JPH11131591A - 鉄骨構造物用ジョイント及びこれを用いた鉄骨構造物の接合構造 - Google Patents

鉄骨構造物用ジョイント及びこれを用いた鉄骨構造物の接合構造

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JPH11131591A
JPH11131591A JP29444297A JP29444297A JPH11131591A JP H11131591 A JPH11131591 A JP H11131591A JP 29444297 A JP29444297 A JP 29444297A JP 29444297 A JP29444297 A JP 29444297A JP H11131591 A JPH11131591 A JP H11131591A
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steel
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Masamitsu Tanaka
正光 田中
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Tanaka Manufacturing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的簡単な構造で地震時等破壊荷重が作用
した場合においても突然の破断が発生することのない鉄
骨構造物の接合構造を提供する。 【解決手段】 鉄骨構造物用ジョイント20の補強部材
としての鉄筋25を鋼管からなる上部柱12及び下部柱
10の内部空間に突出するように配設し、さらに上部柱
12と下部柱10の内部空間及び仕口コア21の内部空
間にコンクリート29を充填して、上部柱12、下部柱
10及びジョイント20を一体化する。これによって、
縦方向が補強部材で補強された補強コンクリート柱によ
って連結されるようになり、簡単な構造で、特に水平方
向の横揺れに対して溶接のように突然破断することのな
い接続構造が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般に仕口(しぐ
ち)と呼ばれている鉄骨構造物用のジョイント、及びこ
のジョイントを用いた鉄骨構造物の接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】大型建築物の構造として、従来より、鉄
骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄
筋コンクリート造(SRC造)等が知られており、構造
物の用途や規模などによって使い分けられている。この
中で、鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造は柱や梁の大部
分を工場製作することができ、現場での作業が少ないた
め短期間での構築が可能であり、近年多くの現場で採用
されるようになった。
【0003】上記した鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造
において特に技術を要するのは、柱と梁との接合部であ
り、一般に仕口と呼ばれている鉄骨構造物用ジョイント
を用いてその接合が行われている。柱にコラムを用い、
梁部材にH形鋼(ビルトアップH形鋼を含む)を用い
た、いわゆる柱梁接合仕口の形式として、一般に、通し
ダイアフラム方式、内ダイアフラム、外ダイアフラムの
3形式が知られている。
【0004】通しダイアフラム方式は、コラムを梁部材
の上下フランジ位置で切断し、この部分にコラム外径よ
りも40〜50mm大きいダイアフラムを挿入配置した
もので、梁部材のフランジはこのダイアフラムに溶接
し、また梁部材のウエブはコラムに直接溶接して一体化
する構造である。この方式は、ALC等の外壁との納ま
りもよく採用例が多いが、一方、加工上の問題として、
コラムを何箇所も切断し、再び1本の柱にする必要があ
るため、柱の芯出しが難しく、加工工数が増し、溶接量
も他の方式に比べ多くなるなどの問題を有する。
【0005】内ダイアフラム方式は、梁部材せいの中央
付近で一度コラムを切断し、コラムの内側に、梁の上下
フランジの位置でダイアフラムを溶接し、再びコラムを
一体化して、これを梁部材に溶接する方式である。これ
は上階と下階の柱径が異なる場合は採用できず、また、
内ダイアフラムの取付け深さがコラム径を超えると溶接
が困難になるため、梁部材のせいも必然的に制約を受け
るなどの問題を有する。
【0006】外ダイアフラム方式は、柱貫通方式ともよ
ばれる方式で、全くコラムを切断することなく、梁部材
のフランジの幅を広げたり、梁部材のフランジ位置のコ
ラム外面にダイアフラムを取り付けるようにしたもの
で、コラム内側の補強が困難で、また、他の方式に比べ
応力の流れは複雑である。
【0007】近年、阪神大震災における壊滅的な構造物
の破壊を契機として、鉄骨構造物における破壊の状況に
ついて調査研究が行われた。その結果、特に上記した通
しダイアフラム方式の仕口構造においては、梁部材と仕
口、また柱と仕口の溶接部からの破断が顕著に認められ
た。
【0008】上記したように、従来の通しダイアフラム
方式では、梁部材のフランジはダイアフラムに溶接さ
れ、梁部材のウエブはコラムにそれぞれ溶接されてお
り、一部、主として剪断力に対抗するウエブ部分はボル
トによる結合が試みられているものの、曲げ応力に対抗
する上下フランジの接合はすべて溶接によって行われ、
また、仕口の上下ダイアフラムと柱も同様に溶接によっ
て接合されているのが実状である。
【0009】以下、図9、図10に基づいて従来の通し
ダイアフラム構造について具体的に説明する。図9は従
来の通しダイアフラム方式による接合構造の一例を示す
側面図、図10は図9の平面図である。
【0010】同図を参照して、31は角柱(コラム)、
32は下部ダイアフラムで、角柱31の上面全体が溶接
により接合されている。34は角柱の溶接の開先部を示
す。35は角柱31と同一の外形寸法よりなる角柱コア
部、36は角柱コア部35と下部ダイアフラム32とを
溶接する開先部、37は溶接部である。38は上部ダイ
アフラム、39は角柱コア部35と上部ダイアフラム3
8を溶接するための角柱コア部35の開先部、40はそ
の溶接部である。また、41は上部角柱、42は上部角
柱41に作られた開先部、43は上部ダイアフラム38
の上面と上部角柱41との四囲を溶接する溶接部をそれ
ぞれ示す。
【0011】ここで、下部ダイアフラム32の下面部す
なわち下部の角柱31との溶接部33から角柱コア部3
5を含む上部ダイアフラム38の上面の溶接部43まで
の高さは、H形鋼よりなる仕口部44の梁せいと同一の
寸法である。45は仕口部44の下部の開先部46と下
部ダイアフラム32との溶接部、47は仕口44の上部
開先部、48は上部ダイアフラム38との溶接部を示
す。
【0012】49は角柱コア部35と仕口部44との溶
接部で、角柱コア部35の端面、すなわち角柱コア部3
5と仕口部44との溶接部49から仕口部先端部50ま
での寸法は一般に80cm〜1m前後とされている。
【0013】角柱31と下部ダイアフラム32、角柱コ
ア部35、上部ダイアフラム38、仕口部44は工場内
で溶接され、それ以降は現場での組立作業によって行わ
れる。すなわち、H形鋼よりなる梁51とは、上部添板
52、下部添板53、側面添板54を使用し、これら添
板52,53,54を上下、左右各2枚づつH形鋼のフ
ランジ部分及ぶウエブ部をサンドイッチ状として、複数
のボルト、ナット及び座金によって接合されている。
【0014】また角柱31及び角柱コア部35の上面に
位置する下部通しダイアフラム32及び上部ダイアフラ
ム38はそれぞれ同一寸法であり、同一方向に角柱3
1,41及び角柱コア部35の四囲の溶接部33,3
7,40,43で溶接されており、また、仕口部44
は、上部ダイアフラム38との溶接部48、下部ダイア
フラム32との溶接部45及び角柱コア35との溶接部
部49で溶接されている。
【0015】鋼材の一接合手段としての溶接は、その技
術の進歩に伴い強度的にもかなりの信頼性を得ているも
のの、依然として職人芸的な要素も強く残っており、ま
た機械化されたものにおいても溶接時に発生する熱によ
り母材自体が弱体化する危険性が残されている。さらに
は、無垢の鋼板と比較した場合、溶接部では依然として
脆性破壊の危険性が高く残されており、このことが地震
発生時における壊滅的な破壊の一因になっていると考え
らられる。
【0016】すなわち、連続した無垢材料(溶接してい
ないとの意味)の場合、例えば、引張り力が作用すると
まず材料自体の大きな伸びが発生し、最終的に延性破断
に至りその破壊のメカニズムが予想できるのに対し、溶
接による接合部があると、突然引張り破断が発生し破壊
メカニズムの予想は困難である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、地震
時における壊滅的な破壊の一因は、通しダイアフラム方
式構造物の場合、ダイアフラムと梁フランジとの接合に
用いられた溶接またはダイアフラムと柱との溶接が完全
に破断し、これによって梁部材や柱が落下したことにあ
ると報告されている。したがって、壊滅的な破壊を防ぎ
地震発生時においても人的被害を防ぐためには、構造材
のある程度の変形を許容した上で、完全な破断による梁
部材及び柱の落下を防ぐことがなによりも重要であると
言える。
【0018】地震時における揺れは大きくわけて、垂直
方向の縦揺れと水平方向の横揺れがあり、仕口と柱の溶
接部の破断は、主として水平方向の横揺れが、また仕口
と梁の溶接部の破断は主として垂直方向の縦揺れが大き
な要因となる。
【0019】本発明の目的は、比較的簡単な構造で地震
時等破壊荷重が作用した場合においても突然の破断が発
生することのない接合構造を提供すること、特に水平方
向の横揺れに対して強度を有する接合構造を提供するこ
とを第1の目的とし、さらに縦揺れに対しても強度を有
する接合構造を提供することを第2の目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】鋼管からなる上部柱と下
部柱との間に配置され前記柱と梁部材との接合に用いら
れる本発明の鉄骨構造物用ジョイントは、前記上部柱の
下面に接合される上ダイアフラムと、前記下部柱の上面
に接合される下ダイアフラムと、前記上ダイアフラムと
下ダイアフラムの間に配設され前記上ダイアフラムおよ
び下ダイアフラムと一体化された仕口コアとを備え、さ
らに、前記上ダイアフラム及び下ダイアフラムから突出
した補強部材を備えていることを特徴とする。
【0021】このジョイントを使用した鉄骨構造物の接
合構造は、前記鉄骨構造物用ジョイントを鉄骨構造物の
接合部に配置するとともに、前記補強部材を前記上部柱
及び下部柱の内部空間に突出するように配設し、さらに
前記上部柱と下部柱の内部空間及び仕口コアの内部空間
にコンクリートを充填して、前記上部柱、下部柱及び鉄
骨構造物用ジョイントを一体化したことを特徴とする。
【0022】これによって、ジョイントと上下の柱と
は、溶接などの接合力に加え、鋼管内に形成されたコン
クリート柱、特にジョイントに設けられた補強部材で補
強された補強コンクリート柱によって連結されるように
なり、破壊荷重が載荷され溶接部が破断した後にも補強
コンクリート柱によって支持されるため、ジョイントと
柱とが突然分断されることがなくなる。
【0023】使用する補強部材としては、一般に使用さ
れている異形鉄筋(高張力鋼を含む)や引っ張りに強く
軽量である炭素繊維製の棒状部材を用いることができ、
これを下ダイアフラムと仕口コアと上ダイアフラムとを
貫通させるように配置する。これによってジョイントを
中心としてこの上部の柱と下部の柱とが溶接による鋼材
の接合力に加え補強コンクリートにより一体化されるこ
ととなる。さらに、上下の柱の内部全長にも補強部材を
配置してジョイント部の補強部材と接合することによ
り、鋼管がフープ筋の機能を果たし、コンクリート充填
により鉄骨鉄筋コンクリート造と同等となり、耐火被覆
の要らない鉄骨造が可能となる。
【0024】接点でモーメントを伝達するラーメン構造
物に作用する曲げモーメントは、接合部近傍では接合部
が最も大きく、接合部から離れるにしたがって小さくな
る傾向がある。このため、補強部材の突出量を50〜1
50cmとすることによって、必要以上に補強部材を長
くとることなく接合部の補強を図ることができる。
【0025】また上記構成に加え、上ダイアフラムおよ
び下ダイアフラムを仕口コアの外郭寸法よりも大きい通
しダイアフラムとし、上ダイアフラム、下ダイアフラ
ム、及び仕口コアの全てに梁部材との接合用ボルト孔を
形成することが望ましい。
【0026】これによって、上記したようにジョイント
と柱部材、すなわち縦方向の強固な連結結合に加え、ジ
ョイントと梁部材との信頼性の高い接合が可能となる。
すなわち、一枚の鋼板からダイアフラム部とボルト接合
部を切り出し、そのダイアフラムの延長と梁部材とを現
場でボルト接合する構造とすることにより、梁部材のフ
ランジ、スプライスプレート、ボルトのいずれかの延性
破壊により破壊する構造となり、構造で多少変形をして
も溶接のように突然に破断することのない接合構造を得
ることができる。
【0027】梁部材としてはさまざまな形状のものを使
用することができるが、H形鋼(ビルトアップH形鋼を
含む)が最も一般的であり、この場合、梁部材の上下フ
ランジ及びウエブを、鉄骨構造物用ジョイントの上下ダ
イアフラム及び仕口コアにボルト接合により接合する。
【0028】またジョイントと梁部材の接合に際して
は、鉄骨構造物用ジョイントの端面と梁部材の端面との
間に隙間を設けスプライスプレートを介して接合するこ
とが望ましい。これによって、地震等のように繰り返し
逆方向の荷重がかかる場合、この隙間で移動量や伸びを
吸収し、圧縮力が作用した場合の座屈(バックリング)
を効果的に防ぐことができる。
【0029】このことは、接合構造における最弱部をボ
ルト接合部とし、設計荷重以上の荷重が載荷された際に
は、スプライスプレートと通しダイアフラム及び梁部材
とが滑りを生じるように接合することにより達成でき、
これによって、破壊荷重載荷時には、梁部材のフラン
ジ、スプライスプレート、ボルトのいずれかの延性破壊
により破壊するようになる。
【0030】本発明の鉄骨構造物用ジョント及び接合構
造は、桁行側がピン構造のもの、90度の開きがある2
方向の梁部材を接合するための角用柱、3方向の梁部材
を接合する3方向同梁タイプ、さらには4方向の梁部材
を接合する中央同梁タイプなどさまざまな構造に適用可
能である。
【0031】
【発明の実施の形態】図1は本発明の鉄骨構造物用ジョ
イントを用いた鉄骨構造物の接合構造の一例を示す斜視
図で3方向同梁タイプのものである。図2は図1に示す
接合構造の縦断面図、図3は図1に示す接合構造の横断
面図、図4は図1の鉄骨構造物用ジョイントを単体で示
す斜視図である。
【0032】これらの図において、10は下部柱、12
は上部柱、14はH形鋼からなる梁部材で、これら下部
柱10、上部柱12、梁部材14は鉄骨構造物用ジョイ
ント20によって縦横方向に連結一体化されている。下
部柱10及び上部柱12は角形鋼管であり、内部空間に
コンクリート29が隙間なく充填されている。
【0033】ジョイント20は、特に図4に明瞭に示す
ように、一枚の鋼板をカットして継ぎ目なく形成された
上下ダイアフラム22,23、この上下ダイアフラム2
2,23に配設され溶接によって上下ダイアフラム2
2,23と接合された仕口コア21、仕口コア21の側
面に接合され上下ダイアフラム22,23の端面まで設
けられたガゼットプレート24、さらに上ダイアフラム
22と仕口コア21と下ダイアフラム23とを貫通した
補強部材としての直径19mmの異形鉄筋25によって
構成されている。
【0034】仕口21と上下ダイアフラム22,23と
ガゼットプレート24とは、いわゆる通しダイアフラム
体を構成しており、この上下ダイアフラム22,23面
に上下ダイアフラム22,23よりも小断面である下部
柱10の上端面及び上部柱12の下端面が溶接により固
定されている。なお上下ダイアフラム22,23の3方
向の端面は梁部材14のフランジに、またガゼットプレ
ート24は梁部材14のウエブにそれぞれ一致する形状
とされている。
【0035】図4に戻って、本実施の形態の上ダイアフ
ラム22及び下ダイアフラム23の3つの先端部にはガ
ゼットプレート24を中心に二列のボルト孔28が穿設
され、またそのほぼ中央には、コンクリート29を充填
するためのコンクリート注入孔27がそれぞれ形成され
ている。またガゼットプレート24の先端には縦方向に
一列のボルト孔28が設けられている。このようなボル
ト孔28を上下ダイアフラム22,23およびガゼット
プレート24の全てに設けることによって、後述するよ
うにジョイント20と梁部材14とがボルト結合によっ
て連結可能となる。
【0036】鉄筋25は上記したように、上ダイアフラ
ム22と仕口コア21と下ダイアフラム23とを貫通し
た状態で取り付けられており、図2に明瞭に示すよう
に、上下ダイアフラム22,23に形成された貫通孔
(図示せず)から鉄筋25を差し込んで貫通孔の周壁に
溶接によって固定されている。なお、図2には図示して
いないが、上下部の柱12,10の内部全長にも鉄筋を
配置してジョイント20部の鉄筋25と接合することも
できる。
【0037】図1を参照して、上記したようにジョイン
ト20が、上下部柱12,10及び梁部材14の接合部
に配置され、ジョイント20と梁部材14とはスプライ
スプレート30を介してボルトB及びナット(図6参
照)により連結されている。またジョイント20と上下
部柱12,10とは溶接によって固定されるとともに、
上下部柱12,10の内部空間及び仕口コア21の内部
空間に充填されたコンクリート29によって上下部柱1
2,10とジョイント20とが一体化されている。な
お、ジョイント20の端面と梁部材14の端面とは完全
に密着させることなく、約10mm程度の隙間を設けた
状態で接合している。これによって、地震等のように繰
り返し逆方向の荷重がかかる場合、この隙間で移動量や
伸びを吸収し、圧縮力が作用した場合のバックリングを
効果的に防ぐことができる。
【0038】上記した接合構造においては、通しダイア
フラムタイプのジョイント20と梁部材14とをボルト
接合し、この接合部を接合構造における最弱部としてお
り、巨大地震のように設計荷重以上の荷重が載荷された
際には、溶接部のように突然破断することなく、まずス
プライスプレート30とジョイント20及び梁部材14
とが滑りを生じ、しかる後に、梁部材14のフランジ、
スプライスプレート30、ボルトBのいずれかの延性破
壊や座屈により破壊する。このように破断に至る前の段
階で滑りすなわち変形が発生することにより、荷重エネ
ルギーを吸収し、溶接部のような突然の破断を防ぐこと
ができる。
【0039】図5および図6は破壊の状況を示す説明図
で、図5(a)は本発明の接合構造における横方向の力
による破壊状況を示す説明図、(b)は従来の接合構造
における横方向の力による破壊状況を示す説明図であ
る。また、図6(a)は本発明の接合構造における縦方
向の力による破壊状況を示す説明図、(b)は従来構造
の接合構造における縦方向の力による破壊状況を示す説
明図である。
【0040】図5を参照して、従来の接合構造では、同
図(b)に示すように地震の横揺れなど水平方向の力F
1 が作用すると上部角柱41と上部ダイアフラム38を
接合する溶接部43が突然破断し、上部角柱41と上部
ダイアフラム38とが分断された状態となる。
【0041】これに対し、本発明の接合構造では、同図
(a)に示すように、溶接部Wが破断した場合にも、上
下部柱12,10内部及び仕口コア21内部に充填され
たコンクリート29が連続したコンクリート柱を形成
し、特に、集中応力がかかる部分は鉄筋25によってさ
らに補強されているため、これが外力に有効に抵抗し、
従来のように突然柱12とジョイント20とが分断され
ることがなくなる。
【0042】次いで、図6を参照して縦揺れによる破壊
の状況について説明する。従来技術でも説明した通り、
縦方向の大きな力F2 が作用すると、従来の接合構造で
は、同図(b)に示すようにダイアフラムとの溶接部が
突然破断する。これに対し、本発明の接合構造では、上
ダイアフラム22を一枚の鋼板によって形成し、梁部材
14とはすべてボルト接合によって連結されているた
め、突然の破断を生じることなく、延性破壊によって破
壊することとなる。
【0043】次いで、梁部材に縦方向の力を作用させた
実際の実験結果にもとづいて本発明の優位性について説
明する。図7は本発明のボルト接合による接合構造にお
ける履歴曲線、図8は従来の溶接による接合構造におけ
る履歴曲線をそれぞれ示し、同図において横軸は梁部材
の変形量、縦軸は縦方向の荷重をそれぞれ表す。
【0044】実験結果は、本発明の接合構造では滑りを
起こした後の挙動が安定し、破断などの極端な耐力の低
下がみられなかったのに対し、従来の接合構造では、梁
部材の挙動の特徴が現れ、初期の載荷段階では全塑性モ
ーメントに至らず、十分に変形した後にフランジ溶接部
の破断を生じた。
【0045】また、同図で明らかなように、本発明の接
合構造ではボルトの滑りを伴うため、従来の接合構造に
くらべ履歴曲線が大きく異なるが、履歴曲線の内部の面
積というのは、この接合部が吸収したエネルギーに相当
するものであり、地震時におけるエネルギーの消費に相
当し、履歴曲線の内部の面積が大きい本発明の接合構造
の方が従来の接合構造にくらべより地震力を減衰させる
効果に優れていることが判る。また、従来の接合構造の
場合、突然引張り破断が発生するが、本発明の接合構造
の場合、ボルトの滑りとか、ボルトでボルト孔に欠損し
た断面の部分で引張り破断を引き起こすという、破壊の
メカニズムがわかりやすいため、設計の時点でこの履歴
曲線を予想することができ、耐震設計に反映しやすい。
【0046】また上記以外に、短期荷重を想定した荷重
においては弾性的な荷重変形関係を示し、その後の載荷
で、全塑性モーメントを越えた時点でボルト接合部の最
初の滑りを生じている。さらに荷重が反転した逆側で全
塑性モーメントに至らず滑りを生じ、滑り直後は耐力が
低下したが、変形に伴って耐力が復帰しており、支圧状
態になった。滑りを再度生じた後には大きな変形を加え
た後に耐力が復帰した。一般に言われているように、滑
りを生じた後の摩擦面の劣化やボルト張力の低下に伴
い、スリップ型の荷重変形関係となったが、大変形を受
けてもボルト接合部のすべり耐力は完全には消失しなか
った。
【0047】なお上下部柱12,10に水平方向の力が
作用した場合にも、補強部材である鉄筋25とコンクリ
ート29の作用によって上記実験と同様の傾向が確認さ
れた。
【0048】このように、ジョイント20に補強用の鉄
筋25を設けてコンクリート29を充填し、かつ梁部材
14のフランジをボルト接合した本発明の接合構造にお
いては、従来より使用されかつ施工が容易なボルト接合
を使用し、破断が発生しにくい信頼性の高い接合構造を
得ることができる。また、作業コストを大幅に低減する
ことができる。
【0049】
【発明の効果】本発明によって以下の効果を奏すること
ができる。
【0050】(1)鉄骨構造物用ジョイントの補強部材
を鋼管からなる上部柱及び下部柱の内部空間に突出する
ように配設し、さらに上部柱と下部柱の内部空間及び仕
口コアの内部空間にコンクリートを充填して、上部柱、
下部柱及び鉄骨構造物用ジョイントを一体化することに
よって、縦方向が補強部材で補強された補強コンクリー
ト柱によって連結されるようになり、簡単な構造で、特
に水平方向の横揺れに対して溶接のように突然破断する
ことのない接続構造が得られる。
【0051】(2)補強部材を下ダイアフラムと仕口コ
アと上ダイアフラムとを貫通させるように配置すること
によって、ジョイントを中心としてこの上部柱と下部柱
とが溶接による鋼材の接合力に加え補強コンクリートに
より一体化される。
【0052】(3)補強部材の突出量を50〜150c
mとすることによって、必要以上に補強部材を長くとる
ことなく効果的に接合部の補強を図ることができる。さ
らに、上下の柱の内部全長にも補強部材を配置してジョ
イント部の補強部材と接合することにより、鋼管がフー
プ筋の機能を果たし、コンクリート充填により鉄骨鉄筋
コンクリート造と同等となり、耐火被覆の要らない鉄骨
造が可能となる。
【0053】(4)ジョイントをいわゆる通しダイアフ
ラムタイプとし、上ダイアフラム、下ダイアフラム、及
び仕口コアの全てを梁部材とボルトによって接合する構
造とすることにより、梁部材のフランジ、スプライスプ
レート、ボルトのいずれかの延性破壊により破壊する構
造となり、構造で多少変形をしても溶接のように突然に
破断することのない接合構造を得ることができる。
【0054】(5)ジョイントと梁部材の接合に際し
て、鉄骨構造物用ジョイントの端面と梁部材の端面との
間に隙間を設けスプライスプレートを介して接合するこ
とによって、圧縮方向の力が作用した際のバックリング
を効果的に防ぐことができ、特に逆方向の力が繰り返し
作用する地震に対して有効な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の鉄骨構造物用ジョイントを用いた鉄
骨構造物の接合構造の一例を示す斜視図である。
【図2】 図1に示す接合構造の縦断面図である。
【図3】 図1に示す接合構造の横断面図である。
【図4】 図1の鉄骨構造物用ジョイントを単体で示す
斜視図である。
【図5】 (a)は本発明の接合構造における横方向の
力による破壊状況を示す説明図、(b)は従来の接合構
造における横方向の力による破壊状況を示す説明図であ
る。
【図6】 (a)は本発明の接合構造における縦方向の
力による破壊状況を示す説明図、(b)は従来構造の接
合構造における縦方向の力による破壊状況を示す説明図
である。
【図7】 本発明の接合構造における履歴曲線である。
【図8】 従来の接合構造における履歴曲線である。
【図9】 従来の接合構造を示す側面図である。
【図10】 図9に示す接合構造の平面図である。
【符号の説明】
10 下部柱 12 上部柱 14 梁部材 20 ジョイント 21 仕口コア 22 上ダイアフラム 23 下ダイアフラム 24 ガゼットプレート 25 鉄筋(補強部材) 27 コンクリート注入孔 28 ボルト孔 29 コンクリート 30 スプライスプレート B ボルト W 溶接部

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼管からなる上部柱と下部柱との間に配
    置され前記柱と梁部材との接合に用いられる鉄骨構造物
    用ジョイントであって、前記上部柱の下面に接合される
    上ダイアフラムと、前記下部柱の上面に接合される下ダ
    イアフラムと、前記上ダイアフラムと下ダイアフラムの
    間に配設され前記上ダイアフラムおよび下ダイアフラム
    と一体化された仕口コアとを備え、さらに、前記上ダイ
    アフラム及び下ダイアフラムから突出した補強部材を備
    えていることを特徴とする鉄骨構造物用ジョイント。
  2. 【請求項2】 前記補強部材が下ダイアフラムと仕口コ
    アと上ダイアフラムとを貫通している棒状部材であるこ
    とを特徴とする請求項1記載の鉄骨構造物用ジョイン
    ト。
  3. 【請求項3】 前記補強部材が鉄筋または炭素繊維樹脂
    のいずれかであることを特徴とする請求項1,2記載の
    鉄骨構造物用ジョイント。
  4. 【請求項4】 前記補強部材の突出量が50〜150c
    mであることを特徴とする請求項1〜3記載の鉄骨構造
    物用ジョイント。
  5. 【請求項5】 前記上ダイアフラムおよび下ダイアフラ
    ムが前記仕口コア外郭寸法よりも大きい通しダイアフラ
    ムであることを特徴とする請求項1〜4記載の鉄骨構造
    物用ジョイント。
  6. 【請求項6】 さらに、前記上ダイアフラム、下ダイア
    フラム、及び仕口コアの全てに前記梁部材との接合用ボ
    ルト孔を形成したことを特徴とする請求項1〜5記載の
    鉄骨構造物用ジョイント。
  7. 【請求項7】 前記請求項1〜6記載の鉄骨構造物用ジ
    ョイントを鉄骨構造物の接合部に配置するとともに、前
    記補強部材を前記上部柱及び下部柱の内部空間に突出す
    るように配設し、さらに前記上部柱と下部柱の内部空間
    及び仕口コアの内部空間にコンクリートを充填して、前
    記上部柱、下部柱及び鉄骨構造物用ジョイントを一体化
    したことを特徴とする鉄骨構造物の接合構造。
  8. 【請求項8】 前記梁部材をH形鋼製とし、同梁部材の
    上下フランジ及びウエブを、前記鉄骨構造物用ジョイン
    トの上下ダイアフラム及び仕口コアにボルト接合により
    接合したことを特徴とする請求項7記載の鉄骨構造物の
    接合構造。
  9. 【請求項9】 前記鉄骨構造物用ジョイントの端面と前
    記梁部材の端面との間に隙間を設けスプライスプレート
    を介して接合したことを特徴とする請求項7,8記載の
    鉄骨構造物の接合構造。
  10. 【請求項10】 設計荷重以上の荷重が載荷された際に
    は、前記スプライスプレートと前記鉄骨構造物用ジョイ
    ント及び前記梁部材とが滑りを生じるように接合したこ
    とを特徴とする請求項9記載の鉄骨構造物の接合構造。
JP29444297A 1997-02-13 1997-10-27 鉄骨構造物用ジョイント及びこれを用いた鉄骨構造物の接合構造 Pending JPH11131591A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003082763A (ja) * 2001-09-13 2003-03-19 Nkk Corp 柱梁接合構造およびその設計方法
CN100424283C (zh) * 2002-04-18 2008-10-08 韩凤吉 用于src结构高层建筑的建造方法
JP2019073863A (ja) * 2017-10-12 2019-05-16 株式会社竹中工務店 柱梁接合構造

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