JPH06225779A - 酵母による牛脂脂肪酸組成の改質法 - Google Patents

酵母による牛脂脂肪酸組成の改質法

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JPH06225779A
JPH06225779A JP5018454A JP1845493A JPH06225779A JP H06225779 A JPH06225779 A JP H06225779A JP 5018454 A JP5018454 A JP 5018454A JP 1845493 A JP1845493 A JP 1845493A JP H06225779 A JPH06225779 A JP H06225779A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 食肉消費増大に伴い、その副産物として生産
される特に牛脂は食用油脂として利用価値は低く、工業
用として安価で取引されたり、産業廃棄物として処理さ
れているが、この牛脂を有効活用できるように牛脂の脂
肪酸組成を生物学的に改質する。 【構成】 牛脂を炭素源とした培地に酵母を接種し、数
日間培養を行った後、生育した酵母菌体を集め、この酵
母菌体から脂質を抽出して、牛脂脂肪酸組成を改質し
た。なお、以上に関連して、コレステロールを植物性ス
テロールへの転換培養した酵母菌体からの脂質の効率的
抽出などについても新技術を提供した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、利用の途が限られてい
るため産業廃棄物として大量に処理されている牛脂の脂
肪酸組成およびトリグリセリド分子種組成を生物学的に
改良することにより、健康的かつ機能性に優れた食用油
脂として、また医学的、農学的、応用化学的に有効活用
の道を拓かんとするものである。
【0002】
【従来の技術】近年の食肉消費増大に伴い、その副生産
物である動物脂肪の生産量が増大している。特に牛脂は
豚脂などに比べ融点が高く、食用油脂としての利用価値
は低く、工業用として安価で取引されたり、産業廃棄物
として処理されるのが大部分であり、新たな用途開発が
望まれている。
【0003】一方、微生物を脂質の生産や改良に用いる
研究は各方面で行われはじめている。例えば、糖を炭素
源とした時の脂質生産、あるいはイワシ油、大豆油、豚
骨脂などをエネルギーとした時の脂肪酸組成の変化、パ
ーム油からのSCP(SingleCell Protein) 生産などに
ついてである。しかし、牛脂の脂肪酸組成を生物学的に
変化させる研究に着目し、成功したとの情報はいまだ得
ていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで発明者らは、産
業廃棄物として多量に処理されている牛脂を有効活用す
べく鋭意研究した結果、酵母を用いて牛脂の脂肪酸組成
を生物学的に転換することに成功し、それによって牛脂
の用途拡大と機能性の増大を実現したものである。
【0005】即ち、牛脂を構成している脂肪酸の組成
は、オレイン酸(18:1,n−9)36%〜41%、
パルミチン酸(16:0)25%〜28%が主なもので
あり、飽和脂肪酸が1/2を占め2重結合2個以上含む
ポリエン酸の含量は3%以下にとどまっているため、融
点が高くて口溶けが悪く、食用油脂として不利な原因に
なっている。また、コレステロール含量が100g中1
00mgと高く、飽和脂肪酸が多い事とともに、高脂血
症や動脈硬化症の予防の点からも、食用油脂として不利
な原因となっている。
【0006】本発明の第1の目的は、前記牛脂の欠点を
解消するため酵母を用いた生物学的手法により牛脂の脂
肪酸組成を改質し、特に飽和脂肪酸の不飽和化により牛
脂の融点を下げ、用途の拡大をはかるものである。本発
明の第2の目的は、酵母の生産する脂肪のトリグリセリ
ド分子種組成が牛脂よりも単純なことに着目し、融点幅
のせまい脂肪の特性を、カカオ代用脂として利用しよう
とするものである。カカオ脂はチョコレートに使用され
るが、せまい融点幅を持ち、独特の物性を持っている
が、生産が限られており、その代用脂もあまりないのが
現状である。
【0007】本発明の第3の目的は、酵母を用いた生物
学的手法により牛脂の脂肪酸組成を改質することによ
り、パルミチン酸(16:0)を不飽和化して脳卒中発
症を顕著に予防する効果があるパルミトオレイン酸(1
6:1)に変えてこれを蓄積するとともに、コレステロ
ールを植物性ステロールへの転換を図り、健康的な食用
油脂として、牛脂の新しい活用の道を拓こうとするもの
である。
【0008】本発明の第4の目的は、酵母の細胞壁は極
めて強固であり、一般にバクテリア類に使用される中性
溶媒での単なる抽出操作では不完全なので、この技術課
題を克服し、培養した酵母菌体からの脂質を効率的に抽
出する方法を具現化することである。本発明の第5の目
的は、転換に用いた酵母の培養条件を検討し、培地での
生育がよく、しかも飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への転
換効率の高い酵母の選定を可能にすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決するた
め、次のような手段をとるものである。特許を受けよう
とする第1発明は、牛脂を炭素源とした培地に酵母を接
種し、数日間培養を行った後、生育した酵母菌体を集
め、この酵母菌体から脂質を抽出するようにしたことを
特徴とする酵母による牛脂脂肪酸組成の改質法である。
本発明は、新たな用途開発の望まれている牛脂を用い
て、酵母菌体により生物学的改良を行うものである。
【0010】本発明に使用する酵母菌体としては、実施
例に示したとおり、キャンディダ・リポリティカ(Cand
ida lipolytica IAM 4947,IAM 4948,IAM12188 )キャン
ディダ・ルゴサ(Candida rugosa,IAM12198,IAM12199,I
FO 0591,IFO 0750,IFO 1152,IFO 1364)などのキャンデ
ィダ(Candida)属、或はロードトルラ・グルティニス
(Rhodotoruia glutinis IAM 4988,IFO 0415)について
は、総脂質(TL)とトリグリセリド(TG)について
示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry:
DSC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(Reve
rse Phase High Performance Liquid Chromatography:
HPLC)分析の結果、牛脂は酵母により、不飽和化が
進行したことが明らかになったし、トリグリセリド分子
組成に大きな変動が認められた。尚、酵母菌体の種類に
ついては、牛脂を酵母により不飽和化するものであれば
上記に限る必要がないこと勿論である。
【0011】培地組成は、酵母培養に適したものであれ
ばよく、特に限定するものではないが、例えば、尿素0.
2 %、KH2PO4(リン酸二水素カリウム)0.6 %、K2HPO4
(リン酸水素二カリウム)0.2 %、 MgSO4・7H2O(硫酸
マグネシウム)0.01%、トウモロコシ抽出液0.2 %、牛
脂2%であり、pHを6.5 に調整したものなどが望まし
い。培地にショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤を加
えると、牛脂の分散性が向上し、酵母の繁殖を向上する
ことができる。
【0012】また、酵母菌体から脂質を抽出する方法と
しては、溶媒として、エタノール、エーテル、クロロホ
ルムメタノールなどの中性溶媒を用いて抽出してもよい
が、溶媒はこれに限ることがないこと勿論である。以上
のように本発明は、酵母を用いた生物学的手法により飽
和脂肪酸の不飽和化を行うものであり、このため牛脂の
融点が下がり、用途の拡大が可能となる。また酵母を用
いた生物学的手法により牛脂の脂肪酸組成の一種である
パルミチン酸(16:0)を脳卒中発症を顕著に予防す
る効果があるパルミトオレイン酸(16:1, Cis9-hex
adecencic acid,n-7)に変えて蓄積したり、コレステロ
ールを植物性ステロールへ転換して、牛脂を健康的な食
用油脂にするものである。
【0013】特許を受けようとする第2発明は、牛脂を
炭素源として添加し、pHをほぼ中性(pH6.2 〜7.2
)に調整した培地に酵母を接種し、2〜7日間培養を
行ない、生育した酵母菌体を遠心分離等により分け集
め、これを生理食塩水で洗浄したうえ凍結乾燥し、更に
超音波処理によって細胞破壊した後、中性溶媒で酵母菌
体から脂質を抽出するようにしたことを特徴とする酵母
による牛脂脂肪酸組成の改質法である。
【0014】この第2発明は、酵母菌体の培養条件と酵
母菌体から脂質を抽出方法を工夫し、効率よく牛脂脂肪
酸組成の改質をしようとするものである。抽出用の溶媒
として、エタノール、エーテル、クロロホルムメタノー
ル等の中性溶媒を用いたが、酵母の細胞壁は強固である
ため、単なる抽出では不十分であった。そこで酵母菌体
を凍結乾燥し、これを超音波処理によって細胞破壊する
という前処理をして脂質を抽出することにした。酵母菌
体を凍結乾燥すると破壊し易くなり超音波処理時間が短
くてすむし、夾雑物の混入もさけられるため、脂質の抽
出効率を上げることができるからである。
【0015】提供を受けた牛脂と抽出後の脂質について
示差走査熱量計(DSC)および逆相高速液体クロマト
グラフィー(HPLC)分析の結果、牛脂は酵母によ
り、不飽和化が進行し、トリグリセリド分子組成に大な
変動が認められた。特許を受けようとする第3発明は、
牛脂を炭素源として添加し、pHをほぼ中性(pH6.2
〜7.2 )に調整した培地に酵母を接種し、2〜7日間培
養を行ない、生育した酵母菌体を遠心分離等により分け
集め、この湿菌体に生理食塩水を加えて超音波処理によ
って細胞破壊した後、中性溶媒で酵母菌体から脂質を抽
出するようにしたことを特徴とする酵母による牛脂脂肪
酸組成の改質法である。
【0016】この第3発明は、酵母菌体からの脂質を抽
出するに際し、湿菌体に生理食塩水を加えて超音波処理
によって細胞破壊するという前処理をした後、中性溶媒
で脂質を抽出する方法である。この方法は第2発明の抽
出方法より超音波処理時間が長くかかるが、この方法に
よっても中性溶媒で脂質を抽出することができる。特許
を受けようとする第4発明は、請求項1、請求項2、請
求項3に記載する酵母菌体として、キャンディダ・リポ
リティカ(Candida lipolytica IAM 4947,IAM 4948,IAM
12188 )キャンディダ・ルゴサ(Candida rugosa,IAM12
198,IAM12199,IFO 0591,IFO 0750,IFO 1152,IFO 1364)
などのキャンディダ(Candida)属、或はロードトルラ・
グルティニス(Rhodotorula glutinis IAM 4988,IFO 04
15),であることを特徴とする酵母による牛脂脂肪酸組
成の改質法である。
【0017】この第4発明は、第1発明〜第3発明の従
属項であり、酵母菌体を実験結果により特定したもので
ある。実験結果によると菌株の生育状態に差異がある
が、これは培養条件が特定していたためで、酵母菌体の
種類によって、最適な培養条件に調整すれば、生育状態
をより良好なものにすることができる。
【0018】
【実施例】
実施例1: (A)牛脂の精製 酵母の培養に先だち、まず培養の基質として用いる牛脂
の精製を行った。提供を受けた牛脂を次の方法で精製し
て、腱などの夾雑物を除去するとともに均一化を図っ
た。牛脂に約2倍量の溶媒(ヘキサン)を加え、ホモジ
ナイザーを使用して溶解させた。これを減圧濾過により
不溶物を除いた後、分液ロートに移し、蒸留水で数回洗
浄した。次に、無水硫酸ナトリウムで脱水したものをエ
バポレータと窒素ガスで溶媒除去して試料とした。
【0019】精製した牛脂をナトリウム・メチラート法
によりメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィで脂
肪酸分析を行った。牛脂の主要な構成脂肪酸は、オレイ
ン酸(18:1)、パルミチン酸(16:0)、ステア
リン酸(18:0)で、総飽和脂肪酸が44%を占めて
おり、不飽和度指数(18:2/ΣStFA)はわずか
3.89%であった。このため、融点がかなり高いこと
が示唆された。
【0020】当該分析結果は表1の通りである。
【0021】
【表1】
【0022】(B)培養 液体培地組成を酵母の生育から判断して、表2のように
決定し、これに精製した牛脂2%を炭素源として添加
し、pHを6.5に調整したうえ培養した。培養にあた
っては、500mlの振とうフラスコに培養液を95ml入
れ、滅菌した後、あらかじめ接種用培地で2日間培養し
ていた酵母菌体を5ml接種し、26℃、120rpm で5
日間振とう培養をおこなった。接種用培地組成は、Yeas
t extract,0.3%;Maltextract 0.3%;Polypept
one,0.5%;Glucose,1.0%であり、pHを6.0
に調整した。
【0023】
【表2】
【0024】(C)酵母菌体からの脂質の抽出 遠心分離(3000rpm ,15min )によって菌体を分
集し、生理食塩水で2回洗浄した後、当該洗浄菌体を凍
結乾燥した。その後、当該凍結乾燥酵母菌体から次のよ
うな操作で脂質を抽出した。 凍結乾燥酵母菌体0.5gにクロロホルム/メタノー
ル(1:2混液、v/v)15mlを加えたうえ、超音波
処理(10min )を行う。
【0025】次にクロロホルム5mlと水5mlを加えて
攪拌した後、遠心分離(3000rpm ,15min )を行
い、クロロホルム層を分取する。残った水/メタノール
層にクロロホルム層を加えて攪拌、遠心分離と同様の操
作を繰り返して、再度クロロホルム層を分取する。 得たクロロホルム層に0.9%NaCl水溶液(0.2
容)を加えて洗浄し、これを遠心分離(2000rpm ,
15min )してクロロホルム層を分取する。
【0026】クロロホルム層を液層分離濾紙で濾過
し、無水硫酸ナトリウム(Na2SO4)で脱水する。 減圧下で溶媒溜去することにより、全脂質を得る。 (D)スクリーニング 次に、培養後の酵母菌体から抽出した脂質をスクリーニ
ングを行うと共に、菌体から抽出した脂質の脂肪酸組成
をガスクロマトグラフィーにより分析し、飽和脂肪酸の
不飽和化について検討した。
【0027】培養後の酵母菌体から抽出した脂質の脂肪
酸組成と菌体の抽出含量は、表3の通りである。
【0028】
【表3】
【0029】上記スクリーニングの結果をみると、本実
施例における培養条件では、酵母菌体の生育に多少の差
異はあるが、いずれも飽和脂肪酸が減少し、不飽和脂肪
酸が増加しており、牛脂が酵母菌体により不飽和化の方
向に組成変更していることが確認された。酵母による飽
和脂肪酸の不飽和化を評価する指標として、不飽和度指
数(リノール酸含量/総飽和脂肪酸)を調べたところ、
本実施例の場合は、図1の通りとなった。
【0030】酵母菌体のなかでは、キャンディダ・リポ
リティカ(Candida lipolytica IAM4947,IAM 4948,IAM1
2188 )の育成状態が良好で、しかもこれらは飽和脂肪
酸から不飽和脂肪酸への転換効率が良いことが解った。
抽出脂質の脂肪酸組成で特に注目すべきなのはリノール
酸(18:2)で、これが1.7%から10%にまで大
幅に増加し、不飽和度が顕著に増加していることであ
る。更に、飽和脂肪酸のパルミチン酸(16:0)が減
少し、これが不飽和化して脳卒中防止に効果のあるパル
ミトオレイン酸(16:1)の増加が顕著な点である。
【0031】次に、酵母(Candida lipolytica IAM1218
8)の総脂質(TL)およびトリグリセリド画分(TG)
を逆相HPLC分析し(図2参照)、食用油脂の機能と
して重要な融解特性の指標として示差走査熱量計(DS
C)による融点の測定を行って図3に示した。前記牛脂
と酵母のTLとTGとの3つのチャートを比較すると、
牛脂に比べ酵母のTLとTGでは、共により保持時間の
短いピーク、すなわち極性の大きい分子が増大する傾向
がみられた。このことから脂質の不飽和化が進行したこ
とが明らかになり、それと共に溶出パターンが大きく変
わっているので、トリグリセド分子組成に大幅な変動が
認められた。これは、次に述べるDSC分析の結果とも
一致している。
【0032】DSC分析の結果、牛脂に比較すると酵母
脂質では融点幅がせまいのが特徴的だった。しかし、脂
肪酸の不飽和化が進行した割には、高融点トリグリセリ
ドのピークは減少しなかった。このことは、酵母によっ
てトリグリセリド組成が大きく変わり、高温でシャープ
に溶解する性質を持つことが示唆された。この性質は、
体温付近で明確な融点を示すカカオ脂に類似しており、
カカオ代用脂としての応用ができる。 実施例2: (A)牛脂の精製とその脂肪酸組成 提供を受けた牛脂をホモジナイザーを使用して、約2倍
量の溶媒(ヘキサン)で抽出し、これを減圧濾過により
不純物を除いた。その後分液ロートに移し、蒸留水で数
回洗浄した。次に、ヘキサン層を取り、無水硫酸ナトリ
ウムで脱水し、エバポレータと窒素ガスで溶媒除去し
た。
【0033】精製した牛脂をナトリウム・メチラート法
によりメチルエステル化し、ガスクロマトグラフィで脂
肪酸分析を行った。当該分析結果は表4の通りである。
【0034】
【表4】
【0035】(B)培地の決定と培養 液体培地組成を代表的酵母菌体株キャンディダ・リポリ
ティカ(Candida lipolytica)の生育から判断して、表
2のように決定した。前記培地に精製した牛脂2%を炭
素源として添加し、pHを6.5に調整したうえ、酵母
菌体株キャンディダ・リポリティカ(Candida lipolyti
ca)を接種し、26℃、120rpm で5日間振とう培養
をおこなった。 (C)酵母菌体からの脂質の抽出 遠心分離(6000rpm ,15min )によって菌体と培
地を分け、菌体から次のような操作で脂質を抽出した。
【0036】遠心分離で分集された生酵母菌体に生理食
塩水を加え攪拌後、遠心分離(3000rpm ,15min
)をかける。これを2回繰り返した後、生理食塩水を
加え超音波処理により、酵母菌体を破壊した。次に破壊
酵母菌体にクロロホルム・メタノールで抽出し、分液ロ
ートに移し、0.9%食塩水で洗浄する。更に、遠心分
離を行ってクロロホルム層を取り、無水硫酸ナトリウム
(Na2SO4)で脱水し、減圧下で溶媒除去し、全脂質を得
る。
【0037】培養後の酵母菌体から抽出した脂質の脂肪
酸組成は、表5に示したように、菌株による多少の差異
はあるが、いずれもミリスチン酸(14:0)、パルミ
チン酸(16:0)が減少し、リノール酸(18:2)
が大幅に、またパルミトオレイン酸(16:1)および
ステアリン酸(18:0)が増加した。使用した牛脂中
のリノール酸含量は0.5%であるから、培養によって
約20倍から50倍に増加したことになる。したがっ
て、これらの結果から酵母に取り込まれた油脂は、かな
り効率良く不飽和化され、動脈硬化発症に関係している
といわれるリノール酸/飽和脂肪酸比が小さくなった。
【0038】
【発明の効果】本願発明は、牛脂を炭素源とした培地に
酵母を接種し、数日間培養を行った後、生育した酵母菌
体を集め、この酵母菌体から脂質を抽出することによ
り、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に転換し、融点を低下さ
せるようにした牛脂脂肪酸組成の改質法である。つまり
第1発明は、酵母による牛脂の生物学的改良法の基本発
明である。本来牛脂は飽和脂肪酸が多いため融点が高
く、コレステロール含量が多く、高脂血症や動脈硬化症
の予防の点からも不利なため、食用油脂としての利用価
値が低く、工業用として安価で取引されたり、産業廃棄
物として処理されるのが大部分であった。本発明は、飽
和脂肪酸の組成を酵母菌体により改質するもので、特
に、脂肪酸の不飽和化を進めると同時に、カカオ脂の融
解特性を示すことにより付加価値を高め、用途を拡大す
ると共に、脳卒中発症を顕著に予防する効果があるとさ
れているパルミトオレイン酸の蓄積と、コレステロール
の植物性ステロールへの転換により、健康的な食用油脂
としての牛脂の新しい活用の道を拓いたものである。
【0039】第2発明、第3発明は、いずれも酵母によ
る牛脂脂肪酸組成の改質法の具体的実施態様発明であ
る。第2発明は、抽出の前処理として、酵母菌体を凍結
乾燥したうえ、超音波処理によって細胞破壊するもので
あり、第3発明は、抽出の前処理として、湿菌体に生理
食塩水を加えて超音波処理によって細胞破壊した点に相
違点がある。このような前処理は、酵母菌体が硬くて脂
質の抽出効率が悪くなるのを防ぐことが目的である。両
発明とも酵母により牛脂脂肪酸組成の改質、脂肪酸の不
飽和化、パルミトオレイン酸の蓄積などを行うことがで
きた。
【図面の簡単な説明】
【図1】酵母菌体から抽出した脂質の不飽和度指数を示
す特性図
【図2】逆相HPLC分析の結果を示す特性図
【図3】酵母脂質、トリグリセリドおよび牛脂の示差走
査熱量計による融点の測定の結果を示す特性図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:73) (C12P 7/64 C12R 1:72) (C12P 7/64 C12R 1:645)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 牛脂を炭素源とした培地に酵母を接種
    し、数日間培養を行った後、生育した酵母菌体を集め、
    この酵母菌体から脂質を抽出するようにしたことを特徴
    とする酵母による牛脂脂肪酸組成の改質法。
  2. 【請求項2】 牛脂を炭素源として添加し、pHをほぼ
    中性(pH6.2 〜7.2 )に調整した培地に酵母を接種
    し、2〜7日間培養を行ない、生育した酵母菌体を分け
    集め、これを生理食塩水で洗浄したうえ凍結乾燥し、更
    に超音波処理によって細胞破壊した後、中性溶媒で酵母
    菌体から脂質を抽出するようにしたことを特徴とする酵
    母による牛脂脂肪酸組成の改質法。
  3. 【請求項3】 牛脂を炭素源として添加し、pHをほぼ
    中性(pH6.2 〜7.2 )に調整した培地に酵母を接種
    し、2〜7日間培養を行ない、生育した酵母菌体を分け
    集め、この湿菌体に生理食塩水を加えて超音波処理によ
    って細胞破壊した後、中性溶媒で酵母菌体から脂質を抽
    出するようにしたことを特徴とする酵母による牛脂脂肪
    酸組成の改質法。
  4. 【請求項4】 請求項1、請求項2、請求項3に記載す
    る酵母菌体として、キャンディダ・リポリティカ(Cand
    ida lipolytica IAM 4947,IAM 4948,IAM12188 )キャン
    ディダ・ルゴサ(Candida rugosa,IAM12198,IAM12199,I
    FO 0591,IFO0750,IFO 1152,IFO 1364)などのキャンデ
    ィダ(Candida)属、或はロードトルラ・グルティニス
    (Rhodotorula glutinis IAM 4988,IFO 0415),である
    ことを特徴とする酵母による牛脂脂肪酸組成の改質法。
JP5018454A 1993-02-05 1993-02-05 牛脂を炭素源として培養した酵母中に脂質を蓄積させる方法 Expired - Lifetime JPH0811072B2 (ja)

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JP5018454A Expired - Lifetime JPH0811072B2 (ja) 1993-02-05 1993-02-05 牛脂を炭素源として培養した酵母中に脂質を蓄積させる方法

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JP (1) JPH0811072B2 (ja)

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JPH0811072B2 (ja) 1996-02-07

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