JPH08260030A - 極低炭素ステンレス鋼の真空精錬方法 - Google Patents
極低炭素ステンレス鋼の真空精錬方法Info
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Abstract
過剰な酸化クロムの生成を防止し、高精度で終点制御す
る。 【構成】 粗脱炭処理したステンレス溶鋼をVOD法で
真空酸素脱炭処理及び成分調整する際、スラグの塩基度
(%CaO)/(%SiO2 )を1.5〜3.5に調整
し、次いでΣO2 =ΣO2 in−ΣO2 out で定義される
真空容器内の残留酸素量ΣO2 からスラグ中酸化クロム
濃度を算出し、酸化クロム濃度が40%未満で且つ脱炭
速度が目標値まで低下した時点で酸素吹精を停止し、更
にスラグ中高真空雰囲気下でステンレス溶鋼を不活性ガ
ス撹拌しスラグ中固体酸素による脱炭反応を促進させ
る。ただし、ΣO2 inはランスから吹き込まれた酸素量
及びエアリーク中の酸素量の積算量,ΣO2 out は排ガ
ス(O2 +CO+CO2 )中の酸素積算量である。真空
脱炭処理の直前に、CaO−Al2 O3 系フラックスを
使用してスラグの塩基度(%CaO)/(%SiO2 )
を1.2〜3.0の範囲に調整することが好ましい。
Description
御及びスラグ組成の調整を行いながら極低炭素ステンレ
ス鋼を製造する方法に関する。
D法等で仕上げ脱炭が施されている。VOD法は、真空
下での酸素吹製によって溶鋼を脱炭処理するものであ
り、真空下でCO分圧を下げ、溶鋼中[Cr]の酸化を
抑制しながら脱炭精錬できる長所をもっている。このV
OD方法は、製品に要求される品質がますます厳しくな
っている近年の傾向に伴い極低炭素化されたステンレス
鋼を提供する方法として有用である。VOD法では、電
気炉で溶製したステンレス溶鋼を、転炉等の脱炭炉にお
ける酸素吹錬により粗脱炭処理した後、真空処理用の取
鍋に出鋼し、次のVOD工程に送る。取鍋が真空容器内
にセットされると、排気操作が開始され、所定の真空度
に達した段階で上吹きランスから溶鋼中に酸素が吹き込
まれる。容器内の真空度は徐々に上昇し、最終的には1
0トール以下までに達する。この間、酸素吹精の終了時
点が決定される。代表的な決定方法では、排ガス中のC
O,CO2 濃度から脱炭量を算出し、算出値を溶鋼中
[C]に変換し、目標[C]となった時点で酸素吹精を
終了する。
脱炭が困難であり、Crの酸化が避けられない。また、
低炭素域での的中精度が低下し、酸素吹精の終点決定が
難しくなることがある。このような場合、脱炭反応に有
効に消費された吹込み酸素量の割合を計算し、酸素脱炭
効率を算出する。この酸素脱炭効率又は脱炭速度の停滞
を判断基準の補足情報とし、これらの情報と溶鋼中
[C]推定値とを総合的に判断して酸素吹精を終了する
こともある。この際、精度を向上させるため、排ガス中
の窒素濃度等からエアリーク量を算出し、排ガス組成を
補正して真空酸素脱炭の終点を制御することが特公昭5
6−29731号公報,特開平2−10110号公報等
で紹介されている。
溶鋼を酸素脱炭処理するとき、極低炭素域では脱炭速度
が低下し、排ガス成分としてCO,CO2 の濃度が著し
く低下する。その結果、酸素吹精の終点を判断すること
が困難になる。しかも、種々の外乱によって終点制御の
精度が低下する。この点、従来法では、目標[C]が達
成されないとき再度の酸素吹精が必要とされ、生産性の
低下を招いている。また、目標[C]を達成するために
過度の吹精を行うと、過剰量の酸素供給に起因してCr
の酸化が生じ、スラグの流動性を悪化させ、低炭素域ま
での脱炭反応が一層阻害される。また、高価なSi,A
l等の還元剤,脱酸剤の消費量が増加し、製造コストを
高める原因となる。しかも、AlやTi等を添加した鋼
種では、過剰な添加に起因して表面傷を発生し易い材料
となる。本発明は、このような問題を解消すべく案出さ
れたものであり、排ガス分析からスラグ中のCr2 O3
量を推定することにより、真空酸素脱炭を適切なタイミ
ングで終了し、過吹精によるCr酸化量の増大を防止
し、高生産性で極低炭素ステンレス鋼を溶製することを
目的とする。
は、その目的を達成するため、粗脱炭処理したステンレ
ス溶鋼を取鍋に出鋼し、スラグの塩基度(%CaO)/
(%SiO2 )を1.5〜3.5に調整し、次いで真空
酸素脱炭処理及び成分調整する際、式(1)で定義され
る真空容器内の残留酸素量ΣO2 からスラグ中酸化クロ
ム濃度を算出し、スラグ中酸化クロム濃度が40%未満
で且つ脱炭速度が目標値まで低下した時点で酸素吹精を
停止し、更に高真空雰囲気下でステンレス溶鋼を不活性
ガス撹拌してスラグ中固体酸素による脱炭反応を促進さ
せる真空脱炭処理を行うことを特徴とする。 ΣO2 =ΣO2 in−ΣO2 out ・・・・(1) ただし、ΣO2 inはランスから吹き込まれた酸素量及び
エアリーク中の酸素量の積算量であり、ΣO2 out は排
ガス(O2 +CO+CO2 )中の酸素積算量である。
2 +%Al2 O3 )は、真空脱炭処理の直前にCaO−
Al2 O3 系フラックスを使用して1.2〜3.0の範
囲に調整することが好ましい。本発明に従った真空精錬
方法は、10重量%以上のCrを含有するステンレス鋼
に適用される。特に、Cr含有量が18重量%以上のス
テンレス鋼を、(C+N)値として0.035重量%以
下の極低炭素・窒素レベルまで脱炭することに有効であ
る。また、VOD法によるステンレス鋼の製造に限ら
ず、他の鋼種を同様にして減圧雰囲気下で酸素源を供給
しながら低炭素鋼を製造する場合にも適用される。
低炭素域になるに従ってCの酸化、すなわち脱炭反応に
比較してCrの酸化が優先的に生じる。Crの酸化挙動
は、排ガス分析から推定される。このCrの酸化挙動を
補足情報として排ガス分析から推定される脱炭量や脱炭
速度の推移から真空酸素脱炭終点を決定するとき、適切
な時点で酸素吹精が停止され、過不足なく極低炭素域ま
での脱炭が可能になる。Crの酸化挙動は、脱炭速度や
脱炭量を推定している排ガス分析から脱炭反応に寄与し
ない残留酸素量を引くことにより求められる。真空容器
内に持ち込まれる酸素量O2 inは、ランスから吹き込ま
れる酸素とエアリーク中の酸素に由来する。真空容器外
に持ち出される酸素量O2 out は、O2 ,CO,CO2
等として排ガス中に含まれる酸素である。そこで、これ
ら酸素量O2 in及びO2 out を積算し、ΣO2 =ΣO2
in−ΣO2 out として残留酸素量ΣO2 を求める。
される酸素の量を示し、大半が溶鋼中Crの酸化及び溶
鋼中への酸素の溶解である。溶鋼に溶解する酸素の量
は、溶鋼成分,温度,真空度等によって定まり、経験的
に推定できる量であるが、クロムの酸化量に比較しては
るかに少ない。この点から、真空酸素脱炭中の残留酸素
量は、クロムの酸化に消費された量といえる。したがっ
て、残留酸素量ΣO2 からCrの酸化挙動が推定され
る。その結果、スラグ中の酸化クロム濃度を制御し、そ
の後の真空脱炭処理において極低炭素域まで効率よく脱
炭することが可能になる。このように、本発明において
は、クロムの酸化挙動、すなわちスラグ中の酸化クロム
濃度を補足情報として使用し、従来から使用していた脱
炭量や脱炭速度の推移と併用することにより、真空酸素
脱炭の終点が高精度で制御される。
び図2に示すフローチャートに従ってステンレス溶鋼が
処理される。ステンレス溶鋼は、転炉等で粗脱炭処理し
た後、仕上げ脱炭のために真空処理用の取鍋に出鋼さ
れ、真空脱炭処理装置に送られる。ことのときスラグ
は、酸素吹精前で塩基度(%CaO)/(%SiO2 )
が1.5〜3.5の範囲にあることが必要である。この
塩基度の調整により、酸素吹精によって酸化クロムがあ
る程度の量生成しても、スラグと溶鋼との活発な反応に
必要なスラグの流動性が確保される。転炉等から取鍋に
ステンレス溶鋼を出鋼する際、取鍋に持ち込まれるスラ
グ量及びスラグ中の易還元酸素量を求めておくことが好
ましい。真空酸素脱炭終了時の残留酸素量から推定した
酸化クロム生成量及び真空下での不活性ガス撹拌による
スラグ中固体炭素による脱炭処理期間における推定脱炭
量を基にして、求められた易還元酸素量から最終的に生
成,還元してスラグ中に存在する易還元性酸素量を推定
することが可能になる。ここで、易還元性酸素とは、S
iやAlによって還元される、すなわちSiO2 やAl
2 O3 等の酸化物よりも酸化安定性の低いCr2 O3 を
主とする酸化物に含まれている酸素をいう。また、脱酸
剤及び成分調整用の合金添加前に酸素センサーによって
溶鋼中の酸素量を測定するとき、最終的にスラグ中酸化
物の還元及び溶鋼中酸素の脱酸に必要な還元剤又は脱酸
剤の量が正確に求められる。このようにして、必要最少
限の量で合金等の成分調整材が添加され、精度の高い成
分調整が可能になる。
の酸化量に対応する。厳密にCrの酸化量が必要な場
合、経験値又は測定値として得られる酸素の溶解量を残
留酸素から引くことによりCrの酸化量を求めることが
できる。しかし、溶鋼に溶解している酸素量は無視でき
る程度の少量であるから、特別な場合の除き前掲の式
(1)に従って求めた残留酸素量が酸化クロム生成量に
換算される。酸化したCrはスラグ成分となるので、酸
化クロム生成量をスラグ中の酸化クロム濃度に換算す
る。換算値を一つの情報として、真空酸素脱炭の終点制
御に利用する。Crの酸化量又はスラグ中の酸化クロム
濃度は、操業条件にもよるが、脱炭反応が停滞してきた
場合に徐々に増加する傾向を示す。したがって、それ以
上に酸素を供給する酸素吹精を継続しても、効率よく脱
炭反応ができない状態になる。また、スラグ中の酸化ク
ロム濃度の上昇は、スラグの流動性を悪化させる原因で
あり、真空酸素脱炭終了後の真空脱炭期におけるスラグ
に固相状態で含まれている酸素(以下、これを固体酸素
という)による脱炭反応の効率を低下させる。したがっ
て、過剰の酸素吹精は、真空脱炭期をも含めた脱炭処理
による低炭素化を阻害する要因になる。
の効率を向上させるためには、真空酸素脱炭時に上昇す
るスラグ中の酸化クロム濃度を40%以下に抑制するこ
とが有効であることを発見した。すなわち、スラグの流
動性を確保し、脱炭反応の酸素源として使用される酸化
クロムは、濃度40%が限界である。酸化クロム濃度が
低いほどスラグの流動性は良くなるが、ステンレス溶鋼
のCr含有量に応じて酸化クロム濃度が高くなることが
避けられない。この場合、スラグの改質,次の真空撹拌
処理工程における撹拌強化,真空撹拌処理期間の延長等
によって、脱炭反応を促進させる。真空酸素脱炭の終点
判定には、排ガス分析から推定される脱炭速度が目標値
以下になっていることが必要である。目標の脱炭速度
は、Cr含有量と最終的な製品の目標C濃度、更には生
産計画上から次に設定できる真空脱炭期の時間、すなわ
ち真空脱炭期に予測される脱炭量によって定められる。
通常の操業では脱炭速度は低下傾向を示すが、脱炭速度
の変化が停滞域に入る前後、すなわち変化がなくなる時
点での脱炭速度として判断される。たとえば、極低炭素
・窒素ステンレス鋼では40ppm/分以下、特にCr
含有量が11〜30重量%の極低炭素・窒素ステンレス
鋼では10〜25ppm/分以下とすることが好まし
い。
を確認し、且つ推定酸化クロム濃度が40%に達する以
前に、送酸を中断し、真空酸素脱炭の終点とする。この
とき、常に二つの条件が必ずしも満足されることにはな
らないが、精度の低い低炭素域での推定メタル中[%
C]のみによる終点判定に比較して、はるかに確実に終
点が判定される。また、推定酸化クロム濃度が40%以
下で、目標の脱炭速度まで低下しない場合には、真空脱
炭開始前のフラックス添加によってスラグの酸化クロム
濃度を40%以下に希釈する。真空酸素脱炭を終了した
後、高真空雰囲気下で底吹き等で吹き込まれた不活性ガ
スによりステンレス溶鋼が撹拌される。ガス撹拌は、ス
ラグ中の固体酸素による脱炭反応を促進させ、ステンレ
ス溶鋼を効率よく低炭素域まで脱炭する。このときの脱
炭効率を向上させるためには、真空酸素脱炭終了後のス
テンレス溶鋼にCaO−Al2 O3 系フラックスを添加
し、スラグの塩基度(%CaO)/(%SiO2 +%A
l2 O3 )を1.2〜3.0の範囲に調整することが好
ましい。これにより、真空酸素脱炭期又は真空脱炭期の
スラグ/メタル反応が活発化し、特別な強撹拌を必要と
することなく脱炭効率が向上する。また、湯面に躍動に
スラグが効果的に追従し、メタルが雰囲気から保護さ
れ、極低炭素ステンレス鋼に望まれる吸窒抑制作用も呈
せられる。CaO−Al2 O3 系フラックスによるスラ
グの改質は、真空脱炭期以前に行うことが必要である
が、真空酸素脱炭期の酸素効率を考慮したとき、酸素吹
精終了後に行うことが好ましい。酸素吹精以前のスラグ
調整は、必然的にスラグ量を増加させ、酸素ジェットと
溶鋼の接触面積が減少し、酸素効率が低下するので好ま
しくない。
は、処理開始時のスラグ中酸化クロム濃度に応じで脱炭
速度が変わる。そこで、温度,撹拌強度,真空度等の条
件を一定にした下でスラグ中酸化クロム濃度と脱炭速度
との関係を予め定めておくとき、真空脱炭処理期間にお
ける脱炭挙動が把握される。たとえば、概念図を示す図
3にみられるように、スラグ中の酸化クロム濃度が上昇
すると脱炭速度が低下する。すなわち、酸化クロムの濃
度が高いと、スラグの流動性が低下し、スラグ中の固体
酸素による溶鋼の脱炭が不活発で脱炭速度が低いことか
ら、真空脱炭処理を長期間に設定する。逆に酸化クロム
の濃度が低いと、スラグの流動性が高く、スラグ/メタ
ル反応が活発になり脱炭速度が速くなることから、短時
間で目標の終点Cを達成できる。また、処理時間は、撹
拌強度を上昇させることによっても短縮できる。これら
の関係を利用し、真空脱炭処理開始時のメタル中C量と
目標終点C量に応じて、真空脱炭処理時間が設定され
る。このとき、真空酸素脱炭終点時に酸化クロム濃度を
把握しておくことにより、次の真空脱炭期の時間や撹拌
強度を設定する指標が与えられ、目安のない撹拌時間を
設けた操業法に比較してはるかに生産性が向上する。
気圧下で添加する。そして、目標成分となったとき、真
空容器を大気に開放し、処理されたステンレス溶鋼が連
続鋳造等の次工程に送られる。このとき、成分調整や脱
酸処理の的中率を向上させることに本発明を利用するこ
とができる。この場合、前述したように真空酸素脱炭処
理前の取鍋に持ち込まれたスラグ量とスラグの分析によ
ってスラグ中の易還元性酸素量を求めておく。この易還
元性酸素量と、本発明に従って推定される真空酸素脱炭
処理期間に生成した酸化クロム量と、真空脱炭処理期間
に固体酸素として消費された酸化クロム量から最終的に
脱炭処理後、すなわち成分調整直前のスラグ中酸化クロ
ム量を求め、更に脱酸剤の添加前に溶鋼中の酸素濃度を
測定する。これらの結果から、成分調整や溶鋼中酸素の
脱酸以外に消費される量を考慮して、必要最小限の合金
を添加する。これにより、過剰の成分調整材を使用する
ことなく、最終的に溶鋼成分を目標値に的中できる。ま
た、再精錬の必要もなく、下工程での表面品質も向上
し、経済的に極低炭素ステンレス鋼を製造することが可
能になる。
ス鋼用の溶銑を電気炉で溶製し、続いてLD転炉で酸素
吹錬し、成分を確認した後、VOD用の取鍋に71トン
出鋼した。出鋼時点におけるステンレス溶鋼は、C:
0.25重量%,N:0.009重量%,Si:0.0
1重量%,Cr:22.50重量%を含み、残部がFe
及び不可避的不純物の組成をもっていた。また、スラグ
厚みを測定することにより、取鍋に持ち込まれる転炉ス
ラグの量が約980kgであることが判った。更に、こ
のスラグを分析した結果、塩基度(%CaO/%SiO
2 )が2.0,(%Cr2 O3 )が21%,Cr2 O3
量で205.8kgであった。ステンレス溶鋼を収容し
た取鍋をVODの真空容器内にセットし、真空排気を開
始した。真空排気開始後約5分で、真空容器内の圧力が
120トールに達した。この時点で、上吹きランスを使
用して酸素の吹込みを開始した。また、取鍋底にセット
したポーラスプラグからArを吹込み、ステンレス溶鋼
をガス撹拌した。
[%C]及び脱炭速度は図4に示すように変化した。ま
た、排ガスの組成は、図5に示すように変化した。な
お、図5には排ガスに含まれているO2 ,CO,CO2
の濃度のみを示しているが、実際にはエアリークの補正
に必要なN2 ,Ar等も質量分析計で分析している。更
に、上吹きランスからの酸素吹込み制御系及び図5から
作成される排ガス成分系のデータからオンラインで随時
算出される残留酸素量の積算値、積算値から換算して得
られた酸化クロム量、転炉から持ち込まれたスラグ量及
び酸化クロム量、新たに装入したフラックス量約100
0kgスラグに基づいてスラグ中の酸化クロム濃度を算
出し、図6に示すように随時表示した。このときの操業
では、図4の脱炭速度が25ppm/分まで低下したこ
とを確認した後、図6のスラグ中酸化クロム濃度が2
4.6%に達した時点を酸素吹精の終点と定め、酸素吹
込みを停止した。酸素吹込みを停止した後、更に真空排
気を継続し、Arの底吹き撹拌により溶鋼を真空脱炭処
理した。ここで、真空脱炭処理開始時点におけるスラグ
中の酸化クロム濃度と脱炭速度との関係が経験的に判っ
ているので、最終[C]目標値に達するために必要な時
間として、この場合には10分間の真空脱炭処理期間を
設けた。最終的に成分調整のための合金を添加し、溶鋼
成分の分析結果を確認した後、真空容器を大気に開放し
た。処理されたステンレス溶鋼は、[C]が0.006
%であり、目標値を十分にクリアーしていた。
Crを含有するステンレス鋼用溶銑を電気炉で溶製し、
LD転炉で酸素吹錬した後、取鍋に70トンを出鋼し
た。取鍋内スラグを測定したところ、スラグ量が950
kg,(%Cr2 O3 )が22%,Cr2O3 量が20
9kgであった。ステンレス溶鋼を収容した取鍋をVO
Dの真空容器内にセットし、真空排気を開始した。真空
排気開始後約5分で、真空容器内の圧力が120トール
に達した。この時点で、上吹きランスを使用して酸素の
吹込みを開始した。酸素吹精中の脱炭データを図7に、
排ガスデータを図8に示す。また、実施例1と同様に、
上吹きランスからの酸素吹込み制御及び図8から随時算
出される残留酸素量とその酸化クロム換算量に基づき算
出されるスラグ中の酸化クロム濃度を図9に示す。この
操業では、脱炭速度が目標値15ppm/分に低下し、
スラグ中の酸化クロム濃度が19.5%になった時点で
酸素吹込みを終了した。酸素吹込み終了後、直ちにスラ
グの塩基度(%CaO)/(%SiO2 +%Al2 O
3 )が2.8になるようにCaO−Al2 O3 系フラッ
クスを添加した。そして、Ar底吹きによる撹拌を開始
し、真空脱炭処理を25分間継続した。次いで、成分調
整後、溶鋼成分の分析結果を確認し、真空容器を大気に
開放した。
Crを含有するステンレス鋼用溶銑を電気炉で溶製し、
LD転炉で酸素吹錬した後、取鍋に72トンを出鋼し
た。出鋼時にスラグ量及びCr2 O3 量を測定し、ステ
ンレス溶鋼を収容した取鍋をVODの真空容器内にセッ
トした。そして、真空酸素脱炭、次いで真空撹拌によっ
てステンレス溶鋼を脱炭処理した。この操業では、実施
例1と同様に随時算出される残留酸素量からスラグ中酸
化クロム濃度を追跡し、脱炭速度が目標値10ppm/
分に低下し、スラグ中の酸化クロム濃度が38.5%に
達した時点で真空酸素脱炭を終了した。酸素吹込み終了
後、直ちにスラグの塩基度(%CaO)/(%SiO2
+%Al2 O3 )が1.3になるようにCaO−Al2
O3 系フラックスを添加した。そして、Ar底吹きによ
る撹拌を開始し、真空脱炭処理を15分間継続した。次
いで、成分調整後、溶鋼成分の分析結果を確認し、真空
容器を大気に開放した。処理されたステンレス溶鋼の最
終[C]は、0.005%であった。
Crを含有するステンレス鋼用溶銑を電気炉で溶製し、
LD転炉で酸素吹錬した後、取鍋に72トンを出鋼し
た。出鋼時にスラグ量及びCr2 O3 量を測定し、ステ
ンレス溶鋼を収容した取鍋をVODの真空容器内にセッ
トした。そして、真空酸素脱炭、次いで真空撹拌によっ
てステンレス溶鋼を脱炭処理した。この操業では、実施
例1と同様に随時算出される残留酸素量からスラグ中酸
化クロム濃度を追跡したが、スラグ中の酸化クロム濃度
が40%を超えるまでに目標の脱炭速度10ppm/分
に達しなかったので、結果としてスラグ中の酸化クロム
濃度が42.5%に達した時点で酸素吹精を終了した。
酸素吹込み終了後、直ちにスラグの塩基度(%CaO)
/(%SiO2 +%Al2 O3 )が2.0及び酸化クロ
ム濃度が39%になるように、CaO+SiO2 系のフ
ラックス及びCaO−Al2 O3 系フラックスを添加し
た。そして、Ar底吹きによる撹拌を開始し、真空脱炭
処理を15分間継続した。次いで、成分調整後、溶鋼成
分の分析結果を確認し、真空容器を大気に開放した。処
理されたステンレス溶鋼の最終[C]は、0.005%
であった。
Crを含有するステンレス鋼用溶銑を電気炉で溶製し、
LD転炉で酸素吹錬した後、取鍋に70トンを出鋼し
た。取鍋内スラグを測定したところ、スラグ量が約1ト
ンであった。ステンレス溶鋼を収容した取鍋をVODの
真空容器内にセットし、真空排気を開始した。真空排気
開始後約6分で、真空容器内の圧力が120トールに達
した。この時点で、上吹きランスを使用して酸素の吹込
みを開始した。酸素吹精中の脱炭データを図10に、排
ガスデータを図11に示す。ただし、実施例で説明した
残留酸素量を算出してスラグ中の酸化クロム濃度を管理
することは行わなかった。
たので、的中精度の低下に拘らず図10の脱炭速度及び
[%C]から酸素吹精の終了時点を判定した。すなわ
ち、脱炭速度が40ppm/以下になり、十分に目標
[C]以下まで低下したと考えられる時間まで酸素吹精
を継続し、図11のO2 濃度曲線に上昇傾向が表れたと
ころで酸素吹込みを停止した。酸素吹込みを終了した
後、更に真空排気を継続し、Ar底吹きによる撹拌を1
5分間続け、ステンレス溶鋼を真空脱炭処理した。最終
的に、成分調整のために合金を添加し、溶鋼成分の分析
結果を確認した。このとき、分析値が0.009%と目
標[C]0.01%をクリアーしたものの、過剰な酸化
クロムの存在に起因してSiが目標値を大きく下回っ
た。これは、溶鋼成分として添加されたSiの大部分が
酸化クロムの還元に消費され、溶鋼中に残留するSiの
歩留まりが低下したことに由来する。そのため、再度成
分調整用合金を添加し、更に成分分析して分析結果が目
標値にあることを確認した上で、真空容器を大気に開放
した。この再調整のため、操業時間が計画より20分オ
ーバーした。
Crを含有するステンレス鋼用溶銑を電気炉及び転炉で
溶製し、VODで脱炭処理した。比較例2では、真空酸
素脱炭期に実施例1と同様に随時算出される残留酸素量
からスラグ中酸化クロム濃度を追跡した。しかし、スラ
グ中の酸化クロム濃度が40%を超えるまでに、脱炭速
度が目標値10ppm/分以下に達せず、結果的にスラ
グ中の酸化クロム濃度が42%となるまで酸素吹込みを
継続した。真空酸素脱炭処理が終了した後、直ちにCa
O−Al2 O3 系フラックスを添加し、スラグの塩基度
(%CaO)/(%SiO2 +%Al2 O3 )を2.0
に調整した。しかし、スラグ中の酸化クロム濃度が41
%であり、十分に希釈されていなかった。この状態でA
r底吹きによる撹拌を開始し、真空脱炭処理を15分間
継続した。処理後のステンレス溶鋼を分析したところ、
目標[C]0.005%が達成されていなかったので、
溶鋼を再吹精し、成分調整した後、真空容器を大気に開
放した。再吹精のため、このチャージでは精錬時間が長
くなり、しかも成分調整材を過剰に消費した。
Crを含有するステンレス鋼用溶銑を電気炉及び転炉で
溶製し、VODで脱炭処理した。比較例3では、真空酸
素脱炭期に実施例1と同様に随時算出される残留酸素量
からスラグ中酸化クロム濃度を追跡し、脱炭速度が目標
値20ppm/分以下になり、スラグ中の酸化クロム濃
度が20%に達した時点で酸素吹込みを停止した。真空
酸素脱炭処理が終了した後、直ちにCaO−Al2 O3
系フラックスを添加し、スラグの塩基度(%CaO)/
(%SiO2 +%Al2 O3 )を1.0に調整した。そ
して、Ar底吹きによる撹拌を開始し、真空脱炭処理を
15分間継続した。処理後のステンレス溶鋼を分析した
ところ、目標[C]0.005%が達成されていなかっ
た。この場合には、スラグの塩基度が適切でないことか
ら真空脱炭期の脱炭反応が十分に進まなかったことに原
因があるものと推察された。そこで、スラグの塩基度
(%CaO)/(%SiO2 +%Al2 O3 )が1.5
になるように再度調整し、真空脱炭処理を15分続行し
た。
Crを含有するステンレス鋼用溶銑を電気炉及び転炉で
溶製し、VODで脱炭処理した。比較例4では、真空酸
素脱炭期に実施例1と同様に随時算出される残留酸素量
からスラグ中酸化クロム濃度を追跡し、脱炭速度が目標
値25ppm/分以下になり、スラグ中の酸化クロム濃
度が20%に達した時点で酸素吹込みを停止した。真空
酸素脱炭処理が終了した後、直ちにCaO−Al2 O3
系フラックスを添加し、スラグの塩基度(%CaO)/
(%SiO2 +%Al2 O3 )を3.2に調整した。そ
して、Ar底吹きによる撹拌を開始し、真空脱炭処理を
15分間継続した。処理後のステンレス溶鋼を分析した
ところ、目標[C]0.007%が達成されていなかっ
た。
に過剰のフラックスを添加したことから、真空脱炭期の
脱炭反応が遅延したことに由来するものと考えられる。
また、過剰量のフラックス添加に伴って、溶鋼温度が再
吹精できない程度に大きく降下した。そのため、ステン
レス溶鋼を再度転炉に戻して加炭後、再度吹錬した。以
上の実施例及び比較例の操業結果を、表1にまとめて示
す。表1から明らかなように、本発明に従った実施例で
は、何れも目標[C]が達成されている。これに対し、
比較例では、酸素の過剰吹精,スラグ調整の不適切等の
原因により、真空脱炭期に有効な脱炭が行われず、目標
[C]が達成されなかったり、再吹精が必要であった。
この対比から、酸素吹精によってスラグ中に生成する酸
化クロム量に基づいて操業管理するとき、過剰な酸素吹
精が回避され、撹拌工程での脱炭効率が向上し、目標
[C]が高精度で達成されることが確認された。
は、極低炭素ステンレス溶鋼をVOD法で溶製する際、
酸素吹精中のCrの酸化量を推定し、目標とするスラグ
中酸化クロム濃度に達した時点で酸素を吹き止めてい
る。これにより、過剰な酸素吹精が防止されると共に、
従来の排ガス分析による終点制御法と併用することによ
って[C]の的中精度が高まり、再吹精,再吹錬等が回
避される。また、過剰に生成される酸化クロム量も低減
され、極低炭素ステンレス鋼の製造コストが軽減され
る。
係を概念的に示すグラフ
素量の積算値及びスラグ中の酸化クロム濃度
素量の積算値及びスラグ中の酸化クロム濃度
Claims (2)
- 【請求項1】 粗脱炭処理したステンレス溶鋼を取鍋に
出鋼し、スラグの塩基度(%CaO)/(%SiO2 )
を1.5〜3.5に調整し、次いで真空酸素脱炭処理及
び成分調整する際、式(1)で定義される真空容器内の
残留酸素量ΣO2 からスラグ中酸化クロム濃度を算出
し、スラグ中酸化クロム濃度が40%未満で且つ脱炭速
度が目標値まで低下した時点で酸素吹精を停止し、更に
高真空雰囲気下でステンレス溶鋼を不活性ガス撹拌して
スラグ中固体酸素による脱炭反応を促進させる真空脱炭
処理を行うことを特徴とする極低炭素ステンレス鋼の真
空精錬方法。 ΣO2 =ΣO2 in−ΣO2 out ・・・・(1) ただし、ΣO2 in:ランスから吹き込まれた酸素量及び
エアリーク中の酸素量の積算量 ΣO2 out :排ガス(O2 +CO+CO2 )中の酸素積
算量 - 【請求項2】 請求項1記載の真空脱炭処理の直前に、
CaO−Al2 O3系フラックスを使用してスラグの塩
基度(%CaO)/(%SiO2 +%Al2O3 )を
1.2〜3.0の範囲に調整する極低炭素ステンレス鋼
の真空精錬方法。
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- 1995-03-20 JP JP08739095A patent/JP3616423B2/ja not_active Expired - Fee Related
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