JP5512494B2 - 高強度・高靭性非調質熱間鍛造部品およびその製造方法 - Google Patents
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−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。)
Cは、V、Nbと結び付き(V、Nb)炭化物および(V、Nb)炭窒化物(両者を(V、Nb)C析出物と称す)を析出させ、析出強化量を高めることでフェライト−パーライトの硬さを向上させ、非調質熱間鍛造部品の降伏強度の高強度化に寄与する元素である。C量が0.20質量%未満であると、(V、Nb)C析出物の析出強化量が低くなり、降伏強度が低下する。一方で、C量が0.80質量%を超えると、フェライト変態やパーライト変態が抑制されるため、ベイナイトが形成されるようになり降伏強度が低下する。また、C量は、好ましくは0.30〜0.60質量%、さらに好ましくは0.40〜0.50質量%である。
Siは、固溶強化で非調質熱間鍛造部品の降伏強度の高強度化に寄与する元素である。Si量が0.50質量%を超えると、焼入れ性が高くなり、ベイナイトが形成され、非調質熱間鍛造部品の降伏強度低下の要因となる。なお、0質量%でもよい。
Mnは、固溶強化で非調質熱間鍛造部品の降伏強度の高強度化に寄与する元素である。Mn量が0.40質量%未満であると、固溶量が少なく、非調質熱間鍛造部品の降伏強度が低下する。一方で、Mn量が1.00質量%を超えると、焼入れ性が高くなり、ベイナイトが形成され、非調質熱間鍛造部品の降伏強度が低下する要因となる。
Pは、不可避的不純物として含有される元素であるが、0.050質量%を超えて含有すると非調質熱間鍛造部品を脆化させる。なお、0質量%でもよい。
Sは、MnSを形成し、非調質熱間鍛造部品の切削性改善に寄与する元素であるが、0.050質量%を超えて含有すると、非調質熱間鍛造部品の延性および靭性を低下させる。なお、0質量%でもよい。
Vは、フェライトおよびパーライト中のラメラフェライト中にNbとともに炭化物および炭窒化物として析出することでフェライトおよびパーライトを強化し、非調質熱間鍛造部品の降伏強度の高強度化に寄与する元素である。従来からV添加は活用されていたものの、鍛造後の冷却制御無しでV添加量を単調に増やすだけでは、フェライト変態中にV炭化物およびV炭窒化物の相界面析出が起こりにくくなり、降伏強度が低下する。
Nbは、フェライトおよびパーライト中のラメラフェライト中にVとともに炭化物および炭窒化物として析出することでフェライトおよびパーライトを強化し、非調質鍛造部品の降伏強度の高強度化に寄与する元素である。また、NbはVが完全に固溶するような高温域においても一部は未固溶状態のNbCとして存在する。そして、NbCがオーステナイト再結晶粒のピン止め粒子として作用し、再結晶オーステナイト組織の微細化に寄与する。その結果、高靭性のフェライト−パーライト組織が得られる。
Nbの含有量が0.02質量%未満では、非調質鍛造部品において、旧オーステナイト粒のGf粒度番号が所定値未満となり、靭性が低下する。一方で、Nbの含有量が0.30質量%を超えると、降伏強度および靭性の向上効果が飽和する。
したがって、Nbの含有量は、0.02〜0.30質量%とする。
なお、Nbの含有量は、好ましくは0.05〜0.25質量%、さらに好ましくは0.15〜0.23質量%である。
Nは、VまたはNbと高温で結合して炭窒化物を形成する元素である。N量が0.0100質量%を超えると、粗大な炭窒化物を形成する。そして、高温域でNと結合した分、相界面析出で微細に析出させ得るV、Nb量が減少するので、その分析出強化量が低下し、降伏強度が低下するようになる。また、N量は、好ましくは0.0090質量%以下、さらに好ましくは0.0080質量%以下である。なお、0質量%でもよい。
不可避的不純物は、例えば、Sn、Sb等の元素であって、本発明の効果を妨げない範囲で含有するものである。
旧オーステナイト粒は、Gf粒度番号が大きいほど、粒径が微細となる。そして、旧オーステナイト粒が微細であるほど、非調質熱間鍛造部品の靭性が向上する。したがって、旧オーステナイト粒のGf粒度番号は7以上、好ましくはGf粒度番号が8以上、さらに好ましくはGf粒度番号が9以上である。
V、Nbを十分に添加した場合、高温で起こる拡散変態で形成されるフェライトおよびパーライトは相界面析出した(V、Nb)C析出物の析出強化により降伏強度を大きく上昇させることができる。一方、ベイナイト、マルテンサイトといった低温で起こる変態現象の場合、引張強度は向上するものの、(V、Nb)C析出物が相界面析出することができないため降伏強度は逆に低下する。そのため、ベイナイトやマルテンサイトが混在すると降伏強度が確保できなくなるため、フェライト−パーライト組織にする必要がある。また、フェライト−パーライト組織にすることによって、非調質熱間鍛造部品で遅れ破壊が生じる心配がなくなる。フェライト−パーライト組織とは、面積率で95%以上がフェライト−パーライト組織となっているものとする。
フェライト−パーライト変態時に相界面析出した(V、Nb)C析出物は組織を析出強化させ、降伏強度の向上に寄与する。析出強化量は、析出物の占める体積率が大きいほど、また、析出物粒径が小さいほど向上する。したがって、(V、Nb)C析出物は、なるべく微細なものが多いほど好ましいため、直径10nm以下の(V、Nb)C析出物の個数密度を5000個/μm2以上とする。また、個数密度は、好ましくは直径10nm以下の(V、Nb)C析出物が6000個/μm2以上、さらに好ましくは直径10nm以下の(V、Nb)C析出物が7000個/μm2以上である。
本発明に係る非調質熱間鍛造部品の製造方法は、加熱処理工程S1と、熱間鍛造工程S2と、急冷却工程S3と、緩冷却工程S4とを含む。以下、各工程について説明する。
加熱処理工程S1は、前記組成からなる鋼素材をTNbCの範囲となるように加熱する工程である。
ここで、TNbCは、−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)で表わされる。ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。この工程により、鋼素材のV全量、およびNbの一部が固溶化する。加熱温度がTNbCの範囲の下限未満であると、Nbが0.01質量%以上固溶せず、非調質鍛造部品において、微細な(V、Nb)C複合析出物の個数密度が所定値未満となり、降伏強度が低下する。一方、加熱温度がTNbCの範囲の上限を超えると、未固溶Nbが0.01質量%以下となり、再結晶オーステナイト粒をピン止めするNbCが十分に確保されず、再結晶オーステナイト粒が粗大になり靭性が低下する。
また、TNbCの範囲に加えて、加熱温度の上限は、鋼の溶融温度未満とすることが好ましく、設備の能力等から、1300℃程度とすることがさらに好ましい。
ここで、TNbCはNbCの溶解度積(今井勇之進、庄野凱旋夫、鉄と鋼、1966年、p.110)から式変形して導出した温度であり、当該温度範囲の下限未満の温度に加熱することで固溶Nbが0.01質量%以下となり、当該温度範囲の上限を超える温度に加熱することで未固溶Nbが0.01質量%以下となる。
なお、加熱処理工程での温度とは、加熱処理工程での被加工材の最高到達温度とする。また、鋼素材は、例えば、鋳造および/または鍛造加工、押出加工によって作製される。
熱間鍛造工程S2は、加熱処理された鋼素材を、1050℃以上で前記加熱温度以下の鍛造温度で熱間鍛造する工程で、その熱間鍛造の際の真歪量を0.3以上とする。そして、熱間鍛造工程S2では、高靭性な微細組織が得られる。一般に、高靭性な微細組織を得るには、低温域で鍛造を行う必要があるが、本発明では、高温域で析出したNbCがピン止め粒子として作用するため、高温鍛造を行っても、微細な再結晶オーステナイト粒が得られ、非調質熱間鍛造部品の旧オーステナイト粒のGf粒度番号が7以上となる。また、高温鍛造のため変形抵抗が小さくなる。
なお、真歪量は、ln[(熱間鍛造前の被加工材の断面積)/(熱間鍛造後の被加工材の断面積)]で計算された歪量である。
急冷却工程S3は、熱間鍛造終了後、3.0℃/秒以上の冷却速度で急冷却する工程で、その急冷却の際の急冷却終了温度を550〜720℃とする。そして、急冷却工程S3では、フェライト変態前にオーステナイト域で析出・粗大化する(V、Nb)C析出物の量が減少し、相界面析出量が増加することによって、析出強化量が最大化する。
緩冷却工程S4は、急冷却終了後、0.1℃/秒以上1.5℃/秒以下の冷却速度で緩冷却する工程で、その緩冷却の際の緩冷却終了温度を400℃以下とする。そして、緩冷却工程S4では、フェライト変態が促進され、相界面析出により析出する(V、Nb)C析出物の個数密度が増加する。
丸棒材のD/4部からφ8×12mmの試験片を切り出し、これを富士電波工機製、サーメックマスターZで表2に示す条件で加工熱処理を施し鍛造材とした。なお、鍛造速度は真歪速度で10s−1とし、そのときの最高荷重を表2に示す。
鍛造材を、鍛造前の長さ方向と平行に、等しく2分割し、うち片方を用いて切断面を鏡面研磨し、3%ナイタール液で腐食し、元の長さ方向の中心部で、D/4位置を対象に、光学顕微鏡観察を倍率100倍および400倍で行い、組織を同定した。また、旧オーステナイト(γ)粒のGf粒度番号を測定した。Gf粒度番号は、JIS G0551「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法」に準拠して測定し、旧オーステナイト粒界の現出はJIS G0551の付属書1の「a)徐冷法」に従った。5視野観察し、平均値を算出した。その結果を表2に示す。また、光学顕微鏡観察位置付近を対象にビッカース硬さ試験機を用いて、荷重10kgfにて硬さ試験を行い、ビッカース硬さを測定した。5点測定し、平均値を算出した。その結果を表2に示す。なお、ビッカース硬さは400Hv以上を合格とした。
これに対して、本発明の要件を満足しない比較例No.1、5〜15は、ビッカース硬さおよびGf粒度番号の少なくとも1つが劣っている。
S2 熱間鍛造工程
S3 急冷却工程
S4 緩冷却工程
Claims (2)
- C:0.20〜0.80質量%、
Si:0.50質量%以下、
Mn:0.40〜1.00質量%、
P:0.050質量%以下、
S:0.050質量%以下、
V:0.20〜0.80質量%、
Nb:0.02〜0.30質量%、
N:0.0100質量%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である組成からなり、
旧オーステナイト粒のGf粒度番号が7以上であるフェライト−パーライト組織からなり、
フェライトおよびパーライト中の直径:10nm以下の(V、Nb)C析出物の個数密度が5000個/μm2以上であることを特徴とする高強度・高靭性非調質熱間鍛造部品。 - 請求項1に記載の高強度・高靭性非調質熱間鍛造部品の製造方法であって、
前記組成からなる鋼素材を下記式(1)で算出されるTNbCとなるように加熱処理する加熱処理工程と、
加熱処理された鋼素材を、1050℃以上で前記加熱温度以下の鍛造温度で熱間鍛造し、その熱間鍛造の際の真歪量が0.3以上である熱間鍛造工程と、
熱間鍛造終了後、3.0℃/秒以上の冷却速度で急冷却し、その急冷却の際の急冷却終了温度が550〜720℃である急冷却工程と、
急冷却終了後、0.1℃/秒以上1.5℃/秒以下の冷却速度で緩冷却し、その緩冷却の際の緩冷却終了温度が400℃以下である緩冷却工程とを含むことを特徴とする高強度・高靭性非調質熱間鍛造部品の製造方法。
−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。)
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