JPH06245759A - 油脂生産能力を有する微生物及び油脂の製造法 - Google Patents

油脂生産能力を有する微生物及び油脂の製造法

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JPH06245759A
JPH06245759A JP5054730A JP5473093A JPH06245759A JP H06245759 A JPH06245759 A JP H06245759A JP 5054730 A JP5054730 A JP 5054730A JP 5473093 A JP5473093 A JP 5473093A JP H06245759 A JPH06245759 A JP H06245759A
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JP
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fatty acid
oil
fat
acid
oils
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JP5054730A
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English (en)
Inventor
Sakuzo Fukui
作蔵 福井
Takashi Yagi
隆 八木
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Showa Sangyo Co Ltd
Original Assignee
Showa Sangyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高い油脂生産能を有し、かつ構成脂肪酸とし
てパルミトレイン酸を高い割合で含有する油脂を生産す
る能力を有する微生物、及びそれを用いる油脂の製造法
の提供。油脂製造工程で副生する脂肪酸を油脂として回
収する有効な手段の提供。 【構成】 トリコスポロン・スピーシーズSH45Y−
E228株(微工研菌寄第13406号)。該菌株を脂
肪酸アルキルエステルまたは脂肪酸を含有する培地に培
養して培養液中菌体外に油脂を生成蓄積せしめ、該培養
液から生成蓄積した油脂を採取する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高い油脂生産能力を有す
る微生物に関する。本発明は発酵法により菌体外培養液
中に油脂を高収率で生成蓄積せしめる油脂の製造法に関
する。また本発明は構成脂肪酸としてパルミトレイン酸
を高い割合で含有する油脂の製造法に関する。さらに本
発明は製油副産物の脂肪酸から油脂を製造する方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】発酵法による油脂の菌体内製造法として
はオイディウム(Oidium) 属、エンドミセス (Endomyce
s)属、カンディダ (Candida)属、ロドトルラ(Rhodotoru
la) 属、クリプトコッカス (Cryptococcus) 属またはロ
ドスポリディウム (Rhodosporidium) 属に属する微生物
によるカカオバター代用脂の製造法(特開昭51-12386
8); エンドミセス属、ロドトルラ属またはリポミセス
(Lipomyces)属に属する微生物によるカカオバター代用
脂の製造法(特開昭52- 122672) ; サッカロミセス(Sa
ccharomyces)属に属する微生物によるパルミトレイン酸
含有量の高い脂質成分(トリグリセリドを含む) の製造
法(特開昭63- 287491) ; モルティエレラ (Mortierell
a)属に属する微生物によるγ−リノレン酸含有量の高い
脂質(油脂を含む)の製造法(特開昭59-130191) ; 及
びクレッケラ (Kloeckera)属に属する微生物によるパル
ミトレイン酸含有量の高い脂質(中性脂質を含む)の製
造法( 特開平 1-108991)が知られており、またトリコス
ポロン(Trychosporon)属に属する微生物による油脂の製
造が報告されている〔N.J.Moon et al., J.Am. Oil Che
m.Soc., 55, 683-688 (1978)及び H. Kaneko et al.,Li
pids, 11 (No.12), 837-844 (1976)〕。また、サッカロ
ミセス属微生物にるパルミトレイン酸の菌内体製造が知
られている(特開昭62-289191)。
【0003】発酵法による脂質の菌体外製造法としては
カビ類または藻類を界面活性剤の存在下に培養する方法
が知られている(特開昭62-3791)。また脂肪酸の菌体外
生産能を有するカンディダ・リポリティカ(lypolytica)
に属する変異株による脂肪酸の菌体外生産についての報
告がある〔T.Miyakawa etal., Agric. Biol. Chem.,48,
499 (1984)〕。パルミトレイン酸は炭素数16のモノ
不飽和脂肪酸の1種であり、ミンク油、マカデミアンナ
ッツ油に15〜20%含まれている。パルミトレイン酸は有
用な薬理作用〔抗腫作用、虫歯抑制作用及び高血圧性疾
患における血管障害の防護作用(特開昭62-289191)等〕
を有し、またパルミトレイン酸を構成成分とする油脂は
皮膚との親和性が良好なため化粧品材料として有用であ
る。カカオ脂はα及びα' 位に主として、飽和脂肪酸基
を有し、β位に主としてモノエン脂肪酸基であるオレイ
ン酸基を有するトリグリセリドを主成分とする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】油脂の菌体内生産の場
合には、油脂の抽出工程が煩雑である。すなわち、まず
菌体を遠心分離または濾過により回収し、ついで湿菌体
を破砕し(コロイドミル、ボールミル、ホモジナイザー
等による機械的破砕、超音波による破砕等)、n-ヘキサ
ン等で油脂を抽出するか、湿菌体を乾燥し(凍結乾燥、
噴霧乾燥等)、クロロホルム:メタノール混合溶媒やn-
ヘキサン:イソプロパノール混合溶媒等で油脂を抽出す
る工程を要する。またカビ類による油脂の生産では、一
般に、培養菌体が塊りとなり易く、そのため菌体が攪拌
羽根に絡み付いたり、それによって破壊されたり、再現
性が十分でないといった問題点が生じやすい。また藻類
による油脂の生産では、一般に、培養時間が1週間〜1
ヵ月と長く、また付帯設備として光照射設備を要する。
また界面活性剤の存在下での油脂の菌体外生産において
は培養終了後、一般に、生成油脂を有機溶媒で抽出する
が、この際界面活性剤の存在のため水相と有機溶媒相と
の分離が十分に行われないという問題が生じやすい。本
発明の目的は高い油脂生産能力を有する微生物を提供す
ることにある。本発明の別の目的は構成脂肪酸としてパ
ルミトレイン酸を高い割合で含有する油脂を生産する能
力を有する微生物を提供することにある。本発明の別の
目的は油脂を、高収率で、菌体外に発酵生産する方法を
提供することにある。本発明の別の目的は構成脂肪酸と
してパルミトレイン酸を高い割合で含有する油脂を発酵
生産する方法を提供することにある。本発明の別の目的
は酵母を用いて、菌体外に、油脂を発酵生産せしめるこ
とにより抽出工程を容易にしコスト低減を図る方法を提
供することにある。本発明の別の目的はカビや藻類によ
る油脂生産の問題点を回避できる油脂の菌体外発酵生産
法を提供することにある。本発明の別の目的は発酵生産
後の油脂の有機溶媒による抽出が、水相と有機溶媒相と
の分離が容易に行えるという点で、有利に行える油脂の
菌体外発酵生産法を提供することにある。本発明のさら
なる目的は油脂製造工程で副生する留出油、ソーダ油さ
い等に含有され、従来有効に利用されていなかった脂肪
酸を油脂として回収する手段を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らの一人を含む
研究者らは油脂の菌体外発酵生産を目指して研究を重ね
た結果、通常の発酵培地、例えばグルコースを主炭素源
とする発酵培地での培養では菌体外油脂生産を示さな
い、トリコスポロン属、サッカロマイコプシス属、カン
ディダ属またはクリプトコッカス属に属する油脂生産性
微生物が、脂肪酸アルキルエステルまたは脂肪酸の存在
下での培養によって、油脂を菌体外に著量生成蓄積する
ことを見い出した(特願平3−272003)。本発明
者らはさらに優れた性質を有する微生物を取得すべく上
記発明で使用された微生物を変異処理したところ、油脂
生産能、及び構成脂肪酸としてパルミトレイン酸を高い
割合で含有する油脂を生産する能力が顕著に増大した微
生物を得ることができ、本発明に到達した。すなわち、
本発明はトリコスポロン・スピーシーズSH45Y−E
228株(微工研菌寄第13406号)に関し、さらに
トリコスポロン・スピーシーズSH45Y−E228株
を脂肪酸アルキルエステルまたは脂肪酸を含有する培地
に培養して、培養液中菌体外に油脂を生成蓄積せしめ、
該培養液から生成蓄積した油脂を採取することを特徴と
する油脂の製造法に関する。
【0006】本発明で使用する微生物トリコスポロン・
スピーシーズSH45Y−E228株は前記特願平2−
272003の発明で使用されたトリコスポロン・スピ
ーシーズSH45Yを変異処理して得られた変異株であ
り、SH45Y株と同じ菌学的性質を有するが、前述の
ごとく油脂生産能、及び構成脂肪酸としてパルミトレイ
ン酸を高い割合で含有する油脂を生産する能力が顕著に
増大している点において異なる。SH45Y株の菌学的
性質は特願平2−272003に記載されている。トリ
コスポロン・スピーシーズSH45Y−E228株は工
業技術院微生物工業技術研究所に、前述のごとく、微工
研菌寄第13406号として寄託されている。
【0007】次に本発明で使用する脂肪酸アルキルエス
テルについて述べる。脂肪酸アルキルエステルを構成す
る酸成分としては通常炭素数8〜22、特に12〜18の飽和
・不飽和の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラ
ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン
酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン
酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、
エルカ酸が挙げられる。また脂肪酸アルキルエステルの
アルコール成分としては通常、炭素数1〜6の低級アル
コール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノ
ール、i−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられ
るがエタノールが好ましい。脂肪酸アルキルエステルは
各単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いて
もよい。次に本発明で使用する脂肪酸としては通常炭素
数8〜22、特に16〜22の不飽和脂肪酸(例えばパルミト
レイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラ
キドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸)、炭素数
8〜16の飽和脂肪酸(例えばカプリル酸、カプリン酸、
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸)、または上
記の不飽和脂肪酸もしくは飽和脂肪酸と炭素数18〜22、
特に18〜20の飽和脂肪酸(例えばステアリン酸、アラキ
ン酸、ベヘン酸)との混合物が挙げられる。この不飽和
脂肪酸もしくはC8〜C16 飽和脂肪酸とC18 〜C22 飽和脂
肪酸の混合物中における不飽和脂肪酸もしくはC8〜C16
飽和脂肪酸の割合は10重量%以上、好ましくは25重量%
以上である。また、この混合物としては、植物油製造工
程で副生する留出油、ソーダ油さい等に含有され、従来
有効に利用されていなかった植物油脂脂肪酸、例えば大
豆脂肪酸、ナタネ脂肪酸を用いることができる。なお、
上記のごとく不飽和脂肪酸とC18 〜C22 飽和脂肪酸の混
合物を使用する場合には、不飽和脂肪酸はもとよりC18
〜C22 飽和脂肪酸も本発明使用酵母によって資化される
が、例えばステアリン酸を単独で用いる場合には、これ
は殆ど資化されない。また、脂肪酸と脂肪酸アルキルエ
ステルとを組み合わせて用いてもよいが、その脂肪酸と
して上記C18 〜C22 飽和脂肪酸を用いる場合には、その
割合は90重量%未満、好ましくは75重量%未満とする
【0008】本発明で使用する酵母を培養するに際し、
培地中に含有せしめる脂肪酸アルキルエステルまたは脂
肪酸の量は全体として通常 0.1〜50g/dl、好ましくは1
〜10g/dlである。脂肪酸アルキルエステルまたは脂肪酸
は培養当初から加えてもよいし、菌がかなり生育した培
養中途に加えてもよいし、またその複合した添加型式で
あってもよい。すなわち培養の全期間に亘って上記濃度
が維持される必要はなく、濃度の具体的コントロールは
油脂の菌体外蓄積及びその量との関連で適宜決定すれば
よい。かくして上記濃度範囲での培養により油脂が菌体
外に生成蓄積する。また後述する如く、添加する脂肪酸
アルキルエステルの脂肪酸または添加する脂肪酸の種類
により油脂の構成脂肪酸組成が変化する。
【0009】本発明方法で使用される培地については、
油脂の発酵生産に通常使われる培地が使用される。すな
わち、実施例に示すごとく、主炭素源のほか窒素源、無
機物その他の栄養素を程よく含有する培地ならば、合成
培地および天然培地のいずれでも使用可能である。炭素
源としては前記脂肪酸アルキルエステルまたは脂肪酸を
単独で用いてもよいし、これに少量の例えばこれらの総
量に対し20重量%以下の、好ましくは2重量%以下の
他の炭素源を加えて用いてもよい。かかる他の炭素源と
してはグルコース、スクロース、フラクトース、澱粉、
澱粉加水分解物、廃糖蜜など種々の炭水化物、エタノー
ル、メタノール、グリセロール、ポリアルコールなどの
アルコール、グルタミン酸、アスパラギン酸などのアミ
ノ酸、n−パラフィンなどの炭化水素などが使用菌の資
化性に応じて使用できる。
【0010】窒素源としては、アンモニア、塩化アンモ
ニウム、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸ア
ンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等の無機有機窒素化
合物が使用できる。さらに窒素源としてはまたペプト
ン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スチーブ・リカ
ー、カゼイン加水分解物、フイッシュミールもしくはそ
の消化物、脱脂大豆粕もしくはその消化物などの窒素含
有天然物も使用できる。無機物としては、リン酸一カリ
ウム、リン酸二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナト
リウム、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硫酸マンガン、塩化
カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、ホウ
酸・モリブデン酸アンモニウム、ヨウ化カリウム等が使
用できる。使用する微生物が生育のために特定の栄養素
(例えばビオチン、チアミンなどのビタミン等)を必要
とする場合は、当然その栄養素を適当量培地に加えなけ
ればならない。これらの栄養素が窒素源として用いられ
る窒素含有天然物に含まれて添加される場合はもちろん
別に栄養素を添加する必要はない。
【0011】培養は振盪培養あるいは深部攪拌培養など
好気的条件下で行う。培養温度は一般には20〜35℃
が好ましいが、菌が生育する温度であれば他の温度条件
でもよい。培養中の培地のpHは、脂肪酸エステルを用
いる場合は 4.5〜 6.0、脂肪酸を用いる場合は 4.5〜
7.2に維持することが高収率を得るために望ましい。培
養開始後通常3〜7日間で菌体外に著量の油脂が生成蓄
積する。
【0012】培養終了後、培養液に抽出溶媒を添加して
油脂を抽出溶媒中に抽出する。油脂の一部は菌体表面に
付着しているので抽出溶媒の添加は、通常、菌体を含む
培養終了液そのものまたはその部分濃縮物に対して行
う。また上記抽出に加え、菌体内に残存した油脂の回収
を常法により行ってもよい。抽出溶媒としては油脂を溶
解し、水との混和性がないか乏しい常温で液状の有機溶
媒、例えばハロゲン化低級アルカン、例えばクロロホル
ム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン ;
n−ヘキサン、エチルエーテル;酢酸エチル;芳香族炭
化水素例えばベンゼン、トルエン、キシレン等が好適に
用いられる。抽出溶媒の添加量は培養液中に生成蓄積し
た油脂を十分に回収できる量であればよく特に限定され
ないが、一般には培養終了液1Lに対し 50 ml以上、好
ましくは 100 ml 〜3L、特に好ましくは 100 ml 〜1
Lである。
【0013】なお、抽出溶媒によって抽出される油脂が
菌体外に存在する油脂であることは、菌体内油脂が抽
出される場合に一緒に抽出される、細胞膜を構成してい
るリン脂質が抽出液中に実質上存在しないこと(対照的
に例えば前記特開昭63-287491 の実施例1では菌体を破
壊することなく乾燥菌体からクロロホルム−メタノール
混合物で脂質を抽出しているが、油脂等の単純脂質だけ
でなくリン脂質等の複合脂質も一緒に抽出されてい
る)、抽出操作後に完全な(intact) 菌体が観察され
ること、菌体内生産の場合には通常本法に示すような
単純な操作で油脂が抽出されないこと(例えば従来の技
術の項で示した油脂生産に関する先行技術文献参照)等
から明らかである。
【0014】抽出溶媒中に抽出された油脂は目的に応
じ、抽出溶媒を蒸発除去してそのまま製品とすることも
できるし、カラムクロマトグラフィー、蒸留、脱酸等に
より原料脂肪酸エステルもしくはその分解物である脂肪
酸または原料脂肪酸をはじめとする混入成分を除去する
ことによって精製することもでき(脂肪酸エステル及び
脂肪酸の除去によりほぼ純粋のトリグリセリドにな
る)、さらに必要に応じ脱色、脱臭等の処理に付すこと
もできる。これらの個々の処理操作は油脂の生産に際し
ての常法(例えば、大豆、とうもろこし、菜種等の植物
からの抽出精製に関しての宮川高明著、「食用油製造の
実際」、幸書房(1988)、発酵生産油脂の精製に関して
の前出の特開昭63-28491、特開昭52-122672 等)及び一
般的な発酵生産物の精製方法に準じて行うことができ
る。
【0015】カカオ脂はα及びα´位に主としてステア
リン酸残基またはパルミチン酸残基を有し、β位に主と
してオレイン酸残基を有するトリグリセリドより主とし
て成る。本発明で、原料脂肪酸アルキルまたは脂肪酸と
して、長鎖飽和脂肪酸(C:16〜20)もしくはそのエス
テルもしくはそれらの混合物を単独で、または長鎖モノ
不飽和脂肪酸飽和脂肪酸(C:16〜20)もしくはそのエ
ステルもしくはそれらの混合物と組み合わせて使用する
場合には、一般にカカオ脂に似た組成を有する油脂、す
なわちα及びα´位に主として長鎖飽和脂肪酸残基
(C:16〜20)を有し、β位に主として長鎖モノ不飽和
脂肪酸残基(C:16〜20)を有するトリグリセリドより
主として成る油脂が得られる。ただし、上記で長鎖モノ
不飽和脂肪酸もしくはそのエステルもしくはそれらの混
合物を併用する場合には、それらの割合は合計で40重量
%以下とする。また、長鎖飽和脂肪酸を用いる場合には
上記にかかわらず上記の他の成分と併用するものとし、
長鎖飽和脂肪酸の使用割合を90重量%未満、好ましくは
75重量%未満にするものとする。
【0016】生成蓄積する油脂の組成は培地に添加する
脂肪酸アルキルエステルまたは脂肪酸の種類によって大
きな影響を受ける。すなわち、炭素源として飽和脂肪酸
アルキルまたは飽和脂肪酸を用いる場合には、一般に、
得られる油脂中に占める対応飽和脂肪酸残基、または対
応飽和脂肪酸残基及び対応不飽和脂肪酸(主としてモノ
不飽和脂肪酸)残基の割合が増加する。また、炭素源と
して不飽和脂肪酸アルキルまたは不飽和脂肪酸を用いる
場合には一般に、得られる油脂中に占める対応不飽和脂
肪酸残基の割合が増加する。また炭素源として不飽和脂
肪酸と飽和脂肪酸の混合物を用いる場合には、一般に、
得られる油脂中に占める対応不飽和脂肪酸残基及び対応
飽和脂肪酸残基の割合が増加する。
【0017】
【実施例】次に本発明方法を実施例により具体的に説明
する。 実施例1 下記培地100ml ずつ(下記に示すごとく1.0gのパルミチ
ン酸エチルを含有する) にトリコスポロン・スピーシー
ズSH45Y−E228株(微工研菌寄第13406
号)を107 個接種し、28℃で4日間振盪培養した。培養
終了後培養液に15mlのクロロホルムを加え、3回抽出を
行った。クロロホルム抽出液は合わせて50mlに定容し
た。クロロホルム抽出液2mlに内標準物質としてトリヘ
プタデカノインを1.0mg 加え、濃縮後、TLCに塗布し
た。n−ヘキサン:ジエチルエーテル:酢酸(80:20:
1)で展開しトリグリセリド画分を回収した。トリグリ
セリド画分に10%KOHメタノール溶液0.6ml を加え、
80℃で20分間加熱した。冷却後三フッ化ホウ素−メタノ
ール錯体メタノール溶液を0.7ml 加え、2.5 分間加熱
し、冷却後n−ヘキサン1.0ml を加え、さらに1.5 分間
加熱した。再び冷却後塩化ナトリウム飽和水溶液を多量
に加え、上層のヘキサン層を回収した。ヘキサン層は無
水硫酸ナトリウムで脱水後、ガスクロで脂肪酸を定量し
た。総脂肪酸量に1.05を乗じ、トリグリセリド量とし
た。結果を表1に示す。
【0018】培地 NaNO3 2.0g、 (NH4)SO4 2.0g、 K2HPO4 1.0g、 KH2PO4
7.0g、 MgSO4・7H2O0.3g、 CaCl2・2H2O 0.1g、 NaCl
0.5g、パルミチン酸エチル 10.0g、ビタミン混合水溶液
*1 1ml、ミネラル混合水溶液*2 1ml、1%クロラムフェ
ニコール/エタノール 1ml、蒸留水で1000mlにする。*1. 2 下記に示す ビタミン混合水溶液 ビオチン 2mg、 パントテン酸カルシウム 400mg、 葉
酸 2mg、 イノシトール 2000mg 、 ニコチン酸 400m
g、n−アミノ安息香酸 200mg、 ピリドキシン塩酸塩
400mg、 リボフラビン 200mg、 チアミン塩酸塩 400m
g、 蒸留水で1000mlにする。 ミネラル混合水溶液 Mn SO4 ・ 4〜5H2O 60mg 、 Zn SO4 ・7H2O、 Cu SO4
・5H2O 40mg 、 FeCl2・6H2O 250mg、 H3BO3 60mg 、
(NH4)6Mo7O24 ・4H20 25mg 、 KI 100mg 、蒸留水で100
0mlにする。
【0019】比較例1 使用菌株をトリコスポロン・スピーシーズSH45Y
(微工研菌寄第12362号)またはトリコスポロン・
スピーシーズSH45Y−E2(微工研菌寄第1236
4号)(いずれも前記特願平3−272003に開示の
微生物)とする以外は実施例1と同様に操作した。結果
を表1に示す。
【表1】 ──────────────────────────────────── 菌 株 トリグリ トリグリセリドの脂肪酸組成 セリド (wt%) (mg) C16 C16:1 C18 C18:1 C18:2 ──────────────────────────────────── (実施例) トリコスポロン・スピーシーズ 153 59.1 35.2 0.5 3.1 2.1 SH45Y-E228 (比較例) トリコスポロン・スピーシーズ 113 63.0 15.9 1.4 16.4 3.3 SH45Y (微工研菌寄第 12362号) トリコスポロン・スピーシーズ 130 62.7 26.7 0.6 6.7 3.2 SH45Y-E2 (微工研菌寄第 12364号) ──────────────────────────────────── C16 パルミチン酸、 C16:1 パルミトレイン酸、 C
18 ステアリン酸、 C18:1オレイン酸、 C18:2 リノー
ル酸
【0020】実施例2 5Lのジャーファーメンタ(ミツワ理化製) にパルミチン
酸エチルの含有量が異なる以外実施例1と同じ培地3L
(パルミチン酸エチル 60gを含む) を入れ滅菌した。パ
ルチミン酸エチルに代えグルコースを含有する以外実施
例1と同じ培地200ml(グルコース4.0gを含有する) にト
リコスポロン・スピーシーズSH45Y−E228株を
植菌し、28℃で4日間培養した培養液全量を上記ジャー
ファーメンタ中の培地に植菌し、28℃、250rpm、通気量
0.5L/minの条件で7日間培養した。培養終了後、培養液
にn−ヘキサン(食添用グレード)500ml を加え抽出し
た。抽出操作は計3回繰り返し、得た抽出液は合せて濃
縮した。回収油分はトリグリセリドを精製するため蒸留
した。KDL1(LEYBOLD社製)を用い0.1mmHg 、140 ℃
の条件下で操作を繰り返し、蒸留残物が薄層クロマトグ
ラフィーでトリグリセリドの単一スポットを与えるまで
精製した。16.2g のトリグリセリドが得られた。結果を
表2に示す。
【表2】 ──────────────────────────────────── トリグリセリド生産量 トリグリセリドの脂肪酸組成 (wt%) (g) C16 C16:1 C18 C18:1 C18:2 ──────────────────────────────────── 16.2 60.3 30.4 0.6 5.0 3.7 ────────────────────────────────────
【0021】実施例3 パルミチン酸エチル1g/dlに代えて下記表に示す原料1
g/dlを含有する以外実施例1と同じ培地を用いて、実施
例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。
【表3】 ──────────────────────────────────── トリグリ トリグリセリドの脂肪酸組成 (wt%) 原料 セリド ─────────────────────── 生産量(mg) C12 C14 C16 C16:1 C18 C18:1 C18:2 ──────────────────────────────────── 脂肪酸 ミリスチン酸 164.3 0.2 85.0 1.7 − 0.3 9.4 3.4 パルミチン酸 15.4 − − 68.8 22.7 − 4.0 4.5 パルミトレイ ン酸 23.3 − − 3.4 94.0 − 2.6 − オレイン酸 125.6 − − − − − 95.5 4.5 脂肪酸エチルエステル ラウリン酸 エチル 128.9 30.7 − 8.3 − 13.5 41.1 6.4 ミリスチン酸 エチル 123.3 − 71.5 3.9 − − 20.3 4.3 オレイン酸 エチル 21.3 − − 4.7 − − 89.8 5.5 ──────────────────────────────────── C12 :ラウリン酸、C14 :ミリスチン酸
【0022】
【発明の効果】本発明によって、高い油脂生産能を有
し、かつ構成脂肪酸としてパルミトレイン酸を高い割合
で含有する油脂を生産する能力を有する微生物が提供さ
れる。また本発明方法によれば前駆体から油脂を菌体外
に高収率で発酵生産させることができる。また本発明方
法によれば前駆体から構成脂肪酸としてパルミトレイン
酸含量の高い油脂を菌体外に発酵生産させることができ
る。さらに本発明方法によれば油脂製造工程で副生する
脂肪酸を油脂として回収することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:645)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トリコスポロン・スピーシーズSH45
    Y−E228株(微工研菌寄第13406号)。
  2. 【請求項2】 トリコスポロン.スピーシーズSH45
    Y−E228株(微工研菌寄第13406号)を脂肪酸
    アルキルエステルまたは脂肪酸を含有する培地に培養し
    て、培養液中菌体外に油脂を生成蓄積せしめ、該培養液
    から生成蓄積した油脂を採取することを特徴とする油脂
    の製造法。
  3. 【請求項3】 生産される油脂が構成脂肪酸としてパル
    ミトレイン酸を含有する請求項2の油脂の製造法。
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JP2009179805A (ja) * 1996-03-28 2009-08-13 Dsm Ip Assets Bv 低温殺菌したバイオマスからの微生物多不飽和脂肪酸含有オイルの調製
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