JPH10338148A - ラックピニオン式ステアリング装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】ステアリングホイールの直進操舵位置への戻り
を確保でき、ラックとピニオンとの噛み合いが阻害され
ることがなく、保守点検を容易に行えるラックピニオン
式ステアリング装置を提供する。 【解決手段】ステアリングホイールの操作により回転す
るピニオンに噛み合うラック４を覆うように車体に固定
されるハウジング５を備える。そのピニオンの回転によ
りラック４が舵角に応じて車体に対して移動される。そ
の舵角が設定値以上である時、そのラック４の車体に対
する移動により弾性変形する弾性体２０ａ、２０ｂが、
ハウジング５からラック４の長手方向に直交する方向に
離れた位置に配置される。その弾性体２０ａ、２０ｂの
弾性変形により、そのラック４を直進操舵位置に戻す復
元力が付与される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ステアリングホイ
ールを直進操舵位置に戻す機能を備えるラックピニオン
式ステアリング装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】ステアリングホイールの操作により回転
するピニオンと、そのピニオンに噛み合うラックと、そ
のラックを覆うように車体に固定されるハウジングとを
備え、そのピニオンの回転により、そのラックが舵角に
応じて車体に対して移動されるラックピニオン式ステア
リング装置が従来から汎用されている。

【０００３】一般に、車両のホイールアラインメントに
より、操舵後のステアリングホイールを直進操舵位置に
戻す力が作用する。しかし、ラックピニオン式ステアリ
ング装置においては、舵角が大きくなると、そのラック
の支持部の摩擦等により、そのステアリングホイールを
直進操舵位置に円滑に戻すことができない場合がある。

【０００４】そこで、その舵角が設定値以上である時、
そのラックの車体に対する移動により弾性変形する一対
のバネを設け、各バネの弾性変形により、そのラックを
直進操舵位置に戻す復元力を付与する従来例がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】従来例では、各バネは
ラックを覆うハウジングの内部において、そのラックの
外周に嵌め合わされていた。そのため、そのバネが破損
してハウジングの内部のラックとピニオンとの噛み合い
部に噛み込むおそれがある。また、各バネがハウジング
の内部にあるため、組立が面倒で、保守点検を容易に行
うことができない。

【０００６】また、油圧に基づき操舵補助力を付与する
場合、ラックの外周がバネにより傷つけられると、その
ラックの外周とオイルシールとの間から油が漏れるおそ
れがある。

【０００７】また、ステアリング装置のラック長手方向
寸法が大きくなり、そのようなバネを設けないステアリ
ング装置との部品の共通化を図ることができない。さら
に、右操舵時に弾力を付与するバネはラックの一端側に
配置され、左操舵時に弾力を付与するバネはラックの他
端側に配置されるため、各バネを互いに異なる方向から
組み付ける必要があり、組立や保守点検がより面倒なも
のとなっていた。

【０００８】本発明は、上記問題を解決することのでき
るラックピニオン式ステアリング装置を提供することを
目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、ステアリング
ホイールの操作により回転するピニオンと、そのピニオ
ンに噛み合うラックと、そのラックを覆うように車体に
固定されるハウジングとを備え、そのピニオンの回転に
より、そのラックが舵角に応じて車体に対して移動さ
れ、その舵角が設定値以上である時、そのラックの車体
に対する移動により弾性変形する弾性体が設けられ、そ
の弾性体の弾性変形により、そのラックを直進操舵位置
に戻す復元力が付与されるラックピニオン式ステアリン
グ装置に適用される。本発明のラックピニオン式ステア
リング装置の特徴は、その弾性体が、前記ハウジングか
らラックの長手方向に直交する方向に離れた位置に配置
される点にある。本発明の構成によれば、その弾性体は
ハウジングの外部に位置するため、破損してもラックと
ピニオンとの噛み合い部に至ることはなく、弾性体の組
み付けや保守点検を容易に行える。また、ステアリング
装置のラック長手方向寸法は変化しないので、そのよう
な弾性体を設けないステアリング装置との部品の共通化
を図ることができる。

【００１０】そのラックと同行移動可能に保持部材が設
けられ、前記弾性体として、そのラックの移動方向に沿
って並列される第１圧縮コイルバネと第２圧縮コイルバ
ネとが、その保持部材の外周に、そのラックの移動方向
に相対変位可能に嵌め合わされ、第１バネ受けと、第２
バネ受けと、その第１バネ受けと第２バネ受けとの間の
第３バネ受けとが、そのラックの移動方向に沿って並列
され、その第１バネ受けと第２バネ受けは、ラックと車
体の中の何れか一方側に固定され、その第３バネ受け
は、ラックと車体の中の何れか他方側に固定され、左右
一方への舵角が設定値以上である時に第１圧縮コイルバ
ネが圧縮されるように第１バネ受けと第３バネ受けとの
間に第１圧縮コイルバネが配置され、左右他方への舵角
が設定値以上である時に第２圧縮コイルバネが圧縮され
るように第２バネ受けと第３バネ受けとの間に第２圧縮
コイルバネが配置され、各圧縮コイルバネの自然長は、
各圧縮コイルバネを受けるバネ受けの間隔よりも短くさ
れているのが好ましい。これにより、その第１圧縮コイ
ルバネと第２圧縮コイルバネを互いに近接して配置で
き、組立や保守点検を容易化できる。また、各圧縮コイ
ルバネの自然長は、各圧縮コイルバネを受けるバネ受け
の間隔よりも短いので、組み付けに際して各圧縮コイル
バネを弾性変形させる力を作用させる必要がない。ま
た、各圧縮コイルバネは保持部材に対して相対変位可能
であり、保持部材に嵌め合わせるだけでよい。これによ
り、組立を簡単化できる。

【００１１】本発明のラックピニオン式ステアリング装
置は、そのラックの外周に設けられるピストンを備え、
そのハウジングの内部にピストンにより仕切られる一対
の油室が形成され、そのピストンに作用する油圧に基づ
き操舵補助力が付与されるのが好ましい。この場合、そ
のラックの外周がバネにより傷つけられることはないの
で、その油室からの油漏れを防止できる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施形態を説明する。

【００１３】図１、図２に示す自動車のラックピニオン
式油圧パワーステアリング装置１は、ステアリングホイ
ール（図示省略）に連結されるステアリングシャフト２
と、そのステアリングホイールの操作により回転するよ
うにステアリングシャフト２に設けられるピニオン３
と、このピニオン３に噛み合う歯４ａを有するラック４
と、そのピニオン３とラック４を覆うように車体に固定
されるハウジング５とを備える。そのハウジング５の端
部開口から突出するラック４の各端に、ボールジョイン
ト６ａ、６ｂを介してタイロッド７ａ、７ｂが取り付け
られ、各タイロッド７ａ、７ｂにナックルアーム等を介
して車輪が連結される。その操舵によるピニオン３の回
転により、そのラック４が舵角に応じて車体に対して長
手方向に移動し、車両の転舵がなされる。そのラック４
は、ハウジング５の一端部に内蔵されているブッシュ８
と、そのピニオン３との噛み合い位置でハウジング５に
内蔵されているサポートヨーク（図示省略）とにより支
持される。そのハウジング５やボールジョイント６ａ、
６ｂに泥水や塵埃等が侵入するのを防止するため、筒状
の伸縮カバー９が取り付けられている。

【００１４】そのラック４の外周にピストン１０が設け
られ、このピストン１０により仕切られる一対の油室１
１ａ、１１ｂがハウジング５の内部に形成されている。
一方の油室１１ａの端部は、ラック４の外周とハウジン
グ５の内周との間のオイルシール１２ａによりシールさ
れ、他方の油室１１ｂの端部は、上記ブッシュ８の外周
とハウジング５の内周との間のＯリング１２ｂとブッシ
ュ８の内周とラックの外周との間のオイルシール１２ｃ
によりシールされる。各油室１１ａ、１１ｂに圧油を供
給するための配管１４、１５の各一端がハウジング５に
接続され、各配管１４、１５の他端は上記ステアリング
シャフト２の外周囲に設けられたコントロールバルブ１
６に接続されている。そのコントロールバルブ１６は、
操舵抵抗と操舵方向に応じて、両油室１１ａ、１１ｂの
一方に図外タンクからポンプにより供給される高圧油を
供給すると共に他方から油をタンクに還流させるもので
あり、公知のものを用いることができる。これにより、
そのピストン１０に作用する油圧に基づいて操舵補助力
を付与することができる。

【００１５】その舵角が設定値以上である時、そのラッ
ク４の車体に対する移動により弾性変形する弾性体とし
て、ラック４の移動方向に沿って並列される第１圧縮コ
イルバネ２０ａと第２圧縮コイルバネ２０ｂが設けられ
ている。

【００１６】すなわち、そのラック４の一端外周に連結
部材２１が嵌め合わされ、その連結部材２１は、ラック
４の一端にねじ込まれる上記ボールジョイント６ａによ
り抜け止めされる。その連結部材２１は、ラック４から
ラック長手方向に直交する方向に延びる第１バネ受け２
１ａを有し、その第１バネ受け２１ａに形成された雌ね
じ２１ａ′に、円筒状の保持部材２２の一端外周の雄ね
じ２２ａがねじ合わされる。これにより、その保持部材
２２はラック４と同行移動可能とされている。その保持
部材２２の軸方向はラック４の長手方向に沿い、その保
持部材２２の他端は一端よりもラック４の他端に近接す
る。その保持部材２２の外周に、両圧縮コイルバネ２０
ａ、２０ｂがラック４の移動方向に相対変位可能に嵌め
合わされる。これにより、各圧縮コイルバネ２０ａ、２
０ｂは、ハウジング５からラック４の長手方向に直交す
る方向に離れた位置に配置される。

【００１７】その保持部材２２の他端外周の雄ねじ２２
ｂに、環状の第２バネ受け２３の内周の雌ねじ２３ａが
ねじ合わされる。その第１バネ受け２１ａと第２バネ受
け２３の間において、環状の第３バネ受け２４が、その
保持部材２２の外周にラック４の長手方向に沿って相対
移動可能に嵌め合わされる。その第３バネ受け２４は、
アーム２４ａを介して車体に固定されたハウジング５に
固定される。なお、第３バネ受け２４を車体に直接に固
定してもよい。これにより、各バネ受け２１ａ、２３、
２４はラック４の移動方向に沿って並列され、その第１
バネ受け２１ａと第２バネ受け２３はラック４側に固定
され、第３バネ受け２４は車体側に固定される。

【００１８】その第１圧縮コイルバネ２０ａの自然長Ｌ
１は、第１バネ受け２１ａと第３バネ受け２４との間隔
Ｄ１よりも短く、その差Ｄ１−Ｌ１は、左右一方への舵
角が設定値以上である時に第１圧縮コイルバネ２０ａが
圧縮されるように設定されている。その第２圧縮コイル
バネ２０ｂの自然長Ｌ２は、第２バネ受け２３と第３バ
ネ受け２４との間隔Ｄ２よりも短く、その差Ｄ２−Ｌ２
は、左右他方への舵角が設定値以上である時に第２圧縮
コイルバネ２０ｂが圧縮されるように設定されている。
各バネの自然長Ｌ１、Ｌ２は互いに等しく、各バネ受け
間隔Ｄ１、Ｄ２は互いに等しい。図２において、操舵限
界まで操舵された時の第１バネ受け２１ａと第２バネ受
け２３の位置を二点鎖線で示す。その舵角の設定値は、
ステアリングホイールを直進操舵位置に円滑に戻すこと
ができるように適宜定められる。これにより、左右一方
への操舵時には第１圧縮コイルバネ２０ａの弾性変形に
より、左右他方への操舵時には第２圧縮コイルバネ２０
ｂの弾性変形により、ラック４を直進操舵位置に戻す復
元力が付与される。

【００１９】上記構成によれば、各圧縮コイルバネ２０
ａ、２０ｂによりラック４を直進操舵位置に戻す復元力
を付与することで、ステアリングホイールの直進操舵位
置への戻りが阻害されるのを防止できる。各圧縮コイル
バネ２０ａ、２０ｂはハウジング５の外部に位置するた
め、破損してもラック４とピニオン３ａとの噛み合い部
に至ることはなく、各圧縮コイルバネ２０ａ、２０ｂの
組み付けや保守点検を容易に行える。また、ステアリン
グ装置１のラック長手方向寸法は変化しないので、その
ような圧縮コイルバネ２０ａ、２０ｂを設けないステア
リング装置との部品の共通化を図ることができる。ま
た、第１圧縮コイルバネ２０ａと第２圧縮コイルバネ２
０ｂを互いに近接して配置でき、組立や保守点検を容易
化できる。各圧縮コイルバネ２０ａ、２０ｂの自然長Ｌ
１、Ｌ２は、各圧縮コイルバネ２０ａ、２０ｂを受ける
バネ受け２１ａ、２３、２４の間隔Ｄ１、Ｄ２よりも短
いので、組み付けに際して各圧縮コイルバネ２０ａ、２
０ｂを弾性変形させる力を作用させる必要がない。ま
た、各圧縮コイルバネ２０ａ、２０ｂは保持部材２２に
対して相対変位可能であり、保持部材２２に嵌め合わせ
るだけでよい。これにより、組立を簡単化できる。さら
に、ラック４の外周が各圧縮コイルバネ２０ａ、２０ｂ
により傷つけられることはないので、ラック４とオイル
シール１２ｃとの間に隙間が生じることはなく、油室１
１ｂからの油漏れを防止できる。

【００２０】なお、本発明は上記実施形態に限定されな
い。例えば、第１バネ受け２１ａと第２バネ受け２３と
を車体側に固定し、第３バネ受け２４をラック４側に固
定するようにしてもよい。

【００２１】

【発明の効果】本発明によれば、ステアリングホイール
の直進操舵位置への戻りを確保でき、ラックとピニオン
との噛み合いが阻害されることがなく、保守点検を容易
に行え、油圧により操舵補助力を付与する場合に油が洩
れるのを防止できるラックピニオン式ステアリング装置
を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態のステアリング装置の部分断
面図

【図２】本発明の実施形態のステアリング装置の要部の
断面図

【符号の説明】

３ａ ピニオン ４ ラック ５ ハウジング １０ ピストン １１ａ、１１ｂ 油室 ２０ａ 第１圧縮コイルバネ ２０ｂ 第２圧縮コイルバネ ２１ａ 第１バネ受け ２３ 第２バネ受け ２４ 第３バネ受け

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ステアリングホイールの操作により回転
   するピニオンと、 そのピニオンに噛み合うラックと、 そのラックを覆うように車体に固定されるハウジングと
   を備え、 そのピニオンの回転により、そのラックが舵角に応じて
   車体に対して移動され、 その舵角が設定値以上である時、そのラックの車体に対
   する移動により弾性変形する弾性体が設けられ、 その弾性体の弾性変形により、そのラックを直進操舵位
   置に戻す復元力が付与されるラックピニオン式ステアリ
   ング装置において、 その弾性体は、前記ハウジングからラックの長手方向に
   直交する方向に離れた位置に配置されることを特徴とす
   るラックピニオン式ステアリング装置。
2. 【請求項２】 そのラックと同行移動可能に保持部材が
   設けられ、 前記弾性体として、そのラックの移動方向に沿って並列
   される第１圧縮コイルバネと第２圧縮コイルバネとが、
   その保持部材の外周に、そのラックの移動方向に相対変
   位可能に嵌め合わされ、 第１バネ受けと、第２バネ受けと、その第１バネ受けと
   第２バネ受けとの間の第３バネ受けとが、そのラックの
   移動方向に沿って並列され、その第１バネ受けと第２バ
   ネ受けは、ラックと車体の中の何れか一方側に固定さ
   れ、その第３バネ受けは、ラックと車体の中の何れか他
   方側に固定され、 左右一方への舵角が設定値以上である時に第１圧縮コイ
   ルバネが圧縮されるように第１バネ受けと第３バネ受け
   との間に第１圧縮コイルバネが配置され、左右他方への
   舵角が設定値以上である時に第２圧縮コイルバネが圧縮
   されるように第２バネ受けと第３バネ受けとの間に第２
   圧縮コイルバネが配置され、 各圧縮コイルバネの自然長は、各圧縮コイルバネを受け
   るバネ受けの間隔よりも短くされている請求項２に記載
   のラックピニオン式ステアリング装置。
3. 【請求項３】 そのラックの外周に設けられるピストン
   を備え、そのハウジングの内部にピストンにより仕切ら
   れる一対の油室が形成され、そのピストンに作用する油
   圧に基づき操舵補助力が付与される請求項２に記載のラ
   ックピニオン式ステアリング装置。