JPH10230558A - 光吸収性反射防止膜付き有機基体とその製造方法 - Google Patents

光吸収性反射防止膜付き有機基体とその製造方法

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JPH10230558A
JPH10230558A JP9339097A JP33909797A JPH10230558A JP H10230558 A JPH10230558 A JP H10230558A JP 9339097 A JP9339097 A JP 9339097A JP 33909797 A JP33909797 A JP 33909797A JP H10230558 A JPH10230558 A JP H10230558A
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film
organic substrate
light
absorbing
silicon
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JP9339097A
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English (en)
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Takuji Oyama
卓司 尾山
Hisashi Osaki
壽 大崎
Tomohiro Yamada
朋広 山田
Toshihiko Higuchi
俊彦 樋口
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AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐久性に優れ、適度な可視光線吸収率を有す
る、安価な光吸収性反射防止膜付き有機基体とその製造
方法の提供。 【解決手段】表面がプラズマで処理された有機基体10
上に、基体側から、ケイ素の窒化物を主成分とする密着
層12、光吸収膜13、低屈折率膜15が順に形成され
た光吸収性反射防止膜付き有機基体とその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光吸収性の反射防
止膜付き有機基体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピュータの急速な広がりとと
もに、端末オペレータの作業環境を改善するために、デ
ィスプレイ表面の反射低減やCRT(陰極線管)表面の
帯電防止が要求されつつある。また、最近ではさらに、
コントラスト向上のためにパネルガラスの透過率を低下
させたり、人体に影響を及ぼす極低周波の電磁波を遮蔽
することが求められてきている。
【0003】これらの要求に応えるための方法として、
(1)パネル表面に導電性の反射防止膜を設ける、
(2)フェイスプレートガラス表面に導電性反射防止膜
を設け、該フェイスプレートガラスをパネル表面に樹脂
で貼り付ける、(3)両面に導電性反射防止膜を設けた
フィルタガラスをブラウン管の前面に設置する、などの
方法が採られている。このうち(2)、(3)の場合に
は、真空蒸着法により多層の反射防止膜を形成するのが
一般的である。
【0004】具体的な膜構成の例としては、例えば特開
昭60−168102に示されるような、ガラス/高屈
折率膜/低屈折率膜/高屈折率膜/高屈折率導電膜/低
屈折率膜などが挙げられる。この構成の多層反射防止膜
を表面にコーティングすることにより、表面の視感反射
率を0.3%以下、表面のシート抵抗を1kΩ/□以下
にでき、かつ上記の電磁波遮蔽効果を付与できる。
【0005】また、コントラストを上げるには、光吸収
膜をその構成の一部に使用することが有効であることが
知られている。例えば、特開平1−70701に示され
るような、ガラス/金属膜/高屈折率膜/低屈折率膜な
どを採用できる。この構成の多層の光吸収性反射防止膜
を表面にコーティングすることにより、表面の視感反射
率を0.5%以下、表面のシート抵抗値を100kΩ/
□以下にできる。また、同時に可視光透過率を数十%低
下させ、高コントラスト化を達成できる。
【0006】また、(1)の方法については、(a)パ
ネルにコーティングを施した後ブラウン管に成形する場
合と、(b)ブラウン管を成形した後表面コーティング
を行う場合とがあるが、いずれの場合もスピンコーティ
ングなどのいわゆる湿式法によっているのが現状であ
る。
【0007】一方、反射防止を上記のようなガラス面に
施すのではなく、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)などの有機フィルムに形成した後、ガラス表面に貼
り付けるという方法も考えられる。あるいは、(2)、
(3)の場合には、ガラス板の代わりに安全性などの点
からより好ましい有機基板(いわゆるプラスチック板)
を用いてもよい。これらの場合、基板に耐熱性の要求さ
れる湿式法は適用できず、基板の温度を上げない工夫を
して蒸着法やスパッタリング法により形成する。
【0008】有機フィルムへのコーティングはいわゆる
ロールコータで実施されるが、フィルムの搬送速度を一
定に保つためには、成膜速度の安定性が強く要求され
る。また、シート状基板へのコーティングにはインライ
ン型の成膜装置が用いられるが、やはり成膜速度の安定
性が必須である。この点で、蒸着法には問題がある。一
方、スパッタリング法では低屈折率膜の高速安定成膜が
困難であった。
【0009】これらの背景から、最近になって安定かつ
高速にSiO2 をスパッタリング法により形成する方法
の開発が盛んに行われた結果、いくつかの方法が実現さ
れつつある。例えば、米国特許4445997に見られ
るMMRS(metal mode reactive sputtering)や、米国
特許4851095のC−Mag(cylindrical magnetr
on) などである。
【0010】この結果、スパッタリング法による反射防
止膜が現実のものになりつつあるが、反射防止膜の構成
については従来、真空蒸着法により形成されていた膜構
成に準ずることが多く、スパッタリング法において特に
有効な膜構成についてはこれまであまり知られていなか
った。
【0011】数少ない例として、米国特許509124
4にはガラス/遷移金属窒化物/透明膜/遷移金属窒化
物/透明膜の4層構成が示されている。しかし、この米
国特許5091244においては、可視光線透過率を5
0%以下にするため、吸収層を2層に分け、層数を4層
以上としている。したがって、製造コストが嵩み、実用
的でなかった。
【0012】また、本発明者らは、国際公開96/18
917において、光吸収膜/低屈折率膜の簡単な層構成
からなり、生産性が高く、かつ、反射防止性能が優れる
うえ、電磁波遮蔽に対応可能な低い表面抵抗値を有し、
さらに、高いコントラストを確保するために適度な光吸
収率を持つ光吸収性反射防止膜を提案した。しかし、有
機基体上にこうした無機材料からなる光吸収性反射防止
膜を形成した場合、基体と光吸収膜との界面における付
着力が必ずしも充分でなかった。また、有機基体を用い
たことに起因し、色むらも生じた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐久性に優
れ、適度な可視光線吸収率を有する、安価な光吸収性反
射防止膜付き有機基体とその製造方法の提供を目的とす
る。本発明は、また、色むらが改善され、適度な可視光
線吸収率を有する、安価な光吸収性反射防止膜付き有機
基体とその製造方法の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機基体上
に、基体側から光吸収膜、低屈折率膜がこの順に形成さ
れてなる光吸収性反射防止膜付き有機基体であって、低
屈折率膜側からの入射光の反射低減能を有し、有機基体
は表面がプラズマで処理された有機基体であり、プラズ
マ処理された基体表面と光吸収膜との間には、ケイ素、
ケイ素の窒化物、ケイ素の酸化物およびケイ素の酸窒化
物からなる群から選ばれる1種以上を主成分とする層
(以下、密着層という)が形成されたことを特徴とする
光吸収性反射防止膜付き有機基体(以下、光吸収性反射
防止体という)とその製造方法を提供する。
【0015】光吸収膜の幾何学的膜厚は、低反射を実現
させるため2〜20nmであることが好ましい。また、
低屈折率膜は、反射防止の観点から、屈折率が1.55
以下で、かつ光学的膜厚が100〜160nmであるこ
とが好ましい。特に、屈折率は1.50以下が好まし
く、また、光学的膜厚は100〜145nmであること
が好ましい。例えば、屈折率が1.47の膜を用いた場
合、幾何学膜厚としては68〜110nm、特に68〜
100nmであることが好ましい。
【0016】いずれの層の膜厚も前記範囲を逸脱する
と、可視光領域における充分な反射防止性能が得られな
いおそれがある。また、低屈折率膜の屈折率が1.55
を超えると、光吸収膜に要求される光学定数の範囲が狭
くなるとともに、現実に得られる材料での実現が困難と
なる。
【0017】図1に本発明の一例の模式的断面図を示
す。図1において、10は有機基体、11はハードコー
ト層、12は密着層、13は光吸収膜、14は酸化防止
層、15は低屈折率膜を示す。
【0018】光吸収性反射防止膜の光吸収率は可視光領
域において10〜35%であることが好ましい。光吸収
率がこの範囲を逸脱すると、光吸収膜の膜厚範囲が不適
当となるか、または光吸収膜の光学定数が不適当とな
り、可視光領域における充分な反射防止性能が得られな
いおそれがある。
【0019】また、低屈折率膜側からの入射光に対する
反射率が、430〜650nmの波長範囲において0.
6%以下であることが好ましい。光吸収性反射防止体の
視感反射率(RV )は0.6%以下であることが好まし
い。
【0020】低屈折率膜は、ケイ素の酸化物を主成分と
する膜であることが好ましい。これは、充分低い屈折率
が得られること、安定性のよいスパッタリング法により
成膜できること等の理由による。
【0021】ケイ素(Si)の酸化物を主成分とする膜
は、導電性のSiターゲットを酸素ガスの存在下で直流
(DC)スパッタリングしたものを用いることが、生産
性の点から最も好ましい。このとき、ターゲットに導電
性を持たせるために意図的に少量の不純物(例えば、
P、Al、B)を混入させることがあるが、低い屈折率
を維持するためには主成分はSiO2 (シリカ)とす
る。
【0022】SiのDCスパッタリングでは、ターゲッ
トのエロージョンの周縁部に付着した絶縁性のシリカ膜
の帯電によってアーキングが誘発され、放電が不安定に
なったり、アークスポットから放出されたシリカの粒子
が基板に付着して欠陥となることがある。これを防ぐた
め、周期的にカソードを正電圧とすることにより、帯電
を中和する方法が採られることが多い。こうした成膜方
法は、プロセスの安定性の点からきわめて好ましい。ま
た、シリカ膜の成膜方法としては、RF(高周波)スパ
ッタリングを用いてもよい。RFスパッタリングを用い
れば、純粋なシリカ膜を成膜することもできる。
【0023】本発明においては、光吸収膜の複素光学定
数をn−ik(屈折率n、消衰係数k)、幾何学的膜厚
をd、波長400nmでのkをk400 、波長700nm
でのkをk700 、波長400nmでのnをn400 、波長
700nmでのnをn700 、nave =(n400 +n
700 )/2、kave =(k400 +k700 )/2、ndif
=n400 −n700 、kdif =k700 −k400 とし、低屈
折率膜の屈折率をn2 、幾何学的膜厚をd2 、関数f
(n2 )=1.6n2 −2.2としたときに、次式をい
ずれも満たすことが好ましい。このように設計すること
で低反射となる波長範囲が広くなる。
【0024】
【数1】ndif >0.5 kdif >0.5 f(n2 )−0.2<naveave d/d2 <f(n
2 )+0.2
【0025】前記式を満たす上で好適な光吸収膜として
は、1)金および/または銅を含有する膜、2)チタ
ン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選ば
れる1種以上の金属の窒化物を主成分とする膜が挙げら
れる。
【0026】1)金および/または銅を含有する膜の具
体例としては、金膜、金を50重量%以上含む合金膜、
該合金の窒化物膜、該合金の酸窒化物膜、該合金の炭化
物膜または該合金の炭窒化物膜が挙げられる。
【0027】ここで、金、または、金を50重量%以上
含む合金(以下、金合金という)を用いた場合は、幾何
学的膜厚は、2〜5nm、特に、2.5〜3.5nmで
あることが好ましい。
【0028】幾何学的膜厚が2nm未満では低反射とな
る波長領域は広がるが、反射率が大きくなる。また、5
nm超では低反射となる波長領域は狭くなり、反射率は
大きくなる。この性質から、金、金合金の膜厚を2〜5
nm、さらに好ましくは、2.5〜3.5nmとするこ
とにより、光吸収性反射防止体の反射率は低くなり、ま
た、低反射となる波長範囲は広くなる。
【0029】また、金合金の窒化物を光吸収膜として用
いる場合は、光吸収性反射防止体の反射率を低く、か
つ、低反射となる波長範囲を広くするためには、金合金
の窒化の程度が増すにつれ、その膜厚を大きくする必要
が生じる。ただし、8nm超の膜厚にすると、反射率が
大きく、また、低反射の波長範囲が狭くなる。したがっ
て、2〜8nmとすることが好ましい。同様のことが金
合金の酸窒化物、炭化物、炭窒化物を用いた際にも見ら
れる。
【0030】金膜を用いると、金が化合物を作り難いた
め、例えば、反応性スパッタリング法により光吸収性反
射防止体を製造する場合でも、金膜の形成において、酸
化性ガスまたは窒化性ガスなどをスパッタリングガスと
して使用できる。この性質のため、これに続く、低屈折
率膜の形成の際に必要とされるスパッタリングガスを用
いて、1つの成膜室において、スパッタリングガスの交
換を行わずに2層の光吸収性反射防止膜が形成でき、製
造コストが低くなるため好ましい。また、金、金合金を
用いた反射防止膜の吸収率は10%程度であり、製造コ
ストの低い単純な層構成でありながら、透過率の高い反
射防止体が得られる。
【0031】また、金合金の、窒化物、酸窒化物、炭化
物または炭窒化物を用いることにより、反射防止膜の吸
収率を容易に調整できる。すなわち、金合金に対して、
窒化、酸窒化、炭化、炭窒化の程度を増すことにより、
得られる反射防止膜の吸収率が高くなる。したがって、
窒化、酸窒化、炭化、炭窒化の程度を制御することによ
り、得られる反射防止膜の吸収率を所望の値に制御でき
る。
【0032】さらに、金および/または銅を含有する膜
の具体例として、銅膜、銅窒化物膜、銅酸窒化物膜、銅
炭化物膜、銅炭窒化物膜、銅を50重量%以上含む合金
膜、該合金の窒化物膜、該合金の酸窒化物膜、該合金の
炭化物膜または該合金の炭窒化物膜が挙げられる。特
に、銅膜または銅を50重量%以上含む合金膜であるこ
とが好ましい。
【0033】ここで、銅、または、銅を50重量%以上
含む合金(以下、銅合金という)を用いた場合は、幾何
学的膜厚は2〜5nm、特に、2.5〜3.5nmであ
ることが好ましい。
【0034】幾何学的膜厚が2nm未満では低反射とな
る波長領域は広がるが、反射率が大きくなる。また、5
nm超では低反射となる波長領域は狭くなり、反射率は
大きくなる。この性質から、銅または銅合金の膜厚を2
〜5nm、さらに好ましくは、2.5〜3.5nmとす
ることにより、光吸収性反射防止体の反射率は低くな
り、また、低反射となる波長範囲は広くなる。
【0035】また、銅の窒化物または銅合金の窒化物を
光吸収膜として用いる場合は、光吸収性反射防止体の反
射率を低く、かつ、低反射となる波長範囲を広くするた
めには、銅または銅合金の窒化の程度が増すにつれ、そ
の膜厚を大きくする必要が生じる。ただし、8nm超の
膜厚にすると、反射率が大きく、また、低反射の波長範
囲が狭くなる。したがって、2〜8nmとすることが好
ましい。同様のことが銅、銅合金の、酸窒化物、炭化
物、炭窒化物を用いた際にも見られる。
【0036】また、銅または銅合金を用いた反射防止膜
の吸収率は10%程度であり、製造コストの低い単純な
層構成でありながら、透過率の高い反射防止体が得られ
る。また、銅(または銅合金)の、窒化物、酸窒化物、
炭化物、または炭窒化物を用いることにより、反射防止
膜の吸収率を容易に調整できる。すなわち、銅、銅合金
に対して、窒化、酸窒化、炭化、炭窒化の程度を増すこ
とにより、得られる反射防止膜の吸収率が高くなる。し
たがって、窒化、酸窒化、炭化、炭窒化の程度を制御す
ることにより、得られる反射防止膜の吸収率を所望の値
に制御できる。
【0037】2)チタン、ジルコニウムおよびハフニウ
ムからなる群から選ばれる1種以上の金属の窒化物を主
成分とする膜の具体例としては、窒化チタン膜、窒化ジ
ルコニウム膜および窒化ハフニウム膜が挙げられる。
【0038】チタン、ジルコニウムおよびハフニウムか
らなる群から選ばれる1種以上の金属の窒化物を主成分
とする膜を用いた場合、幾何学的膜厚は5〜20nmと
することが好ましい。5nm未満では低反射となる波長
領域は広がるが、反射率が大きくなる。また、20nm
超では低反射となる波長領域は狭くなり、反射率は大き
くなる。特に好ましい範囲は7〜14nmである。
【0039】窒化チタン膜は可視光領域における光学定
数の値が適当で、低屈折率膜としてシリカ膜を用いた場
合とのマッチングがよく、10nm程度の膜厚で低い反
射率と、ほどよい光吸収率を得ることができ、また、耐
久性や、材料価格の観点からも好ましい。窒化チタン膜
としては、金属チタンターゲットを窒素ガスの存在下で
DCスパッタリングして得られるものを用いることが、
生産性の点から好ましい。
【0040】このとき、窒化チタン膜の光学定数を好ま
しい範囲とするために、スパッタリングガスが窒素と希
ガスを主成分として含んでおり、該窒素の割合が3〜5
0体積%、特に5〜20体積%であるようにすることが
好ましい。これよりも窒素の割合が少ないと、チタン過
剰の光吸収膜となり、低反射波長領域が狭まる。また、
これよりも窒素の割合が多いと、窒素過剰の光吸収膜と
なり、低反射波長領域が狭まるとともに、膜の比抵抗が
高くなり表面抵抗値が大きくなる。
【0041】ターゲットに印加する電力は、1W/cm
2 以上の電力密度とすることが好ましい。これは、成膜
速度を工業生産に充分なくらいに速く保つとともに、成
膜中に膜に取り込まれる不純物の量を低く保つためであ
る。また、後述のように、膜中に取り込まれる酸素の量
を抑制する働きが大きい。
【0042】また、ターゲットに印加する電力は10W
/cm2 以下の電力密度とすることが好ましい。これ
は、適当な光学定数を有する窒化チタン光吸収膜を得る
とともに、ターゲットへの過度の電力投入によるターゲ
ットまたはカソードの溶解や異常放電の頻発を避けるた
めである。すなわち、これを超える電力を投入すると、
純窒素雰囲気にしてもチタンリッチの膜となり、所望の
組成が得られなくなるとともに、ターゲットおよびその
周辺部品が加熱され、アーキングの発生や場合によって
は加熱部位の溶解が起きる危険がある。
【0043】ターゲットやスパッタリングガスの組成に
少量の不純物を含むことは、最終的に形成された薄膜が
実質的に窒化チタン膜の光学定数を有する範囲において
はなんら問題はない。また、ターゲットとして窒化チタ
ンを主成分とする材料を用いて、スパッタリングにより
窒化チタン膜を形成してもよい。
【0044】一方、酸素の存在により、基板や上層のシ
リカ膜との付着力が向上する効果が見出された。したが
って、窒化チタン膜の光学定数が好ましい範囲に保たれ
るかぎりにおいては、窒化チタン膜中に酸素が含まれる
ことが好ましい場合もある。
【0045】その場合の窒化チタン膜としては、光学定
数と比抵抗の点から、膜中におけるチタンに対する酸素
の原子割合が0.5以下であることが好ましい。この割
合が0.5よりも大きいと、酸窒化チタン膜となり、比
抵抗が上昇するとともに、光学定数が不適当となり、表
面抵抗値、反射防止効果ともに不充分となる。
【0046】通常のスパッタリング法により窒化チタン
膜を形成する場合、真空槽の残留ガス分などにより膜中
に酸素が混入することが避けられない。膜中の酸素が窒
化チタン膜の光学特性に及ぼす影響については、これま
であまり知られていなかった。特に、本発明における光
吸収層としての性能に及ぼす影響については全く知られ
ていなかった。
【0047】本発明者らは、窒化チタン膜の成膜条件と
窒化チタン膜中の酸素量の関係、および本発明における
光吸収層としての性能との関係について研究した結果、
本発明における窒化チタン膜としては、光学定数の観点
から、膜中におけるチタンに対する酸素の原子割合が
0.4以下であることが好ましいことを見出した。
【0048】この割合が0.4を超えると、窒化チタン
膜の光学定数の波長依存性が好ましい範囲からずれる結
果、低反射特性が損なわれる傾向を示す。また、酸窒化
膜となるため比抵抗も上昇し、表面抵抗値が電磁波遮蔽
に必要な1kΩ/□を超える傾向を示す。本発明の光吸
収性反射防止体のシート抵抗値(RS )は500Ω/□
以下が好ましい。
【0049】本発明において、密着層は密着力改善層と
して作用する。密着層としては、具体的には、ケイ素
膜、ケイ素の窒化物膜、ケイ素の酸化物膜、ケイ素の酸
窒化物膜などが用いられる。特に、密着力改善の効果が
著しいことからケイ素の窒化物を主成分とする層、特
に、ケイ素の窒化物膜が好ましく用いられる。ケイ素の
窒化物膜には、不純物量程度の酸素が混入してもよい。
ケイ素の酸化物膜を用いる場合には、この膜の組成は、
ケイ素リッチで吸収膜になっていることが好ましい。ケ
イ素原子に対する酸素原子の原子比は1以下であること
が特に好ましい。アルミニウムの窒化物を主成分とする
層では密着力向上の効果が充分ではない。
【0050】密着層の幾何学的膜厚は、0.5〜10n
mであることが好ましい。0.5nm未満では密着力向
上の効果が小さく、10nm超では反射防止性能が劣化
する傾向にある。1〜8nmであることが特に好まし
い。また、密着層として、可視光を吸収する層(例え
ば、吸収がある、ケイ素、ケイ素の窒化物、ケイ素の酸
化物、ケイ素の酸窒化物)を用いた場合、幾何学的膜厚
は、0.5〜5nmであることが好ましい。
【0051】本発明においては、光吸収膜と低屈折率膜
との間には、ケイ素の窒化物および/またはアルミニウ
ムの窒化物を主成分とする酸化防止層が、0.5〜20
nmの幾何学的膜厚で形成されることが好ましい。0.
5nm未満では酸化防止の効果が小さく、20nm超で
は反射防止性能が劣化する傾向にある。
【0052】本発明における有機基体としては、有機材
料からなるシートまたはフィルムを採用できる。特に、
ディスプレイの前面に用いられるガラス等に貼り付けて
使用されるPETフィルムや、またはポリカーボネート
(PC)シートを用いると本発明の効果が充分に発揮さ
れるので好ましい。
【0053】ここでいうガラス等としては、ブラウン管
を構成するパネルガラス自身や、ブラウン管に樹脂で貼
り付けて使用するフェイスプレートガラス、ブラウン管
と操作者との間に設置するフィルタガラスなどが例示で
きる。
【0054】また、これらの有機基体としてその表面に
耐擦傷性を改善する目的で各種のハードコート層が設け
られたものを用いると、最終的な耐久性が高くなるため
好ましい。ハードコート層は、より好ましい結果が得ら
れることから、紫外線硬化型樹脂の硬化物または熱硬化
型樹脂の硬化物からなる層であることが好ましい。特
に、紫外線硬化型のアクリル系樹脂の硬化物からなる層
であることが好ましい。紫外線硬化型のアクリル系樹脂
としては、具体的には、ウレタン結合を有する(メタ)
アクリロイル基含有化合物(いわゆるウレタンアクリレ
ート)、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エ
ステル化合物(いわゆるポリエステルアクリレート)、
エポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0055】本発明においては、有機基体の屈折率とハ
ードコート層の屈折率との差が小さいほど好ましく、具
体的には、有機基体の屈折率とハードコート層の屈折率
との差の絶対値が0.05以下、特に0.03以下であ
ることが好ましい。このように屈折率の差を小さくする
ことにより、色むらが低減し外観品位が向上する。
【0056】屈折率の差を小さくする具体的な手法とし
ては、ハードコート層の屈折率が有機基体の屈折率に比
べて低い場合は、ハードコート層の屈折率を高くするこ
とが挙げられる。その方法としては、ハードコート層を
形成する材料(樹脂)に、1)屈折率を高める構造や官
能基を導入する、2)高屈折率微粒子を添加する、など
が挙げられる。もし、有機基体の屈折率とハードコート
層の屈折率との差が大きい場合は、1)と2)をともに
実施することが好ましい。
【0057】例えば、有機基体がPETフィルムで、ハ
ードコート層が紫外線硬化型のアクリル系樹脂の硬化物
からなる層である場合、このアクリル系樹脂に高屈折率
微粒子を分散させることによって、ハードコート層の屈
折率をPETフィルムの屈折率に近づけることができ
る。ここでいう高屈折率微粒子としては、酸化アンチモ
ン(V)、酸化チタン(IV)、酸化イットリウム(III
)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化スズ(IV)、イン
ジウム−スズ酸化物(ITO)、酸化ランタン(III)、
酸化アルミニウム(III)、酸化亜鉛(II)、酸化セリウ
ム(IV)などが挙げられる。
【0058】本発明におけるプラズマ処理としては、R
F(高周波)プラズマ処理を用いることが好ましい。ま
た、プラズマ処理をする際の雰囲気は、非酸化性雰囲気
であることが好ましい。非酸化性雰囲気とする具体的な
手法としては、放電ガスとして、酸素原子を含まないガ
スを用いる。例えば、アルゴンなどの不活性ガスを用い
ることが好ましい。これは、酸素原子を含むガス(例え
ば、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸
化窒素など)を用いると光吸収膜の特性が劣化し、表面
抵抗値の上昇、透過率の増加が観測されるためである。
この原因は明確ではないが、プラズマ処理中に有機基板
内に注入された酸素(または酸素原子)がその後の密着
層/光吸収層の成膜時に基板から脱離し、光吸収膜中に
取り込まれることによるものと推定される。
【0059】プラズマ処理として、有機基体を真空槽内
に設置した後、槽内を非酸化性雰囲気とし、有機基体の
裏面に配置された電極に高周波電力を印加し、有機基体
表面への投入電力密度をP(W/cm2 )、電極の自己
バイアス電位を−V(ボルト)としたときに、処理時間
t(秒)が2P・t/(V・e・π)≧5×1015(た
だし、eは電気素量を表し、1.6×10-19 (C)で
ある)を満たすプラズマ処理を行うことが好ましい。5
×1015以上で有機基体と膜との間の密着力を向上させ
る効果が充分に発現される。
【0060】有機基体がハードコート層を有する場合
は、ハードコート層付き有機基体についてプラズマ処理
を行う。また、プラズマ処理が連続的な処理であって、
有機基体が連続的に巻き取られる場合には、プラズマ処
理をした直後、基体を巻き取る前に、密着層を形成する
ことが好ましい。密着層が形成されないまま巻き取られ
ると、プラズマ処理された基体表面が他に接触し、密着
力が低下するおそれがある。
【0061】本発明においては、密着層、光吸収膜およ
び低屈折率膜から選ばれる1種以上の膜をスパッタリン
グ法により形成することが好ましい。特に、成膜速度の
安定性、大面積基体への応用の容易性などの観点からD
Cスパッタリング法が好ましい。同様の理由から、酸化
防止層もスパッタリング法、特にDCスパッタリング法
により形成することが好ましい。また、DCスパッタリ
ング法では、RFスパッタリング法に比べて、有機基体
へ入射する電子エネルギーが少なく、有機基体へのダメ
ージが小さい。
【0062】したがって、本発明においては、有機基体
がプラズマ処理された後、有機基体が巻き取られる前に
直ちにスパッタリング法により密着層が形成されること
が好ましい。このように製造されることにより、結果と
して、安定して、耐久性の高い光吸収性反射防止膜付き
有機基体を得ることができる。
【0063】
【作用】本発明における光吸収性反射防止膜は、入射光
の一部を吸収し、透過率を減少させる。本発明の光吸収
性反射防止体を、1)ディスプレイの前面ガラスに貼り
付けて使用した場合、または、2)フェイスプレートガ
ラスやフィルタガラスの代替品として使用した場合、表
面から入射して表示素子側表面で反射してくる光(バッ
クグラウンド光)の強度が減少し、表示光とこのバック
グラウンド光との比を大きくしてコントラストを上げう
る。
【0064】本発明において、光吸収膜、低屈折率膜
は、1)各界面の反射フレネル係数と、2)各界面の間
の位相変化量、および3)各層内の振幅減衰量、によっ
て決定される総合反射率が、可視光領域で充分低くなる
ように、光学定数および膜厚が設定される。
【0065】特に、光吸収膜の光学定数は、一般的な通
常の透明膜の可視光域における分散関係(波長依存性)
とは異なる依存性を示すため、適当に選定された光吸収
膜を用いれば、通常の透明膜のみで構成した場合に比
べ、可視光領域における低反射領域を格段に広げうる。
この効果は、金、金合金、銅、銅合金、金合金の窒化
物、銅の窒化物、銅合金の窒化物、チタンの窒化物、ジ
ルコニウムの窒化物、ハフニウムの窒化物、を主成分と
する膜を光吸収膜として用いた場合に顕著である。
【0066】密着層の挿入は、有機基体または有機基体
上にコートされたハードコート層と、光吸収膜との付着
力を著しく改善する効果がある。特に、非酸化性雰囲気
でRFプラズマ処理をした場合、その上に形成される光
吸収膜の電気伝導性を損なったり、光吸収膜の光学定数
を変化させたりすることなく付着力を向上させうる。特
に光吸収膜としてチタン、ジルコニウムおよびハフニウ
ムからなる群から選ばれる1種以上の金属の窒化物を主
成分とする膜を用い、密着層としてケイ素の窒化物膜を
用いた場合、光吸収膜と密着層とのなじみがよく優れた
耐久性が得られる。
【0067】
【実施例】
[例1(実施例)]真空槽内に、金属チタンと、比抵抗
1.2Ω・cmのN型ケイ素(リンドープ単結晶)とを
ターゲットとしてカソード上に設置した。一方、アクリ
レートのハードコート層(屈折率1.53)を施した約
150μm厚のPETフィルム(屈折率1.60)を1
0cm角に切断したものを基板ホルダー上にセットし
た。真空槽を1×10-5Torrまで排気した後、基板
のハードコート層が施された面上に次のようにして光吸
収性反射防止膜を形成した。
【0068】(1)まず放電ガスとしてアルゴンを導入
し、圧力が1×10-3Torrになるようコンダクタン
スを調整した。次いで、基板ホルダー(表面積約120
0cm2 )に200WのRF電力を1分間投入し、RF
プラズマ処理を行った。このとき、電極の自己バイアス
電圧は−280Vであった。
【0069】(2)次いで、ガスをアルゴンと窒素の混
合ガス(10%窒素)に切り替え、圧力を2×10-3
orrに調整し、ケイ素ターゲットに図2に示した波形
の電圧を印加して、ケイ素ターゲットの間欠DCスパッ
タリングにより、幾何学的膜厚2nmの窒化ケイ素膜
(密着層)を形成した。
【0070】(3)次いで、ガスの混合比を20%窒素
に切り替え、圧力を2×10-3Torrに調整した後、
チタンのカソードに負の直流電圧を印加して、チタンタ
ーゲットのDCスパッタリングにより、幾何学的膜厚1
2nmの窒化チタンの膜(光吸収膜)を成膜した。
【0071】(4)ガス導入を停止し、真空槽内を高真
空とした後、放電ガスとしてアルゴンと酸素の混合ガス
(50%酸素)を導入し、圧力が2×10-3Torrに
なるようコンダクタンスを調整した。次いでケイ素ター
ゲットに図2に示した波形の電圧を印加し、ケイ素ター
ゲットの間欠DCスパッタリングにより、幾何学的膜厚
85nmのシリカ膜(屈折率が1.47の低屈折率膜)
を形成し、本発明の光吸収性反射防止膜付き有機基体
(以下、サンプルフィルムという)を得た。
【0072】得られたサンプルフィルムについて測定し
た分光反射率の曲線を図3に示す。分光反射率の測定時
には、表面反射だけを測定するために裏面に黒色ラッカ
ーを塗布して裏面反射を消した状態で測定した。視感透
過率(TV )は69.7%、視感反射率(RV )は0.
34%であった。また、サンプルフィルムのシート抵抗
値(RS )を非接触の伝導率測定器により測定したとこ
ろ、340Ω/□であった。
【0073】また、サンプルフィルムを恒温恒湿槽(5
0℃、相対湿度95%)に48時間投入した後、エタノ
ールを含ませたガーゼに約2kg/cm2 の荷重をかけ
て10往復こすり、膜の剥離が発生するかどうかを目視
観察した。結果を表3に示す。なお、表中のHC−PE
Tはハードコート層付きPETフィルムの意であり、S
i:Pは、比抵抗1.2Ω・cmのN型ケイ素の意であ
り、1.4E17は1.4×1017の意である。
【0074】[例2〜9(実施例)、例10〜14(比
較例)]作製条件を表1〜2に示すように変えた以外は
例1と同様にして光吸収性反射防止膜付き有機基体を作
製し、特性を測定した。ただし、例9および例14の密
着層形成時の酸素の含有量はそれぞれ2体積%および1
0体積%であった。結果を表3〜4に示す。なお、表中
のPC板はポリカーボネート板の意であり、Si:Al
は、Alがドープされたケイ素の意であり、Cu−Al
はCuとAlの合金の意である。また、表中の膜厚は幾
何学的膜厚の意である。なお、例8で得られたサンプル
フィルムについて測定した分光反射率の曲線を図4に示
す。
【0075】例1〜9は、比較例である例10〜14に
比べ付着力、すなわち耐久性がきわめて優れる。また、
例1〜6、8および9では、2P・t/(V・e・π)
の値が4.7×1015である例7に比べ付着力が優れ
る。例1〜7では、酸素ガスでプラズマ処理した例8に
比べ、反射率、抵抗値の点で優れる。また、例1〜4お
よび例10〜13では、光吸収膜中におけるチタン原子
に対する酸素原子の割合は0.1〜0.25であった。
【0076】図3より明らかなように、本発明によれ
ば、可視光領域の広い範囲にわたって低反射率が実現さ
れるとともに、透過率をほぼ一様に減少させうる。した
がって、本発明をCRT等のディスプレイ画面の前面に
設置されるパネルガラス、フェイスプレートガラス、フ
ィルタガラス等に適用した場合には表示画面のコントラ
ストを改善する効果が透明反射防止膜の場合より顕著と
なる。
【0077】[例15(実施例)]有機基体として約1
50μm厚のPETフィルム(屈折率1.60)を用
い、ハードコート層を以下のようにした。芳香族環を含
有する紫外線硬化型のアクリル系樹脂に高屈折率微粒子
を分散させ、PETフィルム上に塗工した。これに紫外
線を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。こ
のハードコート層の膜厚は3μmであった。高屈折率微
粒子の添加量は、ハードコート層の屈折率がほぼ1.6
0となるように調節した。
【0078】このハードコート層を有するPETフィル
ムを用いた以外は例1と同様にして光吸収性反射防止膜
付き有機基体を作製した。得られたサンプルフィルムに
ついて測定した分光反射率の曲線を図5に示す。
【0079】図5より明らかなように、有機基体の屈折
率とハードコート層の屈折率との差を小さくすることに
よって、図3に見られるような反射率曲線のリップルが
減少する。結果として、例1に比べて色むらが改善さ
れ、また、種々の角度から観察しても色調が変化しにく
く、外観品位が向上する。
【0080】[例16(実施例)]ガス分離ができない
構造のロールコータの真空槽内のカソード上に、金属チ
タンターゲットと、ホウ素がドープされたケイ素ターゲ
ットとを設置した。一方、アクリレートのハードコート
層(紫外線硬化型のアクリル系樹脂の硬化物からなるハ
ードコート層、屈折率1.53)を有する約150μm
厚のロール状のPETフィルム(屈折率1.60)を巻
き出しロールにセットした。真空槽を1×10-5Tor
rまで排気した後、基板のハードコート層が施された面
上に次のようにして光吸収性反射防止膜を形成した。
【0081】(1)まず放電ガスとしてアルゴンを導入
し、圧力が4×10-3Torrになるようコンダクタン
スを調整した。次いで、フィルムの裏面側に配置された
電極(表面積約150cm2 )に200WのRF電力を
投入し、ライン速度0.2m/minでフィルムを送り
ながら、RFプラズマ処理を行った。このとき、電極の
自己バイアス電圧は−15Vであった。フィルム上のプ
ラズマ処理された部分が巻き取りロールに達する前に、
フィルム送りを止めた。
【0082】(2)次いで、ガスをアルゴンと窒素の混
合ガス(50%窒素)に切り替え、圧力を4×10-3
orrに調整し、ケイ素ターゲットに図2に示した波形
の電圧を印加して、ケイ素ターゲットの間欠DCスパッ
タリングにより、再度フィルムを送りながら、(1)で
プラズマ処理された部分上に、幾何学的膜厚4nmの窒
化ケイ素膜(密着層)を形成した。密着層の形成の終了
とともにフィルム送りを止めた。
【0083】(3)次いで、ガスの混合比を10%窒素
に切り替え、圧力を4×10-3Torrに調整した後、
チタンのカソードに負の直流電圧を印加して、チタンタ
ーゲットのDCスパッタリングにより、再度フィルムを
送りながら、密着層の上に幾何学的膜厚12nmの窒化
チタンの膜(光吸収膜)を成膜した。光吸収膜の形成の
終了とともにフィルム送りを止めた。
【0084】(4)次いで、ガスの混合比を50%窒素
に戻し、圧力を4×10-3Torrに調整し、ケイ素タ
ーゲットに図2に示した波形の電圧を印加して、ケイ素
ターゲットの間欠DCスパッタリングにより、再度フィ
ルムを送りながら、光吸収膜の上に幾何学的膜厚20n
mの窒化ケイ素膜(酸化防止層)を形成した。酸化防止
層の形成の終了とともにフィルム送りを止めた。
【0085】(5)ガス導入を停止し、真空槽内を高真
空とした後、放電ガスとしてアルゴンと酸素の混合ガス
(50%酸素)を導入し、圧力が4×10-3Torrに
なるようコンダクタンスを調整した。次いでケイ素ター
ゲットに図2に示した波形の電圧を印加し、ケイ素ター
ゲットの間欠DCスパッタリングにより、再度フィルム
を送りながら、酸化防止層の上に幾何学的膜厚85nm
のシリカ膜(低屈折率膜)を形成し、巻き取りロールに
サンプルフィルムを巻き取った。
【0086】得られたサンプルフィルムを恒温恒湿槽
(50℃、相対湿度95%)に48時間投入した後、エ
タノールを含ませたガーゼに約2kg/cm2 の荷重を
かけて10往復こすり、膜の剥離が発生するかどうかを
目視観察した。剥離は発生しなかった。
【0087】[例17(比較例)]最初に、例16の工
程(1)と同様にしてプラズマ処理し、フィルム送りを
止めずにそのまま巻き取りロールにフィルムを巻き取っ
た。このとき、先に巻き取られたフィルムが後から巻き
取られるフィルムで覆われるようになるまで巻き取りを
行った。次いで、例16の工程(2)〜(5)と同様に
してサンプルフィルムを作製した。
【0088】得られたサンプルフィルムについて例16
と同様にして評価した。結果、先に巻き取られた部分
は、プラズマ処理がされているにもかかわらず剥離が発
生した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【発明の効果】本発明によれば耐久性に優れた光吸収性
反射防止膜付き有機基体を、簡単な膜構成で、しかも総
膜厚をあまり大きくすることなく実現できる。また、本
発明によれば、色むらが改善された光吸収性反射防止膜
付き有機基体を安価に得ることができる。
【0094】また、成膜方法としてスパッタリング法を
用いれば、プロセスの安定性や大面積化が容易であるこ
となどの利点があり、前記特徴とあわせ、低コストで光
吸収性反射防止膜付き有機基体を生産できる。また、本
発明の光吸収性反射防止膜付き有機基体は、膜の付着力
が大きく、耐久性に優れ、さらに、色むらが改善されて
いるため、ディスプレイの前面に用いても、実用性充分
な耐久性と品質を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例の模式的断面図。
【図2】例1において用いられた、ケイ素ターゲットに
印加する電位の時間変動を示す図。
【図3】例1で得られたサンプルの分光反射率を示す
図。
【図4】例8で得られたサンプルの分光反射率を示す
図。
【図5】例15で得られたサンプルの分光反射率を示す
図。
【符号の説明】
10:有機基体 11:ハードコート層 12:密着層 13:光吸収膜 14:酸化防止層 15:低屈折率膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C23C 14/06 C23C 14/06 N 14/10 14/10 G02B 1/11 G09F 9/00 318 G09F 9/00 318 H01J 29/89 H01J 29/89 G02B 1/10 A (72)発明者 樋口 俊彦 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】有機基体上に、基体側から光吸収膜、低屈
    折率膜がこの順に形成されてなる光吸収性反射防止膜付
    き有機基体であって、低屈折率膜側からの入射光の反射
    低減能を有し、有機基体は表面がプラズマで処理された
    有機基体であり、プラズマ処理された基体表面と光吸収
    膜との間には、ケイ素、ケイ素の窒化物、ケイ素の酸化
    物およびケイ素の酸窒化物からなる群から選ばれる1種
    以上を主成分とする層が形成されていることを特徴とす
    る光吸収性反射防止膜付き有機基体。
  2. 【請求項2】光吸収膜の幾何学的膜厚が2〜20nmで
    ある請求項1記載の光吸収性反射防止膜付き有機基体。
  3. 【請求項3】光吸収膜が、チタン、ジルコニウムおよび
    ハフニウムからなる群から選ばれる1種以上の金属の窒
    化物を主成分とする膜である請求項1または2記載の光
    吸収性反射防止膜付き有機基体。
  4. 【請求項4】光吸収膜が、金および/または銅を含有す
    る膜である請求項1または2記載の光吸収性反射防止膜
    付き有機基体。
  5. 【請求項5】低屈折率膜が、ケイ素の酸化物を主成分と
    する膜である請求項1〜4いずれか1項記載の光吸収性
    反射防止膜付き有機基体。
  6. 【請求項6】ケイ素、ケイ素の窒化物、ケイ素の酸化物
    およびケイ素の酸窒化物からなる群から選ばれる1種以
    上を主成分とする層の幾何学的膜厚が0.5〜10nm
    である請求項1〜5いずれか1項記載の光吸収性反射防
    止膜付き有機基体。
  7. 【請求項7】ケイ素、ケイ素の窒化物、ケイ素の酸化物
    およびケイ素の酸窒化物からなる群から選ばれる1種以
    上を主成分とする層が、ケイ素の窒化物を主成分とする
    層である請求項1〜6いずれか1項記載の光吸収性反射
    防止膜付き有機基体。
  8. 【請求項8】光吸収膜と低屈折率膜との間に、ケイ素の
    窒化物および/またはアルミニウムの窒化物を主成分と
    する酸化防止層が、0.5〜20nmの幾何学的膜厚で
    形成されている請求項1〜7いずれか1項記載の光吸収
    性反射防止膜付き有機基体。
  9. 【請求項9】有機基体が、ポリエチレンテレフタレート
    またはポリカーボネートからなる有機基体である請求項
    1〜8いずれか1項記載の光吸収性反射防止膜付き有機
    基体。
  10. 【請求項10】有機基体が、基体上にハードコート層が
    形成された有機基体である請求項1〜9いずれか1項記
    載の光吸収性反射防止膜付き有機基体。
  11. 【請求項11】有機基体の屈折率とハードコート層の屈
    折率との差の絶対値が0.05以下である請求項10記
    載の光吸収性反射防止膜付き有機基体。
  12. 【請求項12】有機基体表面をプラズマ処理し、プラズ
    マ処理された表面上に、ケイ素、ケイ素の窒化物、ケイ
    素の酸化物およびケイ素の酸窒化物からなる群から選ば
    れる1種以上を主成分とする層と、光吸収膜と、低屈折
    率膜とをこの順に形成することを特徴とする光吸収性反
    射防止膜付き有機基体の製造方法。
  13. 【請求項13】プラズマ処理として、有機基体を真空槽
    内に設置した後、槽内を非酸化性雰囲気とし、有機基体
    の裏面に配置された電極に高周波電力を印加し、有機基
    体表面への投入電力密度をP(W/cm2 )、電極の自
    己バイアス電位を−V(ボルト)としたときに、処理時
    間t(秒)が2P・t/(V・e・π)≧5×10
    15(ただし、eは電気素量を表し、1.6×10-19
    (C)である)を満たすプラズマ処理を行う請求項12
    記載の光吸収性反射防止膜付き有機基体の製造方法。
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