次に本発明を詳細に説明する。本発明は、中和により自己水分散性となりうる樹脂を用い、転相乳化により水性媒体中に粒子を形成するトナー粒子の製法において、あらかじめ特定の粒径に分散されたワックス微粒子を該樹脂と着色剤と同時に転相乳化することで、粒子内部にワックス微粒子と着色剤が内包されたカプセル型トナー粒子を生成することに特徴を有するものである。
本発明で用いる樹脂は、中和により親水性を増す官能基を有し、その親水作用により、水媒体の作用下で乳化剤等の分散安定剤を用いることなく、安定な水分散粒子を形成できる能力を有する樹脂であり、このような能力を持つものであれば、どのようなものでも使用できる。たとえば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂及びビニル系共重合体などが代表的なものとして挙げられる。
本発明においては、ビニル共重合体の中でとくに、(メタ)アクリル酸エステルとスチレンとを必須成分とする実質的に熱可塑性を有する樹脂(以下、アクリル/スチレン系樹脂という場合がある)が好ましく、原料単量体としては、例えば下記のものが挙げられる。
スチレン、O−メチルスチレン、mーメチルスチレン、pーメチルスチレン、αーメチルスチレン、pーエチルスチレン、2、4ージメチルスチレン、p−nーブチルスチレン、p−tertーブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、pーメトキシスチレン、pーフェニルスチレン、pークロルスチレン、3、4ージクロルスチレン、などのスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2ーエチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2ークロルエチルアクリル酸フェニル、αークロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2ーエチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルの如き(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、などの(メタ)アクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロぺニルケトンなどのビニルケトン類;Nービニルピロール、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびアクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピルなどの含フッ素アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類等。
本発明で使用される樹脂は、中和により親水性を増す官能基を有している必要があり、その種類及び導入方法について述べる。
中和により親水性を増す官能基としては、カチオン性基として、アミノ基、とりわけ第三級アミノ基が挙げられる。また、アニオン性基として、燐酸基、硫酸基、とりわけ好適にはカルボキシル基が挙げられる。
カチオン性基として好ましい第三級アミノ基を樹脂に導入するには、たとえばアクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、ビニルピリジン 、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの第三級アミノ基を有する単量体類を共重合する方法、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基を有する単量体類の共重合体にジブチルアミンなどの第二級モノアミンを付加する方法などが挙げられる。
アニオン性基として好ましいカルボキシル基を樹脂に導入するには、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノブチルの如きマレイン酸モノアルキル類、イタコン酸モノブチルの如きイタコン酸モノアルキル類を共重合することで容易に達成される。その他、無水マレイン酸の如き酸無水基を有する単量体を共重合して得られる、酸無水基含有共重合体に、モノアルコールを付加する方法、水酸基を有する単量体を共重合して得られる水酸基含有共重合体に、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水トリメリット酸の如き酸無水基含有化合物を付加することによっても、カルボキシル基を導入することができる。
上記重合性単量体類の共重合方法は、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合などの公知の各種重合方法が利用できるが、溶液重合が本製法には好ましい。
重合開始剤としては、公知の過酸化物や、アゾ化合物が使用できる。
また、本発明におけるポリエステル樹脂は、一塩基酸、二塩基酸、多塩基酸の如きカルボキシル基又はエステル形成性官能基を有する化合物と、ジオール、ポリオールの如き水酸基を有する化合物とを、適宜選択して脱水縮合させて得られる。
二塩基酸、又は多塩基酸としては、たとえば(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、2、6ーナフタレンジカルボン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸などの硬質な酸が代表的なものであるが、他に、アジピン酸、(無水)琥珀酸、セバシン酸、ダイマー酸、(無水)マレイン酸などの軟質な酸も一部使用できる。また、ジメチロールプロピオン酸、pーヒドロキシ安息香酸、およびεーカプロラクトンなどの水酸基とカルボキシル基を有する化合物も使用できる。
二塩基酸、又は多塩基酸以外に使用できるカルボキシル基を有する化合物としては、たとえば、テレフタル酸ジメチルの如き酸の低級アルキルエステル類;安息香酸、pーターシャリーブチル安息香酸、ロジン及び水添ロジンの如き一塩基酸類;分子末端に1または2個のカルボキシル基を有するマクロモノマー類;5ーソジウムスルフォイソフタル酸及びそのジメチルエステル類などが挙げられる。
水酸基を有する化合物としては、たとえば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、及び1、4ーシクロヘキサンジメタノールなどの硬質なものが代表的なものであるが、他に、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリオール、ジプロピレングリコール、2ーメチルー1、3ープロパンジオール、2、2ージエチルー1、3ープロパンジオール、1、4ーブタンジオール、1、3ープロパンジオール、1、6ーヘキサンジオール、1、5ーペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールの如きジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、及びトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートの如きポリオール類;「カージュラー Eー10」(シェル化学工業(株)製の合成脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノグリシジル化合物;分子末端に1又は2個の水酸基を有するマクロモノマー類;などが挙げられる。二塩基酸の一部をジイソシアネート化合物に代えることもできる。
本発明におけるポリエステル樹脂は、各種変性ポリエステル樹脂、たとえば、ビニルモノマー類をグラフトしたビニル変性ポリエステル樹脂、シリコン変性ポリエステル樹脂、などであってもよい。
本発明で使用される樹脂は、中和により親水性を増す官能基を有している必要があり、その種類及び導入方法について述べる。
カチオン性基として好ましい第三級アミノ基を樹脂に導入するには、トリエタノールアミン、Nーメチルジエタノールアミン、N,Nージメチルエタノールアミン等の水酸基を有する第三級アミン化合物を樹脂合成時にアルコール成分の一部として使用すればよい。
アニオン性基としてカルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、一塩基酸、二塩基酸、多塩基酸の如きカルボキシル基を有する化合物と、ジオール、ポリオールの如き水酸基を有する化合物を適宜選択して、溶融法、溶剤法などの公知の方法によって、脱水縮合させてポリエステルを製造する際に、カルボキシル基が残存するように反応すればよい。カルボキシル基は主に、ポリエステル樹脂を構成する二塩基酸又は多塩基酸などに由来する未反応のカルボキシル基である。
その他に、ポリエステル樹脂にカルボキシル基を導入する方法として、水酸基を有する線状又は分岐ポリエステル樹脂に、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸の如き酸無水基含有化合物を付加する方法、水酸基を有するポリエステル樹脂、好ましくは線状ポリエステル樹脂に無水ピリメリット酸の如きテトラカルボン酸二無水物を反応して、カルボキシル基を導入すると同時に、鎖伸張する方法も採用できる。さらに、ポリエステル樹脂に、前述した如きカルボキシル基を含有した重合性単量体類を含む重合性単量体類をグラフト重合する方法によってもカルボキシル基を導入できる。
アクリル/スチレン系樹脂を合成する際に使用する反応溶剤としては、樹脂を溶解するものであれば各種の有機溶剤を使用できる。
たとえば、トルエン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンの如き各種炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tーブタノールの如きアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル等の如きエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如き各種ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルの如き各種エステル類;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの如き各種エーテルエステル類;テトラヒドロフランの如き各種環状エーテル類;塩化メチレンの如き各種ハロゲン化炭化水素類;などが挙げられる。
親水性を増す官能基としては、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基の量としては、酸価(樹脂固形分1gを中和するのに要するKOHのmg数で示される)が、アクリル/スチレン系樹脂の場合には、30〜100mg(KOH)/gなる範囲が好ましい。酸価が30よりも小さいと水性媒体中への転相乳化性が低下するため好ましくない。また100よりも多いと、トナーとなったときの吸湿性が高く、好ましくない。
また、ポリエステル樹脂の場合は、2〜60mg(KOH)/gなる範囲が好ましい。酸価が2よりも小さいと水性媒体中への転相乳化性が低下するため好ましくない。また60よりも多いと、トナーとなったときの吸湿性が高く、好ましくない。
本発明において使用される着色剤としては、従来よりトナー用として用いられてきたような染料、顔料が使用できる。
たとえば、亜鉛華、黄色酸化鉄、ハンザイエロー、ジスアゾイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエロー、ベンガラ、リソールレッド、ピラロゾンレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、紺青、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニン、酸価チタン、カーボンブラック、または磁性粉の如き各種顔料類ないしは油溶性染料である。
また、これらの着色剤は、機能性を向上するために、樹脂処理やカップリング剤処理をしたものも使用できる。さらに、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、またはカオリンなどの体質顔料も着色剤と併用して使用できる。
本発明の製法では、中和により自己水分散性となりうる樹脂と、着色剤と、ワックス微粒子と、有機溶剤を必須成分とする混合物を用いる。この混合物としては、中和により自己水分散性となりうる樹脂と、着色剤と、ワックス液媒体分散体と、有機溶剤を必須成分として混合した混合物が使用できる。
ここで重要なのは、混合物中にワックスが微粒子状に分散していることである。混合物中でこの様なワックスの分散状態を得るに当たっては、例えばワックスが液媒体に分散したもの(ワックスの液媒体分散体)と、「中和により自己水分散性となりうる樹脂と着色剤と有機溶剤を必須成分とする混合物」とを混合する様にすることが、とりわけ、予め調製した、ワックス微粒子を含まない「中和により自己水分散性となりうる樹脂と着色剤と有機溶剤を必須成分とする混合物」にワックス液媒体分散体を加えて混合分散したものを用いるのが、良好なトナーを得るのに好ましい。
中和剤は、前記混合物の側に存在させるか、又は転相乳化に用いる水性媒体側に存在させるが、前者が好ましい。この中和剤の使用量は、前記中和により自己水分散性となりうる樹脂を自己水分散性とするに足る量である。
本発明では、ワックス微粒子又はワックス微粒子の液媒体分散体を用いる。
本発明に使用される、混合物中に含ませるワックス微粒子、又はワックス液媒体分散体中のワックス微粒子は、比較的低軟化点もしくは低融点の化合物、具体的には軟化点(融点)が50〜140℃、好ましくは60〜120℃を有するものである。軟化点が50℃よりも低いと、トナーの耐ブロッキング性や貯蔵安定性がが不十分であり、140℃を越えると、定着開始温度が高くなり好ましくない。
好適なものとして、混合物中に含まれる、中和により自己水分散性となりうる樹脂を中和剤で中和して得た自己水分散性樹脂や同有機溶剤のいずれか一方又は両方に親和性のあるが溶解(相溶)しないもの、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの如き高級炭化水素の石油ワックス類;カルナバワックス、キャンデラワックス、木ロウ、ライスワックスの如き高級エステルの植物ワックス類;ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィッシュワックスの如き高級炭化水素の合成ワックス類が好適に使用できる。
使用する原料ワックスは、高級炭化水素等の疎水性の高いものが好ましく、酸変性された、自己水分散安定性を持つようなワックス類は粒子内に内包されにくいため、好ましくない。また、ステアリン酸塩やステアリン酸アマイドのような親水性を有するワックスは、本発明の樹脂と相溶性を有するため、効果が発揮されず、好ましくない。最適なのはフィッシャートロプシュワックスである。
ワックスの液分媒体散体としては、通常、原料ワックスを液媒体中に所定の粒径に分散した、ワックスの液媒体分散体を使用する。なお、使用されるワックス液媒体分散体類は、軟化点(融点)が異なるものを混合して用いてもよい。
ワックスの液媒体分散体の調製は、例えば原料ワックスをそれ不溶の液媒体に直接微粒子状となるまで分散させるか、原料ワックスをそれ可溶の液媒体に溶解させてから、ワックス不溶の液媒体を加えて、必要に応じてワックス可溶の液媒体を一部又は全部除去して、残った液媒体中にワックス微粒子を微粒子状に析出分散させるか、或いはキシレン等の有機溶媒中で、ワックスの軟化点(融点)以上の温度をかけて溶融した状態で乳化、分散した後、冷却、脱溶剤を行うことで調製する、という方法がある。ワックスの液媒体分散体としては、例えばワックスが水性媒体に微粒子状に分散されたワックスエマルジョンが代表的なものである。
転相乳化に用いるのにより便利なのは、原料ワックスをキシレン等の有機溶媒中で、ワックスの軟化点(融点)以上の温度をかけて溶融した状態で乳化、分散した後、冷却、脱溶剤をして得られた分散体である。
具体的には、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素類、あるいはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル類の溶媒温度をワックス原料の軟化点(融点)以上に上げ、溶液状にした後、通常の撹拌機、またはホモミキサー、ホモジナイザ等によるせん断下に水性媒体を添加して、微分散を行い、所望の粒径のワックス微粒子を得ることで行われる。この時必要に応じて乳化剤や分散安定剤を使用しても良い。
しかし、乳化剤や分散安定剤の使用量は、最小限に止め、極少量とするのが好ましい。乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンニニルフェノールエーテル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
分散安定剤としては、通常、水溶性高分子化合物が用いられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースガム等が挙げられる。
上記した乳化剤や分散安定剤と同様な効果を得る場合には、上記具体的な乳化剤や分散安定剤の他に、本発明で用いられる様な自己水分散性樹脂の水性分散液を用いることが出来る。どちらかと言えば、この自己水分散性樹脂の水性分散液を用いるほうがより好ましい。また、この際の自己水分散性樹脂を得るに当たっては、中和により自己水分散性となりうる樹脂の中和に使用される中和剤は弱塩基性あるいは弱酸性の化合物が好ましい。これにより、後述する処理工程により塩構造を有する親水性官能基を元の親水性基に戻すことが可能になり、従来の該乳化剤や分散安定剤の悪影響を最小限にできる。
またそれとは別に、例えばワックス液媒体分散体を得るに当たって用いた有機溶剤の沸点が原料ワックスの軟化点(融点)より低い場合には、加圧下で液温を原料ワックスの軟化点(融点)より高くして溶解もしくは分散するのが好ましい場合もある。また、分散に際しては、通常、ワックス微粒子の粒径が所望の粒径になるように、適宜、撹拌速度、時間等を調製する。その後、例えばこの分散液を冷却し、有機溶剤を留去してワックスの液媒体分散体を調製することができる。
また、ワックスの液媒体が非水溶液の場合は、ワックス分散のための液媒体としては、例えばイソプロピルアルコールの如きアルコール類;メチルエチルケトンの如きケトン類;酢酸エチルエステルの如きエステル類のようなワックスが溶解しないものを使用し、ワックスの軟化点(融点)以上の温度で、通常の撹拌機、またはホモミキサー、ホモジナイザ等による高速せん断下に微分散を行い、所望の粒径の非水液媒体に分散したワックスの分散微粒子が得られる。この時、必要に応じて分散安定剤を使用しても良い。
混合物中に含ませるワックス微粒子の添加量、又はワックス微粒子を含む液分散体の混合物への添加量は、いずれもワックス微粒子に換算して樹脂固形分に対して、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%であり、1重量%より少ないとワックスの添加効果が得られず、30重量%よりも多いと、転相乳化時の粒子形成が劣化してくるし、樹脂がワックス微粒子を十分内包できず現像性が劣化するため、好ましくない。
混合物中のワックス微粒子又はワックス液分散体中のワックス微粒子の粒子径は、トナー粒子径自体との大小関係にもよるが、トナー粒子径よりも小さいこと、いずれも通常0.05〜3μm、好ましくは0.1〜2μmである。粒子径が0.05μm よりも小さいと、含有量を増加しても、溶融時に粒子表面に溶けだして十分な離型作用を発現できず、粒子径が3μmよりも大きいと、トナー粒子内のワックス微粒子含有量が不均一になったり、あるいはトナー粒子表面にワックス微粒子が露出し、現像性が劣化するため好ましくない。
ワックス微粒子の混合物への分散は、粉砕法と同様に、溶融混練時に混練、分散する方法と、湿式で分散する方法があるが、上記した通り、本発明の製法では湿式分散が所定のワックス粒子径を保持する上でも、また、プロセス上の簡便からみても好ましい。
すなわち、溶融混練では所望の粒径に分散したワックス微粒子がさらに小さい粒子径に微分散されたり、場合によっては再凝集することがあり、好ましくない。また疎水性のワックス成分が、樹脂、あるいは着色剤に吸着して、樹脂の親水−疎水性バランスを崩し、粒子形成が容易にはできなくなる傾向にある。
湿式混練する場合には、樹脂と、着色剤と、ワックス液媒体分散体と有機溶剤を必須成分とする混合物を同時に分散する場合と、樹脂と、着色剤と、有機溶剤を必須成分とする混合物を分散した後、ワックス液媒体分散体を添加する場合の、いずれの方法でも良いが、後者の方法が転相乳化時の造粒性に影響が少ないため、より好ましい。前者の製法では、ワックス微粒子の如き疎水性の高い成分が着色剤に吸着し、後述する転相乳化時の粒子形成に悪影響を与える場合がある。
すなわち、ワックスの液媒体分散体を、ワックス微粒子を含まない「中和により自己水分散性となりうる樹脂と、着色剤と、有機溶剤を必須成分とする混合物」に分散するには、最低限のせん断力をかければ良く、このせん断力が強すぎると、ワックス成分と樹脂あるいは着色剤が相互作用し、後の転相乳化時におけるトナー粒子の造粒性を低下させるため好ましくない。
また、ワックス液媒体分散体に乳化剤、あるいは分散安定剤を用いた場合には、ワックス微粒子表面に吸着した乳化剤成分や分散安定剤成分は、湿式混練中に樹脂溶液中に溶解され、これにより、ワックス微粒子がトナー粒子生成過程において系外に流出するという現象が避けられる、という効果が見られる。ワックス微粒子が系外に流出しやすい、例えば自己水分散安定性の高いワックスや親水性のワックス及びそれら液媒体分散体の使用は好ましくない。
なお、ワックス液媒体分散体に用いられた乳化剤や分散安定剤等は、混合に当たって、混合物中に均一に溶解され、界面活性能が低下し、転相乳化した後、トナー粒子表面に局在化されないため、トナーの帯電特性にはほとんど影響を与えない。
次に、本発明の製造方法について詳しく述べる。本発明の製造方法は、基本的には次の工程からなる。
1.中和により自己水分散となりうる樹脂と、任意の状態のワックスと、着色剤と、有機溶剤を必須成分として、公知の方法により分散混合して、ワックス微粒子状となる様に分散した転相乳化用混合物を得る工程。
2.上記混合物を、中和剤の存在下に、水性媒体中に転相乳化し、トナー粒子の液媒体分散体を作製する工程。3.液媒体分散液からトナー粒子を分離し、乾燥する工程。
まず、1の工程から説明する。1の工程は、中和により自己分散しうる樹脂と、着色剤と、ワックスと、有機溶剤とを、ワックスがそれらの混合物中で所定の粒子径にて均一に分散した状態となる様に、分散する工程である(湿式混練)。
そのためには、原料ワックスをそのまま用いるのではなく、好適には、所望の粒子径に分散された、ワックス微粒子を含むワックスの液媒体分散体を用い、それを中和により自己分散しうる樹脂と、着色剤と、有機溶剤との混合物に均一に分散する。
本発明の製造方法のうち、ワックス液媒体分散体を用いた場合の特徴は、次の通りである。
あらかじめ所望の粒子径に制御されたワックスの微粒子の液媒体分散体を、ワックスを含まない、樹脂と着色剤と有機溶剤を含む混合物へ分散することで、ワックスの粒子径制御が容易なことが挙げられる。言うまでもなく、前記混合物中のワックスの分散粒子径は、定着時の離型効果に多大な影響を有しており、粉砕法における溶融混練等では使用するワックスの種類や軟化点(融点)に制限を受けるが、本発明の方法では、この様な制限を受けにくい。
湿式混練時に使用する有機溶剤、即ち、中和により自己水分散性となりうる樹脂と、着色剤とワックスとから転相乳化用混合物を調製する際の有機溶剤としては、
1)前記樹脂を溶解するが、ワックス成分は溶解しないもの、
2)後述する工程で、容易に脱溶剤されるもの、3)前記樹脂合成に用いられる反応溶剤と同一のものを兼備するものが好ましい。
尚、前記樹脂合成に用いられた有機溶剤と、湿式で着色剤等と混合分散されるときに使用される有機溶剤は、異なっていてもかまはないが、有機溶剤を用いた樹脂合成を行った場合には、特段脱溶剤する工程も必要でなくなるので、工程の簡素化の面から、同一の溶剤であることが好ましい、
上記した面から、アクリル系又はスチレン系の樹脂を用いる場合に当たっては、樹脂合成時にしても、湿式混練時に前記混合物調製時に新たに用いるにしても、例えばアセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロパノール等の有機溶剤を用いることが好ましい。
次に2で述べた転相乳化工程について説明する。前記工程で得られた混合物を水性媒体中に転相乳化する。転相乳化する方法としては、次のような方法が適切である。
1)該混合物に中和剤を加えてから、水性媒体中に転相乳化する方法。
2)該混合物に中和剤を加えてから、水性媒体を添加して転相乳化する方法。
3)該混合物を、中和剤を含有する水性媒体中に転相乳化する方法。
4)該混合物に、中和剤を含有する水性媒体を添加して転相乳化する方法。
また、中和剤は、該混合物、水性媒体それぞれに分割していても良い。
ここで使用される、中和剤として使用される化合物としては、前記中和により自己水分散性となりうる樹脂とは逆極性の中和剤、たとえば、カルボキシル基のようなアニオン性の官能基を有する前記樹脂に対しては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、の如き有機三級アミン類;アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの如き無機塩基類などが挙げられる。
また、水性媒体中に転相乳化し、トナー粒子を生成する際のせん断力としては、特に高いせん断力は要求されなく、水性媒体を含む該混合物が均一に撹拌される程度を持って行えばよい。
また、トナー粒子径のコントロールは、主に、中和によち自己水分散性となりうる樹脂の中和度合いで制御することが出来る。中和により自己水分散性となりうる樹脂が自己水分散性を発現する最低量の塩基は必要であるが、それを越える量を適宜調製することによりトナー粒子径の調整は可能で、当該樹脂がカルボキシル基を有するものである場合には、それを中和する塩基の量によって行い、サブミクロンから30μm間で任意に得ることができる。
静電荷像現像用乾式トナーとしては、平均粒子径にして5〜15μm程度のトナー粒子粉体が適当なので、この粒子径を目標として中和率を調整すればよい。
なお、本発明の製造方法により、ワックス微粒子がトナー粒子内に内包されているかどうかの確認は、トナー粒子を樹脂包埋し、ミクロトーム等で切断し、その薄片状のものを、例えばルテニウム四酸化物等で染色したサンプルを、TEM(透過型電子顕微鏡)により直接観察することで確認できる。
次いで、転相乳化後のトナー粒子の水性媒体分散液からは、液媒体が分離される。この時には、水と有機溶剤とを同時に分離する様にしてもよいが、予め有機溶剤のみ又は有機溶剤を主体として脱溶剤を行ってから脱水を行う様にしたほうがトナー粒子を得るに当たっては好ましい。
脱溶剤は、有機溶剤の一部、あるいは全部を減圧下、留去する事で行われる。有機溶剤のみ又は有機溶剤を主体として脱溶剤を行った、液媒体として水のみ又は水を主体として含む混合物には、必要に応じて、洗浄や、酸性化合物の水溶液により、自己水分散性樹脂を中和により自己水分散性となりうる樹脂に戻す操作、例えば塩基で中和されたカルボキシル基を有する自己水分散性樹脂の場合は、その中和されたカルボキシル基を元のカルボキシル基に戻す操作を行う。
3では、トナー粒子液媒体分散体から、液媒体を分離した後、それをトナー粒子粉体とするべく乾燥が行われる。この乾燥は公知の方法によればよく、たとえば、温風乾燥、スプレードライ、凍結乾燥などが採用できる。
かくして得られたトナー粒子粉体には、必要に応じて、シリカ粒子粉体、酸化チタン粉体などを外添することが出来る。
この様にして得られた粉体トナーは、静電荷像現像用粉体トナーとして用いることが出来る。着色剤として磁性粉を主体に含む粉体トナーは、そのままで静電荷像現像用磁性一成分型粉体トナーとして、磁性粉以外の着色剤のみ含む又はそれを主体に含む粉体トナーは、静電荷像現像用非磁性一成分型粉体トナーとして用いることが出来るし、キャリアとこれら各々粉体トナーとを組み合わせて静電荷像現像用二成分型現像剤として用いることも出来る。
本発明の製造方法には、次の様な特徴がある。
1)転相乳化法では水性媒体に転相乳化する前の混合物からなる有機相における着色剤やワックスの分散状態(粒子径等)が転相後、トナー粒子を形成した後も保持されることである。そのため、重合法における着色剤やワックスの凝集や、不均一な内包が見られない。
2)転相乳化法は、樹脂の親水−疎水のバランスにより粒子が形成されるため、着色剤や、ワックスの如き疎水性成分はトナー粒子内部に内包され、粒子表面の露出することが起こりにくく、従来の、トナー粒子表面に局在するワックスに起因する現像性の劣化が生じがたいことが挙げられる。
従って、上記本発明の製法によれば、低温定着と耐ホットオフセットに優れ、かつ、優れた現像特性を有するトナーを提供することが可能になる。特に、ワックス微粒子が粒子内に内包されることにより、粉砕法、あるいは重合法では製法上困難を伴う、より低温の軟化点(融点)を有するワックスを用いることが可能である。
次の本発明における好ましい実施態様を説明する。まず、酸価30〜100mg(KOH)/gのスチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸系共重合体(ガラス転移温度60〜70℃、重量平均分子量4万〜8万)の、後述ワックスに親和性はあるがそれを溶解(相溶)しない、低沸点で疎水性有機溶剤の溶液(不揮発分30〜70重量%)を準備する。これに前記溶剤に不溶な有機顔料又は無機顔料を前記樹脂固形分100重量部当たり5〜15重量部となる様に混合し分散させて均一な混合物1を得る。
次いで、高級炭化水素の合成ワックス、同石油ワックス、高級エステルの植物ワックスから選ばれる少なくとも1種の、前記混合物1中の溶剤及び共重合体に親和性があるがそれらに溶解(相溶)しない、軟化点(融点)50〜140℃で、平均粒子径0.05〜3μmのワックス微粒子の、分散安定剤を含まないか極少量のみ含む、有機溶剤を含んでいてもよい均一で安定な、水性媒体分散体(エマルジョン)を準備する。
上記混合物1に、その樹脂固形分100重量部当たり、ワックス微粒子不揮発分3〜12重量部となる様に上記ワックス水性媒体分散液を加えて混合分散して、ワックス微粒子と着色剤が分散した、塩基による中和により自己水分散性となりうる樹脂の有機溶剤からなる混合物2を得る。
この混合物2に、塩基水溶液を前記樹脂の中和率5〜20%となる様に、そして後述転相乳化に用いる水性媒体に親和性を有する前記したのと異なる有機溶剤をそれぞれ加えて、均一な混合物3を得る。
この混合物3の撹拌下に、水性媒体を滴下して転相乳化を行い、顔料微粒子とワックス微粒子が前記樹脂に分散内包された、平均粒子径3〜15μmの球形トナー粒子の水性媒体分散液を得る。
この球形トナー粒子の水性媒体分散液から脱溶剤を行い、球形トナー粒子の水分散液(溶剤はゼロか極少量)として、これからトナー粒子のみ濾別し、水に再分散させて、そこに酸水溶液を加えて充分の撹拌して、球形トナー粒子に含まれる、塩基で中和された自己水分散性樹脂を中和により自己水分散性となりうる樹脂に戻す。
得られたトナー粒子を含む液媒体について、洗浄を繰り返し、トナー粒子のみを分離して乾燥し、顔料粒子とワックス微粒子が中和により自己水分散性となりうる樹脂に分散内包された球形粒子からなる粉体の静電荷像現像用トナーを得る。
次に、本発明を比較例及び実施例により、一層、具体的に説明する。以下において、部、および%はすべて重量基準であるものとする。
(参考例1) カルボキシル基を有するアクリル/スチレン共重合体の合成例
滴下装置、温度計、窒素ガス導入官、撹拌装置及び還流冷却器を備えた3lのフラスコに、メチルエチルケトンの1000部を仕込んでから、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を、80℃にて2時間かけて滴下した。
スチレン 600部アクリル酸2ーエチルヘキシル 143部メタクリル酸メチル 180部アクリル酸 77部
「パーブチルO」 10部日本油脂(株)社製ラジカル重合開始剤
ついで、滴下終了してから、3時間毎に3回「パーブチルO」の3部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。該樹脂のガラス転移温度は70℃、重量平均分子量は52000、酸価は60であった。
(ワックス液分散体の性状)本発明の実施例、比較例で使用するワックスの液分散体の性状を表1、2に示す。
表1で示した各種ワックス液媒体分散体は、中京油脂(株)社製の、ワックスエマルジョンである。H808は、高級炭化水素の合成ワックスの中のフィッシャートロプシュワックスをワックス原料としている。J124は、高級炭化水素の合成ワックス中のポリエチレンワックスである。J166は、高級炭化水素の石油ワックス中のパラフィンワックスである。 H367は、高級エステルの植物ワックス中のカルナバワックスである。
(実施例1)
参考例1において得られた、不揮発分濃度が50%に調整された、中和により自己水分散性となりうるアクリル系樹脂の1000部と、「エルフテックス(ELFTEX) 8」(アメリカ国キャボット社製のカーボン・ブラック)の56部を加えて、「アイガー・モーターミル M−250」[アイガー・ジャパン(株)製品]によって、1時間のあいだ混合分散させ、カーボン分散樹脂溶液を調製した。次に、得られたカーボン分散樹脂溶液に、表1に示したH808の133部を添加し、さらに、「アイガー・モーターミル M−250」によって、10分間のあいだ混合、分散させた。ついで、不揮発分濃度を51%に調整し、ミルベースを作製した。以下、これを混合物Aと略記する。
次いで、この混合物Aの200部に対して、1規定の水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)の9.2部およびイソプロピルアルコールの24部を加え、攪拌しながら、これに、10ml/minで5分間にわたって脱イオン水を滴下し、転相乳化させた。さらに、脱イオン水の300部を加えた。
次に、減圧蒸留によって有機溶剤を除去し、処理液よりトナー粒子を濾別させたのち、当粒子を水中に再分散させた。続いてこの分散液を、0.1N塩酸水溶液(前記したのと逆極性の中和剤水溶液)にてpH2に調整し、30分間攪拌し、トナー粒子中の樹脂を、中和により自己水分散性となりうる樹脂に変換した。
得られたトナー粒子を濾別した後、さらに水中に再分散洗浄する操作をした後トナー粒子を水媒体より分離させた。これを凍結乾燥させることにより、目的とするトナー粉を得た。
此処に得られたトナーの平均粒径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、8.3ミクロン(μm)であった。
また、ルテニュウム四酸化物で染色したサンプルを、TEMで観察したところ、粒子内にワックス粒子が内包されていることが確認された。
(比較例1)
参考例1において得られた、不揮発分濃度が50%に調整された、中和により自己水分散性となりうるアクリル系樹脂の1000部と、「エルフテックス(ELFTEX) 8」(アメリカ国キャボット社製のカーボン・ブラック)の56部を加えて、「アイガー・モーターミル M−250」[アイガー・ジャパン(株)製品]によって、1時間のあいだ混合分散させ、カーボン分散樹脂溶液を調製した。ついで、不揮発分濃度を51%に調整し、ミルベースを作製した。
この後の処理工程は、実施例1と同様な操作を行うことで、目的とするトナー粉を得た。此処に得られたトナーの平均粒径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、8.0ミクロン(μm)であった。
(比較例2)
参考例1で得られたアクリル系樹脂を減圧下脱溶剤して、5000部の固形樹脂を得た。当該樹脂に「エルフテックス8」550部、「FT−100」(日本精蝋社製フィッシャートロプシュワックス)150部を添加して溶融混練により分散を行った。この時のワックスは、2μm以下に分散していた。この溶融混練物をメチルエチルケトンと均一混合し、不揮発分濃度51%に調製して、転相乳化に用いる混合物を得た。
この混合物を用いる以外は、実施例1と全く同様の操作により転相乳化を行ったが、樹脂の中和率、イソプロピルアルコール量等を変更して種種検討しても、転相乳化の段階で良好なトナー粒子がそのものが得られなかった。恐らく、ワックス成分が樹脂あるいは着色剤に吸着して、親水−疎水性バランスを崩しているためと考えられる。
参考例1で得られた樹脂に対し、ワックスの種類、量、粒径のみを変え、他は実施例1と同様の操作により、比較例2、及び実施例2〜7の粉体トナーを作製した。
なお、各実施例では、体積平均粒子径が8μm前後になるように転相乳化を行ったので、カルボキシル基を中和する1規定水酸化ナトリウム水溶液の量は、各々の比較例及び実施例では異なる。しかし、その差は大きなものではなく、カルボキシル基の合計に対して、概ね、10〜15%中和する量であった。
(トナーの定着試験)
比較例および実施例で作製された凍結乾燥後の粉体トナーに、「R−972」(日本エアロジル工業株式会社製のシリカ微粒子)を0.5%外添後、該粉体トナーの22.5部と市販フェライトキャリアの427.5部とを配合したものを使用して、ID値が1.5以上になるように紙に画像出しを行った。
ID値とは、「マクベス RD−918」(米国Macbeth社製の印刷用反射濃度計)を使用して測定した画像濃度である。
画像出し及び定着試験は、「イマジオ DA250」(株式会社リコー製のコピー機、オイルレスタイプ)を、画像出し部及び定着部に分解し改造したものを使用して試験を行った。
(定着性の評価基準)
・定着開始温度:画像出しを行った紙を、130mm/秒の速度で、表面温度を制御した熱ロールに通して定着を行った。熱定着後の画像にセロファンテープを貼り、これに100g/cm2なる荷重をかけて貼り付けた後に引き剥がし、そのID値を測定した。定着開始温度とは、セロファンテープ剥離試験を行った後のID値が、セロファンテープ剥離試験を行う前のID値の90%以上になる時の、熱ロールの表面温度で示した。
・耐ホットオフセット温度:画像出しを行った紙を、130mm/秒の速度で、表面温度を制御した熱ロール(シリコンオイル非塗布型)を通し、ホットオフセットが発生した温度をホットオフセット発生温度といい、耐ホットオフセット温度とは、ホットオフセットが発生した直前の温度で示した。
・巻き付き性:画像出しを行った紙を、130mm/秒の速度で、表面温度を制御した熱ロール(シリコンオイル非塗布型)を通したときの、熱ロールへの紙の巻き付き現象をいい、問題ない場合を○、紙がそる場合を△、熱ロールに巻き込まれる場合を×、とし、示した。
なお、定着開始温度、耐ホットオフセット温度及び巻き付き性の評価は、定着温度を5℃刻みで、最高220℃まで行った。
・貯蔵安定性:貯蔵安定性の評価は5gのトナーを50ccガラス製サンプルビンに入れ50℃で7日間放置後、室温に戻してからサンプルビンを反転させ10秒以内で落下したものを合格とした。かつ凝集度を5段階で評価し、示した(5は凝集無しを示し、1は凝集の程度が著しいことを示す)。
(強撹試験)
比較例および実施例で作製された凍結乾燥後の粉体トナーに、「R−972」(日本エアロジル工業株式会社製のシリカ微粒子)を0.5%外添後、該粉体トナーの45部と市販フェライトキャリアの855部とを配合したものを使用して、300rpmで3時間の間強撹を行った。その後、キャリア表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察することで、キャリヤ表面へのフィルミングの有無を評価した。
キャリアへのフィルミングがほとんど見られないものを○、若干見られるものを△、多量に見られるものを×、で示した。また、強撹前と後のトナーの帯電量を示した。強撹によりキャリア表面へのフィルイング量が増えるほど、帯電量は低下する。
上記評価項目で各粉体トナーを評価した結果を表2にまとめて示した。