JPH1190606A - 竪型ダイカスト法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 竪型ダイカスト法において、凝固収縮に対し
て充分な補給体積を有する直径およびストロークで強力
な加圧力の加圧ピンを用いることによって良質な緻密な
組織で強度の強い鋳造品を鋳造することが望ましい。し
かし、プランジャによる初充填が充分に行われた場合は
補給充填量が少なくてすみ押湯の切断が困難になる場合
がある。 【解決手段】 補給充填量が少なくてすみ、加圧ピン前
進量が少ないときは、その位置信号によりプランジャチ
ップを引下げて加圧ピンを所定位置まで前進させること
により押湯切断を容易にした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は金型キャビティ内へ
溶湯を真下から射出する竪型ダイカスト法に関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】アルミニウム合金の製品を鋳造で作ると
き、強度を必要とする部品の場合、溶湯射出時における
ガスの巻込みを防止するため、竪型ダイカストマシンを
使用することが多い。自動車用アルミホイールを作る方
法については、例えば、特公平３−４２９７号公報に示
されているように、射出スリーブ内径より小さい径のゲ
ートと、ゲート内径よりわずかに小さい径の加圧ピンを
上方の可動金型から下方のゲートに向けて出し入れ自在
に設けて用いた鋳造は既に用いられている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】前記した特公平３−４
２９７号公報に示されているものにおいては、ゲート直
径およびゲート上部の湯溜りの高さはホイールの軸穴お
よびホイールのデザインによって決まり、凝固収縮に必
要な溶湯補給に対しては必ずしも充分ではなかった。

【０００４】鋳造品の強度を確保するためには凝固収縮
に必要な溶湯補給を充分に行う必要があり、乗用車用ア
ルミホイール以外の鋳造品の場合には円形ゲート直径お
よびゲート上部の湯溜りの高さなどに制限条件は少な
く、加圧ピン直径およびストロークを適当に選択するこ
とによって必要な溶湯補給を充分に行うことができる。

【０００５】しかし、溶湯補給を充分に行う場合、アキ
ュラッドピンを最高出力で加圧した場合でもピンはゲー
トの上部で停止する。その停止位置は給湯量、給湯温
度、金型温度などのバラツキによって変化し一定しな
い。

【０００６】一方、製品と押湯を分離するためには、加
圧ピンによって押湯（ビスケット）を円形ゲートの所で
切断しなければならないが、加圧ピンの停止位置が高す
ぎると加圧ピンの出力では切断できないことも起り得
る。押湯を加圧ピンで切断するためには加圧ピンの停止
位置を一定範囲になるようにしなければならない。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
を解決するために行ったもので、アキュラッドピンによ
る凝固収縮時における溶湯補給を充分にできるように装
置および金型の設計時に加圧シリンダの出力、加圧ピン
の直径およびストロークを選択する。

【０００８】加圧ピン加圧により凝固収縮時の溶湯補給
を充分に行い、加圧シリンダの出力が最大になっても給
湯量、給湯温度、金型温度などのバラツキにより加圧ピ
ンの停止位置が予定停止位置より高い場合には、その位
置を検出、その信号により射出シリンダのヘッド側の油
圧を減圧し出力を引下げると湯溜り、ゲート部の凝固が
完了していないときは加圧ピンシリンダの加圧によりプ
ランジャチップが後退し、ゲート内のビスケットは押し
下げられて加圧ピンは予定位置まで前進する。

【０００９】この状態で鋳造品の型内冷却を行う。冷却
完了後、プランジャチップを後退させ加圧ピンを再度前
進させると押湯はゲートの部分で加圧ピンにより切断分
離され、型開後製品を取出すことができる。

【００１０】このように加圧ピンの加圧により凝固収縮
時の溶湯補給を完全に確実に行うことによって鋳造品に
ミクロクラック、ミクロポロシティを発生させることな
く強度が強く、安定した鋳造品を鋳造することができる
と同時に押湯を確実に分離できて安定した操業をするこ
とができる。

【００１１】

【作用】射出スリーブ内に注湯された溶湯は、射出スリ
ーブを固定金型にドッキングした後、射出プランジャを
押上げることにより射出スリーブ内を上昇し、固定金型
の円形ゲートを通過した後、金型キャビティ内に充填さ
れる。射出スリーブ内面で冷却凝固し形成されたチル層
はプランジャで押し上げられ円形ゲートの入口の外周に
残りプランジャ前進の抵抗を増大させる。

【００１２】金型キャビティ内の溶湯の凝固が進行し収
縮が始まると射出プランジャで加圧する必要があるが、
チル層の堆積のために押湯（ビスケット）の外周部分が
凝固していて射出プランジャは前進できない。このた
め、射出シリンダのヘッド側の油圧室の圧力が上昇す
る。この圧力上昇を検知して湯溜内に加圧ピンを前進さ
せ金型キャビティに溶湯を補給する。

【００１３】鋳造品の組織を緻密にし強度を強くするた
めには、この加圧ピンによる溶湯補給を充分に行う必要
があるが、その補給量は給湯量、給湯温度あるいは金型
温度などによってバラツクのである。特に、射出スリー
ブ内壁における冷却凝固によるチル層の発生量の差は射
出プランジャの前進限のバラツキの原因となり、加圧に
よる必要溶湯補給量にも差が発生する。

【００１４】加圧ピンによる溶湯補給量が適正な場合に
は、加圧シリンダに最高圧を加えたとき、図８に示す加
圧ピンにより切断可能な適正寸法δ₂ の所まで加圧ピン
は前進し停止する。その後、充填された溶湯が冷却凝固
した後、射出スリーブ、射出プランジャを引き戻し、加
圧ピンを再び前進させて図１０に示すように押湯を円形
ゲートの所で切断分離する。

【００１５】溶湯補給量を多く必要とし、加圧ピンによ
る溶湯補給量が不足するときは、加圧ピンに対する加圧
抵抗は少なく加圧ピンは図７に示すように、円形ゲート
の入口まで前進し溶湯を金型キャビティに補給すること
なく、単に押湯（ビスケット）を加圧し停止する。その
位置がδ₁ 以下になったときは充填量不足を示してお
り、加圧ピンのストローク変更などの補正を必要とす
る。

【００１６】射出スリーブ内面の保温が良く射出プラン
ジャが多く前進したり、金型キャビティ内に充填される
溶湯の凝固率が高く、加圧ピンによる溶湯補給量が少な
くてすむ場合は、加圧ピンを図９に示すように高い位置
δ₃ の所で停止する。この場合、溶湯が冷却凝固すると
加圧ピンの力が不足して押湯（ビスケット）を円形ゲー
トの所でシャー切断できないので押湯の凝固しない間に
射出プランジャをわずかに引下げ、加圧ピンをδ₂ まで
前進させて冷却凝固後でも押湯を切断分離できるように
する必要がある。

【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る竪型ダイカ
スト法を図１〜図１０を用いて詳細に説明する。

【００１７】図１は２点鎖線で示した位置で射出スリー
ブに溶湯が注湯され、図示されていない傾転シリンダに
より垂直になった射出装置が固定金型にドッキングする
直前の状態を示す鋳造機の縦断面図である。型締装置は
公知の形式のものを使用するので図示されていない。

【００１８】図２はドッキング、射出、上型内加圧ピン
加圧の状態を示す鋳造機の縦断面図であり、図３ないし
図６は加圧ピンの動作シーケンス図、図７ないし図１０
は加圧ピンの停止位置比較図である。

【００１９】図１、図２において、１は竪型ダイカスト
マシンないしは竪型スクイズキャスティングマシンの水
平な固定盤、２は水平状態で上下動する可動盤、３はコ
ラム、３ａはコラムナット、４は固定盤１に固定させた
固定金型バックアッププレート、５は下金型である固定
金型、６は上金型である可動金型である。

【００２０】７は固定金型５に対して下方中央部で着脱
できるように設けた射出スリーブ、８は射出スリーブ７
と一体に設けたドッキングフレーム、９は射出シリン
ダ、１０は射出シリンダ９の上部に設けて、射出スリー
ブ７とドッキングフレーム８を上下動させるためのドッ
キングシリンダ、１１は射出スリーブ７内に摺動自在に
設けたプランジャチップ、１２はプランジャ、１３はプ
ランジャ接手、１４は射出シリンダ９のピストンおよび
ピストンロッドであり、ピストンおよびピストンロッド
１４の上下動によりプランジャ１２とプランジャチップ
１１を上下動させることができる。

【００２１】射出シリンダ９の底部は傾転軸１５によっ
て射出シリンダ取付板１６に回動自在に取付けられてお
り、図示していない傾転装置の作動によって、射出シリ
ンダ９と共に射出スリーブ７やプランジャチップ１１等
を、図１に２点鎖線で示すように、ラドル１７で給湯し
易い位置に傾転させることができる。１８は射出シリン
ダ取付タイバーである。

【００２２】２５は固定金型５の下側中央部に設けた鋳
込口で、この鋳込口２５部には、前記したように、射出
プランジャ７の上端部がドッキングされる。鋳込口２５
の内径は射出スリーブ７の内径と同一であり、鋳込口２
５の内面の一部まで、プランジャチップ１１が上昇す
る。

【００２３】鋳込口２５の軸芯部の上側には、射出スリ
ーブ７の内径より小さくて、金型５、６内のキャビティ
２６に通じた円形ゲート２７が設けてある。円形ゲート
２７の上端部は比較的に小径で、下側はラッパ状に少し
広がっている。

【００２４】２１は可動金型６の中央部において下方に
向かって出し入れ自在に設けた加圧ピン、２２は加圧ピ
ン用シリンダであり、加圧ピン２１内には冷却水用通路
３３およびパイプ３４を設けて、加圧ピン２１を内部か
ら冷却し得るようにした。

【００２５】次に、竪型ダイカスト法の作動を説明す
る。

【００２６】型締した後、射出装置が図１の中で２点鎖
線で示す傾転状態にある時は、射出スリーブ７に溶湯２
４が注湯され、傾転解除で、図１に示すように垂直にな
り、次いで図１に示すようにドッキングシリンダ用四方
弁３９を左行させ、圧油をドッキングシリンダ１０内に
供給されると、射出スリーブ７はドッキングフレーム８
を介してドッキングシリンダ１０によって押上げられ固
定金型５にドッキングされる。

【００２７】続いて、プランジャチップ１１、プランジ
ャ１２は射出シリンダ９のピストンおよびピストンロッ
ド１４の作用によって上昇し、金型キャビティ２６内に
溶湯２４を充填し、プランジャチップ１１で加圧する。

【００２８】金型キャビティ２６内に溶湯２４を充填し
プランジャチップ１１による加圧が開始されると加圧抵
抗が増大する。特に、鋳込口２５の外周上部は射出スリ
ーブ７内で凝固したチル層２９が堆積し、また固定金型
５からも冷却されるので早く凝固し、プランジャチップ
１１の加圧抵抗が増大し前進しなくなる。

【００２９】プランジャチップ１１が停止すると加圧ピ
ン用シリンダ２２に加圧ピンシリンダ用四方弁４０を介
して圧油を加え加圧ピン２１を高圧で前進させて金型キ
ャビティ２６内の凝固収縮体積に湯溜２８から溶湯を補
給充填する。この場合、押湯（ビスケット）３０内の溶
湯はほぼ凝固しており、パスカルの原理は働かずプラン
ジャチップ１１は後退しない。

【００３０】金型キャビティ２６内の補給充填を確実に
行うためには、加圧ピン２１の補給体積を充分に確保し
ておく必要があるが、プランジャチップ１１による充填
の度合によって加圧ピン２１による必要補給体積は変化
し加圧ピン２１の加圧停止位置も異なる。

【００３１】この位置を加圧ピン位置検出装置２３で検
出する加圧ピンシリンダ２２の油圧が最高になったこと
を圧力検出装置４１で検出し、且つ加圧ピン位置が予定
値より大きい図９の状態のδ₃ のときは冷却後、加圧ピ
ン２１による押湯切断は困難になるので、制御装置４２
の指令により射出シリンダ９の主回路の四方弁３５を閉
じ、補助回路の四方弁３６により射出シリンダのヘッド
側の油圧室１９から少量の油を排出ロッド側の油圧室２
０の油を供給してプランジャ１２、プランジャチップ１
１をわずか引下げると加圧ピン２１は所定の位置まで前
進する。この状態を図１０に示す。

【００３２】金型キャビティ２６および円形ゲート２７
内の溶湯が冷却凝固完了後、射出スリーブ７およびプラ
ンジャチップ１１を引下げ、再度上型の加圧ピン２１を
前進させて円形ゲート２７の最小径部で金型キャビティ
２６内の成型品と押湯（ビスケット）３０を切断して押
湯３０を突落し、その後型開きを行い成型品の取出しを
行う。

【００３３】

【実施例】本発明においては、軽合金の鋳造時の凝固収
縮体積に対して確実に溶湯を補給充填するとともに、過
充填に対しては不完全凝固の軟らかい状態でプランジャ
チップ１１を引下げ加圧ピン２１を所定の位置まで前進
させ押湯を確実に切断できるようにした。

【００３４】

【発明の効果】以上説明したことからも明らかなよう
に、本発明においては、鋳造時の凝固収縮に対し確実に
溶湯を補給充填することによって、ミクロクラック、ミ
クロポロシティのない緻密な組織で強度の強い鋳造品を
鋳造できるようにするとともに、押湯切断も確実に行い
安定運転が可能となった。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の方法を実施するための装置の１実施例
を示すもので射出装置が固定金型にドッキングする直前
の状態を示す鋳造機の縦断面図である。

【図２】本発明の方法を実施するための装置の１実施例
を示すもので溶湯を金型に充填し加圧ピン加圧の状態を
示す鋳造機の縦断面図である。

【図３】図２において溶湯を金型キャビティに充填する
場合の動作図である。

【図４】図３の続きを示す充填完了の動作図である。

【図５】図４の続きを示し加圧ピン加圧の動作図であ
る。

【図６】図５の続きを示し押湯切断の動作図である。

【図７】溶湯を金型キャビティに充填し加圧ピンで加圧
した時の充填不足状態を示す説明図である。

【図８】溶湯を金型キャビティに充填し加圧ピンで加圧
した時の適正充填状態を示す説明図である。

【図９】溶湯を金型キャビティに過剰充填した場合の説
明図である。

【図１０】プランジャの押下げ状態を示す説明図であ
る。

【符号の説明】

１ 固定盤 ２ 可動盤 ３ タイバ ３ａ タイバナット ４ 固定金型バックアッププレート ５ 固定金型（下金型） ６ 可動金型（上金型） ７ 射出スリーブ ８ ドッキングフレーム ９ 射出シリンダ １０ ドッキングシリンダ １１ プランジャチップ １２ プランジャ １３ カップリング １４ 射出ピストン １５ 傾転軸 １６ 射出プラテン １７ ラドル １８ タイバー １９ 射出シリンダヘッド側油圧室 ２０ 射出シリンダロッド側油圧室 ２１ 加圧ピン ２２ 加圧ピン用シリンダ ２３ 加圧ピン位置検出装置 ２４ 溶湯 ２５ 鋳込口 ２６ 金型キャビティ ２７ 円形ゲート ２８ 湯溜り ２９ チル層 ３０ 押湯（ビスケット） ３１ プランジャ冷却水用通路 ３２ 冷却パイプ ３３ 加圧ピン冷却水用通路 ３４ 冷却パイプ ３５ 射出シリンダ用四方弁 ３６ 射出シリンダ用補助四方弁 ３７ 絞り弁 ３８ 流量調整弁 ３９ ドッキングシリンダ用四方弁 ４０ 加圧ピンシリンダ用四方弁 ４１ 圧力検出装置 ４２ 制御装置

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 下側の固定金型と上側の可動金型と固定
   金型の下側に設けた射出装置を用いて成型品をダイカス
   ト鋳造する場合、固定金型の溶湯通路の円形ゲートの直
   径を射出スリーブの直径よりも小さくし、挿入部の直径
   が溶湯通路の円形ゲート部の最小直径よりもわずかに小
   さい径の加圧ピンを可動金型に摺動自在に設けて固定金
   型の円形ゲート内を昇降させることができるようにした
   竪型射出装置を用い、金型キャビティ内に溶湯を充填す
   るとき、射出スリーブ内の溶湯の表面にある酸化膜の過
   半量を射出スリーブの内面に発生する冷却凝固層の大部
   分を押湯部分に残して金型キャビティ内に入ることを防
   止し、金型キャビティ内の溶湯が冷却するとき、金属溶
   湯の凝固収縮に伴う空隙を補充するのに必要充分な体積
   を加圧ピンのストロークで確保し、加圧ピンシリンダの
   最高出力で加圧したとき加圧ピンの先端が円形ゲートの
   入口の上で予定以上の寸法で停止した場合、射出シリン
   ダの出力を小さくしてプランジャチップを押下げて加圧
   ピンの先端の停止位置を予定範囲に入るように制御して
   緻密な組織の強度の強い鋳造品を鋳造するとともに可動
   金型の加圧ピンにより押湯部分を製品から確実に切断分
   離できるようにした竪型ダイカスト法。