JPWO2002074526A1 - 圧縮機 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、各種切削加工や研削加工等により発生した金属切粉等を圧縮して固形化する圧縮機に関する。
背景技術
旋盤やボール盤等の切削装置、或いは平面研削盤や円筒研削盤等の研削装置を使用して金属を加工した際には、コイル状或いは粉末状の切粉が生じる。この切粉は産業廃棄物となるため、これをできるだけコンパクトで輸送等がし易い形状にすることが要請されている。そこで、切粉を圧縮して高密度の固形物を形成する圧縮機が開発、販売されている。
この圧縮機は、ホッパから投入された切粉をスクリューコンベアにて、断面形状が円筒或いは矩形の筒体からなる圧縮室に搬送し、この圧縮室において油圧シリンダにより切粉を圧縮して固形化した後、圧縮室の一端に設けられた可動のゲート部材を開くことによって、圧縮した切粉からなる固形物を圧縮室の外部に排出するように構成されている。前記油圧シリンダによる切粉の加圧力は40トンを超える場合があり、そのため圧縮室を構成する筒体に作用する力は1000kgf/cm2を超えることもある。したがって、形成された固形物の加圧力や固形物と圧縮室の内壁との間の摩擦力によりゲート部材を開くことが困難になるという問題点があった。そこで、本発明者は、前記問題点を解決するために、筒体を外側筒体と、その内部に軸方向へ移動可能に配置した内側筒体とによって構成した圧縮機を開発し、これに対する特許を取得している(特許第2949664号)。
ところで、前記圧縮機においては、金属研磨加工にて発生する砥石及び金属のカス(スラッジ)を圧縮することが多い。このスラッジには、砥石のカスである砥粒が含まれている。金属研磨加工においては、研磨する金属に応じて種々の研磨材が使い分けられているが、前記研磨材には、主として酸化アルミナ系砥粒、炭化珪素系砥粒、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥粒、及びダイヤモンド砥粒等が含まれている。量的には、酸化アルミナ系砥粒が多いことが分かっている。
前記した砥粒のうち、最もヌープ硬さ(HK)の小さい酸化アルミナ系砥粒であっても、当該硬さは1950〜2050程度であり、超硬合金のヌープ硬さ(1700〜1940)よりも大きい。このため、砥粒を含むスラッジを圧縮する際に、固形物が形成される際の加圧力や固形物と圧縮室の内壁との間の摩擦力により、固形物が形成される端部付近の前記内壁の磨耗が激しいことが判明した。
この圧縮室の内壁の磨耗により、固形物の軸方向中央付近の外径が膨らむので、ゲート部材を開放した後に油圧シリンダにより固形物を押圧しても、固形物を排出できない場合が生じるという問題点があった。従来の圧縮機においてこのような問題点が生じた場合には、摩耗した筒体を交換することにより対応しているのが現状である。
しかしながら、圧縮室を単一の筒体で構成するものでは、そもそも筒体を交換すること自体が困難である。また、筒体を外側筒体とその内部に配置した内側筒体とにより構成した場合であっても、内側筒体は油圧シリンダのシリンダロッドの後退位置からゲート部材に至る長さを有するため、その交換にかかる費用や時間が多く必要であった。例えば、圧縮機のゲート部材及び油圧シリンダを取り外して内側筒体を交換するために数人の作業員にて数時間を要しているのが現状である。また、内側筒体はシリンダロッドの後退位置まで延びているので、シリンダロッドとの間の位置調整等に熟練を要するという問題もあった。
本発明の目的は、圧縮室を構成する筒体が摩耗した場合に、低コストでかつ比較的簡単な作業にて対応可能な圧縮機を提供することにある。
発明の開示
本発明の圧縮機は、一端部の内周にその他端部側の内周寸法よりも大きい拡大部を有し、内部に被圧縮物を収容する第1の筒体と、前記第1の筒体の拡大部に交換可能に配置され、前記第1の筒体とともに圧縮室を構成するとともに、内周面が前記第1の筒体の内周と面一の第2の筒体と、前記第1の筒体に収容した被圧縮物を前記圧縮室の一端部側へ加圧する加圧機構と、前記圧縮室の一端部を開閉するゲート機構とを含んでいる(請求項1)。
本発明によれば、第1の筒体の一端部に第2の筒体を交換可能に配置しているので、固形物による加圧力及び固形物の外周と第2の筒体の内周との摩擦力により、第2の筒体の内周が所定量以上磨耗した時点で、当該第2の筒体を交換することにより、圧縮室を支障なく継続して使用することができる。この第2の筒体は、圧縮室の一端部付近のみに構成すれば足りるため、その材料費を著しく少なくすることが可能である。また、前記第2の筒体は一端部付近のみに配置されるものであるため、その交換にかかる労力や時間を著しく低減することができる。
一つの好適な態様においては、前記第2の筒体の軸方向長さが、被圧縮物を圧縮して得られる圧縮物の軸方向長さの略3/5倍以上である(請求項2)。これは、圧縮物による第2の筒体の内周の磨耗が、第2の筒体の先端から、形成された固形物の軸方向長さの3/10程度でピークとなり、その略3/5倍の位置では、第2の筒体の内周面に磨耗が生じ難いという本発明者らの知見に基づくものである。
他の好適な態様においては、前記第2の筒体の少なくとも内周側の硬さが、第1の筒体の内周側の硬さよりも硬くなっている(請求項3)。これにより、第2の筒体の内周が摩耗する速度を遅くすることができるので、第2の筒体の寿命を長くすることができる。また、第2の筒体は第1の筒体の一端部付近のみに配置されるものであり、その材料の使用量が少ないので、硬さの硬い高価な材料を使用しても、コストが極端に増大するおそれがない。
前記第2の筒体の少なくとも内周側は、超硬合金で構成されているのが好ましい(請求項4)。これにより、第2の筒体の内周が摩耗する速度をより効果的に遅くすることができるので、第2の筒体の寿命をさらに長くすることができる。
さらに他の好適な態様においては、前記第2の筒体が、焼入硬化された外筒とその内周に嵌合された超硬合金からなる内筒とで構成されている(請求項5)。この場合にも、第2の筒体の寿命をさらに長くすることができる。また、第2の筒体を全て超硬合金で形成する場合よりも超硬合金の使用量を少なくすることができるので、第2の筒体のコストが極端に増大するおそれがない。この態様においては、前記内筒と外筒との嵌合面が、その径方向の寸法が第2の筒体の一端部側に向かって漸次小さくなるテーパ面であるのが好ましい(請求項6)。これにより、内筒を例えば焼嵌めによって外筒に破損させることなく容易かつ確実に一体化させることができる。
さらに他の好適な態様においては、前記第2の筒体の端面及び外周面に、被圧縮物から排出される液体を圧縮室の外部に導く排液路を形成している(請求項7)。これにより、残留液の少ない固形物を得ることができる。
さらに他の好適な態様においては、前記第2の筒体が、端面どうしを突き合わせた状態で配置された複数個の筒状部材からなる(請求項8)。この場合には、摩耗量の多い筒状部材のみを交換することができるので、ランニングコストを安くすることができる。
さらに他の好適な態様においては、前記ゲート機構が、圧縮室の一端部を開いた状態で、前記第2の筒体を第1の筒体に対して着脱可能な大きさのゲート空間を形成する(請求項9)。この場合には、ゲート機構によって圧縮室の一端部を開いた状態で、前記第2の筒体を前記ゲート機構のゲート空間を通して第1の筒体から引き抜ぬいたり、新たな第2の筒体を前記ゲート空間を通して第1の筒体に装着したりすることができる。このため、ゲート機構を取り除くことなく第2の筒体を交換することができ、その交換作業をさらに容易かつ迅速に行うことができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態につき説明する。第1図は、本発明の一実施形態にかかる圧縮機の概略正面図である。本発明の実施の形態にかかる圧縮機10は、工場等の設置場所に固定されるベース12と、ベース12上に配置され、種々の作動部が収容された下側部分14と、各種制御部材が収容された上側部分16とを備えている。
上側部分16の筐体の内部には、後述する油圧シリンダ28を作動させるための油圧制御ユニット(図示せず)、後述するホッパ18に投入された切粉等を搬送するためのモータ24等が収容されている。
以下の説明においては、第1図における右側である上側部分16が配置される側を「上流側」と称し、左側を「下流側」と称する。前記圧縮機10には、ベース12の下流側において、下側部分14の上部にホッパ18が設けられている。ホッパ18の上部は被圧縮物としての切粉を投入できるように開口しており、その水平方向の寸法は下方に行くにしたがって小さくなっている。ホッパ18の下部には斜め方向に向かって所定の角度で延びる延長部19が形成されており、この延長部19の内部に切粉の供給口20が形成されている。ホッパ18内及びその供給口20内には、延長部19の傾きと略同じ方向に傾けられた状態でスクリューコンベア22が配置されている。スクリューコンベア22の上側端部はモータ24に取り付けられている。前記ホッパ18に投入された切粉は下部に落とし込まれ、この落とし込まれた切粉は、スクリューコンベア22に設けられた螺旋状の羽根23により供給口20に送り込まれる。上述したように供給口20は斜め方向に所定の角度で傾いているため、供給口20を介してスクリューコンベア22の羽根23により搬送される切粉の量は、略一定に保たれる。
第2図は、圧縮機10の下側部分14をより詳細に示す図である。同図に示すように、ベース12上には成形装置26が固定されている。成形装置26は、上流側に配置された加圧機構としての油圧シリンダ28と、この油圧シリンダ28の下流側端部から下流方向に延びる円筒状のケーシング30と、このケーシング30の下流端側に設けられた圧縮室33とを有している。前記油圧シリンダ28のシリンダロッド29は、圧縮室33の内部に導入されており、その先端には、圧縮室33の内径に合致する円板状のチップ39が取り付けられている。このチップ39は、焼入硬化された例えばSUJ−2等の軸受鋼にて形成されている。なお、前記ケーシング30は従来の外側筒体に相当するものである。
前記圧縮室33は、円筒状の第1の筒体31と、その下流端(一端部)側の内周に配置された円筒状の第2の筒体40とによって構成されている。前記第1の筒体31は、ケーシング30の途中部から下流方向に延びており、その外周はケーシング30の内周にスライド可能に嵌合されている。前記第1の筒体31は、例えばSUJ−2等の軸受鋼やSKD−11等のダイス鋼を熱処理して、HRC58〜60程度の硬さに硬化させたものである。第1の筒体31の内径はチップ39の外径と等しくなっており、チップ39は油圧シリンダ28によって軸方向に移動する際に、その外周が第1の筒体31の内周と接触する。前記ケーシング30及び第1の筒体31の下流側の各端面34は略面一になっている。これら端面34には、上下方向に移動可能なゲート部材51が密着しており、これにより圧縮室33の下流側の開口端が閉塞されている。前記第1の筒体31は従来の内側筒体に相当するものである
ケーシング30及び第1の筒体31の上部には開口36が形成されている。この開口36はホッパ18の延長部19に対応させて形成されている。したがって、ホッパ18に投入された切粉は、スクリューコンベア22の羽根23により、供給口20に向かって搬送され、最終的に開口36を経て第1の筒体31内に落下する。
油圧シリンダ28のシリンダロッド29が、油圧制御ユニットの作動により軸方向に沿って上流側から下流側に移動すると、シリンダロッド29の先端のチップ39の端面、ゲート部材51の背面51a及び第1の筒体31の内周により定まる圧縮室33の容積、つまりその軸方向長さが、シリンダロッド29の移動に従って小さくなる。これにより、後に詳述するように、開口36を経て投入された切粉が、当該圧縮室33内で圧縮される。
第3図は、成形装置26の下流側の拡大断面図である。同図に示すように、第1の筒体31の下流側端部には、その上流側よりも内径寸法が大きい拡大部32が形成されており、当該拡大部32に前記第2の筒体40が交換可能に嵌合されている。この第2の筒体40は、SKD−11等のダイス鋼を熱処理してHRC62〜63程度の硬さに硬化させたものや超硬合金等の第1の筒体31よりも硬さが硬いもので形成されている。また、前記第2の筒体40にはねじ穴が形成されており、当該ねじ穴を通してボルト45を第1の筒体31の雌ねじにねじ込んでいる。このボルト45により、第2の筒体40は第1の筒体31に確実に固定されている。前記第2の筒体40の内径は第1の筒体31の内径と等しくなっており、したがって圧縮室33の内周は平滑になっている。
ケーシング30の上部には、供給口20と連続するように傾斜面62,63が形成されている。また、ケーシング30の下流側端部にはフランジ64が形成されているとともに、当該フランジ64付近の内側において、ケーシング30の内径が拡大している。
第1の筒体31の下流側端部にもフランジ66が形成されており、当該フランジ66が、ケーシング30の内径の拡大部に略合致している。第4図に示すように、第1の筒体31のフランジ66には貫通穴67が形成されており、ケーシング30には前記貫通穴67に合致する有底穴70が形成されている。この有底穴70は、第1の筒体31のフランジ66と対向する側に形成された大径部分71と、この大径部分71に連続する雌ねじが形成された小径部分72とを有している。前記貫通穴67及び有底穴70には、先端部に雄ねじが形成されたピン76が挿入されており、このピン76の雄ねじは前記小径部分72にねじ込まれている。前記大径部分71とピン76との間には円環状の空間73が形成されており、この空間73には圧縮コイルスプリング74が弾性収縮された状態で配置されている。したがって、第1の筒体31はコイルスプリング74の弾性力により、下流方向に付勢されている。またこの状態で、第1の筒体31のフランジ66の上流側端面と、この端面に対向するケーシング30の内径拡大部の端面との間には、若干の空隙75が形成されている。
第5図は、ゲート機構50の側面図である。同図に示すように、ゲート機構50は、前記ゲート部材51と、当該ゲート部材51の上下動をガイドするためにゲート部材51の両側に設けられたガイド部材52と、このガイド部材52の両側に設けられた一対の油圧シリンダ53と、この油圧シリンダ53のシリンダロッド54の上端どうしを連結する連結部材55とを有している。ゲート部材51の上端は連結部材55の下部に固定されており、ゲート部材51下部は円弧状の切欠き51bが形成されている。この切欠き51bの上部は、第2の筒体40の外周よりもやや上方に位置している。なお、ガイド部材52は、ボルト56によって、ケーシング30のフランジ64に固定されている。前記ゲート機構50は、油圧シリンダ53を作動させることにより、シリンダロッド54とともに連結部材55が上昇し、これに固定されたゲート部材51もガイド部材52にガイドされつつ引き上げられる。これにより、第1の筒体31内に形成された圧縮室33の開口端が開放される。
前記一対のガイド部材52の相互間で規定されるゲート幅Xは、第2の筒体40の外径寸法よりも大きくなっている。また、前記ゲート部材51は、その下端部が第2の筒体40の一端面と重ならない位置まで引き上げられる。したがって、前記ゲート機構50は、ゲート部材51を引き上げた状態で、一対のガイド部材52及びゲート部材51によって規定されるゲート空間として、前記第2の筒体40を第1の筒体31に対して着脱可能な大きさの空間を形成することができる。
このように構成された圧縮機10の作動について以下に説明する。まず、成形装置26の油圧シリンダ28を駆動して、そのシリンダロッド29を所定の後退位置まで移動させる。このとき、ゲート部材51を下方位置に配置して圧縮室33を閉塞しておく。
第6図は、シリンダロッド29が後退位置にあるときの要部断面図である。モータ24を駆動して、スクリューコンベア22を所定の方向に回転させて、ホッパ18の開口に切粉を投入する。投入された切粉は、スクリューコンベア22の羽根23により下方に送り込まれ、開口36から圧縮室33内に投下される(第6図の符号S参照)。圧縮室33内に所定量の切粉が投下されると、油圧シリンダ28が駆動され、シリンダロッド29が軸方向に沿って上流側から下流側に移動する。したがって切粉は徐々に下流側に集められ、第7図に示すように、最終的に、先端チップ39の端面、第1の筒体31の内周及びゲート部材51の背面51aにて囲まれる圧縮室33内に、円筒状に圧縮された切粉からなる固形物W(第8図参照)が作られる。第7図に示す状態において、固形物Wの外周と先端チップ39の端面との間、第1の筒体31の内周とゲート部材51の背面51aとの間には、切粉による圧着力が作用する。したがって、このままの状態で油圧シリンダ53を作動させてゲート部材51を上方に移動させようとしても、ゲート部材51の背面51aと固形物Wとの間の摩擦力により、ゲート部材51の引き上げが困難となる。
そこで、本実施の形態においては、シリンダロッド29を逆方向(上流方向)に僅かに後退させる。ここに、第1の筒体31のフランジ66の上流側端面とこれに対向するケーシング30の内径拡大部の端面との間に空隙75が形成されているとともに、第1の筒体31の内周及び先端チップ39の端面と固形物Wとの間には、大きい圧着力が作用している。したがって、第9図に示すように、シリンダロッド29の後退に伴って、固形物W及び第1の筒体31が僅かに後退する。すなわち、第1の筒体31は、ケーシング30に対して上流方向に相対移動する。このように固形物Wを第1の筒体31とともに後退させることにより、ゲート部材51の背面51aと固形物Wとの間の摩擦力は著しく減少する。このため、油圧シリンダ53を作動させることにより、ゲート部材51を容易に引き上げることができる。
ゲート部材51を引き上げた後、再度、シリンダロッド29を下流方向に移動させることにより、固形物Wが第1の筒体31の下流側の開口端から外側に排出される。例えば、前記開口端付近に固形物Wの受け具を配置しておけば、落下する固形物Wを収容することができる。その後、シリンダロッド29を後退位置に戻し、かつ、ゲート部材51を下降させることにより、切粉から固形物Wを作り、これを排出する一連の工程が終了する。
第10図は、従来の圧縮機を1ヶ月程度使用した後における、圧縮室を構成する筒体100の下流側における軸方向断面を示す図である。同図に示すように、固形物の軸方向長さ(厚み)T(例えば、T≒50mm)に対して、筒体100の下流側の開口端(排出口)から略T×3/5の位置まで、筒体100の内周が磨耗している。特に、排出口からT×3/10の位置で、筒体100の磨耗はピークとなり、その深さDは2〜3mmに達している。そこで、本実施の形態においては、第1の筒体の下流側に前記第2の筒体40を設けている。この第2の筒体40は、ボルト45により固定されているため、長期の使用により第2の筒体40の内周が磨耗したときに、ボルト45を外して第2の筒体40を取り外し、新たな第2の筒体40を取り付けることができる。
前記第2の筒体40の軸方向長さは、形成される固形物Wの厚みTの約4/5倍(つまりT×4/5)以上あれば十分である。これは、上述したように、排出口より約T×3/10の位置で、磨耗がピークに達し、かつ、排出口からT×3/5の位置では、磨耗が見られないという本出願人の知見による。例えば、本実施の形態においては、50mm程度の厚み(軸方向長さ)の固形物Wが形成されるため、内径が65mmの第1の筒体について、外径が125mm、軸方向長さが50mmのダイス鋼に熱処理を施した第2の筒体40が使用されている。
本実施の形態においては、機械構造用炭素鋼等の一般的な炭素鋼に熱処理を加えたものよりも硬さの硬いダイス鋼を第2の筒体40の材料として使用しているが、上述したようにこの第2の筒体40は第1の筒体31等の他の部材と比較して、サイズが極めて小さいものであるので、その材料費が高価であるにもかかわらずその使用量が少なく、そのコストは他の部材と比較すると著しく安い。このため、従来の筒体100全体を磨耗により交換する場合と比較して、極めて安い部品コストを要するに過ぎない。
本実施の形態によれば、固形物Wと第1の筒体31の内周との摩擦や固形物Wによる加圧力が著しく大きく、その磨耗が激しい部分に、第2の筒体40を設けているので、所定の期間ごとに第2の筒体40のみを交換することにより、常に良好な状態で圧縮機10を作動させることが可能となる。また、一対のガイド部材52及びゲート部材51によって規定されるゲート空間を通して、第2の筒体40を交換することができるので、ゲート機構50を取り外す必要がなく、その分、交換作業を容易且つ迅速に行うことができる。ゲート部材51を開放して第2の筒体40のみを交換するために要する時間は、一人の作業員にて5分〜10分程度であり、従来の筒体100の交換時間と比較して著しく短い時間で済む。
なお、前記実施の形態においては、第2の筒体40としてダイス鋼に熱処理を施したものや超硬合金からなるものを使用したが、これに限定されるものではない。例えば、比較的短期間で交換することを前提とするのであれば、SUJ−2等の軸受鋼や、HDC60のような鋼材を使用しても良い。これにより、材料コストをより一層減らすことができる。また、前記実施の形態においては、第2の筒体40の軸方向長さを固形物Wの厚みと略等しくしているが、この軸方向長さはこれに限定されるものではない。さらに、第2の筒体40は、その少なくとも内周側の硬さが、第1の筒体31の内周側の硬さよりも硬くなっていればよい。
第11図は他の実施の形態を示す要部断面図である。この実施の形態においては、第2の筒体40が2個の筒状部材41,42で構成されている。各筒状部材41,42は、端面どうしを突き合わせた状態で軸方向に沿って配置されている。これら筒状部材41,42は、外径及び内径が等しく、軸方向長さが異なっている。下流側の筒状部材41の軸方向長さは、前記実施の形態と同様に、固形物Wの軸方向長さTと略同一であり、上流側の筒体42の軸方向長さは、下流側の筒状部材41の軸方向長さの例えば3/5程度である。
各筒状部材41,42は外筒41a,42aと、その内部に嵌合された内筒41b,42bとによって構成されている。前記外筒41a,42aは例えばダイス鋼をHRC58〜60の硬さに熱処理したものであり、内筒41b,42bは外筒41a,42aよりも硬さの硬い超硬合金からなるものである。このように、内筒41b,42bのみを超硬合金で形成することにより、筒状部材41,42全体を超硬合金で形成する場合に比べてコストを安くすることができる。
前記内筒41b,42bは外筒41a,42aの内周に対して焼嵌めされている。また、内筒41b,42bと外筒41a,42aとの嵌合面Eは、径方向の寸法が下流側に行くにしたがって漸次小さくなるようにテーパ面で構成されている。このため、外筒41a,42aに対して内筒41b,42bを、焼嵌めよって破損させることなく容易かつ確実に一体化させることができる。
前記各筒状部材41,42には、切粉に含まれる水分や油分等の液体を圧縮室33の外部に排出するための排液路47が形成されている。この排液路47は各筒状部材41,42の外周底面に形成された平坦面47aと、各筒状部材41,42の上流側端面に放射状に形成された複数の浅い溝47bと、各筒状部材41,42の上流側端面と外周面とが交差する部分に形成された大きい面取り47cとによって構成されている(第12図及び第13図参照)。前記排液路47の下流側は、ゲート部材51の下部に形成された切欠き51b(第5図参照)に連通されている。前記排液路47によって、切粉の圧縮時に当該切粉から排出される液体をゲート部材51の切欠き51b部分に集めて圧縮室33から排出することができるので、残留液の少ない固形物Wを得ることができる。
第1図に示す実施の形態においては、第2の筒体40の寿命が長くなることによって、摩耗に起因する第1の筒体31の寿命が相対的に短くなる。この第1の筒体31の摩耗は、その内周面のうちの特に第2の筒体40に近い部分が激しい。図11に示す実施の形態においては、この摩耗量の多い部分に耐摩耗性に優れる筒体42を配置しているので、第1の筒体31の摩耗に起因してその寿命が相対的に短くなるのを防止することができる。この結果、圧縮室33をさらに長期間良好な状態で使用することができる。また、下流側の筒状部材41の摩耗は上流側の筒状部材41よりも激しいので、その寿命は上流側の筒体42よりも短いが、第2の筒体40が2個の筒状部材41,42で構成されているので、寿命の短い下流側の筒状部材41を単独で交換することができる。このため、第2の筒体40を単一の長い筒体で構成する場合よりも、ランニングコストを安くすることができる。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも勿論本発明の範囲内に包含される。例えば、前記実施の形態においては、ケーシング30と当該ケーシング30と相対移動可能な第1の筒体31とを備えた圧縮機において、第1の筒体31の下流側先端部付近に、所定の軸方向長さを有する第2の筒体40を設けたが、本発明を他の形式の圧縮機に適用することも可能である。具体的には、ケーシングと第1の筒体とが固定されているもの、或いはケーシング30と第1の筒体とが一体形成されているものについても本発明を適用することができる。
また、図11に示す実施の形態においては、第2の筒体40を2個の筒状部材41,42で構成したが、3個以上の筒状部材で構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施形態にかかる圧縮機の概略正面図である。
第2図は、前記圧縮機の下側部分の詳細図である。
第3図は、成形装置の下流側の拡大断面図である。
第4図は、第1の筒体の下流側端部付近の拡大断面図である。
第5図は、ゲート機構の側面図である。
第6図は、圧縮室に切粉を投入した状態を示す要部断面図である。
第7図は、圧縮室に投入した切粉を圧縮した状態を示す要部断面図である。
第8図は、本実施の形態により作られた固形物を示す斜視図である。
第9図は、圧縮機の動作を説明する要部断面図である。
第10図は、従来の筒体の磨耗を説明する図である。
第11図は、他の実施の形態を示す要部拡大断面図である。
第12図は、第2の筒体を構成する一対の筒状部材の正面図である。
第13図は、下流側の筒状部材の右側面図である。
第14図は、上流側の筒状部材の右側面図である。
Claims (9)
- 一端部の内周にその他端部側の内周寸法よりも大きい拡大部を有し、内部に被圧縮物を収容する第1の筒体と、
前記第1の筒体の拡大部に交換可能に配置され、前記第1の筒体とともに圧縮室を構成するとともに、内周面が前記第1の筒体の内周と面一の第2の筒体と、
前記第1の筒体に収容した被圧縮物を前記圧縮室の一端部側へ加圧する加圧機構と、
前記圧縮室の一端部を開閉するゲート機構と
を含む圧縮機。 - 前記第2の筒体の軸方向長さが、被圧縮物を圧縮して得られる圧縮物の軸方向長さの略3/5倍以上である請求項1記載の圧縮機。
- 前記第2の筒体の少なくとも内周側の硬さが、第1の筒体の内周側の硬さよりも硬い請求項1記載の圧縮機。
- 前記第2の筒体の少なくとも内周側が、超硬合金で構成されている請求項1記載の圧縮機。
- 前記第2の筒体が、焼入硬化された外筒とその内周に嵌合された超硬合金からなる内筒とで構成されている請求項1記載の圧縮機。
- 前記内筒と外筒との嵌合面が、その径方向の寸法が第2の筒体の一端部側に向かって漸次小さくなるテーパ面である請求項5記載の圧縮機。
- 前記第2の筒体に、被圧縮物から排出される液体を圧縮室の外部に導く排液路を形成している請求項1記載の圧縮機。
- 前記第2の筒体が、端面どうしを突き合わせた状態で配置された複数個の筒状部材からなる請求項1記載の圧縮機。
- 前記ゲート機構が、圧縮室の一端部を開いた状態で、前記第2の筒体を第1の筒体に対して着脱可能な大きさのゲート空間を形成する請求項1記載の圧縮機。
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