JPH1010774A - 粉体トナーの製造方法 - Google Patents

粉体トナーの製造方法

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JPH1010774A
JPH1010774A JP15830796A JP15830796A JPH1010774A JP H1010774 A JPH1010774 A JP H1010774A JP 15830796 A JP15830796 A JP 15830796A JP 15830796 A JP15830796 A JP 15830796A JP H1010774 A JPH1010774 A JP H1010774A
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resin
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group
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JP15830796A
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Toyomi Hashizume
豊美 橋詰
Shoji Okuno
昌二 奥野
Hitoshi Takayanagi
均 高柳
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Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温定着性と耐ホットオフセット性に優れた
粉体トナーを得る。 【解決手段】 少なくとも一分子平均1を越える架橋性
官能基を有する重量平均分子量が50,000〜40
0,000なる範囲の樹脂と、重量平均分子量が5,0
00以上で50,000未満の樹脂と、前記樹脂の架橋
剤とを樹脂成分として、その中に着色剤を含有した粒子
の液媒体分散液を作製した後、該樹脂成分の一部を架橋
させて結着用樹脂とし、次いで、得られた一部が架橋さ
れた粒子を液媒体から分離し乾燥するトナー粒子の製造
方法。 【効果】 本発明の製造方法によって得られる静電荷像
現像用トナーは、小粒径化が容易なので、鮮映な画像を
得ることができ、さらに、低温定着性を保持してホット
オフセット発生温度を高くすることができるので、巾広
い定着温度領域を確保できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真法、静電
印刷法において、静電潜像を現像するために使用される
トナー、とりわけ、熱ロールで定着する方式に好適な粉
末トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】静電潜像を現像する定着方式は、熱ロー
ルで定着する方式が一般的であり、そこで使用されるト
ナーにおいては、鮮映な画像が得られるもの、および、
高速かつ低温で定着できるものが強く要求されている。
鮮映な画像を得るためには、小粒径トナーが必要とな
る。
【0003】一方、低温で定着するためには、トナーの
結着用樹脂を低分子量化したり、あるいは、ガラス転移
温度を下げることにより可能とはなる。しかし、反面、
結着用樹脂の分子量を下げると、熱定着ロールにトナー
が付着し、紙を汚してしまうホットオフセットという現
象が著しくなってしまう。さらに、保存安定性の面か
ら、結着用樹脂のガラス転移温度を下げるには限界があ
る。
【0004】従って、低温定着性と耐ホットオフセット
性を両立して幅広い定着温度領域を確保するためには、
結着用樹脂は、低分子量成分と、高分子量あるいは一部
架橋した超高分子量成分との両成分が必要となる。
【0005】従来、静電荷像現像用粉体トナーは、粉砕
法および重合法で製造されている。かかる従来技術を、
小粒径化、低温定着性、および、耐ホットオフセット性
の観点から評価してみる。
【0006】現在、最も一般的である粉砕法では、トナ
ーの結着用樹脂として、低分子量成分と高分子量成分を
併用する方法(特公昭63−32180、特公昭55−
6895)、低分子量成分と一部架橋した超高分子量成
分を併用する方法(特公昭60−36582、特開平0
1−219765)、溶融混練時に架橋を行う方法(特
公昭59−33907、特開平06−222612、特
告昭60−38700)などで低温定着性と耐ホットオ
フセット性に対応している。
【0007】しかしながら、いずれの技術においても、
高分子量あるいは一部架橋した樹脂を熱溶融混練し、次
いで、冷却後に粉砕するので、その動力が極めて膨大に
ならざるを得ないという欠点がある。
【0008】さらに、粉砕法は、元来、小粒径化が困難
であるうえ、粉砕し難い高分子量あるいは一部架橋した
樹脂を使用して小粒径トナーを製造するには、困難がよ
り倍加してしまうという欠点もある。その上、強いて小
粒径化しようとすると、規格外の微粉が多量に発生して
しまい、分級でかなりのロスが発生してしまうという欠
点も生じてくる。
【0009】即ち、粉砕法では、生産性の点から小粒径
化には限界があり、現状の平均粒子径が10μmレベル
から、7μm、さらには、5μmといった市場の最新の
要求に対応するには適当な方法ではない。
【0010】一方、重合法トナーは、水性媒体中で着色
剤の存在下にラジカル重合性モノマーを重合する方法な
ので、ジビニルベンゼンなどの架橋性モノマーを使用す
ることにより、分子量や架橋を比較的容易にコントロー
ルできる。また、小粒径化にも対応できる。
【0011】しかしながら、重合法トナーは、粒子の分
散を安定化するために、界面活性剤や保護コロイドとい
った極めて親水性の高い化合物を使用せざるを得ない。
そのため、そのまま乾燥してトナー粒子としたのでは、
吸湿によって帯電安定性や環境安定性が極めて悪いもの
となってしまう。
【0012】そこで、その欠点を解消するため、洗浄す
る必要があるのであるが、完全に除去することは現実的
には不可能である。即ち、重合法による製造では、帯電
安定性や環境安定性を十分に解決することは生産性の点
で問題があるという欠点がある。
【0013】ところで、転相乳化法によりトナーを製造
する方法は、基本技術が、特開平05−66600およ
び特開平05−265247で始めて開示された新しい
技術である。その製造方法の概略は、親水性基を含有し
自己水分散能を有する樹脂の有機溶剤溶液と着色剤と
を、水性媒体中に分散して粒子を形成する手法である。
【0014】その特長は、粉砕といった多大なエネルギ
ーを消費することなく粒子を容易に作製することがで
き、かつ、小粒径粒子も極めて容易に製造できる。粒子
形状は真球状のものが得られる。また、粒子径の分布が
シャープなものも容易に製造できる。さらに、界面活性
剤や保護コロイドも使用しないので、重合法の欠点であ
る帯電安定性や環境安定性にも問題がない。
【0015】しかしながら、従来の知見では、界面活性
剤や保護コロイドを使用しない転相乳化法は、樹脂の有
機溶剤溶液を使用するため、架橋した樹脂は使用するこ
とができず、さらに、高分子量の樹脂も余りに分子量が
高いと転相乳化が困難である。ビニル系共重合体にあっ
ては、良好に転相乳化をするためには、重量平均分子量
で概ね200,000程度が限界である。
【0016】そこで、耐ホットオフセット性を向上する
ために、特願平07−119799で出願された低分子
量樹脂と高分子量樹脂を併用して転相乳化する技術や、
特開平06−258869で開示された、転相乳化法に
より作製した架橋剤を含有したトナーを熱ロールによっ
て定着時に架橋する技術などが提案されたが、それでも
耐ホットオフセット性は充分なものではない。即ち、従
来の転相乳化法で作製したトナーは、耐ホットオフセッ
ト性が不充分であるという欠点がある。
【0017】従って、前述した如き従来技術に従う限
り、帯電安定性や環境安定性といった問題がなく、粒子
の小粒径化が容易で、かつ、熱定着特性、特に、低温定
着性と耐ホットオフセット性がともに優れたトナーを製
造することはできない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、帯電安定性や環境安定性に優れ、粒子の小
粒径化も容易で、かつ、熱定着特性、特に、低温定着性
と耐ホットオフセット性に優れるトナーを提供すること
である。とりわけ、従来の転相乳化法において、最も解
決すべき課題である耐ホットオフセット性を改良して、
定着温度巾領域の広い粉体トナーを提供しようとするも
のである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の重量平均分
子量を有する高分子量樹脂、特定の重量平均分子量を有
する低分子量樹脂及び架橋剤とを樹脂成分として含有す
る粒子の液媒体分散液を作製した後、好ましくは、転相
乳化法により粒子の水性媒体分散液を作製した後に、粒
子内で架橋化反応を温和な条件下で遂行できる技術を見
出すに及んで、低温定着性を保持して耐ホットオフセッ
ト性を顕著に向上することができ、課題を解決するに至
った。
【0020】即ち、本発明の具体的手段は、少なくとも
一分子平均1を越える架橋性官能基を有する重量平均分
子量が50,000〜400,000なる範囲の樹脂
と、重量平均分子量が5,000以上で50,000未
満の樹脂と、前記樹脂の架橋剤とを樹脂成分として、そ
の中に着色剤を含有した粒子の液媒体分散液を作製した
後、該樹脂成分の一部を架橋させて結着用樹脂とし、次
いで、得られた一部が架橋された粒子を液媒体から分離
し乾燥する粉体トナーの製造方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】次に本発明を詳細に説明する。本
発明は、架橋剤による架橋を、定着時に行うのではな
く、トナー粒子液媒体分散液の状態で行うこと、及び、
特定の重量平均分子量を有する高分子量樹脂と特定の重
量平均分子量を有する低分子量樹脂とを併用することに
最大の特徴がある。
【0022】本発明の製造方法は、基本的には次の工程
から成る。 1)少なくとも一分子平均1を越える架橋性官能基を有
する重量平均分子量が50,000〜400,000な
る範囲の樹脂と、重量平均分子量が5,000以上で5
0,000未満の樹脂と、前記樹脂の架橋剤とを樹脂成
分として、その中に着色剤を含有した粒子の液媒体分散
液を作製する工程。 2)液媒体に分散した粒子中の樹脂成分の一部を架橋す
る工程。 3)次いで、一部が架橋された粒子を液媒体から分離し
乾燥する工程。
【0023】本発明においては、以下、少なくとも一分
子平均1を越える架橋性官能基を有する重量平均分子量
が50,000〜400,000なる範囲の樹脂を、高
分子量樹脂(A1)と称し、重量平均分子量が5,00
0以上で50,000未満の樹脂を、低分子量樹脂(A
2)と称し、及び、高分子量樹脂(A1)と低分子量樹
脂(A2)とを混合したものを混合樹脂(A)と称する
こととする。
【0024】本発明において、粒子の液媒体分散液を作
製する第一の工程は、具体的には、例えば、次の様な方
法が採用できる。
【0025】(イ)中和により水分散性となりうる高分
子量樹脂(A1)と、低分子量樹脂(A2)との混合樹
脂(A)と、前記混合樹脂(A)の架橋剤(B)と、着
色剤(C)と、有機溶剤(D)と、前記混合樹脂(A)
を水分散性とするに足る中和剤(E)とを含む混合物
を、水性媒体中に転相乳化する方法。
【0026】(ロ)前記混合樹脂(A)、架橋剤および
着色剤からなる有機溶剤液を、該混合樹脂を溶解しない
貧溶媒中に分散して粒子を作製する方法。
【0027】(ハ)ラジカル重合性単量体と架橋剤との
混合体を、着色剤が分散した水性媒体中で、高分子量樹
脂(A1)と低分子量樹脂(A2)とが生成するような
条件で懸濁重合または乳化重合する方法。
【0028】(ニ)前記混合樹脂(A)、架橋剤および
着色剤からなる有機溶剤液を、界面活性剤およびまたは
保護コロイドを使用して水性媒体中に分散する方法。
【0029】前記(イ)〜(ニ)の方法の中でも、転相
乳化法に関する(イ)及び(ニ)の方法が、粒子を容易
に形成出来る点で好ましい。とりわけ、新たな洗浄工程
を別途設ける必要がなく、或いは比較的簡便・短時間の
洗浄で済む点で、そして帯電安定性や環境安定性におい
て問題が小さい点で、最初の(イ)の方法が本発明にお
いては好ましいので、その構成を中心に、以下詳細に説
明する。
【0030】(イ)の方法において、高分子量樹脂(A
1)、低分子量樹脂(A2)および架橋剤(B)の関連
を、より詳細に述べる。
【0031】高分子量樹脂(A1)は、架橋を行うため
に、一分子平均1を越える、好ましくは、一分子平均2
以上の架橋性官能基(a1)を有している必要がある。
さらに、好ましい方法である転相乳化法により粒子を作
製するためには、中和により親水性を増す官能基(a
2)を併有しているものが好ましい。特に、官能基(a
1)及び官能基(a2)が共にカルボキシル基である場
合が最も好ましい。
【0032】低分子量樹脂(A2)は、架橋性官能基お
よび中和により親水性を増す官能基を、供に有している
もの、供に有していないもの、および、いずれか一方を
有しているもののいずれであっても差し支えない。中和
により親水性を増す官能基を有していない場合には、低
分子量樹脂(A2)は、中和することにより水分散性と
なりうる高分子量樹脂(A1)と混合して転相乳化され
ることにより、カプセル化されて粒子内に取り込まれ
る。
【0033】高分子量樹脂(A1)と組み合わせる低分
子量樹脂(A2)として、架橋性官能基および中和によ
り親水性を増す官能基を供に有しているもの、或いは架
橋性官能基のみを有しているものを用いた場合には、架
橋性官能基および中和により親水性を増す官能基を供に
有していないものを用いた場合よりも、より耐ホットオ
フセット温度をより高めることができる。
【0034】しかしながら、良好に転相乳化をするため
には、特に、低分子量樹脂(A2)の割合を多く使用し
て転相乳化をする場合には、低分子量樹脂(A2)も中
和により親水性を増す官能基を有しているものが好まし
い。この時、低分子量樹脂(A2)が有する中和により
親水性を増す官能基は、高分子量樹脂(A1)が有する
中和により親水性を増す官能基(a2)と極性が同じで
ある必要がある。さらには、同一の官能基が好ましい。
【0035】低分子量樹脂(A2)は、架橋性官能基を
有していなくとも差し支えないが、有する場合には、高
分子量樹脂(A1)が有する架橋性官能基(a1)と同
一のものが好ましい。
【0036】架橋剤(B)は、高分子量樹脂(A1)が
有する架橋性官能基と反応しうる架橋剤と、及び、低分
子量樹脂(A2)が架橋性官能基を有している場合に
は、低分子量樹脂(A2)が有する架橋性官能基と反応
しうる架橋剤とが、別種で有っても差し支えはないが、
同一のものであるのが好ましい。さらには、高分子量樹
脂(A1)と低分子量樹脂(A2)の架橋性官能基が同
じものであって、かつ、架橋剤(B)も一種類である場
合が最も好ましい。
【0037】即ち、、高分子量樹脂(A1)の、中和に
より親水性を増す官能基(a1)及び架橋性官能基(a
2)が共にカルボキシル基であって、さらに、低分子量
樹脂(A2)が、中和により親水性を増す官能基(a
1)及び架橋性官能基(a2)として共にカルボキシル
基を有するものが、最も好ましい。
【0038】本発明において、高分子量樹脂と低分子量
樹脂とを併用して、粒子内で架橋する効果は、以下のよ
うなものである。
【0039】低分子量樹脂単一では、架橋しない場合は
勿論、たとえ、粒子内で架橋したとしても、耐ホットオ
フセット性は充分には向上しない。
【0040】また、高分子量樹脂単一では、転相乳化性
の点から、使用できる樹脂の分子量には限界があり、従
って、耐ホットオフセット性にも限界がある。高分子量
樹脂を使用して粒子内で架橋したものは、耐ホットオフ
セット性は向上するものの、低分子量成分がないため
に、低温定着性が不充分となってしまう。
【0041】さらに、高分子量樹脂と低分子量樹脂を併
用するとしても、高分子量樹脂は、転相乳化性の点より
使用できる分子量には限界があり、また、溶液重合では
製造できる分子量に限界がある。従って、耐ホットオフ
セット性は満足のいくものではない。
【0042】一方、本発明のように、高分子量樹脂と低
分子量樹脂を併用して、粒子内で架橋する方法は、高分
子量樹脂のみが架橋性官能基を有している場合は、高分
子量樹脂のみが架橋するので、耐ホットオフセット性が
顕著に向上する。低温定着性は低分子量成分により確保
される。
【0043】さらに、たとえ低分子量樹脂も架橋性官能
基有している場合であっても、単位重量当たりの架橋性
官能基の量がほぼ同じなら(架橋性官能基がカルボキシ
ル基である場合、酸価がほぼ同じならと言い換えること
ができる。)、一分子が有する架橋性官能基の数は、高
分子量樹脂の方が多くなる。そのため、架橋剤による架
橋反応は、優先的に高分子量樹脂との間で進行する。低
分子量樹脂も架橋剤と反応はするが、低温定着性に悪影
響を与える程ではない。
【0044】さらに、高分子量樹脂と低分子量樹脂との
分子量の差が大きい程、また、架橋性官能基の差が大き
い程(架橋性官能基がカルボキシル基である場合、高分
子量樹脂の酸価が低分子量樹脂の酸価より高い程と言い
換えることができる。)、効果は顕著である。
【0045】即ち、高分子量樹脂と低分子量樹脂を併用
して、粒子内で架橋する本発明の方法によって、始め
て、転相乳化法により作製したトナーで、低温定着性を
保持したままで、顕著に耐オフセット性を向上できるよ
うになる。
【0046】ところで、最終的に結着用樹脂となりうる
樹脂は、少なくとも一分子平均1を越える架橋性官能基
を有する樹脂と、当該樹脂の架橋剤とからなり、当該樹
脂の一部を架橋させた樹脂である。低分子量樹脂(A
2)が架橋性官能基を有していない場合には、架橋され
ずに粒子内に取り込まれる。
【0047】本発明における高分子量樹脂(A1)及び
低分子量樹脂(A2)としては、例えば、ポリエステル
樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂およびビニル系
共重合体などが代表的なものとして挙げられる。中で
も、ビニル系共重合体が好ましく、さらに、芳香族ビニ
ル系共重合体がより好ましい。
【0048】高分子量樹脂(A1)と低分子量樹脂(A
2)は、樹脂種が異なったものであっても差し支えはな
いが、転相乳化性、顔料分散性、相溶性等の点から、樹
脂種は同一のものである方が好ましい。特に、共に、芳
香族ビニル系共重合体である場合が最も好ましい。
【0049】本発明におけるビニル系共重合体として
は、芳香族ビニル系モノマーを好ましい成分とし、その
他の共重合性モノマーを共重合して得られる共重合体が
挙げられる。芳香族ビニル系モノマーとしては、例え
ば、スチレン、ビニルトルエンおよびα−メチルスチレ
ンなどが代表的なものである。
【0050】その他の共重合性モノマーとしては、例え
ば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アク
リレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチ
ル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)ア
クリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エ
チルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ス
テアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メ
タ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレー
ト、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレー
ト、ベンジル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)ア
クリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレ
ートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートの如き
(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、安息香酸
ビニル、バーサチック酸ビニルおよびプロピオン酸ビニ
ルの如きビニルエステル類;(メタ)アクリロニトリル
の如き重合性ニトリル類;フッ化ビニル、フッ化ビニリ
デン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピ
レン、クロロトリフルオロエチレンおよび含フッ素アル
キル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類の如きフ
ッ素原子を有するビニルモノマー類;ジエチルアミノエ
チル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート、N−ビニルイミダゾールおよびN−
ビニルカルバゾールの如き第三級アミノ基含有モノマー
類;2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイルオキ
シエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−
ヒドロシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)
ベンゾフェノンおよび1,2,2,6,6−ペンタメチ
ル−4−ピペリジルメタクリレートの如き紫外線吸収性
または酸化防止性を有するモノマー類;N−ビニルピロ
リドン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールア
クリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルア
ミドの如きN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミ
ド類などの官能基含有モノマー類;2−ホスホオキシエ
チル(メタ)アクリレートおよび4−ホスホオキシブチ
ル(メタ)アクリレートの如き燐酸基含有モノマー類;
分子片末端に重合性不飽和基を1個有するマクロモノマ
ー類などが挙げられる。
【0051】重合開始剤としては、公知の過酸化物やア
ゾ系化合物が使用できる。
【0052】ビニル系共重合体において、本発明の目的
に合致するように樹脂の分子量を調整するには、重合開
始剤の量、重合開始剤の種類、重合温度、使用する溶剤
の種類及び量など公知の方法が採用できる。また、ジビ
ニルベンゼンやエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ートなどの多官能性ラジカル重合性モノマー類、2個以
上のパーオキシ基や2個以上のアゾ基を有する多官能性
重合開始剤類、及び、公知の連鎖移動剤類などの使用に
よっても分子量を調整できる。
【0053】本発明で好適に採用しうる転相乳化法での
製造方法においては、高分子量樹脂(A1)及び低分子
量樹脂(A2)は、それぞれ別々に製造して、後に混合
して用いる様にしてもよいし、例えばin−situ法
の様に、予め高分子量樹脂(A1)を調製した系内で、
低分子量樹脂(A2)を形成するモノマー類を反応させ
るか、予め低分子量樹脂(A2)を調製した系内に、低
分子量樹脂(A2)を形成するモノマー類を仕込んで反
応させて、予め仕込んだ樹脂(A2)を樹脂(A1)と
するさらなる高分子量化と後に仕込んだモノマー類の反
応とを同時に行わせて、結果的に、高分子量樹脂(A
1)と低分子量樹脂(A2)との混合物となったものを
用いる様にしても良い。
【0054】ビニル系共重合体に、中和することにより
親水性を増す官能基(a1)および架橋性官能基(a
2)を導入する方法については後述する。
【0055】本発明におけるポリエステル樹脂は、一塩
基酸、二塩基酸、多塩基酸の如きカルボキシル基または
エステル形成性官能基を有する化合物と、ジオール、ポ
リオールの如き水酸基を有する化合物とを適宜選択して
脱水縮合させて得られる。
【0056】二塩基酸または多塩基酸としては、例え
ば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、
テトラヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)
フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、2,6−ナフタ
レンジカルボン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)
ピロメリット酸などの硬質な酸が代表的なものである
が、他に、例えばアジピン酸、(無水)コハク酸、セバ
シン酸、ダイマー酸、(無水)マレイン酸などの軟質な
酸も一部使用することができる。また、例えばジメチロ
ールプロピオン酸、p−ヒドロキシ安息香酸およびε−
カプロラクトンなどの水酸基とカルボキシル基を有する
化合物も使用できる。
【0057】二塩基酸または多塩基酸以外に使用可能な
カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、テレ
フタル酸ジメチルの如き酸の低級アルキルエステル類;
安息香酸、p−ターシャリブチル安息香酸、ロジンおよ
び水添ロジンの如き一塩基酸類;分子末端に1または2
個のカルボキシル基を有するマクロモノマー類;5−ソ
ジウムスルフォイソフタル酸およびそのジメチルエステ
ル類などが挙げられる。
【0058】水酸基を有する化合物としては、例えば、
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水添
ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン
オキサイド付加物および1,4−シクロヘキサンジメタ
ノールなどの硬質なものが代表的なものであるが、他
に、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プ
ロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピ
レングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオー
ル、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオー
ル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコー
ルおよびポリテトラメチレングリコールの如きジオール
類;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロ
ールエタン、ジグリセリン、ペンタエリスリトールおよ
びトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートの如きポリ
オール類;「カージュラ E−10」(シェル化学工業
株式会社製の合成脂肪酸のグリシジルエステル)などの
モノグリシジル化合物類;分子末端に1または2個の水
酸基を有するマクロモノマー類;などが挙げられる。二
塩基酸の一部をジイソシアネート化合物に代えることも
できる。
【0059】本発明におけるポエステル樹脂は、各種変
性ポリエステル樹脂、例えば、ビニルモノマー類をグラ
フトしたビニル変性ポリエステル樹脂、シリコン変性ポ
リエステル樹脂などであってもよい。
【0060】本発明のポリウレタン樹脂は、ポリオール
成分と、ポリイソシアネート成分とを反応させることに
よって製造することができる。
【0061】ポリオール成分としては、ポリエステル樹
脂の製造方法において掲げたジオール成分のほか、ポリ
エステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ
カーボネートジオール、ポリシロキサンジオール等の高
分子ジオール類、必要に応じて、3官能以上のポリオー
ル化合物を使用することもできる。
【0062】ポリイソシアネート成分には、例えば2,
4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイ
ソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシア
ネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレン
ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネー
ト、メタキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添メ
タキシリレンジイソシアネート、粗製4,4’−ジフェ
ニルメタンジイソシアネートの如きジイソシアネート化
合物のほか、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート
の如きポリイソシアネート化合物も使用できる。
【0063】ポリウレタン樹脂の製造は常法に従えばよ
い。例えば、イソシアネート基と反応しない不活性な有
機溶剤中で、室温または40〜100℃程度の温度で付
加反応を行う方法が好ましい。その際、ジブチル錫ジラ
ウレート等の公知の触媒を使用してもよい。
【0064】本発明におけるエポキシ樹脂は、ビスフェ
ノールA型エポキシ樹脂が代表的なものである。また、
ビニルモノマーをグラフトした変性エポキシ樹脂も使用
できる。
【0065】本発明において使用される高分子量樹脂
(A1)、及び、低分子量樹脂(A2)は、中和により
親水性を増す官能基(a1)および少なくとも一分子平
均1を越える架橋性官能基(a2)を有しているのが好
ましく、その種類および導入方法について述べる。
【0066】中和により親水性を増す官能基(a1)と
しては、カチオン性基として、例えばアミノ基、とりわ
け好適には第三級アミノ基が挙げられ、また、アニオン
性基としては、燐酸基、スルホン酸、硫酸基、とりわけ
好適にはカルボキシル基が挙げられる。
【0067】カチオン性基として好ましい第三級アミノ
基を樹脂に導入するには、例えば、ビニル系共重合体の
場合には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレー
ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニ
ルピリジンなどの第三級アミノ基を有するラジカル重合
性モノマーを共重合する方法、グリシジル(メタ)アク
リレートなどのグリシジル基を有する重合性モノマーの
共重合体にジブチルアミンなどの第二級モノアミンを付
加する方法などが挙げられる。
【0068】エポキシ樹脂に導入する場合には、グリシ
ジル基にジブチルアミンなどの第二級モノアミンを付加
する方法が挙げられる。ポリエステル樹脂およびポリウ
レタン樹脂に導入する場合には、トリエタノールアミ
ン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチル
エタノールアミン等の水酸基を有する第三級アミン化合
物を樹脂合成時にアルコール成分の一部とし使用すれば
よい。
【0069】次に、アニオン性基として好ましいカルボ
キシル基を樹脂に導入する方法の例について述べる。
【0070】カルボキシル基を有するビニル系共重合体
は、カルボキシル基を有する重合性モノマーを含有する
重合性モノマー組成物を共重合する方法によって容易に
製造することができる。
【0071】カルボキシル基を有する重合性モノマーと
しては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン
酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モ
ノブチルの如きマレイン酸モノアルキル類、イタコン酸
モノブチルの如きイタコン酸モノアルキル類などが挙げ
られる。
【0072】その他、無水マレイン酸の如き酸無水基を
有する重合性モノマーを共重合して得られる酸無水基含
有共重合体に、ブチルアルコールの如きモノアルコール
を付加する方法、水酸基を有する重合性モノマーを共重
合して得られる水酸基含有ビニル系共重合体に、無水マ
レイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸の如き酸
無水基含有化合物を付加する方法などによってもカルボ
キシル基を導入することができる。
【0073】カルボキシル基を有するポリエステル樹脂
は、一塩基酸、二塩基酸、三官能以上の多塩基酸の如き
カルボキシル基を有する化合物と、ジオール、ポリオー
ルの如き水酸基を有する化合物とを適宜選択して、溶融
法、溶剤法などの公知の方法によって脱水縮合させてポ
リエステル樹脂を製造する際に、カルボキシル基が残存
するように反応すればよい。カルボキシル基は、主に、
ポリエステル樹脂を構成する二塩基酸または多塩基酸な
どに由来する未反応のカルボキシル基である。
【0074】その他にポリエステル樹脂にカルボキシル
基を導入する方法としては、水酸基を有する線状または
分岐ポリエステル樹脂に、例えば無水マレイン酸、無水
フタル酸、無水トリメリット酸の如き酸無水基含有化合
物を付加する方法、水酸基を有するポリエステル樹脂、
好ましくは線状ポリエステル樹脂に、例えば無水ピリメ
リット酸の如きテトラカルボン酸二無水物を反応して、
カルボキシル基を導入すると同時に鎖伸張する方法など
も採用できる。
【0075】さらに、ポリエステル樹脂に、前述した如
きカルボキシル基を有する重合性モノマーを含む重合性
モノマーをグラフト重合する方法によってもカルボキシ
ル基を導入できる。
【0076】カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂
は、カルボキシル基を導入する成分としてのジメチロー
ルプロピオン酸の如きカルボキシル基および水酸基を併
有する化合物を含有するポリオール成分と、ポリイソシ
アネート成分とを反応させることによって、容易に製造
することができる。
【0077】本発明における高分子量樹脂(A1)は、
例えばカルボキシル基等の、中和により親水性を増す官
能基(a1)に加えて、架橋性官能基(a2)を有する
必要がある。低分子量樹脂(A2)は、例えばカルボキ
シル基等の、中和により親水性を増す官能基(a1)、
及び、架橋性官能基(a2)を有するものが好ましい。
【0078】少なくとも一分子平均1を越える架橋性官
能基を有する樹脂は、当該樹脂の一部を架橋させて結着
用樹脂となすための、当該樹脂の架橋剤とを併用して用
いられる。これらは、樹脂の架橋性官能基と、架橋剤の
架橋に関与する官能基とが、相互に化学的に反応し架橋
する様に、各々を選択して用いられる。
【0079】少なくとも一分子平均1を越える架橋性官
能基を有する樹脂が、好適な、中和により親水性を増す
官能基(a1)及び架橋性官能基(a2)を有する、中
和により水分散性となりうる樹脂である場合における、
かかる樹脂中の架橋性官能基と架橋剤に関して、本発明
においては、例えば、次の様な組み合わせが採用でき
る。
【0080】1)架橋性官能基がカルボキシル基である
場合、架橋剤としては、例えばアミノプラスト樹脂、一
分子中にグリシジル基を平均2個以上有する化合物、一
分子中に1,3−ジオキソラン−2−オン−4イル基を
平均2個以上有する化合物、一分子中にカルボジイミド
基を平均2個以上有する化合物、一分子中にオキサゾリ
ン基を平均2個以上有する化合物、および、金属キレー
ト化合物等が挙げられる。
【0081】2)架橋性官能基が水酸基である場合、架
橋剤としては、例えばアミノプラスト樹脂、ポリイソシ
アネート化合物およびブロック化ポリイソシアネート樹
脂等が挙げられる。
【0082】3)架橋性官能基が第三級アミノ基である
場合、架橋剤としては、例えば一分子中にグリシジル基
を平均2個以上有する化合物および一分子中に1,3−
ジオキソラン−2−オン−4−イル基を平均2個以上有
する化合物等が挙げられる。 4)架橋性官能基がグリシジル基または1,3−ジオキ
ソラン−2−オン−4−イル基の場合、架橋剤として
は、例えば一分子中にカルボキシル基を平均2個以上有
する化合物、ポリアミン化合物およびポリメルカプト化
合物等が挙げられる。
【0083】次いで、架橋性官能基を樹脂に導入する方
法について述べる。架橋性官能基がカルボキシル基およ
び第三級アミノ基である場合には、中和により親水性を
増す官能基を導入する項で述べたのと全く同じ方法でよ
い。
【0084】架橋性官能基として水酸基を有するビニル
系共重合体は、水酸基を有する重合性モノマーを併用し
て共重合することにより容易に製造することができる。
水酸基を有する重合性モノマーとしては、例えば、2−
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキ
シプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチ
ル(メタ)アクリレート、「プラクセル FM−2」や
「プラクセル FA−2」(ダイセル化学工業株式会社
製)に代表されるラクトン化合物を付加した(メタ)ア
クリル系モノマー類;および、ポリエチレングリコール
モノ(メタ)アクリレートモノマー類、ポリプロピレン
グリコールモノ(メタ)アクリレートモノマー類、ヒド
ロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニル
エーテルなどが代表的なものとして挙げられる。
【0085】架橋性官能基として水酸基を有するポリエ
ステル樹脂は、ポリエステル樹脂の脱水縮合反応におい
て、公知の方法に従って、水酸基が残存するように反応
させることによって容易に製造することができる。
【0086】架橋性官能基としてグリシジル基を有する
ビニル系共重合体は、グリシジル(メタ)アクリレート
などのグリシジル基を有する重合性モノマーを併用して
共重合することにより容易に製造することができる。
【0087】架橋性官能基として1,3−ジオキソラン
−2−オン−4−イル基を有するビニル系共重合体は、
1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イル基を有する
重合性モノマーを併用して共重合することにより容易に
製造することができる。1,3−ジオキソラン−2−オ
ン−4−イル基を有する重合性モノマーとしては、例え
ば、1,3−ジオキソラン−2−オン−4−イルメチル
(メタ)アクリレート,1,3−ジオキソラン−2−オ
ン−4−イルメチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0088】本発明においては、樹脂の合成、取り扱
い、設計の容易さ、及び、高分子量化または架橋反応の
容易さから、中和により親水性を増す官能基(a1)お
よび架橋性官能基(a2)が共にカルボキシル基であっ
て、架橋剤(B)が一分子平均2個以上のグリシジル基
を有する化合物であるものが好ましい。
【0089】好ましい架橋剤(B)としての一分子平均
2個以上のグリシジル基を有する化合物の代表的なもの
のみを例示すれば、例えば、ビスフェノールA型エポキ
シ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフ
ェノールA型エポキシ樹脂などの如きフェノール類のグ
リシジルエーテル類;ネオペンチルグリコールジグリシ
ジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリ
セリントリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコ
ールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ
グリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエー
テルの如き各種グリコールやポリオールのグリシジルエ
ーテル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸
ジグリシジルエステル等の如きグリシジルエステル類;
グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基を
有する重合性モノマーを共重合したビニル系共重合体;
エポキシ化ポリブタジエン;などが挙げられる。
【0090】ところで、本発明においては、高分子量樹
脂(A1)と架橋剤(B)、又は、高分子量樹脂(A
1)及び低分子量樹脂(A2)と架橋剤(B)との反応
は、液媒体中、好ましくは、水性媒体中で行われるの
で、水の沸点以下の温度が好ましく、また、粒子の融着
を避けるために、粒子のガラス転移温度よりも余り高く
ない温度で行うのが好ましい。
【0091】かかる比較的低温の温和な条件で反応する
のに好ましい、一分子平均2個以上のグリシジル基を有
する化合物としては、例えばジグリシジルアニリン、ト
リグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメ
タアミノフェノール、テトラグリシジルアミノジフェニ
ルメタンなどのグリシジルアミン化合物が好ましく、さ
らに、下記一般式(1)及び(2)で表されるグリシジ
ル基を有するグリシジルアミン化合物が最も好ましい。
【0092】
【化2】
【0093】(但し、式中のR1およびR2は、置換基を
有するまたは有しない芳香環または脂環、水素原子、ま
たは、炭素数が1〜4のアルキル基を表すものとし、お
よび、R3は炭素数が1〜4のアルキル基を表すものと
する。)
【0094】かかる最も好ましい架橋剤の例としては、
例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−
キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジ
ルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジ
ルベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−α−フェニ
ルエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジ
ルイソフォロンジアミンなどが代表的なものとして挙げ
られる。
【0095】勿論、本発明におけるグリシジル基含有化
合物としては、これらのみに限定されるものではない。
【0096】架橋剤が有するグリシジル基は、一分子中
に平均2〜6個有しているものが好ましく、さらには、
2〜4個有しているものがより好ましい。グリシジル基
が2個よりも少ないと、高分子量化または架橋化反応が
充分には進まなく、また、6個よりも多いと、部分的に
架橋密度が高過ぎるものが生成してしまうので、共に好
ましくない。
【0097】高分子量樹脂(A1)の、中和により親水
性を増す官能基(a1)および架橋性官能基(a2)が
共にカルボキシル基である場合、カルボキシル基の量
は、酸価(樹脂固形分1gを中和するのに必要なKOH
のmg量で表す。以下、同様に表す。)が10〜150
mg(KOH)/gなる範囲が好ましい。
【0098】酸価が10より少ないと、水性媒体への転
相乳化性が低下し、さらに、高分子量化または架橋反応
が充分に進まず、また、酸価が150よりも余りに高い
と、トナーの吸湿性が高くなってしまうので、共に好ま
しくない。
【0099】低分子量樹脂(A2)は、中和により親水
性を増す官能基(a1)を有しているのが好ましく、ま
た、架橋性官能基(a2)を有していても差し支えな
く、共にカルボキシル基である場合、カルボキシル基の
量は、酸価が10〜150なる範囲が好ましい。
【0100】さらに、高分子量樹脂の架橋を優先的にす
すめるためには、高分子量樹脂(A1)の酸価が、低分
子量樹脂(A2)の酸価より、0〜100なる範囲で高
いものが好ましい。
【0101】高分子量樹脂(A1)と低分子量樹脂(A
2)の使用割合は、樹脂固形分比で、5/95〜90/
10なる範囲が適当で、10/90〜60/40なる範
囲がより好ましい。低分子量樹脂(A2)が10重量%
よりも少ないと、定着開始温度を低くすることができ
ず、また、低分子量樹脂(A2)が95重量%よりも多
いと、架橋を進めても耐ホットオフセット温度を高くす
ることができず、ともに好ましくない。
【0102】高分子量樹脂(A1)の重量平均分子量
(以下、分子量はポリスチレン換算ゲルパーミションク
ロマトグラフィーで測定した値で表す。)は、50,0
00〜400,000なる範囲が好ましく、60,00
0〜200,000なる範囲がより好ましい。重量平均
分子量が50,000よりもあまりに低いと、架橋して
も耐ホットオフセット温度を十分に高くすることができ
ず、また、400,000より高いものを溶液重合で製
造するのは困難なので、共に好ましくない。
【0103】低分子量樹脂(A2)の重量平均分子量
は、5,000以上で50,000未満なる範囲が好ま
しく、20,000〜40,000なる範囲がより好ま
しい。重量平均分子量が5,000よりも低いと、たと
え高分子量成分と併用して架橋したとしても、耐ホット
オフセット温度が向上せず、また、50,000よりも
高いと低温定着性が確保できず、共に好ましくない。
【0104】また、高分子樹脂(A1)の重量平均分子
量は、低分子樹脂(A2)の重量平均分子量よりも1
0,000以上高いものが好ましく、さらに、20,00
0以上高いものがより好ましい。差が10,000より
も小さい場合は、たとえ架橋反応を行ったとしても、低
温定着性と耐ホットオフセット性を両立することが困難
となるので、好ましくない。
【0105】高分子量樹脂(A1)は、DSC(示差走
査熱量計)で測定したガラス転移温度(以下、ガラス転
移温度はDSCで測定した値で表す。)が、40〜80
℃の範囲にあるものが好ましい。
【0106】低分子量樹脂(A2)の場合は、高分子量
樹脂(A1)のガラス転移温度及び使用割合によって変
わるが、架橋後のトナー粒子のガラス転移温度が40〜
80℃を確保できる範囲内で、低分子量樹脂(A2)の
ガラス転移温度はいくらであっても差し支えない。概
ね、20〜60℃なる範囲が適当である。
【0107】少なくとも一分子中平均1を越える架橋性
官能基を有する樹脂とその架橋剤との割合は、特に制限
されるものではないが、前者として、架橋性官能基(a
1)及び中和により親水性を増す官能基(a2)がいず
れもカルボキシル基である樹脂を例にとれば、前者(a
1)と(a2)との合計のカルボキシル基1当量に対し
て、グリシジル基が0.001〜0.5当量なる範囲内
の量でもってグリシジル基含有化合物を用いるのが好ま
しく、さらには、0.01〜0.3当量なる範囲の量が
より好ましい。
【0108】低分子量樹脂(A2)も架橋性官能基を有
する場合には、架橋剤の使用割合は、高分子量樹脂(A
1)の架橋性官能基と低分子量樹脂(A2)の架橋性官
能基との合計に対して、前述した如き範囲の割合でもっ
て用いるのが好ましい。
【0109】グリシジル基の量が0.001当量よりも
少ないと、高分子量化または架橋が不十分になり、ま
た、0.5当量よりも余りに多いと、架橋が進み過ぎて
トナーの定着性が低下してしまうので、共に好ましくな
い。
【0110】本発明において使用される着色剤(C)
は、従来より、トナー用材料として用いられてきたよう
な、染料、顔料などがいずれも使用できる。特に代表的
なもののみを例示すれば、亜鉛華、黄色酸化鉄、ハンザ
イエロー、ジスアゾイエロー、キノリンイエロー、パー
マネントイエロー、パーマネントレッド、ベンガラ、リ
ソールレッド、ピラゾロンレッド、レーキレドC、レー
キレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアント
カーミン3B、紺青、フタロシアニンブルー、無金属フ
タロシアニン、酸価チタン、カーボンブラックまたは磁
性粉の如き各種顔料類ないしは油溶性染料などである。
【0111】また、これらの顔料は、機能性を向上する
ために、予め樹脂処理やカップリング剤処理したものも
使用できる。さらに、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バ
リウム、クレーまたはカオリンなどの体質顔料も、前記
した様な着色剤と併用して使用しても差し支えない。
【0112】ここまで、本発明におけるトナーを構成す
る材料について述べてきたのであるが、次に、本発明の
第一の製造工程である、着色剤を含有した粒子の液媒体
分散液を作製する工程において、好ましい方法である、
前記中和により水分散性となりうる高分子量樹脂(A
1)と、低分子量樹脂、好ましくは、前記中和により水
分散性となりうる低分子量樹脂(A2)と、架橋剤
(B)と、着色剤(C)と、有機溶剤(D)と、前記高
分子量樹脂(A1)、または、前記高分子量樹脂(A
1)と前記低分子量樹脂(A2)との混合樹脂(A)を
水分散性とするに足る中和剤(E)とを含む混合物を、
水性媒体中に転相乳化する方法について述べる。
【0113】まず、前記樹脂(A1)、前記樹脂(A
2)および架橋剤(B)のいずれか1種以上の有機溶剤
(D)の溶液と、着色剤(C)を公知の方法で充分に混
練し、次いで、前記樹脂(A1)、前記樹脂(A2)お
よび架橋剤(B)を所定の割合になるように配合し、水
性媒体中に転相乳化して分散粒子を作製する。この時、
着色剤(C)は、別の樹脂で分散した後に配合してもよ
い。
【0114】有機溶剤(D)としては、例えばトルエ
ン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサ
ン、n−ヘプタンの如き各種炭化水素類;メタノール、
イソプロパノール、n−プロパノール、エタノール、n
−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、
t−ブタノールなどの如きアルコール類;プロピレング
リコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモ
ノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロ
ピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチル
エーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エ
チレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコ
ールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモ
ノ−n−ブチルエーテル等の如きエーテルアルコール
類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル
ケトンの如き各種ケトン類;酢酸ブチル、酢酸エチル、
酢酸イソプロピルの如き各種エステル類;プロピレング
リコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリ
コールモノエチルエーテルアセテートの如き各種エーテ
ルエステル類;テトラヒドロフランの如きエーテル類;
塩化メチレンの如き含ハロゲン炭化水素類;などが挙げ
られる。
【0115】中でも好ましくは、後述する如き工程にお
いて容易に脱溶剤され得る、例えばアセトン、メチルエ
チルケトン、酢酸エチル、イソプロパノール、n−プロ
パノールなどの、いわゆる低沸点溶剤の使用が適切であ
る。勿論、2種以上の溶剤を併用してもよい。
【0116】高分子量樹脂(A1)及び低分子量樹脂
(A2)の合成および溶解に使用される溶剤は、水性媒
体中に転相乳化する時に使用する溶剤(D)と異なって
いても差し支えはないが、工程を簡素化するために、同
一の溶剤であるのが好ましい。
【0117】水性媒体中に転相乳化をするには、乳化剤
や、保護コロイドなどの分散安定剤を使用して水性媒体
中に分散してもよいが、高分子量樹脂(A1)に、好ま
しくは高分子量樹脂(A1)と低分子量樹脂(A2)と
に中和により親水性を増す官能基を付与して、塩構造を
形成して水性媒体中に分散する方法が好ましい。
【0118】中でも、中和により親水性を増す官能基で
ある、カルボキシル基を有する樹脂を、塩基性化合物で
もって中和して樹脂が水性媒体中に安定的に分散しうる
程度の親水性を付与する方法が、帯電安定性や環境安定
性に問題が少ないし、しかも新たな洗浄工程を別途設け
る必要がない、或いは比較的簡便・短時間の洗浄で済む
点で、好ましい。
【0119】高分子量樹脂(A1)及び低分子量樹脂
(A2)が、中和してもしなくても水分散性を有さない
樹脂を用いる場合は、乳化剤や、保護コロイドなどの分
散安定剤が必須成分となり、例えば新たな洗浄工程を別
途設けたりすることが必要となる。
【0120】高分子量樹脂(A1)の一例である、中和
により親水性を増す官能基(a1)及び少なくとも一分
子平均1を越える架橋性官能基(a2)がいずれもカル
ボキシル基である、中和により水分散性となりうるカル
ボキシル基を有する樹脂と、低分子量樹脂、好ましく
は、カルボキシル基を有する低分子量樹脂(A2)と、
架橋剤(B)と、着色剤(C)と、有機溶剤(D)との
混合物を転相乳化により水性媒体に分散する方法として
は、例えば、次の様な方法が適当である。
【0121】1)該混合物に中和剤(E)を加えてか
ら、それを水性媒体中に分散する。 2)該混合物に中和剤(E)を加えてから、それに水性
媒体を添加する。 3)該混合物を、中和剤(E)を含有する水性媒体中に
分散する。 4)該混合物に、中和剤(E)を含有する水性媒体を添
加する。
【0122】中和により親水性を増す官能基(a1)を
有する樹脂は、前記官能基(a1)と逆極性の中和剤
(E)の必要量で中和することにより、塩構造を形成
し、乳化剤や分散安定剤等の用いずとも、水性媒体中に
分散する樹脂となる(この樹脂が、自己分散性樹脂であ
る。)。
【0123】前記1)〜4)の方法のうち、2)の方法
が、最終的に得られる、一部架橋された着色剤を包含す
る粒子の粒子径分布がより狭いものとすることが出来る
点で好ましい。
【0124】塩構造を形成するために、ここで使用され
る中和剤(E)としては、高分子量樹脂(A1)が有す
る中和により親水性を増す官能基(a1)が酸基である
場合には、塩基性化合物が、同官能基(a1)が塩基基
である場合には、酸性化合物が用いられる。
【0125】使用できる塩基性化合物として、代表的な
もののみを例示すれば、例えば、アンモニア、トリエチ
ルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミ
ンなどの如き揮発性アミン類;水酸化ナトリウム、水酸
化カリウムなどの如き無機塩基類;などが挙げられる。
酸性化合物としては、例えば蟻酸、酢酸、トルエンスル
ホン酸等の有機酸類や、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸類
が挙げられる。
【0126】低分子量樹脂(A2)にも、中和により親
水性を増す官能基(a1)としての酸基を付与した場合
には、高分子量樹脂(A1)と同様に扱えばよい。
【0127】水性媒体に転相乳化をする際に、トナーの
性能や後工程等に悪影響を与えない範囲でもって、界面
活性剤や、保護コロイドなどの分散剤を使用しても差し
支えない。
【0128】また、水性媒体に転相乳化をする際の撹拌
シェアーは、該混合体が均質に撹拌される程度でもって
シェアーを掛けていれば、何ら特別な手段を講じる必要
はないが、場合によっては、ホモジナイザーなどの高シ
ェアー分散や、超音波などを利用しても差し支えはな
い。
【0129】ところで、本発明における水性媒体とは、
水を主成分として、その他必要に応じて、水溶性溶剤、
分散安定剤、中和剤、および、その他の添加剤などを含
有したものを表す。
【0130】トナーの製造において重要な粒子径のコン
トロールは、例えば官能基(a1)としてカルボキシル
基を用いた場合の本発明の好ましい方法においては、主
に、カルボキシル基を中和する塩基性化合物の量によっ
てコントロールされる。塩基性化合物による中和量を、
カルボキシル基の5〜100モル%なる範囲内、好まし
くは、8〜50モル%なる範囲内で変化させることによ
って、サブミクロン(1μm未満)から約30μmまで
の粒径のものを、容易に、かつ、任意に得ることができ
る。
【0131】この粒子径のコントロールの容易さが、転
相乳化法によるトナーの製法の特長のひとつであり、高
解像度トナーとして最近考えられている5μmといった
レベル、あるいは将来要求されるそれ以下の粒子に、
即、対応が可能である。
【0132】粒子の液媒体分散液は、本発明の第二工程
として、架橋反応を行う。本発明の架橋は、形成された
粒子内で起こる。この時の反応は、未反応の状態で粒子
内に均一に分散した、少なくとも一分子平均1を越える
架橋性官能基を有する樹脂とそれの架橋剤、との間で起
こる。
【0133】液媒体が水性媒体である場合は、架橋反応
を温和に行えるので好ましい。粒子分散液の液媒体が水
性媒体で、かつ少なくとも一分子平均1を越える架橋性
官能基を有する樹脂が、前記官能基(a1)が中和剤で
中和されて塩構造を有するものである場合、架橋に関与
するのは、実質的にもう一方の前記官能基(a2)のみ
であり、架橋により、粒子分散液の分散安定性は確保で
きる。
【0134】架橋反応は、水性媒体の沸点以下の温度で
あって、かつ、粒子の融着を避けるために粒子のガラス
転移温度よりも余り高くない温度で行うのが好ましく、
概ね、40〜100℃の範囲、より好ましくは、50〜
90℃の範囲の温度で行うのがよい。架橋時間は、架橋
反応が完結するのに要する時間であればよく、例えば3
0分〜24時間、好ましくは、1〜10時間である。具
体的には、粒子分散液を所定温度で架橋反応が完結する
のに要する時間保持する方法が挙げられる。
【0135】高分子量樹脂(A1)、または、高分子量
樹脂(A1)と低分子量樹脂(A2)として、少なくと
も一分子平均1を越える架橋性官能基(a2)を有する
ものを用い、かつ当該混合樹脂(A)の架橋剤(B)
が、少なくとも一分子平均2個以上のグリシジル基を有
する化合物を用いる場合に代表される、カルボキシル基
とグリシジル基の反応を、比較的低温で温和な条件で反
応するためには、前述した如きグリシジルアミン化合物
を使用するのが好ましい。
【0136】また、グリシジルアミン化合物、及び、そ
の他のグリシジル基含有化合物においても、2−メチル
イミダゾールなどの公知の触媒の使用や、グリシジル基
の一部にジブチルアミンなどの第二級モノアミン等を付
加して、グリシジル基含有化合物に自己触媒能を付与す
る方法なども採用できる。
【0137】架橋反応は、粒子の水性媒体分散液を作製
後、必要に応じて各種後処理を行った後に、粒子を水性
媒体から分離して乾燥する全工程において、粒子の水性
媒体分散液を作製後、かつ、粒子を水性媒体から分離し
て乾燥する工程前の任意の段階において行えばよいので
あるが、粒子の融着を防止するために、脱溶剤を行った
後に実施するのが好ましい。
【0138】尚、本発明の、好ましい方法としては、中
和により親水性を増す官能基(a1)及び少なくとも一
分子平均1を越える架橋性官能基(a2)を有する、中
和により水分散性となりうる高分子量樹脂(A1)と、
中和により親水性を増す官能基(a1)及び少なくとも
一分子平均1を越える架橋性官能基(a2)を有する、
中和により水分散性となりうる低分子量樹脂(A2)
と、前記樹脂(A1)及び前記樹脂(A2)の架橋剤
(B)と、着色剤(C)と、有機溶剤(D)と、前記樹
脂(A1)及び前記樹脂(A2)を水分散性とするに足
る中和剤(E)とを含む混合物を、水性媒体中に転相乳
化をして得られる、少なくとも一分子平均1を越える架
橋性官能基を有する樹脂と前記樹脂の架橋剤とを樹脂成
分として、その中に着色剤が分散された粒子の水性媒体
分散液を作製した後、該樹脂成分の一部を架橋させて結
着用樹脂とし、次いで、得られた一部が架橋された粒子
を水性媒体から分離し乾燥する粉体トナーの製造方法で
ある。
【0139】さらに、樹脂(A1)及び樹脂(A2)
の、中和により親水性を増す官能基(a1)及び少なく
とも一分子平均1を越える架橋性官能基(a2)が共に
カルボキシル基であり、樹脂(A1)及び樹脂(A2)
の架橋剤(B)が少なくとも一分子平均2個以上のグリ
シジル基を有する化合物である製造方法がより好まし
く、さらに、少なくとも一分子平均2個以上のグリシジ
ル基を有する化合物が、グリシジルアミン、とりわけ、
下記一般式(1)または(2)で表されるグリシジル基
を一分子平均2〜4個有するグリシジルアミンである製
造方法が最も好ましい。
【0140】
【化3】
【0141】(但し、式中のR1およびR2は、置換基を
有するまたは有しない芳香環または脂環、水素原子、ま
たは、炭素数が1〜4のアルキル基を表すものとし、お
よび、R3は炭素数が1〜4のアルキル基を表すものと
する。)
【0142】上記した架橋工程の前または後に必要に応
じて行われる後処理工程としては、例えば、減圧蒸留な
どによる脱溶剤工程、濾過及び水洗工程、中和により親
水性となりうる官能基(a1)がそれと逆極性の中和剤
(E)で中和されて形成された塩構造にされた官能基
を、当該官能基(a1)と同極性の酸又は塩基で逆中和
する工程(例えば、塩基でもって中和されたカルボキシ
ル基を酸でもってカルボキシル基に戻す工程)、などが
行われる。
【0143】中でも、トナーの耐湿性を向上して帯電安
定性や、環境安定性を向上するため、逆中和する工程
(例えば、塩基でもって中和されたカルボキシル基を酸
でもってカルボキシル基に戻す工程)は、実施した方が
好ましい。生成した塩は水洗によって容易に除去でき
る。
【0144】上記工程として、例えば官能基(a1)が
カルボキシル基の場合には、塩基性化合物で中和されて
形成された塩構造にされた官能基は、酸性化合物を加え
れば元のカルボキシル基とすることができる。
【0145】架橋工程後、さらには、必要に応じて実施
された後処理工程後に、最後に、粒子は水性媒体から分
離し乾燥され粉末の球形トナー粒子が得られる。乾燥は
公知の方法によればよく、例えば、温風乾燥、スプレー
ドライ、凍結乾燥などが採用できる。
【0146】本発明において、結着用樹脂が架橋されて
いることとは、テトラヒドロフランを使用したソックス
レー抽出24時間後の不溶解成分が0.1重量%以上の
値を有すること(樹脂分のみでの不溶解分、以下同様に
表す。)、および/または、テトラヒドロフランに可溶
な成分における分子量が、架橋剤にて架橋されたことに
より、使用した高分子量樹脂と低分子量樹脂を同一割合
に混合して測定した重量平均分子量よりは、少なくとも
高くなっていることで表す。
【0147】かくして得られた球形トナー粒子は、40
〜80℃の範囲のガラス転移温度を有するものが好まし
い。また、テトラヒドロフランを使用したソックスレー
抽出による不溶解成分が0.5〜70重量%の範囲にあ
るのが好ましい。
【0148】さらに、分子量においては、テトラヒドロ
フランに可溶な成分における重量平均分子量が、使用し
た高分子量樹脂と低分子量樹脂を同一割合に混合して測
定した重量平均分子量よりは、少なくとも高くなってい
る必要がある。
【0149】特に好ましいのは、10〜150mg(K
OH)/gなるカルボキシル基に基ずく酸価と、50,
000〜400,000なる範囲の重量平均分子量と、
40〜80℃なる範囲のガラス転移温度とを有する高分
子量樹脂と、10〜150mg(KOH)/gなるカル
ボキシル基に基ずく酸価と、5,000以上50,00
0未満なる範囲の重量平均分子量と、20〜60℃なる
範囲のガラス転移温度とを有する低分子量樹脂と、少な
くとも一分子平均2個以上のグルシジル基を有する化合
物とを用いて転相乳化及び架橋を行ってトナー粒子を得
て、トナー粒子中の結着用樹脂が、40〜80℃なる範
囲のガラス転移温度を有し、テトラヒドロフランを使用
したソックスレー抽出による不溶解成分が0.5〜70
重量%の範囲にあり、及び、重量平均分子量が、使用し
た高分子量樹脂と低分子量樹脂を同一割合に混合して測
定した値よりは、少なくとも高くなっている様なものと
することである。
【0150】かくして得られた粉末トナー粒子は、必要
に応じて、シリカなどを外添して最終の製品となる。
【0151】この様にして得られた粉体トナーは、静電
荷像現像用粉体トナーとして用いることが出来る。着色
剤として磁性粉を主体に含む粉体トナーは、そのままで
静電荷像現像用磁性一成分型粉体トナーとして、磁性粉
以外の着色剤のみ含む又はそれを主体に含む粉体トナー
は、静電荷像現像用非磁性一成分型粉体トナーとして用
いることが出来るし、キャリアとこれら各々粉体トナー
とを組み合わせて静電荷像現像用二成分型現像剤として
用いることも出来る。
【0152】
【実施例】次に、本発明を比較例及び実施例により、一
層、具体的に説明する。以下において、部および%はす
べて重量基準であるものとする。
【0153】<参考例> 以下に、使用した樹脂および
架橋剤の合成例を示す。
【0154】(参考例1)カルボキシル基を有する高分
子量芳香族ビニル系共重合体の合成例ビニルモノマー滴
下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置および還流
冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチル
ケトンの430部を仕込んでから、下記の重合性モノマ
ーおよび重合開始剤からなる混合液を、80℃にて3時
間を要して滴下した。
【0155】 スチレン 633部 n−ブチルアクリレート 290部 アクリル酸 77部 「パーブチル O」 4部 (日本油脂株式会社製のラジカル重合開始剤ターシャリ
ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート)
【0156】次いで、滴下を終了してから3時間後およ
び6時間後に、各々「パーブチルO」の1部を添加し、
更に、12時間後、15時間後及び18時間後に各々
「パーブチル O」の2部を添加した。最後に「パーブ
チル O」を滴下してから、更に、80℃にて反応を3
時間継続して反応を終了した。最後に、メチルエチルケ
トンにて不揮発分が50%になるように調整して、樹脂
溶液を得た。以下、この樹脂を、高分子量樹脂(A1−
1)の溶液と略記する。
【0157】(参考例2)カルボキシル基を有する高分
子量芳香族ビニル系共重合体の合成例 参考例1と同様にして、メチルエチルケトンの250部
を仕込んでから、下記の重合性モノマーおよび重合開始
剤からなる混合液を、80℃にて1時間を要して滴下し
た。
【0158】 スチレン 648部 n−ブチルアクリレート 262部 アクリル酸 90部 「パーブチル O」 1部
【0159】次いで、滴下を終了してから3時間後、6
時間後に、各々「パーブチル O」の0.3部を添加
し、更に、12時間後、15時間後および18時間後に
各々「パーブチル O」の0.5部を添加した。滴下を
終了してから9時間後には、メチルエチルケトンの30
0部を添加した。最後に「パーブチル O」を添加して
から、更に、80℃にて反応を3時間継続して反応を終
了した。最後に、メチルエチルケトンにて不揮発分が4
0%になるように調整して、樹脂溶液を得た。以下、こ
の樹脂を、高分子量樹脂(A1−2)の溶液と略記す
る。
【0160】(参考例3)カルボキシル基を有しない低
分子量芳香族ビニル系共重合体の合成例 参考例1と同様にして、メチルエチルケトンの1,00
0部を仕込んでから、下記の重合性モノマーおよび重合
開始剤からなる混合液を、80℃にて3時間を要して滴
下した。
【0161】 スチレン 600部 メチルメタクリレート 105部 n−ブチルアクリレート 295部 「パーブチル O」 30部
【0162】次いで、滴下を終了してから3時間後およ
び6時間後に、各々「パーブチルO」の5部を添加して
から、更に、80℃にて反応を3時間継続して反応を終
了した。最後に、メチルエチルケトンにて不揮発分が5
0%になるように調整して、樹脂溶液を得た。以下、こ
の樹脂を、低分子量樹脂(A2−1)の溶液と略記す
る。
【0163】(参考例4)カルボキシル基を有する低分
子量芳香族ビニル系共重合体の合成例 参考例1と同様にして、メチルエチルケトンの1,00
0部を仕込んでから、下記の重合性モノマーおよび重合
開始剤からなる混合液を、80℃にて3時間を要して滴
下した。
【0164】 スチレン 621部 n−ブチルアクリレート 302部 アクリル酸 77部 「パーブチル O」 30部
【0165】次いで、滴下を終了してから3時間後およ
び6時間後に、各々「パーブチルO」の5部を添加して
から、更に、80℃にて反応を3時間継続して反応を終
了した。最後に、メチルエチルケトンにて不揮発分が5
0%になるように調整して、樹脂溶液を得た。以下、こ
の樹脂を、低分子量樹脂(A2−2)の溶液と略記す
る。
【0166】参考例1〜4にて調製した樹脂の酸価、分
子量およびガラス転移温度を、表1にまとめて示す。
【0167】
【表1】
【0168】・酸価:樹脂固形分の1gを中和するに必
要なKOHのmg量。 ・Mw:ゲルパーミショングロマトグラフィーで測定し
た重量平均分子量。 ・Tg:DSCで測定したガラス転移温度。
【0169】(参考例5)架橋剤の調製例 「TECHMORE VG3101」(三井石油化学工
業株式会社製のフェノール型の3官能エポキシ樹脂)の
63.6部をメチルエチルケトンの70部に溶解した溶
液に、ジブチルアミンの6.46部を加え、70℃にて
2時間反応を行った。この、架橋剤を、架橋剤(B−
1)の溶液と略記する。グリシジル基の平均官能基数は
2.5になる。
【0170】本発明の実施例および比較例で使用するグ
リシジル基を有する架橋剤を、表2にまとめて示す。
【0171】
【表2】
【0172】表2の架橋剤の説明。 ・B−1:参考例5で調製したグリシジル基含有架橋
剤。 ・「TETRAD-X」:三菱瓦斯化学工業株式会社製の、N,
N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジア
ミンの商品名。 ・BZA:N,N−ジグリシジルベンジルアミンの略
号。
【0173】<トナーの調製方法>次に、比較例および
実施例のトナーの調製方法について説明する。
【0174】(1)参考例1〜4で合成した樹脂の溶液
を使用したミルベースの作製方法 樹脂(A1−1)、樹脂(A2−1)、及び、樹脂(A
2−2)の不揮発分が50%のメチルエチルケトン溶液
の900部と、「エルフテックス(ELFTEX)
8」(米国キャボット社製のカーボンブラック)の50
部とを、「アイガーモーターミル M−250」(アイ
ガージャパン株式会社製の顔料分散機)を使用して1時
間の間混練せしめた。次いで、メチルエチルケトンで不
揮発分を50%に調製してミルベースを作製した。この
ミルベースの樹脂固形分/顔料の割合は90/10にな
る。
【0175】樹脂(A1−2)の溶液の場合は、不揮発
分が40%のメチルエチルケトン溶液の1,125部を
使用して、前記と同様にして分散し、不揮発分を40%
に調製してミルベースを作製した。
【0176】(2)比較例及び実施例の転相乳化法 (比較例1を例にとった転相乳化法の説明)高分子量樹
脂(A1−1)の溶液を使用して作製したミルベースの
200部、イソプロパノールの24部、および、1規定
水酸化ナトリウム水溶液の12.5部(カルボキシル基
の13%を中和する量になる。)を加え、スリーワンモ
ーターを用いて撹拌しながら、これに、80ccのイオ
ン交換水を10分を要して徐々に滴下して転相乳化せし
めた。次いで、イオン交換水の600部を加えた。以
下、次の様な後処理工程を経て、比較例1の非架橋トナ
ー粒子を作製した。比較例1は、カルボキシル基を有す
る高分子量樹脂のみを使用した、架橋反応は行っていな
いトナーの比較例である。
【0177】減圧蒸留により、脱溶剤を行う。 濾過する。 濾過後のケーキに、イオン交換水の500部を加え、
さらに、撹拌しながら1規定塩酸にてPHを2〜3に調
整する。 濾過し、500部のイオン交換水で洗浄する。 濾過後の含水ケーキを、凍結乾燥する。
【0178】(実施例1を例にとった転相乳化法の説
明)高分子量樹脂(A1−1)の溶液を使用して作製し
たミルベース、及び、低分子量樹脂(A2−2)の溶液
を使用して作製したミルベースを使用して架橋を行った
実施例1は、以下のような手順で行った。
【0179】高分子量樹脂(A1−1)の溶液を使用し
て作製したミルベースの100部、低分子量樹脂(A2
−2)の溶液を使用して作製したミルベースの100
部、イソプロパノールの24部、および、1規定水酸化
ナトリウム水溶液の12.5部(カルボキシル基の13
%を中和する量になる。)及び架橋剤として、「TET
RAD−X」の0.27部をを加え、スリーワンモータ
ーを用いて撹拌しながら、これに、80ccのイオン交
換水を10分を要して徐々に滴下して転相乳化せしめ
た。次いで、イオン交換水の600部を加えた。以下、
上記した後処理工程を経て、実施例1の架橋トナー粒子
を作製した。
【0180】この時、架橋剤の使用量は、樹脂固形分1
00重量部に対して0.3重量部になり、また、カルボ
キシル基1当量に対しては、グリシジル基が約0.02
8当量の割合になる。以下、次の様な後処理工程を経
て、実施例1の架橋されたトナー粒子を作製した。実施
例1は、カルボキシル基を有する高分子量樹脂と、カル
ボキシル基を有する低分子量樹脂を、50/50固形分
重量比で使用して、架橋反応を行ったトナーの実施例で
ある。
【0181】減圧蒸留により、脱溶剤を行う。 400ccのイオン交換水を加え、撹拌しながら、6
0℃にて8時間架橋反応を行う。 濾過後のケーキに、イオン交換水の500部を加え、
さらに、撹拌しながら1規定塩酸にてPHを2〜3に調
整する。 濾過し、500部のイオン交換水で洗浄する。 濾過後の含水ケーキを、凍結乾燥する。
【0182】(その他の比較例及び実施例の転相乳化
法)ミルベース固形分の100部(ミルベースの不揮発
分が50%ならミルベースを200部秤量する。高分子
量樹脂と低分子量樹脂を併用する比較例及び実施例は、
高分子量樹脂のミルベースの固形分と低分子量樹脂のミ
ルベースの固形分の合計が100部になるように秤量す
る。)を使用して、架橋しない場合は比較例7と同様に
して、また、架橋する場合は実施例1と同様にして、比
較例2、及び、実施例1〜6の粉体トナーを作製した。
【0183】なお、体積平均粒子径が6〜9μmになる
ように転相乳化を行ったので、カルボキシル基を中和す
る1規定水酸化ナトリウム水溶液の量は、各々の比較例
及び実施例では異なる。しかし、その差は大きなもので
はなく、カルボキシル基の合計に対して、概ね、10〜
15%中和する量であった。
【0184】本発明における比較例及び実施例の粉体ト
ナーは、全て、体積平均粒子径が6〜9μmの範囲内に
なるように転相乳化を行った。
【0185】(トナー作製条件のまとめ)高分子量樹脂
と低分子量樹脂の固形分での配合比、架橋剤の種類、架
橋剤の使用量(高分子量樹脂と低分子量樹脂の固形分1
00部に対する使用量。)、カルボキシル基1当量に対
する架橋剤のグリシジル基の当量数、架橋条件等は、表
3〜5にまとめて示す。
【0186】(3)トナーの定着試験 比較例および実施例で作製された凍結乾燥後の粉体トナ
ーに、「R−972」(日本エアロジル工業株式会社製
のシリカ微粒子)を0.5%外添後、該粉体トナーの2
2.5部と市販フェライトキャリアの427.5部とを
配合したものを使用して、ID値が1.5以上になるよ
うに紙に画像出しを行った。
【0187】ID値とは、「マクベス RD−918」
(米国Macbeth社製の印刷用反射濃度計)を使用
して測定した画像濃度である。
【0188】画像出し及び定着試験は、「イマジオ D
A250」(株式会社リコー製のコピー機)を、画像出
し部及び定着部に分解し改造したものを使用して試験を
行った。
【0189】(定着性の評価基準) ・定着開始温度:画像出しを行った紙を、130mm/
秒の速度で、表面温度を制御した熱ロールに通して定着
を行った。熱定着後の画像にセロファンテープを貼り、
これに100g/cm2なる荷重をかけて貼り付けた後
に引き剥がし、そのID値を測定した。定着開始温度と
は、セロファンテープ剥離試験を行った後のID値が、
セロファンテープ剥離試験を行う前のID値の90%以
上になる時の、熱ロールの表面温度をいう。
【0190】・耐ホットオフセット温度:画像出しを行
った紙を、130mm/秒の速度で、表面温度を制御し
た熱ロール(シリコンオイル非塗布型)を通し、ホット
オフセットが発生した温度をホットオフセット発生温度
といい、耐ホットオフセット温度とは、ホットオフセッ
トが発生した直前の温度をいう。ホットオフセットと
は、熱定着ロール上にトナーが付着し、それが次の被着
紙に再転移し紙を汚す現象をいう。
【0191】なお、定着開始温度および耐ホットオフセ
ット温度の評価は、定着温度を5℃刻みで、最高220
℃まで行った。
【0192】
【表3】表3 (低分子量樹脂又は高分子量樹脂単独
で、架橋した場合又は架橋しない場合の比較例)
【0193】
【表4】
【0194】
【表5】
【0195】(試験条件等の説明) ・樹脂配合比:高分子量樹脂(A1)/低分子量樹脂
(A2)の樹脂固形分比である。 ・架橋剤量:高分子量樹脂(A1)及び低分子量樹脂
(A2)の合計固形分の100重量部に対する、硬化剤
の固形分重量部である。
【0196】・架橋剤割合:高分子量樹脂(A1)及び
低分子量樹脂(A2)のカルボキシル基の合計1当量に
対して、配合された架橋剤のグリシジル基の当量数であ
る。なお、低分子量樹脂(A2)がカルボキシル基を有
していない場合は、高分子量樹脂(A1)のカルボキシ
ル基に対する量である。
【0197】・不溶解分:テトラヒドロフランを使用し
たソックスレー抽出24時間後の不溶解成分の重量%で
ある。 ・Tg:DSCを使用して測定した、トナー粒子のガラ
ス転移温度である。
【0198】(表3〜5で得られた結果の説明)すべて
の実施例において、高分子量樹脂と低分子量樹脂を併用
し、架橋剤を使用して粒子中で一部架橋を行うことによ
り、高分子量樹脂と低分子量樹脂を併用したが架橋を行
わないもの、高分子量樹脂のみを使用して架橋を行った
もの及び行わないもの、低分子量樹脂のみを使用して架
橋を行ったもの及び行わないもの、いずれと比較して
も、定着開始温度が低く、かつ、耐ホットオフセット温
度が高く、定着特性に優れた効果が認められた。特に、
架橋剤として、「TETRAD−X」(N,N,N’,
N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)およ
びN,N−ジグリシジルベンジルアミンを使用した場
合、その効果が顕著であった。
【0199】すべての実施例において、架橋反応が終了
したトナー粒子の水性媒体分散液は、優れた分散性を有
したものであった。
【0200】本発明は、次に示す実施形態を包含する。 1.少なくとも一分子平均1を越える架橋性官能基を有
する重量平均分子量が50,000〜400,000な
る範囲の樹脂と、重量平均分子量が5,000以上で5
0,000未満の樹脂と、前記樹脂の架橋剤とを樹脂成
分として、その中に着色剤を含有した粒子の液媒体分散
液を作製した後、該樹脂成分の一部を架橋させて結着用
樹脂とし、次いで、得られた一部が架橋された粒子を液
媒体から分離し乾燥する粉体トナーの製造方法。
【0201】2.結着用樹脂が、テトラヒドロフランに
対する不溶解成分の含有率が0.5〜70重量%となる
まで少なくとも一分子平均1を越える架橋性官能基を有
する樹脂を架橋剤でもって一部を架橋させたものである
上記1の製造方法。
【0202】3.粒子の液媒体分散液が、中和により親
水性を増す官能基(a1)及び少なくとも一分子平均1
を越える架橋性官能基(a2)を有する中和により水分
散性となりうる重量平均分子量が50,000〜40
0,000なる範囲の樹脂(A1)と、重量平均分子量
が5,000以上で50,000未満の樹脂(A2)と
の混合樹脂(A)と、前記混合樹脂(A)の架橋剤
(B)と、着色剤(C)と、有機溶剤(D)と、前記混
合樹脂(A)を水分散性とするに足る中和剤(E)とを
含む混合物を、水性媒体中に転相乳化をして得られる、
少なくとも一分子平均1を越える架橋性官能基を有する
中和により水分散性となりうる重量平均分子量が50,
000〜400,000なる範囲の樹脂と、重量平均分
子量が5,000以上で50,000未満の樹脂との混
合樹脂と、前記混合樹脂の架橋剤とを樹脂成分として、
その中に着色剤が分散された粒子の水性媒体分散液であ
る上記1または2の製造方法。
【0203】4.前記樹脂(A2)が、中和により親水
性を増す官能基(a1)及び少なくとも一分子平均1を
越える架橋性官能基(a2)を有するものである上記3
の製造方法。
【0204】5.樹脂(A1)及び樹脂(A2)の、中
和により親水性を増す官能基(a1)及び少なくとも一
分子平均1を越える架橋性官能基(a2)が共にカルボ
キシル基であり、樹脂(A1)及び樹脂(A2)の架橋
剤(B)が、少なくとも一分子平均2個以上のグリシジ
ル基を有する化合物である上記4の製造方法。
【0205】6.少なくとも一分子平均2個以上のグリ
シジル基を有する化合物が、グリシジルアミンである上
記5の製造方法。
【0206】7.少なくとも一分子平均2個以上のグリ
シジル基を有する化合物が、次に表示する一般式(1)
または(2)で表示される官能基を一分子平均2〜4個
有するグリシジルアミンである上記5の製造方法。
【0207】
【化4】
【0208】(但し、式中のR1およびR2は、置換基を
有するまたは有しない芳香環または脂環、水素原子、ま
たは、炭素数が1〜4のアルキル基を表すものとし、お
よび、R3は炭素数が1〜4のアルキル基を表すものと
する。)
【0209】8.樹脂(A1)及び樹脂(A2)が有す
るカルボキシル基の合計1当量当たり、グリシジル基と
して0.001〜0.5当量の範囲内の量でもって架橋
剤(B)を用いてなる上記5、6または7の製造方法。
【0210】9.カルボキシル基を有する樹脂(A1)
及びカルボキシル基を有する樹脂(A2)が、共に、1
0〜150mg(KOH)/gなる範囲のカルボキシル
基に基ずく酸価を有するビニル系共重合体である上記5
の製造方法。
【0211】10.高分子量樹脂(A1)と低分子量樹
脂(A2)との重量平均分子量の差が、10,000以
上となる様に、それぞれの樹脂を選択して組み合わせる
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9記載
の製造方法。
【0212】
【発明の効果】本発明では、粒子分散液の状態で、分散
粒子中の高分子量樹脂と低分子量樹脂を架橋剤で架橋し
て粉体トナーを得るので、従来の、高分子量樹脂と低分
子量樹脂の混合、高分子量樹脂のみを使用した架橋、及
び、低分子量樹脂のみを使用した架橋のいずれの方法に
よっても解決できなかった、低温定着性を保持して耐ホ
ットオフセット性を向上させることができるという格別
顕著な効果を奏する。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一分子平均1を越える架橋性
    官能基を有する重量平均分子量が50,000〜40
    0,000なる範囲の樹脂と、重量平均分子量が5,0
    00以上で50,000未満の樹脂と、前記樹脂の架橋
    剤とを樹脂成分として、その中に着色剤を含有した粒子
    の液媒体分散液を作製した後、該樹脂成分の一部を架橋
    させて結着用樹脂とし、次いで、得られた一部が架橋さ
    れた粒子を液媒体から分離し乾燥する粉体トナーの製造
    方法。
  2. 【請求項2】 結着用樹脂が、テトラヒドロフランに対
    する不溶解成分の含有率が0.5〜70重量%となるま
    で少なくとも一分子平均1を越える架橋性官能基を有す
    る樹脂を架橋剤でもって一部を架橋させたものである請
    求項1の製造方法。
  3. 【請求項3】 粒子の液媒体分散液が、中和により親水
    性を増す官能基(a1)及び少なくとも一分子平均1を
    越える架橋性官能基(a2)を有する中和により水分散
    性となりうる重量平均分子量が50,000〜400,
    000なる範囲の樹脂(A1)と、重量平均分子量が
    5,000以上で50,000未満の樹脂(A2)との
    混合樹脂(A)と、前記混合樹脂(A)の架橋剤(B)
    と、着色剤(C)と、有機溶剤(D)と、前記混合樹脂
    (A)を水分散性とするに足る中和剤(E)とを含む混
    合物を、水性媒体中に転相乳化をして得られる、少なく
    とも一分子平均1を越える架橋性官能基を有する中和に
    より水分散性となりうる重量平均分子量が50,000
    〜400,000なる範囲の樹脂と、重量平均分子量が
    5,000以上で50,000未満の樹脂との混合樹脂
    と、前記混合樹脂の架橋剤とを樹脂成分として、その中
    に着色剤が分散された粒子の水性媒体分散液である請求
    項1または2の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記樹脂(A2)が、中和により親水性
    を増す官能基(a1)及び少なくとも一分子平均1を越
    える架橋性官能基(a2)を有するものである請求項3
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 樹脂(A1)及び樹脂(A2)の、中和
    により親水性を増す官能基(a1)及び少なくとも一分
    子平均1を越える架橋性官能基(a2)が共にカルボキ
    シル基であり、樹脂(A1)及び樹脂(A2)の架橋剤
    (B)が、少なくとも一分子平均2個以上のグリシジル
    基を有する化合物である請求項4の製造方法。
  6. 【請求項6】 少なくとも一分子平均2個以上のグリシ
    ジル基を有する化合物が、グリシジルアミンである請求
    項5の製造方法。
  7. 【請求項7】 少なくとも一分子平均2個以上のグリシ
    ジル基を有する化合物が、次に表示する一般式(1)ま
    たは(2)で表示される官能基を一分子平均2〜4個有
    するグリシジルアミンである請求項5の製造方法。 【化1】 (但し、式中のR1およびR2は、置換基を有するまたは
    有しない芳香環または脂環、水素原子、または、炭素数
    が1〜4のアルキル基を表すものとし、および、R3
    炭素数が1〜4のアルキル基を表すものとする。)
  8. 【請求項8】 樹脂(A1)及び樹脂(A2)が有する
    カルボキシル基の合計1当量当たり、グリシジル基とし
    て0.001〜0.5当量の範囲内の量でもって架橋剤
    (B)を用いてなる請求項5、6または7の製造方法。
  9. 【請求項9】 カルボキシル基を有する樹脂(A1)及
    びカルボキシル基を有する樹脂(A2)が、共に、10
    〜150mg(KOH)/gなる範囲のカルボキシル基
    に基ずく酸価を有するビニル系共重合体である請求項5
    の製造方法。
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