JPWO2013151169A1 - ハードコート層を有する積層体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記ハードコート層(I)上にシリカ膜(II)を更に有し、
前記ハードコート層(I)内において、シリカ膜(II)と接する側にシロキサン系重合体成分が相対的に多く存在し、
基材側に有機系重合体成分が相対的に多く存在する、
積層体に関する。
(A)下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシランの加水分解・縮合物を含んでなり、質量平均分子量が2,000以下のシロキサン系オリゴマー、
R1 aSi(OR2)4-a (1)
(式中R1は炭素数1〜10の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示し、aは1〜3の整数を示す。)
(B)下記式(2)で示されるエポキシ基含有アルコキシシラン、
R3R4 bSi(OR5)3-b (2)
(式中、R3はエポキシ基を有する有機基を示し、R4は炭素数1〜10の有機基を示す。また、R5は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示し、bは0〜2の整数を示す。)
(C)有機系重合体、及び
(D)活性エネルギー線感応性酸発生剤、
を含有する活性エネルギー線硬化性組成物である積層体に関する。
本発明の積層体はより詳細には、プラスチック基材上に、加水分解性ケイ素化合物誘導体を含有する活性エネルギー線硬化性組成物(I')を硬化してなるハードコート層(I)からなる第一層と、シリカ膜(II)からなる第二層が形成されたものである。前記ハードコート層(I)は、プラスチック基材上に形成されており、前記シリカ膜(II)は、ハードコート層(I)を挟んでプラスチック基材とは反対側に位置する。本発明の積層体の断面の模式図を図1に示す。
これは、(A)活性エネルギー線硬化性シロキサン系無機被膜に硬化後も残存シラノールが存在し、シリカ膜前駆体であるシラン等の活性ガスまたはポリシラザンと化学的結合を形成しうることと、(B)活性エネルギー線硬化性シロキサン系無機被膜の表面に非常に微細な凹凸構造が形成されるため、ポリシラザンが凹凸面に入り込むことによって、物理的な結合が形成されることの二つの理由によると考えられる。
(A)成分は、下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシランの加水分解・縮合物を含んでなる、質量平均分子量が2,000以下のシロキサン系オリゴマーである。
R1 aSi(OR2)4-a (1)
(式中R1は炭素数1〜10の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示し、aは1〜3の整数を示す。)
本発明で使用されるオルガノアルコキシシラン(1)は上式(1)で示される化合物である。式中R1は炭素数1〜10の有機基を示す。炭素数1〜6がより好ましい。R1の炭素数が前記範囲内であれば硬化被膜の有機性が比較的低くなり、第二層であるシリカ膜との密着性が良くなる傾向にある。前記有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、グリシジル基等が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フェニル基、グリシジル基、グリシドキシプロピル基等が挙げられる。これらの基は、塩素、臭素、ヨウ素に代表されるハロゲン、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよい。置換基数は好ましくは1〜3、より好ましくは1である。R2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示す。加水分解・縮合の反応が速い点で、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。R2の炭素数が前記範囲であれば加水分解しやすいため、オリゴマーが合成しやすく、且つ被膜の硬化度が高くなる傾向にある。
アルキルシリケートの具体例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、イソブチルシリケート、n−ブチルシリケート及びこれらのオリゴマーが挙げられる。アルキルシリケートのオリゴマーとしては、例えば、下式(1”)で示される化合物が挙げられる。これらの中で、加水分解・縮合の反応が速い点で、R6〜R9の総てがメチル基であるメチルシリケート及びR6〜R9の総てがエチル基であるエチルシリケートが好ましい。式(1”)において、nが1〜7の整数で示される化合物が好ましい。n=1〜7であれば硬化後の架橋密度が高いことから発生するクラックを抑制できる傾向にある。
これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
(A)成分のMwが2,000以下であれば、本硬化被膜の初期ヘイズを低くすることができ、また、基材との密着性が良好となる。
尚、本発明において、「加水分解・縮合」とは、加水分解の後に縮合させることをいい、「加水分解・縮合物」とは、加水分解・縮合で得られるものをいう。
また、本発明において、(A)成分のMwはゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定して得られるポリスチレン換算における値をいう。
本発明においては、上記の加水分解に際して発生するアルコールは系外に留去することができる。
シラン系単量体の加水分解に続く縮合の方法としては、例えば、加水分解された混合液をそのまま放置する方法が挙げられる。縮合の際、加水分解された混合液のpHを中性付近(例えばpH6〜7)に制御することにより、縮合の進行を速めることができる。縮合に際して発生する水は系外に留去することができる。
また、加水分解に続けて縮合させる方法としては、オルガノアルコキシシラン(1)をアルコールに溶解し、更に水(オルガノアルコキシシラン(1)1モルに対して水1〜100モル)を加えた混合液を撹拌しながら加熱(例えば30〜100℃)する方法が挙げられる。
本発明で使用される(B)成分は式(2)で示される化合物であることが好ましい。
R3R4 bSi(OR5)3-b (2)
式中、R3はエポキシ基を有する有機基を示し、R4は炭素数1〜10の有機基を示す。また、R5は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示し、bは0〜2の整数を示す。
R3の「エポキシ基を有する有機基」としては、エポキシ基を有する、炭素数1〜10の、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、これらの基は、直鎖、分岐鎖、環状基のいずれであってもよい。エポキシ基は、3,4−エポキシシクロヘキシルのように環状基の環上に位置していてもよく、また、3−グリシドキシプロピル基のように、置換基としてグリシジル基を有していてもよい。
R4の「炭素数1〜10の有機基」としては、炭素数1〜10の、アルキル基又はアルコキシ基が挙げられる。
本発明においては、必要に応じて、(B)成分として、式(2)以外のエポキシ基含有オルガノシランを含有することができる。
(B)エポキシ基含有アルコキシシランは、下記一般式(4)であることが好ましい。
(上式中、R11はメチル基またはエチル基を示し、nは3〜1の整数を示す。)
本発明において「シロキサン系重合体成分」とは、(A)成分のシロキサン系オリゴマー及び(B)成分のエポキシ基含有アルコキシシラン由来の重合体成分を意味する。
本発明で使用される有機系重合体は、特に限定されないが、透明性の観点から、透明性の良好な樹脂が好ましく、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用できる。
尚、本発明において、「(メタ)アクリル酸」及び「(メタ)アクリレート」はそれぞれ「アクリル酸」又は「メタクリル酸」及び「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
「シラノール又はアルコキシシランと反応性を有する官能基」としては、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基、水酸基、アミノ基及びエポキシ基が挙げられる。
また、上記の(メタ)アクリル系樹脂以外の重合体としては、例えば、ポリエステルポリオール、エポキシ樹脂及びポリビニルアルコールが挙げられる。
本発明においては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂を得るために使用される単量体としては、必要に応じて上記単量体と共重合可能な単量体を併用することができる。上記単量体と共重合可能な単量体としては例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ソルビン酸等のカルボキシル基含有ビニル単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロ−ル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ダイアセトンアクリレ−ト、ダイアセトンメタクリレ−ト、アセトニルアクリレート、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール等のアルデヒド基又はケト基に基づくカルボニル基を有するビニル単量体、メタクリルアミド、アクリルアミド、クロトンアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド基含有ビニル単量体、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有ビニル単量体、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルエチルジメトキシシラン、β−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルエチルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、イソプロペニルトリメトキシシラン、イソプロペニルメチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン等のケイ素含有不飽和単量体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル単量体、ブタジエン等のオレフィン系単量体等が挙げられる。また、必要に応じて、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート等の架橋剤を使用することができる。
(C)成分として、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂の中では、ハードコート層(I)が相分離しやすい点で側鎖に反応性官能基を持たないポリマーが好ましく、透明性及びガラス転移温度並びに硬化被膜の硬度及び基材への密着性の点で、ポリメタクリル酸メチルが好ましい。
本発明で使用される(D)成分は可視光線、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により酸を発生して(A)成分及び(B)成分に重縮合反応を起こさせる化合物(活性エネルギー線感応性酸発生剤)である。
(D)成分としては、短時間で硬化被膜を形成できる点で、可視光線及び紫外線照射により酸を発生するものが好ましい。
また、(D)成分としては、溶剤を揮発させる加熱工程で硬化度を上げるため、可視光線及び/又は紫外線によっても酸を発生し、更に熱によっても酸を発生するものが好ましい。
(上式中、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、炭素数1〜10の有機基、ハロゲン基又は水酸基を表し、R9は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表し、R10は、芳香族炭化水素を含む有機基、又は置換基を有する芳香族炭化水素を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。)
R6、R7及びR8が表す炭素数1〜10の有機基としては、アルキル基、アセトキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。R9が表す炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられる。R10が表す芳香族炭化水素を含む有機基としては、フェニル基、ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基が挙げられる。又はR10が表す芳香族炭化水素としては、フェニル基、ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基が挙げられ、置換基としては、アルキル基が挙げられる。X-が表すカウンターアニオンとしては、SbF6 -、PF6 -、AsF6 -、BF4 -、CF3SO3 -などが挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(I')は(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する。
上記組成物中の(A)成分と(B)成分の配合量としては、(A)成分の固形分100質量部に対して(B)成分の固形分3〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。(B)成分の固形分が3質量部以上で、本組成物の硬化被膜からなる積層体の耐候性が良好となる傾向がある。また、(B)成分の固形分が200質量部以下で、硬化被膜の硬度の低下及び硬化被膜の基材への密着性の低下を抑制できる傾向にある。
尚、(A)成分又は(B)成分の固形分とは、(A)成分又は(B)成分の縮合が完結したときの(A)成分又は(B)成分に基づく縮合後の構造の理論量をいう。
また、硬化性組成物中には、必要に応じて、無機微粒子、染料、顔料、顔料分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
上記活性エネルギー線硬化性組成物中に含有される溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、セロソルブ及び芳香族化合物が挙げられる。
本発明の塗布膜Iは、基材表面に、上記活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して得られる。
基材への本組成物の塗布方法としては、例えば、ディップ法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、スピンコート法、フローコート法及び静電塗装法が挙げられる。
本発明のハードコート層(I)は、基材等の表面に塗布された上述の塗布膜を活性エネルギー線照射により硬化して得られる。
なお、本明細書では、上述の塗布膜を硬化したもの、すなわち(A)〜(D)成分を含む活性エネルギー線硬化性組成物(I')を硬化してなる層を「ハードコート層(I)」と呼ぶ。
単に「ハードコート層」という場合には、前記ハードコート層(I)とシリカ膜(II)をあわせた層(膜)を意味する。
活性エネルギー線の具体例としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマーレーザー及び太陽光を光源とする光が挙げられる。これらの中で、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯及びメタルハライドランプを光源とした光が好ましい。
活性エネルギー線は単独で又は2種以上を併せて使用できる。
活性エネルギー線の照射エネルギー量としては、例えば、紫外線を照射する場合においては、積算光量として100〜5,000mJ/cm2が好ましい。
セッティング条件としては、必要に応じて一つの温度条件でのセッティング又は温度の異なる2以上のセッティングの条件とすることができる。セッティングの具体例としては、60〜120℃で1〜30分のセッティングが挙げられる。1分以上の加熱で溶剤を十分に揮発させることができる傾向にある。また、30分以下の加熱で生産性を高く維持できる傾向にある。
本発明のハードコート層(I)の1つの実施態様において、相対的にシロキサン系重合体成分を多く含有する第一の相とそれ以外の第二の相を有する。第一の相はハードコート層(I)においてシリカ膜(II)と接する表層側(シリカ膜(II)との界面側及びその近傍域)に存在し、また第二の相は第一の相よりも基材側に位置することが好ましい。第一の相は第二の相と比べて「相対的に」シロキサン系重合体を多く含有する。また、第二の相は第一の相と比べて「相対的に」有機系重合体を多く含有する。
本発明においては、必要に応じて、第一の相と第二の相の間に、シロキサン系重合体と有機系重合体(C)を含む他の成分とが混ざり合った中間相を有していてもよい。
活性エネルギー線硬化性組成物がハードコート層(I)になる過程で、自己組織的に相分離構造を取ることで、ハードコート層(I)の基材側に形成された第二の相はプラスチック基材と良い密着性を示し、シロキサン系重合体成分を相対的に多く含有する表層側の第一の相は、無機化合物であるシリカ膜(II)との良い密着性を示す。
本発明の他の実施態様において、ハードコート層(I)と基材の間にプライマー層を設けても良い。プライマー層を設ける場合には、ハードコート層(I)の第二の相の最内層、すなわちプライマー層と接する面において、第一の相と同様にシロキサン系重合体成分が比較的多く含まれる相が形成されていても良い(図2)。
この様な最内層にシロキサン系重合体成分が偏在するのは、硬化過程においてプライマー層に活性エネルギー線硬化組成物(I’)の一部の成分が染込む又は反応し、硬化反応の起点となっているためと推測される。
上記ハードコート層(I)が、上記第一の相と第二の相を有する場合、表層の第一の相の厚みとしては0.1〜25μmが好ましく、0.3〜15μmがより好ましい。
第一の相の厚みが0.1μm以上であれば、シリカ膜(II)との密着性を良好とすることができる傾向にある。また、第一の相の厚みが25μm以下であれば、硬化被膜の耐クラック性を良好とすることができる傾向にある。
上記ハードコート層(I)が、上記第一の相及び第二の相を有する場合、第二の相の厚みとしては0.1〜10μmが好ましい。第二の相の厚みが0.1μm以上であれば、ハードコート層(I)の基材への密着性を良好とすることができる傾向にあり、10μm以下であれば、上記ハードコート層(I)の硬度を良好とすることができる傾向にある。
走査型電子顕微鏡の二次電子像では、本発明のハードコート層(I)は、シロキサン系重合体を主成分とする第一相と、第二相は形態またはコントラストが違って観察される。
乾式成膜法でのシリカ膜(II)の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー法、イオンビームデポジション、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理気相成長法(以下、「PVD」)や、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、エピタキシャルCVD、アトミックレイヤーCVD、catCVD等の化学気相成長法(以下、「CVD」ともいう)等がある。特にこの中でも、成膜温度や成膜速度の点からプラズマCVD法が好ましい。
湿式成膜法でのシリカ膜(II)の形成方法としては、テトラエトキシシラン等のアルコキシシランを加水分解して塗工し、熱または光で硬化させる方法や水ガラス(珪酸アルカリ金属塩水溶液)を用いる方法、ポリシラザン含有被覆組成物を塗布し、ポリシラザンがシリカに転化することにより得られる方法等が挙げられる。
特にこの中でも、シリカ膜の純度、緻密性、コーティング液の貯蔵安定性の面から、ポリシラザン含有被覆組成物を塗布し、ポリシラザンがシリカに転化することにより得られる方法が好ましい。
ポリシラザンは、(−Si−N−)の結合を有する重合体であり、この化学式においてケイ素、窒素原子の結合以外の残りの結合手には、それぞれ水素原子や有機基(アルキル基など)が結合している。また、上記繰り返し単位のみからなる線状構造の重合体ばかりでなく、環状構造が形成されていてもよい。重合体は環状構造のみの繰り返しからなっていてもよく、一部に環状構造を有する線状の重合体であってもよい。
(式中、R10、R20及びR30は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基を表す。但し、R10、R20及びR30の少なくとも1つは水素原子である。)
上記アルキル基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基は炭素数1〜10,アルケニル基は炭素数2〜10、シクロアルキル基は炭素数3〜10、アリール基は炭素数6〜12であることが好ましい。R10、R20及びR30の好ましい基としては、水素原子、アルキル基が挙げられる。
るポリマーの混合物であるが、基本的には分子内に鎖状部分と環状部分を含み、
の化学式で表すことができる。
ポリシラザン含有被覆組成物は、膜厚調製、粘度調整などのため、適宜溶剤で希釈して用いる。
溶剤としてはポリシラザンを溶解するものであれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環族エーテル等のエーテル類が使用できる。
ポリシラザン含有被覆組成物は、低温での硬化促進のための触媒を含むことができる。触媒の種類や量により低温で硬化でき、場合によっては室温でも硬化ができる。触媒としては、より低温でポリシラザンを硬化させうる触媒を用いることが好ましい。そのような触媒としては、たとえば、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルなどの金属の微粒子からなる金属触媒(特開平7−196986参照)、アミン類や酸類(特開平9−31333参照)がある。アミン類としては、たとえば、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノアリールアミン、ジアリールアミン、環状アミンなどがある。酸類としては、たとえば酢酸などの有機酸や塩酸などの無機酸がある。
本発明においては、触媒として低温硬化性である点で3級アミン類が好適に用いられる。
ポリシラザン含有被覆組成物は、上記ポリシラザン、溶剤、触媒を含んでなり、具体的にはAZエレクトロニックマテリアル(株)製 NAX110、NAX120、NL110A、NL120Aが挙げられる。さらに無触媒のポリシラザン含有組成物を配合しても良い。無触媒型の具体例としては、AZエレクトロニックマテリアル(株)製 NN110、NN120が挙げられる。
本発明の積層体は、加水分解性ケイ素化合物誘導体を含有する組成物(I')を硬化してなる第一層ハードコート層(I)の上に、ポリシラザン含有被覆組成物を塗布し、ポリシラザンを硬化することにより成る。ポリシラザン含有被覆組成物の塗布方法としては特に制限されないが、例えば、ディップ法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、スピンコート法、フローコート法などが挙げられる。
ポリシラザンは水または水蒸気存在下で分解、反応してシリカが形成される。硬化方法としては、溶剤を揮発させた後、50〜150℃の低温で加熱する方法、水蒸気存在下で加熱する方法、水に浸漬する方法、数〜20日程度常温環境下で放置する方法などがあげられ、単独でも複数の方法の組み合わせでも良い。また紫外線などの活性エネルギー線照射を組み合わせても良い。
これらの中で、第一層との密着性と耐摩耗性を十分に発現でき、硬化を促進でき、簡便である点で、水に浸漬した後常温で放置する方法が好ましい。数日〜二週間程度で完全硬化に至るが、ポリシラザンは溶剤が揮発してタックフリーになった時点、もしくは不完全でもある程度硬化が進めば所定の硬度に到達しており使用することができる。すなわち、完全硬化前に成形加工や組み立て加工することが可能であり、自動車等の部材製造工程において、多くの工程通過時間を要さない。
ポリシラザン含有組成物を用いて形成されるシリカ膜(II)の厚さは50nm〜2μmであることが好ましい。さらに好ましくは100nm〜1μmである。50nm以上であれば耐摩耗性を発現でき、1μm以下であれば耐クラック性を発現する傾向にある。
一般的に、ポリシラザンから形成されるシリカ膜は膜厚が厚くなれば、クラックが入り易くなる傾向にあり、膜厚を薄くすれば所望の耐摩耗性が得られにくかった。しかし、本発明では加水分解性ケイ素化合物誘導体を含有する組成物(I')を硬化してなる第一層ハードコート層(I)の存在により、シリカ膜の膜厚が薄くても十分な耐擦傷性を発現することが可能となり、併せて優れた耐クラック性を発現することができる。
本発明で使用される基材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体、ポリアリレート、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等の透明プラスチック基材を用いることができる。これらの中で、アクリル樹脂、ポリカーボネートが好適に用いられる。
プライマー層としては、プラスチック基材と密着性のあるものであれば特に限定はされにないが、例えば、(メタ)アクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して硬化したもの、アクリル系重合体を含む溶剤型、または水系エマルションを乾燥または熱硬化させたものなどが挙げられる。この内、(メタ)アクリレート化合物を含有する活性エネルギー線硬化性組成物は、短時間で硬化できることから生産性の面で非常に有利であり、好適に用いられる。
なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
尚、活性エネルギー線硬化性組成物について表記するにあたり、得られる縮合物の固形分とは、原料の縮合が完結したときの原料に基づく縮合後の構造の理論量をいう。
また、シロキサンオリゴマー(A)のMw、基材表面にハードコート層(I)およびシリカ膜(II)が積層された積層体における硬化被膜の初期外観、全光線透過率、初期ヘイズ、初期密着性、耐擦傷性、耐摩耗性試験、耐候性試験及び硬化被膜の層構造について以下の方法で評価した。
積層体の表面の透明性及びクラック又は白化の有無を観察し、初期外観を評価した。
日本電色工業(株)製NDH−2000 Haze Meter(商品名)を用いた。積層体の3ヶ所において全光線透過率及び初期ヘイズを測定し、それぞれの平均値を求めた。
初期ヘイズとしては、1.0%を超えると目視でも白っぽさを認識できるようになるため、1.0%以下であることが好ましい。
積層体の硬化被膜の表面に、カミソリの刃で1mm間隔に縦横11本ずつの切れ目を入れて100個のマス目を作り、セロハンテープを良く密着させた後、45度手前方向に急激に剥がし、硬化被膜が剥離せずに残存したマス目数を計測した。記載に際しては、例えば、マス目が100個中30個残った場合、30/100と表記した。
積層体の硬化被膜の表面を#0000スチールウールで9.8×104Paの圧力を加えて10往復擦り、1cm×1cmの範囲に発生した傷の程度を目視観察し、耐擦傷性を以下の基準で評価した。
A:傷0〜9本(光沢面あり)
B+:傷10〜49本(光沢面あり)
B−:傷50〜99本(光沢面あり)
C:傷100本以上(光沢面あり)
D:光沢面が無い。
また、JIS K7136に準じて、スチールウールでの擦り試験の前後でヘイズ値を測定し、ヘイズ値の増加分により耐擦傷性をΔHzで評価した。ΔHzは、0.5%で以下であることが好ましい。
テーバー摩耗試験器を使用し摩耗輪CS−10F、500g荷重にて500回転摩耗した。テーバー摩耗試験前後でヘイズ値を測定し、ヘイズ値の増加分により耐摩耗性の判定を行った。ヘイズ測定は初期ヘイズと同じ方法で実施した。
尚、ヘイズ値の増加分(ΔHz)は、10%以下であることが好ましい。
積層体の試験片をメタルウェザー耐候試験機(ダイプラウィンテス(株)製、KW−R5TP型)を用いて以下の条件で試験し、120時間後の試験片について初期密着性評価と同様の密着性試験を行い、耐候密着性を評価した。また、暴露120時間後の試験片についてクラックがないか目視観察し、耐候耐クラック性を以下の基準で評価した。
<暴露条件>暴露サイクル
・照射 :温度63℃、湿度70%、UV照射;4時間(照射エネルギー140mW/cm2)
・結露 :温度70℃、湿度90% 4時間
・暗黒 :温度30℃、湿度98% 4時間、暗黒の前後で30秒シャワー有り
<耐クラック性>
○:クラックがない。
×:クラックが発生。
積層体の層構造は走査電子顕微鏡により観察することができる。
積層体の断面をダイヤモンドナイフで切削し、断面出しをして走査電子顕微鏡の二次電子像で観察を行った。
<走査電子顕微鏡>
装置 日立製作所(株)製 S−4000 走査電子顕微鏡
加速電圧 5kV
倍率 5000〜10,000倍
オリゴマーのMwはゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)にて以下の測定条件で求めた。
<GPC測定条件>
装置: Waters社製HPLC(515 HPLC Pump、2414 RI検出器)
カラム:TSKgel:GMHXL(サイズ:7.8mmφ×300mm)×2本
TSKgel:G1000HXL(サイズ:7.8mmφ×300mm)×1本
溶離液:テトラヒドロフラン 流速:1.0mL/分
オーブン温度:40℃
協和界面化学(株)製Drop Master 300を用いて水接触角の測定を行った。
積層体表面の3ヶ所において、水滴2μlを滴下し、30秒経過後の接触角を測定し、平均値を求めた。
屋外用途においては、水接触角が低い方が汚染物質が雨水により洗い流される浄化作用が期待できる。超撥水性でもなく親水性でもない90°近傍は埃などが付着し易い領域である。
加水分解性ケイ素化合物誘導体を含有する組成物(I')として、調製例1〜4の調製を行った。以下に具体的に示す。
メチルトリメトキシシラン(多摩化学工業(株)製、商品名:メチルトリメトキシシラン)90.0g、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−103)10.0g及びイソプロピルアルコール75gを混合攪拌し、均一な溶液とした。このときの仕込みモル比は(メチルトリメトキシシラン)/(フェニルトリメトキシシラン)=93/7となる。
上記の溶液に水75.0gを加え、攪拌しながら80℃で5時間加熱して加水分解・縮合を行い、固形分20%のシロキサン系オリゴマー(A)溶液を得た。シロキサン系オリゴマー(A)のMwは約650であった。
[調製例1]コーティング液Aの調製
シロキサン系オリゴマー(A)として、合成例1で得られたオリゴマーの20%溶液20.0g(固形分換算で4.0g)、エポキシ基含有アルコキシシラン(B)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−403)2.4g、有機系重合体(C)としてポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−85、Mw約280,000)1.0gをγ−ブチロラクトン9.0gに溶解したポリマー溶液5.8g及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(D)としてスルホニウム塩系酸発生剤溶液(三新化学工業(株)製、商品名:サンエイドSI−80L、50%γ−ブチロラクトン溶液)0.23g(固形分換算で0.12g)を配合した。
上記の配合液に、レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)の1%γ−ブチロラクトン溶液0.3g(固形分換算で0.003g)及びγ−ブチロラクトン7.2gを配合し、撹拌混合してとしてコーティング液Aを調製した。
シロキサン系オリゴマー(A)として、合成例1で得られたオリゴマーの20%溶液20.0g(固形分換算で4.0g)、エポキシ基含有アルコキシシラン(B)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−403)2.4g、有機系重合体(C)としてポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−85、Mw約280,000)1.0gをγ−ブチロラクトン9.0gに溶解したポリマー溶液5.8g、活性エネルギー線感応性酸発生剤(D)としてスルホニウム塩系酸発生剤溶液(三新化学工業(株)製、商品名:サンエイドSI−80L 0.46g(固形分換算で0.23g)を配合した。
更に、1%にγ−ブチロラクトンで希釈したレベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.3g(固形分換算で0.003g)、γ−ブチロラクトン7.2gを配合し、撹拌混合してコーティング液Bを調製した。
シロキサン系オリゴマー(A)として、合成例1で得られたオリゴマーの20%溶液20.0g(固形分換算で4.0g)、エポキシ基含有アルコキシシラン(B)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−403)2.4g、活性エネルギー線感応性酸発生剤(D)としてスルホニウム塩系酸発生剤溶液(三新化学工業(株)製、商品名:サンエイドSI−80L)0.23g(固形分換算で0.12g)を配合した。更に、1%にγ−ブチロラクトンで希釈したレベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.6g(固形分換算で0.006g)、γ−ブチロラクトン9.4gを配合し、撹拌混合して有機系重合体(C)を含まない活性エネルギー線硬化性の組成物を調製した。
シロキサン系オリゴマー(A)として、合成例1で得られたオリゴマーの20%溶液20.0g(固形分換算で4.0g)、有機系重合体(C)として、メチルメタクリレート重合体(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−85、重量平均分子量約280,000)1.0gをγ−ブチロラクトン9.0gに溶解したポリマー溶液4.1g、活性エネルギー線感応性酸発生剤(D)としてスルホニウム塩系酸発生剤溶液(三新化学工業(株)製、商品名:サンエイドSI−80L)0.16g(固形分換算で0.08g)を配合した。更に、1%にγ−ブチロラクトンで希釈したレベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.4g(固形分換算で0.004g)、γ−ブチロラクトン3.8gを配合し、撹拌混合してエポキシ基含有アルコキシシラン(B)を含まない活性エネルギー線硬化性の組成物を調製した。
シロキサン系オリゴマー(A)として、合成例1で得られたオリゴマーの20%溶液20.0g(固形分換算で4.0g)、エポキシ基含有アルコキシシラン(B)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−403)2.4g、有機系重合体(C)としてポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−85、Mw約280,000)1.0gをγ−ブチロラクトン9.0gに溶解したポリマー溶液5.8g及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(D)としてスルホニウム塩系酸発生剤溶液(三新化学工業(株)製、商品名:サンエイドSI−80L、50%γ−ブチロラクトン溶液)0.23g(固形分換算で0.12g)を配合した。
上記の配合液に、レベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)の1%γ−ブチロラクトン溶液0.6g(固形分換算で0.006g)及びγ−ブチロラクトン6.9gを配合し、撹拌混合してとしてコーティング液Eを調製した。
シロキサン系オリゴマー(A)として、合成例1で得られたオリゴマーの20%溶液20.0g(固形分換算で4.0g)、エポキシ基含有アルコキシシラン(B)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−403)2.4g、有機系重合体(C)としてポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−85、Mw約280,000)1.0gをγ−ブチロラクトン9.0gに溶解したポリマー溶液5.8g、活性エネルギー線感応性酸発生剤(D)としてスルホニウム塩系酸発生剤溶液(三新化学工業(株)製、商品名:サンエイドSI−80L 0.46g(固形分換算で0.23g)を配合した。
更に、1%にγ−ブチロラクトンで希釈したレベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.6g(固形分換算で0.006g)、γ−ブチロラクトン7.3gを配合し、撹拌混合してコーティング液Fを調製した。
シロキサン系オリゴマー(A)として、合成例1で得られたオリゴマーの20%溶液20.0g(固形分換算で4.0g)、熱硬化触媒として20%に調製した酢酸ナトリウム水溶液0.1gを配合した。更に、1%にγ−ブチロラクトンで希釈したレベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.4g(固形分換算で0.004g)、γ−ブチロラクトン2.8gを配合し、撹拌混合して熱硬化性のシロキサン系組成物を調製した。
保温機能付き滴下ろうと、還流冷却器、攪拌羽および温度センサーを装備したフラスコ中に、ジイソシアネート化合物2mol、ジラウリン酸n−ブチル錫300ppmを仕込み、40℃に加温した。保温機能付き滴下漏斗を40℃に加温した状態でジオール化合物1molを4時間かけて滴下した。40℃にて2時間攪拌し、さらに1時間かけて70℃まで昇温させた。その後ヒドロキシル基を有するアクリレート化合物2molを2時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌することで、ウレタンアクリレートUA1を得た。尚、各化合物として以下を用いた。
ジイソシアネート化合物:ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート
ジオール化合物:3−メチルペンタン構造を有するポリカーボネートジオール(数平均分子量800、(株)クラレ製、商品名クラレポリオールC770)
アクリレート化合物:2−ヒドロキシエチルアクリレート
(メタ)アクリレート化合物として上記で得られたプライマー成分1 30重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートDPHA 30重量部、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート 40重量部、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 10重量部、光安定剤としてビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート 0.5重量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン 1重量部、メチルフェニルグリオキシレート 1重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド 1重量部、溶剤として、酢酸ノルマルブチル 15重量部、エチルカルビトールアセテート 10重量部を配合した。
上記で配合したプライマーを厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板(帝人化成社製、商品名パンライト)に、硬化後の被膜が5〜10μmになるようにフローコート塗装した。次いで、オーブン中で80℃、3分間加熱処理することにより有機溶剤分を揮発させた。その後、空気中で、高圧水銀ランプを用いて波長340nm〜380nmの積算光量が3000mJ/cm2 のエネルギー線を照射して硬化させ、プライマー層が形成されたポリカーボネート基材を得た。
四ツ口フラスコに、シリカゾル(分散媒:イソ−プロパノール、固形分濃度:30質量%、一次平均粒子径:10〜15nm、商品名:IPA−ST、日産化学工業(株)製)200gと、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A−174、日本ユニカー(株)製)38.2gを入れ、攪拌しながら昇温させ、揮発成分の還流が始まると同時に0.001規定の塩酸水溶液13.9gを徐々に滴下させ、滴下終了後、還流下で加水分解を行った。その後アルコール及び水等の揮発成分を留出させ、トルエンを追加し共沸留出させた後、更にトルエンで完全に溶媒置換を行い、トルエンの分散系の表面被覆処理されたコロイダルシリカを得た(反応後の固形分濃度:約60質量%)。
(メタ)アクリレート化合物として上記で得られたプライマー成分1 30質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 30質量部、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート 40質量部、プライマー成分2(表面被覆処理されたコロイダルシリカ)を40質量部、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 10質量部、光安定剤としてビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート 0.5質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン 1.3質量部、メチルフェニルグリオキシレート 1.2質量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド 1.2質量部、溶剤として、酢酸ノルマルブチル 15質量部、エチルカルビトールアセテート 10質量部を配合した。
プライマーAの塗布、硬化と同様に行った。
ポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン(株)製、ダイヤナールBR−85、Mw約280,000)1.0gをγ−ブチロラクトン9.0gに溶解した。
上記で調製したプライマーを厚み3mmのアクリル板(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライトL)にバーコーター(No.26使用)で塗工し、熱風乾燥機で100℃の熱をかけ、30分間乾燥し、溶剤を揮散させた。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
活性エネルギー線硬化性組成物としてコーティング液Aを用い、基材である長さ10cm、幅5cm及び厚み3mmのアクリル板(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライトL、全光線透過率92.6%、ヘイズ0.08%)の表面に適量滴下して、バーコーティング法(バーコーターNo.26使用)にてハードコート層(I)の厚みが3〜6μmとなるように塗布し、基材表面に塗布膜を形成した。
次いで、塗布膜が形成された基材を熱風乾燥機にて100℃で10分セッティングした。
この後、セッティングされた基材を高圧水銀灯((株)オーク製作所製、紫外線照射装置、商品名:ハンディーUV−1200、QRU−2161型)にて、紫外線(UV)照射積算光量1,000mJ/cm2でUVを照射して塗布膜を硬化させた。さらに熱風乾燥機にて100℃で10分ポストキュアを行い、基材表面にハードコート層(I)(約4μm)を形成した。
尚、UV照射量は紫外線光量計((株)オーク製作所製、商品名:UV−351型、ピーク感度波長360nm)にて測定した。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
ハードコート層(I)が積層された積層体の表面に、続いてプラズマCVDによるシリカ膜(II)を形成させた。反応ガスとしてシランガス(SiH4)を使用し、補助ガスとして酸素及び窒素ガスを使用した。反応温度は50℃で、約500nmのシリカ膜(II)を製膜し、シリカ膜(II)を積層した積層体を得た。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
基材として、長さ10cm、幅5cm及び厚み3mmのポリカーボネート板を用い、プライマーとして、上記プライマーAを上記方法で塗布、硬化させた。
続いて、活性エネルギー線硬化性組成物としてコーティング液Bを用い、実施例1と同様にして、ハードコート層(I)(約4μm)を形成させた。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
さらに、実施例1と同様にしてプラズマCVDによるシリカ膜(II)を形成させ、積層体を得た。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
コーティング液Eを用いた以外は実施例1と同様にした。尚、ハードコート層(I)の膜厚は3.5μmであった。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
パーヒドロポリシラザン(AZ Electronic Materials社製 NAX120−20 固形分20質量% アミン系触媒含有 ジブチルエーテル溶液)を脱水したジブチルエーテル(AZ Electronic Materials社製)で希釈し、固形分2質量%に調製した。
第一層であるハードコート層(I)が積層された積層体の表面に、希釈したパーヒドロポリシラザンをバーコーティング(バーコーターNo.6使用)した。溶剤が揮発するまで数分間放置し、水浴に3時間浸漬し硬化反応を促進させた。その後6日間常温で放置し、約130nmのシリカ膜(II)を積層した積層体を得た。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
実施例3と同様にした。
尚、ハードコート層(I)の膜厚は3.5μmであった。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
パーヒドロポリシラザンを4質量%に希釈した以外は、実施例3と同様にした。
尚、得られたシリカ膜(II)の膜厚は500nmであった。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
実施例3と同様にした。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
パーヒドロポリシラザンの硬化方法を、溶剤が揮発するまで数分間放置し、水浴に3時間浸漬した後、熱風乾燥機で50℃、10分加熱した以外は実施例4と同様にした。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
基材としてプライマーAを塗工、硬化させたポリカーボネート板を使用し、活性エネルギー線硬化性組成物としてコーティング液Fを用いた以外は実施例3と同様にした。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
実施例4と同様にした。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
活性エネルギー線硬化性組成物としてコーティング液C(有機系重合体(C)を含まない)を用いた以外は実施例2と同様にした。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
実施例1と同様にした。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
活性エネルギー線硬化性組成物としてコーティング液D(エポキシ基含有アルコキシシラン(B)を含まない)を用いた以外は実施例2と同様にした。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
実施例1と同様にした。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
活性エネルギー線硬化性組成物としてコーティング液D(エポキシ基含有アルコキシシラン(B)を含まない)を用いた以外は実施例1と同様にした。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
実施例1と同様にした。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
実施例3と同様にした。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
シリカ膜を積層しなかった。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
実施例6と同様にした。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
シリカ膜を積層しなかった。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
基材として実施例3に記載したものと同様のアクリル板を用い、ハードコート層(I)(第一層)は積層しなかった。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
実施例4と同様にした。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
プライマーCを塗工、硬化させたアクリル板に、バーコーター(No.26)でコーティング液Dを塗工し、熱風乾燥機で100℃、2時間加熱硬化させた。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
実施例4と同様にした。
[第一層 ハードコート層(I)の形成]
基材としてプライマーBを塗工、硬化させたポリカーボネート板を使用し、加水分解性ケイ素化合物誘導体を含有する活性エネルギー線硬化性組成物(I')は積層しなかった。
[第二層 シリカ膜(II)の形成]
実施例4と同様にした。
実施例1の積層体は、第一層ハードコート層(I)は相分離構造を有しており、基材側に有機系重合体であるポリメタクリル酸メチルが配向し、表層にシロキサン系重合体成分が配向していることが確認された。相対的にシロキサン系重合体を多く含有する第一の相は約3.5μm、第二の相は約0.5μmの厚さであった。第二層シリカ膜(II)(プラズマCVD)は約0.5μmの厚さであった。
実施例3の積層体は、第一層ハードコート層は相分離構造を有しており、基材側に有機系重合体であるポリメタクリル酸メチルが配向し、表層にシロキサン系重合体成分が配向していることが確認された。相対的にシロキサン系重合体を多く含有する第一の相は約2.7μm、第二の相は約0.7μmの厚さであった。第二層シリカ膜(II)(ポリシラザン)は約0.1μmの厚さであった。
実施例6の積層体は、第一層ハードコート層(I)は相分離構造を有しており、表層にシロキサン系重合体成分が配向し、基材側に有機系重合体であるポリメタクリル酸メチルが相対的に多く配向し、さら光硬化型アクリル系プライマー層に接するようにシロキサン系重合体成分が偏在する最内層が存在することが確認された。相対的にシロキサン系重合体を多く含有する第一の相は約0.7μm、第二の相は約4.5μm、第二の相の内の最内層は0.6μmであった。第二層シリカ膜(II)(ポリシラザン)は約0.2μmであった。また、プライマー層は7.5μmであった。
一方、比較例1の積層体はプライマーの上に載ったハードコート層が均一であり、相分離構造を有していないことが確認された。第一層ハードコート層(I)は約3.9μm、第二層シリカ膜(II)(プラズマCVD)は約0.4μmの厚さであった。また、プライマー層は約10μmであった。
実施例1〜6の積層体は、外観、全光線透過率、基材密着性、耐候性(密着性、耐クラック性)、SW耐擦傷性、テーバー摩耗性のすべてに満足するものであった。
これに対し、比較例1〜8では、外観、密着性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性のいずれか一つまたは複数の結果が不良であった。
尚、比較例7では、初期密着性試験により第一層ハードコート層(I)とシリカ膜(II)との間で剥離が生じた。これは、剥がれた被膜の裏面と残った剥離後(基板側)の赤外吸収スペクトルから判断できた。
さらに付加機能として、積層体表面の水接触角を下げ、屋外用途での低汚染性を実現した。高耐摩耗性塗料としては活性エネルギー線硬化性(メタ)アクリル樹脂系塗料やシリコーン系塗料などがあるが、水接触角が70〜90°くらいと高いため、屋外用途では埃や排気ガスなどによる粉塵が付着し易く、雨による自浄作用も期待できない。しかし、シリカ膜を最表層に形成したことにより、水接触角が20〜30°台まで下がり、これまで課題であった低汚染性も期待できる。
また、本発明の積層体は、高度の耐候性及び耐擦傷性が要求される自動車用グレージング材、道路標識、道路遮音壁等の壁材やテラスの屋根材といった屋外用途等の広い分野での利用が期待される。
I:第一層 ハードコート層
I-1:第一の相
I-2:第二の相
I-3:最内層
S:プラスチック基材
S-A:アクリル基材
S-PC:ポリカーボネート基材
P:プライマー層
Claims (11)
- プラスチック基材上にシロキサン系重合体成分と有機系重合体成分を含むハードコート層(I)が積層されてなり、
前記ハードコート層(I)上にシリカ膜(II)を更に有し、
前記ハードコート層(I)内において、シリカ膜(II)と接する側にシロキサン系重合体成分が相対的に多く存在し、
基材側に有機系重合体成分が相対的に多く存在する、
積層体。 - 前記ハードコート層(I)が、下記(A)〜(D)成分を含有する活性エネルギー線硬化組成物(I’)を硬化して形成される、請求項1記載の積層体。
(A)下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシランの加水分解・縮合物を含んでなり、質量平均分子量が2,000以下のシロキサン系オリゴマー、
R1 aSi(OR2)4-a (1)
(式中R1は炭素数1〜10の有機基を示し、R2は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示し、aは1〜3の整数を示す。)
(B)下記式(2)で示されるエポキシ基含有アルコキシシラン、
R3R4 bSi(OR5)3-b (2)
(式中、R3はエポキシ基を有する有機基を示し、R4は炭素数1〜10の有機基を示す。また、R5は炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示し、bは0〜2の整数を示す。)
(C)有機系重合体、及び
(D)活性エネルギー線感応性酸発生剤。 - 前記シリカ膜(II)が、プラズマCVD法により積層されたシリカ膜である、請求項または2に記載の積層体。
- 前記シリカ膜(II)が、ポリシラザンから転化したシリカ膜である、請求項1または2に記載の積層体。
- 前記(D)活性エネルギー線感応性酸発生剤が、可視光線及び/又は紫外線によって酸を発生し、更に熱によっても酸を発生する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の積層体。
- 前記(D)活性エネルギー線感応性酸発生剤が、一般式(3)で示される芳香族スルホニウム塩型酸発生剤である請求項2〜5のいずれか一項に記載の積層体。
(上式中、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、炭素数1〜10の有機基、ハロゲン基又は水酸基を表し、R9は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表し、R10は、芳香族炭化水素を含む有機基、又は置換基を有する芳香族炭化水素を表す。X-は、カウンターアニオンを表す。) - 前記(C)有機系重合体が、(メタ)アクリル系樹脂である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の積層体。
- 前記(B)エポキシ基含有アルコキシシランが、下記一般式(4)である、請求項2〜7のいずれか一項に記載の積層体。
(上式中、R11はメチル基またはエチル基を示し、nは3〜1の整数を示す。) - プラスチック基材上にシロキサン系重合体成分と有機系重合体成分を含むハードコート層(I)が積層されてなり、
前記ハードコート層(I)上にシリカ膜(II)を更に有し、
前記ハードコート層(I)が、シリカ膜(II)と接する側にシロキサン系重合体成分が相対的に多く存在し、シリカ膜(II)と直接接しない側に有機系重合体成分が相対的に多く存在し、更に最内層にシロキサン系重合体成分が偏在している請求項2〜8のいずれか一項に記載の積層体。 - )
前記シリカ膜(II)の膜厚が50nm〜10μmであり、前記ハードコート層(I)の膜厚が0.5〜30μmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層体。 - 請求項5に記載の活性エネルギー線硬化組成物(I’)を、基材に塗布してなる塗布膜に、活性エネルギー線照射することにより塗布膜を硬化させる工程、さらに硬化した塗布膜上にポリシラザンを塗布し、水に浸漬する工程を含む、請求項4に記載の積層体の製造方法。
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