JP3319407B2 - 路面状態推定装置 - Google Patents

路面状態推定装置

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JP3319407B2 JP28976798A JP28976798A JP3319407B2 JP 3319407 B2 JP3319407 B2 JP 3319407B2 JP 28976798 A JP28976798 A JP 28976798A JP 28976798 A JP28976798 A JP 28976798A JP 3319407 B2 JP3319407 B2 JP 3319407B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、路面状態推定装置
に係り、より詳しくは、車両が走行している路面の状態
を演算する路面状態推定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車輪と路面との間の摩擦係数
μがピーク値を超えて車輪がロック状態に移行する直前
に、車輪に作用するブレーキトルクを低下させることに
よって、車輪のロックを防止しピークμ値に追従制御す
るアンチロックブレーキ制御装置が提案されている。
【0003】ところで、車両がある速度で走行している
時、ブレーキをかけていくと車輪と路面との間にスリッ
プが生じるが、車輪と路面との間の摩擦係数μは、下式
で表されるスリップ率Sに対し、図40のように変化す
ることが知られている。
【0004】S = (V−Vw )/V ただし、Vは車体速度(角速度換算)、Vw は車輪速度
であり、よって、(V−Vw )はスリップ速度Δωとな
る。
【0005】図40に示すように、このμ−S特性(以
下、路面μ特性という)では、あるスリップ速度(図4
0のA2領域)で摩擦係数μがピーク値をとるようにな
る。
【0006】そこで、特開平1−249559号公報に
は、車体速度の近似値、及び検出された車輪速度から上
式よりスリップ率を演算し、演算したスリップ率が、予
め設定してある基準スリップ率(ピークμを与えるスリ
ップ率)に略一致するように、ブレーキ力を制御するこ
とにより、ピークμに追従するアンチロックブレーキ制
御装置が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、車両の
走行する路面の種類やその状態(路面状態)によってピ
ークμとなるスリップ率が異なることは、容易に予想さ
れることである。このため、上記公報記載の従来技術の
ように固定された基準スリップ率の追従制御を行った場
合、路面によって制動距離が大きくなり過ぎたり、或い
はピークμを超えてブレーキ制動されることによりタイ
ヤロックが発生するおそれがある。
【0008】この対策として路面状態を推定演算し、演
算された路面状態に応じて基準スリップ率を変化させる
必要があるが、従来では、正確に路面状態を演算する技
術がなかった。
【0009】本発明は、上記事実に鑑みて成されたもの
で、路面状態を正確に推定できる路面状態推定装置を提
供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため請求
項1記載の発明は、車輪と路面との間の車輪共振系への
加振入力に対する応答出力を検出する応答出力検出手段
と、加振入力から応答出力までの前記車輪共振系の伝達
特性を、車輪と路面との間のすべり易さに関する物理量
を車輪状態の未知要素として含む振動モデルで表し、該
振動モデルに基づいて、前記検出手段により検出された
応答出力を略満足させるような前記未知数を推定するこ
とにより、該すべり易さに関する物理量を推定手段と、
前記すべり易さに関する物理量以外の前記車輪の運動特
性を表す少なくとも1つの車輪挙動量と前記すべり易さ
に関する物理量との間の相互関係を複数の路面状態毎に
記憶する記憶手段と、前記すべり易さに関する物理量以
外の少なくとも1つの車輪挙動量を検出する検出手段
と、前記記憶手段に記憶された相互関係に基づいて、複
数の路面状態毎に、前記車輪挙動量の検出値及び前記す
べり易さに関する物理量の推定値の一方を他方に変換す
る変換手段と、前記複数の路面状態毎に変換された変換
値各々と、前記車輪挙動量の検出値及び前記すべり易さ
に関する物理量の推定値のうち前記変換値に対応するも
のと、を比較して、路面状態を推定する路面状態推定手
段と、を有する。
【0011】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発
明において、前記振動モデルは加振入力から応答出力ま
での前記車輪共振系の伝達関数であり、前記推定手段
は、該伝達関数を同定することにより、前記未知要素を
推定する。
【0012】請求項3記載の発明は、請求項2記載の発
明において、前記推定手段は、前記伝達関数を前記未知
数である前記すべり易さに関する物理量を表すためのパ
ラメータの関数で表し、該関数と前記検出手段により検
出された応答出力とに基づいて該パラメータを推定し、
推定したパラメータに基づいて前記未知数を推定する。
【0013】請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求
項3の何れか1項に記載の発明において、前記検出手段
により検出された応答出力に基づいて、前記振動モデル
を修正する修正手段をさらに有することを特徴とする。
【0014】請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求
項4の何れか1項に記載の発明において、前記車輪共振
系へ加振入力を与える加振手段をさらに有することを特
徴とする。
【0015】請求項6記載の発明は、請求項5記載の発
明において、前記加振手段により前記車輪共振系へ与え
られる加振入力を検出する加振入力検出手段をさらに有
することを特徴とする。
【0016】請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求
項6の何れか1項に記載の発明において、前記加振入力
は前記車輪共振系への励振トルク及び路面から前記車輪
共振系への路面励振トルクの少なくとも一方である。
【0017】請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求
項7の何れか1項に記載の発明において、前記記憶手段
は、車輪と路面との間の摩擦係数μのピークμ値を、複
数の路面状態毎に更に記憶し、前記路面状態推定手段に
より演算された路面状態及び前記複数の路面状態毎に備
えたピークμ値に基づいて、前記演算された路面状態に
対応するピークμ値を検索するピークμ値検索手段を更
に備えたことを特徴とする。
【0018】請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求
項8の何れか1項に記載の発明において、前記路面状態
推定手段は、前記車輪挙動量の検出値及び前記すべり易
さに関する物理量の推定値の一方に対する前記変換され
た変換値各々の軌跡と、前記車輪挙動量の検出値に対す
る前記すべり易さに関する物理量の推定値の軌跡と、を
比較し、該比較の結果に基づいて、前記変換された変換
値各々の内の前記車輪挙動量の検出値及び前記すべり易
さに関する物理量の推定値の他方の軌跡に最も近い軌跡
に対応する路面状態を、前記車輪が走行している実際の
路面状態として推定する。
【0019】最初に、路面状態の推定原理について説明
する。なお、上記振動モデルに基づいて、すべり易さに
関する物理量を推定する原理については後述する。
【0020】車輪の運動特性には、図39のように表さ
れたΔv−μ特性を含み、更に、該特性と等価な他のす
べての特性(以下、「路面μ特性」という)を含む。こ
のΔv−μ特性と等価な特性として、例えば、スリップ
速度の代わりにスリップ率で表わした図40の特性や、
摩擦係数μの代わりに、μに関連する制動力(μW:W
は車輪荷重)や制動トルク(μWr:rは車輪の有効半
径)で表した特性、スリップ速度Δv又はスリップ率S
−駆動トルク又は駆動力の特性などがある。なお、この
路面μ特性は、図2(a)に示すように、乾燥路面(Dr
y )、雪路面(Snow)、氷路面(Ice )...などの路
面状態の相違によってそれぞれ異なる特性を示す。
【0021】また、車輪挙動量とは、上記路面μ特性を
表すために必要となる、車輪運動に関連した物理量をい
い、例えば、車体速度、車輪速度、車輪減速度(加速
度)、スリップ速度、制動力、制動トルク、及びブレー
キ圧(ホイールシリンダ圧)などがある。
【0022】これらの車輪挙動量は、路面状態毎に各々
一定の関係となる路面μ特性を表す上で必要十分なもの
が選ばれ、従って、車輪挙動量の間の相互関係は、路面
状態毎の路面μ特性を直接的又は間接的に表すものとな
る。
【0023】例えば、図2(a)の路面μ特性を、図2
(b)に示すように、まず、他の車輪挙動量である制動
力Pc と、スリップ率λとの相互関係で路面状態毎に表
すことができる。そして、図2(a)において、μ値の
みならず、スリップ率に対する路面μの勾配Gd もま
た、路面状態によって固有の値を持っていること、及び
図2(b)の関係を用いて、図2(a)の路面μ特性
を、図2(c)に示すように、制動力と車体速度と路面
μ勾配Gd とにより表される路面状態毎の3次元特性で
必要十分に表すことができる。
【0024】なお、スリップ率λは、車体速度と車輪速
度とから表せるので、車輪挙動量の1つとして制動力を
用いた場合、もう1つの他の車輪挙動量が必要となり、
図2(c)の例では、車体速度を用いている。
【0025】図2(c)では、この3次元特性を、車体
速度Vが20km/h,40km/h,60km/hの各場合につい
ての制動力と路面μ勾配Gd との関係で表しており、こ
の図より、これら3つの車輪挙動量の関係が、路面状態
によって異なっていることがわかる。
【0026】本発明に係る記憶手段は、すべり易さに関
する物理量以外の車輪の運動特性を表す少なくとも1つ
の車輪挙動量と前記すべり易さに関する物理量との間の
相互関係を複数の路面状態毎に記憶する。なお、この相
互関係は、例えば、入出力データ間の変換テーブル等で
表すことができ、図2(c)の特性の場合、各車速及び
各路面状態毎に制動力と路面μ勾配との関係を検出して
得られたデータに基づいて、予め作成しておく。
【0027】なお、車速などの車輪挙動量が一定の場合
に路面状態を演算する場合には、相互関係が示される車
輪挙動量の数を減らすことも可能である。
【0028】ここで、本発明の変換手段を、すべり易さ
に関する物理量及びすべり易さに関する物理量以外の少
なくとも1つの車輪挙動量が入力されるように構成する
ことができる。例えば、図1に示すように、路面μ勾配
演算手段(本発明の応答出力検出手段と推定手段とによ
り構成された)により演算された路面μ勾配Gd (詳細
は後述する)、該路面μ勾配Gd 以外の車速検出手段に
より検出された車体速度V及び制動力検出手段により検
出された制動力Pc が路面状態推定手段に入力されるよ
うに構成する。
【0029】複数の車輪挙動量の検出値が入力される
と、変換手段は、記憶手段に記憶された相互関係に基づ
いて、複数の路面状態毎に、前記車輪挙動量の検出値及
び前記すべり易さに関する物理量の推定値の一方を他方
に変換する。即ち、変換手段は、前記車輪挙動量の検出
値を前記すべり易さに関する物理量の推定値に、又は、
前記すべり易さに関する物理量の推定値を前記車輪挙動
量の検出値に、変換する。その結果、変換の対象となっ
た車輪挙動量以外の車輪挙動量の変換値が路面状態毎に
得られる。例えば、図1の構成において、車体速度と制
動力とを図2(c)の相互関係により変換する場合、車
体速度の検出値V=20km/hと制動力の検出値Pc0
に対応する路面μ勾配の変換値は、乾燥路面、雪路面、
氷路面のそれぞれについて、Gd1、Gd2、Gd3となる。
【0030】そして、路面状態推定手段は、複数の路面
状態毎に変換された変換値各々と、前記車輪挙動量の検
出値及び前記すべり易さに関する物理量の推定値のうち
前記変換値に対応するものと、を比較して、路面状態を
推定する。即ち、路面状態推定手段は、変換手段により
前記車輪挙動量の検出値が複数の路面状態毎に前記すべ
り易さに関する物理量に変換された変換値各々と、すべ
り易さに関する物理量の推定値と、を比較し、又は、変
換手段により前記すべり易さに関する物理量の推定値が
複数の路面状態毎に上記車輪挙動量に変換された変換値
各々と、前記車輪挙動量の検出値と、を比較する。例え
ば、上記例の場合、路面状態毎の路面μ勾配の変換値G
d1、Gd2、Gd3と、路面μ勾配演算手段により演算され
た路面μ勾配の検出値Gd0とを比較し、この比較結果に
より路面状態を演算出力する。
【0031】この比較では、例えば、検出値Gd0と変換
値Gd1、Gd2、Gd3との差をそれぞれ演算し、最も小さ
い差(絶対値)を与えた路面状態を演算する。例えばG
d2とGd0との差が最も小さい場合、路面状態が「雪路面
(Snow)」であると演算する。
【0032】さらに、請求項1の発明は、前記相互関係
が示される複数の車輪挙動量のうちの1つが、車輪と路
面との間のすべり易さに関する物理量であることを1つ
の特徴としている。
【0033】車輪と路面との間のすべり易さに関する物
理量には、スリップ速度に対する摩擦係数μの勾配(路
面μ勾配)がある。路面μ勾配は、既に述べたように、
路面状態によって固有の値を有するので、路面状態を演
算する際に、有効な車輪挙動量となる。
【0034】ここで、車輪と路面との間のすべり易さに
関する物理量には、更に、例えば、スリップ速度(又は
スリップ率)に対する制動(又は駆動)トルク(又は制
動(又は駆動)力)の勾配などがある。即ち、制動トル
ク勾配、制動力勾配、駆動トルク勾配、及び駆動力勾配
などがある。 (本発明のその他の態様)本発明のその他の態様1は、
一例として図3に示すように、車体速度以外の2つの車
輪挙動量の間の相互関係を示す第2テーブルをスリップ
速度毎に備え、かつ前記2つの車輪挙動量のいずれかを
スリップ速度毎の前記第2テーブルによりそれぞれ変換
することにより得られたスリップ速度毎の車輪挙動量の
変換値と、該車輪挙動量と同一量の検出値との比較に基
づいてスリップ速度を演算し、演算されたスリップ速度
と入力された車輪速度の検出値とにより車体速度を演算
する車速演算手段と、をさらに有し、前記テーブルによ
り相互関係が示される上記すべり易さに関する物理量以
外の少なくとも1つの車輪挙動量のうちの1つは車体速
度であると共に、前記路面状態推定手段は、前記車速演
算手段により演算された車体速度を用いて路面状態を演
算することを特徴とする。
【0035】本態様1の車速演算手段は、車体速度以外
の2つの車輪挙動量の間の相互関係を示す第2テーブル
をスリップ速度毎に備えている。この第2テーブルは、
車体速度以外の2つの車輪挙動量を、制動力Pc 及び路
面μ勾配Gd とした場合、以下のような手順によって作
成することができる。
【0036】まず、路面状態及び車体速度(車速)をパ
ラメータとして様々に変えた各々の場合について、制動
力Pc に対するスリップ速度Δvの変化を求めると、図
4のような関係となる。次に、路面状態及び車速をパラ
メータとして様々に変えた各々の場合について、スリッ
プ速度Δvに対する路面μ勾配Gd の変化を求めると、
図5(a)(Dry )、図5(b)(Snow)のような関係
となる。
【0037】そして、図4、図5の関係より、各車速毎
に同一のスリップ速度Δvに対するPc 、Gd を求める
と、各路面状態毎に、図6(a)、(b)のような関係
となる。この図6により示されたスリップ速度毎のPc
とGd との関係が第2テーブルとなる。なお、図6の各
Δvのラインは、車速、路面によらず固定とする。
【0038】さらに、図6(a)、(b)を基に、各車
速(20km/h,40km/h,60km/h)毎に、図7(a)〜(c)
のようなPc とGd との関係が路面状態毎に示される。
この図7の関係は、複数の車輪挙動量を車体速度V、P
c 、Gd とした場合の路面状態毎の前記テーブルに相当
している。
【0039】本態様1では、例えば、制動力Pc の検出
値をスリップ速度毎の第2テーブルによりそれぞれ変換
することにより得られたスリップ速度毎の路面μ勾配G
d の変換値と、路面μ勾配Gd の検出値との比較に基づ
いてスリップ速度を演算する。すなわち、検出されたP
c とGd との関係が、図6のどのΔvのラインに最も近
いかを演算し、最も近かったラインのΔv値をスリップ
速度として求める。
【0040】このようにスリップ速度が演算できたの
で、本態様1の車速演算手段は、演算されたスリップ速
度と入力された車輪速度の検出値とにより車体速度を演
算する。そして、路面状態推定手段は、車速演算手段に
より演算された車体速度を用いて、前記テーブルに基づ
いて路面状態を演算する。すなわち、図7のテーブルの
場合、検出されたPc とGd との関係が、演算された車
体速度に対応するPc とGd との関係のうち、どの路面
状態の関係に最も近いかを演算し、最も近かった関係に
対応する路面状態を求める。
【0041】以上のように本態様1では、車体速度を車
輪挙動量の1つとするテーブルを有するにも係わらず、
車体速度を検出する必要がなく、その代わりに車輪速度
を検出することとなる。すなわち、本態様1の路面状態
推定手段を、例えば、図3に示すように、車輪速検出手
段により検出された車輪速度Vw 、路面μ勾配演算手段
により演算された路面μ勾配Gd 、及び制動力検出手段
により検出された制動力Pc が路面状態推定手段に入力
されるように構成することができる。
【0042】車体速度の正確な推定は、車輪速度と比較
して困難であるので、本態様1のように第2テーブルと
車輪速度とに基づいて車体速度を推定することにより、
車体速度を検出値として入力する図1の場合と比べてよ
り正確な路面状態の演算が可能となる。
【0043】さらに、本態様1では、正確なスリップ速
度も得ることができるので、スリップ率を基準スリップ
率に一致させるように制御するアンチロックブレーキ制
御装置などに適用することにより、より正確な制御が可
能となる。
【0044】以上の各発明では、路面状態を演算してい
たが、前記路面状態推定手段が、予めデータとして備え
られていた路面状態毎のピークμ値(μmax 値)から、
演算された路面状態に対応するピークμ値を路面状態と
共にさらに求めるようにしても良い。
【0045】これにより、路面状態やピークμ値がわか
るので、車輪の持つ限界値が明らかとなり、VSC、A
BS(アンチロックブレーキ制御)、TRC(トラクシ
ョンコントロール)等の車両安定化制御における制御ゲ
インの変更、制御目標値の設定、ドライバへの路面状態
の警報等が可能となる。
【0046】また、路面状態推定手段は、複数の路面状
態毎に変換された変換値各々の各変換値と、前記車輪挙
動量の検出値及び前記すべり易さに関する物理量の推定
値の他方の各値と、を時々刻々と比較して、路面状態を
推定するようにしてもよいが、前記車輪挙動量の検出値
及び前記すべり易さに関する物理量の推定値の一方に対
する前記変換された変換値各々の軌跡と、車輪挙動量の
検出値に対するすべり易さに関する物理量の推定値の軌
跡と、を比較し、該比較の結果に基づいて、変換された
変換値各々の内の車輪挙動量の検出値及びすべり易さに
関する物理量の推定値の他方の軌跡に最も近い軌跡に対
応する路面状態を、車輪が走行している実際の路面状態
として推定するようにしてもよい。
【0047】このように、前記車輪挙動量の検出値及び
前記すべり易さに関する物理量の推定値の一方に対する
前記変換された変換値各々の軌跡と、車輪挙動量の検出
値に対するすべり易さに関する物理量の推定値の軌跡
と、を比較するので、比較結果に基づいて、変換された
変換値各々の内の車輪挙動量の検出値及びすべり易さに
関する物理量の推定値の他方の軌跡に最も近い軌跡に対
応する路面状態をを選択すれば、選択した軌跡に対応す
る路面状態は車輪が走行している実際の路面状態に対応
し、実際の路面状態を精度よく推定することができる。
【0048】次に、上記すべり易さに関する物理量の推
定原理について図8〜図10の図面を参照して説明す
る。ここで、図8は、車輪共振系の等価力学モデル、図
9は、図8の車輪共振系の伝達特性を規定するタイヤと
路面との間の摩擦特性、図10は、図8の車輪共振系の
伝達特性において、加振入力から応答出力までの振動モ
デルの例を図示したものである。
【0049】まず、図8に示すように、車両が車体速度
v(角速度換算でωv )で走行している時の車輪での振
動現象、すなわち少なくとも車輪と路面とによって構成
される車輪共振系の振動現象を、車輪回転軸で等価的に
モデル化した力学モデルを参照して考察する。なお、図
8において示された諸量は、以下の通りである。
【0050】J1 :リム側の慣性モーメント J2 :ベルト側の慣性モーメント K :タイヤのねじればね定数 T1 :制駆動トルク(駆動側が正符号) ω1 :リム側の角速度 ω2 :ベルト側の角速度 θs :リム−ベルト間のねじれ角度 Td :路面外乱 TL :タイヤ−路面間の発生力 図8の車輪共振系の力学モデルにおいて、リムに作用し
た制駆動トルクT1 は、タイヤのねじればね定数Kを介
してベルトに伝達し、該ベルト表面を介して路面に作用
する。このとき、車輪には、ベルトと路面との接地点を
基点として、路面から制駆動トルクT1 の反作用として
の発生力TL が作用する。
【0051】この発生力TL は、タイヤと路面との間の
摩擦力によるものであり、制駆動トルクT1 の方向と反
対方向に作用する。すなわち、発生力TL は、駆動時に
リムに駆動トルクT1 が作用する場合、車輪回転方向
(ω1 の方向)と反対方向に作用し、ブレーキ制動時に
制動トルクT1 が作用する場合、車輪の回転方向に作用
する。また、路面に凹凸がある場合などでは、この凹凸
によって発生した路面外乱ΔTd のトルクもタイヤに作
用する。
【0052】ここで、車両がある速度v(回転系に変換
した値をωv )で走行している時から、ブレーキをかけ
ていくとタイヤと路面との間にスリップが生じるが、こ
のときタイヤと路面との間に発生した発生力TL は、以
下の式で表されるスリップ率S1 に対して、図9の関数
関係のように変化する(スリップ率が正の領域)。
【0053】
【数1】 同様に、車両がある速度vで走行している時から、ドラ
イバがアクセルペダルを踏んで加速していく場合でも、
タイヤと路面との間にスリップが生じるが、このときの
発生力TL は、以下の式で表されるスリップ率S2 に対
して、図9の関数関係のように変化する(スリップ率が
負の領域)。
【0054】
【数2】 ここで、車輪の回転方向を正方向とすると、タイヤ−路
面間の発生力TL を、次式のように表すことができる。
【0055】 制動時: TL =WRμ(S1 ) (2) 駆動時: TL =−WRμ(S2 ) (3) ここに、Wは輪荷重、Rはタイヤの動荷重半径、μはタ
イヤと路面との間の摩擦係数である。なお、μは、スリ
ップ率S1 或いはS2 の関数として表されている。
【0056】図9のS−μ曲線に示すように、スリップ
率0のときは発生力TL は0であるが、ある正のスリッ
プ率において、制動時の発生力TL は正のピーク値をと
り、ある負のスリップ率において、制動時の発生力TL
は負のピーク値をとる関係が成り立っていることがわか
る。また、種々の動作点において、スリップ率に対する
発生力の勾配は、例えばピーク値の時には0近傍の値と
いうように、各々固有の値をとるので、該勾配を用いる
ことによって、タイヤと路面との間のすべり易さを表す
ことができる。
【0057】ここで、図8の力学モデルにおいて、リム
に作用する制駆動トルクを平均的な制駆動トルクT1
回りに振幅ΔT1 で励振すると、この励振トルク成分は
車輪速度ω1 の回りの振動成分Δω1 となって現れる。
また、路面外乱Td に振動成分ΔTd がある場合、車輪
速度の振動成分Δω1 には、該外乱によって発生した振
動成分も加わることになる。
【0058】そこで、図8の車輪共振系の伝達特性を、
図9の種々の動作点における振動モデルで表すと、次式
のようになる。
【0059】 Δω1 = H1 (s)ΔT1 + H2 (s)ΔTd (4) ここに、
【0060】
【数3】 である。なお、sはラプラス演算子である。
【0061】また、D0 は、制動時、駆動時に応じて、
それぞれ次式のD10、D20によって表される。
【0062】
【数4】 ここに、S10、S20は、それぞれ制動時、駆動時におけ
るある動作点でのスリップ率であり、ωv0は、該動作点
での車体速度である。
【0063】(7) 式より、D10は、動作点でのスリップ
率S10におけるS−μ曲線の勾配(∂μ/∂S1 )及び
輪荷重Wに比例し、該動作点での車体速度ωv0に反比例
する。また、S20が0に近いところでは、D20に関して
も同様のことが成立する。
【0064】なお、ここまではμがスリップ率依存性を
持つと仮定したが、スリップ速度依存性を持つ場合は、
1 =ωv −ω2 、S2 =ω2 −ωv と再定義すること
によって、
【0065】
【数5】 と表すことができる。この場合も、D10,20 は、動作点
でのスリップ率S10,20におけるS−μ曲線の勾配及び
輪荷重Wに比例することになる。
【0066】以上述べた振動モデルは、任意の動作点で
の動作を表しているので、その特殊なケースとして、制
動も駆動も行われていない定常走行の場合も記述してい
る。定常走行の場合、動作点は、S−μ曲線の原点とな
り、D0 =D10=D20は、原点でのμ勾配を表している
ことになる。
【0067】また、上記振動モデルは、ラプラス演算子
sに関して3次のシステムで表現されているが、振動と
いう物理現象を記述するには、2次で十分と考えられ
る。そこで、同3次モデルを2次モデルに近似すると次
式を得る。
【0068】
【数6】 このように上記振動モデルは、タイヤと路面との間の摩
擦特性を含む車輪共振系において、該共振系への加振入
力トルク(ΔT1 )及び凹凸のある路面上をタイヤが転
がることによって起こる路面加振(ΔTd )に対する応
答出力としての車輪速振動(Δω1 )の応答を表してお
り、さらに、タイヤと路面との間のすべり易さに関する
物理量D0 を含んでいることがわかる。
【0069】なお、以上の振動モデルにおける加振入力
から応答出力までの伝達の様子を図示すると、図10の
ようになる。
【0070】この振動モデルの妥当性は実験結果によっ
て示すことができる。図11(a)及び図11(b)
は、ある一定の車体速度において、ブレーキ圧力Pm
加振入力を重畳して制動をかけ、その時の加振入力から
車輪速振動までの伝達特性を、ブレーキ圧力Pm の種々
の値(0.98[MPa] 〜4.90[MPa] )について実験して得ら
れた結果である。なお、図11(a)は、ブレーキ圧力
m の加振振幅に対する車輪速振動の比(伝達ゲイン)
の周波数特性(振幅特性)、図11(b)は、ブレーキ
圧力Pm の振動から車輪速振動までの位相特性を示す。
【0071】図11(a)に示すように、共振周波数
(約40Hz)付近の伝達ゲインのピークは、ブレーキ
圧力を増加していくに従い、減少していくことがわか
る。また、図11(b)に示すように、ブレーキ圧力か
ら車輪速振動までの位相は、ブレーキ圧力Pm の大小に
応じて、共振周波数付近を境とした位相特性が大きく異
なっている様子がわかる。
【0072】ここで、ブレーキ圧力Pm の増加により、
スリップ率及び制動力が増加し、S−μ曲線の勾配は減
少することになるので、Pm が増加することとS−μ曲
線の勾配D0 が減少することとはほぼ同じ物理的意味を
持つ。従って、D0 を変化させた場合でも図11(a)
及び図11(b)と同様の結果が得られることは予想で
きる。
【0073】一方、本発明の上記振動モデルに基づい
て、ブレーキ加振入力に対する車輪速振動の応答特性を
計算すると、図12(a)のような振幅特性、及び図1
2(b)のような位相特性が得られる。図12(a)に
示すように、共振周波数(40Hz)において、S−μ
曲線の勾配D0 を減じていくと、図11(a)と同様に
共振ピークが減少する特徴のあることがわかる。また、
図12(b)に示すように、勾配D0 の大小に応じて、
共振周波数付近を境とした位相特性が大きく異なってお
り、図11(b)と類似の特徴を有することがわかる。
これより、本発明の振動モデルは、実際の車輪共振系の
伝達特性を良く表しているといえる。
【0074】また、図13(a)及び図13(b)は、
それぞれアスファルト路(乾燥路)及びダート路を実際
に走行した時に得られた駆動輪(右後輪及び左後輪)の
車輪速振動の周波数スペクトルである。
【0075】アスファルト路(図13(a))では、共
振ピークが明瞭に現れているが、ドリフト走行等によっ
て、タイヤが空転に近い状態で走行しているダート路
(図13(b))では、共振ピークが現れていないこと
がわかる。
【0076】一方、図14(a)及び図14(b)は、
本発明の振動モデルに基づいて、タイヤ路面加振入力に
対する車輪速振動の振幅特性及び位相特性をそれぞれ示
したものである。同図においても、S−μ曲線の勾配D
0 を減じていくと、共振ピークが消滅していくため、実
験結果の特徴と良く一致していることがわかる。
【0077】本発明は、以上述べたように、実際の伝達
特性を良く表している振動モデルに基づいて、タイヤと
路面との間のすべり易さに関する物理量D0 を推定する
ものである。すなわち、本発明の推定手段は、タイヤと
路面との間のすべり易さに関する物理量を車輪状態の未
知要素として含む上記振動モデルに基づいて、前記検出
手段により検出された応答出力を略満足させるような前
記未知要素を推定する。
【0078】なお、以上において、車輪共振系への加振
入力には、強制的に入力する場合、及び、強制的には入
力しないが路面から相対的に入力される場合の少なくと
も一方が含まれる。
【0079】次に、本発明の推定手段による推定原理を
説明する。
【0080】図10に示すように、本発明の振動モデル
を、伝達関数1及び伝達関数2で表す例の場合には、推
定手段による未知要素の推定は、これらの伝達関数を同
定することと等価である。
【0081】ここで、同定する伝達関数として良く用い
られるものに、z変換した離散化モデルがあるが、離散
時間モデルを同定する場合には、 離散時間モデルの同定精度は、サンプリング周期に
依存するため、適切なサンプリング周期を得るために多
くの試行錯誤が伴う。
【0082】 離散時間モデルで同定した後、系を構
成する物理量を演算するために、連続時間モデルに逆変
換しなければならないが、その演算には高等関数を必要
とし、演算時間、演算誤差が増大する。さらに、その逆
変換は一意に定まらない。という問題点があるため、路
面のすべり易さに対応する物理量を求めるためのモデル
としては問題がある。
【0083】このため、本発明では、連続時間モデルを
同定することとする。連続時間モデルの同定では、前記
離散時間モデルの同定に伴う問題点がなく、路面のすべ
り易さに対応する物理量が直接的に演算できるというメ
リットがある。
【0084】例えば、2次の連続時間モデルの伝達関数
を同定する場合、(11)、(12)式を変形して得られる
【0085】
【数7】 を同定すべき伝達関数とすることができる。
【0086】このとき、加振入力として、励振トルクΔ
1 を車輪共振系へ与える場合、励振トルクと比して路
面外乱を微小として、これを無視すると、(4) 式より、 Δω1 =ΔG1 (s)ΔT1 が得られる。
【0087】例えば、最小自乗法を用いる場合、上式
を、未知パラメータ[a1 2 ]若しくは[a1 2
0 1 2 ]について一次関数の形式で変形した式に、
検出されたΔω1 を順次当てはめた各データに対し、最
小自乗法を適用することによって、未知パラメータを推
定することができる。
【0088】ここで、加振入力検出手段によって、加振
入力手段により前記車輪共振系へ与えられる加振入力Δ
1 を検出できる場合は、未知パラメータ[a1 2
0 1 2 ]のすべてを推定することができる。一方、
ΔT1 を検出しない場合は、[a1 2 ]が推定可能と
なる。
【0089】このように加振入力を車輪共振系へ与える
場合には、凹凸の少ない良好な路面を走行中でも、未知
パラメータを高精度で推定することができる。
【0090】一方、励振トルクΔT1 を与えない場合、
ΔT1 =0として(4) 式より得られる Δω2 =ΔG2 (s)ΔTd を、未知パラメータ[a1 2 ]について一次関数の形
式で変形した式に、検出されたΔω1 を順次当てはめた
各データに対し、最小自乗法を適用することによって、
未知パラメータを推定することができる。この場合、励
振トルクΔT1 の印加ができない場合などでも未知パラ
メータを推定できるというメリットがある。また、制動
及び駆動時に係わらず上記推定を行うことができる。
【0091】なお、同定誤差を抑えるために種々の修正
最小自乗法を用いてもよい。修正最小自乗法としては、
従来より良く知られている補助変数法や拡大最小自乗
法、一般化最小自乗法を用いることができる。
【0092】そして、本発明の推定手段は、振動モデル
の伝達関数(11)式と(11-2)式との対応関係若しくは(12)
式と(12-2)式との対応関係から、推定されたパラメータ
1、a2 を用いて路面μ勾配D0 に関係する物理量
を、
【0093】
【数8】 と推定し、タイヤのねじればね定数に関する物理量を、 a2 =K/J1 と推定することができる。また、これより、車輪共振系
の共振周波数を推定することもできる。
【0094】このように路面μ勾配D0 に関係する物理
量が演算できると、該物理量が小さいときはタイヤと路
面との間の摩擦特性は飽和状態と判定でき、路面のすべ
り易さが直ちに判定できる。また、μ勾配D0 は、タイ
ヤのねじればね定数が既知であることを前提にしないで
求められるので、タイヤ交換やタイヤ空気圧の変動によ
って共振周波数が変化したか否かに係わらず、高精度に
タイヤと路面との間のすべり易さに関する物理量を求め
ることができる。さらに、タイヤのねじればね定数に関
する物理量の推定値に基づいてタイヤ空気圧の診断が可
能となる。
【0095】また、検出された応答出力に基づいて振動
モデルを修正する。例えば、同定精度を向上させるため
に、振動モデルの伝達関数の前段に、車輪共振系の共振
周波数に対応する周波数特性を有する前処理手段を設け
た場合、この前処理手段のパラメータを、検出された応
答出力に基づく最小自乗法の演算と共に適応的に変化さ
せる。この場合、前処理手段のパラメータを伝達関数の
パラメータで表すことができる。そして、変化した前処
理手段と、伝達関数とを通過した応答出力により、再び
伝達関数のパラメータが更新される。このようにして、
前処理手段の周波数特性が、タイヤのねじればね定数の
変動に応じた共振周波数に適応した周波数特性に近づい
ていくので、前処理手段のパラメータを固定とする場合
と比べてより高精度の推定が可能となる。
【0096】
【発明の実施の形態】以下、本発明の路面状態演算装置
の各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。な
お、実施の形態では、路面状態演算装置を車両に適用し
た場合を想定する。 (第1の実施の形態)図15には、本発明の第1の実施
の形態に係る路面状態推定装置の構成ブロック図が示さ
れている。なお、第1の実施の形態の構成は、図1の構
成を具体化したものである。
【0097】図15に示すように、第1の実施の形態に
係る路面状態演算装置10は、スリップ率Sに対する路
面μの勾配∂μ/∂S(路面μ勾配Gd )、制動力
c 、及び車体速度Vの3つの車輪挙動量の関係を示す
∂μ/∂Sテーブルを乾燥路面(Dry )、雪路面(Sno
w)、氷路面(Ice )について各々記憶している変換部
12、14、16を備えている。
【0098】この変換部12、14、16は、車体速度
及び制動力を入力したときに、内部に記憶されている図
示のような関数関係のテーブル(図2(c)参照)に基
づいて、この入力値に対応する路面μ勾配Gd1、Gd2
d3(図15では、推定を示す∧付;以下、∧を省略)
をそれぞれ出力する。なお、変換部12、14、16は
本発明の変換手段に対応し、関数関係のテーブル(∂μ
/∂Sテーブル)は本発明の記憶手段に対応する。
【0099】なお、この変換部は、所定範囲の入力値に
対する変換値を予めすべて記憶し、データが入力される
と、該データの値に対応する変換値を出力するROMと
して構成することができる。また、∂μ/∂Sテーブル
のような非線形関数を学習可能なニューラルネットワー
クや、適用フィルタ等で構成することもできる。
【0100】また、路面状態演算装置10は、該装置に
入力された路面μ勾配の検出値Gdから、変換部12、
14、16により変換された路面μ勾配Gd1、Gd2、G
d3をそれぞれ減算することにより、差分Gd −Gd1、G
d −Gd2、Gd −Gd3を各々演算する差分器18、2
0、22を備えている。
【0101】さらに、路面状態演算装置10は、差分器
18、20、22により演算された各差分の絶対値の中
から最小値を選択する最小値選択部24を備えている。
この最小値選択部24は、最小値を与えた路面μ勾配を
出力した変換部を特定し、この変換部に対応する路面状
態の情報を出力する。
【0102】なお、差分器18、20、22と最小値選
択部24とにより本発明の路面状態推定手段を構成す
る。
【0103】また、路面状態演算装置10の外部には、
車体速度を検出する車速検出部26、車輪に作用する制
動力を検出する制動力検出部34、及び図1の路面μ勾
配演算手段としての路面μ勾配演算部36が用意されて
いる。この車速検出部26及び制動力検出部34は、変
換部12、14、16にそれぞれ接続されており、路面
μ勾配演算部36は、差分器18、20、22にそれぞ
れ接続されている。
【0104】このうち車速検出部26は、車輪速度を検
出する車輪速センサ28、ドライバがブレーキペダルを
踏み込んだときを制動開始時点として判定する制動開始
判定部30、判定された制動開始時点で検出された車輪
速度Vw を車体速度Vとして出力する制動開始車速決定
部32から構成されている。すなわち、本実施の形態の
車速検出部26では、ブレーキ開始時の車輪速度は、車
体速度とほぼ等しいと仮定することにより車体速度を推
定する。なお、この車速検出部26を、直接、車体速度
を検出する車速センサとして構成することもできる。
【0105】また、制動力検出部34は、路面から車輪
に対し摩擦力として作用する制動力を、車輪の力学的モ
デルに従って以下のように推定する。
【0106】すなわち、車輪には、車輪に対し車輪の回
転方向と反対方向に作用するブレーキトルクTB と、車
輪に対し摩擦力として車輪の回転方向に作用する制動力
FによるタイヤトルクTf と、が作用する。ブレーキト
ルクTB は、車輪のブレーキディスクに対し車輪の回転
を妨げるように作用するブレーキ力に由来するものであ
り、制動力F及びタイヤトルクTf は、車輪と路面との
間の摩擦係数をμB 、車輪半径をr、車輪荷重をWとし
たとき、次式によって表される。
【0107】F = μB W Tf = F×r = μB Wr 従って、車輪の運動方程式は、
【0108】
【数9】 となる。ただし、Iは車輪の慣性モーメント、ωは車輪
の回転速度(車輪速度)である。
【0109】車輪加速度(dω/dt)を検知し、ブレ
ーキディスクに加えられるホイールシリンダ圧に基づい
てブレーキトルクTB を求めれば、(14)式に基づいて制
動力Fを推定することができる。具体的には、アクセル
開度などから求めた車輪の駆動トルクと、外乱としての
制動力Fが車輪に作用する(14)式と等価な力学モデルを
オブザーバとして構成する。このオブザーバでは、(14)
式を2階積分することにより得られる回転位置と実際に
検出された回転位置との偏差を0に一致させるように制
御周期毎に等価モデルの外乱及び回転速度を修正し、修
正された外乱を制動力として推定する。
【0110】次に、路面μ勾配演算部36を説明する。
路面μ勾配演算部36は、路面外乱ΔTd のみが加振入
力として車輪共振系に入力されている場合にμ勾配を演
算するものであり、第1の態様と第2の態様とがある。
【0111】図16に示すように、路面μ勾配演算部3
6は、各車輪の車輪速度ω1 を検出する車輪速センサ2
8により検出された各車輪の車輪速度ω1 から路面外乱
ΔT d を受けた車輪共振系の応答出力としての各車輪の
車輪速振動Δω1 を検出する前処理フィルタ2と、図1
0の振動モデルに基づいて、検出された車輪速振動Δω
1 を満足するような各車輪の伝達関数を最小自乗法を用
いて同定する伝達関数同定手段3と、同定された伝達関
数に基づいてタイヤと路面との間の摩擦係数μの勾配を
各車輪毎に演算するμ勾配演算手段4と、から構成され
る。
【0112】なお、車輪速検出手段1は、車輪速度に応
じたセンサ出力信号を出力するいわゆる車輪速センサ
と、該センサ出力信号から各車輪の実際の回転速度信号
を演算する演算手段と、から構成することができる。
【0113】前処理フィルタ2は、本車輪共振系の共振
周波数と予想される周波数を中心として一定の帯域の周
波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタや、該共
振周波数成分を含む高帯域の周波数成分のみを通過させ
るハイパスフィルタなどで構成することができる。な
お、第1の態様では、このバンドパスフィルタ或いはハ
イパスフィルタの周波数特性を規定するパラメータを一
定値に固定したものであり、後述する第2の態様では、
このパラメータを伝達関数同定手段3で同定されたパラ
メータに適応させて変化させていくものである。
【0114】なお、この前処理フィルタ2の出力は、直
流成分を除去したものとする。すなわち、車輪速度ω1
の回りの車輪速振動Δω1 のみが抽出される。
【0115】いまここで、前処理フィルタ2の伝達関数
F(s)を、
【0116】
【数10】 とする。ただし、ci はフィルタ伝達関数の係数、sは
ラプラス演算子である。
【0117】次に、伝達関数同定手段3が依拠する演算
式を導出しておく。なお、本実施の形態では、前処理フ
ィルタ2の演算を、伝達関数同定手段3の演算に含めて
実施する。
【0118】まず、第1の実施の形態で同定すべき伝達
関数は、路面外乱ΔTd を加振入力として、このとき前
処理フィルタ2により検出された車輪速振動Δω1 を応
答出力とする2次のモデルとする。すなわち、
【0119】
【数11】 の振動モデルを仮定する。ここに、vは車輪速信号を観
測するときに含まれる観測雑音である。(15)式を変形す
ると、次式を得る。
【0120】
【数12】 まず、(17)式に(15)式の前処理フィルタを掛けて得られ
た式を離散化する。このとき、Δω1 、ΔTd 、vは、
サンプリング周期Ts 毎にサンプリングされた離散化デ
ータΔω1 (k)、ΔTd (k)、v(k)(kはサン
プリング番号:k=1,2,3,.... )として表される。ま
た、ラプラス演算子sは、所定の離散化手法を用いて離
散化することができる。本実施の形態では、1例とし
て、次の双一次変換により離散化するものとする。な
お、dは1サンプル遅延演算子である。
【0121】
【数13 】 また、前処理フィルタの次数mは、2以上が望ましいの
で、本実施の形態では、演算時間も考慮してm=2と
し、これによって次式を得る。
【0122】
【数14 】 また、最小自乗法に基づいて、車輪速振動Δω1 の各デ
ータから伝達関数を同定するために、(18)式を、同定す
べきパラメータに関して一次関数の形式となるように、
次式のように変形する。なお、”T ”を行列の転置とす
る。
【0123】
【数15】 である。上式において、θが同定すべき伝達関数のパラ
メータとなる。
【0124】次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0125】最初に、路面μ勾配演算部36の作用を説
明する。伝達関数同定手段3では、検出された車輪速振
動Δω1 の離散化データを(23)式に順次当てはめた各デ
ータに対し、最小自乗法を適用することによって、未知
パラメータθを推定し、これにより伝達関数を同定す
る。
【0126】具体的には、検出された車輪速振動Δω1
を離散化データΔω(k)(k=1,2,3,...)に変換し、
該データをN点サンプルし、次式の最小自乗法の演算式
を用いて、伝達関数のパラメータθを推定する。
【0127】
【数16】 ここに、記号”^”の冠した量をその推定値と定義する
ことにする。
【0128】また、上記最小自乗法は、次の漸化式によ
ってパラメータθを求める逐次型最小自乗法として演算
してもよい。
【0129】
【数17】 ここに、ρは、いわゆる忘却係数で、通常は0.95〜
0.99の値に設定する。このとき、初期値は、
【0130】
【数18】 とすればよい。
【0131】また、上記最小自乗法の推定誤差を低減す
る方法として、種々の修正最小自乗法を用いてもよい。
本実施の形態では、補助変数を導入した最小自乗法であ
る補助変数法を用いた例を説明する。該方法によれば、
(23)式の関係が得られた段階でm(k)を補助変数とし
て、次式を用いて伝達関数のパラメータを推定する。
【0132】
【数19】 また、逐次演算は、以下のようになる。
【0133】
【数20】 補助変数法の原理は、以下の通りである。(29)式に(23)
式を代入すると、
【0134】
【数21】 となるので、(33)式の右辺第2項が零となるように補助
変数を選べばθの推定値は、θの真値に一致する。そこ
で、本実施の形態では、補助変数として、ζ(k)=
[−ξy1(k)−ξy2(k)]T を式誤差r(k)と相
関を持たないほどに遅らせたものを利用する。すなわ
ち、 m(k)=[−ξy1(k−L)−ξy2(k−L)]T (34) とする。ただし、Lは遅延時間である。
【0135】上記のようにして伝達関数を同定した後、
μ勾配演算手段4において、路面μ勾配D0 に関係する
物理量を、
【0136】
【数22】 と演算する。このように(35)式により路面μ勾配D0
関係する物理量を演算できると、例えば、該物理量が小
さいとき、タイヤと路面との間の摩擦特性が飽和状態で
あると容易に判定することもできる。
【0137】一方、車速検出部26により検出された車
体速度V及び制動力検出部34により検出された制動力
c が、路面状態演算装置10の各変換部12、14、
16に入力されると、各変換部は、それぞれに与えられ
た∂μ/∂Δvテーブルにより、入力された2つの検出
値を変換し、これらの検出値に対応する路面μ勾配
d1、Gd2、Gd3をそれぞれ出力する。
【0138】変換された路面μ勾配Gd1、Gd2、Gd3
共に、路面μ勾配演算部36により上記のように演算さ
れた路面μ勾配Gd が、差分器18、19、20にそれ
ぞれ入力されると、これらの差分器は、差分Gd
d1、Gd −Gd2、Gd −Gd3をそれぞれ演算し、最小
値選択部24に出力する。
【0139】最小値選択部24では、演算された差分の
中から最も絶対値の小さい差分を選択し、選択された最
小差分値を与えた変換部を特定する。そして、この特定
された変換部に対応する路面状態を所定形式の情報コー
ドなどで出力する。この形式により表された情報コード
は、Dry,Snow,Iceのいずれかに対応するもので、路面状
態演算装置10が適用された車両の制御部が認識可能な
形式で表される。例えば、Gd −Gd3が最小値となった
場合、路面状態が”Ice ”の情報コードを出力する。
【0140】車体速度、制動力、及び路面μ勾配の間の
相互関係を示す∂μ/∂Δvテーブルは、路面μ特性を
的確に示すものであるので、本実施の形態のように∂μ
/∂Δvテーブルが示す各車輪挙動量の関係と、実際の
検出値の間の関係とを比較することにより、路面状態を
きわめて正確に求めることができる。また、本実施の形
態では、振動系の共振特性に基づき摩擦状態を敏感に表
す路面μ勾配Gd を用いているので、他の車輪挙動量を
用いた場合と比較して、より正確に路面状態を求めるこ
とが可能となる。
【0141】また、本実施の形態では、振動系の共振特
性に基づき摩擦状態を敏感に表す路面μ勾配を用いてい
るので、他の車輪挙動量を用いた場合と比較して、より
正確に路面状態を求めることが可能となる。
【0142】以上のように本実施の形態では、現在走行
中の路面の路面状態やピークμ値を正確に求めることが
できるので、VSC、ABS、TRC等の車両の安定化
制御やドライバへの警告などに、この演算結果を用いる
ことにより、路面状態に係わらず安全な走行が可能とな
る。
【0143】なお、図15の例では、車体速度、制動
力、及び路面μ勾配を車輪挙動量として用いたが、本発
明は、これに限定されるものではない。例えば、図17
のように構成することも可能である。
【0144】図17では、制動力の代わりにスリップ速
度を車輪挙動量の1つに用いている。このため、図17
の変換部13、15、17では、車体速度とスリップ速
度と路面μ勾配との関係を示す∂μ/∂Sテーブルを各
々備えている。そして、制動力検出部34の代わりに、
車輪速センサ28が検出した車輪速度と制動開始車速決
定部32が決定した車体速度とからスリップ速度を演算
するスリップ速度算出器38を有し、該スリップ速度算
出器38を、変換部13、15、17に各々接続してい
る。
【0145】図17の構成においても、スリップ速度、
車体速度、及び路面μ勾配から路面μ特性を表すことが
できるので、正確に路面状態を演算することができる。
また、制動力検出部34を省略し、その代わりに簡単な
演算器で構成できるスリップ速度算出器を備えるだけで
良いので、装置全体を簡単にすることができる。
【0146】さらに、第1の実施の形態の路面状態演算
装置10には、図18に示すようなピークμ検索部61
を備えることができる。このピークμ検索部61は、路
面状態毎のピークμ値及びピークμを与えるスリップ率
のデータを格納するメモリ64と、該データの路面状態
毎のアドレスを示すアドレステーブル63に基づいてメ
モリ64のデータを検索するデータ検索部62と、から
構成される。
【0147】ピークμ検索部61では、データ検索部6
2が、最小値選択部24により出力された路面状態の情
報コードを解釈し、アドレステーブル63から、該情報
コードに対応するアドレスを読み出す。そして、データ
検索部62は、メモリ64の該当アドレスのピークμ値
及びスリップ率を検索し、出力する。すなわち、出力さ
れたデータは、現在走行中の路面のピークμ値、及び当
該路面でピークμを与えるスリップ率となる。
【0148】一方、本発明の車輪挙動量をアンチロック
ブレーキ制御装置に適用する場合、推定された物理量D
0 を基準値に一致させるようにブレーキ力を制御する。
この物理量D0 は、共振周波数が既知であることを前提
にしないで求められたものであるので、タイヤ交換やタ
イヤ空気圧の低下等によって共振周波数が変化したか否
かに係わらず、高精度のアンチロックブレーキ動作が可
能となる。また、トラクションコントロールへの応用に
おいても同様の効果を奏することができる。 (第2の実施の形態)図19には、図3の構成を具体化
した、本発明の第2の実施の形態に係る路面状態推定装
置の構成ブロック図が示されている。なお、第1の実施
の形態と同様の構成部については、同一の符号を付して
詳細な説明を省略する。
【0149】図19に示すように、第2の実施の形態に
係る路面状態演算装置10bは、車輪速センサ65によ
り検出された車輪速度Vw と制動力検出部34により検
出された制動力Pc とから車体速度Vを演算する車速演
算部70、及びこの車速演算部70により演算された車
体速度Vと検出された制動力Pc と路面μ勾配Gd とか
ら路面状態を演算する路面状態演算部80から構成され
る。
【0150】このうち車速演算部70は、一定のスリッ
プ速度毎(0.1m/s,0.4m/s,0.8m/s,.....)に制動力と路
面μ勾配との関係を示すΔvテーブルをそれぞれ記憶し
ている変換部71、72、73、.....を備えてい
る。
【0151】この変換部71、72、73、...は、
検出された制動力を入力したときに、内部に記憶されて
いる図示のような関数関係のΔvテーブル(図6
(a)、(b)参照)に基づいて、この入力値に対応す
る路面μ勾配Gd1、Gd2、Gd3、.....(図19で
は、推定を示す∧付;以下、∧を省略)をそれぞれ出力
する。
【0152】また、車速演算部70は、該装置に入力さ
れた路面μ勾配の検出値Gd から、変換部71、72、
73、.....により変換された路面μ勾配Gd1、G
d2、Gd3、....をそれぞれ減算することにより、差
分Gd −Gd1、Gd −Gd2、Gd −Gd3、....を各
々演算する差分器74、75、76を備えている。
【0153】さらに、車速演算部70は、差分器74、
75、76、...により演算された各差分の絶対値の
中から最小値を選択する最小値選択部77を備えてい
る。この最小値選択部77は、最小値を与えた路面μ勾
配を出力した変換部を特定し、この変換部に対応するス
リップ速度Δvを出力する。
【0154】また、最小値選択部77には、車速算出器
78が接続されている。この車速算出器78は、最小値
選択部77が出力したスリップ速度Δvに、車輪速セン
サ65が検出した車輪速度Vw を加算することにより車
体速度Vを算出する。
【0155】なお、図示のように、最小値選択部77が
出力したスリップ速度Δv及び車速算出器78が算出し
た車体速度Vを路面演算装置10b外部に出力すること
も可能である。また、最小値選択部77が出力したスリ
ップ速度Δvを車速算出器78が算出した車体速度Vで
除算することによりスリップ率λを出力する除算器81
を備えることも可能である。
【0156】第2の実施の形態に係る路面状態演算部8
0は、車速検出部26ではなく、車速演算部70が演算
した車体速度を用いる以外、図10の路面状態演算装置
10と同様であるので、詳細な説明を省略する。なお、
この路面状態演算部81を、図11の路面状態演算装置
10のように車速とスリップ速度を用いる構成とし、車
速演算部70により演算された車速Vとスリップ速度Δ
vとを路面状態演算部81に入力するように構成しても
良い。
【0157】次に、第2の実施の形態の作用を説明す
る。
【0158】制動力検出部34により検出された制動力
c が、車速演算部70の各変換部71、72、7
3、...に入力されると、各変換部は、それぞれに与
えられたΔvテーブルにより、入力された検出値を変換
し、検出値に対応する路面μ勾配Gd1、Gd2
d3、....をそれぞれ出力する。
【0159】変換された路面μ勾配Gd1、Gd2
d3、...と共に、路面μ勾配演算部36により演算
された路面μ勾配Gd が、差分器74、75、7
6、....にそれぞれ入力されると、これらの差分器
は、差分Gd −Gd1、Gd −Gd2、Gd
d3、....をそれぞれ演算し、最小値選択部77に
出力する。
【0160】最小値選択部77では、演算された差分の
中から最も絶対値の小さい差分を選択し、選択された最
小差分値を与えた変換部を特定する。そして、この特定
された変換部に対応するスリップ速度Δvを出力する。
例えば、Gd −Gd2が最小値となった場合、スリップ速
度を、変換部72に対応する0.4m/sとして出力す
る。
【0161】そして、車速算出器78が、最小値選択部
77が出力したスリップ速度Δvと、車輪速センサ65
が検出した車輪速度Vw とを加算することにより車速V
を演算し、路面状態演算部80に出力する。路面状態演
算部80では、車速Vと制動力が入力されると、第1の
実施の形態と同様の作用により、現在走行中の路面の路
面状態を演算出力する。
【0162】また、最小値選択部77が出力したスリッ
プ速度Δv及び車速算出器78が算出した車速Vは、装
置外部へ出力されると共に、除算器81によってΔv/
Vが演算され、この演算結果がスリップ率Sとして出力
される。
【0163】このように第2の実施の形態では、車体速
度を車輪挙動量の1つとする∂μ/∂Sテーブルを有す
るにも係わらず、車体速度を直接、検出する必要がな
く、その代わりに車輪速度を検出している。車体速度の
正確な推定は、車輪速度と比較して困難であるので、本
実施の形態のように、Δvテーブルと車輪速度とに基づ
いて車体速度を推定することにより、検出された車体速
度を用いる第1の実施の形態と比べてより正確な路面状
態の演算が可能となる。
【0164】特に、図15の車速検出部26の例では、
ブレーキ開始時の車輪速が車速とほぼ等しいという仮定
を用いているため、この仮定が成り立つ範囲でしか正確
に路面状態を演算できないが、本実施の形態では、Δv
テーブルをきめ細かく設定することにより可能な限り正
確な車速を得ることができる。
【0165】さらに、本実施の形態では、車速を正確に
推定することにより、正確なスリップ率を得ているた
め、このスリップ率を用いて種々の応用が可能となる。
例えば、図20に示すように、路面状態演算装置10b
が演算した路面状態を用いてピークμ検索部61により
当該路面におけるピークμ0 、及びピークμ0 を与える
スリップ率S0 を検索する。
【0166】アンチロックブレーキ制御に応用する場
合、路面状態演算装置10bが演算した現在のスリップ
率Sを、検索されたスリップ率S0 に一致するようにブ
レーキ力を制御する。これにより、路面状態が変わって
もそれに応じてスリップ率λ0の演算値も変化されるの
で、路面状態に係わらず常に安定したアンチロックブレ
ーキ制御が可能となる。
【0167】また、図20のシステムに、スリップ率に
対する路面μの関係を示す路面μテーブルを路面状態毎
に備え、かつ入力された路面状態に応じた路面μテーブ
ルを選択し、選択されたテーブルにより、演算されたス
リップ率に対応するμ値を出力する路面μ演算部82A
を用意しても良い。
【0168】この路面μ演算部82Aにより、現在走行
中の路面の路面μ値が得られると、この路面μ値と、当
該路面におけるピークμ0 値とを比較することにより、
現在の摩擦状態が路面μ特性のどの領域にあるかを推定
することができる。
【0169】この摩擦状態を表すパラメータとして、例
えば、μ0 −μを用いることができる。このパラメータ
(μ0 −μ)が負値となったとき、車輪のロックのおそ
れがあるので、ドライバにその旨を伝達する警告を発す
るシステムを構成することにより、安全運転が可能とな
る。なお、このような摩擦状態を表すパラメータとし
て、S0 −Sを用いても良い。
【0170】本実施の形態では、路面状態のみならず、
ピークμ値や現在の摩擦状態がわかるので、車輪の持つ
限界値がより明らかとなり、これらのパラメータを用い
ることにより、車両安定化制御において制御ゲインの変
更、制御目標値の設定を行うことにより、より安定な制
御を実現することができる。 (第3の実施の形態)図21に示すように、本実施の形
態に係る路面状態推定装置は、車輪速度を検出する車輪
速センサ28、車輪に作用する制動力を検出する制動力
検出部34、及び路面μ勾配として後述する路面μ勾配
を演算する路面μ勾配演算部36、及び路面状態及びす
べり速度を演算する演算回路10Aを備えている。
【0171】演算回路10は、予め定められた路面状
態、即ち、Dry、Snow、Iceに対応する路面μ
勾配の基準値を、制動力検出部34で検出された制動力
が所定量変化する毎に作成・記憶する基準値作成記憶回
路12D、12S、12Iと、前記制動力が所定量変化
する毎に路面μ勾配を記憶する路面μ勾配記憶回路12
Jと、を備えている。基準値作成記憶回路12D、12
S、12I及び路面μ勾配記憶回路12Jには、基準値
作成記憶回路12D、12S、12Iに記憶された路面
μ勾配の基準値の時系列データと、実際に検出され、路
面μ勾配記憶回路12Jに記憶された路面μ勾配の基準
値の時系列データと、を照合して、路面状態を演算する
時系列データ軌跡照合部14Aが接続されている。時系
列データ軌跡照合部14の出力側には、スリップ速度選
択部16Aが接続されている。
【0172】基準値作成記憶回路12D、12S、12
Iは各々同一の構成であるので、基準値作成記憶回路1
2Dのみを説明し、他の説明を省略する。基準値作成記
憶回路12Dは、車輪速センサ28に接続された車速演
算部18Aを備えている。車速演算部18には、スリッ
プ速度を演算するスリップ速度演算部20Aが接続され
ている。スリップ速度演算部20Aには、制動力検出部
34が接続されている。スリップ速度演算部20Aは、
路面μ勾配の基準値を作成するμ勾配基準値作成部22
Aに接続されている。μ勾配基準値作成部22Aには、
車速演算部18A及び制動力検出部34が接続されてい
る。μ勾配基準値作成部22Aは、μ勾配基準値作成部
22により作成された路面μ勾配の基準値の時系列デー
タを記憶する基準値時系列データ記憶部24Aが接続さ
れている。基準値時系列データ記憶部24Aは、時系列
データ軌跡照合部14Aに接続されている。
【0173】路面μ勾配記憶回路12Jは、検出された
路面μ勾配の時系列データを記憶する路面μ勾配時系列
データ記憶部25Aを備えている。路面μ勾配時系列デ
ータ記憶部25Aには、制動力検出部34及び路面μ勾
配演算部36が接続されている。路面μ勾配時系列デー
タ記憶部25Aは、時系列データ軌跡照合部14Aに接
続されている。
【0174】スリップ速度選択部16Aには、基準値作
成記憶回路12D、12S、12Iの各スリップ速度演
算部20Aが接続されている。
【0175】制動力検出部34は、路面から車輪に対し
摩擦力として作用する制動力を、車輪の力学的モデルに
従って以下のように推定する。
【0176】すなわち、車輪には、車輪に対し車輪の回
転方向と反対方向に作用するブレーキトルクTB と、車
輪に対し摩擦力として車輪の回転方向に作用する制動力
FによるタイヤトルクTf と、が作用する。ブレーキト
ルクTB は、車輪のブレーキディスクに対し車輪の回転
を妨げるように作用するブレーキ力に由来するものであ
り、制動力F及びタイヤトルクTf は、車輪と路面との
間の摩擦係数をμB 、車輪半径をr、車輪荷重をWとし
たとき、(36)式、(37)式によって表される。 F= μB W・・・(36) Tf = F×r = μB Wr・・・(37) 従って、車輪の運動方程式は、
【0177】
【数23】 となる。ただし、Iは車輪の慣性モーメント、ωは車輪
の回転速度(車輪速度)である。
【0178】車輪加速度(dω/dt)を検知し、ブレ
ーキディスクに加えられるホイールシリンダ圧に基づい
てブレーキトルクTB を求めれば、(38)式に基づいて制
動力Fを推定することができる。具体的には、アクセル
開度などから求めた車輪の駆動トルクと、外乱としての
制動力Fが車輪に作用する(38)式と等価な力学モデルを
オブザーバとして構成する。このオブザーバでは、(38)
式を2階積分することにより得られる回転位置と実際に
検出された回転位置との偏差を0に一致させるように制
御周期毎に等価モデルの外乱及び回転速度を修正し、修
正された外乱を制動力として推定する。
【0179】次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0180】最初に、基準値作成記憶回路12D、12
S、12Iによる路面μ勾配の基準値の作成方法を説明
する。
【0181】路面μ勾配Gd は、スリップ速度Δvに対
する路面と車輪との間の摩擦係数μの勾配であり、制動
力、路面状態及び車速毎に、(39)式により表すこと
もできる。
【0182】
【数24】 よって、路面μ勾配Gd は、制動力Pc、路面状態、車
速V、スリップ速度Δv、及び摩擦係数μにより特定す
ることもできる。
【0183】ところで、スリップ速度Δvと制動力Pと
は、各路面状態に応じて、図22〜図24に示すよう
に、車速に応じて、固有の関係を有することが分かって
いる。
【0184】そこで、基準値作成記憶回路12D、12
S、12Iの各スリップ速度演算部20Aは、車速に応
じて、図7〜図9に示す制動力Pとスリップ速度Δvと
の関係式を記憶している。従って、制動力Pc及び車速
Vが入力されるとスリップ速度演算部20Aは、上記関
係式、制動力Pc及び車速Vに基づいて、制動力Pc及
び車速Vに対応するスリップ速度Δvを演算し、演算に
より求めたスリップ速度Δvを、μ勾配基準値作成部2
2Aに出力する。
【0185】なお、スリップ速度演算部20Aに入力さ
れる車速Vは、車速演算部18Aにより演算したもので
ある。具体的には、次のように求める。車速演算部18
Aには、上記スリップ速度演算部20Aにより演算され
たスリップ速度Δvと、車輪速センサ28からの車輪速
Vωと、が入力される。スリップ速度Δvは、車速Vか
ら車輪速Vωを減算した値(V−Vω)である。よっ
て、車速演算部18は、入力されたスリップ速度Δvと
入力された車輪速Vωとを加算して、車速Vを求め、ス
リップ速度演算部20Aに出力する。
【0186】また、路面μと制動力Pとは、各路面状態
に応じて、図25〜図27に示すように、車速に応じ
て、固有の関係を有することが分かっている。
【0187】そこで、基準値作成記憶回路12D、12
S、12Iの各μ勾配基準値作成部22Aは、車速に応
じて、図25〜図27に示す制動力Pと路面μとの関係
式を記憶している。従って、制動力Pc及び車速Vが入
力されるとμ勾配基準値作成部22は、上記関係式、制
動力Pc及び車速Vに基づいて、制動力Pc及び車速V
に対応する路面μを演算する。
【0188】このように、μ勾配基準値作成部22Aに
は、スリップ速度演算部20Aから、制動力Pc及び車
速Vに対応するスリップ速度Δv(2ポイント、S1
2)が入力され、制動力Pc及び車速Vに対応する路
面μ(2ポイント、μ1 、μ 2 )を演算している。そこ
で、μ勾配基準値作成部22は、これらのスリップ速度
Δvと路面μとを、(39)式に代入することにより、
路面μ勾配Gd の基準値を演算する。そして、車輪速セ
ンサ28、制動力検出部34からは、制動開始時から所
定時間経過まで所定サンプリング時間毎にサンプリング
された車輪速Vω、制動力Pc が入力され、μ勾配基準
値作成部22Aは、制動開始時から所定量制動力が経過
するまで所定量制動力が変化する毎に路面μ勾配Gd
基準値を演算し、各路面μ勾配Gd の基準値の時系列デ
ータを、基準値時系列データ記憶部24Aに出力する。
そして、基準値時系列データ記憶部24Aは、路面μ勾
配Gd の基準値の時系列データを記憶する。
【0189】また、路面μ勾配時系列データ記憶部25
Aは、μ勾配基準値作成部22Aから基準値時系列デー
タ記憶部24への基準値の時系列データの出力タイミン
グに同期して、路面μ勾配の時系列データが記憶され
る。即ち、路面μ勾配時系列データ記憶部25Aへは、
制動開始時から所定時間経過まで所定サンプリング時間
毎の路面μ勾配Gd T(路面μ勾配演算部36により演
算された)、所定サンプリング時間毎にサンプリングさ
れた制動力Pc が入力され、路面μ勾配時系列データ記
憶部25Aは、制動開始時から前出の所定量制動力が経
過するまで所定量制動力が変化する毎に、路面μ勾配G
d Tを記憶する。
【0190】次に、制動開始時に、時系列データ軌跡照
合部14が実行する照合処理ルーチンを図28を参照し
て説明する。
【0191】図28のステップ82で、制動開始時から
制動力が所定量変化した時刻を表す変数kを初期化し、
ステップ84で、変数kを1インクリメントする。
【0192】ステップ86で、変数kにより表される時
刻(k・τ,τ:サンプリング周期)において路面μ勾
配演算部36により演算された路面μ勾配Gd T(k)
(路面μ勾配)を取り込む。
【0193】ステップ88で、路面状態を識別する変数
sを初期化し、ステップ90で、変数sで、変数kを1
インクリメントする。
【0194】ステップ92で、路面状態sに対応する基
準値時系列データ記憶部24Aに記憶された路面μ勾配
d の時系列データの内、時刻kにおける基準値Gd
(k)を取り込む。
【0195】ステップ94で、照合値zs を(40)式
より演算する。 zs =zs +(Gd T(k)−Gd s(k))2 ・・・(40) ステップ96で、変数sが予め定められた路面状態の総
数s0 (本実施の形態では、3)以上か否かを判断す
る。変数s≧総数s0 でない場合には、時刻kにおける
照合値zs を演算していない路面状態があるので、ステ
ップ90に戻って、以上の処理(ステップ90〜ステッ
プ96)を実行する。変数s≧総数s0 の場合には、全
ての路面状態の時刻kにおける照合値zs を演算したの
で、ステップ98で、変数kが、制動開始から所定時間
経過した時刻を表すn以上か否かを判断する。変数k≧
nでない場合には、制動開始から所定時間経過していな
いので、ステップ84に戻って以上の処理(ステップ8
4〜ステップ98)を実行する。変数k≧nの場合に
は、制動開始から所定時間経過したので、ステップ10
0で、照合値zs (z1 〜z3 )の内の最小の照合値z
s に対応する路面状態が、現在走行している路面状態で
あると推定する。
【0196】即ち、zs は(41)式により表される。
【0197】
【数25】 このように、zs を、制動開始から所定時間経過までの
時系列データにより演算しているのは、図29に示すよ
うに、路面μ勾配演算部36により演算された路面μ勾
配Gd T(k)は、現在走行している路面状態の路面μ
勾配Gd s(k)(図29では、Snowの路面状態で
ある)と必ずしも一致するとは限らず、現在走行してい
る路面状態の路面μ勾配Gd sの基準値まわりにふらつ
く。よって、制動開始から所定量制動力が経過するまで
の時系列データを用いて精度よく路面状態を推定するた
めである。
【0198】そして、各路面状態に対応して予め記憶し
ている摩擦係数のピーク値μMAX の内から、推定した路
面状態に対応する摩擦係数のピーク値μMAX を、図示し
ないABS制御部等に出力し、推定した路面状態を表す
データをスリップ速度選択部16Aに出力する。
【0199】時系列データ軌跡照合部14Aからピーク
値μMAX を入力したABS制御部は、入力したピーク値
μMAX を与えるスリップ率を基準スリップ率とし、ピー
クμに追従するようにブレーキ力を制御する。
【0200】時系列データ軌跡照合部14Aから路面状
態を表すデータを入力したスリップ速度選択部16A
は、基準値作成記憶回路12D、12S、12Iの各ス
リップ速度演算部20から出力されたスリップ速度の
内、入力した路面状態を表すデータに基づいて、推定さ
れた路面状態に対応するスリップ速度Δvを出力する。
【0201】以上のように本実施の形態では、現在走行
中の路面の路面状態やピークμ値を正確に求めることが
できるので、VSC、ABS、TRC等の車両の安定化
制御(制御ゲインの変更、制御目標値の設定))やドラ
イバへの路面状態の警告、車体横すべり角、ヨーレート
等の各車両状態の推定することが可能となる。
【0202】以上説明した実施の形態では、図22〜図
24に示す制動力Pとスリップ速度Δvとの関係式、図
25〜図27に示す制動力Pと路面μとの関係式を記憶
しているが、本発明はこれに限定されず、制動力Pc
路面μ勾配とは図30に示す関係を有するので、図30
に示す関係式を、車速Vに対応して記憶し、車速V、制
動力Pc 、及び制動力Pc と路面μ勾配との関係式か
ら、車速V及び制動力P c に対応する路面μ勾配を演算
するようにしてもよい。
【0203】また、前述した実施の形態では、路面μ勾
配Gd T(k)と基準値Gd s(k)との二乗誤差の最
小値により路面状態を推定しているが、本発明はこれに
限定されず、制動開始から所定時間経過までの路面μ勾
配Gd T(k)及び基準値G d s(k)の時系列データ
の相関関係を演算して、路面状態を推定するようにして
もい。
【0204】更に、前述した例では、図22〜図24に
示す制動力Pとスリップ速度Δvとの関係式、図25〜
図27に示す制動力Pと路面μとの関係式、又は、図3
0に示す制動力Pと路面μ勾配Gd との関係式を記憶す
るようにしているが、本発明はこれに限定されず、スリ
ップ速度Δvと、スリップ速度Δv、路面μ、路面μ勾
配Gd との関係の各々も、制動力Pと、スリップ速度Δ
v、路面μ、路面μ勾配Gd との関係の各々と同様な関
係となるので、スリップ速度Δvと、スリップ速度Δ
v、路面μ、路面μ勾配Gd との関係式を記憶し、同様
に処理するようにしてもよい。
【0205】そして、図31〜図33に示すように、本
実施の形態のDry、Snow、Iceの各路面におけ
る路面μ勾配Gd の時系列データGd 1 は、路面μ勾
配G d の基準値の時系列データGdsに精度よく一致し、
より実走行路面の軌跡に近づいており、路面状態の推定
精度が向上する。なお、図31〜図33には、従来方法
により求めた路面μ勾配Gd の時系列データGd 2
示している。時系列データGd 1 は、時系列データG
d 2 より、時系列データGdsに精度よく一致してい
る。よって、時系列データGd 1 は、時系列データG
d 2 より改善されている。
【0206】次に、路面μ勾配演算部36の種々の変形
例を説明する。
【0207】最初に、第1の変形例を図34を用いて説
明する。図34に示すように、第1の変形例では、伝達
関数同定手段3で同定されたパラメータに応じて前処理
フィルタ6の特性を変化させる適応手段5が、さらに設
けられている。
【0208】この第1の変形例では、前処理フィルタ6
の伝達関数は、同定すべき伝達関数の分母多項式と同じ
特性を有することが望ましいが、同定すべき伝達関数は
未知であるため、前処理フィルタ6の伝達関数を、伝達
関数同定手段3で同定された伝達関数のパラメータを用
いて次式で構成する。
【0209】
【数26】 そのときの伝達関数同定部3では、第1の態様の逐次型
最小自乗法と同様に、以下の演算を実行する。
【0210】
【数27】 そして、適応手段5では、推定された伝達関数のパラメ
ータθの各要素a1 ,a2 から前処理フィルタ6の(42)
式の伝達関数の係数を構成する。そして、係数が適応さ
れた前処理フィルタ2により検出された車輪速振動Δω
1 から、伝達関数同定手段3が、再び車輪共振系の伝達
関数のパラメータを推定する。
【0211】第1の変形例では、推定されたパラメータ
に応じて適切に前処理フィルタの特性が変化するため、
前処理フィルタのパラメータを固定とした第1の実施の
形態に比べて、より良好な推定値が得られる、という効
果がある。
【0212】図35には、第2の態様を実施した場合の
推定結果が示されている。同図において、横軸がタイヤ
と路面との間のすべり易さに関する物理量D0 の真値で
あり、縦軸が、第2の態様によるD0 の推定値である。
同図に示すように、本態様によって、タイヤと路面との
間のすべり易さに関する物理量D0 が良好に推定されて
いることがわかる。 (第2の変形例)第2の変形例は、励振トルクΔT1
加振入力として車輪共振系に入力されている場合に車輪
共振系の伝達関数を同定するものである。
【0213】図36には、第2の変形例に係る路面μ勾
配演算部の構成が示されている。なお、図16に示した
第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号
を付して詳細な説明を省略する。
【0214】図36に示すように、本路面状態推定装置
には、加振入力としての励振トルクΔT1 を、平均的な
制駆動トルクT1 の回りに重畳させる加振手段8が、さ
らに設けられている。この加振手段8は、ブレーキ圧力
やエンジン出力を励振させることにより、車輪を、その
中心軸の回りに加振する。例えば、制動トルクを励振す
る場合、ブレーキ圧力の油圧アクチュエータの増減圧バ
ルブの制御指令において、平均的なブレーキ圧力の指令
に所定周波数の増減圧指令を重畳させることによって、
制動トルクを加振することができる。
【0215】次に、伝達関数同定手段3が依拠する演算
式を導出しておく。なお、本実施の形態においても、前
処理フィルタ2の演算を、伝達関数同定手段3の演算に
含めて実施するものとする。
【0216】まず、第2の変形例で同定すべき伝達関数
を、路面トルクΔT1 を加振入力として、このとき前処
理フィルタ2により検出された車輪速振動Δω1 を応答
出力とする2次のモデルとする。すなわち、
【0217】
【数28】 の振動モデルを仮定する。ここに、vは車輪速信号を観
測するときに含まれる観測雑音である。(49)式を変形す
ると、次式を得る。
【0218】
【数29】 まず、(50)式に(15)式の前処理フィルタを掛けて得られ
た式を離散化する。このとき、Δω1 、ΔTd 、vは、
サンプリング周期Ts 毎にサンプリングされた離散化デ
ータΔω1 (k)、ΔTd (k)、v(k)(kはサン
プリング番号:k=1,2,3,.... )として表される。ま
た、ラプラス演算子sは、遅延演算素子dを用いた上述
の双一次変換により離散化することができる。
【0219】また、前処理フィルタの次数mは、2以上
が望ましいので、本実施の形態では、演算時間も考慮し
てm=2とし、これによって次式を得る。
【0220】
【数30】 また、最小自乗法に基づいて、車輪速振動Δω1 の各離
散化データから伝達関数を同定するために、(51)式を、
同定すべきパラメータに関して一次関数の形式となるよ
うに、次式のように変形する。なお、”T ”を行列の転
置とする。
【0221】
【数31】 である。上式において、θが同定すべき伝達関数のパラ
メータとなる。
【0222】次に、第2の変形例の作用を説明する。
【0223】伝達関数同定手段3では、検出された車輪
速振動Δω1 の離散化データを(50)式に順次当てはめた
各データに対し、最小自乗法を適用することによって、
未知パラメータθを推定し、これにより伝達関数を同定
する。
【0224】具体的には、検出された車輪速振動Δω1
を離散化データΔω(k)(k=1,2,3,...)に変換し、
該データをN点サンプルする。そして、上式ζ(k)及
びξ y0(k)を用いて、第1の実施の形態における(25)
式以降と同じ演算によって、伝達関数のパラメータa1
及びa2 の推定値(^付)を演算する。なお、本実施の
形態では、逐次型最小自乗法、補助変数法を用いてもよ
いし、第1の実施の形態の第2態様のように、前処理フ
ィルタ2の係数を、同定された伝達関数のパラメータに
適応させて適切に変化させることもできる。
【0225】ここで、加振手段8による励振トルクΔT
1 の信号波形の例を、図37(a)、図37(b)及び
図37(c)に示す。
【0226】図37(a)の信号は、疑似ランダム信号
であり、例えば、疑似ランダム信号の1つとして良く知
られているM系列信号に基づいて発生させることができ
る。この場合、加振入力は、多くの周波数成分を有する
ことになるため、伝達関数の推定精度が向上するという
メリットがある。
【0227】また、図37(b)の信号は、励振トルク
が0の状態から、ある時刻で急激に立ち上がり、それ以
降は一定の励振トルクとなるステップ的な信号である。
このステップ的な信号を用いた場合、疑似ランダム信号
のように頻繁にトルクを変化させる必要が無いので、振
動、騒音が少なく、アクチュエータの負担が少なくて済
むというメリットがある。
【0228】さらに、図37(c)の信号は、励振トル
クが0の状態から、ある時刻で急激に立ち上がり、一定
時間経過後に再び励振トルクが0の状態に戻るインパル
ス的な信号である。このインパルス的な信号を用いた場
合、トルクにオフセット成分が無く、制動・駆動・定常
走行など種々の走行状態において瞬時に与えることがで
きるので、任意の走行状態で伝達関数を推定することが
できる。 (第3の変形例)次に、第3の変形例を説明する。
【0229】第3の変形例は、励振トルクΔT1 が加振
入力として車輪共振系に入力されている場合において、
検出された加振入力と応答出力とから車輪共振系の伝達
関数を同定するものである。
【0230】図38には、第3の変形例に係る路面μ勾
配演算部の構成が示されている。なお、図36に示した
第2の変形例と同様の構成については、同一の符号を付
して詳細な説明を省略する。
【0231】図38に示すように、本路面状態推定装置
は、加振手段8により車輪に与えられる加振入力として
の励振トルクΔT1 の実際の値を検出する加振入力検出
手段9と、をさらに備えている。そして、前処理フィル
タ2は、検出された加振入力を車輪速度ω1 と共に所定
のフィルタ処理を施し、伝達関数同定手段3は、フィル
タ処理を施された加振入力成分と車輪速振動Δω1 とか
ら伝達関数のパラメータを推定する。
【0232】この加振入力検出手段9による加振入力の
検出方法は、例えば、制動トルクを励振する場合、制動
トルクに対応するブレーキ圧力(ホイールシリンダ圧)
を圧力センサ等で検出し、所定の定数を乗じることによ
り、励振成分を含む制動トルクに変換し、さらにこの制
動トルクから平均的な制動トルクの値を減算することに
よって励振トルク成分のみを加振入力として抽出する。
【0233】次に、伝達関数同定手段3が依拠する演算
式を導出しておく。なお、本実施の形態においても、前
処理フィルタ2の演算を、伝達関数同定手段3の演算に
含めて実施するものとする。
【0234】まず、第3の変形例で同定すべき伝達関数
を、励振トルクΔT1 を加振入力として、このとき前処
理フィルタ2により検出された車輪速振動Δω1 を応答
出力とする2次のモデルとする。すなわち、
【0235】
【数32】 の振動モデルを仮定する。ここに、ΔT1 は、加振入力
検出手段9によって検出された実際の励振トルク、vは
車輪速信号を観測するときに含まれる観測雑音である。
(52)式を変形すると、次式を得る。
【0236】
【数33】 まず、(53)式に(15)式の前処理フィルタを掛けて得られ
た式を離散化する。このとき、Δω1 、ΔTd 、vは、
サンプリング周期Ts 毎にサンプリングされた離散化デ
ータΔω1 (k)、ΔTd (k)、v(k)(kはサン
プリング番号:k=1,2,3,.... )として表される。ま
た、ラプラス演算子sは、遅延演算素子dを用いた上述
の双一次変換により離散化することができる。
【0237】また、前処理フィルタの次数mは、2以上
が望ましいので、本実施の形態では、演算時間も考慮し
てm=2とし、これによって次式を得る。
【0238】
【数34】 また、最小自乗法に基づいて、車輪速振動Δω1 の各離
散化データから伝達関数を同定するために、(45)式を、
同定すべきパラメータに関して一次関数の形式となるよ
うに、次式のように変形する。なお、”T ”を行列の転
置とする。
【0239】
【数35】 である。上式において、θが同定すべき伝達関数のパラ
メータとなるが、本実施の形態ではΔT1 を検出するの
で、上記実施の形態と異なり、係数b0 、b1 、b2
も推定できることがわかる。
【0240】次に、第3の変形例の作用を説明する。
【0241】伝達関数同定手段3では、検出された車輪
速振動Δω1 の離散化データを(65)式に順次当てはめた
各データに対し、最小自乗法を適用することによって、
未知パラメータθを推定し、これにより伝達関数を同定
する。
【0242】具体的には、検出された車輪速振動Δω1
を離散化データΔω(k)(k=1,2,3,...)に変換し、
該データをN点サンプルする。そして、上式ζ(k)及
びξ y0(k)を用いて、第1の実施の形態における(25)
式以降と同じ演算によって、伝達関数のパラメータa1
及びa2 の推定値(^付)を演算する。なお、本実施の
形態では、逐次型最小自乗法、補助変数法を用いてもよ
い。補助変数法を用いる場合には、本実施の形態のよう
に加振入力が検出できる場合は、同定された伝達関数の
パラメータを用いて、
【0243】
【数36】 より、真の出力x(k)の推定値(^付)を逐次的に求
め、この推定値を用いて補助変数を次式のように構成す
ることができる。
【0244】
【数37】 また、ζ(k)=[−ξy1(k)−ξy2(k)ξu0(k)ξ
u1(k)ξu2(k)]T (70)を式誤差r(k)と相関
を持たないほどに遅らせたものを利用する。すなわち、
【0245】
【数38】 とする。ただし、Lは遅延時間である。
【0246】さらに、本態様では、第1の実施の形態の
第2態様のように、前処理フィルタ2の係数を、同定さ
れた伝達関数のパラメータに適応させて適切に変化させ
ることもできる。
【0247】また、加振入力の波形を、図37(a)、
図37(b)及び図37(c)のようにしてもよいが、
本態様において、タイヤが路面にグリップしている時の
共振周波数(以下、「タイヤ共振周波数」という)が明
らかな場合は、該共振周波数で加振することもできる。
発明者らの実験的研究により、(11)式で表現される振動
モデルは、
【0248】
【数39】 となることがわかっているので、(11)、(72)式に基づい
て、タイヤ共振周波数で加振したときの加振入力から応
答出力までの伝達特性を求めると、
【0249】
【数40】 という0次の伝達関数になる。そこで、同定すべき伝達
関数をΔω1 =Gd ΔT1
(74)とおき、伝達関数同定手段3において、次式のよう
に最小自乗法を用いて伝達関数を同定する。
【0250】
【数41】 である。
【0251】また、上記最小自乗法は、次式のように逐
次型最小自乗法として演算することもできる。
【0252】
【数42】 ここに、ρは、いわゆる忘却係数で、通常は0.95〜
0.99の値に設定する。このとき、初期値は、
【0253】
【数43】 とすればよい。さらに、上記最小自乗法に、補助変数法
などの修正最小自乗法を適用することによって、さらに
正確な推定値が得られる。
【0254】そして、同定された伝達関数のパラメータ
d の推定値は、(66)式と(67)式の対応関係より、
【0255】
【数44】 であるので、μ勾配演算手段4は、このGd の推定値を
用いて(75)式より路面のすべり易さD0 に関する物理量
を演算する。
【0256】この場合、加振入力の周波数は、本発明の
第2の実施の形態や、第3の実施の形態に係る第2態様
などによって演算されたタイヤのねじればね定数から求
めた共振周波数を用いることができる。このようにタイ
ヤ共振周波数のみで加振する場合は、加振入力のパワー
を該周波数成分に集中して与えることができるので、加
振入力検出手段9及び応答出力検出手段1からの出力の
SN比が向上し、演算精度が向上するというメリットが
ある。
【0257】以上述べた本発明の路面μ勾配演算部は、
いずれも連続時間モデルの伝達関数を同定することと
し、該伝達関数のパラメータを直接推定するようにした
ので、離散時間モデルの同定に伴う上記問題点を回避で
きる。
【0258】また、種々の走行状態で成立する振動モデ
ルに含まれる車輪状態を同定するので、ブレーキ時に限
定されることなく、制動・駆動・定常走行など種々の走
行状態での車輪状態を推定することができる。
【0259】以上が本発明の実施の形態であるが、本発
明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明の
要旨を逸脱しない範囲内において任意好適に変更可能で
ある。
【0260】例えば、上記第1の実施の形態及び第1〜
第3の変形例に係る路面μ勾配演算部では、車輪共振系
を、(11)式及び(12)式で表される2次の振動モデルとし
て説明したが、(5) 式及び(6) 式で表される3 次の振動
モデルに基づいて、車輪の状態推定を行ってもよいこと
は明らかである。
【0261】以上が本発明の各実施の形態であるが、本
発明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲内において任意好適に変更可能
である。
【0262】例えば、実施の形態では、路面状態を、乾
燥路面、雪路面、氷路面の3種類に分類したが、他の種
類の路面、例えば、じゃり道、砂路面、雨路面等のよう
な路面を演算したり、3種類より多い路面状態を、もっ
ときめ細かく演算することもできる。
【0263】また、図15、図17では、車体速度と制
動力を各テーブルにより路面μ勾配に変換し、この路面
μ勾配の変換値と検出値とを比較したが、路面μ勾配と
車体速度、或いは路面μ勾配と制動力を各テーブルによ
り制動力或いは車体速度に変換し、この変換値と、同じ
車輪挙動量の検出値とを比較することにより路面状態を
演算することも可能である。また、図19のΔvテーブ
ルについても同様である。
【0264】また、実施の形態では、上記すべり易さに
関する物理量として路面μ勾配を用いたが、本発明はこ
れに限定されず、スリップ速度に対する制動トルク又は
制動力の勾配などを用いても良い。
【0265】なお、上記においては、制動トルク又は制
動力に代えて駆動トルク又は駆動力を適用してもよい。
【0266】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、複
数の路面状態毎に、前記車輪挙動量の検出値及び前記す
べり易さに関する物理量の推定値の一方を他方に変換
し、複数の路面状態毎に変換された変換値各々と、車輪
挙動量の検出値及び前記すべり易さに関する物理量の推
定値のうち変換値に対応するものと、を比較して、路面
状態を推定するので、正確に路面状態を推定することが
できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の路面状態推定装置の概略構成を示すブ
ロック図である。
【図2】路面μ特性を表す車輪挙動量の相互関係を示す
グラフであって、(a)はスリップ率と路面μとの関
係、(b)はスリップ率と制動力との関係、(c)は各
車速毎の制動力と路面μ勾配Gd との関係を示す。
【図3】本発明の路面状態演算装置の概略構成(第2の
実施の形態に対応)を示すブロック図である。
【図4】路面状態及び車速毎の制動力Pc とスリップ速
度Δvとの関係を示すグラフである。
【図5】路面状態及び車速毎のスリップ速度Δvと路面
μ勾配Gd との関係を示すグラフであって、(a)は乾
燥路面、(b)は雪路面についてのグラフである。
【図6】スリップ速度Δvをパラメータとした場合の制
動力Pc と路面μ勾配Gd との関係を各車速毎に示した
グラフであって、(a)は乾燥路面、(b)は雪路面に
ついてのグラフである。
【図7】図6に基づいて、車速及び路面状態毎に制動力
c と路面μ勾配Gd との関係を求めたグラフであっ
て、(a)は車速V=20km/h、(b)は車速V=
40km/h、(c)は車速V=60km/hの場合に
ついてのグラフである。
【図8】本発明に係る車輪共振系と等価な力学モデルを
示す図である。
【図9】本発明に係る車輪共振系におけるタイヤ−路面
間の摩擦特性を示す図である。
【図10】本発明に係る振動モデルの概念図である。
【図11】実際にブレーキ圧力Pm を種々に変化させた
ときの車輪共振系における周波数特性の実験結果であっ
て、(a)は振幅特性、(b)は位相特性を示す。
【図12】本発明に係る振動モデルにおいて、タイヤと
路面との間のすべり易さに関する物理量D0 を種々に変
化させたときに各々計算された該振動モデルの伝達特性
を示す図であって、(a)は振幅特性、(b)は位相特
性を示す。
【図13】駆動輪で実際に検出された車輪速信号の周波
数解析結果であって、(a)はアスファルト路、(b)
はダート路に関する。
【図14】本発明に係る振動モデルにおいて、タイヤと
路面との間のすべり易さに関する物理量D0 を種々に変
化させたときに各々計算された該振動モデルの伝達特性
を示す図であって、(a)は振幅特性、(b)は位相特
性を示す。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る路面状態演
算装置の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る路面μ勾配
推定部の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係る路面状態演
算装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の実施の形態に係るピークμ検索部の
構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態に係る路面状態演
算装置の構成を示すブロック図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態で、演算された路
面状態及びスリップ率から摩擦状態を示すパラメータを
求める場合のシステム構成例を示す図である。
【図21】本実施の形態に係る路面状態推定装置のブロ
ック図である。
【図22】Dry路面状態における所定速度のときの制
動力とすべり速度との関係を示す線図である。
【図23】Snow路面状態における所定速度のときの
制動力とすべり速度との関係を示す線図である。
【図24】Ice路面状態における所定速度のときの制
動力とすべり速度との関係を示す線図である。
【図25】Dry路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μとの関係を示す線図である。
【図26】Snow路面状態における所定速度のときの
制動力と路面μとの関係を示す線図である。
【図27】Ice路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μとの関係を示す線図である。
【図28】時系列データ軌跡照合部が、制動開始時に実
行する照合処理ルーチンを示したフローチャートであ
る。
【図29】時系列データ軌跡照合部の照合処理(軌跡)
の様子を示した図である。
【図30】制動力と路面μ勾配との関係を示す線図であ
る。
【図31】Dry路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μ勾配との関係を示す線図である。
【図32】Snow路面状態における所定速度のときの
制動力と路面μ勾配との関係を示す線図である。
【図33】Ice路面状態における所定速度のときの制
動力と路面μ勾配との関係を示す線図である。
【図34】路面μ勾配推定部の第1の変形例の構成を示
すブロック図である。
【図35】路面μ勾配推定部の第1の変形例により推定
されたタイヤと路面との間のすべり易さに関する物理量
0 の推定結果である。
【図36】路面μ勾配推定部の第2の変形例の構成を示
すブロック図である。
【図37】路面μ勾配推定部の第2の変形例に係る加振
入力手段の加振入力波形を示す図であって、(a)は疑
似ランダム波形、(b)はステップ的波形、(c)はイ
ンパルス的波形を示す。
【図38】路面μ勾配推定部の第3の変形例の構成を示
すブロック図である。
【図39】スリップ速度に対する摩擦係数μの変化特性
を示すと共に、路面μ勾配が制動トルク勾配と等価であ
ることを説明するため、微小振動の中心の回りのμの変
化が直線で近似できることを示す図である。
【図40】タイヤと路面との間の摩擦係数μのスリップ
率Sに対する特性を示す線図である。
【符号の説明】
10 路面状態演算装置 10b 路面状態演算装置 10c 路面状態演算装置 36 路面μ勾配演算部 61 ピークμ検索部 70 車速演算部 84 最大制動力選択部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 裕之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 菅井 賢 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1株式会社豊田中央研究所内 (56)参考文献 特開 平8−334454(JP,A) 特開 平9−52572(JP,A) 特開 平5−79934(JP,A) 特表 平10−509513(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/58

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪と路面との間の車輪共振系への加振
    入力に対する応答出力を検出する応答出力検出手段と、 加振入力から応答出力までの前記車輪共振系の伝達特性
    を、車輪と路面との間のすべり易さに関する物理量を車
    輪状態の未知要素として含む振動モデルで表し、該振動
    モデルに基づいて、前記検出手段により検出された応答
    出力を略満足させるような前記未知数を推定することに
    より、該すべり易さに関する物理量を推定手段と、 前記すべり易さに関する物理量以外の前記車輪の運動特
    性を表す少なくとも1つの車輪挙動量と前記すべり易さ
    に関する物理量との間の相互関係を複数の路面状態毎に
    記憶する記憶手段と、 前記すべり易さに関する物理量以外の少なくとも1つの
    車輪挙動量を検出する検出手段と、 前記記憶手段に記憶された相互関係に基づいて、複数の
    路面状態毎に、前記車輪挙動量の検出値及び前記すべり
    易さに関する物理量の推定値の一方を他方に変換する変
    換手段と、 前記複数の路面状態毎に変換された変換値各々と、前記
    車輪挙動量の検出値及び前記すべり易さに関する物理量
    の推定値のうち前記変換値に対応するものと、を比較し
    て、路面状態を推定する路面状態推定手段と、 を有する路面状態推定装置。
  2. 【請求項2】 前記振動モデルは加振入力から応答出力
    までの前記車輪共振系の伝達関数であり、前記推定手段
    は、該伝達関数を同定することにより、前記未知要素を
    推定する請求項1の路面状態推定装置。
  3. 【請求項3】 前記推定手段は、前記伝達関数を前記未
    知数である前記すべり易さに関する物理量を表すための
    パラメータの関数で表し、該関数と前記検出手段により
    検出された応答出力とに基づいて該パラメータを推定
    し、推定したパラメータに基づいて前記未知数を推定す
    る請求項2の路面状態推定装置。
  4. 【請求項4】 前記検出手段により検出された応答出力
    に基づいて、前記振動モデルを修正する修正手段をさら
    に有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れ
    か1項に記載の路面状態推定装置。
  5. 【請求項5】 前記車輪共振系へ加振入力を与える加振
    手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求
    項4の何れか1項に記載の路面状態推定装置。
  6. 【請求項6】 前記加振手段により前記車輪共振系へ与
    えられる加振入力を検出する加振入力検出手段をさらに
    有することを特徴とする請求項5の路面状態推定装置。
  7. 【請求項7】 前記加振入力は前記車輪共振系への励振
    トルク及び路面から前記車輪共振系への路面励振トルク
    の少なくとも一方である請求項1乃至請求項6の何れか
    1項に記載の路面状態推定装置。
  8. 【請求項8】 前記記憶手段は、車輪と路面との間の摩
    擦係数μのピークμ値を、複数の路面状態毎に更に記憶
    し、 前記路面状態推定手段により演算された路面状態及び前
    記複数の路面状態毎に備えたピークμ値に基づいて、前
    記演算された路面状態に対応するピークμ値を検索する
    ピークμ値検索手段を更に備えたことを特徴とする請求
    項1乃至請求項7の何れか1項に記載の路面状態推定装
    置。
  9. 【請求項9】 前記路面状態推定手段は、前記車輪挙動
    量の検出値及び前記すべり易さに関する物理量の推定値
    の一方に対する前記変換された変換値各々の軌跡と、前
    記車輪挙動量の検出値に対する前記すべり易さに関する
    物理量の推定値の軌跡と、を比較し、該比較の結果に基
    づいて、前記変換された変換値各々の内の前記車輪挙動
    量の検出値及び前記すべり易さに関する物理量の推定値
    の他方の軌跡に最も近い軌跡に対応する路面状態を、前
    記車輪が走行している実際の路面状態として推定する請
    求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の路面状態推定
    装置。
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