JPH1019095A - チェーンテンショナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 チェーンの張力を常に一定に保持することが
できる部品点数の少ないコストの安いチェーンテンショ
ナを提供する。 【解決手段】 ハウジング１のシリンダ室３にプランジ
ャ５を摺動自在に組込む。プランジャ５の軸挿入孔６の
内周に形成された雌ねじ７にねじ軸８の外周の雄ねじ９
をねじ係合する。雌ねじ７と雄ねじ９のねじ山を鋸歯状
とし、その鋸歯状ねじ山のフランク角の大きい圧力側フ
ランクによりプランジャ５に付与される押し込み力を受
け止めてプランジャ５の押し込み方向の移動を防止す
る。プランジャ５にスプリング１２の弾力と給油通路４
に送り込まれる油圧を付与して、プランジャ５を外方向
に急速に移動させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、カム軸駆動用チ
ェーン等のチェーンの張力を一定に保持するチェーンテ
ンショナに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】カム軸駆動用のチェーンの張力を一定に
保つチェーンテンショナとして、図６に示したものが知
られている。このチェーンテンショナはハウジング４０
に形成されたシリンダ室４１内にプランジャ４２と、ス
プリング４３とを組込み、上記スプリング４３で突出性
が付与されたプランジャ４２によりチェーンＡを押圧す
るようにしている。

【０００３】また、プランジャ４２の背部に形成された
圧力室４４に給油通路４５を連通し、その給油通路４５
にチェックバルブ４６を設け、上記プランジャ４２が外
方向に移動して圧力室４４の圧力が低下したとき、チェ
ックバルブ４６を開放させ、給油ポンプの駆動により給
油通路４５から圧力室４４に油を流動させるようにして
いる。

【０００４】上記チェーンテンショナにおいては、チェ
ーンＡが緊張してプランジャ４２に押し込み力が作用し
たとき、その押し込み力を圧力室４４に封入された油に
よって緩衝し、チェーンＡに弛みが生じると、スプリン
グ４３の弾力によりプランジャ４２を急速に外方向に移
動させてチェーンＡを緊張させるため、チェーンＡの張
力変動に対するプランジャ４２の追従性が良好であり、
チェーンＡの張力を常に一定に保持することができると
いう特徴を有する。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記チェー
ンテンショナにおいては、エンジンの停止時、カム軸に
設けられたカムの停止位置の関係からプランジャ４２は
緊張状態のチェーンＡで押し込まれることがある。この
時、圧力室４４の油はプランジャ４２とシリンダ室４１
の摺動面からリークし、プランジャ４２は後退した位置
にある。

【０００６】このため、エンジンの始動によりチェーン
に弛みが生じると、プランジャ４２は外方向に大きく移
動する。このとき、油圧ポンプは始動直後であって吐出
量が少ないため、圧力室４４に充分な油を供給すること
ができず、圧力室４４に空気が侵入し、その侵入空気に
よってダンピング特性が低下し、チェーンテンショナの
機能を発揮させることができないという問題が発生す
る。

【０００７】また、プランジャの押込み力を緩衝する油
圧ダンパ機構がチェックバルブ４６を用いた方向性のあ
る油圧ダンパであるため、部品点数が多くなり、組立て
に手間がかかり、コストも高いという問題がある。

【０００８】なお、エンジンの始動時にプランジャが外
方向に大きく移動するのを防止するため、実開昭６４−
２５５５７号に記載されたチェーンテンショナにおいて
は、ハウジングにラチェット爪を揺動自在に取付け、そ
のラチェット爪をプランジャの外周に設けたラックに係
合させてプランジャの後退動を防止するようにしている
が、このチェーンテンショナにおいても、部品点数が多
く、コストも高いという問題がある。

【０００９】この発明の課題は、一方向性油圧ダンパを
用いたチェーンテンショナと同様の機能を発揮させるこ
とができるようにした部品点数の少ないコストの安いチ
ェーンテンショナを提供することである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、第１の発明においては、ハウジングにその端面で
開口するシリンダ室と、そのシリンダ室の閉塞端部側に
所定圧力の油圧を供給する給油通路とを設け、上記シリ
ンダ室内に摺動自在に組込まれたプランジャに、その後
端面で開口する軸挿入孔を形成し、その軸挿入孔の内周
に形成された雌ねじにねじ軸の外周に設けられた雄ねじ
をねじ係合し、上記ねじ軸には、その先端面で開口する
スプリング収納孔と、後端面からそのスプリング収納孔
に連通する油通路とを設け、上記スプリング収納孔にプ
ランジャに突出性を付与するスプリングを組込み、前記
雌ねじと雄ねじのねじ山を、プランジャの押し込み力を
受ける圧力側フランクのフランク角を遊び側フランクの
フランク角より大きい鋸歯状とし、その鋸歯状ねじ山に
前記スプリングの押圧力によってプランジャが外方向に
移動するリード角を設けた構成を採用している。

【００１１】また、第２の発明においては、ハウジング
にその端面で開口するシリンダ室と、そのシリンダの閉
塞端部側に所定圧力の油圧を供給する給油通路とを設
け、上記シリンダ室の開口部内周に雌ねじを設け、その
雌ねじにねじ係合したねじ軸の後端をシリンダ室内に摺
動自在に組込まれたプランジャに接触させ、前記雌ねじ
とねじ軸の外周に形成された雌ねじのねじ山を、ねじ軸
の押し込み力を受ける圧力側フランクのフランク角が遊
び側フランクのフランク角より大きい鋸歯状とし、その
鋸歯状ねじ山に前記シリンダ室の閉塞端部側に供給され
る油圧によりねじ軸が外方向に移動するリード角を設け
た構成を採用している。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
１乃至図５に基づいて説明する。

【００１３】図１乃至図３は、この発明の第１の実施の
形態を示す。図示のようにハウジング１はエンジンのシ
リンダブロック等の固定部にボルト止めされる複数の取
付片２を外周に有している。このハウジング１には、そ
の先端面で開口するシリンダ室３が設けられている。ま
た、ハウジング１にはシリンダ室３の閉塞端部に連通す
る給油通路４が形成され、その給油通路４からシリンダ
室３の閉塞端部に所定圧力の油圧が供給される。

【００１４】シリンダ室３内に摺動自在に組込まれたプ
ランジャ５は、その後端面で開口する軸方向の軸挿入孔
６が設けられている。軸挿入孔６の開口端部の内周には
雌ねじ７が形成され、その雌ねじ７にねじ軸８の外周の
雄ねじ９がねじ係合される。

【００１５】ねじ軸８には、その先端面から軸方向に延
びるスプリング収納孔１０と、後端面からそのスプリン
グ収納孔１０に至る油通路１１とが設けられている。ス
プリング収納孔１０には、スプリング１２と、スプリン
グシート１３とが組込まれ、スプリングシート１３に設
けた球面１４は軸挿入孔６の閉塞端面と点接触してい
る。

【００１６】上記スプリングシート１３は、スプリング
１２の後端とスプリング収納孔１０の閉塞端面に組込む
ようにしてもよい。

【００１７】図３に示すように、前記プランジャ５に設
けられた雌ねじ７と、その雌ねじ７にねじ係合されたね
じ軸８の雄ねじ９におけるねじ山は、プランジャ５の押
し込み力を受ける圧力側フランク１５のフランク角が遊
び側フランク１６のフランク角より大きい鋸歯状とさ
れ、その鋸歯状ねじ山のフランク角とリード角の関係か
ら、プランジャ５は突出方向にゆるみ条件とされ、押し
込み方向にロック条件とされている。

【００１８】ここで、ゆるみ条件とは、スプリング１２
の押圧力によってプランジャ５が外方向にスムースに移
動することをいい、一方、ロック条件とは、プランジャ
５に軸方向力が作用しても、シリンダ室３内に向けて移
動せず、その押し込み力がねじ山の圧力側フランク１５
に作用する摩擦力と、プランジャ５に作用する油圧力の
総和より大きくなった場合に、圧力側フランク面で衝
突、離反を繰り返し、プランジャ５がシリンダ室３内に
向けてゆっくりと移動することをいう。

【００１９】上記の構成から成るチェーンテンショナ
は、シリンダブロック等の固定部に対する組付け前の段
階では、図２に示すように、ハウジング１に設けられた
セット孔１７とプランジャ５に形成されたピン孔１８と
にセットピン１９を挿入して、プランジャ５を抜け止め
する。チェーンテンショナの組付け後は、セットピン１
９を引き抜き、給油通路４に供給される油圧と、スプリ
ング１２の弾力とによってプランジャ５に突出性を付与
し、図１に示すように、そのプランジャ５によりチェー
ン押圧部材２０を押圧し、チェーンＡに張力を付与す
る。

【００２０】図１に示すチェーンテンショナの使用状態
において、カム軸駆動用のチェーンＡにおいては、エン
ジンを停止するとカムの停止位置の関係によってチェー
ンＡが緊張し、エンジンを始動するとチェーンＡに弛み
が生じる。

【００２１】ここで、チェーンＡが緊張すると、プラン
ジャ５に押し込み力が作用する。このとき、プランジャ
５に作用する押し込み力は、雌ねじ７と雄ねじ９のねじ
係合面における圧力側フランク１５に作用し、その圧力
側フランク１５のフランク角とリード角の関係からプラ
ンジャ５は押し込み方向にロック条件に設定されている
ため、プランジャ５は後退しない。

【００２２】上記押し込み力がシリンダ室３および軸挿
入孔６内に封入された油圧とスプリング１２の押圧力の
総和を超えた場合、プランジャ５はシリンダ室３の閉塞
端に向けてゆっくりと後退し、その後退によってねじ軸
８は回転すると共に、シリンダ室３内の油はプランジャ
５とシリンダ室３の摺動面間よりハウジング１の外部に
流出する。

【００２３】なお、エンジンの運転時において、エンジ
ン回転数に同期するような高周波加振に対しても、プラ
ンジャ５はチェーン張力を一定に保つように突出、また
は後退する。

【００２４】また、エンジンの始動によってチェーンＡ
に弛みが生じると、給油通路４に供給される油圧によっ
てねじ軸８およびプランジャ５は外方向に急速に移動
し、その移動と同時に、スプリング１２の弾力によって
ねじ軸８は回転しつつ後退動してシリンダ室３の閉塞端
に接触する状態に保持され、外方向に移動したプランジ
ャ５によってチェーンＡの弛みは吸収される。

【００２５】ここで、ねじ軸８が回転しつつ後退動する
とき、スプリング１２の端部に設けたスプリングシート
１３は軸挿入孔６の閉塞端と点接触する状態にあるた
め、接触部の抵抗は小さく、ねじ軸８は円滑に回転す
る。このため、チェーンＡに弛みが生じると、その弛み
は直ちに吸収される。

【００２６】図４および図５は、この発明の第２の実施
の形態を示す。この実施の形態においては、ハウジング
１に形成されたシリンダ室３の開口端部にナット２１を
圧入等の手段で固着し、そのナット２１の雌ねじ２２に
ねじ軸２３の外周に設けられた雄ねじ２４をねじ係合
し、上記雌ねじ２２と雄ねじ２４のねじ山を、ねじ軸２
３の押し込み力を受ける圧入側フランク２５のフランク
角が遊び側フランク２６のフランク角より大きい鋸歯状
とし、その鋸歯状ねじ山のフランク角とリード角の関係
から、ねじ軸２３を突出方向にゆるみ条件とし、押し込
み方向にロック条件としている。

【００２７】また、シリンダ室３内にはねじ軸２３の背
部にプランジャ２７を摺動自在に組込み、そのプランジ
ャ２７をハウジング１に形成された給油通路４からシリ
ンダ室３内に供給される油圧によりねじ軸２３に向けて
押圧し、プランジャ２７の球形先端面２８をねじ軸２３
の平坦な後端面２９に対して点接触させるようにしてい
る。

【００２８】上記の構成から成るチェーンテンショナ
は、ねじ軸２３に形成されたピン孔３０とハウジング１
に形成されたセット孔３１とにＵ字形セットピン３２の
両端部を挿入して、組付け前の輸送の段階でプランジャ
２７が分離するのを防止する。

【００２９】組付けに際しては、セットピン３２を引き
抜き、給油通路４からシリンダ室３内に供給される油圧
によりねじ軸２３に突出性を付与し、そのねじ軸２３に
よって図１に示すチェーン押圧部材２０を押圧し、チェ
ーンＡに張力を付与する。

【００３０】上記のような使用において、チェーンＡの
張力が増大してねじ軸２３に押し込み力が作用すると、
その押し込み力は雌ねじ２２と雄ねじ２４のねじ係合部
における圧力側フランク２５によって受けられ、その圧
力側フランク２５のフランク角とリード角の関係からね
じ軸２３は押し込み方向にロック条件に設定されている
ため、ねじ軸２３は後退しない。

【００３１】チェーンＡに弛みが生じると、給油通路４
からシリンダ室３に供給される油圧によって、遊び側フ
ランク２６のフランク角とリード角の関係からねじ軸２
３は回転しつつ外方向に急速に移動してチェーンＡの弛
みを吸収する。

【００３２】第２の実施の形態においては、ナット２１
の取付けによってシリンダ室３の開口部に雌ねじ２２を
設けたが、シリンダ室３の開口部に直接雌ねじを設けて
もよい。

【００３３】

【発明の効果】この発明は以上のように構成したので、
下記に示す効果を奏する。

【００３４】請求項１に記載の発明においては、プラン
ジャの内周に形成した雌ねじとねじ軸の外周に形成され
た雄ねじのねじ山を、圧力側フランクのフランク角が遊
び側フランクのフランク角より大きい鋸歯状としたこ
と、プランジャに給油通路に供給される油圧と、スプリ
ングの弾力とを付与して外方向に突出性を付与したこと
によって、プランジャの押し込み方向の移動を防止し、
突出方向には素速く移動させることができる。

【００３５】このため、チェーンの張力変動に対してプ
ランジャを良好に追従させることができ、一方向性油圧
ダンパを用いたチェーンテンショナと同様の機能を発揮
する部品点数の少ないコストの安いチェーンテンショナ
を実現することができる。

【００３６】また、プランジャの後退動を制限する機構
がねじを利用する機械的なものであるため、プランジャ
の押し込み力を確実にダンピングすることができる。

【００３７】請求項２に記載の発明においては、スプリ
ングシートに設けた球面を軸挿入孔の閉塞面又はスプリ
ング収納孔の閉塞面に点接触させるようにしたので、ね
じ軸の回転時における回転抵抗が小さく、ねじ軸をスム
ースに回転させることができる。

【００３８】請求項３に記載の発明においては、シリン
ダ室の開口部内周に設けた雌ねじとねじ軸の外周に形成
された雄ねじのねじ山を鋸歯状とし、上記ねじ軸の背部
に組込まれたプランジャに給油通路に供給される油圧を
付与してねじ軸に突出性を付与したことにより、ねじ軸
の押し込み方向の移動を制限し、突出方向には素速く移
動させることができる。このため、請求項１と同様の効
果を発揮することができる。

【００３９】請求項４に記載の発明においては、プラン
ジャとねじ軸とを点接触させたことにより、ねじ軸の回
転時における抵抗が小さく、ねじ軸をスムースに回転さ
せることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の第１の実施の形態を示す縦断正面図

【図２】同上の縦断側面図

【図３】同上の雌ねじと雄ねじのねじ係合部を示す拡大
断面図

【図４】この発明の第２の実施の形態を示す縦断正面図

【図５】同上の雌ねじと雄ねじのねじ係合部を示す拡大
断面図

【図６】従来のチェーンテンショナを示す断面図

【符号の説明】

１ ハウジング ３ シリンダ室 ４ 給油通路 ５ プランジャ ６ 軸挿入孔 ７ 雌ねじ ８ ねじ軸 ９ 雄ねじ １０ スプリング収納孔 １１ 油通路 １２ スプリング １３ スプリングシート １４ 球面 １５ 圧力側フランク １６ 遊び側フランク ２２ 雌ねじ ２３ ねじ軸 ２４ 雄ねじ ２５ 圧力側フランク ２６ 遊び側フランク ２７ プランジャ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジングに、その端面で開口するシリ
   ンダ室と、そのシリンダ室の閉塞端部側に所定圧力の油
   圧を供給する給油通路とを設け、上記シリンダ室内に摺
   動自在に組込まれたプランジャに、その後端面で開口す
   る軸挿入孔を形成し、その軸挿入孔の内周に形成された
   雌ねじにねじ軸の外周に設けられた雄ねじをねじ係合
   し、上記ねじ軸には、その先端面で開口するスプリング
   収納孔と、後端面からそのスプリング収納孔に連通する
   油通路とを設け、上記スプリング収納孔にプランジャに
   突出性を付与するスプリングを組込み、前記雌ねじと雄
   ねじのねじ山を、プランジャの押し込み力を受ける圧力
   側フランクのフランク角を遊び側フランクのフランク角
   より大きい鋸歯状とし、その鋸歯状ねじ山に前記スプリ
   ングの押圧力によってプランジャが外方向に移動するリ
   ード角を設けたチェーンテンショナ。
2. 【請求項２】 前記スプリングの端部にスプリングシー
   トを設け、そのスプリングシートに形成された球面を軸
   挿入孔の閉塞端又はスプリング収納孔の閉塞端に点接触
   させた請求項１に記載のチェーンテンショナ。
3. 【請求項３】 ハウジングにその端面で開口するシリン
   ダ室と、そのシリンダの閉塞端部側に所定圧力の油圧を
   供給する給油通路とを設け、上記シリンダ室の開口部内
   周に雌ねじを設け、その雌ねじにねじ係合したねじ軸の
   後端をシリンダ室内に摺動自在に組込まれたプランジャ
   に接触させ、前記雌ねじとねじ軸の外周に形成された雌
   ねじのねじ山を、ねじ軸の押し込み力を受ける圧力側フ
   ランクのフランク角が遊び側フランクのフランク角より
   大きい鋸歯状とし、その鋸歯状ねじ山に前記シリンダ室
   の閉塞端部側に供給される油圧によりねじ軸が外方向に
   移動するリード角を設けたチェーンテンショナ。
4. 【請求項４】 前記ねじ軸とプランジャとを点接触させ
   た請求項３に記載のチェーンテンショナ。