JPH09236167A - ディファレンシャル装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 オイルのブリーザからの流出を防止し、ピニ
オンギヤとリングギヤの噛合部の位置にかかわらず、潤
滑が充分に行われるディファレンシャル装置を得る。 【解決手段】 ディファレンシャルキャリア２の内部に
設けた、ピニオンギヤ10と噛合するリングギヤ３の歯部
3aの背面外周部にリング状の圧入部18と、オリフィス20
を備えたうず巻き部19とからなる遮蔽板17を嵌合させ
る。これによって、リングギヤ３の回転時に、遮蔽板17
のうず巻き部19にディファレンシャルキャリア２のオイ
ル溜り14に溜めたオイル13を充填させて、回転時にオイ
ル13をうず巻き部19のオリフィス20よりリングギヤ３に
供給して、ピニオンギヤ10とリングギヤ３との噛合部16
を潤滑することができる。したがって、この遮蔽板17に
よって、ブリーザ15からのオイル13の流出を防止するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ディファレンシャ
ルのリングギヤと、トランスミッションに連繋するピニ
オンギヤの噛合部の潤滑性を向上させたディファレンシ
ャル装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のディファレンシャルを図５に基づ
いて簡単に説明する。ディファレンシャル１のディファ
レンシャルキャリア２の内側にはタイヤ（図示略）の回
転方向に配置させたリングギヤ３が設けられている。こ
のリングギヤ３の内側にはリングギヤ３と一体となった
回転ギヤケース４が設けられている。

【０００３】この回転ギヤケース４の内部の左右両側に
はディファレンシャルサイドギヤ５が設けられると共
に、このディファレンシャルサイドギヤ５に噛合するデ
ィファレンシャルピニオンギヤ６が設けられている。

【０００４】このディファレンシャルサイドギヤ５の中
央には、一端部にタイヤを装着したドライブシャフト７
の他端部がスプライン嵌合して連結され一体に回転され
るようになっている。また、リングギヤ３には２個のベ
アリング８に支持されたピニオン軸９に設けたピニオン
ギヤ10が噛合されている。

【０００５】ピニオン軸９のピニオンギヤ10側とは反対
側の端部にはスプライン結合したフランジ部材11が設け
られている。フランジ部材11にはプロペラシャフト（図
示略）の一側のユニバーサルジョイントが連結し、プロ
ペラシャフトの他側のユニバーサルジョイントはトラン
スミッション12の回転出力軸に連結している。

【０００６】また、図６に示すように、ディファレンシ
ャルキャリア２の内底部にはオイル13を充填したオイル
溜り14が設けられている。オイル13にはリングギヤ３の
一部が浸漬されている。また、ディファレンシャルキャ
リア２の上部には通気用のブリーザ14が設けられてい
る。図６において、矢印Ａはリングギヤ３の回転方向を
示している。

【０００７】このように構成してあるので、トランスミ
ッション12からの動力は回転出力軸からプロペラシャフ
トに伝達され、プロペラシャフトからフランジ部材11に
スプライン嵌合したピニオン軸９に伝達される。さら
に、動力はピニオン軸９のピニオンギヤ10よりピニオン
ギヤ10と噛合するリングギヤ３へと伝達される。

【０００８】リングギヤ３が回転することによりリング
ギヤ３に固定された回転ギヤケース４が回転し、ディフ
ァレンシャルサイドギヤ５に連結したドライブシャフト
７からタイヤに伝達される。このリングギヤ３が回転す
る際、図７に示すように、リングギヤ３がオイルをかき
上げてリングギヤ３とピニオンギヤ10との噛合部16を潤
滑させている。

【０００９】なお、ディファレンシャルギヤ装置とし
て、実開昭６０−１２８０５６号公報に開示されている
ものがある。この公報に開示されているものは、ディフ
ァレンシャルキャリアのオイル溜りからオイルをくみ上
げるオイルポンプと、このオイルを一旦溜めるリザーブ
タンクと、このリザーブタンクに連通され、ピニオンギ
ヤとリングギヤとの噛合部にオイルを供給するジェット
ノズルとを設けたものである。

【００１０】また、差動装置として、実開昭６３−６９
８５０号公報に開示されているものがある。この公報に
開示されているものは、ディファレンシャルキャリア内
のオイルを回転ギヤケースに設けたオイル導入口より該
ケース内にさそい込むオイル掻込部材を回転ギヤケース
に設けたものである。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】以上説明した従来技術
においては、リングギヤとピニオンギヤとの噛合部を潤
滑させるためにオイルをリングギヤによってかき上げて
いるが、オイルを掻き上げると、オイルは遠心力により
ディファレンシャルキャリア内に飛散してしまい、ディ
ファレンシャルキャリア２のブリーザから流出する場合
があった。

【００１２】また、図６に示すように、ピニオンギヤと
噛合するリングギヤが、オイル溜りから出た後、180 度
以上も回転して、オイルに浸漬する直前にピニオンギヤ
と噛合するようになっているので、ピニオンギヤの、リ
ングギヤとの噛合位置によっては、リングギヤとピニオ
ンギヤとの噛合部のオイルの潤滑が十分でなくなる問題
があった。

【００１３】なお、実開昭６０−１２８０５６号公報に
開示されているディファレンシャルギヤ装置は、ピニオ
ンギヤとリングギヤにオイルを供給するジェットノズル
と、オイルをくみ上げるオイルポンプと、オイルを溜め
るリザーブタンクとを設けたものであるが、装置が大規
模になる虞がある。

【００１４】また、実開昭６３−６９８５０号公報に開
示されている差動装置は、ディファレンシャルキャリア
内のオイルを回転ギヤケースの内部にさそい込むオイル
掻込部材を回転ギヤケースに設けたものであるが、オイ
ル掻込部材がリングギヤの歯部の部分に取付けられてい
るので、リングギヤとピニオンギヤとの噛合部にオイル
を供給することは困難である。

【００１５】本発明は、上記従来の問題を解決するため
になされたもので、リングギヤのギヤ背面部外周に遮蔽
板を装着させて、オイルのブリーザからの流出を防止す
ると共に、ピニオンギヤがどこでリングギヤと噛合して
いても、潤滑が充分に行われるディファレンシャル装置
を提供することを目的とする。

【００１６】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明は、ディ
ファレンシャルキャリアの内部にトランスミッションの
回転出力軸に連繋したピニオンギヤを設けると共に、該
ピニオンギヤと噛合するリングギヤを回転自在に設け、
該リングギヤの歯部背面の外周部にリング状の圧入部
と、該圧入部の外周縁に一体に設けられ前記リングギヤ
の歯部側に湾曲し、前記噛合部にオイルを供給するオリ
フィスを円周上に設けたうず巻き部とからなる遮蔽板を
装着させたことを特徴とするものである。

【００１７】請求項１記載の発明では、ディファレンシ
ャルキャリアの内部に設けた、ピニオンギヤと噛合する
回転自在のリングギヤの歯部背面の外周部にリング状の
圧入部と、該圧入部の外周縁に一体に設けられたオリフ
ィスを備えたうず巻き部とからなる遮蔽板を装着させ
て、リングギヤの回転時に遮蔽板のうず巻き部にディフ
ァレンシャルキャリアのオイル溜りに溜めたオイルを充
填させる。遮蔽板はオイルを充填したまま旋回し、オイ
ルをうず巻き部のオリフィスよりリングギヤに供給し
て、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合部を潤滑する。

【００１８】請求項２記載の発明は、前記うず巻き部の
円周上に設けたオリフィスは、前記リングギヤの歯底部
に対応していることを特徴とするものである。

【００１９】請求項２記載の発明では、うず巻き部の円
周上に設けたオリフィスをリングギヤの歯底部に対応さ
せて、うず巻き部に充填させたオイルを歯底部に確実に
供給させ噛合部を確実に潤滑させる。

【００２０】

【発明の実施の形態】請求項１の記載から把握される本
発明において、図２に示すように、ディファレンシャル
キャリア２の内部にトランスミッション12の回転出力軸
に連繋したピニオンギヤ10を設ける。さらに、ピニオン
ギヤ10と噛合するリングギヤ３を回転自在に設ける。そ
して、リングギヤ３の歯部3aの背面外周部にリング状の
圧入部18と、リングギヤ３の歯部3a側に湾曲し、噛合部
16にオイル13を供給するオリフィス20を円周上に設けた
うず巻き部19とからなる遮蔽板17を嵌合させる。

【００２１】請求項２の記載から把握される本発明にお
いて、図２に示すように、うず巻き部19の円周上に設け
たオリフィス20をリングギヤ３の歯底部3bに対応させ
る。

【００２２】

【実施例】次に、本発明の一実施例を図に基づき図５な
いし図７と同一の部材には同一の符号を付して説明す
る。図１はディファレンシャル１の模式図である。この
ディファレンシャル１のディファレンシャルキャリア２
の内部にはリングギヤ３が回転自在に設けられており、
リングギヤ３の中央部には回転ギヤケース４が一体に設
けられている。

【００２３】この回転ギヤケース４の内部にはディファ
レンシャルサイドギヤ５及びディファレンシャルピニオ
ンギヤ６（いずれも図５参照）等からなるディファレン
シャル機構部が設けられている。また、リングギヤ３に
は、トランスミッション12（図５参照）の回転出力軸に
連結したピニオン軸９の端部のピニオンギヤ10が噛合し
ている。

【００２４】また、図１に示すように、リングギヤ３の
歯部3aの背面外周部には遮蔽板17が圧入により装着され
ている（図２をも参照）。遮蔽板17は、図３に示すよう
に、リングギヤ３に圧入する圧入部18とうず巻き部19と
からなっている。圧入部18及びうず巻き部19はリングギ
ヤ３に沿わせてリング形状に形成されている。

【００２５】図３の遮蔽板17は、図１に示すものの下側
の部分だけを拡大して示したものである。この遮蔽板17
のうず巻き部19は、リングギヤ３の歯部3aの側に湾曲し
ており、湾曲した部分には、リングギヤ３の歯部3aの歯
底部3bにオイル13が当たるように、歯底部3bに向いたオ
リフィス20が設けられている。オリフィス20は歯底部3b
の数だけ形成されている。

【００２６】本実施例は、以上説明したように構成した
ので、図１及び図２に示すように、ピニオン軸９の回転
により、ピニオンギヤ10の噛合するリングギヤ３が回転
した際、リングギヤ３の歯部3aでかき上げられたオイル
13は、図４に示すようなオイル13の流れとなり遮蔽板17
の中を通ってオリフィス20より吐出してリングギヤ３の
歯底部3aにオイルを供給する。

【００２７】したがって、遮蔽板17によってリングギヤ
３とピニオンギヤ10との噛合部16には充分にオイル13が
供給され、オイル潤滑を確実に行うことができる。ま
た、遮蔽板17のうず巻き部19の中にオイル13が保持され
ることにより、オイル13の大量の飛散を阻止することが
できる。

【００２８】

【発明の効果】請求項１記載の発明においては、ディフ
ァレンシャルキャリアの内部に設けた、ピニオンギヤと
噛合するリングギヤの歯部背面の外周部にリング状の圧
入部と、オリフィスを備えたうず巻き部とからなる遮蔽
板を装着させたので、リングギヤの回転時に遮蔽板のう
ず巻き部にディファレンシャルキャリアのオイル溜りに
溜めたオイルを充填させることができる。

【００２９】これによって、遮蔽板はオイルを充填した
まま旋回し、オイルをうず巻き部のオリフィスよりリン
グギヤに供給して、ピニオンギヤとリングギヤとの噛合
部を潤滑することができる。したがって、この遮蔽板に
よって、ブリーザからのオイルの流出を防止することが
できる。

【００３０】請求項２記載の発明においては、うず巻き
部の円周上に設けたオリフィスをリングギヤの歯底部に
対応させたので、うず巻き部に充填されたオイルは歯底
部に確実に供給され、噛合部を確実に潤滑することがで
きる。これによって、噛合部の潤滑性を大幅に向上させ
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の要部を示す断面図である。

【図２】図１のものの右側面図である。

【図３】図１の遮蔽板の下側部分の拡大断面図である。

【図４】図２のリングギヤの回転時におけるオイルの流
れを示す模式図である。

【図５】従来のディファレンシャル装置を説明するため
の断面図である。

【図６】図５に示すリングギヤとピニオンギヤの噛合部
を示す断面図である。

【図７】リングギヤがオイルをかき上げているところを
示す断面図である。

【符号の説明】

２ ディファレンシャルキャリア ３ リングギヤ 3a 歯部 3b 歯底部 10 ピニオンギヤ 12 トランスミッション 13 オイル 16 噛合部 17 遮蔽板 18 圧入部 19 うず巻き部 20 オリフィス

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディファレンシャルキャリアの内部にト
   ランスミッションの回転出力軸に連繋したピニオンギヤ
   を設けると共に、該ピニオンギヤと噛合するリングギヤ
   を回転自在に設け、該リングギヤの歯部背面の外周部に
   リング状の圧入部と、該圧入部の外周縁に一体に設けら
   れ前記リングギヤの歯部側に湾曲し、前記噛合部にオイ
   ルを供給するオリフィスを円周上に設けたうず巻き部と
   からなる遮蔽板を装着させたことを特徴とするディファ
   レンシャル装置。
2. 【請求項２】 前記うず巻き部の円周上に設けたオリフ
   ィスは、前記リングギヤの歯底部に対応していることを
   特徴とする請求項１記載のディファレンシャル装置。