JPH09174277A

JPH09174277A - アルミニウム材料ろう付け用組成物及びろう付け用アルミニウム材料、並びにアルミニウム材料のろう付け方法

Info

Publication number: JPH09174277A
Application number: JP33911595A
Authority: JP
Inventors: Tsutomu Usami; 勉宇佐見; Masaki Kumagai; 正樹熊谷
Original assignee: Sumitomo Light Metal Industries Ltd
Current assignee: Sumitomo Light Metal Industries Ltd
Priority date: 1995-12-26
Filing date: 1995-12-26
Publication date: 1997-07-08

Abstract

(57)【要約】【課題】低コストで、アルミニウム材料のろう付けを
行ない得ると共に、高い接合率と良好なろう付け性が得
られるろう付け用組成物を提供し、またそのようなろう
付け用組成物を用いたアルミニウム材料、並びにアルミ
ニウム材料のろう付け方法を提供する。【解決手段】アルミニウム材料のろう付け用組成物
を、アルミニウムと共晶合金を形成し得る金属又は該金
属とアルミニウムとの合金からなるろう材粉末と、フッ
化物系フラックス粉末と、ポリオキシエチレン鎖を有す
るポリエーテル系物質とを、水に懸濁せしめることによ
り、構成する。また、かかるろう付け用組成物を表面に
塗布後、乾燥させることにより、コーティング層が形成
せしめられてなる第一のアルミニウム材料と、第二のア
ルミニウム材料を、コーティング層を介して当接せし
め、その状態で加熱することにより、ろう付けを行な
う。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【技術分野】本発明は、アルミニウム材料ろう付け用組
成物及びろう付け用アルミニウム材料、並びにアルミニ
ウム材料のろう付け方法に係り、特に、ろう付けを低コ
ストで行なうことが出来ると共に、高い接合率と良好な
ろう付け性が発揮され得るアルミニウム材料のろう付け
技術に関するものである。

【０００２】

【背景技術】従来より、アルミニウム若しくはアルミニ
ウム合金からなるアルミニウム材料同士をろう付けによ
り接合する場合には、ろう線材を用いて、トーチろう付
けする方法が採用されてきたが、この方法によれば、接
合するアルミニウム材料の形状が簡単な形状であり、且
つ接合箇所が少ない場合には、対応出来るものの、熱交
換器を構成するチューブ材とフィン材とをろう付けする
場合のように、接合箇所が多く、且つろう付けするアル
ミニウム材料の形状が複雑である場合には、充分に対応
することが出来なかった。

【０００３】そのために、最近では、アルミニウム材料
にろう材を張り合わせてなるブレージングシートを用い
る方法が、提案されている。例えば、このブレージング
シートを用いる方法として、真空中でろう付けしたり、
不活性雰囲気中でろう付けしたり、或いはフラックスを
用いてろう付けしたりする等の様々なろう付け方法が、
提案されているのである。より具体的には、熱交換器の
一種であるラジエータを構成するフィン材とチューブ材
をろう付けする場合には、全体の厚さの１０％程度の厚
さとなるようにＡｌ−Ｓｉ合金ろう材が両面にクラッド
された（張り合わされた）、アルミニウム圧延材からな
るフィン材に、アルミニウム押出成形により得られたチ
ューブ材を当接せしめた状態において、加熱することに
より、ろう付けが実施されるのである。

【０００４】ところで、そのようなブレージングシート
を用いて、アルミニウム材料をろう付けする方法は、接
合箇所が多い場合や、アルミニウム材料の形状が複雑な
場合には、有効であるものの、前記ブレージングシート
が、母材の全面に亘って、ろう材が張り合わされてなる
ものであるところから、ろう付けに必要のない部分に
も、ろう材が張り合わされており、従って非常に無駄の
多い、それ故に、コストが高く付くという問題を有して
いる。また、ろう材がろう付けに必要のない部分にも張
り合わされているところから、ろう付け加工を施す際
に、そのような余分なろう材が母材を侵食して、母材の
変形が惹起されるという問題も有しているのである。

【０００５】そこで、このような欠点を解消するため
に、特表平６−５０４４８５号公報や特開平６−１１４
５９２号公報等においては、ろう材粉末とフラックス粉
末との混合物からなるろう付け用組成物を、そのまま
で、或いはスラリー状態にしてから、アルミニウム材料
の表面に塗布する方法が提案されている。そして、この
方法によれば、ろう付けに必要な部分にのみ、ろう材を
塗布することが出来るところから、ろう材のコストを低
減することが出来るのである。

【０００６】しかしながら、かかる方法にあっても、コ
ストの低減が可能とはなるものの、ろう付けによる接合
率の低下或いはろう付け不良が惹起される問題を内在し
ている。より詳細には、前記ろう付け用組成物が粉末の
ままで適用される場合には、このろう付け用組成物が飛
散し易いところから、アルミニウム材料に対するろう付
け用組成物の適用が不充分となり、ろう材の適用量の不
足が生じて、接合率を著しく低下せしめる恐れを内在し
ているのである。また、ろう付け用組成物をスラリー状
態にしてから適用する場合には、スラリーをアルミニウ
ム材料に塗布した後に、乾燥させると、スラリー塗布層
がアルミニウム材料から脱落し易く、その結果、アルミ
ニウム材料に対するろう付け用組成物の適用が不均一、
即ち適用されるろう材量が不均一となる。そして、その
ような状態で、ろう付けを施すと、ろう材量が過少とな
る部分では、接合率が低下し、反対に、ろう材量が過多
となる部分では、余分なろう材がアルミニウム材料を侵
食することで、アルミニウム材料の強度が低くなるので
あり、そのように強度が低くなった部分に、アルミニウ
ム材料を固定するジグ等による押圧力がかかることによ
って、座屈が惹起されて、ろう付けが不良となるのであ
る。

【０００７】

【解決課題】ここにおいて、本発明は、かかる事情を背
景として為されたものであって、その解決課題とすると
ころは、低コストでろう付けを行ない得ると共に、高い
接合率と良好なろう付け性が得られるアルミニウム材料
ろう付け用組成物を提供することにあり、またそのよう
な特徴を発揮し得る、該ろう付け用組成物にてアルミニ
ウム材料を処理して得られるろう付け用アルミニウム材
料、更にはアルミニウム材料のろう付け方法を提供する
ことにある。

【０００８】

【解決手段】そして、本発明は、そのような課題を解決
すべく、アルミニウムと共晶合金を形成し得る金属又は
該金属とアルミニウムとの合金からなるろう材粉末と、
フッ化物系フラックス粉末と、ポリオキシエチレン鎖を
有するポリエーテル系物質とを、水に懸濁せしめてなる
ことを特徴とするアルミニウム材料ろう付け用組成物
を、その要旨とするものである。

【０００９】このような本発明に従うアルミニウム材料
ろう付け用組成物にあっては、アルミニウムと共晶合金
を形成し得る金属又は該金属とアルミニウムとの合金か
らなるろう材とフッ化物系フラックスとが含有せしめら
れているところから、このろう付け用組成物がアルミニ
ウム材料に塗布されて、乾燥せしめられることによって
形成されるコーティング層には、それらろう材粉末とフ
ラックス粉末が効果的に存在せしめられることとなるの
である。即ち、そのようなコーティング層の形成に際し
て、本発明に従うアルミニウム材料ろう付け用組成物に
は、ポリオキシエチレン鎖を有するポリエーテル系物質
が添加されているところから、その接着特性によって、
必須の添加成分であるろう材粉末とフラックス粉末と
は、アルミニウム材料に有利に固着、保持せしめられ得
るのであり、従って前記コーティング層には、ろう材粉
末とフラックス粉末が均一に含有せしめられて、均一組
成の層として形成されることとなるのである。しかも、
かかるろう付け用組成物は、必要な箇所へ、必要な量だ
け塗布されるものであるところから、その使用量を有利
に低減し得るのである。

【００１０】また、本発明は、アルミニウム若しくはア
ルミニウム合金からなるアルミニウム材料に、アルミニ
ウムと共晶合金を形成し得る金属又は該金属とアルミニ
ウムとの合金からなるろう材粉末と、フッ化物系フラッ
クス粉末と、ポリオキシエチレン鎖を有するポリエーテ
ル系物質とを水に懸濁せしめてなるろう付け用組成物
を、塗布、乾燥することにより、かかるろう材粉末及び
フラックス粉末を含有するコーティング層が、該アルミ
ニウム材料の表面に形成されていることを特徴とするろ
う付け用アルミニウム材料をも、その要旨としている。

【００１１】そして、このようなろう付け用アルミニウ
ム材料にあっては、そのろう付けされるべき部位の表面
に、ろう材粉末とフッ化物系フラックス粉末が含有せし
められた均一組成のコーティング層が形成されていると
ころから、このコーティング層を介して、他のアルミニ
ウム材料が当接せしめられた状態で、加熱されることに
より、容易にろう付けが行なわれ得るのである。

【００１２】さらに、本発明は、アルミニウム若しくは
アルミニウム合金からなる第一のアルミニウム材料に、
アルミニウムと共晶合金を形成し得る金属又は該金属と
アルミニウムとの合金からなるろう材粉末と、フッ化物
系フラックス粉末と、ポリオキシエチレン鎖を有するポ
リエーテル系物質とを水に懸濁せしめてなるろう付け用
組成物を、塗布、乾燥することにより、かかるろう材粉
末及びフラックス粉末を含有するコーティング層を、該
第一のアルミニウム材料の表面に形成する一方、このコ
ーティング層を介して、該第一のアルミニウム材料に対
して、アルミニウム若しくはアルミニウム合金からなる
第二のアルミニウム材料を当接せしめた状態において、
加熱することにより、それら第一のアルミニウム材料と
第二のアルミニウム材料とをろう付けすることを特徴と
するアルミニウム材料のろう付け方法をも、その要旨と
するものである。

【００１３】なお、このようなアルミニウム材料のろう
付け方法にあっては、表面のろう付けされるべき部位に
ろう材粉末とフッ化物系フラックス粉末を含有する均一
組成のコーティング層が形成された第一のアルミニウム
材料を用いるところから、接合率が高く、ろう付け性に
優れた、高品質のアルミニウム材料ろう付け製品を、有
利に製造し得るのである。

【００１４】

【発明の実施の形態】ところで、上記した本発明に従う
アルミニウム材料のろう付け用組成物に用いられるろう
材としては、ろう付け加工時に、アルミニウムと共晶合
金を形成し得る金属又は該金属とアルミニウムとの合金
であれば、従来から公知のものが、何れも用いられ得る
ものである。そして、そのようなろう材の具体例として
は、Ｓｉ、Ｚｎ、Ｃｕ、Ｇｅ等の金属や、それら金属の
少なくとも１種類とアルミニウムとの合金を挙げること
が出来る。

【００１５】また、本発明に従うアルミニウム材料のろ
う付け用組成物に用いられるフラックスは、アルミニウ
ム材料の表面に形成される酸化皮膜を還元して除去せし
め、アルミニウムとろう材との共晶合金の形成を促進す
るために添加されるものであるが、そのようなフラック
スとしては、フッ化物系フラックスであれば、従来から
公知の如何なるものも採用され得るものであり、より具
体的には、ＫＦ−ＡｌＦ₃、ＫＡｌＦ₄、Ｋ₂Ａｌ
Ｆ₅、Ｋ₃ＡｌＦ₆、ＲｂＦ−ＡｌＦ₃等を挙げること
が出来る。なお、ここで、フラックスがフッ化物系フラ
ックスに限定されているのは、フッ化物系フラックス以
外のフラックス、例えば、塩化物系フラックスを用いる
場合には、アルミニウム材料の腐食を招き易いために、
ろう付け後において、残留物の特別な除去処理を行なわ
ねばならず、また臭化物系フラックスを用いる場合に
は、取り扱い上の安全性に問題を生じる等の問題がある
ところから、好ましくないからである。

【００１６】さらに、本発明に従うアルミニウム材料の
ろう付け用組成物に用いられるポリオキシエチレン鎖を
有するポリエーテル系物質は、接着特性を有するもので
あって、それにより、前記ろう材と前記フッ化物系フラ
ックスとをアルミニウム材料に結合、固着せしめるバイ
ンダーとして、添加されるものであるが、そのようなポ
リエーテル系物質としては、ポリオキシエチレン鎖（ポ
リエチレングリコール鎖）を有する従来から公知の各種
のものが適宜に選択採用され、具体的には、高級アルコ
ール、アルキルフェノール、脂肪酸等に、ポリエチレン
グリコール乃至はポリオキシエチレンを結合させたポリ
オキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル
や、ポリプロピレングリコールの両端にポリエチレング
リコールを付加重合させて得られるポリオキシプロピレ
ン・ポリオキシエチレンブロック共重合体等が挙げられ
る。また、このようなポリエーテル系物質には、アルミ
ニウム材料への接着性を高めるべく、必要に応じてエポ
キシ基やカルボキシ基等の官能基が導入されることとな
る。

【００１７】なお、ここで、ポリエーテル系物質がポリ
オキシエチレン鎖を有するものに限定されているが、そ
れは、このポリオキシエチレン鎖を有するポリエーテル
系物質が、ろう付けを行なう温度より低い温度で、窒素
ガス雰囲気中において、容易に分解、焼失して、しかも
灰分が１％以下となるものであり、それによって、ろう
付け後にアルミニウム材料の表面を汚すことが防止され
るからであり、一方、ポリオキシエチレン鎖を有してい
ないポリエーテル系物質、更には他の接着性物質は、窒
素ガス雰囲気中において、ろう付け温度より低い温度で
は、分解、焼失し難く、その結果、ろう付けがうまく行
なわれなくなるからである。

【００１８】そして、本発明に従うアルミニウム材料ろ
う付け用組成物は、前記の如きろう材粉末と、フッ化物
系フラックス粉末と、ポリオキシエチレン鎖を有するポ
リエーテル系物質とを、適当量の水に、均一に分散、懸
濁させることにより、容易に調製され得るのである。な
お、ろう材の１重量部に対するフッ化物系フラックス粉
末の配合割合は、通常、０．１〜５重量部、好ましくは
０．１〜３重量部とされる。けだし、かかる配合割合が
０．１重量部よりも少ない場合には、フラックスの効果
が充分に発揮され得ないからであり、また、かかる配合
割合が５重量部よりも多い場合には、より以上のフラッ
クスの使用効果が得られるというわけではないからであ
る。また、ろう材の１重量部に対するポリオキシエチレ
ン鎖を有するポリエーテル系物質の配合割合は、通常、
０．１〜１０重量部、好ましくは０．１〜３重量部とさ
れる。けだし、かかる配合割合が０．１重量部よりも少
ない場合には、前記ろう材及びフッ化物系フラックスと
アルミニウム材料を結合、固着せしめる作用が不充分と
なるからであり、また、かかる配合割合が１０重量部よ
りも多い場合には、より一層の結合、固着作用が得られ
るわけではないからである。更に、水の量は、特に限定
されるものではないが、ろう付け用組成物が塗布のため
に適当な粘度を有するように、適宜に調整される。

【００１９】また、本発明に従うろう付け用アルミニウ
ム材料は、上記アルミニウム材料ろう付け用組成物を用
い、それを、アルミニウム若しくはアルミニウム合金か
らなるアルミニウム材料のろう付けされるべき所定部位
に、適当量塗布することによって、容易に得ることが出
来る。より詳細には、ろう付けされるアルミニウム材料
としては、通常、アルミニウム若しくはアルミニウム合
金からなるアルミニウム材料のろう付けに用いられるも
のであれば、如何なるものでも用いることが出来、その
ようなアルミニウム材料の表面に、前記の如きアルミニ
ウム材料ろう付け用組成物を塗布した後、乾燥すること
により、得られるのである。なお、アルミニウム材料に
対するろう付け用組成物の塗布量は、ろう材量で、通
常、１ｇ／ｍ²〜１００ｇ／ｍ²程度とされ、その塗布
方法は、均一に塗布することが出来れば、如何なる方法
で塗布されても、何等差し支えなく、例えば刷毛で塗布
する方法、スプレーによる塗布方法、ロールによる塗布
方法等を採用することが出来る。また、かかるろう付け
用組成物を塗布した後に行なわれる乾燥処理は、分散媒
体である水を蒸発させて除去するものであって、公知の
各種の手法に従って行なわれ得、例えば、１２０℃程度
の温度条件下で、加熱乾燥せしめる等の手法が採用され
るのである。

【００２０】さらに、本発明に従うアルミニウム材料の
ろう付け方法にあっては、前記したろう付け用アルミニ
ウム材料を用いることにあり、このろう付け用アルミニ
ウム材料と、接合対象たるアルミニウム若しくはアルミ
ニウム合金からなる第二のアルミニウム材料とを、通常
の手法に従ってろう付けすることにより、それら二つの
アルミニウム材料のろう付けを有利に行ない得るのであ
る。即ち、前記の如くして、そのろう付けされるべき部
位の表面に、ろう材及びフッ化物系フラックスを含有せ
しめてなる均一組成のコーティング層が形成された第一
のアルミニウム材料を用い、かかるコーティング層を介
して、所定の第二のアルミニウム材料を当接せしめて、
従来と同様にして加熱することにより、目的とするろう
付け製品を高い接合率において、且つ優れたろう付け性
において、従って侵食や座屈等の問題のない高品質な製
品として、有利に製造し得るのである。

【００２１】

【実施例】以下に、本発明を更に具体的に明らかにする
ために、本発明の幾つかの実施例を示すこととするが、
本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制
約をも受けるものでないことは、言うまでもないところ
である。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更
には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱し
ない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変
更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解さ
れるべきである。

【００２２】先ず、下記表１に示される配合割合（重量
比）において、各種のろう材と、フッ化物系フラックス
と、ポリオキシエチレン鎖を有するポリエーテル系物質
とを水に添加せしめ、それらを混合、分散させて、本発
明例１〜７のアルミニウム材料ろう付け用組成物を調製
した。なお、ろう材としては、シリコン粉末（Ｓｉ）、
シリコンとアルミニウムとの合金からなる粉末（Ａｌ−
１２％Ｓｉ）、又は亜鉛粉末（Ｚｎ）を用い、また、フ
ッ化物系フラックスとしては、ＫＡｌＦ₄の粉末とＫ₃
ＡｌＦ₆の粉末とを、３２：６８（重量比）の割合にお
いて混合したものを用いた。更に、ポリオキシエチレン
鎖を有するポリエーテル系物質としては、ポリオキシエ
チレン（１６）ノニルフェニルエーテル（アデカトール
ＮＰ−７６０：旭電化工業株式会社製）又はポリオキシ
プロピレン・ポリオキシエチレンブロック共重合体（ア
デカプルロニックＦ−８８：旭電化工業株式会社製）を
用いた。

【００２３】

【表１】Ａ：ポリオキシエチレン（１６）ノニルフェニルエーテルＢ：ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロック共重合体

【００２４】また、比較のために、ポリオキシエチレン
鎖を有するポリエーテル系物質を用いることなく、ろう
材としてのシリコン粉末：１重量部とフッ化物系フラッ
クス粉末：３重量部とを混合せしめて、比較例１のアル
ミニウム材料ろう付け用組成物（混合粉末）を調製し
た。なお、フッ化物系フラックスとしては、上記した本
発明例と同様に、ＫＡｌＦ₄の粉末とＫ₃ＡｌＦ₆の粉
末を、３２：６８（重量比）の割合において混合したも
のを用いた。

【００２５】次いで、このようにして得られた各種のア
ルミニウム材料ろう付け用組成物を用いて、アルミニウ
ム材料に塗布処理し、その表面に均一組成のコーティン
グ層を形成した後、そのコーティング層を介して、別の
アルミニウム材料を当接せしめた状態で、加熱すること
により、ろう付けを実施した。より具体的には、アルミ
ニウム合金：ＪＩＳ−Ａ１０５０を押出成形することに
より得られたチューブ材（形材）の表面上のろう付けを
施す箇所に、ろう材量で５ｇ／ｍ²の割合となるよう
に、前記各種のアルミニウム材料ろう付け用組成物をそ
れぞれ塗布した後、１２０℃で加熱乾燥して、ろう材と
フラックスとを含有してなるコーティング層を形成し
た。但し、比較例１のアルミニウム材料ろう付け用組成
物を適用する場合には、アルミニウム材料に、ろう付け
用組成物を粉末のままで塗布することにより、塗布層
（コーティング層）を形成した。次いで、このコーティ
ング層を介して、アルミニウム合金板：ＪＩＳ−Ａ３０
０３をコルゲート状に加工することにより得られたフィ
ン材を、当接せしめ、その状態で、窒素ガス雰囲気中
で、３０分掛けて６００℃まで加熱し、その温度で３分
間保持した後、炉冷することにより、それらアルミニウ
ム材料（チューブ材＋フィン材）をろう付けした。

【００２６】そして、かかるろう付けの後、前記チュー
ブ材とフィン材との接合部分における接合率及びろう付
け性について調べ、その結果を、下記表２に示した。な
お、接合率は、接合部分１００箇所当たりの接合されて
いる箇所の割合を百分率で表したものである。また、ろ
う付け性は、接合部分において、フィレットが形成され
て、その断面組織において、金属結合が為されており、
且つアルミニウム材料が、ろう材により侵食されておら
ず、座屈を生じていないものを○と評価し、そうでない
ものを×と評価した。

【００２７】

【表２】

【００２８】かかる表２に示される結果から明らかなよ
うに、本発明に従うアルミニウム材料ろう付け用組成物
を用いて、アルミニウム材料をろう付けした場合には、
高い接合率と優れたろう付け性が有利に発揮され得るの
である。一方、比較例のアルミニウム材料ろう付け用組
成物を用いて、アルミニウム材料をろう付けした場合に
は、ろう材及びフラックスの均一な塗布が困難であると
ころから、接合率も低く、一部において、適用されるろ
う材の量が過多となることにより座屈を生じ、ろう付け
性が不良となった。

【００２９】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従うアルミニウム材料ろう付け用組成物によれば、目
的とするろう付け部位に対して、必要量のろう材を用い
るだけでよいところから、ろう材のコストを有利に低減
し得るのであり、しかも、アルミニウム材料のろう付け
が、高い接合率と優れたろう付け性において、有利に実
現され得るのである。

【００３０】それに加えて、本発明に従うアルミニウム
材料ろう付け用組成物に添加されているフラックスは、
フッ化物系フラックスであるところから、特別な除去処
理を必要とすることもないという利点を有しているので
ある。しかも、本発明に従うアルミニウム材料ろう付け
用組成物には、ポリオキシエチレン鎖を有するポリエー
テル系物質が含有せしめられているが、かかるポリオキ
シエチレン鎖を有するポリエーテル系物質は、窒素雰囲
気中のろう付け操作において、容易に分解、焼失し、灰
分が１％以下となるところから、ろう付け後のアルミニ
ウム材料の表面汚れの問題を惹起することもないという
利点も有している。

【００３１】また、本発明に従うろう付け用アルミニウ
ム材料は、上記の如き優れたアルミニウム材料ろう付け
用組成物をアルミニウム材料の表面に塗布、乾燥するこ
とにより、容易に得ることが出来、しかも、そのような
ろう付け用アルミニウム材料によれば、それが、ろう材
とフラックスを含有してなる均一組成のコーティング層
を有していることから、ろう付けを行なう際に、高い接
合率と優れたろう付け性が効果的に発揮される得るので
ある。

【００３２】さらに、本発明に従うアルミニウム材料の
ろう付け方法によれば、アルミニウム材料を低コストで
接合し得ると共に、高い接合率と優れたろう付け性を実
現し得るところから、より低コストで、より品質の良好
なアルミニウム材料ろう付け製品を、有利に製造し得る
のである。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】アルミニウムと共晶合金を形成し得る金
属又は該金属とアルミニウムとの合金からなるろう材粉
末と、フッ化物系フラックス粉末と、ポリオキシエチレ
ン鎖を有するポリエーテル系物質とを、水に懸濁せしめ
てなることを特徴とするアルミニウム材料ろう付け用組
成物。
【請求項２】アルミニウム若しくはアルミニウム合金
からなるアルミニウム材料に、アルミニウムと共晶合金
を形成し得る金属又は該金属とアルミニウムとの合金か
らなるろう材粉末と、フッ化物系フラックス粉末と、ポ
リオキシエチレン鎖を有するポリエーテル系物質とを水
に懸濁せしめてなるろう付け用組成物を、塗布、乾燥す
ることにより、かかるろう材粉末及びフラックス粉末を
含有するコーティング層が、該アルミニウム材料の表面
に形成されていることを特徴とするろう付け用アルミニ
ウム材料。
【請求項３】アルミニウム若しくはアルミニウム合金
からなる第一のアルミニウム材料に、アルミニウムと共
晶合金を形成し得る金属又は該金属とアルミニウムとの
合金からなるろう材粉末と、フッ化物系フラックス粉末
と、ポリオキシエチレン鎖を有するポリエーテル系物質
とを水に懸濁せしめてなるろう付け用組成物を、塗布、
乾燥することにより、かかるろう材粉末及びフラックス
粉末を含有するコーティング層を、該第一のアルミニウ
ム材料の表面に形成する一方、このコーティング層を介
して、該第一のアルミニウム材料に対して、アルミニウ
ム若しくはアルミニウム合金からなる第二のアルミニウ
ム材料を当接せしめた状態において、加熱することによ
り、それら第一のアルミニウム材料と第二のアルミニウ
ム材料とをろう付けすることを特徴とするアルミニウム
材料のろう付け方法。