JPH0793807A - 情報記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

情報記録媒体およびその製造方法

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JPH0793807A
JPH0793807A JP5259363A JP25936393A JPH0793807A JP H0793807 A JPH0793807 A JP H0793807A JP 5259363 A JP5259363 A JP 5259363A JP 25936393 A JP25936393 A JP 25936393A JP H0793807 A JPH0793807 A JP H0793807A
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JP
Japan
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film
recording
sputtering
gesbte
gas
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Application number
JP5259363A
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English (en)
Inventor
Hideki Okawa
秀樹 大川
Nobuhisa Yoshida
展久 吉田
Motonari Matsubara
基成 松原
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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  • Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)
  • Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)
  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、長期間にわたって安定して優れた記
録感度を維持することができる情報記録媒体およびその
製造方法を提供することを目的とする。 【構成】基板上に形成された保護膜と、前記保護膜上に
形成されており、Krガスを用いたスパッタリングによ
り形成されたGeSbTeからなる第1の記録膜と、前
記第1の記録膜上に形成されており、比較的光吸収係数
が大きい材料からなる第2の記録膜とを具備することを
特徴とする。また、基板上に金属酸化物、金属窒化物、
金属硫化物、およびこれらの積層体からなる群より選ば
れた材料からなる保護膜を形成する工程と、Krガスを
用いてスパッタリングすることにより前記保護膜上にG
eSbTe合金を被着して第1の記録膜を形成する工程
と、前記第1の記録膜上に比較的光吸収係数が大きい材
料からなる第2の記録膜を形成する工程とを具備するこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、情報記録媒体およびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の情報記録媒体として、アクリル樹
脂やポリカーボネート樹脂等の透明材料からなる基板上
に、例えばGeSbTe合金からなる膜を形成し、その
上に光吸収係数が大きい金属、例えばBiやBiTe合
金等からなる膜を形成してなるものがある。この情報記
録媒体に記録を行う場合、レーザ光を照射して2つの膜
を加熱することにより各膜を構成する材料の原子を拡散
させて合金化する。そして、合金化した記録領域の反射
率と未記録領域の反射率との差を利用して再生を行う。
【0003】このような構成の情報記録媒体において、
基板上に直接GeSbTe膜を記録膜として形成する
と、空気中の水分や酸素が基板を透過してGeSbTe
膜を酸化させる恐れがある。このため、一般には、基板
とGeSbTe膜との間に金属酸化物膜、金属窒化物
膜、金属硫化物膜、例えばZnS/SiO2 膜のような
金属硫化物膜と金属酸化物膜との積層膜等の保護膜を介
在させている。さらに、GeSbTe膜およびBiTe
膜等からなる記録膜上に酸化防止用に第2の保護膜を形
成することもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、基板と
記録膜であるGeSbTe膜との間にArガスでスパッ
タリングして形成したSiO2 膜やZnS/SiO2
を介在させた場合、GeSbTe膜中に酸素等が混入し
てしまう。GeSbTe膜中に酸素が混入すると、Ge
SbTe膜が酸化してしまい長期間にわたって安定して
優れた記録感度を維持することができない。また、Ge
SbTe膜中に酸素が混入すると、GeSbTe膜と保
護膜との界面の平坦性が悪くなり、やはり記録感度を低
下させることになる。
【0005】また、保護膜として窒化膜を用いた場合、
GeSbTe膜中に窒素が混入すると、結晶化温度が上
昇しまう。例えば、GeSbTe膜を相変化記録によっ
て光記録する場合、記録感度が低下してしまう問題があ
る。特に、GeSbTe膜をダイレクトオーバーライト
媒体の記録膜として用いる場合には、成膜時にアモルフ
ァス状態にあっても、一度初期化処理を施して結晶化さ
せねばならないが、窒素が混入するとこの初期化処理の
レーザパワーが増加して好ましくない。
【0006】また、保護膜として硫化物膜を用いた場
合、GeSbTe膜中に硫黄が混入すると、記録膜を劣
化させて記録感度を低下させたり、記録した情報の保存
寿命を短くする問題がある。
【0007】本発明はかかる点に鑑みてなされたもので
あり、長期間にわたって安定して優れた記録感度を維持
することができる情報記録媒体およびその製造方法を提
供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、スパッタ
リングガスの質量および反跳エネルギーと、GeSbT
eからなる第1の記録膜中の酸素等の元素の混入との関
係に着目し、スパッタリングガスとしてKrガスを用い
ることにより第1の記録膜中への酸素等の元素の混入す
ることができることを見出だし本発明をするに至った。
【0009】すなわち、本発明は、基板上に形成された
保護膜と、前記保護膜上に形成されており、Krガスを
用いたスパッタリングにより形成されたGeSbTeか
らなる第1の記録膜と、前記第1の記録膜上に形成され
ており、比較的光吸収係数が大きい材料からなる第2の
記録膜とを具備し、前記第1および第2の記録膜に記録
光を照射することにより、前記第1および第2の記録膜
の材料が合金化して光学的特性を変化させて記録が行わ
れることを特徴とする情報記録媒体を提供する。
【0010】ここで、基板材料としては、ポリカーボネ
ート樹脂、アクリル樹脂、ガラス等の透明材料を用いる
ことができる。また、比較的光吸収係数が大きい材料と
しては、Bi、BiTe合金、Pb、Pb合金、Pd、
Pd合金等を用いることができる。
【0011】保護膜の材料としては、金属酸化物、金属
窒化物、金属硫化物、これらの積層体等を挙げることが
できる。この保護膜の厚さは、次のように規定する必要
がある。すなわち、保護膜が例えばSiO2 膜である場
合、屈折率が波長830nm近傍で1.5程度であり、ポ
リカーボネート樹脂やアクリル樹脂からなる樹脂基板と
ほとんど変わらないので、その厚さは実用的に10nm以
上であることが好ましい。これは、保護膜の厚さが10
nm未満であると、保護膜としての機能を果たさないから
である。なお、反射率が2つの記録膜の光学的な多重干
渉条件で決定されるので、保護膜の厚さは100nmであ
ってもかまわないが、記録感度が低下するので好ましく
ない。保護膜の厚さの好ましい範囲は10〜50nmであ
る。この範囲であれば、記録レーザパワーの大幅な増加
が認められず問題はない。
【0012】第1の記録膜を構成するGeSbTeの組
成は、Ge,Sb,およびTeの三元組成図において、
Ge0 Sb5 Te95とGe95Sb5 Te0 とを結ぶ直
線、Ge95Sb0 Te5 とGe0 Sb95Te5 とを結ぶ
直線、Ge5 Sb95Te0 とGe5 Sb0 Te95とを結
ぶ直線、並びにGe50Te50とGe50Sb50とを結ぶ直
線により囲まれた領域内の組成であることが好ましい。
これは、この組成範囲において本発明の効果が顕著に現
れるからである。
【0013】また、本発明は、基板上に金属酸化物、金
属窒化物、金属硫化物、およびこれらの積層体からなる
群より選ばれた材料からなる保護膜を形成する工程と、
Krガスを用いてスパッタリングすることにより前記保
護膜上にGeSbTe合金を被着して第1の記録膜を形
成する工程と、前記第1の記録膜上に比較的光吸収係数
が大きい材料からなる第2の記録膜を形成する工程とを
具備することを特徴とする情報記録媒体の製造方法を提
供する。
【0014】さらに、本発明は、ターゲット温度を30
〜90℃の範囲で水素ガスを用いた化学スパッタリング
するにより基板上にGeSbTeからなる第1の記録膜
を形成し、前記第1の記録膜上に比較的光吸収係数が大
きい材料からなる第2の記録膜を形成することを特徴と
する情報記録媒体の製造方法を提供する。
【0015】ここで、化学スパッタリングとは、ターゲ
ット表面での入射イオン種との化学反応を伴うスパッタ
リングプロセスをいう。このプロセスには、化学反応で
形成する化合物の蒸気圧が高いために揮発してターゲッ
トから離脱するプロセスや、蒸気圧がそれほど高くない
が入射イオンの衝撃エネルギーで容易にターゲット表面
から反応物(化合物)が離脱するプロセスを含む。
【0016】ここで、水素ガスをスパッタリングガスに
加えてスパッタリングする際に、ターゲット温度を30
〜90℃にする。これは、この温度範囲にターゲットを
加熱することにより、GeSbTe膜の堆積速度が速く
なるからである。
【0017】この方法において、第1の記録膜を構成す
るGeSbTeの組成は、Ge,Sb,およびTeの三
元組成図において、Ge0 Sb5 Te95とGe95Sb5
Te0 とを結ぶ直線、Ge95Sb0 Te5 とGe0 Sb
95Te5 とを結ぶ直線、並びにGe5 Sb95Te0 とG
5 Sb0 Te95とを結ぶ直線により囲まれた領域内の
組成であることが好ましい。これは、この組成範囲にお
いて本発明の効果が顕著に現れるからである。
【0018】
【作用】基板と記録膜であるGeSbTe膜との間にス
パッタリングで形成した酸化膜、窒化膜、硫化物膜を介
在させた場合、GeSbTe膜中に酸素、窒素、硫黄等
が混入してしまう。この現象は、本発明者らが詳細に検
討したところ、保護膜を構成する酸化物中に存在する結
合の弱い浮遊酸素がGeSbTe膜に混入するのではな
く、保護膜上にGeSbTe膜を形成する際のスパッタ
リングガスの元素の反跳に起因することが分かった。
【0019】通常スパッタリングガスとしては、希ガ
ス、特にArガスが用いられる。スパッタリングは、こ
のArガスがプラズマ中でAr正イオンに解離し、これ
がターゲットに衝突してターゲット材料が被処理体上に
被着されることにより行われる。基板スパッタリングさ
れる。Ar正イオンは、ターゲットに衝突する直前に中
性化されてAr原子となる。このAr原子は、ターゲッ
ト材料の原子量の大きさによっては、衝突エネルギーに
近いエネルギーで反跳する。この反跳したAr原子は、
電気的に中性であるためプラズマの電界に左右されずに
被処理体方向に直進する。
【0020】これまでに知られているところでは、ター
ゲットにAr正イオンが衝突してスパッタリングされて
成膜する場合のエネルギーの大きさは、ほぼ数eVから
10eV程度である。これに対して、反跳したAr原子
のエネルギーは、以下に述べるように100eVのオー
ダあるために、被処理体上に堆積した膜を再びスパッタ
リングしてしまうという不都合がある。このため、保護
膜としてSiO2 膜等の酸化膜を用いると、GeSbT
e膜を成膜中に酸化膜がスパッタリングされて酸素がG
eSbTe膜中に混入すると考えられる。
【0021】この現象は、次の説明により理解できる。
スパッタリングガスの原子がターゲットに衝突する場
合、特にスパッタリングガスに希ガスを用いる場合に
は、単純な弾性散乱としての2体衝突として取り扱うこ
とができる。すなわち、 E1 =E0 (M0 /M0 +M)2 ×[ cosθ+(M2 /M0 2 − sin2 θ)1/2 2 …(1) E0 :イオンの入射エネルギー M0 :イオンの質量 M:ターゲット原子の質量 E1 :散乱原子のエネルギー θ:入射イオンの散乱角度 を仮定することができる。このとき、スパッタリングガ
スの散乱が後方散乱の場合は、θは180度とすること
ができる。式(1)はθが180度のとき、簡単に
(2)式の形となる。
【0022】 E1 =E0 (M0 /M0 +M)2 ×[ cosθ+(M/M0 )]2 …(2) この式(2)から、Ar原子がGeSbTe合金中のT
e原子と衝突した場合を計算する。ターゲットに印加す
る電圧である合金カソードバイアス電圧が400Vのと
き、反跳するAr原子は109eVのエネルギーを有す
る。同様に、Ar原子がSb原子と衝突したときは10
2.2eVのエネルギーを有し、Ar原子がGe原子と
衝突したときは33.5eVのエネルギーを有すると算
出される。また、保護膜であるSiO2 膜中のSi原子
と衝突した時に反跳するAr原子は12eVのエネルギ
ーを有すると算出される。
【0023】ここで、ターゲット原子同士の結合エネル
ギーを考慮した場合には、式(2)中の右辺の[]内を
以下の式に置き換えることができる。
【0024】 [ cosθ+(M2 /M0 2 −(M(M0 +M)Eb /M0 2 0 ))1/2 2 …(3) Eb :ターゲット物質の結合エネルギー GeSbTe合金中でのそれぞれの結合エネルギーの信
頼できる値がないので、ここではそれぞれの元素の昇華
エネルギーを結合エネルギーとして計算する。結合エネ
ルギーとして昇華エネルギーを用いることは、すでにSi
mgund の計算において用いられているので妥当である。
また、薄膜ハンドブックによれば、金属における表面結
合エネルギーとしては、1〜6eVであることが述べら
れており、この範囲は昇華エネルギーの範囲と等価であ
る(日本学術振興会編 p.171)。
【0025】R.E.Honig and D.A.Kramer(RCA Review,19
69 p.285) には、Te,Sb,Geのそれぞれの25度
における昇華エネルギーの値が掲載されており、Teは
2eV、Sbは2〜3eV、Geは4〜5eVである。
このように値に範囲があるのは、TeについてはTe1
とTe2 のガス成分が存在し、SbについてはSb1
Sb2 ,Sb4 のガス成分が存在し、GeについてはG
1 とGe2 のガス成分が存在し、それらに分解すると
きのエネルギーの値が異なっているためである。
【0026】式(2)および式(3)を用いて反跳エネ
ルギーを計算すると、Te原子上でのAr反跳エネルギ
ーは108.8〜108.2eVであり、Sb原子上で
のAr反跳エネルギーは101.2〜100.7eVで
あり、Ge原子上でのAr反跳エネルギーは32.4〜
32.1eVである。したがって、入射イオン(ここで
はAr+ )の質量よりもターゲット原子の質量が大きい
場合には、散乱原子(ここではAr)の反跳エネルギー
も大きくなることが分かる。
【0027】実際のスパッタリングでは、反跳したAr
原子がスパッタリングガスと衝突を繰り返して、初期エ
ネルギーを散逸していく。通常このプロセスは“Therma
lization process”と呼ばれている。このときに散逸す
るエネルギーの大きさは、ターゲットと基板との距離
(電極間距離)(mm)と、スパッタリング圧力(Pa)と
の積で評価される。すなわち、この積が大きいほど、反
跳したAr原子のエネルギーが大きく減少していくこと
となる。
【0028】Harnack とBenndorfによって、モンテカル
ロシミュレーションが行われており、これによれば、反
跳したAr原子の平均エネルギーが142eVで、ター
ゲットと基板との間の距離の積が82.5Pa・mmの条件
において、AgターゲットをArを含むメタンガス中で
スパッタリングしてAg−C:H膜を形成したとき、膜
中のCがスパッタリングされてしまい、スパッタリング
ガス中のArの相対量が50%以下に減少するまで膜中
に炭素が存在していないことが報告されている(J.T.Har
nack and C.Benndorf,Diamond and Related Materials,
Vol.1(1992)301) 。比較として、基板をターゲットに垂
直に配置したこと以外は上記と同様にしてスパッタリン
グによりAg−C:H膜を形成したとき、メタンガスの
濃度の増加に伴って膜中に炭素が混入することが確認さ
れている。したがって、この現象は、反跳したAr原子
の膜への衝撃効果が影響しているで説明できる。
【0029】このように、GeSbTe膜を形成する際
のスパッタリング条件で、ターゲットと基板との間の距
離とスパッタリング圧力との積が74Pa・mmであり、反
跳したAr原子のエネルギーが108eVである場合に
は、Ag−C:H膜の成膜の場合と同様に考えることが
でき、SiO2 膜中の酸素が膜からスパッタリングされ
てGeSbTe膜に混入することが理解できる。
【0030】上記の考察に基づき、基板上に形成した保
護膜上にGeSbTe膜を形成する際にKrガスを用い
てスパッタリングすることにより、反跳した原子の保護
膜のスパッタリングを充分に防止することができる。し
たがって、酸素、窒素、硫黄等の元素が混入していない
GeSbTe膜を形成することができる。これにより、
記録感度に優れた情報記録媒体を得ることができる。
【0031】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して具体
的に説明する。
【0032】図1は基板上に記録膜を形成する際に使用
されるスパッタリング装置を示す概略図である。図中1
1はチャンバを示す。チャンバ11の下部には、排気管
12が接続されており、排気管12は油回転ポンプおよ
びクライオポンプ(いずれも図示せず)に接続されてい
る。また、チャンバ11の側壁には、流量調節手段(図
示せず)に接続された流量調節バルブ13を有するガス
供給管14の一端が連結されており、その他端がKrガ
ス源(図示せず)に接続されている。チャンバ11の頂
部には、先端に基板支持板15が取り付けられた支柱1
6が、基板支持板15をチャンバ11内部に位置するよ
うにして貫挿されている。この基板支持板15には、基
板17が吸引手段等により吸着して設置されている。チ
ャンバ11内の底部には、SiO2 ターゲット18、G
eSbTe合金ターゲット19およびBiTe合金ター
ゲット20が設置されている。それぞれのターゲットに
は、高周波電力印加手段21〜23が接続されている。
【0033】上記構成のスパッタリング装置を用いてア
クリル樹脂基板上に各膜を成膜する。まず、排気系を用
いてチャンバ11内を排気して内部圧力を1.2×10
-3Pa以下にした。次いで、流量調節バルブ13を開いて
流量調節手段により流量を調節しながらガス供給管14
からKrガスをチャンバ11内に導入した。このとき、
排気系の排気量およびKrガス流量を調節することによ
り、チャンバ11内のKrガス圧力を一定にした。
【0034】次いで、支柱16を回転させながら、高周
波電力印加手段21でSiO2 ターゲット18に70W
の高周波電力を印加してスパッタリングを行った。な
お、スパッタ放電時のチャンバ11内の圧力を0.6Pa
とし、アクリル樹脂基板とターゲットとの間の距離dは
110mmとした。このようにして、図2に示すように、
アクリル樹脂基板17上に第1の保護膜としてSiO2
膜24を厚さ40nmで形成した。
【0035】次に、一旦、チャンバ11内の圧力を1.
2×10-3Pa以下にし、再び流量調節手段により流量を
調節しながらガス供給管14からKrガスをチャンバ1
1内に導入した。高周波電力印加手段22でGeSbT
e合金ターゲット19に60Wの高周波電力を印加して
スパッタリングを行い、SiO2 膜24上に第1の記録
膜としてGeSbTe膜25を厚さ50nmで形成した。
このとき、ターゲットの切り換えは、シャッター等によ
り行った。なお、スパッタ放電時のチャンバ11内の圧
力を0.6Paとした。また、スパッタリング中のターゲ
ット温度の上昇を抑制するために、GeSbTe合金タ
ーゲット19を冷却水により水冷した。
【0036】次に、再度、チャンバ11内の圧力を1.
2×10-3Pa以下にし、再び流量調節手段により流量を
調節しながらガス供給管14からKrガスをチャンバ1
1内に導入した。高周波電力印加手段23でBiTe合
金ターゲット20に60Wの高周波電力を印加してスパ
ッタリングを行い、GeSbTe膜25上に第2の記録
膜としてBiTe膜26を厚さ30nmで形成した。この
とき、ターゲットの切り換えは、シャッター等により行
った。なお、スパッタ放電時のチャンバ11内の圧力を
0.67Paとした。
【0037】次に、再度、チャンバ11内の圧力を1.
2×10-3Pa以下にし、再び流量調節手段により流量を
調節しながらガス供給管14からKrガスをチャンバ1
1内に導入した。高周波電力印加手段21でSiO2
金ターゲット19に70Wの高周波電力を印加してスパ
ッタリングを行い、BiTe膜26上に第2の記録膜と
してSiO2 膜27を厚さ40nmで形成した。このと
き、ターゲットの切り換えは、シャッター等により行っ
た。なお、スパッタ放電時のチャンバ11内の圧力を
0.6Paとした。
【0038】本発明の情報記録媒体は、図2に示す構成
だけでなく、例えば、図3に示すように、第1および第
2の保護膜として、ZnS/SiO2 膜28,29を用
いてもよい。なお、ZnS/SiO2 膜28,29の組
成は、所望の光学的な条件を考慮して決定する。すなわ
ち、ZnS単独の屈折率は2.4程度であり、SiO2
膜単独の屈折率は1.5程度である。したがって、両者
の混合比を変えることで、両者の屈折率の間で屈折率を
制御することができる。また、SiO2 膜は成膜後はア
モルファス状態であり、ZnS膜は成膜後は多結晶であ
る。したがって、両者を混合比を選択することにより膜
をアモルファス状態にすることができる。また、ZnS
単独では膜が比較的脆いが、SiO2 を混合することに
より機械的な強度を改善できる。
【0039】また、図4に示すように、第1および第2
の保護膜として、Si3 4 膜30,31を用いてもよ
い。なお、Si3 4 ターゲットをスパッタリングした
ときには、通常は窒素の欠損が生ずるため、保護膜はS
iNx として表記される構造となっている。厳密にSi
3 4 構造とする場合は、スパッタリング中にKrガス
にN2 ガスを流量比で10から50容量%程度加えて反
応性スパッタリングにする必要がある。
【0040】上記図2〜図4に示す構造を有する情報記
録媒体(それぞれサンプルA〜C)について、その記録
特性をそれぞれ調べた。その結果を図5に示す。記録特
性は、線速度6m/s 、記録パルス幅70ns、再生レーザ
パワー0.7mWの条件でCNR(carrier to noise rat
io)の測定することにより評価した。CNRの測定は、
スペクトラムアナライザのRBW(バンド幅解像度)を
30kHzの条件として行った。
【0041】図5から分かるように、保護膜としてSi
2 膜を用いた場合(サンプルA)は、比較的記録感度
が低いが、CNRの最大値が約58dBであり実用的に
は問題ないものである。
【0042】本発明にかかる情報記録媒体に対して実際
に記録を行う前後において、膜厚方向における断面のE
DX(Energy dispersive X-ray spectroscopy)元素分析
を行った。その結果を図6に示す。図6から分かるよう
に、レーザ光で記録を行った後は、第1および第2の記
録膜の間で各記録膜を構成する元素の拡散・合金化が生
じ、均一な合金層が生じた。
【0043】なお、図6は、保護膜としてSiO2 膜を
用いたサンプルAの場合について示しているが、保護膜
としてZnS/SiO2 膜を用いたサンプルBの場合お
よび保護膜としてSiNx膜を用いたサンプルCの場合
についても図6と同様に記録後に均一な合金層が生じた
ことが確認された。また、図6では、注目すべき元素だ
けを示した。Teは第1および第2の記録膜の両方に存
在しているので、見やすくするために省略した。また、
SiO2 膜においては、問題となる酸素だけを示した。
【0044】次に、スパッタリングガスとしてKrガス
を用いた場合のKr原子の反跳について説明する。
【0045】GeSbTeターゲットをKrガスを用い
てスパッタリングした場合の反跳エネルギーを上記式
(2)および(3)から算出すると、ターゲットバイア
ス電圧が上記と同様に400Vである場合、Kr原子と
Te原子との衝突では16.8eVのエネルギーを有す
ることとなる。同様にしてKr原子とSb原子との衝突
では13.1〜13.3eVのエネルギーを有し、Kr
原子とGe原子との衝突では2.3〜2.4eVのエネ
ルギーを有することとなる。実際には、原子が空間中を
移動する際にスパッタリング圧力と、基板とターゲット
間の距離との積で与えられる反跳エネルギーの散逸、す
なわち“Thermalization”があるために、次に述べるよ
うに数eV以下となる。
【0046】Somekh(R.E.Somekh,Vacuum,Vol.34,987(19
84))によって計算されたAr原子の“Thermalization”
による初期エネルギーの空間中でのエネルギーの散逸
は、上述したスパッタリング装置における条件、すなわ
ち基板とターゲット間の距離を110mm、スパッタリン
グ圧力を0.67Paとした条件(74Pa・mm)とする
と、初期エネルギーが10eVの時にはほぼ1eV程度
まで低下することが分かる。Kr原子の場合でもAr原
子と同様にPa・mmの積に応じてエネルギーの散逸が生ず
るが、低下の割合がAr原子より大きいので(R.E.Somek
h,J.Vac.Sci.Technol.,Vol.A2,1285(1984),Fig.3参照)
、反跳したKr原子は第1の保護膜を再びスパッタリ
ングできないほどにエネルギーが低下していると見て良
い。
【0047】前述の薄膜ハンドブック p.171において、
運動エネルギーが金属の場合5〜25eVを超えるのに
充分な粒子がターゲットに衝突すると、スパッタリング
が起こることが述べられている。したがって、Krガス
のGe原子、Sb原子、およびTe原子上での反跳エネ
ルギーの大きさは5〜25eV以下であるので、あらか
じめ成膜されている第1の保護膜に反跳したKr粒子が
衝突しても、スパッタリングは起こらない。
【0048】比較のため、ここで反跳エネルギーが10
8eVであるAr原子の場合、“Thermalization”効果
を考慮し、Somekhの結果を参照すると、反跳エネルギー
が110eVの場合に相当し、上記のようにターゲット
基板間距離とスパッタリング圧力との積が74Pa・mmの
場合ではほぼ52eVとなる。この値では依然として第
1の保護膜を再度スパッタリングしてしまう。
【0049】次に、GeSbTe膜を形成する際のGe
SbTeの被着の方法について説明する。一般に、薄膜
の形成方法として、真空蒸着法とスパッタリング法があ
る。スパッタリング法により形成された膜は、スパッタ
リングガスの原子とターゲット原子との間の運動量の交
換により形成されるため、堆積時のエネルギーが大き
く、基板への密着性が比較的強い。スパッタリング原子
は、10eV程度の運動エネルギーをもってスパッタリ
ング空間へ放出されることが知られている。Somekhの計
算において、ArガスもしくはKrガスを用いてAlか
らWまでの金属をスパッタリングしたときの“Thermali
zation”の値が算出されている。これによれば、上記の
条件74Pa・mmの場合であると、ほぼ4eV前後の値と
なっている。このように、スパッタリング法によれば、
膜材料が大きなエネルギーをもって基板に入射するた
め、基板との界面において原子レベルでの混合が生じ、
これにより密着性が向上すると考えられている。
【0050】一方、真空蒸着法により形成された膜は、
膜材料が熱エネルギーの大きさで堆積していくことによ
り形成されるため、基板への密着性が比較的弱い。これ
は、真空蒸着法では、堆積時のエネルギーは10-2eV
レベルであることが知られており、スパッタリング法の
場合と異なり、原子レベルでの混合が生じないためと考
えられている。
【0051】したがって、基板もしくは下地膜への膜の
密着性を考慮すると、スパッタリング法により形成する
ことが好ましい。
【0052】Krガスを用いたスパッタリングにおいて
は、堆積時のエネルギーが4eV前後であり、これに加
えてKr原子の“Thermalization”が74Pa・mmの場合
で1eV程度であるので、Kr原子の膜への弱い衝撃が
生じていることが分かる。このエネルギーは、膜の堆積
時において原子レベルの混合や表面拡散に寄与するが、
膜に欠陥を生じさせるほどのレベルではない。また、第
1の記録膜としてGeSbTe膜を用いる場合には、ア
モルファス構造であることが好ましいので、このような
場合には、このKr原子の弱い衝撃は有用である。
【0053】本発明者らは、GeSbTe膜のアモルフ
ァス相としての安定性について、DSC(Differential
scanning calorimetry) を用いて、図7に示すように、
少なくとも異なる3つの温度での走引速度における結晶
化温度Txを求め、この結果に基づいて、図8に示すよ
うに、Kissinger プロットを行って結晶化エネルギーを
求めた。これによれば、膜中のAr量と、結晶化温度も
しくは結晶化エネルギーとの間には良い相関があり、膜
中のAr量が多いものは結晶化温度および結晶化エネル
ギーが高いことが確認されている。したがって、GeS
bTe膜については、膜中にスパッタリングガスの原子
が混入されていることが好ましいことが分かる。
【0054】このように、基板上に形成された第1の保
護膜をスパッタリングしてGeSbTe膜に酸素、窒
素、硫黄等の原子を混入させることを防止し、しかも第
1の保護膜との密着性を向上させるためには、数eVの
反跳エネルギーであるKr原子をスパッタリングに用い
ることが好ましいことが分かる。ここで、反跳エネルギ
ーをより低くするためにスパッタリングガスとしてXe
ガスを用いることが考えられる。XeはKrよりも原子
量が大きく、“Thermalization”後の反跳エネルギーが
ほぼ零であるので、一見好ましいように思われる。しか
しながら、Xeガスを用いてGeSbTeをスパッタリ
ングすると、Kr原子の場合と異なりGeSbTe膜へ
の弱い衝突がないために、結果として真空蒸着法により
成膜した場合と同じ状態となり、膜の密着性が低下して
しまう。また、弱い衝撃がないためにアモルファス相の
安定性を向上させることはできない。したがって、本発
明において、Kr原子程度の反跳エネルギーでの弱い衝
撃が特に重要であることが分かる。
【0055】上述したことから、スパッタリングガスと
してKrガスを用いることは、GeSbTe膜のアモル
ファス相の安定性を高めると同時に、下地膜として酸化
物等のような保護膜が存在する場合であっても、酸素等
の保護膜を構成する元素のGeSbTe膜への混入を充
分に防止できる。
【0056】次に、Krガスを用いてGeSbTeター
ゲットをスパッタリングする場合のGeSbTe合金の
組成範囲について説明する。上述したとおり、GeSb
Te合金において反跳エネルギーの効果は比較的質量の
大きいSbおよびTeで顕著である。したがって、Ge
SbTe合金の好ましい組成範囲は、図9に示す三元組
成図において、4本の直線によって囲まれる範囲であ
る。直線IはGeTe(=Ge50Te50)とGe50Sb
50とを結ぶことによって与えられる。この直線Iによ
り、Geの含有量において少なくとも50原子%以下の
領域を規定する。すなわち、この直線Iは、質量の大き
いSbおよびTeを50原子%以上含む領域を規定する
ものである。
【0057】また、直線IIはGe0 Sb5 Te95とGe
95Sb5 Te0 とを結ぶ直線で与えられ、直線 IIIはG
95Sb0 Te5 とGe0 Sb95Te5 とを結ぶ直線で
与えられ、直線IVはGe5 Sb95Te0 とGe5 Sb0
Te95とを結ぶ直線で与えられる。直線II、直線 III、
直線IVは、GeSbTe合金の3元組成において、それ
ぞれの元素の含有量が5原子%である場合を示すもので
ある。このように規定したのは、たとえそれぞれの原子
が5原子%未満で存在しても、GeSbTe合金として
ほとんど効果がないからである。例えば、(GeTe)
96Sb4 のような組成では、結晶化温度や記録感度が基
本的にはGeTe合金と変わりがなく不適当である。ま
た、(SbTe)96Ge4 のような組成では、Geが存
在しても成膜後にアモルファス相とはならないので不適
当である。また、(GeSb)96Te4 のような組成で
は、記録感度が基本的にGeSb合金とほとんど変わら
ないので不適当である。
【0058】次に、図2に示す本発明の情報記録媒体の
GeSbTe膜中の酸素分布を調べた。すなわち、情報
記録媒体を所定の大きさに切り出してサンプルを作製
し、このサンプルの断面を透過電子顕微鏡(TEM)お
よびTEMに設置されているエネルギー分散形X線分析
装置(EDX)を用いて観察し、その酸素分布を調べ
た。その結果を図10に示す。また、比較のために、ア
クリル樹脂基板上に第1の保護膜としてSiO2 膜を形
成し、その上にArガスを用いたスパッタリングにより
GeSbTe膜およびBiTe膜を形成してなる情報記
録媒体を切り出したサンプルについての分析結果も図1
0に示した。
【0059】図10から分かるように、本発明の情報記
録媒体のサンプルでは、GeSbTe膜やBiTe膜中
に酸素はほとんど認められないが、比較例の情報記録媒
体のサンプルでは、GeSbTe膜中に酸素が分布して
いる。
【0060】次いで、上記本発明の情報記録媒体と、比
較例の情報記録媒体を65℃、90%の高温・高湿雰囲
気中に放置して、記録特性の経時変化を調べた。記録特
性は、データの誤り率(バイトエラーレート、B.E.R.)
で評価した。その結果を図11に示す。図11に示すよ
うに、本発明の情報記録媒体は、2000時間後におい
ても、記録特性が変化していない。比較例の情報記録媒
体は、2000時間後で記録特性に変化が認められた。
【0061】次いで、本発明の情報記録媒体の製造方法
の他の実施例について説明する。まず、図1に示すスパ
ッタリング装置において、排気系を用いてチャンバ11
内を排気して内部圧力を1.2×10-3Pa以下にした。
次いで、流量調節バルブ13を開いて流量調節手段によ
り流量を調節しながらガス供給管14からArガスをチ
ャンバ11内に導入した。このとき、排気系の排気量お
よびArガス流量を調節することにより、チャンバ11
内のArガス圧力を一定にした。
【0062】次いで、支柱16を回転させながら、高周
波電力印加手段21でSiO2 ターゲット18に70W
の高周波電力を印加してスパッタリングを行った。な
お、スパッタ放電時のチャンバ11内の圧力を0.6Pa
とした。このようにして、アクリル樹脂基板上に第1の
保護膜としてSiO2 膜を厚さ40nmで形成した。
【0063】次に、一旦チャンバ11内の圧力を1.2
×10-3Pa以下にし、再び流量調節手段により流量を1
0sccmに調節しながらH2 ガスをチャンバ11内に導入
した。ターゲットの冷却水の温度を60℃に設定し、タ
ーゲットをボンディングしているバッキングプレート下
に熱電対を挿入してターゲット温度を監視して定常状態
となったことを確認した後、高周波電力印加手段22で
GeSbTe合金ターゲット19に60Wの高周波電力
を印加してスパッタリングを行い、SiO2 膜上に第1
の記録膜としてGeSbTe膜を厚さ50nmで形成し
た。
【0064】ここで、ターゲット温度の好ましい範囲に
ついて説明する。水冷している状態でのGeSbTe膜
の堆積速度を1であるとすると、ターゲット温度が30
℃である場合には1.5となり、ターゲット温度が30
〜90℃である場合には2〜4となった。また、ターゲ
ット温度が90℃以上となると、ターゲットの放電状態
の安定性が悪くなり、スパッタリングプロセスにおいて
グロー放電中にアーク放電が生じる。したがって、上記
のように、水素ガスとArガスとの混合ガスを用いた化
学スパッタリングにおいては、ターゲット温度が30〜
90℃であることが好ましい。
【0065】GeSbTe合金ターゲットは、通常のA
rイオンによる物理的スパッタリングが可能であるほ
か、水素ガスによってもスパッタリングすることができ
る。しかしながら、水素ガスによる物理的スパッタリン
グは、Arガスによるスパッタリングに比べると、水素
の質量が小さいためにスパッタリング速度が小さい。こ
の水素ガスのスパッタリングは、ターゲット温度を上昇
させることによって、水素プラズマ中の水素原子や水素
イオンがターゲット合金と化学反応を起こして化学的ス
パッタリングとすることができる。GeSbTe合金タ
ーゲット上での水素イオンや水素源しの化学反応として
は、それぞれの元素の水素化物、すなわち、GeH4
SbH3 、TeH2 の形成が考えられる。ターゲット温
度を上げることによって、ターゲット表面での水素化物
形成の化学反応の速度を上げて化学的なスパッタリング
の速度を上げることができる。この化学的スパッタリン
グにおいては、ターゲット合金のそれぞれの元素成分の
水素化物が形成される。それらの水素化物は蒸気圧が高
いので、揮発成分としてターゲット合金の表面をエッチ
ングしてスパッタリングが進行する。このように、化学
スパッタリングの際にターゲット温度を上昇させること
により、水素ガスにより化学的スパッタリングおよびA
rガスにより物理的スパッタリングが同時に進行するこ
とになる。
【0066】次に、再度、チャンバ11内の圧力を1.
2×10-3Pa以下にし、再び流量調節手段により流量を
調節しながらガス供給管14からArガスをチャンバ1
1内に導入した。高周波電力印加手段23でBiTe合
金ターゲット20に60Wの高周波電力を印加してスパ
ッタリングを行い、GeSbTe膜上に第2の記録膜と
してBiTe膜を厚さ30nmで形成した。このとき、タ
ーゲットの切り換えは、シャッター等により行った。な
お、スパッタ放電時のチャンバ11内の圧力を0.67
Paとした。
【0067】次に、再度、チャンバ11内の圧力を1.
2×10-3Pa以下にし、再び流量調節手段により流量を
調節しながらガス供給管14からArガスをチャンバ1
1内に導入した。高周波電力印加手段21でSiO2
金ターゲット19に70Wの高周波電力を印加してスパ
ッタリングを行い、BiTe膜上に第2の記録膜として
SiO2 膜を厚さ40nmで形成した。このとき、ターゲ
ットの切り換えは、シャッター等により行った。なお、
スパッタ放電時のチャンバ11内の圧力を0.6Paと
した。
【0068】ここで、ターゲット温度を70℃に設定し
てArガスおよび水素ガスを用いてシリコン基板上にG
eSbTe膜を厚さ300nmでスパッタリングした。こ
のサンプルについて、GeSbTe膜中の水素分析をフ
ーリェ変換形の赤外線吸収スペクトロメータ(FT−I
R)により行った。このスペクトルにおいて、2000
cm-1の近傍に吸収ピークが認められた。一般に、Ge−
H結合については、2050〜1970cm-1にかけて吸
収を有することが知られており、Te−H結合について
は、2016cm-1に吸収を有することが知られている。
このことから、上記した方法で作製した膜は、本発明で
いう化学スパッタリングによって形成されていることが
分かる。すなわち、化学スパッタリングでは、ターゲッ
ト上で反応生成物が生じ、これが膜中に混入するので、
この意味でGeSbTe膜中に水素と反応してなる水素
化物による吸収が存在することは、化学スパッタリング
が起ったことの証明となる。なお、希ガス原子の反跳現
象は、ターゲット原子との間に化学反応がないことを前
提としている、したがって、化学スパッタリングのよう
に、希ガス原子がターゲット原子と化学反応する場合に
は式(2)は適用できない。
【0069】また、シリコン基板上に化学スパッタリン
グによりGeSbTe膜を形成してなるサンプルについ
て前記と同様にしてGeSbTe膜中の酸素分析をED
Xにより行ったところ、図12に示すように酸素は検出
されなかった。
【0070】次に、水素ガスを加えて化学スパッタリン
グしてGeSbTe膜を形成してなる本発明の情報記録
媒体と、ArガスでスパッタリングしてGeSbTe膜
を形成してなる比較例の情報記録媒体を65℃、90%
の高温・高湿雰囲気中に放置し、記録特性の経時変化を
前記と同様にして調べた。その結果を図13に示す。
【0071】図13に示すように、本発明の情報記録媒
体は、2000時間後においても、記録特性に変化がな
かった。これに対して、比較例の情報記録媒体では、記
録特性の変化が認められた。したがって、水素ガスを加
えて化学スパッタリングしてGeSbTe膜を形成する
本発明の方法を用いることによって、長期間にわたって
優れた記録特性を発揮する情報記録媒体が得られること
が分かる。
【0072】ここで、本発明において、水素ガスを加え
て化学スパッタリングしてGeSbTe膜を形成してな
る情報記録媒体のGeSbTe合金の組成範囲は、図1
4で示される三元組成図における直線II、直線 III、直
線IVで囲まれる範囲であることが好ましい。それぞれの
直線のもつ物理的な意味は前記に示した内容と同じであ
る。なお、この構成の情報記録媒体においては、水素ガ
スを加えて化学スパッタリングを行っており、反跳効果
を考慮して規定した直線Iの意味はなくなるので、直線
II、直線 III、直線IVで囲まれる範囲で規定される。
【0073】
【発明の効果】以上説明した如く本発明の情報記録媒体
は、基板上に形成された保護膜と、前記保護膜上に形成
されており、Krガスを用いたスパッタリングにより形
成されたGeSbTeからなる第1の記録膜と、前記第
1の記録膜上に形成されており、比較的光吸収係数が大
きい材料からなる第2の記録膜とを具備しているので、
GeSbTeからなる第1の記録膜中に保護膜を構成す
る元素が混入しておらず、長期間にわたって安定して優
れた記録特性を発揮することができる。
【0074】また、本発明の情報記録媒体の製造方法
は、基板上に金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、お
よびこれらの積層体からなる群より選ばれた材料からな
る保護膜を形成する工程と、Krガスを用いてスパッタ
リングすることにより前記保護膜上にGeSbTe合金
を被着して第1の記録膜を形成する工程と、前記第1の
記録膜上に比較的光吸収係数が大きい材料からなる第2
の記録膜を形成する工程とを具備するので、スパッタリ
ング原子の反跳効果による保護膜のスパッタリングを防
止し、これによりGeSbTeからなる第1の記録膜に
保護膜を構成する元素が混入することを阻止でき、長期
間にわたって安定して優れた記録特性を発揮する情報記
録媒体を得ることができる。
【0075】さらに、御発明の情報記録媒体の製造方法
は、ターゲット温度を30〜90℃にしながら水素ガス
を用いた化学スパッタリングするにより基板上にGeS
bTeからなる第1の記録膜を形成し、前記第1の記録
膜上に比較的光吸収係数が大きい材料からなる第2の記
録膜を形成するので、GeSbTeからなる第1の記録
膜中に水素化物を含む構造となり、長期間にわたって安
定して優れた記録特性を発揮する情報記録媒体を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録膜を形成する際に使用されるスパッタリン
グ装置を示す概略図。
【図2】本発明の情報記録媒体の一実施例を示す断面
図。
【図3】本発明の情報記録媒体の他の実施例を示す断面
図。
【図4】本発明の情報記録媒体の他の実施例を示す断面
図。
【図5】本発明の情報記録媒体の記録特性を示すグラ
フ。
【図6】本発明の情報記録媒体のGeSbTe膜のED
X元素分析の結果を示すグラフ。
【図7】GeSbTe膜のDSC測定の結果を示すグラ
フ。
【図8】GeSbTe膜中のAr量と、結晶化温度およ
び結晶化エネルギーとの関係を示すグラフ。
【図9】GeSbTe合金の三元組成図。
【図10】本発明の情報記録媒体のGeSbTe膜のE
DX元素分析の結果を示すグラフ。
【図11】情報記録媒体の記録特性の経時変化を説明す
るためのグラフ。
【図12】本発明の情報記録媒体のGeSbTe膜のE
DX元素分析の結果を示すグラフ。
【図13】情報記録媒体の記録特性の経時変化を説明す
るためのグラフ。
【図14】GeSbTe合金の三元組成図。
【符号の説明】
11…チャンバ、12…排気管、13…流量調節バル
ブ、14…ガス供給管、15…基板支持板、16…支
柱、17…基板、18…SiO2 ターゲット、19…G
eSbTe合金ターゲット、20…BiTe合金ターゲ
ット、21,22,23…高周波電力印加手段、24,
27…SiO2 膜、25…GeSbTe膜、26…Bi
Te膜,28,29…ZnS/SiO2 膜、30,31
…SiNx膜。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に形成された保護膜と、前記保護
    膜上に形成されており、Krガスを用いたスパッタリン
    グにより形成されたGeSbTeからなる第1の記録膜
    と、前記第1の記録膜上に形成されており、比較的光吸
    収係数が大きい材料からなる第2の記録膜とを具備し、
    前記第1および第2の記録膜に記録光を照射することに
    より、前記第1および第2の記録膜の材料が合金化して
    光学的特性を変化させて記録が行われることを特徴とす
    る情報記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記保護膜は、金属酸化膜、金属窒化
    膜、金属硫化物膜、およびこれらの積層膜からなる群よ
    り選ばれた膜である請求項1記載の情報記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記第1の記録膜を構成するGeSbT
    eの組成が、Ge,Sb,およびTeの三元組成図にお
    いて、Ge0 Sb5 Te95とGe95Sb5 Te0 とを結
    ぶ直線、Ge95Sb0 Te5 とGe0 Sb95Te5 とを
    結ぶ直線、Ge5 Sb95Te0 とGe5 Sb0 Te95
    を結ぶ直線、並びにGe50Te50とGe50Sb50とを結
    ぶ直線により囲まれた領域内の組成である請求項1記載
    の情報記録媒体。
  4. 【請求項4】 基板上に金属酸化物、金属窒化物、金属
    硫化物、およびこれらの積層体からなる群より選ばれた
    材料からなる保護膜を形成する工程と、Krガスを用い
    てスパッタリングすることにより前記保護膜上にGeS
    bTe合金を被着して第1の記録膜を形成する工程と、
    前記第1の記録膜上に比較的光吸収係数が大きい材料か
    らなる第2の記録膜を形成する工程とを具備することを
    特徴とする情報記録媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 ターゲット温度を30〜90℃にしなが
    ら水素ガスを用いた化学スパッタリングするにより基板
    上にGeSbTeからなる第1の記録膜を形成し、前記
    第1の記録膜上に比較的光吸収係数が大きい材料からな
    る第2の記録膜を形成することを特徴とする情報記録媒
    体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6554972B1 (en) * 1998-06-26 2003-04-29 Kabushiki Kaisha Toshiba Information recording medium and its manufacturing method

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