JPH08145090A - ディスクブレーキ用パッドスプリング - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 コストアップを招かず、かつ、着脱も容易な
ディスクブレーキ用パッドスプリングの提供。 【構成】 キャリパ１の開口部２を塞ぐ覆い部１１の両
端に係止アーム１２を設け、このアームの先端の係止片
１２ａをディスク溝３の溝底に係止させて覆い部１１の
内面でパッド５の裏板５ａをディスク中心側に押圧する
構造にしたので、コスト面で不利なねじ止め等が不要に
なり、キャリパに対する着脱性も向上する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、対向一対の摩擦パッド
をパッドピンで吊るして支持するいわゆるオープントッ
プ型のディスクブレーキに、泥よけカバー兼パッド振動
によるラトル音防止具として採用されるパッドスプリン
グに関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、対向一対の摩擦パッドを個々に
ピストンで押圧してディスクに摺接させるピストン対向
型のディスクブレーキにおいては、ディスクを跨ぐキャ
リパのブリッジ部に、摩擦パッドをディスク径方向に出
し入れするための開口部を設け、その開口部に横架した
パッドピンをパッド裏板のピン孔に通して対の摩擦パッ
ドをディスク軸方向スライド可能に支持している。

【０００３】この型式のディスクブレーキは、キャリパ
の開口部から摩擦面間に泥水が入り込み易いので開口部
を泥よけカバーで塞ぐことが行われている。

【０００４】また、パッドピンを遊嵌しただけであると
摩擦パッドが車両走行中に振動し、キャリパやパッドピ
ンに当たって打音（ラトル音）が生じることから、前述
の泥よけカバーをラトル音防止具として併用し、ばね力
を生じさせたこのカバーでパッド裏板のディスク外周側
の縁部をディスク中心側に押圧して摩擦パッドのガタツ
キを止めることが行われている。

【０００５】そのラトル音防止具を兼ねた泥よけカバー
がパッドスプリングと称されているものである。このパ
ッドスプリングは、押圧反力が加わるので、特開平１−
１８８７３０号公報に示されるようにねじ止めしたり、
実開平６−３２７７２号公報に示されるように、キャリ
パの開口部の内面に分割キャリパの反作用側ピースで入
口を閉じるガイド溝を対向して設け、その溝に両端を挿
入したりしてキャリパに取付けている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】パッドスプリングをね
じ止めする構造は、止めねじとねじ孔を必要とし、部品
数増、加工数増によるコストアップが伴う。さらに、パ
ッド交換をねじ止めしたパッドスプリングを外して行う
ことになるのでパッドの交換作業も煩わしくなる。

【０００７】また、実開平６−３２７７２号公報の技術
では、パッドスプリングを外すためにキャリパの反作用
側ピースを外す必要があり、パッドピンを抜き取るだけ
でパッド交換が許容されると云うオープントップ型ディ
スクブレーキの利点が失われてしまう。

【０００８】なお、パッドピンに弾性アームを係止させ
て取付けるパッドスプリングもあるが、このスプリング
ではパッドピンに拘束力が働かず、ラトル音の防止が不
充分になる。

【０００９】本発明は、これ等の不具合を無くすため
に、キャリパの開口部に止めねじを使わずに簡単に着脱
できるパッドスプリングを提供することを課題としてい
る。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明においては、キャリパの開口部を覆う覆い部
を有し、その覆い部でパッド裏板のディスク外周部の縁
部をディスク中心側に向けて押圧するパッドスプリング
の両端部に、前記開口部内に挿入される係止アームを設
け、この係止アームの互いに離反する方向に屈曲した先
端の係止片をキャリパのディスク溝底部に係止させる構
造にしたのである。

【００１１】このパッドスプリングは、係止アームと覆
い部を一体に形成したもの、又は係止アームを前記覆い
部とは別部材で形成した係止具の両端に設け、ディスク
軸方向視図が門型形状になる上記係止具で前記覆い部を
ディスク外周側から抱きかかえて定位置に保持すると共
に、係止具に生じるばね力で覆い部をパッド裏板に押し
当てるようにしたもののどちらであってもよい。

【００１２】また、別体の係止具を用いる後者のパッド
スプリングは係止具のディスク周方向途中に、ディスク
外周側に突出する逆Ｕ字状の曲げ戻し部を設けておく
と、キャリパに対する着脱性がより良くなる。

【００１３】このほか、パッド裏板のディスク外周側の
肩部に接して摩擦パッドをディスク回転方向に押圧する
弾性アームを前記覆い部に設けておくことも好ましいこ
とである。

【００１４】

【作用】両端の係止アームをアーム間距離が縮む方向に
弾性変形させてキャリパの開口部に押し込むとアームが
弾性復元してアーム先端がディスク溝底部に係止する。
また、係止アームとキャリパ間にドライバ等を差し入れ
て係止アームをアーム間距離が縮む方向に再度弾性変形
させるとディスク溝底部との係止が解けて係止アームが
外れ、従って、ねじが無くてもスプリングを固定でき、
その着脱も簡単になる。

【００１５】なお、覆い部と係止アームを有する係止具
を別部材で形成するものは、形状のシンプル化により材
料の打抜き歩留りが良くなる。

【００１６】また、係止具に逆Ｕ字状の曲げ戻し部を設
けるものは、その曲げ戻し部を圧縮してアーム間距離を
縮めることができ、着脱性がより良くなる。

【００１７】さらに、覆い部に弾性アームを設けてパッ
ドをディスク回転方向に押圧するものは、パッドが常時
トルク受け面に押し当てられて制動初期のクロンク音も
防止される。

【００１８】

【実施例】図１に、本発明のパッドスプリングの一例を
使用状態にして示す。

【００１９】図の１はキャリパ、２はそのキャリパのブ
リッジ部に設けた開口部、３はキャリパに設けたディス
ク溝、４、５はディスクＤに摺接させるパッド、６はキ
ャリパ１の開口部２にディスク軸方向に横切って取付け
たパッドピンである。パッド４、５は、裏板４ａ、５ａ
に設けたピン孔にパッドピン６を通してディスク軸方向
スライド可能に支持し、キャリパのインナ側シリンダと
アウタ側シリンダに挿入したピストン（図示せず）で別
々に押圧してディスクＤに摺接させるようにしてある。

【００２０】１０は、キャリパ１の開口部２に装着した
パッドスプリングである。このパッドスプリング１０
は、平板状の覆い部１１を有し、この覆い部１１で開口
部２を塞ぎ、さらに、その覆い部の内面で各パッドの裏
板４ａ、５ａのディスク外周側の縁部をディスク中心側
に向けて押圧するようにしてある。また、覆い部１１の
ディスク周方向両端の中央部に、内面側に折り曲げて先
端を更に互いに離反する方向に折り曲げた係止アーム１
２を設けてあり、この係止アームを図１（ｂ）に鎖線で
示すように弾性変形させて開口部２に挿入し、弾性復元
力で図の実線位置に戻して先端の係止片１２ａをディス
ク溝３の底部に係止させるようにしてある。

【００２１】係止アーム１２の先端部は、図２に示すよ
うに二重折りすると強度が高まり、材料の板厚を薄くし
ても固定の安定性が高まる。

【００２２】また、パッドスプリング１０を、図３に示
すように、覆い部１１と、この覆い部とは別部材で作っ
た係止具１３とに分け、両端に係止アーム１２を設けた
係止具１３で図３（ｂ）に示すように覆い部１１を外側
から抱きかかえて支持する構造にすると、覆い部１１と
係止具１３の形状がシンプルになって素材プレートから
両者を打ち抜き加工等で歩留り良く切り出すことがで
き、材料のロスが少なくなる。

【００２３】なお、この構造では、覆い部１１を係止具
１３で定位置に保持する必要があるが、これは、図３に
示すように、覆い部１１の端縁に切欠き１４を設けてそ
の切欠きに係止具１３を嵌めたり、図４に示すように、
覆い部１１のディスク軸方向途中に溝１５を設けてその
溝に係止具１３の中央部を落とし込むと云った方法で簡
単に実現できる。

【００２４】図５は、係止具１３のディスク周方向途中
に逆Ｕ字状の曲げ戻し部１６を設けたものである。この
曲げ戻し部１６を圧縮すると係止アーム１２がそれ自身
を弾性変形させなくても鎖線で示すようにディスク溝３
から外れ、パッドスプリングの着脱を人手のみで楽に行
える。なお、図１のパッドスプリングも、覆い部１１の
途中にこのような曲げ戻し部を設けて同様の方法で着脱
してもよいが、この場合には、曲げ戻し部の圧縮に力を
要する。これに対し、図５の構造は、曲げ戻し部の幅が
狭いのでその圧縮にさほど力を要しない。

【００２５】図６は更に他の実施例である。このパッド
スプリング１０には、係止アーム１２のほかに、パッド
の裏板４ａ、５ａの肩部に接してパッド４、５をディス
クＤの回転方向に付勢し、キャリパ１のトルク受け面７
に押し当てる弾性アーム１７を設けてある。このパッド
スプリングを用いれば、制動初期にパッドの裏板がトル
ク受け面７に衝突して生じるクロンク音も無くし得る。

【００２６】なお、覆い部１１には、パッドの摩耗状況
を目視確認するための覗き窓１８（図３参照）を設けて
おいてもよい。

【００２７】また、係止アーム１２の先端の係止片１２
ａは、ディスク溝３の溝底とディスクＤの外周面との間
のクリアランスを確保するために、ディスク溝３の溝底
に溝を更に掘り下げる座部を形成してそこに係止させて
もよい。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明のパッドス
プリングは、覆い部の両端に係止アームを設けそのアー
ムの先端の係止片をキャリパのディスク溝に係止させて
取付ける構造にしたので、ねじやねじ孔を必要とせずブ
レーキのコスト低減が図れる。

【００２９】また、そのスプリングの着脱を簡便に行え
るので、パッドの交換作業も煩雑にならない。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）：本発明のパッドスプリングの一例を使
用状態にして示す平面図 （ｂ）：同上のＡ−Ａ線部の断面図

【図２】他の実施例の断面図

【図３】（ａ）：更に他の実施例の分解斜視図 （ｂ）：同上のパッドスプリングの使用状態を示す断面
図

【図４】（ａ）：他の実施例の覆い部の斜視図 （ｂ）：同上のＢ−Ｂ線部の断面図

【図５】係止具に曲げ戻し部を設けたパッドスプリング
の使用状態の断面図

【図６】（ａ）：弾性アームを付加したパッドスプリン
グの使用状態の平面図 （ｂ）：同上のＣ−Ｃ線部の断面図

【符号の説明】

１ キャリパ ２ 開口部 ３ ディスク溝 ４、５ パッド ４ａ、５ａ パッド裏板 ６ パッドピン ７ トルク受け面 Ｄ ディスク １０ パッドスプリング １１ 覆い部 １２ 係止アーム １２ａ 係止片 １３ 係止具 １４ 切欠き １５ 溝 １６ 曲げ戻し部 １７ 弾性アーム １８ 覗き窓

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディスクを跨ぐキャリパのブリッジ部
   に、ディスクに摺接させる対向一対の摩擦パッドを出入
   り可能とする開口部を設け、その開口部に横架したパッ
   ドピンをパッド裏板のピン孔に通して対の摩擦パッドを
   ディスク軸方向スライド可能に支持するディスクブレー
   キにおいて、前記開口部を覆い、かつその覆い部でパッ
   ド裏板のディスク外周側の縁部をディスク中心側に向け
   て押圧する板状のパッドスプリングであって、ディスク
   周方向両端部に、前記開口部に挿入して互いに離反する
   方向に屈曲した先端の係止片をキャリパのディスク溝底
   部に係止させる係止アームを備えることを特徴とするデ
   ィスクブレーキ用パッドスプリング。
2. 【請求項２】 前記係止アームを前記覆い部とは別部材
   で形成した係止具の両端に設け、ディスク軸方向視図が
   門型形状になる上記係止具で前記覆い部をディスク外周
   側から抱きかかえて定位置に保持すると共に、係止具に
   生じるばね力で覆い部をパッド裏板に押し当てるように
   した請求項１記載のディスクブレーキ用パッドスプリン
   グ。
3. 【請求項３】 前記係止具のディスク周方向途中に、デ
   ィスク外周側に突出する逆Ｕ字状の曲げ戻し部を設けた
   請求項２記載のディスクブレーキ用パッドスプリング。
4. 【請求項４】 パッド裏板のディスク外周側の肩部に接
   して摩擦パッドをディスク回転方向に押圧する弾性アー
   ムを前記覆い部に設けた請求項１、２又は３記載のディ
   スクブレーキ用パッドスプリング。