JPWO2018008359A1 - 強化ガラス板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明の強化ガラス板の製造方法は、ガラス板表層のイオンを交換する強化ガラス板の製造方法であって、イオンの交換により、ガラス板の表面の一部に設定した選択領域の厚みを、当該選択領域以外の非選択領域よりも大きくするとともに、選択領域において非選択領域よりも深い圧縮応力層を形成する選択強化工程と、選択強化工程において膨張した選択領域の少なくとも一部を除去することにより、当該ガラス板の主面を平坦化する平坦化工程と、を備えることを特徴とする。
Description
本発明は、強化ガラス板の製造方法に関し、より具体的には、イオン交換法によってガラス板の化学強化を行う強化ガラス板の製造方法に関する。
従来、スマートフォンやタブレットPCなどの電子機器に搭載されるタッチパネルディスプレイには、カバーガラス板として化学強化された強化ガラス板が用いられている。
このような強化ガラス板は、一般的に、アルカリ金属を組成として含むガラス板を強化液で化学的に処理し、表面に圧縮応力層を形成することによって製造される。このような強化ガラス板は、表面に圧縮応力層を有するために衝撃耐性等が向上している。しかしながら、このような強化ガラス板であっても、主面における衝撃耐性に比べ、エッジ部や周縁部における衝撃耐性が低く、強化ガラス板の破損の原因となっていた。このような破損を防止するべく強化ガラス板表面の圧縮応力層を全体的に深くした場合、ガラス板内部に形成される引張応力が過大となり、当該引張応力に起因した破損(所謂、自己破壊)が生じやすくなる問題がある。
上記のような問題を解決すべく、強化ガラス板表面の一部分においてのみ選択的に深く圧縮応力層を形成する技術が開発されている。例えば、特許文献1に開示される方法では、主面の中央部分のみをマスク材料でシールディングすることによって、シールドされていない周縁部のみをイオン交換して強化処理(第一の強化処理)できる。その後シールディングを除去し、再度、強化処理(第二の強化処理)を行うことで、予め強化処理されたエッジ部において主面より深く圧縮応力層を形成できる。
しかしながら、特許文献1のような手法を用いた場合、ガラス板に予期せぬ変形が生じ、所望の形状および特性を得られないおそれがあった。特許文献1の手法では、第一の強化処理を終えた段階でシールドされていない部分のみがイオン交換されるが、イオン交換により化学強化処理されたガラス板は、当該処理が施された箇所において膨張する場合がある。すなわち、イオン交換されていない中央部に比べて、イオン交換された周縁部が膨張して盛り上がり、段差が生じてしまうおそれがあった。一般的なデザインのタッチパネルディスプレイのタッチ面は平坦面で構成されるため、このようなカバーガラス板の段差形状は好ましくないと考えられる。
本発明は、このような事情を考慮して成されたものであり、高い平坦性を有し且つ部分的に高い強度を有する強化ガラス板を安定して製造可能とする強化ガラス板の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の強化ガラス板の製造方法は、ガラス板表層のイオンを交換する強化ガラス板の製造方法であって、イオンの交換により、ガラス板の表面の一部に設定した選択領域の厚みを、当該選択領域以外の非選択領域よりも大きくするとともに、選択領域において非選択領域よりも深い圧縮応力層を形成する選択強化工程と、選択強化工程において膨張した選択領域の少なくとも一部を除去することにより、当該ガラス板の主面を平坦化する平坦化工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の強化ガラス板の製造方法よれば、高い平坦性を有し且つ部分的に高い強度を有する強化ガラス板を安定して製造できる。
平坦化工程の後に、ガラス板の表面全体に溶融塩を接触させてガラス板表層のイオンを交換する全体強化工程をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、選択領域において特に高い強度を有しつつ、非選択領域においても圧縮応力を有する高強度の強化ガラス板を得られる。
全体強化工程の後、ガラス板の表面を研磨加工する仕上げ加工工程をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、強化ガラスの寸法や表面状態を所望の状態に容易に調整できる。
平坦化工程において、膨張した選択領域の少なくとも一部を研磨またはエッチングによって除去することが好ましい。
このような構成によれば、平坦化工程の処理を容易に行える。
選択強化工程は、非選択領域にイオンの透過を抑制または遮断するイオン透過防止膜を成膜する成膜工程と、イオン透過防止膜が形成されたガラス板に溶融塩を接触させてイオンを交換する選択イオン交換工程と、選択イオン交換工程の後に、イオン透過防止膜を除去する膜除去工程とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、選択領域の強化の程度を容易に管理および調整できる。
膜除去工程において、イオン透過防止膜を研磨またはエッチングによって除去することが好ましい。
このような構成によれば、イオン透過防止膜を容易且つ確実に除去できる。
平坦化工程および膜除去工程の処理を同一の研磨装置で行うことが好ましい。
このような構成によれば、平坦化工程および膜除去工程の処理をほぼ同時に効率的に行うことができる。
非選択領域がガラス板の表裏主面の中央部であることが好ましい。
このような構成によれば、端縁部において特に高い強度を有する強化ガラス板を容易に得られる。また、強化ガラス板の内部に形成される引張応力層の引張応力を低減して、自己破壊を抑制できる。
ガラス板は、ガラス板組成として質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 1〜30%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜20%を含有するガラス板であることが好ましい。
このような構成によれば、容易にガラス板表層のイオンの交換を行うことができ、高い強度の強化ガラス板を容易に得られる。
本発明の強化ガラス板の製造方法は、ガラス板表層のイオンを交換する強化ガラス板の製造方法であって、主面の一部に設定された非選択領域にイオンの透過を抑制または遮断するイオン透過防止膜を備えた膜付ガラス板に溶融塩を接触させてイオン交換することにより、非選択領域以外の選択領域の厚みを非選択領域よりも大きくするとともに、選択領域において非選択領域よりも深い圧縮応力層を形成する選択強化工程と、選択強化工程において膨張した選択領域の少なくとも一部を除去することにより、当該ガラス板の主面を平坦化する平坦化工程と、を備えることを特徴とする。
<第一の実施形態>
以下、本発明の実施形態の強化ガラス板の製造方法について説明する。図1A〜Eは、本発明の強化ガラス板の製造方法の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態の強化ガラス板の製造方法について説明する。図1A〜Eは、本発明の強化ガラス板の製造方法の一例を示す図である。
先ず、図1Aに示す準備工程の処理を実施する。準備工程は、元ガラス板G1を準備する工程である。元ガラス板G1は、イオン交換法を用いて強化可能な板状のガラス板である。
元ガラス板G1は、ガラス板組成として質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 1〜30%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜20%を含有することが好ましい。上記のようにガラス板組成範囲を規制すれば、イオン交換性能と耐失透性を高いレベルで両立し易くなる。
元ガラス板G1の板厚は、例えば、1.5mm以下であり、好ましくは1.3mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、特に0.1mm以下である。強化ガラス板基板の板厚が小さい程、強化ガラス板基板を軽量化することでき、結果として、デバイスの薄型化、軽量化を図ることができる。なお、生産性等を考慮すれば元ガラス板G1の板厚は0.01mm以上であることが好ましい。
元ガラス板G1の主面Sの寸法は任意に設定可能であるが、例えば、480×320mm〜3350×3950mmである。ここで、主面Sとは、板厚方向に対向する表面を意味する。
元ガラス板G1は、例えば、オーバーフローダウンドロー法を用いて成形されたものである。なお、元ガラス板G1の成形方法や加工状態は任意に選択しても良い。例えば、元ガラス板G1はフロート法を用いて成形され、主面Sおよび端面Eは研磨加工されたものであっても良い。
次いで、上記準備工程の後、図1B、Cの選択強化工程の処理を実施する。選択強化工程は、元ガラス板G1の表面の一部に設定した選択領域(周縁部S2および端面E)において、当該選択領域以外の非選択領域(中央部S1)よりも深い圧縮応力層を形成する処理を行う工程である。選択強化工程は、成膜工程、選択イオン交換工程、および膜除去工程を含む。
選択強化工程では、先ず、図1Bに示す成膜工程の処理を実施する。成膜工程は、元ガラス板G1の表面の少なくとも一部に設定された非選択領域にイオン透過防止膜Mを形成して膜付ガラス板G2を得る工程である。本実施形態では、図2に示すように元ガラス板G1の表裏主面の中央部S1を非選択領域とした場合を一例として説明する。なお、図1Bは図2におけるAA矢視断面図に相当する。元ガラス板G1の表面のうち、中央部S1以外の領域、つまり周縁部S2および端面Eは選択領域であり、露出した状態とされている。なお、周縁部S2は主面Sのうち中央部S1を取り囲む領域である。イオン透過防止膜Mは、後述の選択イオン交換工程において、元ガラス板G1表層のイオン交換を行う際にイオンの透過を抑制または遮断する膜層である。
イオン透過防止膜Mの材質としては、イオン交換されるイオンの透過を抑制または遮断可能であれば任意の材質を用いて良い。交換されるイオンがアルカリ金属イオンである場合、イオン透過防止膜Mは、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、金属炭窒化物などの膜であることが好ましい。また耐熱性や化学的耐久性に優れた炭素材料や金属、合金もイオン透過防止膜Mとして使用可能である。より詳細には、イオン透過防止膜Mの材質としては、例えば、SiO2、Al2O3、SiN、SiC、Al2O3、AlN、ZrO2、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、HfO2、SnO2、カーボンナノチューブ、グラフィン、ダイヤモンドライクカーボン、ステンレスの中から1種類以上を含む膜とすることができる。
特にSiO2をイオン透過防止膜Mの主成分とすれば、安価且つ容易にイオン透過防止膜Mを形成可能であり、反射防止膜としても機能し得るため、好ましい。イオン透過防止膜Mは、SiO2のみから成る膜として良い。具体的には、イオン透過防止膜Mは質量%でSiO2を99%以上含有する組成を有するものとして良い。
また、イオンの透過を確実に遮断する場合には、SiO2を主成分とし、Al2O3を含む膜をイオン透過防止膜Mとして用いることが好適である。この場合、イオン透過防止膜Mは、質量%でSiO2 20〜99%、Al2O3 1〜80%を含有する組成を有することが好ましい。
イオン透過防止膜Mの厚さは、イオン透過の遮断および抑制が可能であれば任意の厚さであって良い。ただし、イオン透過防止膜Mの厚さが過大であると、成膜時間や材料コスト等が増大するため、イオン透過の遮断および抑制が可能な範囲で薄く形成することが好ましい。具体的には、イオン透過防止膜Mの膜厚は、例えば1〜5000nmが好ましく、より好ましくは50〜4000nmである。
イオン透過防止膜Mの成膜方法は、スパッタ法や真空蒸着法などのPVD法(物理気相成長法)、熱CVD法やプラズマCVD法などのCVD法(化学気相成長法)、ディップコート法やスリットコート法などのウェットコート法を用いることができる。特にスパッタ法、ディップコート法が好ましい。スパッタ法を用いた場合、イオン透過防止膜Mを容易に均一に形成できる。イオン透過防止膜Mの成膜箇所は任意の手法で設定して良い。例えば、選択領域(周縁部S2、端面E)をマスクした状態で成膜を行うことができる。また、予めシート状に成形したイオン透過防止膜Mを元ガラス板G1の主面に接合して成膜しても良い。
なお、本実施形態では、SiO2およびAl2O3を含有し、膜厚が100nm以上であり、アルカリ金属イオンの透過を遮断可能なイオン透過防止膜Mを形成した場合を一例として説明する。
次いで、上記成膜工程の後、図1Cに示す選択イオン交換工程の処理を実施する。選択イオン交換工程は、膜付ガラス板G2をイオン交換法により化学強化して膜付強化ガラス板G3を得る工程である。具体的には、アルカリ金属イオンを含む溶融塩T1に膜付ガラス板G2を浸漬してイオン交換する。本実施形態における溶融塩T1は、例えば、硝酸カリウム溶融塩である。
選択イオン交換工程における溶融塩T1の温度は任意に定めて良いが、例えば、350〜500℃、好ましくは370〜480℃、より好ましくは380〜450℃、さらに好ましくは380〜400℃である。また、膜付ガラス板G2を溶融塩T1中に浸漬する時間は任意に定めて良いが、例えば、0.1〜150時間、好ましくは0.3〜100時間、より好ましくは0.5〜50時間である。
上記選択イオン交換工程では、膜付ガラス板G2の表面のうち、イオン透過防止膜Mが設けられていない非成膜領域(周縁部S2および端面E)においてガラス板中のナトリウムイオンと溶融塩T1中のカリウムイオンとが交換され、圧縮応力層Cが形成されるとともに膨張変形が生じる。一方、膜付ガラス板G2の表面のうち、イオン透過防止膜Mが設けられた中央部S1では、イオンが遮断されるため、イオン交換が行われず、圧縮応力層の形成および膨張変形が生じない。このような結果、選択イオン交換工程において得られる膜付強化ガラス板G3は、端部においてのみ圧縮応力層Cを有し、且つ当該端部が盛り上がった形状、より具体的には中央部S1と周縁部S2との間に段差を有する形状を成す。
次いで、上記選択イオン交換工程の後、図1Dに示す膜除去工程および平坦化工程の処理を実施する。
膜除去工程は、膜付強化ガラス板G3からイオン透過防止膜Mを除去する工程である。具体的には、イオン透過防止膜Mを研磨によって除去する。研磨装置としては、周知の研磨装置を用いることができ、両面研磨装置を用いることが好ましい。
なお、研磨に限らず他の手法を用いてイオン透過防止膜Mを除去しても良い。例えば、エッチング液を付着させてイオン透過防止膜Mを除去しても良い。イオン透過防止膜MがSiO2を含有する膜である場合、例えば、フッ素、TMAH、EDP、KOH、NAOH等を含む溶液をエッチング液として用いることができ、特にフッ酸溶液をエッチング液として用いることが好ましい。なお、フッ酸溶液を用い、ガラスの寸法を変更することなくイオン透過防止膜Mのみを除去する場合には、当該フッ酸溶液におけるHFの濃度を10%以下とすることが好ましい。
平坦化工程は、選択強化工程において膨張した選択領域の少なくとも一部を除去することにより、ガラス板の主面Sを平坦化する工程である。具体的には、中央部S1より突出している周縁部S2の膨張部位Bを除去することで主面Sを平坦化する。膨張部位Bは、研磨またはエッチングにより除去可能である。膨張部位Bのみを選択的に除去することが好ましいが、中央部S1も合わせて研磨またはエッチングしても良い。このようにすれば、より高い平坦性を得られるとともに、平坦化の処理後の中央部S1と周縁部S2との面の状態を均一化できる。平坦化工程の処理は、膜付強化ガラス板G3の両主面について行うことが好ましいが、用途に応じて一方の主面のみについて行っても良い。
膜除去工程および平坦化工程の処理は、各々個別に実行して良いが、同一の装置で略同時に行うことも可能である。例えば、膜除去工程および平坦化工程の処理は、同一の研磨装置、或いは同一のエッチング装置を用いて行うことができ、特に同一の研磨装置を用いることが好ましい。このような方法によれば、膜除去工程および平坦化工程の処理を容易且つ効率的に実行可能である。
上記膜除去工程および平坦化工程の処理により、平坦な主面を有し、且つ、周縁部S2および端面Eにおいて中央部S2より深い圧縮応力層Cを有する強化ガラス板G4を得られる。すなわち、強化ガラス板G4は、端縁部において高い耐衝撃性を有しつつ、内部の引張応力を低減でき、当該引張応力に起因する破壊が発生し難いガラスとなっている。
上述の選択イオン交換工程においてイオン透過防止膜Mによりイオンの透過が完全に遮断されていた場合には、強化ガラス板G4の中央部S1には圧縮応力層Cが形成されていないため、中央部S1が強化されていないガラス板となっている。この場合、以下の全体強化工程を上記膜除去工程および平坦化工程の処理に次いで行うことによって、中央部S1においても圧縮応力層Cを形成し、中央部S1における強度を向上することが好ましい。
全体強化工程は、図1Eに示すように、強化ガラス板G4の表面全体に溶融塩を接触させて表層のイオンを交換する工程である。具体的には、アルカリ金属イオンを含む溶融塩T2に強化ガラス板G4を浸漬してイオン交換し、中央部S1において周縁部S2および端面Eより浅い圧縮応力層Cを有する強化ガラス板G5を得る。溶融塩T2は、例えば、硝酸カリウム溶融塩である。
全体強化工程における溶融塩T2の温度は任意に定めて良いが、例えば、350〜500℃、好ましくは370〜480℃、より好ましくは380〜450℃である。溶融塩T2の温度が450℃以下であれば、温度に起因する水素イオン濃度指数(pH)の値の変動を抑制し易くなる。また、強化ガラス板G4を溶融塩T2中に浸漬する時間は任意に定めて良いが、例えば、0.1〜72時間、好ましくは0.3〜50時間、より好ましくは0.5〜24時間である。
溶融塩T2は、上述の溶融塩T1と同様のものであっても良い。すなわち、選択強化工程において用いた塩浴に強化ガラス板G4を再度浸漬して良い。この場合、単一の塩浴で複数工程の処理を行うことができるため、製造設備のコストを抑制できる。
また、溶融塩T2は、溶融塩T1とは異なるものであって良いし、全体強化工程における処理温度および処理時間は、選択イオン交換工程の処理温度および処理時間と異なっていて良い。例えば、全体強化工程におけるイオン交換の処理時間は、選択イオン交換工程における処理時間より短いことが好ましい。このような処理によれば、中央部S2における圧縮応力層Cの深さが過剰になることがなく、引張応力の増加を抑制できる。
なお、全体強化工程の後、さらに仕上げ加工工程の処理を実施しても良い(図示せず)。仕上げ加工工程では、強化ガラス板G5の表面、例えば主面Sおよび端面Eの少なくとも何れかを研磨加工する。全体強化工程の処理によって強化ガラス板G5の寸法や表面状態が製品規格等の所望の状態でない場合、このような仕上げ加工工程の処理を実施することによって所望の状態にすることができる。
以上に説明した通り、本発明の実施形態に係る強化ガラス板の製造方法によれば、高い平坦性を有し且つ端面からの破損の少ない強化ガラス板G4、G5を安定して効率良く製造できる。
<第二の実施形態>
上記第一の実施形態ではイオン透過防止膜Mによりイオンの透過が完全に遮断される場合について説明したが、イオン透過防止膜Mとしてイオンの透過を若干許容する膜を使用しても良い。図3A〜Dは本発明の第二の実施形態に係る強化ガラス板の製造方法の概略を示す図である。第二の実施形態ではイオンの透過が若干許容されるイオン透過防止膜Mを用いた点以外、各工程の処理は上述第一の実施形態と同様であって良い。
上記第一の実施形態ではイオン透過防止膜Mによりイオンの透過が完全に遮断される場合について説明したが、イオン透過防止膜Mとしてイオンの透過を若干許容する膜を使用しても良い。図3A〜Dは本発明の第二の実施形態に係る強化ガラス板の製造方法の概略を示す図である。第二の実施形態ではイオンの透過が若干許容されるイオン透過防止膜Mを用いた点以外、各工程の処理は上述第一の実施形態と同様であって良い。
第二の実施形態の場合、図3Cに示すように、選択イオン交換工程において、中央部S1においてもイオン交換が行われるため、中央部S1に圧縮応力層Cが形成される。但し、中央部S1では、周縁部S2に比べてイオン交換が抑制されるため、中央部S1における圧縮応力層Cの深さは周縁部S2の圧縮応力層Cの深さに比べて小さく、厚さ方向の膨張量も周縁部S2の膨張量より小さい。したがって、得られる膜付強化ガラス板G3は、端部が盛り上がり中央部S1と周縁部S2との間に段差を有する形状となる。故に、高い平坦性を有する強化ガラス板G4を得るためには図3Dに示すように平坦化工程の処理が必要となる。
また、第二の実施形態では選択イオン交換工程の処理で中央部S1に圧縮応力層Cが形成されるため、中央部S1における圧縮応力層Cの深さや圧縮応力が充分である場合には、上述の全体強化工程を省略可能である。一方、中央部S1に形成される圧縮応力層Cの深さや圧縮応力が充分でない場合には、さらに全体強化工程を実施することが好ましい。
<第三の実施形態>
元ガラス板G1における周縁部S2は面取り面であっても良い(例えば図4A)。また、面取り面は、例えば、図4Aに示すような湾曲面であって良いし、主面Sに対して傾斜した平面であっても良い。図4A〜Eは本発明の第三の実施形態に係る強化ガラス板の製造方法の概略を示す図である。第三の実施形態では周縁部S2が面取り面である点以外、各工程の処理は上述第一の実施形態と同様である。
元ガラス板G1における周縁部S2は面取り面であっても良い(例えば図4A)。また、面取り面は、例えば、図4Aに示すような湾曲面であって良いし、主面Sに対して傾斜した平面であっても良い。図4A〜Eは本発明の第三の実施形態に係る強化ガラス板の製造方法の概略を示す図である。第三の実施形態では周縁部S2が面取り面である点以外、各工程の処理は上述第一の実施形態と同様である。
なお、上記に示した任意の工程の前後において、切断加工、端面加工、および孔あけ加工の何れかの加工を実施する加工工程を設けても良い。また、上記に示した任意の工程の前後において、ガラス板に洗浄および乾燥処理を適宜行なって良い。
また、上記実施形態では溶融塩T1、T2が、硝酸カリウム溶融塩である場合を一例として説明したが、これに限らずガラス板のイオン交換に用いられる周知の溶融塩を代替して、或いは組み合わせて用いて良い。例えば、溶融塩T1、T2は、硝酸カリウム溶融塩と硝酸ナトリウム溶融塩の混合塩であっても良い。
また、上記実施形態では、ナトリウムイオンとカリウムイオンとを交換して化学強化する場合を例示したが、任意のイオンの交換により化学強化しても良い。例えば、リチウムイオンとナトリウムイオンとを交換したり、リチウムイオンとカリウムイオンとを交換したりして化学強化しても良い。この場合、元ガラス板G1は、ガラス組成として、質量%でLiO2を0.5〜7.5%含有することが好ましく、例えば3.0%或いは4.5%含有する。
また、選択強化工程の処理は上記手法に限らず、例えば、選択領域のみイオン交換用の溶融塩に浸漬したり、溶融塩を塗布する等して、部分的に深い圧縮応力層Cを形成しても良い。
ここで、強化ガラス板の応力特性(圧縮応力層の深さ等)は、例えば折原製作所製FSM−6000を用いて測定することができる。アルミノシリケート系ガラスの圧縮応力層の深さが100μmを超える場合や、リチウムイオンとナトリウムイオンのイオン交換を行った場合は、強化ガラス板の応力特性は、例えば折原製作所製SLP−1000を用いて測定することができる。強化ガラス板を切断する等して断面試料を作製できる場合は、例えばフォトニックラティス社製WPA−microや東京インスツルメンツ社製Abrioを用いて内部応力分布を観測し、応力深さを確認することが望ましい。
本発明の強化ガラス板およびその製造方法は、タッチパネルディスプレイ等に用いられるガラス板基板およびその製造方法等として有用である。
G1 元ガラス板
G2 膜付ガラス板
G3、膜付強化ガラス板
G4、G5 強化ガラス板
M イオン透過防止膜
T1 第一溶融塩
T2 第二溶融塩
G2 膜付ガラス板
G3、膜付強化ガラス板
G4、G5 強化ガラス板
M イオン透過防止膜
T1 第一溶融塩
T2 第二溶融塩
Claims (10)
- ガラス板表層のイオンを交換する強化ガラス板の製造方法であって、
前記イオンの交換により、前記ガラス板の表面の一部に設定した選択領域の厚みを、当該選択領域以外の非選択領域の厚みよりも大きくするとともに、前記選択領域において前記非選択領域よりも深い圧縮応力層を形成する選択強化工程と、
前記選択強化工程において膨張した前記選択領域の少なくとも一部を除去することにより、当該ガラス板の主面を平坦化する平坦化工程と、を備えることを特徴とする、強化ガラス板の製造方法。 - 前記平坦化工程の後に、前記ガラス板の表面全体に溶融塩を接触させて前記ガラス板表層のイオンを交換する全体強化工程をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 全体強化工程の後、前記ガラス板の表面を研磨加工する仕上げ加工工程をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記平坦化工程において、前記膨張した前記選択領域の少なくとも一部を研磨またはエッチングによって除去することを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記選択強化工程は、
前記非選択領域に前記イオンの透過を抑制または遮断するイオン透過防止膜を成膜する成膜工程と、
前記イオン透過防止膜が形成された前記ガラス板に溶融塩を接触させて前記イオンを交換する選択イオン交換工程と、
前記選択イオン交換工程の後に、前記イオン透過防止膜を除去する膜除去工程とを備えることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の強化ガラス板の製造方法。 - 前記膜除去工程において、前記イオン透過防止膜を研磨またはエッチングによって除去することを特徴とする、請求項5に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記平坦化工程および前記膜除去工程の処理を同一の研磨装置で行うことを特徴とする、請求項6に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記非選択領域が前記ガラス板の表裏主面の中央部であることを特徴とする、請求項5から7の何れか1項に記載の強化ガラス板の製造方法。
- 前記ガラス板は、ガラス板組成として質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 1〜30%、Na2O 0〜20%、K2O 0〜20%を含有するガラス板であることを特徴とする、請求項1から8の何れか1項に記載の強化ガラス板の製造方法。
- ガラス板表層のイオンを交換する強化ガラス板の製造方法であって、
主面の一部に設定された非選択領域に前記イオンの透過を抑制または遮断するイオン透過防止膜を備えた膜付ガラス板に溶融塩を接触させてイオン交換することにより、前記非選択領域以外の選択領域の厚みを前記非選択領域よりも大きくするとともに、前記選択領域において前記非選択領域よりも深い圧縮応力層を形成する選択強化工程と、
前記選択強化工程において膨張した前記選択領域の少なくとも一部を除去することにより、当該ガラス板の主面を平坦化する平坦化工程と、を備えることを特徴とする、強化ガラス板の製造方法。
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