JPWO2012002208A1 - 析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents
析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2012002208A1 JPWO2012002208A1 JP2011546519A JP2011546519A JPWO2012002208A1 JP WO2012002208 A1 JPWO2012002208 A1 JP WO2012002208A1 JP 2011546519 A JP2011546519 A JP 2011546519A JP 2011546519 A JP2011546519 A JP 2011546519A JP WO2012002208 A1 JPWO2012002208 A1 JP WO2012002208A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- stainless steel
- precipitation
- formula
- strength
- alloy
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C21—METALLURGY OF IRON
- C21D—MODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
- C21D6/00—Heat treatment of ferrous alloys
- C21D6/02—Hardening by precipitation
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C21—METALLURGY OF IRON
- C21D—MODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
- C21D6/00—Heat treatment of ferrous alloys
- C21D6/004—Heat treatment of ferrous alloys containing Cr and Ni
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C21—METALLURGY OF IRON
- C21D—MODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
- C21D6/00—Heat treatment of ferrous alloys
- C21D6/04—Hardening by cooling below 0 degrees Celsius
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C21—METALLURGY OF IRON
- C21D—MODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
- C21D7/00—Modifying the physical properties of iron or steel by deformation
- C21D7/13—Modifying the physical properties of iron or steel by deformation by hot working
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
- C22C38/004—Very low carbon steels, i.e. having a carbon content of less than 0,01%
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
- C22C38/06—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing aluminium
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
- C22C38/18—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium
- C22C38/40—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel
- C22C38/44—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel with molybdenum or tungsten
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
- C22C38/18—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium
- C22C38/40—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel
- C22C38/50—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel with titanium or zirconium
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C22—METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
- C22C—ALLOYS
- C22C38/00—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
- C22C38/18—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium
- C22C38/40—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel
- C22C38/52—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing chromium with nickel with cobalt
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Materials Engineering (AREA)
- Mechanical Engineering (AREA)
- Metallurgy (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Thermal Sciences (AREA)
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Abstract
Description
また、従来から高強度のステンレス鋼としてPH13−8Mo(AISI XM−13)や17−4PH(AISI 630)等に代表されるマルテンサイト系析出強化型ステンレス鋼が知られている。これらは、耐食性の良好なステンレス鋼の中では高強度であるが、AISI4340や300M等に代表される低合金系高抗張力鋼と比較すると強度が劣っている。また、特許文献1に高強度のステンレス鋼が提案されており、優れた強度特性を持っているが、低合金系高抗張力鋼と比較すると延性が十分とは言えない。さらに、特許文献2に提案されている高張力鋼は、耐食性向上元素であるCrが無添加の場合、強度は十分高く優れているが、Cr添加をした場合、低合金系高抗張力鋼と比較すると強度がやや劣っている。
低合金鋼の耐食性と高強度ステンレス鋼の強度や延性を改善した高強度材料として本願出願人は特許文献3に示す高強度ステンレス鋼を提案した。特許文献3に示す高強度ステンレス鋼は、熱処理条件を選べば1800MPaを超える引張強さを得られ、さらに、優れた耐食性を持つ材料である。
そこで、本発明の目的は、低合金系高抗張力鋼レベルの引張強さ、0.2%耐力及び延性を維持しつつ、さらに優れた耐食性も有する析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法を提供することである。
すなわち本発明は、質量%でC:≦0.2%、7%≦Ni≦14%、0%≦Co≦3.5%、9.5%≦Cr≦14%、0.5%≦Mo≦3%、0.25%<Al<1%、0.75%<Ti≦2.5%、残部はFe及び不純物からなり、かつ、式(1)乃至(4)を満足する析出強化型ステンレス鋼である。
式(1) 1260−65Ni−20Co−40Cr≧0
式(2) 670+75Ni+40Co−100Cr≧0
式(3) 0.125≦(Al/Ti)≦1.25
式(4) 1.45≦(Al+Ti)≦2.95
(ただし、式中のNi、Co、Cr、Al及びTiは質量%での値で計算)
式(5) 4.5≦Ni/(Al+Ti)
(ただし、式中のNi、Al及びTiは質量%での値で計算)
本発明でより好ましい式(4)の範囲は、2.1≦(Al+Ti)≦2.55である。
また、本発明でより好ましい式(3)の範囲は、0.35≦(Al/Ti)≦0.65である。
また、本発明の不純物元素であるSi、Mn、Cu、P、S、O、Nは、Si≦0.1%、Mn≦0.1%、Cu≦0.1%、P≦0.03%、S≦0.008%、O≦0.005%、N≦0.01%に制限することが好ましい。
また、本発明の析出強化型ステンレス鋼は、常温での引張試験において伸びが7.5%以上、0.2%耐力と引張強さが0.2%耐力で1600MPa以上、引張強さで1700MPa以上、破壊靭性が40MPa・m1/2以上の何れかを満たす析出強化型ステンレス鋼である。
好ましくは、上記の固溶化処理に次いで−50℃〜−100℃でサブゼロ処理を析出強化型ステンレス鋼の製造方法である。
また、上記の熱間塑性加工の加工比が3以上である析出強化型ステンレス鋼の製造方法である。
本発明にて、各化学組成や関係式を規定した理由は以下の通りである。なお、特に記載のない限り質量%として記す。
Cは、本発明においては不純物として規制すべき元素である。Cは、TiやCr等の添加元素との炭化物の形成により強度と延性とのバランスを低下させ、さらには耐食性を劣化させるため、0.2%以下に制限する。好ましくは0.05%以下である。
7%≦Ni≦14%
Niは、オーステナイト形成元素であり、固溶化処理時のδフェライトの消失に有効であり、また時効処理中にAlやTiと共に微細な金属間化合物を形成して析出強化する効果があるため、必須で添加する元素である。しかし、Niが7%未満であると、固溶化処理温度においてδフェライトが安定となり、残存したδフェライトの存在形態は製造工程、特に圧延工程や鍛造工程における塑性加工方向に依存した方向性がある。そのため、最終製品の特性に方向性が現れてしまう。また、δフェライトの存在自体が強度を低下させ、その結果として強度と延性とのバランスを著しく損なう。一方、Ni添加が14%を越えるとMs点の低下が著しく、固溶化処理後の急冷処理で十分なマルテンサイト変態が行われず、大量の残留オーステナイトが残存するため、強度を著しく低下させ、強度と延性とのバランスを著しく損なう。
そのため、Niは7%〜14%の範囲とした。上述したNiの効果をより確実に得るには、Niの下限を9%とするのが好ましい。
Coは、Niと同様にオーステナイト形成元素であり、固溶化処理時のδフェライトの消失に効果があり、さらに、NiよりMs点の温度低下が大きくないため、3.5%以下の範囲で添加することは効果的である。ただし、本発明においてはNiを7〜14%の範囲で必須添加するため、Coは必ずしも添加の必要はなく、0%を含む無添加レベルであっても差し支えない任意成分である。また、Coは、Niと異なりAl、Ti等との間で金属間化合物を形成せず、間接的に金属間化合物の析出を促進することや、金属間化合物を微細化することで析出強化に寄与する。しかし、Coの添加によって析出強化へ直接の寄与は大きくなく、また、多量の添加はコストの上昇を招くことから、Coの上限を3.5%とした。
9.5%≦Cr≦14%
Crは、耐食性を付与する目的で必須添加する。しかし、Crが9.5%未満であると、ステンレス鋼として十分な耐食性が発揮されず、一方、Crはフェライト形成元素でありCr添加が14%を超えると、固溶化処理温度においてδフェライトが安定となり、強度を低下させるだけでなく、残存したδフェライトの存在形態は製造工程に依存した方向性があるため、最終製品の特性に方向性が現れてしまう。また、δフェライトの存在自体が強度と延性とのバランスを著しく損なう。そのため、Crは9.5%〜14%の範囲とした。
Moは、強度と耐食性を向上させるため必須添加する。しかし、Moが0.5%未満であると、延性低下が著しく、一方、Moが3%を越えると固溶化処理温度においてδフェライトが安定となり、残存したδフェライトの存在形態は製造工程に依存した方向性があるため、最終製品の特性に方向性が現れてしまう。また、δフェライトの存在自体が強度と延性とのバランスを著しく損なう。そのため、Moを0.5%〜3%の範囲とした。
Moは、Crとの複合添加により耐食性、特に、耐孔食性の向上が期待できるため、Moの下限を0.7%とするのが好ましい。
0.25%<Al<1%
Alは、時効処理中にNiと金属間化合物を形成し析出強化する元素であるため必須で添加する。Alの添加により高強度化させるためには、0.25%以上が必要がある。一方で1%以上の添加は延性の低下が著しくなる。そのため、Alは0.25%を超えて1%未満の範囲とした。
Tiは、時効処理中にNiと金属間化合物を形成し析出強化する元素であるため必須で添加する。Tiの添加により高強度化させるためには、0.75%を超える添加量が必要となる。一方で2.5%を超える場合は延性の低下が著しくなる。そのため、Tiは0.75を超えて2.5%以下の範囲とした。Tiは、好ましい上限は、2.45%である。
以上、述べた元素以外はFe及び不純物とする。
代表的な不純物元素として、Si、Mn、Cu、P、S、O、N等があり、これらの元素は以下の範囲に規制することが好ましい。
Si≦0.5%、Mn≦0.5%、Cu<0.5%、P≦0.05%、S≦0.02%、O≦0.01%、N≦0.05%。
好ましくは、以下の範囲にすると良い。
Si≦0.1%、Mn≦0.1%、Cu≦0.1%、P≦0.03%、S≦0.008%、O≦0.005%、N≦0.01%。
引張強さと延性を維持しつつ0.2%耐力を大きく改善するには、上述した成分の範囲を満足させるだけでなく、以下の4つの関係式の全てを満足させるように成分調整を行う必要がある。なお、式中のNi、Co、Cr、Al及びTiは質量%での値で計算する。
式(1):1260−65Ni−20Co−40Cr≧0
式(1)は固溶化処理後の冷却時におけるマルテンサイト変態のし易さの指標である。一般に、マルテンサイト変態がおこる温度は、Ms点として知られているが、本発明の析出強化型ステンレス鋼においては、この式(1)を満たさない場合、固溶化処理後の冷却処理で十分なマルテンサイト変態が行われず、残留オーステナイトが残存し、強度と延性とのバランスを著しく損なう。
式(2):670+75Ni+40Co−100Cr≧0
式(2)は固溶化処理温度においてδフェライト相が存在するか否かの指標である。このδフェライトの存在は、フェライト形成元素であるCrの添加量とオーステナイト形成元素Ni及びCoの添加量とのバランスで決定するが、本発明の析出強化型ステンレス鋼においては、この式(2)を満たさない場合、固溶化処理温度においてδフェライトが安定となり、残存したδフェライトの存在形態は製造工程に依存した方向性があるため、最終製品の特性に方向性が現れてしまう。また、δフェライトの存在自体が強度と延性とのバランスを著しく損なう。
式(3)は析出強化を担う析出相を最適化する指標である。この式(3)を満たす場合、L12構造であるNi3(Ti、Al)相が析出しやすく、時効処理後の強度と延性とのバランスが最も優れている。一方で、(Al/Ti)が0.125未満の場合は、六方晶系のNi3Ti相が析出しやすくなり、その結果として延性が低下する。(Al/Ti)が1.25を超える場合は、B2構造のNi(Al、Ti)相が析出しやすくなり、延性の低下が著しく、引張強さが不十分となる。そのため、式(3)で示す関係式の範囲を0.125〜1.25とした。強度と延性のバランスを考慮すると式(3)で示す関係式の範囲は0.35〜0.65であることが好ましい。
式(4):1.45≦(Al+Ti)≦2.95
式(4)は析出強化を担う析出相の析出量を最適化する指標である。この式(4)で示す(Al+Ti)が1.45未満の場合は析出量が少ないため強度が不十分となり、(Al+Ti)が2.95を超える場合は析出量が多くなり過ぎるため延性の低下が著しい。そのため、式(4)で示す関係式の範囲を1.45〜2.95とした。特に、式(4)で示す関係式が2.1〜2.55であることが好ましい。
式(5):4.5≦Ni/(Al+Ti)
式(5)は破壊靭性を最適化する指標である。この式(5)で示すNi/(Al+Ti)が4.5未満の場合は破壊靭性が低下する傾向になるため、式(5)で示す関係式が4.5以上であることが好ましい。
先ず、本発明の析出強化型ステンレス鋼に対し、所望の機械的特性を付与する熱処理について述べておく。
一般に析出強化型ステンレス鋼は、固溶化処理においてオーステナイト相中に、析出強化元素を固溶させた後、水、油、冷却ガス等を用いた冷却により、オーステナイト相をマルテンサイトへと変態させる。その後、時効処理により金属間化合物相等を微細に析出させることにより、高強度の材料を得ることが可能になる。
本発明においても上記の組成に調整した析出強化型ステンレス鋼に固溶化処理を行う。本発明の固溶化処理温度は、940℃未満であると合金元素が十分固溶せず、一方、1050℃を超えるとオーステナイト結晶粒が粗大化しやすく、また、δフェライトが生成し、機械的性質を害しやすいことから、固溶化処理温度を940℃〜1050℃とする。なお、固溶化処理時間としては、例えば、0.5〜3時間で十分である。
本発明の析出強化型ステンレス鋼は、マルテンサイト変態開始点(Ms点)が比較的低いため固溶化処理時の冷却のみでは完全なマルテンサイト組織が得られず、オーステナイト組織が多く残留し、耐力が低下するので、固溶化処理にて、室温まで冷却したのち、さらに−50℃〜−100℃でサブゼロ処理を必要に応じて行う。サブゼロ処理の処理時間としては、例えば、0.5〜3時間とすることができる。サブゼロ処理を行うことによって残留オーステナイトを減少させ、耐力などの機械的特性を改善できる。
本発明の析出強化型ステンレス鋼は、上述の製造方法により、常温での引張試験において伸びが7.5%以上、0.2%耐力が1600MPa以上、引張強さが1700MPa以上の機械的特性を得ることができる。また、上述の製造方法により、破壊靭性が40MPa・m1/2以上の特性を有することもできることから、航空機用部品等に安定的に用いることが可能となる。
また、上述の熱処理を行うには、前述の溶解の後、鍛造やプレス等の熱間塑性加工を行った素材を用いて熱処理を行う。その場合、本発明の析出強化型ステンレス鋼を実際の製品に熱処理を行うときには、時効処理前に製品形状に近い形状に機械加工を行った後に時効処理を行うのが良い。
また、熱間塑性加工を行う場合、その加工比は3以上であることが好ましい。加工比が3未満であると、0.2%耐力の低下が顕著となる場合があるためである。なお、加工比は、加工前の被加工材断面積/加工後断面積で求めるものとする。
ここで、例えば、加工前の被加工材が鋼塊とすると、鋼塊にはテーパが形成されている場合が多い。その場合、鋼塊上下の両端部で断面積が異なるため、断面積は平均断面積として計算する。
以下の実施例で本発明をさらに詳しく説明する。
真空溶解で10kg鋼塊を作製した。鋼塊にはテーパが形成されていたため、鋼塊の上部と下部の断面積を求め、その和を2で除して求めた平均断面積は5625mm2であった。鋼塊の化学組成を表1に示す。なお、表1中に示した元素以外はFe及び不純物である。代表的な不純物元素のCu、P、S、O、Nの含有量はそれぞれ、0.1%以下、0.015%以下、0.0025%以下、0.005%以下、0.005%以下であった。
なお、以下の表1及び表2で示す従来例No.31は、特許文献3から抜粋した数値であって、特許文献3の表1に示したNo.32合金の組成と、1085℃×1時間、油冷の固溶化処理後、−75℃×2時間のサブゼロ処理、385℃×2時間の時効処理、空冷(2回)後の機械的特性値を示すものである。
また、従来例No.32は、特許文献1から抜粋した数値であって、特許文献1のTABLE1に示されている材料の一つの組成と、850℃×20分の固溶化処理後、475℃×24時間の時効処理後の機械的特性値示すものである。
さらに従来例No.33は、特許文献2から抜粋した数値であって、特許文献2の第1表に示されている鋼種Nの組成と、900℃×1時間、空冷の固溶化処理後、500℃×5時間、空冷の時効処理後の機械的特性値である。
また、従来例No.34は、低合金高抗張力鋼であるAISI4340として非特許文献1から抜粋した数値であって、非特許文献1のTableIIIに示されている1133K DOQT−steel 3Rの組成と機械的特性値である。
次に作製した各鍛造素材の熱処理を行った。熱処理は、固溶化処理、サブゼロ処理、時効処理と連続して行った。固溶化処理は、大気炉にて、950℃、1000℃及び1050℃のいずれかの温度で1時間保持した後、油中で冷却した。サブゼロ処理は、ドライアイスとエタノールを用いて、−75℃で2時間保持した。時効処理は、大気炉にて、500℃、510℃、520℃及び530℃の何れかの温度で16時間保持した後、大気中で冷却した。
固溶化処理後の断面金属組織を塩化第二鉄の水溶液にてエッチング処理して観察した。金属組織観察結果として、No.2合金及びNo.23合金の光学顕微鏡写真をそれぞれ図1及び図2に示す。
また、上述の熱処理後の素材から平行部直径6.35mm、ゲージ長さ25.4mmの丸棒引張試験片を作製し、ASTM E8に基づいて常温において引張試験を行い、0.2%耐力、引張強さ、伸び及び絞りを測定した。測定結果を表2に示す。また、表2中には固溶化処理及び時効処理の温度を示す。
なお、金属組織観察の結果、本発明No.2合金においては図1に示すようにδフェライト相は観察されなかったが、No.23合金では、図2に示すように、固溶化処理後に鍛造方向に方向性を持ったδフェライトの残存が確認されたため、引張試験は実施しなかった。
一方、比較例のNo.21合金はMoが添加されていないため延性が低いことが確認され、また、No.22合金は式(1)を満たさないため、強度が非常に低い値である。No.22合金の固溶化処理後の素材より試料を採取し電解研磨で仕上げた後、X線回折法により残留オーステナイト量を測定した結果、体積率で30.1%と大量の残留オーステナイトが残存していることを確認した。また、No.22合金の金属組織を図3に示す。X線回折法と金属組織観察の結果から、固溶化処理時の急冷処理でマルテンサイト変態が十分でなく大量の残留オーステナイトが残存したため強度が非常に低い値となったと考えられる。No.23合金においては、式(2)を満たさないため、固溶化処理後にδフェライトが残存したと考えられる。No.24合金に関してはAl量が多く、また、(Al+Ti)量も多いため延性が十分ではなく引張試験中に掴み部より破断した。従来例のNo.32合金の結果は、延性に寄与する要因がMoだけでなく、NiとAlおよび/もしくはTiとの金属間化合物の析出相の構造や量にもあることを示唆すると考えられる。従来例のNo.33合金の結果は、Ti量が2.5%と比較的高くCr量が少なく、かつ式(4)の値が3.0と高いにもかかわらず著しく強度低下しており、このことは析出相の析出量に臨界的な上限があることを示唆するととらえることができる。
また、比較的合金組成が近似するNo.11合金、No.14合金及びNo.15合金を対比すると、加工比が3未満になると引張特性、特に0.2%耐力が低下することが確認された。
実施例1で用いた本発明のNo.1合金、No.2合金、No.3合金、No.4合金、No.10合金、No.11合金及びNo.13合金の熱処理後の素材から15mm×36mm×38.5mmのコンパクトテンション型試験片を作製し、ASTM E399に基づいて破壊靭性を測定した。測定結果を表3に示す。また、表3中には固溶化処理、時効処理の温度及び式(5)の値を示す。
実施例1で用いたNo.11合金及びNo.13合金の熱処理後の素材及び低合金系高抗張力鋼のAISI4340相当材を35℃、5%塩化ナトリウム溶液での塩水噴霧試験で72時間後の発錆状況観察を行った。観察結果を表4に示す。No.11合金及びNo.13合金においては、試験を2000時間まで延長し、発錆状況観察を行ったが、発錆は確認されなかった。
実施例1で用いたNo.11合金及びNo.13合金の熱処理後の素材から全長110mm、評価部の直径5.00mm、切欠き係数Kt=1.0の丸棒疲労試験片を作製し、ASTM E466にしたがって常温環境、応力比0.1で応力制御軸力疲労試験を行った。
試験片が破断したときのサイクル数を測定し、試験で得られた破断したサイクル数と試験片にかけた最大応力をまとめたものを表5に示す。加えて、非特許文献2に記載されているAISI4340材の疲労曲線、15−5PHステンレス鋼の疲労曲線とNo.11、No.13の疲労試験結果をまとめたものを図4に示す。
Claims (11)
- 質量%で、C:≦0.2%、7%≦Ni≦14%、0%≦Co≦3.5%、9.5%≦Cr≦14%、0.5%≦Mo≦3%、0.25%<Al<1%、0.75%<Ti≦2.5%、残部はFe及び不純物からなり、かつ、下記式(1)乃至(4):
式(1) 1260−65Ni−20Co−40Cr≧0
式(2) 670+75Ni+40Co−100Cr≧0
式(3) 0.125≦(Al/Ti)≦1.25
式(4) 1.45≦(Al+Ti)≦2.95
(ただし、式中のNi、Co、Cr、Al及びTiは質量%での値で計算)の全てを満足することを特徴とする析出強化型ステンレス鋼。 - 式(5) 4.5≦Ni/(Al+Ti)
(ただし、式中のNi、Al及びTiは質量%での値で計算)を満足することを特徴とする請求項1に記載の析出強化型ステンレス鋼。 - 式(4)が、2.1≦(Al+Ti)≦2.55であることを特徴とする請求項1または2に記載の析出強化型ステンレス鋼。
- 式(3)が、0.35≦(Al/Ti)≦0.65であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の析出強化型ステンレス鋼。
- 質量%で、Si≦0.1%、Mn≦0.1%、Cu≦0.1%、P≦0.03%、S≦0.008%、O≦0.005%、N≦0.01%であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の析出強化型ステンレス鋼。
- 常温での引張試験における伸びが7.5%以上であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の析出強化型ステンレス鋼。
- 常温での引張試験における0.2%耐力が1600MPa以上及び引張強さが1700MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の析出強化型ステンレス鋼。
- 破壊靭性が40MPa・m1/2以上であることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の析出強化型ステンレス鋼。
- 少なくとも溶解と熱間塑性加工を行った請求項1乃至5の何れかに記載の組成よりなる析出強化型ステンレス鋼を940℃〜1050℃で固溶化処理した後、さらに480℃〜550℃で時効処理を行う析出強化型ステンレス鋼の製造方法。
- 固溶化処理に次いで−50℃〜−100℃でサブゼロ処理を行う請求項9に記載の析出強化型ステンレス鋼の製造方法。
- 熱間塑性加工の加工比が3以上であることを特徴とする請求項9または10に記載の析出強化型ステンレス鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011546519A JP4918632B2 (ja) | 2010-06-28 | 2011-06-22 | 析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010146100 | 2010-06-28 | ||
JP2010146100 | 2010-06-28 | ||
JP2011055430 | 2011-03-14 | ||
JP2011055430 | 2011-03-14 | ||
PCT/JP2011/064229 WO2012002208A1 (ja) | 2010-06-28 | 2011-06-22 | 析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法 |
JP2011546519A JP4918632B2 (ja) | 2010-06-28 | 2011-06-22 | 析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP4918632B2 JP4918632B2 (ja) | 2012-04-18 |
JPWO2012002208A1 true JPWO2012002208A1 (ja) | 2013-08-22 |
Family
ID=45401928
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2011546519A Expired - Fee Related JP4918632B2 (ja) | 2010-06-28 | 2011-06-22 | 析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法 |
Country Status (3)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4918632B2 (ja) |
TW (1) | TW201207127A (ja) |
WO (1) | WO2012002208A1 (ja) |
Families Citing this family (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5528986B2 (ja) * | 2010-11-09 | 2014-06-25 | 株式会社日立製作所 | 析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼およびそれを用いた蒸気タービン部材 |
JP5409708B2 (ja) * | 2011-06-16 | 2014-02-05 | 株式会社日立製作所 | 析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼と、それを用いた蒸気タービン長翼 |
JP5764503B2 (ja) * | 2012-01-19 | 2015-08-19 | 三菱日立パワーシステムズ株式会社 | 析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼、それを用いた蒸気タービン長翼、タービンロータ及び蒸気タービン |
JP6317542B2 (ja) * | 2012-02-27 | 2018-04-25 | 三菱日立パワーシステムズ株式会社 | 蒸気タービンロータ |
JP6312367B2 (ja) * | 2013-04-05 | 2018-04-18 | 三菱日立パワーシステムズ株式会社 | 析出硬化系マルテンサイト系ステンレス鋼、蒸気タービン動翼および蒸気タービン |
FR3013738B1 (fr) * | 2013-11-25 | 2016-10-14 | Aubert & Duval Sa | Acier inoxydable martensitique, piece realisee en cet acier et son procede de fabrication |
JP6575756B2 (ja) * | 2015-10-01 | 2019-09-18 | 日立金属株式会社 | 析出強化型ステンレス鋼の製造方法 |
JP7298382B2 (ja) * | 2018-09-13 | 2023-06-27 | 大同特殊鋼株式会社 | 析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼及び地下掘削用ドリル部品 |
WO2020054540A1 (ja) * | 2018-09-13 | 2020-03-19 | 大同特殊鋼株式会社 | 析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼及び地下掘削用ドリル部品 |
BR112022016765A2 (pt) * | 2020-02-26 | 2022-10-11 | Crs Holdings Llc | Liga de aço inoxidável endurecível martensítico por precipitação, método para fabricar uma peça ou componente de metal e artigo de fabricação |
CN113981200A (zh) * | 2021-10-20 | 2022-01-28 | 陕钢集团产业创新研究院有限公司 | 一种以水为介质的40Cr圆钢热处理方法 |
CN114645117A (zh) * | 2022-03-21 | 2022-06-21 | 河南中原特钢装备制造有限公司 | 一种17-4ph材料控氮合金化锻后热处理工艺 |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05125490A (ja) * | 1991-10-31 | 1993-05-21 | Japan Steel Works Ltd:The | 析出硬化型ステンレス鋼 |
JP3230283B2 (ja) * | 1992-06-24 | 2001-11-19 | 大同特殊鋼株式会社 | 析出硬化系ステンレス鋼の鍛造加工方法 |
JP3385603B2 (ja) * | 1994-09-21 | 2003-03-10 | 大同特殊鋼株式会社 | 析出硬化型ステンレス鋼 |
EP1848836B1 (en) * | 2005-01-25 | 2021-04-28 | Questek Innovations LLC | Martensitic stainless steel strenghtened by ni3ti eta-phase precipitation |
-
2011
- 2011-06-22 JP JP2011546519A patent/JP4918632B2/ja not_active Expired - Fee Related
- 2011-06-22 WO PCT/JP2011/064229 patent/WO2012002208A1/ja active Application Filing
- 2011-06-27 TW TW100122416A patent/TW201207127A/zh unknown
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2012002208A1 (ja) | 2012-01-05 |
JP4918632B2 (ja) | 2012-04-18 |
TW201207127A (en) | 2012-02-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4918632B2 (ja) | 析出強化型ステンレス鋼及びその製造方法 | |
JP6111763B2 (ja) | 強度及び靭性に優れた蒸気タービンブレード用鋼 | |
KR102037086B1 (ko) | 지열 발전 터빈 로터용 저합금강 및 지열 발전 터빈 로터용 저합금 물질, 및 이들의 제조 방법 | |
JP5574283B1 (ja) | 析出強化型マルテンサイト鋼及びその製造方法 | |
JP6223743B2 (ja) | Ni基合金の製造方法 | |
JP6166953B2 (ja) | マルエージング鋼 | |
US10000830B2 (en) | Method for manufacturing martensite-based precipitation strengthening stainless steel | |
JP5088455B2 (ja) | 二相ステンレス鋼 | |
CN106460100A (zh) | 抗冲击或冲击负荷的钛合金以及由其制作零件的方法 | |
WO2007123164A1 (ja) | 内燃機関用ピストンリング材 | |
CN115667570B (zh) | 高断裂韧性、高强度、沉淀硬化型不锈钢 | |
JP2006526711A (ja) | ナノ析出強化超高強度耐腐食性構造用鋼 | |
JP6582960B2 (ja) | マルエージング鋼 | |
CA2930153C (en) | Maraging steel | |
JP2014208869A (ja) | 析出強化型マルテンサイト鋼 | |
JP5512494B2 (ja) | 高強度・高靭性非調質熱間鍛造部品およびその製造方法 | |
KR101301617B1 (ko) | 고강도 고인성 소재 및 이를 이용한 타워 플랜지 제조방법 | |
JP7131225B2 (ja) | 析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼 | |
JP6501652B2 (ja) | 析出硬化能に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼 | |
JP4332446B2 (ja) | 冷間加工性および耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼、並びに耐遅れ破壊特性に優れた高強度鋼部品 | |
JPH05311341A (ja) | 時効硬化型高強度高熱膨張ボルト用鋼 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20120106 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20120130 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150203 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4918632 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |