JPH06280635A - 自動変速機付き車両の空燃比制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 実際に設定されている変速段を検出すること
なく、最高速段のみで空燃比を大きくする制御を実行可
能とする。 【構成】 空燃比を変えて複数の出力特性に設定するこ
とのできる内燃機関１と、摩擦係合装置２の係合油圧の
調圧レベルを内燃機関１の最大出力特性に合わせて設定
した自動変速機３とを搭載した自動変速機付き車両の空
燃比制御装置において、自動変速機３の最高速段の設定
時のみに生じる油圧を検出する油圧検出手段４と、この
油圧検出手段４が前記油圧を検出したときに内燃機関１
の空燃比を最大出力特性より低い出力特性となる空燃比
に設定する空燃比設定手段５とを備えている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、空燃比を少なくとも
高低二様に変えて出力特性を変化させることのできる内
燃機関の空燃比を制御するための装置に関し、特に、所
定の変速段を設定するために係合させる摩擦係合装置の
係合油圧の調圧レベルを内燃機関の最大出力特性に合わ
せて設定した自動変速機を連結してある内燃機関の空燃
比を制御するための装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】燃費を改善するために、軽負荷時には空
燃比を高くするように構成したリーンバーンエンジンが
知られている。この種のエンジンでは、通常、スロット
ル開度をモニターし、スロットル開度が予め定めた基準
開度以下の場合には空燃比をリーン側に調整して燃料の
消費量を抑制し、またスロットル開度が予め定めた他の
基準開度以上では、空燃比をリッチ側あるいは理論空燃
比に設定して、出力を充分大きくするようになってい
る。したがってリーンバーンエンジンにおいては、スロ
ットル開度が前記基準開度以上の場合と以下の場合と
で、出力特性が大きく異なることになる。

【０００３】出力特性がこのように少なくとも高低の二
様に変化するエンジンと併せて自動変速機を搭載した車
両では、変速ショックの低減や摩擦係合装置の耐久性維
持のための制御が複雑もしくは困難であるため、リーン
バーン状態は最高速段を設定した場合にのみ許可するよ
うにしている。すなわち変速ショックを低減するため
に、変速時に生じる慣性力を、自動変速機におけるクラ
ッチやブレーキなどの摩擦係合装置の滑りによって吸収
しているが、その摩擦係合装置の係合油圧の調圧レベル
が、エンジンから入力されるトルクに対して相対的に高
ければ、摩擦係合装置が殆ど滑りを生じることなく係合
してしまい、その結果、慣性力がここで充分に吸収され
ずに自動変速機の出力トルクが一時的に大きく変動し、
これが変速ショックとなってしまう。これとは反対に係
合油圧の調圧レベルが入力トルクに対して相対的に低い
場合には、アキュームレータなどの調圧手段の動作中に
変速が終了しなくなって、アキュームレータにおけるピ
ストンのいわゆるエンド当りなどによって摩擦係合装置
が急激に完全係合状態になり、その結果、出力トルクが
一時的に急激に変化して変速ショックを生じ、あるいは
摩擦係合装置の過剰な滑りによってその耐久性が悪化し
てしまう。

【０００４】そこで摩擦係合装置の係合油圧の調圧レベ
ルを、エンジンの最大出力特性に合わせて設定しておく
一方、自動変速機が最高速段に設定されているときにの
み、空燃比を大きくしてリーンバーンを行なうようにす
れば、最高速段からの変速はダウンシフトのみであるか
ら、パワーオンダウンシフトの際にエンジンの空燃比は
必ずリッチ側もしくは理論空燃比に設定されて出力特性
が高特性になり、その結果、自動変速機の係合油圧の調
圧レベルと入力トルクとが適合した状態になり、そのた
め変速ショックの悪化が防止される。またアップシフト
およびダウンシフトのいずれもが生じる可能性のある中
間段では、必ずエンジンは高出力特性になるので、この
場合も自動変速機の係合油圧の調圧レベルと入力トルク
とが適合した状態になり、そのため変速ショックの悪化
が防止される。本出願人はこのような制御を行なう装置
を、特願平４−１６０１２４号によって既に提案した。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前述した本出願人の提
案にかかる装置においては、自動変速機の変速段が低速
段や中速段に設定されている場合に、エンジンの空燃比
が理論空燃比になり、したがって出力特性が低特性にな
ることはないので、係合油圧の調圧レベルと自動変速機
への入力トルクとの不適合による変速ショックの悪化が
生じない。しかしながらエンジンの空燃比の制御と自動
変速機の変速制御とは、それぞれ独立した別個の制御装
置もしくは制御機構によって行なっているのが通常であ
るから、自動変速機において最高速段が設定されている
ことに基づいてエンジンの空燃比をリーンに設定するこ
ととすれば、最高速段が設定されていることを検出する
ための手段もしくはそれぞれの制御装置の間での通信機
能が必要となる。すなわち設定するべき変速段の判断
を、全て電気的に行なう装置では、変速段の検出が容易
もしくは可能であるが、エンジン負荷と車速とを油圧に
置き換え、その油圧によって変速を実行する自動変速機
では、設定されている変速段を直ちには知ることができ
ず、この種の自動変速機を搭載した車両に上記の空燃比
制御装置を採用することが困難である。換言すれば、上
記の空燃比制御装置は、使用できる自動変速機が限定さ
れ、もしくは制御システムが複雑化し、あるいはコスト
高になるなどの不都合が生じるおそれがある。

【０００６】この発明は上記の事情を背景にしてなされ
たもので、いわゆる油圧式自動変速機を搭載した車両に
おいても、容易かつ安価に、最高速段のみで空燃比を高
くする制御を行なうことのできる空燃比制御装置を提供
することを目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、図１に示す構成としたことを特徴と
するものである。すなわちこの発明は、空燃比を変えて
複数の出力特性に設定することのできる内燃機関１と、
摩擦係合装置２の係合油圧の調圧レベルを内燃機関１の
最大出力特性に合わせて設定した自動変速機３とを搭載
した自動変速機付き車両の空燃比制御装置において、自
動変速機３の最高速段の設定時のみに生じる油圧を検出
する油圧検出手段４と、この油圧検出手段４が前記油圧
を検出したときに内燃機関１の空燃比を最大出力特性よ
り低い出力特性となる空燃比に設定する空燃比設定手段
５とを備えていることを特徴とするものである。

【０００８】

【作用】この発明の空燃比制御装置は、内燃機関１の出
力特性を変更するように空燃比を変える装置であり、そ
の内燃機関１に連結されている自動変速機３は、摩擦係
合装置２の係合油圧の調圧レベルを内燃機関１の最大出
力特性に合わせて設定されている。この自動変速機３
は、走行状態に基づいて所定の変速段に設定され、その
変速段のうち最高速段が設定された場合には、これに伴
って生じる油圧が油圧検出手段４によって検出される。
空燃比設定手段５は、このようにして油圧検出手段４が
油圧を検出した場合に、出力特性が低特性となるように
空燃比を設定する。

【０００９】

【実施例】つぎにこの発明の実施例について説明する。
図２はこの発明の一実施例を示すブロック図であって、
エンジン１０は１つのシリンダに４本のバルブを設けた
形式のエンジンであり、その吸気ポートとして、シリン
ダ内に混合気の螺旋流を生じさせるための突起（図示せ
ず）を設けた独立ヘリカルポート１１と突起のないスト
レートポート（図示せず）とを備えており、そのストレ
ートポートを開閉するスワールコントロールバルブ（Ｓ
ＣＶ）１２が設けられている。このスワールコントロー
ルバルブ１２は、空燃比を大きくした場合に閉じられる
バルブであって、その開閉駆動を行なうバキュームアク
チュエータ１３が設けられ、このバキュームアクチュエ
ータ１３に吸気路の真空圧を伝達する連通管１４に開閉
弁（バキュームスイッチングバルブ）１５が設けられて
いる。またスワールコントロールバルブ１２の下流側に
は、燃料を噴射するインジェクタ１６が設けられ、これ
に対してスワールコントロールバルブ１２より上流側
に、開度を検出するセンサ１７を備えたスロットルバル
ブ１８が設けられ、さらにこのスロットルバルブ１８と
スワールコントロールバルブ１２との間に、吸気負圧を
検出する圧力センサ１９が設けられている。前記エンジ
ン１０には、更に、回転数センサ２０およびノックセン
サ２１ならびに水温センサ２２が取り付けられており、
また排気管路２３には、空燃比を検出するためのリーン
センサ２４が取り付けられている。

【００１０】上記のエンジン１０を制御するための電子
制御装置（エンジンコントロールコンピュータ：ＥＣ
Ｕ）２５が設けられており、このＥＣＵ２５には、前述
した各センサ１７，１９，２０，２１，２２，２４の出
力信号が入力されており、これらの入力データに基づい
てインジェクタ１６への出力を制御し、またイグナイタ
への出力を制御することにより、燃料噴射量および点火
時期を制御するようになっている。さらにＥＣＵ２５
は、所定の条件が満たされた際に前記開閉弁１５を動作
させてスワールコントロールバルブ１２を閉じ、またリ
ーンセンサ２４の出力信号に従って空燃比をリーン側に
フィードバック制御するようになっている。

【００１１】上記のエンジン１０に連結された自動変速
機２６は、スロットル開度に応じたスロットル圧および
出力軸回転数に応じたガバナ圧に基づいて変速段を設定
する油圧式の自動変速機、あるいはスロットル開度に基
づく信号および車速に基づく信号によってソレノイドバ
ルブ（図示せず）を制御することにより変速を実行する
電子制御式の自動変速機であって、各変速段を設定する
ためのクラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を係合さ
せる油圧の調圧レベルは、エンジン１０の最大出力特性
に合わせて設定されている。またこの自動変速機２６は
最高速段であるオーバードライブ段を含む複数の変速段
に設定可能であって、その各変速段への変速は、エンジ
ン負荷（スロットル開度）と車速（あるいはタービン回
転数）とをパラメータとして行なわれ、その各変速段の
設定領域はこれら２つのパラメータを横軸および縦軸に
採った変速線図として表される。

【００１２】さらに自動変速機２６には、オーバードラ
イブ段を禁止するＯ／Ｄカット装置２７と、最高速段
（オーバードライブ段）が設定されたときにのみ生じる
油圧を検出してＯＮ動作する油圧スイッチ２８とが取り
付けられており、前記ＥＣＵ２５からの指令信号により
Ｏ／Ｄカット装置２７が動作してオーバードライブ段に
設定することを禁止するようになっている。また油圧ス
イッチ２８はＥＣＵ２５に接続されている。なお、人為
的な操作によってオーバードライブ段を禁止するため
に、Ｏ／Ｄカットマニュアルスイッチ２９がＥＣＵ２５
に接続して設けられている。

【００１３】そしてＥＣＵ２５は、空燃比をリーンとス
トイキとに設定する領域を定めたマップを備えている。
その一例を図３に示してあり、これは自動変速機用の変
速線図と同様に車速とスロットル開度とをパラメータと
するものであって、変速線図におけるオーバードライブ
段からのダウンシフト線（図３に実線で示してある）よ
りわずか軽負荷側の状態を境界（図３に破線で示してあ
る）としてリーン領域Ａが設定され、これより負荷の大
きい方にストイキ領域Ｂが設定されている。なお、図３
において二点鎖線は、変速線図におけるオーバードライ
ブ段へのアップシフト線を示している。

【００１４】図４は上述した装置によって実行される空
燃比制御とオーバードライブ段の禁止制御のためのルー
チンを示しており、まずステップ１では油圧スイッチ２
８がＯＮか否かが判断される。この油圧スイッチ２８は
前述したように、オーバードライブ段が設定されたとき
にのみ生じる油圧によってＯＮとなるスイッチであるか
ら、これが０ＦＦとなっていれば空燃比を小さくしてス
トイキバーンを行うことになるので、特に制御を行わず
にこのルーチンから抜ける。またこの油圧スイッチ２８
がＯＮであれば、走行状態によってリーンバーン制御を
行うので、ステップ２に進んで走行状態がストイキ領域
Ｂにあるか否かが判断される。

【００１５】ステップ２の判断結果が“ノー”の場合、
すなわち走行状態がリーン領域Ａにあれば、ステップ３
に進んでマニュアル操作によるオーバードライブ段の解
除制御が行われているか否かが判断される。これは具体
的には、前述したＯ／Ｄカットマニュアルスイッチ２９
が、オーバードライブ段を設定することを禁止するよう
に操作されているか否かを判断することにより行われ
る。その判断結果が“ノー”の場合には、ステップ４に
進んで、エンジン水温が予め定めた温度以上であること
などの他のリーンバーン制御条件が成立しているか否か
が判断され、それらの条件が成立していれば、リーンバ
ーン制御が実行され（ステップ５）、空燃比が高められ
てエンジン２６の出力特性が最大出力特性より低い特性
に設定される。

【００１６】他方、ステップ２の判断結果が“イエス”
の場合、すなわちオーバードライブ段に設定されていて
も走行状態がストイキ領域Ｂにある場合には、ステップ
６に進んでリーンバーン制御中か否かが判断され、その
判断結果が“ノー”であれば、制御ルーチンはリターン
し、また“イエス”であれば、空燃比を小さくしてリー
ンバーンからストイキバーンへの変更制御を行う（ステ
ップ７）。すなわち出力特性を最大出力特性に設定す
る。

【００１７】またＯ／Ｄカットマニュアルスイッチ２９
が操作されていてステップ３の判断結果が“イエス”と
なった場合には、ステップ８に進んでリーンバーン制御
中か否かが判断され、リーンバーン制御中でなければ、
すなわちストイキバーン状態であれば制御ルーチンはリ
ターンし、またリーンバーン制御中であれば、空燃比を
小さくしてリーンバーンからストイキバーンに変更する
制御を実行する（ステップ９）。さらにオーバードライ
ブ段に設定することを禁止するＯ／Ｄカット信号を出力
する（ステップ１０）。

【００１８】なお、リーン制御条件が成立していないこ
とによりステップ４の判断結果が“ノー”となった場合
には、ステップ１１に進んでリーンバーン制御中か否か
を判断する。そしてリーンバーン制御中でなければリタ
ーンし、リーンバーン制御中であれば、ステップ１２に
進んで、リーン制御からストイキ制御に変更し、その後
にリータンする。

【００１９】したがって上述した制御装置によれば、自
動変速機２６で実際に設定されている変速段を直接検出
せずに、油圧スイッチ２８からの信号の有無によってリ
ーンバーン制御を許可するか否を知ることができる。そ
のため上述した制御装置は、旧来のいわゆる油圧式自動
変速機を搭載した車両におけるエンジンの空燃比制御に
も使用することができ、その汎用性が高くなる。

【００２０】なお、上記の実施例では図２に示すエンジ
ンを例に採って説明したが、この発明は上記の実施例に
限定されないのであって、他の形式のエンジンおよび自
動変速機を対象として実施することができる。

【００２１】

【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、
最高速段においてのみリーンバーン制御を実行するにあ
たって、自動変速機における油圧の状態によってリーン
バーン制御の実行の可否を判断でき、換言すれば、実際
に設定されている変速段を検出する必要がなく、したが
ってこの発明によれば、リーン制御を行なうエンジンに
連結する自動変速機が電子制御式のものに限定されず、
その適用範囲を拡大することができる。また最高速段の
設定時のみに発生する油圧によって最高速段を検出する
から、その検出精度が高く、したがってリーンバーン制
御領域が広くなって、燃費の向上効果が更に良好にな
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の基本的な構成を示すブロック図であ
る。

【図２】この発明の一実施例を模式的に示すブロック図
である。

【図３】エンジン空燃比制御のためのマップであって、
リーン領域とストイキ領域とを定めたマップである。

【図４】エンジン空燃比制御およびオーバードライブ段
の禁止制御のためのルーチンを示すフローチャートであ
る。

【符号の説明】

１ 内燃機関 ２ 摩擦係合装置 ３ 自動変速機 ４ 油圧検出手段 ５ 空燃比設定手段

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 空燃比を変えて複数の出力特性に設定す
   ることのできる内燃機関と、摩擦係合装置の係合油圧の
   調圧レベルを内燃機関の最大出力特性に合わせて設定し
   た自動変速機とを搭載した自動変速機付き車両の空燃比
   制御装置において、 前記自動変速機の最高速段の設定時のみに生じる油圧を
   検出する油圧検出手段と、この油圧検出手段が前記油圧
   を検出したときに前記内燃機関の空燃比を最大出力特性
   より低い出力特性となる空燃比に設定する空燃比設定手
   段とを備えていることを特徴とする自動変速機付き車両
   の空燃比制御装置。