JPH11310120A - 共振ゲイン演算装置 - Google Patents

共振ゲイン演算装置

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JPH11310120A
JPH11310120A JP11757198A JP11757198A JPH11310120A JP H11310120 A JPH11310120 A JP H11310120A JP 11757198 A JP11757198 A JP 11757198A JP 11757198 A JP11757198 A JP 11757198A JP H11310120 A JPH11310120 A JP H11310120A
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JP
Japan
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wheel speed
brake torque
resonance
spring constant
vibration
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JP11757198A
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English (en)
Inventor
Hidekazu Ono
英一 小野
Masaru Sugai
賢 菅井
Katsuhiro Asano
勝宏 浅野
Koji Umeno
孝治 梅野
Hiroyuki Yamaguchi
裕之 山口
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Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】タイヤバネ定数の変動に係わらず、共振ゲイン
を高精度に演算する。 【解決手段】 ブレーキトルクTb を検出するブレーキ
トルク検出部14と、車輪速度信号ωを検出する車輪速
センサ16、車体と車輪と路面とから構成される振動系
の共振モデルに基づいて、検出されたブレーキトルクT
b と車輪速度信号ωとから、摩擦係数μのスリップ速度
に対する勾配α及びタイヤバネ定数Kを演算するμ勾配
・タイヤバネ定数演算部12、αとKとからブレーキト
ルクの微小励振振動から車輪速度微小振動までの位相差
θd を演算する位相演算部15、及び位相差θd 及び上
記振動系の共振周波数を有する車輪速度ωの微小振動の
振幅を演算し、該振幅等より共振ゲインGd を演算する
ゲイン演算部17を備える。この構成により、タイヤバ
ネ定数の変動に応じて位相差θd が変化しても、該変化
に対応した共振ゲインGd を常に高精度に演算できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、共振ゲイン演算装
置に係り、より詳しくは、車体と車輪と路面とから構成
される振動系の共振モデルに基づいて、検出されたブレ
ーキトルクの時系列データと車輪速度の時系列データと
から、摩擦係数μのスリップ速度に対する勾配(以下、
「μ勾配」という)及びタイヤバネ定数を推定し、該μ
勾配とタイヤバネ定数に基づいて、タイヤ空気圧の変動
に係わらず、共振ゲインをさらに精度良く演算する共振
ゲイン演算装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車体と車輪と路面とから構成
される振動系の振動特性に基づいて、車輪と路面との間
の滑り状態を判定する技術が提案されている(特願平7
−220920号等)。
【0003】この技術の1つの応用例によれば、まず、
タイヤグリップ時の振動系の共振周波数ω∞(後述する
(7) 式参照)でブレーキ力(ブレーキトルク)を微小励
振する。そして、このブレーキ力の微小振幅に対する上
記共振周波数での車輪速度の微小振幅の比である共振ゲ
インGd を演算し、該車輪速度の微小振幅がピークμ近
傍の状態で急激に減少する特性に基づき共振ゲインGd
が基準ゲインGs 以下となったときをピークμ直前の状
態とみなして、ブレーキ力を低減させる制御を行ってい
る。
【0004】また、上記原理を利用して車輪と路面との
間の摩擦状態を演算する摩擦状態演算装置も提案されて
いる(特願平8−157275号等)。この摩擦状態演
算装置によれば、上記共振ゲインGd を基準ゲインGs
に一致又は略一致させるように制御したときの制動力
が、ピークμに対応する制動力とみなし、該制動力に基
づいて最大摩擦係数を求める演算を行う。
【0005】さらに、この摩擦状態演算装置によれば、
ブレーキトルクを微小励振する場合、このブレーキトル
クTb の励振振動が車輪速度微小振動に現れるまで、一
定の位相角度θd 遅延することを利用して、車輪速度の
微小振幅の演算を簡略化する方法が示されている。
【0006】すなわち、従来の摩擦状態演算装置では、
車輪速度の時系列データとある一定の位相角度θd の単
一正弦波のみとから相関を演算するという簡略な方法
で、共振周波数成分の車輪速微小振幅を得る方法が示さ
れている。この従来技術によれば、ブレーキトルクの励
振振動に対して位相角度θd だけ遅延する振動成分のみ
に着目することにより、ブレーキトルクの励振に相関の
ある振動成分のみを抽出することが可能となるため、路
面からの振動ノイズなどの影響も受けにくくなり、共振
ゲインの演算精度が向上する、とされている。
【0007】なお、位相角度θd は、タイヤバネ定数K
と、スリップ率に対する摩擦係数μの勾配(以下、「μ
勾配α」)とに応じて変化することがわかっているが、
従来技術では、上記遅延位相角度θd を、約180度
(π)の一定値として扱っている。
【0008】ここで、μ勾配αを、様々に変化(α=
5,10,100の3通り)させたときのタイヤ共振特
性のボード線図(後述する(14)式の伝達関数に基づく)
を図6(a)、図6(b)に示す。
【0009】図6(a)は、タイヤの共振モデル(図4
参照)の周波数特性を示すもので、いずれのμ勾配αに
対しても、車体と車輪と路面とから構成される振動系
(タイヤグリップ時)の共振周波数(約40Hz)でゲ
インの極大をとることがわかる。また、この共振周波数
でのゲインの値は、μ勾配αが小さくなるほど小さくな
っている。
【0010】一方、図6(b)は、上記位相角度θd
周波数特性を示すもので、タイヤグリップ時の共振周波
数(約40Hz)では、いずれのαに対しても位相角度
θdはブレーキトルクに対して常に−180度の遅延角
度、すなわち逆位相となっている。従って、従来技術の
ように、車輪速度の時系列データと、ブレーキトルクの
励振振動に対し逆位相の位相角度θd の単一正弦波のみ
とから相関を演算することにより、演算精度が向上でき
ることがわかる。なお、この共振周波数近傍の位相角度
θd の変化率は、αが小さいほど小さいことがわかる。
【0011】また、以上述べた共振ゲインに基づくブレ
ーキ力の制御以外の従来技術として、米国特許4794
538号(Dec.27,1988)には、ホイールシリンダ圧と車
輪速度から路面と車輪との間の摩擦係数μを推定し、こ
のμ値に基づいて車輪に作用するブレーキ力を制御する
技術が開示されている。この技術では、ホイールシリン
ダ圧の時系列データと車輪速度の時系列データとから車
輪と車体速度の数式モデルに基づきオンライン同定手法
を適用することにより3つのパラメータ(p2,p1
c)を同定し、このうちのパラメータp2 に基づいて、
μ勾配を求め、該μ勾配よりμ値を演算している。この
技術によれば、路面毎の摩擦係数μやμ勾配を正確に求
めることができる、とされている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のABS装置及び摩擦状態検出装置には、以下のよう
な問題がある。
【0013】すなわち、タイヤ空気圧等が変化するとタ
イヤバネ定数Kが変化し、よって位相角度θd が変化す
ることは容易に予想できるが、上記従来技術では、位相
角度θd を一定値として扱っているため、このタイヤ空
気圧の変化に対応できないことになる。
【0014】ここで、タイヤバネ定数Kが20%小さく
なったときのタイヤ共振特性のボード線図を図7
(a)、図7(b)に示す。なお、これらの図は、タイ
ヤバネ定数K以外は図6(a)、図6(b)と同一の条
件下で各周波数特性を求めたものである。
【0015】図7(a)に示すように、タイヤバネ定数
Kが20%小さくなったときのタイヤグリップ時の共振
周波数は、図6(a)での共振周波数(約40Hz)よ
り小さい値にシフトする。また、図7(b)に示すよう
に、タイヤバネ定数Kが20%小さくなったとき、タイ
ヤグリップ時の共振周波数(約40Hz)での位相角度
θd は、−180度の逆位相から大きくずれ、−200
度〜−300度(αにより異なる)の範囲となる。従っ
て、逆位相の振動成分のみを抽出する従来技術では、ブ
レーキ力の励振に相関の少ない成分に着目していること
になるので、ノイズの影響を受けてしまい、共振ゲイン
の演算精度が低下する、という問題がある。
【0016】なお、一般に、システム同定手法を適用し
て未知パラメータを同定する場合、同定するパラメータ
数の2乗に比例した演算量が要求され、また同定精度も
パラメータ数が多くなるほど悪化するという性質があ
る。従って、上記米国特許の従来技術では、3つのパラ
メータを同時に推定しなければならないため、演算量が
多くなり、また演算精度が悪化するという問題がある。
【0017】本発明は、上記事実に鑑みて成されたもの
で、タイヤバネ定数の変動に係わらず、常に高精度に共
振ゲインを演算することができる共振ゲイン演算装置を
提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を実現するため
に、請求項1の発明は、車体と車輪と路面とから構成さ
れる振動系の共振周波数でブレーキトルクを微小励振す
る励振手段と、ブレーキトルクを検出するブレーキトル
ク検出手段と、車輪速度信号を検出する車輪速度検出手
段と、前記振動系の共振モデルに基づいて、検出された
ブレーキトルクと検出された車輪速度信号とから、前記
共振モデルの未知定数である摩擦係数μのスリップ速度
に対する勾配及びタイヤバネ定数を推定する推定手段
と、前記推定手段により推定された摩擦係数μのスリッ
プ速度に対する勾配及びタイヤバネ定数に基づいて、前
記励振手段により励振されたブレーキトルクの微小振動
から車輪速度信号の微小振動までの位相を演算する位相
演算手段と、検出された車輪速度から、前記位相演算手
段により演算された位相及び前記共振周波数を有する車
輪速度微小振動の振幅値を検出する振幅検出手段と、前
記ブレーキトルクの微小振動の振幅値と、前記振幅検出
手段により検出された車輪速度微小振動の振幅値との比
を演算するゲイン演算手段と、を含んで構成したもので
ある。 (本発明の原理)図3に示すように、重量Wの車体を備
えた車両が車体速度v(角速度換算でω v )で走行して
いる時の車輪での振動現象、すなわち車体と車輪と路面
とによって構成される振動系の振動現象を、車輪回転軸
で等価的にモデル化した図4に示す共振モデルを参照し
て考察する。
【0019】図4の共振モデルにおいて、ブレーキ力
は、路面と接するタイヤのトレッド115の表面を介し
て路面に作用するが、このブレーキ力は実際には路面か
らの反作用(制動力)として車体に作用するため、車体
重量の回転軸換算の等価モデル117はタイヤのトレッ
ドと路面との間の摩擦要素116(路面μ)を介して車
輪113と反対側に連結したものとなる。これは、シャ
シーダイナモ装置のように、車輪下の大きな慣性、すな
わち車輪と反対側の質量で車体の重量を模擬することが
できることと同様である。
【0020】図3、図4でタイヤリムを含んだ車輪11
3の慣性をJw 、リムとトレッド115との間のばね要
素114のばね定数をK、トレッド115の慣性を
t 、トレッド115と路面との間の摩擦要素116の
摩擦係数をμ、車体112の重量の回転軸換算の等価モ
デル117の慣性をJV とすると、系全体の特性は次の
(1) 〜(3) のようになる。なお、以下では時間に関する
1階微分d/dtを「' 」で表し、時間に関する2階微
分d2 /dt2 を「" 」で表す。
【0021】 JW θw " = −Tb +K(θt −θw ) (1) Jt θt " = −K(θt −θw )+μWR (2) Jv ωv ' = −μWR (3) ここで、 ω = θw ' (4) Jv = R2 W (5) ωv = v/r (6) であり、θw は車輪113の回転角、θw " は車輪11
3の回転角加速度、ωは車輪113の回転角速度、すな
わち車輪速度、θt はトレッド115の回転角、θt "
はトレッド115の回転角加速度、ωv は車体等価モデ
ル117の回転軸換算の回転角速度、Tb は車輪113
に加えられるブレーキトルク、Wは車体の重量、Rは車
輪半径である。なお、ブレーキトルクTb は実際にはブ
レーキ圧力Pb の制御によって行う。
【0022】ここで、車両がある速度で走行している
時、ブレーキをかけていくと車輪と路面との間にスリッ
プが生じるが、車輪と路面との間の摩擦係数μは、スリ
ップ速度Δω(=ωv −ω)に対して図8のように変化
する。
【0023】このようなμ−Δω特性を有する路面を走
行中にタイヤがグリップしている時は、図4のトレッド
115と車体等価モデル117とが直結されていると考
えると、車体等価モデル117の慣性とトレッド115
の慣性との和の慣性と車輪13の慣性とが共振し、この
時の車輪共振系の共振周波数ω∞は、
【0024】
【数1】 となる。この状態は図8上では、ピークμに達する前の
スリップ速度の領域A1に対応しており、このときの摩
擦係数μのスリップ速度Δωに対するμ勾配は、正値と
なる。
【0025】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近
付く場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ速度
Δωに対して変化し難くなり、トレッド115の慣性の
振動に伴う成分は車体等価モデル117に影響しなくな
る。つまり等価的にトレッド115と車体等価モデル1
17とが分離され、トレッド115と車輪113とが共
振を起こすことになる。この時の車輪共振系の共振周波
数ω∞’は、
【0026】
【数2】 となる。
【0027】この状態は図8上ではピークμ付近をとる
スリップ速度の領域A2に対応し、一般にピークμの点
に達すると瞬時に領域A3へと遷移してタイヤがロック
する。一方、共振周波数における車輪速度のゲインもピ
ークμ直前で急激に減少する。なお、図8の領域A2で
は、μ勾配は0近傍の値となり、領域A3では、負値と
なる。
【0028】各慣性の大小関係は、 Jt <Jw <Jv (9) であり、これより、 ω∞ < ω∞’ (10) になる。つまり、タイヤがロックに至る場合、車輪共振
系の共振周波数が高周波側にずれることになる。また、
この共振周波数の変化はピークμ付近で急激に発生す
る。
【0029】モデルを簡単化し、車輪慣性Jw と比べて
十分に小さいトレッド115の慣性Jt を無視した場合
でもピークμ状態に近づくと車輪共振系の共振周波数及
び車輪速度のゲインのピークの変化は起こり、同様の解
析が可能である。
【0030】そこで、本発明では、以上のような共振周
波数の変化を反映する物理量として、以下のような共振
ゲインGd を導入する。なお、以下では、共振ゲインG
d を、ブレーキトルクTb を用いて表すが、その代わり
に、ブレーキトルクTb と略比例関係にあるブレーキ圧
b を用いて表すこともできる。
【0031】まず、本発明の励振手段が、共振周波数ω
∞でブレーキトルク(ブレーキ圧でもよい)を微小励振
すると、車輪速度ωも平均的な車輪速度の回りに共振周
波数ω∞で微小振動する。このとき、共振ゲインG
d を、ブレーキトルクTb に対する車輪速度ωの比(ω
/Tb )の共振周波数ω∞の振動成分とみなし、 Gd =((ω/Tb )|s=jω∞) (11) と表すことができる。ただし、jは虚数、sはラプラス
演算子である。なお、共振周波数ω∞における、ブレー
キトルクTb の微小振幅値をTv 、車輪速度ωの微小振
幅値をωv とした場合、共振ゲインGd は、 Gd = ωv /Tv (12) となる。
【0032】共振ゲインGd は、スリップ速度に対する
タイヤ−路面間の摩擦係数μの勾配αと関連しており、
(1) 式〜(3) 式より導き出された伝達関係に基づいて、 Gd = jA + αB (jは虚数単位) (13) と表される。ただし、
【0033】
【数3】 である。
【0034】(13)式に基づいて、共振ゲインの位相
θd 、すなわち前記励振手段により励振されたブレーキ
トルクの微小振動から車輪速度信号の微小振動までの位
相θd を次式に従って演算することができる。
【0035】 θd = tan-1(A/αB) (16) この(16)式では、未知定数として、共振ゲインGd の内
部パラメータである、摩擦係数μのスリップ速度に対す
る勾配α及びタイヤバネ定数Kを含んでいる。そこで、
本発明の推定手段では、図4の振動系の共振モデルに基
づいて、検出されたブレーキトルクTb と検出された車
輪速度信号ωとから、前記共振モデルの未知定数である
摩擦係数μのスリップ速度に対する勾配α及びタイヤバ
ネ定数Kを推定する。
【0036】これにより、位相演算手段が、推定手段に
より推定された摩擦係数μのスリップ速度に対する勾配
及びタイヤバネ定数に基づき、(14)〜(16)式により、位
相θ d を演算することができる。
【0037】そして、振幅検出手段が、検出された車輪
速度ωから、位相演算手段により演算された位相θd
び共振周波数ω∞を有する車輪速度微小振動の振幅値ω
v を検出し、ゲイン演算手段が、ブレーキトルクの微小
振動の振幅値Tv と、振幅検出手段により検出された車
輪速度微小振動の振幅値ωv との比である共振ゲインG
d を演算する((12)式)。
【0038】なお、未知定数であるタイヤバネ定数K及
びμ勾配αを同時に推定する方法として、請求項2の発
明では、請求項1の前記推定手段が、前記共振モデルに
基づくブレーキトルクから車輪速度までの伝達関係を、
未知定数である摩擦係数μのスリップ速度に対する勾配
及びタイヤバネ定数に関する物理量に対して線形の関係
が成立するように表現し、前記線形の関係で表現され、
かつ離散化された伝達関係に、検出されたブレーキトル
クの離散化データと、検出された車輪速度信号の離散化
データと、を当てはめた各データに対し、オンラインの
システム同定手法を適用することによって、摩擦係数μ
のスリップ速度に対する勾配及びタイヤバネ定数を演算
することを特徴としている。
【0039】請求項2の発明のより具体的な演算方法
は、以下の通りである。 (請求項2の発明の演算方法)図3、図4の共振モデル
に基づいて、ブレーキトルクTb から車輪速度ωまでの
伝達関係を表すと、次式のような伝達関数になる。な
お、次式のモデルでは、車輪慣性Jw と比べて十分に小
さいトレッド115の慣性Jt を無視することにより、
簡略化を図っている。
【0040】
【数4】 ただし、αはμ勾配、sはラプラス演算子である。
【0041】(17)式の伝達関数は、次式のように変形す
ることができる。
【0042】
【数5】 そこで、最小自乗法や補助変数法などのオンラインのシ
ステム同定手法を適用するため、(18)式の伝達関係を、
摩擦係数μのスリップ速度に対する勾配α及びタイヤバ
ネ定数Kに関する物理量
【0043】
【数6】 に対して、行列の置換を”T ”として、 φT ・θ = y (20) となるように線形の関係で表現する。ただし、
【0044】
【数7】 である。
【0045】ここで、前記φと前記yとは連続的な量で
あるが、システム同定手法を適用するためには、(20)式
〜(22)式を離散化する必要がある。すなわち、双一次変
換や後退差分などのような離散化手法を用いて、ラプラ
ス演算子sをz変換の演算子で表すと共に、ブレーキト
ルクTb と、車輪速度信号ωとを離散化して、時系列デ
ータによって表す。
【0046】このように前記φ、前記yを離散化した伝
達関係 φ[k] T ・θ = y[k] (kはサンプル番号:k=1,2,3,... ) (23) に、検出されたブレーキトルクの離散化データTb [k]
(k=1,2,3,...) と、検出された車輪速度信号の離散化デ
ータω[k] (k=1,2,3,...) と、を当てはめた各データに
対し、オンラインのシステム同定手法を適用することに
よって、前記θを推定し、該θの各要素から摩擦係数μ
のスリップ速度に対する勾配α及びタイヤバネ定数Kを
演算する。
【0047】なお、本発明では、共振周波数ω∞を含む
帯域の周波数成分の挙動に着目しているので、同定精度
を高精度に維持するため、検出されたブレーキトルク及
び車輪速度信号から、この帯域外の周波数成分を予めカ
ットしておくことが望ましい。
【0048】ここで、システム同定手法の一手法として
の最小自乗法を適用することができる。すなわち、
【0049】
【数8】 としたとき、
【0050】
【数9】 の漸化式から前記θの推定値
【0051】
【数10】 を演算する。ただし、λは忘却定数である。
【0052】
【発明の実施の形態】以下、本発明の共振ゲイン演算装
置を、車両のABS装置に適用した場合の実施の形態を
図面に基づいて詳細に説明する。 (第1の実施の形態)図1には、本発明の第1の実施の
形態に係るABS装置の構成ブロック図が示されてい
る。
【0053】図1に示すように、第1の実施の形態のA
BS装置は、各車輪毎に共振ゲインGd を演算する共振
ゲイン演算装置10と、演算された共振ゲインGd が基
準ゲインGs に一致又は略一致するような各車輪へのA
BS操作量信号(平均ブレーキ圧の指令Pr )を各々演
算出力するABS制御部18と、該ABS操作量信号に
基づいて、各車輪毎のブレーキ圧(ホイールシリンダ
圧)を制御する制御バルブ52と、演算された各車輪の
タイヤバネ定数Kに基づき各車輪のタイヤ空気圧を診断
するタイヤ空気圧診断部24と、このタイヤ空気圧の診
断結果をドライバが認識可能なように出力する診断結果
出力部26と、から構成される。
【0054】ここで、ABS制御部18は、共振ゲイン
d と基準ゲインGs との差分(G d −Gs )を零に一
致又は略一致させるためのいわゆるPI制御器やPID
制御器により実現することができる。また、これ以外で
も例えば、H∞制御、2自由度制御などのロバスト制御
系や、ニューラルコンピュータやファジー制御系、適用
制御等用いて構成することも可能である。
【0055】また、ABS制御部18は、車体と車輪と
路面とから構成される振動系の共振周波数ω∞若しくは
該周波数近傍における励振周波数でブレーキ圧を微小励
振させるための微小励振指令Pv を生成し、制御バルブ
52へ出力する。
【0056】また、タイヤ空気圧診断部24は、演算さ
れたタイヤバネ定数Kを、予めタイヤバネ定数のとり得
る範囲の値に応じて定められた複数のグループのうちの
1つのグループに分類する回路、又はソフトウェア処理
により構成することができる。この具体的な処理とし
て、例えば、演算されたタイヤバネ定数Kが基準値Ks
以上のとき、”タイヤ空気圧正常”のグループに分類
し,基準値Ks より小さいとき”タイヤ空気圧異常”の
グループに分類して、この分類結果を診断結果出力部2
6へ伝達する。
【0057】診断結果出力部26は、伝達された診断結
果を表示する液晶ディスプレイ等の表示手段や、診断結
果を音声合成出力する出力手段として構成することがで
きる。
【0058】さらに、共振ゲイン演算装置10は、車輪
に作用するブレーキトルクTb を検出するブレーキトル
ク検出部14と、車輪速度信号ωを検出する車輪速セン
サ16と、検出されたブレーキトルクTb と検出された
車輪速度信号ωとに基づいてμ勾配α及びタイヤバネ定
数Kを演算するμ勾配・タイヤバネ定数演算部12と、
μ勾配αとタイヤバネ定数Kとからブレーキトルクの微
小励振振動から車輪速度信号までの遅延位相角度θd
演算する位相演算部15と、検出されたブレーキトルク
b と検出された車輪速度信号ωとに基づいて、演算さ
れた位相θd の遅れを考慮して、共振ゲインGd を演算
するゲイン演算部17と、から構成されている。
【0059】ここで、ブレーキトルク検出部14による
ブレーキトルクの検出方法として、例えば、ブレーキト
ルクを直接検出する方法の他、圧力センサ等で検出され
たホイールシリンダ圧から作動遅れを考慮して推定する
方法、ブレーキ圧指令としてのABS操作量信号などか
ら作動遅れを考慮して推定する方法等がある。
【0060】次に、μ勾配・タイヤバネ定数演算部12
の詳細な構成を図2を用いて説明する。
【0061】図2に示すように、μ勾配・タイヤバネ定
数演算部12は、検出されたブレーキトルクTb のアナ
ログ信号を、高周波数成分をカットして所定のサンプル
時間τ毎に離散化するAD変換器27と、離散化された
ブレーキトルクTb の時系列データから共振周波数ω∞
を含む帯域の周波数成分のみを通過させるバンドパスフ
ィルタ29と、検出された車輪速度信号ωのアナログ信
号を、高周波数成分をカットして所定のサンプル時間τ
毎に離散化するAD変換器28と、離散化された車輪速
度の時系列データから共振周波数ω∞を含む帯域の周波
数成分のみを通過させるバンドパスフィルタ30と、を
備えている。
【0062】このバンドパスフィルタ29、30は、そ
の帯域幅が、予想されるタイヤバネ定数Kの変動による
共振周波数の変動幅に収まるように設計されたデジタル
フィルタであり、それらの出力端は、パラメータ演算部
31に接続されている。これらのバンドパスフィルタ2
9、30により、共振周波数を含む帯域幅の周波数成分
のみに着目するため、他の周波数成分の影響を軽減し同
定精度の低下を防止している。
【0063】パラメータ演算部31は、(21)式のφをサ
ンプル時間τ毎に離散化することによって得られるφ
[k]、(22)式のyをサンプル時間τ毎に離散化するこ
とによって得られるy[k]を、バンドパスフィルタ2
9の出力Tb [k](k=1,2,3,... )とバンドパスフ
ィルタ30の出力ω[k](k=1,2,3,... )とに基づ
いて演算する回路として構成されている。
【0064】具体的な演算方法として、いわゆる双一次
z変換によって離散化する場合は、ラプラス演算子sを
【0065】
【数11】 のように変換して(21)式、(22)式に代入すると共に、T
b 、ωを、それぞれ Tb →Tb [k] ω →ω[k] のように各時系列データに変換して得られた式を用い
る。ただし、z-1演算子は、1サンプル時間τの遅延を
意味するため、 z-1b [k] = Tb [k+1] z-1ω[k] = ω[k+1] に置き換える。なお、φの各要素には、sだけでなくs
2 、s3 が含まれているため、2サンプル、3サンプル
遅延した時系列データも用いられる。
【0066】また、パラメータ演算部31の出力端に
は、演算されたφ[k],y[k]の時系列データを、
(23)式に代入することによって得られた各データに対
し、オンラインの最小自乗法を用いることによって、(2
3)式のθを演算するθ推定部32が接続されている。こ
のθ推定部32は、(24)式、(25)式によりL[k],P
[k]を演算し、さらに(26)式の漸化式からθの推定値
を演算する回路として構成されている。このようにタイ
ヤ−路面間の滑り状態を敏感に反映する共振モデルに基
づいてμ勾配αとタイヤバネ定数Kとを推定し、かつ同
定パラメータ数を2個に抑えたため、演算精度を高精度
に維持しつつ演算時間を短縮化することができる。
【0067】また、θ推定部32の出力端には、θの推
定値から、μ勾配α及びタイヤバネ定数Kを演算する出
力部33が接続されている。この出力部33は、(19)式
で表されたθの第1要素(1/K)で1を除算すること
によりタイヤバネ定数Kを演算する図示しない除算器
と、θの第2要素(1/α)で1を除算することにより
μ勾配αを演算する図示しない除算器と、から構成する
ことができる。
【0068】なお、図1、2では省略したが、以上述べ
た共振ゲイン演算装置10は、各車輪毎に設けられてい
る。
【0069】ところで、制御バルブ52によるブレーキ
圧の制御は、該制御バルブ52回りに構成されたブレー
キ部22により実現することができる。ここで、ブレー
キ部22の詳細な構成を図5に示す。
【0070】図5に示すように、ブレーキ部22は、制
御バルブ52以外に、マスタシリンダ48、ホイールシ
リンダ56、リザーバー58及びオイルポンプ60を備
えている。なお、制御バルブ52も各車輪毎に設けられ
ている。このうちブレーキペダル46は、ブレーキペダ
ル46の踏力に応じて増圧するマスタシリンダ48を介
して制御バルブ52の増圧バルブ50へ接続されてい
る。また、制御バルブ52は、減圧バルブ54を介して
低圧源としてのリザーバー58へ接続されている。さら
に、制御バルブ52には、該制御バルブによって供給さ
れたブレーキ圧をブレーキディスクに加えるためのホイ
ールシリンダ56が接続されている。この制御バルブ5
2は、ドライバの踏力によるブレーキ圧Pdを供給する
と共に、入力されたバルブ動作指令(Pr +Pv )に基
づいて増圧バルブ50及び減圧バルブ54の開閉を制御
する。
【0071】なお、この制御バルブ52が増圧バルブ5
0のみを開くように制御されると、ホイールシリンダ5
6の油圧(ホイールシリンダ圧)は、ドライバがブレー
キペダル46を踏み込むことによって得られる圧力に比
例したマスタシリンダ48の油圧(マスタシリンダ圧)
まで上昇する。逆に減圧バルブ54のみを開くように制
御されると、ホイールシリンダ圧は、ほぼ大気圧のリザ
ーバ58の圧力(リザーバ圧)まで減少する。また、両
方のバルブを閉じるように制御されると、ホイールシリ
ンダ圧は保持される。
【0072】ホイールシリンダ56によりブレーキディ
スクに加えられるブレーキ力は、マスタシリンダ48の
高油圧が供給される増圧時間、リザーバー58の低油圧
が供給される減圧時間、及び供給油圧が保持される保持
時間の比率と、圧力センサ等により検出されたマスタシ
リンダ圧及びリザーバー圧とから求められる。
【0073】従って、制御バルブ52の増減圧時間をマ
スタシリンダ圧に応じて制御することにより、所望のブ
レーキ力を実現することができる。そして、ブレーキ圧
の微小励振は、平均ブレーキ力を実現する制御バルブ5
2の増減圧制御と同時に共振周波数に対応した周期で増
圧減圧制御を行うことにより可能となる。
【0074】具体的な制御の内容として、図9に示すよ
うに、微小励振の周期(例えば24[ms])の半周期
T/2毎に増圧と減圧のそれぞれのモードを切り替え、
バルブへの増減圧指令は、モード切り替えの瞬間から増
圧時間ti 、減圧時間tr のそれぞれの時間分だけ増圧
・減圧指令を出力し、残りの時間は、保持指令を出力す
る。平均ブレーキ力は、マスタシリンダ圧に応じた増圧
時間ti と減圧時間t r との比によって定まると共に、
共振周波数に対応した半周期T/2毎の増圧・減圧モー
ドの切り替えによって、平均ブレーキ力の回りに微小振
動が印加される。
【0075】また、位相演算部15は、(16)式を演算す
る演算器として構成することができる。図示しないが、
例えば、μ勾配・タイヤバネ定数演算部12により演算
されたタイヤバネ定数Kを用いて(14)式、(15)式により
パラメータA及びBを演算する演算器と、演算されたμ
勾配αとパラメータBとを乗算する乗算器と、パラメー
タAを乗算結果αBで除算する除算器と、除算結果A/
αを入力値θとしてtan-1θに変換出力するテーブル
と、から構成することができる。
【0076】次に、ゲイン演算部17の詳細な構成を図
10を用いて説明する。なお、このゲイン演算部17
は、所定の振動成分を検出する構成とされており、例え
ば、いわゆるADコンバータなどで検出信号を計算機内
に読み込んだ場合に、計算機の動作サンプリング時間を
1[ms]に取ると、半周期が12サンプル点となる、
前述した41.7[Hz]の振動成分を検出する。
【0077】図10に示すように、車輪速センサ16に
より検出された車輪速度ωが入力される入力端(図示し
ない)には、直流成分とノイズ成分除去のためのBPF
(いわゆるバンドパスフィルタ)130を介して相関係
数検出部134が接続されている。この相関係数検出部
134は、車輪速度ωの共振周波数成分ω∞の振幅ω v
を算出する。
【0078】また、ブレーキトルク検出部14により検
出されたブレーキトルクTb が入力される入力端(図示
しない)には、直流成分とノイズ成分除去のためのBP
F132を介して相関係数検出部136が接続されてい
る。この相関係数検出部136は、ブレーキトルクTb
の共振周波数ω∞成分の振幅Tv を算出する。
【0079】さらに、相関係数検出部134及び136
の出力端には、出力信号ωv を出力信号Tv で除算する
除算器138が接続されている。なお、この除算器13
8の除算結果が、共振ゲインGd =ωv /Pv となる。
【0080】ここで、時系列データの時間長をT1 とす
れば、得られる周波数スペクトルの最小周波数は1/T
1 [Hz]であり、この整数倍の周波数成分を得ることがで
きる。制御系のサンプリング時間を1[ms]として、48
サンプル点のデータを用いると、最小周波数は約20.
8[Hz]となり、第2成分が約41.7[Hz]となる。相関
係数検出部134、136は、41.7[Hz]成分のパワ
ーを算出するため、図11のような構成とすることがで
きる。
【0081】図11に示すように、本相関係数検出部
は、一定の時間長の入力信号xの時系列データ{x1
2 、.....、xn }を1サンプル毎に遅延させて
各々出力する遅延回路150及びこれらのサンプルデー
タx1 、x2 、...、x48に係数cs1 、c
2 、...、cs48を各々乗じる係数乗算器からなる
係数乗算部160を備えている。
【0082】この遅延回路150は、時系列データを各
々1サンプルずつ遅延させる複数の単位遅延素子z-1
直列に接続した構成とされている。この単位遅延素子z
-1の数は、時系列データのサンプル数48に一致するよ
うに設定されている。そして、時系列データが各々の単
位遅延素子z-1に入力する前に係数乗算部160の対応
する各係数乗算器へ各々のサンプルデータを送るための
出力信号線が設けられている。
【0083】係数乗算部160の各係数乗算器の出力端
は、加算器162に接続されており、この加算器は各係
数乗算器の乗算結果をすべて加算して出力する。
【0084】このとき、出力yは、
【0085】
【数12】 となる。ここで、係数csi は、
【0086】
【数13】 である。ただし、θc は、ブレーキトルクの微小励振信
号Pv に対する位相(例えば、図9のバルブ動作指令の
増圧開始時点を基準とした位相)であり、(29)式の場
合、この位相θc はサンプリング周期T1 毎の離散値で
表される。ここで、相関係数検出部136では、微小励
振信号Pv に対する実際のブレーキトルクの遅延が無い
と仮定してθc =0と設定され、相関係数演算部134
では、位相演算部15により演算された位相θd に設定
される(θc =θd )。このように本実施の形態では、
微小励振信号Pv に対するブレーキトルク微小振動の位
相及び車輪速度の微小振動の位相がわかっているため、
(28)式のように周波数41.7[Hz]の単一成分に対する
フーリエ係数のみを求めることで相関を演算でき、これ
により、装置構成を簡単化している。
【0087】次に、第1の実施の形態の作用を説明す
る。
【0088】所定条件の成立により、制御バルブ52へ
の動作指令に微小励振指令Pv が印加され、ブレーキ圧
が共振周波数ω∞近傍で微小励振される。なお、この所
定条件として、通常のABS開始条件、例えば、ドライ
バがブレーキペダルを踏み込み、かつ車輪減速度が一定
値を越えた条件などが挙げられる。
【0089】ブレーキ圧が微小励振されると、車輪に作
用するブレーキトルクが微小振動し、このブレーキトル
クTb の振動成分によって車輪速度ωが振動する。ここ
で、図1の路面μ勾配演算装置10が、図4の共振モデ
ルにより得られたブレーキトルクTb から車輪速度ωま
での(17)式の伝達関係に基づいて、検出されたブレーキ
トルクTb と車輪速度信号ωとから、未知定数であるμ
勾配α及びタイヤバネ定数Kをオンラインの最小自乗法
により同時に推定演算する。
【0090】位相演算部15では、推定されたμ勾配α
とタイヤバネ定数Kとに基づいて、ブレーキトルクの微
小励振振動から車輪速度の微小振動までの位相差θd
演算する。
【0091】そして、ゲイン演算部17では、ブレーキ
トルクの時系列データから、微小励振信号Pv に対し位
相差0の単一正弦波との相関係数を演算してブレーキト
ルクの微小振動振幅Tv を演算すると共に、車輪速度の
時系列データから、微小励振信号Pv に対し位相差θd
の単一正弦波との相関係数を演算して車輪速度の微小振
動振幅ωv を演算し、さらに、これらの比である共振ゲ
インGd を算出する。このとき、ブレーキ圧の励振に相
関のある車輪速度の振動成分のみを抽出しているため、
路面の振動ノイズの影響を受けにくく、車体と車輪と路
面とから構成される振動系の共振特性のみを検出するこ
とができる。
【0092】ABS制御部18では、演算された共振ゲ
インGd が、基準値として設定されたGs に一致又は略
一致するようなABS操作量信号(平均ブレーキ圧指令
r)を演算出力する。制御バルブ52では、該指令P
r に対応する平均ブレーキ圧を実現するようにバルブの
増圧・減圧時間を制御する。
【0093】ここで、基準ゲインGs を、図8において
摩擦係数μが略ピーク値となるA2領域でのμ勾配の値
(0近傍の正値)に設定すると、ピークμに追従した制
御が可能となる。ピークμ付近では、μ勾配の値が0近
傍になることは、路面の状態に依らず不変であるので、
常に安定したアンチロックブレーキ動作が可能となる。
【0094】また、タイヤ空気圧診断部24では、路面
μ勾配演算装置10により演算されたタイヤバネ定数K
に基づいてタイヤ空気圧の診断を行う。そして、診断結
果出力部26が、タイヤ空気圧の診断結果をドライバの
認知可能な形式で出力する。これによって、ドライバ
は、タイヤに空気を入れるべきかを判断でき、安全な走
行が可能となる。なお、タイヤ空気圧診断部24におい
て、高速道路を走行するのに適したタイヤ空気圧である
かも診断できるようにしても良い。
【0095】以上のように本実施の形態では、タイヤバ
ネ定数Kの変動によってブレーキトルクの微小励振振動
から車輪速度微小振動までの位相差θd が−180度か
らずれたとしても(図6、7参照)、該位相をブレーキ
トルクと車輪速度とから推定演算し、推定された位相を
有する単一正弦波と車輪速度信号との相関を演算するの
で、位相θd を−180度に固定して車輪速度の共振周
波数成分を演算していた従来の方法と比べて、検出感度
を良好に保ったまま正確な共振ゲインGd を得ることが
できる。従って、タイヤ空気圧の変動によらず、高精度
のアンチロックブレーキ動作が可能となる。 (第2の実施の形態)第2の実施の形態では、図10の
相関係数検出部134、136を、さらに簡単に構成し
た例を示す。なお、第1の実施の形態と同様の構成につ
いては、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0096】図13に、約41.7[Hz]の周期を持った
(29)式の単一正弦波のグラフを示す。図13に示すよう
に、入力信号xのサンプルidx(xの離散化指標)
は、ブレーキトルクの微小励振振動Pv に同期して、各
サンプル毎に1msec刻みに1から24まで単調に増
加し、24の次に1にリセットされる。また、idxに
対する単一正弦波の振幅CSn の位相θc は、入力信号
がブレーキトルクのサンプル信号の場合は0に設定され
る。そして、入力信号が車輪速度のサンプル信号の場合
は、位相演算部15により演算された位相θd とされ
る。すなわち、振幅CSn の位相をθd だけシフトした
ものが用いられる。
【0097】最初の48サンプルの時点をj時点とする
と、yj は、(28)式により、
【0098】
【数14】 となる。ここで、csj i 、xj i は、j時点での過去
48点のデータに過去の値から1から48まで番号を付
けたものである。ここで、次のサンプル時点j+1での
値yJ+1 は、
【0099】
【数15】 となる。明らかに、 csj+1 i = csj i+1 、xj+1 i = xj i+1 (32) であり、csj i の周期性により結果的に、 yj+1 = yj +csj+1 48 (xj+1 48 −xj 1 ) (33) を得る。
【0100】csj+1 48 はj+1時点でのCSn そのも
のであり、xj+1 48 はj+1時点でのxの最新値、xj
1 はj+1時点では48サンプル前の値であるから、相
関係数検出部を図12のように構成することができる。
【0101】図12に示すように、第2の実施の形態に
係る相関係数検出部は、入力信号xに対して48サンプ
ル前の信号値x-48 を求める遅延素子170と、入力信
号xとx-48 との差分を求める差分手段172と、id
xに対するCSn を演算する演算手段174と、出力y
の1サンプル前の信号値y-1を求める遅延素子178
と、演算手段174と遅延素子178の出力の和を演算
する加算手段176と、から構成されており、(33)式の
結果を演算することができる。また、相関係数検出部1
34の場合、演算手段174は、入力された位相θd
応じてCSn をシフトする機能を有している。
【0102】この構成によると、計算量は、1サンプル
当たり、2つの和算と1つの乗算だけとなり、処理をさ
らに簡単化、高速化できる。
【0103】以上が本発明の各実施の形態であるが、本
発明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲内において任意好適に変更可能
である。
【0104】例えば、図2のθ推定部32では、オンラ
インの最小自乗法を用いたが、他のシステム同定手法で
ある補助変数法などを用いることもできる。また、パラ
メータ演算部31において、φ、yの離散化方法とし
て、折り返し誤差の少ない双一次z変換を用いたが、s
領域におけるφ、y((21)、(22)式)をz領域に変換で
きる手法であれば適用でき、例えば後退差分などの手法
も用いることができる。
【0105】また、ブレーキ圧の微小励振方法として、
制御バルブの増圧・減圧モードの切り替えにより行った
が、本発明はこれに限定されず、例えば微小励振指令P
v に応じた励振ブレーキ圧をブレーキディスクに直接加
える圧電素子を用いることもできる。
【0106】さらに、ブレーキトルクの微小振幅T
v は、圧力センサ等により検出されたマスタシリンダ圧
と、制御バルブの増圧時間ti 及び減圧時間tr (図9
参照)により、求めることもできる。
【0107】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
推定された摩擦係数μのスリップ速度に対する勾配及び
タイヤバネ定数に基づいて、励振されたブレーキトルク
の微小振動から車輪速度信号の微小振動までの位相を演
算し、該位相及び振動系の共振周波数を有する車輪速度
微小振動の振幅値を検出し、該振幅値に基づき共振ゲイ
ンを演算するようにしたので、タイヤバネ定数の変動に
よってブレーキトルクの微小励振振動から車輪速度微小
振動までの位相差が−180度からずれたとしても、位
相変動に対応した共振ゲインを常に高精度に演算するこ
とができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る路面μ勾配演
算装置が適用されたABS装置の構成を示すブロック図
である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る路面μ勾配演
算装置の主要な構成要素であるμ勾配・タイヤバネ定数
演算部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】車両の力学的モデルを示す図である。
【図4】車輪と車体と路面とから構成される振動系と等
価な共振モデルを示す図である。
【図5】ブレーキ部のハードウェア構成を示すブロック
図である。
【図6】タイヤ共振特性のボード線図であって、(a)
は周波数に対するゲインの変化、(b)は周波数に対す
る位相角度θd の変化を示す。
【図7】図6のタイヤのタイヤバネ定数が20%小さく
なったときのタイヤ共振特性のボード線図であって、
(a)は周波数に対するゲインの変化、(b)は周波数
に対する位相角度θd の変化を示す。
【図8】スリップ速度Δωに対する摩擦係数μ及びμ勾
配αの変化特性を示す線図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る制御バルブへ
の動作指令を示す図である。
【図10】図1のゲイン演算部17の詳細な構成を示す
ブロック図である。
【図11】図10の相関係数検出部134、136の第
1の実施の形態に係る詳細な構成を示すブロック図であ
る。
【図12】図10の相関係数検出部134、136の第
2の実施の形態に係る詳細な構成を示すブロック図であ
る。
【図13】約41.7Hzの周期を持った単一正弦波の
グラフである。
【符号の説明】
10 路面μ勾配演算装置 12 μ勾配・タイヤバネ定数演算部 14 ブレーキトルク検出部 16 車輪速センサ 18 ABS制御部 22 ブレーキ部 29 バンドパスフィルタ 30 バンドパスフィルタ 31 パラメータ演算部 32 θ演算部 52 制御バルブ 134 相関係数検出部 136 相関係数検出部 138 除算器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅野 勝宏 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 山口 裕之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車体と車輪と路面とから構成される振動
    系の共振周波数でブレーキトルクを微小励振する励振手
    段と、 ブレーキトルクを検出するブレーキトルク検出手段と、 車輪速度信号を検出する車輪速度検出手段と、 前記振動系の共振モデルに基づいて、検出されたブレー
    キトルクと検出された車輪速度信号とから、前記共振モ
    デルの未知定数である摩擦係数μのスリップ速度に対す
    る勾配及びタイヤバネ定数を推定する推定手段と、 前記推定手段により推定された摩擦係数μのスリップ速
    度に対する勾配及びタイヤバネ定数に基づいて、前記励
    振手段により励振されたブレーキトルクの微小振動から
    車輪速度信号の微小振動までの位相を演算する位相演算
    手段と、 検出された車輪速度から、前記位相演算手段により演算
    された位相及び前記共振周波数を有する車輪速度微小振
    動の振幅値を検出する振幅検出手段と、 前記ブレーキトルクの微小振動の振幅値と、前記振幅検
    出手段により検出された車輪速度微小振動の振幅値との
    比を演算するゲイン演算手段と、 を含む共振ゲイン演算装置
  2. 【請求項2】 前記推定手段は、 前記共振モデルに基づくブレーキトルクから車輪速度ま
    での伝達関係を、未知定数である摩擦係数μのスリップ
    速度に対する勾配及びタイヤバネ定数に関する物理量に
    対して線形の関係が成立するように表現し、 前記線形の関係で表現され、かつ離散化された伝達関係
    に、検出されたブレーキトルクの離散化データと、検出
    された車輪速度信号の離散化データと、を当てはめた各
    データに対し、オンラインのシステム同定手法を適用す
    ることによって、摩擦係数μのスリップ速度に対する勾
    配及びタイヤバネ定数を演算することを特徴とする請求
    項1の共振ゲイン演算装置。
JP11757198A 1998-04-27 1998-04-27 共振ゲイン演算装置 Pending JPH11310120A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102463988A (zh) * 2010-11-08 2012-05-23 申水文 车辆振动主动控制方法

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CN102463988A (zh) * 2010-11-08 2012-05-23 申水文 车辆振动主动控制方法

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