JPH06328038A - 塗装方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 エッジ部４ａを有する被塗装面４に向けて塗
料を吹き付けることにより該被塗装面４に塗装を施すよ
うに構成された塗装装置において、エッジ部４ａ近傍領
域への塗料吹付け時における塗料エッジ溜りの発生を最
小限に抑える。 【構成】 塗装ガン１２が被塗装面４のエッジ部４ａ近
傍領域の上方まで移動してきたとき、塗装ガン１２のベ
ル１６の向き（すなわち塗料吹付け方向）をエッジ部４
ａ外方側に所定角度傾斜させる。これにより、エッジ部
４ａ外方側への高速流の流量を増大させ、エッジ部４ａ
近傍領域全域にわたって略均一な塗料流Ｆを得て、塗料
エッジ溜りの発生を最小限に抑える。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エッジ部を有する被塗
装面に向けて塗料を吹き付けることにより該被塗装面に
塗装を施す塗装方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】車両製造ラインの車体塗装工程において
は、塗装ガン等を用いて車体表面に向けて塗料を吹き付
けることにより車体表面に塗装を施す塗装方法が多く用
いられているが、車体表面のように被塗装面がエッジ部
を有する場合には、被塗装面のエッジ部近傍領域に塗料
吹付けを行うと、いわゆる塗料エッジ溜り、すなわち上
記エッジ部に塗料が多く付着する現象が生じる。このよ
うな塗料エッジ溜りが生じると車体表面の見映えが多少
悪くなるが、従来さほど大きな問題とはなっていなかっ
た。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
塗膜に深み感を持たせるため、塗膜最上層のクリヤ層
を、顔料を低濃度で混入させたニゴリクリヤ系の塗料を
用いて塗着形成することが多くなってきており、このよ
うな塗料を用いた場合には、上記塗料エッジ溜りが大き
な問題となってきている。すなわち、従来のように単な
るクリヤ塗料を用いた場合は、塗膜が厚くても薄くても
クリヤ層は略無色透明のままであるが、ニゴリクリヤ系
の塗料を用いて塗着形成したクリヤ層（ニゴリクリヤ
層）は、塗膜が厚くなると色が濃くなり塗膜が薄くなる
と色が薄くなるため、上記塗料エッジ溜りが生じると、
エッジ部の色が他の部分よりも濃くなり、車体表面の部
位によって見え方が全く異なったものとなる。このた
め、車体の外観品質（見映え）が著しく悪くなり、車両
の商品性が低下する、という問題が生じてきている。

【０００４】ところで、上記塗料エッジ溜りは、塗装後
に塗膜に作用する表面張力等の影響によっても生じる
が、塗装の仕方によっても生じる。そして、図８に示す
ように、塗装直後に塗料エッジ溜りが生じていなけれ
ば、その後になって新たに塗料エッジ溜りが生じること
は少なく（同図（ａ））、一方、塗装直後に塗料エッジ
溜りが生じていると、塗装後の経時変化で表面張力等に
より塗料エッジ溜りの大きさが一層大きくなる傾向があ
る（同図（ｂ））。したがって、塗料エッジ溜りの発生
を効果的に抑えるためには、塗装時における塗料エッジ
溜りの発生を最小限に抑えることが肝要である。

【０００５】なお、このような問題は、車体塗装を行う
際にのみ生じる問題ではなく、エッジ部を有する被塗装
面を塗装する場合一般において同様に生じ得る問題であ
る。

【０００６】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであって、被塗装面のエッジ部近傍領域への塗料
吹付け時における塗料エッジ溜りの発生を最小限に抑え
ることができる塗装方法を提供することを目的とするも
のである。

【０００７】なお、特開平３−２６３７９号公報には、
被塗装面と被塗装面とが隙間をおいて設けられている場
合において、上記隙間を裏側から閉塞して塗料吹付けを
行うことにより、各被塗装面において隙間側に回り込ん
だ部分の塗膜を他の部分と同程度の厚みとすることを意
図した塗装方法が開示されているが、これは、上記隙間
近傍領域に塗料吹付けを行うと上記回込み部分の塗膜が
薄くなってしまうため、これを抑制すべく行われるもの
であり、かかる塗装方法を用いても上記塗料エッジ溜り
を解決することはできない。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明に係る塗装方法
は、エッジ部近傍領域への塗料吹付け時に上記塗料エッ
ジ溜りが生じるのは、塗料吹付けにより生じる塗料流の
うち高速で流れる高速流は、その大半が被塗装面に当た
った後エッジ部内方側に回り込んで流れ、エッジ部外方
側へはほとんど流れない傾向があってこれによりエッジ
部における塗料流速度が低下するのが原因である、こと
が実験により解明できたことに鑑み、塗料吹付け角度の
調整により、エッジ部外方側への高速流の流量を増大さ
せるようにすることにより、上記目的達成を図るように
したものである。

【０００９】すなわち、請求項１に記載したように、エ
ッジ部を有する被塗装面に向けて塗料を吹き付けること
により該被塗装面に塗装を施す塗装方法において、前記
被塗装面の前記エッジ部近傍領域に前記塗料の吹付けを
行う際、該塗料吹付け方向を、前記エッジ部近傍領域以
外の領域への塗料吹付け時における塗料吹付け方向に比
して前記エッジ部外方側に所定角度傾斜させる、ことを
特徴とするものである。

【００１０】上記「所定角度」は、エッジ部近傍領域全
域にわたって略均一な塗料流を得ることができる程度の
角度を意味し、塗装条件に応じて適宜設定すべきもので
ある。

【００１１】上記「塗料吹付け方向の傾斜」は、請求項
２に記載したように塗料吹付け手段の姿勢制御により行
うようにしてもよいし、請求項３に記載したように被塗
装面の姿勢制御により行うようにしてもよいし、あるい
は上記塗料吹付け手段および被塗装面の双方の姿勢制御
により行うようにしてもよい。

【００１２】

【発明の作用および効果】上記構成に示すように、被塗
装面のエッジ部近傍領域に塗料吹付けを行う際、該塗料
吹付け方向を、エッジ部近傍領域以外の領域への塗料吹
付け時における塗料吹付け方向に比してエッジ部外方側
に所定角度傾斜させるようになっているので、エッジ部
外方側への高速流の流量が増大し、上記エッジ部近傍領
域全域にわたって略均一な塗料流が得られ、これによ
り、塗料エッジ溜りの発生が最小限に抑えられる。

【００１３】このように、本発明によれば、被塗装面の
エッジ部近傍領域への塗料吹付け時における塗料エッジ
溜りの発生を最小限に抑えることができる。

【００１４】

【実施例】以下、添付図面を参照しながら、本発明の実
施例について説明する。

【００１５】図１は、本発明に係る塗装方法に使用され
る塗装装置の第１実施例を示す斜視図である。

【００１６】この塗装装置１０は、ロボットア−ム１４
の先端に塗装ガン１２が設けられてなり、塗装ガン１２
から被塗物２の被塗装面４に向けて塗料を吹き付けるこ
とにより、中塗り塗装済みの該被塗装面４に上塗りクリ
ヤ塗装を施すように構成されている。

【００１７】上記塗装ガン１２は、ベル型の回転霧化式
静電塗装ガンであって、被塗物２の被塗装面４上方に被
塗装面４と所定間隔を置いた状態で、該塗装ガン１２の
ベル１６が被塗装面４と基本的には正対するように配さ
れており、被塗装面４にニゴリクリヤ系の塗料を吹き付
けるようになっている。

【００１８】上記塗装装置１０は、図示しない搬送手段
を備えてなり、この搬送手段により被塗物２を図示Ａ方
向に搬送しながら、予めティーチングされたロボットア
−ム１４の作動により塗装ガン１２を上記Ａ方向と直交
するＢ方向すなわち被塗物２の幅方向に水平往復動させ
るようになっている。そして、これにより、塗装ガン１
２は、被塗装面４に対し、その幅方向両側のエッジ部４
ａ近傍領域間をジグザグ状に相対移動しながら塗料吹付
けを行うようになっている。なお、塗装ガン１２が、被
塗装面４のエッジ部４ａ近傍領域まで移動したことの検
出は、ロボットア−ム１４のティーチングデータによっ
て行われるようになっている。あるいは、赤外線セン
サ、ＣＣＤカメラ等を用いて上記検出を行うこともでき
る。

【００１９】図２に示すように、塗装ガン１２のベル１
６には、その回転体１８の周囲にシェーピングエア吹出
し口２０が全周にわたって設けられており、このシェー
ピングエア吹出し口２０からは、回転体１８から飛散す
る塗料の吹付け方向を規制するシェーピングエアが吹き
出されるようになっている。このシェーピングエアによ
り、図１に示すように、被塗装面４に向かって垂直に流
れる塗料流Ｆが生成されるようになっている。

【００２０】ところで、塗装ガン１２のベル１６を被塗
装面４に対して常時正対させた状態に維持した場合に
は、次のような問題を生じる。すなわち、図３（ａ）に
示すように、被塗装面４の中央領域への塗料吹付け時に
は、被塗装面４に当たった塗料流Ｆは、その後、全周均
等に被塗装面４に沿って水平方向に流れる。この塗料流
Ｆのうち高速で流れる高速流も全周均等に被塗装面４に
沿って流れるため、該被塗装面４における塗料流Ｆの速
度は比較的大きな値となる。しかしながら、図３（ｂ）
に示すように、被塗装面４のエッジ部４ａ近傍領域への
塗料吹付け時には、塗料流Ｆの中の高速流は、その大半
が被塗装面４に当たった後エッジ部４ａ内方側に回り込
んで流れ、エッジ部４ａ外方側へはほとんど流れないた
め、エッジ部４ａにおける塗料流Ｆの速度は、該エッジ
部４ａ以外の部分における塗料流Ｆの速度に比して低下
する。そして、このような塗料流Ｆの速度の不均一に起
因して、塗装後のエッジ部４ａには塗料が玉縁状に溜る
塗料エッジ溜り現象が生じる（図８（ｂ）参照）。

【００２１】そこで、本実施例においては、図４に示す
ように、塗装ガン１２が被塗装面４のエッジ部４ａ近傍
領域の上方まで移動してきたとき、塗装ガン１２のベル
１６の向き（すなわち塗料吹付け方向）をエッジ部４ａ
外方側に所定角度傾斜させるようになっている。

【００２２】以上詳述したように、本実施例において
は、被塗装面４のエッジ部４ａ近傍領域に塗料吹付けを
行う際、該塗料吹付け方向を、エッジ部４ａ近傍領域以
外の領域への塗料吹付け時における塗料吹付け方向に比
してエッジ部４ａ外方側に所定角度傾斜させるようにな
っているので、エッジ部４ａ外方側への高速流の流量が
増大し、上記エッジ部４ａ近傍領域全域にわたって略均
一な塗料流が得られ、これにより、塗料エッジ溜りの発
生が最小限に抑えられる。

【００２３】このように、本実施例によれば、被塗装面
４のエッジ部４ａ近傍領域への塗料吹付け時における塗
料エッジ溜りの発生を最小限に抑えることができる。

【００２４】次に、本発明の第２実施例について説明す
る。

【００２５】図５は、本実施例に係る塗装装置を示す側
面図である。

【００２６】同図（ａ）に示すように、本実施例に係る
塗装装置１０は、支持台２２に被塗物２を載置した状態
で被塗物２の搬送を行うようになっている。一方、塗装
ガン１２は、同一姿勢に維持されている。

【００２７】上記支持台２２は、基板２４と、この基板
２４にボールジョイント２６を介して左右方向に回動可
能に支持された支持板２８と、ボールジョイント２６の
左右両側において基板２４および支持板２８間に配さ
れ、支持板２８の回動を抑制する１対のコイルスプリン
グ３０と、これら各コイルスプリング３０近傍において
基板２４に立設され、支持板２８の所定量以上の回動を
規制する１対のストッパピン３２とからなっている。

【００２８】上記支持板２８は、塗装ガン１２からの塗
料吹付けが行われていないときには、１対のコイルスプ
リング３０の弾性反力により基板２４に対して平行に配
されるようになっている。塗装ガン１２からの塗料吹付
けが行われている場合であっても、同図（ａ）に示すよ
うに、ボールジョイント２６の上方すなわち被塗物２の
被塗装面４中央であれば、支持板２８は、基板２４に対
して平行状態を維持するが、同図（ｂ）に示すように、
上記位置から塗装ガン１２がＢ方向に移動すると、塗料
流Ｆの吹付け圧力が被塗装面４の左側にのみ作用するの
で、被塗物２は支持板２８と共にボールジョイント２６
を中心に図示Ｃ方向に回動する。そして、上記吹付け圧
力によるモーメントと、左側のコイルスプリング３０の
圧縮反力と右側のコイルスプリング３０の引張反力によ
るモーメントとが釣り合う位置まで回動して静止する。
同図（ｃ）に示すように、塗装ガン１２がＢ方向にさら
に移動すると、上記吹付け圧力によるモーメントが増大
するため、被塗物２の被塗装面４の傾斜角も増大する。

【００２９】上記被塗装面４の傾斜により、塗装ガン１
２のベル１６の向き（すなわち塗料吹付け方向）は被塗
装面４に対してエッジ部４ａ外方側（図において左側）
に傾斜することとなる。塗装ガン１２が被塗装面４のエ
ッジ部４ａ近傍領域の上方まで移動してきたとき、支持
板２８がストッパピン３２に当接し、これにより、塗料
吹付け方向と被塗装面４との相対傾斜角が所定角度に設
定されるようになっている。塗装ガン１２の移動方向が
同図（ｂ）、（ｃ）と逆方向の場合も同様である。

【００３０】以上詳述したように、本実施例において
も、被塗装面４のエッジ部４ａ近傍領域に塗料吹付けを
行う際、該塗料吹付け方向を、エッジ部４ａ近傍領域以
外の領域への塗料吹付け時における塗料吹付け方向に比
してエッジ部４ａ外方側に所定角度傾斜させるようにな
っているので、エッジ部４ａ外方側への高速流の流量が
増大し、上記エッジ部４ａ近傍領域全域にわたって略均
一な塗料流が得られ、これにより、塗料エッジ溜りの発
生が最小限に抑えられる。

【００３１】このように、本実施例によれば、被塗装面
４のエッジ部４ａ近傍領域への塗料吹付け時における塗
料エッジ溜りの発生を最小限に抑えることができる。

【００３２】次に、本発明の第３実施例について説明す
る。

【００３３】図６は、本実施例に係る塗装装置を示す側
面図である。

【００３４】本実施例においては、被塗物２を搬送する
コンベア３４により塗料吹付け方向と被塗装面４との相
対傾斜を生じさせるようになっている。すなわち、コン
ベア３４に図示のような起伏を持たせることにより被塗
物２をＢ方向に搬送する際、水平方向に搬入されてきた
被塗物２を図７（ａ）に示すように一旦右下がりに傾斜
させた後、図７（ｂ）に示すように水平にし、その後、
図７（ｃ）に示すように被塗物２を一旦右上がりに傾斜
させた後水平方向に搬出するようになっている。一方、
塗装ガン１２は、同一姿勢に維持されている。

【００３５】塗装ガン１２は、図７（ａ）に示すよう
に、右下がり状態にある被塗物２に対して被塗装面４の
右側のエッジ部４ａ近傍領域に塗料吹付けを行った後、
被塗物２の移動に対応して右方向に移動しながら、図７
（ｂ）に示すように、水平状態にある被塗物２に対して
被塗装面４の中央領域に塗料吹付けを行い、その後、図
７（ｃ）に示す位置で、右上がり状態にある被塗物２に
対して被塗装面４の左側のエッジ部４ａ近傍領域に塗料
吹付けを行う。

【００３６】このように構成することにより、上記第２
実施例と同様の作用効果を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る塗装方法に使用される塗装装置の
第１実施例を示す斜視図

【図２】第１実施例における塗装ガンのベルを示す側断
面図

【図３】第１実施例の作用を説明するための前提として
従来の塗料流Ｆの様子を示す側面図

【図４】第１実施例の作用を示す側面図

【図５】本発明の第２実施例に係る塗装装置を示す側面
図

【図６】本発明の第３実施例に係る塗装装置を示す側面
図

【図７】第３実施例の作用を示す側面図

【図８】従来例における不具合の様子を示す図

【符号の説明】

２ 被塗物 ４ 被塗装面 ４ａ エッジ部 １０ 塗装装置 １２ 塗装ガン １４ ロボットア−ム １６ ベル ２０ シェーピングエア吹出し口 Ｆ 塗料流

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 茂木 茂男 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 山根 貴和 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 相澤 誠 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 谷口 幸文 広島県安芸郡府中町新地３番１号 マツダ 株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エッジ部を有する被塗装面に向けて塗料
   を吹き付けることにより該被塗装面に塗装を施す塗装方
   法において、 前記被塗装面の前記エッジ部近傍領域に前記塗料の吹付
   けを行う際、該塗料吹付け方向を、前記エッジ部近傍領
   域以外の領域への塗料吹付け時における塗料吹付け方向
   に比して前記エッジ部外方側に所定角度傾斜させる、こ
   とを特徴とする塗装方法。
2. 【請求項２】 前記塗料吹付け方向の傾斜を、前記塗料
   を吹き付ける塗料吹付け手段の姿勢制御により行う、こ
   とを特徴とする請求項１記載の塗装方法。
3. 【請求項３】 前記塗料吹付け方向の傾斜を、前記被塗
   装面の姿勢制御により行う、ことを特徴とする請求項１
   記載の塗装方法。