液のグルコース濃度は40g/Lを下回っており、また、酸素消費速度は培養開始約8時間後に最大となった。培養開始から24時間経過後、培養温度を37℃に上げて培養した。
34時間培養後、得られた培養液について、滅菌水で希釈したのち、普通ブイヨン寒天培地に塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して菌体数を測定した。また、先に調製した希釈液を80℃で30分加熱したのちに同様に普通ブイヨン寒天培地へ塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して耐熱菌数を測定し、これらの結果から芽胞形成率を算出した。その結果を表5に示す。
500mL容三角フラスコに作成した表1の培地条件1に記載の終濃度となるよう調整した培地をそれぞれ100mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。これに対し普通寒天平板培地上に生育させたBacillus subtilis MBI-600のコロニーより1白金耳をとって無菌的に稙菌し、30℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。
5L容培養槽を用い、表1の培地条件2に記載の終濃度となるように2Lの培地を作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。
500mL容デュラン瓶を用いグルコースを125g/Lの終濃度となるように0.4Lの培地を1本作成した。これを培地条件2の培地が入った5L容培養槽に流加できるように予めチューブで接続し、オートクレーブを行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。
得られた前培養液100mlを、上記培地に無菌的に稙菌し、37℃の条件で培養を開始した。培養開始から5時間後にグルコース溶液を2時間毎に100mLずつ4回に分けて添加した。添加を開始してから培養温度を30℃に下げて培養した。この際、培養液中の溶存酸素濃度が10%を下回らぬよう回転数をコントロールし酸素供給量を調整した。流加を開始した時、培地条件2で培養した培養液のグルコース濃度は40g/Lを下回っており、また、酸素消費速度は培養開始約8時間後に最大となった。培養開始から24時間経過後、培養温度を37℃に上げて培養した。
34時間培養後、得られた培養液について、滅菌水で希釈したのち、普通ブイヨン寒天培地に塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して菌体数を測定した。また、先に調製した希釈液を80℃で30分加熱したのちに同様に普通ブイヨン寒天培地へ塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して耐熱菌数を測定し、これらの結果から芽胞形成率を算出した。その結果を表6に示す。
500mL容三角フラスコに作成した表1の培地条件1に記載の終濃度となるよう調整した培地をそれぞれ100mlずつ作成し、オートクレーブ滅菌を行った(グルコースは別途滅菌の上無菌的に混合した)。これに対し普通寒天平板培地上に生育させたBacillus subtilis MBI-600のコロニーより1白金耳をとって無菌的に稙菌し、30℃、150rpmで1晩振とう培養を行い、前培養液を得た。
5L容培養槽を用い、表1の培地条件2に記載の終濃度となるように2Lの培地を2本作成し、オートクレーブ滅菌を行った(全ての培地成分は予め混合してオートクレーブ滅菌した)。
500mL容デュラン瓶を用い表1の培地条件4に記載の終濃度となるように0.4Lの培地を1本作成した。これを培地条件2の培地が入った5L容培養槽に流加できるように予めチューブで接続し、オートクレーブを行った(全ての培地成分は予め混合してオートクレーブ滅菌した)。
得られた前培養液よりそれぞれ100mlを、上記培地条件2の培地2Lを含む5L容培養槽に無菌的に稙菌し、30℃の条件で培養を開始した。培養開始から5時間後に、5L容培養槽のうちの一方に培地条件4の培地を2時間毎に100mLずつ4回に分けて添加し、培養を継続した。この際、培養液中の溶存酸素濃度が10%を下回らぬよう回転数をコントロールし酸素供給量を調整した。酸素消費速度は培養開始約12 時間後に最大となった。
54時間培養後、得られた培養液について、滅菌水で希釈したのち、普通ブイヨン寒天培地に塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して菌体数を測定した。また、先に調製した希釈液を80℃で30分加熱したのちに同様に普通ブイヨン寒天培地へ塗布して37℃で1晩静置培養し、形成されたコロニー数を計測して耐熱菌数を測定し、これらの結果から芽胞形成率を算出した。その結果を表7に示す。
また得られた培養液について、冷却遠心機(株式会社トミー精工 MX-307)を用い、10,000rpm、20℃、30分遠心分離を行い、上清を回収した。
固相抽出カラム(日本ウォーターズ株式会社 Oasis HLB 3cc(400mg)LP Extraction Cartridge)に0.1%TFA含有アセトニトリル6mLを加えて通過させたのち、0.1%TFA含有蒸留水6mLを加えて通過させた。回収した培養液遠心上清2mLを加えて通過させ、0.1%TFA含有蒸留水6mL、0.1%TFA含有アセトニトリル/蒸留水(20:80, v/v)6mLを順次通過させて洗浄した。次に0.1%TFA含有アセトニトリル/蒸留水(90:10, v/v)5mLを通過させ、溶出液を回収した。回収液が5mLとなるよう0.1%TFA含有アセトニトリル/蒸留水(90:10, v/v)を加え、以下の条件でHPLC分析を行った。
HPLC: アジレント・テクノロジー株式会社 1260 Infinity
カラム: 日本ウォーターズ株式会社 XBridge C18 5μm 4.6 x 250mm
移動相: A:0.1%TFA含有蒸留水、B:0.1%TFA含有アセトニトリル
0〜3分 A 80%/B 20%
3〜12分 A 80%/B 20% → B 100%
12〜23分 B 100%
23〜27分 B 100% → A 80%/B 20%
27〜30分 A 80%/B 20%
流量: 1mL/分
温度: 40℃
検出: UV205nm
注入量: 10μL
標品: Iturin A from Bacillus subtilis(Merck)
濃度: 30ppm、120ppm
溶媒: 0.1%TFA含有アセトニトリル/蒸留水(90:10, v/v)
溶出時間12.1分および12.7分に検出されたピーク面積について、標品との比較から、培養液中のイツリン濃度を算出した。
結果を表7に示す。
Claims (18)
- 培養開始時の糖または糖源原料の濃度が50.1g/L〜100g/Lである液体培地でバチルス属細菌を培養し、培養途中で、糖または糖源原料および含窒素化合物を含み、炭素原子と窒素原子の重量比(C/N比)が5.5〜13.5である流加培地を前記液体培地に供給して培養することを特徴とする、バチルス属細菌の培養方法。
- 炭素原子と窒素原子の重量比(C/N比)が5.5〜12である流加培地を前記液体培地に供給して培養することを特徴とする、請求項1に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 培養終了時までに流加培地により供給される糖または糖源原料の総量が、流加前の培地1Lあたり、100g以下である、請求項1または2に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 前記流加培地の供給を、バチルス属細菌の酸素消費速度が最大となる時点の前後7時間の間で行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養法。
- 前記流加培地の供給を、培養開始後3時間〜30時間の間で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 前記流加培地は糖または糖源原料および含窒素化合物を含む溶液を加熱滅菌して得られたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 糖または糖源原料が非還元糖である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 非還元糖が、スクロース、トレハロース、ケストース、メレチトース、ゲンチアノース、ネオビフルコース、フンギテトラオース、プランテオース、ラフィノース、スタキオースおよびビフルコースからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 含窒素化合物が、アンモニウム塩、アンモニアからなる無機窒素化合物群および、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、尿素、脱脂大豆粉、大豆由来成分、酵母由来成分、コーン浸漬液、コーン浸漬液乾燥粉末、コーン由来成分、動植物タンパク質またはその分解物からなる有機窒素化合物群より少なくとも1種選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 液体培地の溶存酸素濃度を10%以上に保持することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 液体培地の温度を20〜60℃の間で制御しバチルス属細菌の増殖をコントロールする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- バチルス属細菌の対数増殖期に28〜32℃で培養を行い、その後、35〜39℃で培養を行う、請求項11に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- バチルス属細菌がバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・シンプレックス(Bacillus simplex)、バチルス レンタス(Bacillus lentus)、バチルス ラテロスポルス(Bacillus laterosporus)、バチルス アルベイ(Bacillus alvei)、バチルス・ポピリエ(Bacillus popilliae)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alcalophilus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・サイアメンシス(Bacillus siamensis)、バチルス ロータス(Bacillus lautus)、バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・チューリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・ファーマス(Bacillus firmus)、バチルス・ベレゼンシス(Bacillus velezensis)、バチルス・ピチノティ(Bacillus pichinotyi)、バチルス・アシドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius)、バチルス・アルカリコラ(Bacillus alkalicola)、バチルス・アゾトフォーマンス(Bacillus azotoformans)、バチルス・アンスラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・バディウス(Bacillus badius)、バチルス・バタビエンシス(Bacillus bataviensis)、バチルス・シクロヘプタニカス(Bacillus cycloheptanicus)、バチルス・ アネウリニリティカス(Bacillus aneurinilyticus)、バチルス・ミグラヌス(Bacillus migulanus)、バチルス・アビッサリス(Bacillus abyssalis)、バチルス・アエスツアリイ(Bacillus aestuarii)、バチルス・ポリミグザ(Bacillus polymyxa)、またはバチルス・エスピー(Bacillus sp.)からなる群より選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のバチルス属細菌の培養方法。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の培養方法を用いて、前記液体培地中に有用物質を生成させることを特徴とする、有用物質の製造方法。
- 前記有用物質がバチルス属細菌の芽胞である、請求項14に記載の有用物質の製造方法。
- 前記有用物質がバチルス属細菌の代謝物である、請求項14に記載の有用物質の製造方法。
- 前記代謝物が環状リポペプチドである、請求項16に記載の有用物質の製造方法。
- 前記環状リポペプチドが、イツリン、サーファクチン、プリパスタチン、フェンジシン、バシロマイシン、リチェニシン、クルスタキン、マイコサブチリン、コリスチン、フザリシジン、パエニバクテリン、ポリミキシンおよびピュミラシジンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項17に記載の有用物質の製造方法。
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