JPH0588713U - 薄金属板の成形金型装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は、薄金属板にエンボス加工を行う際
にデフォーム等の不具合発生を防止するようにした成形
金型装置に関する。 【構成】 下型２に対して上下動可能な上型３に、成形
面１１ａを有するダイ１１を設け、このダイ１１の一部
に円弧面１４ａを有する回転カムホルダ１３を設けると
ともに、円弧面１４ａに沿って摺動回転する半円板状の
回転カム１５を設け、この回転カム１５の一端側にエン
ボスパンチ１８を設ける。一方下型２には、成形面５ａ
を有するポンチ５と、上型３の降下に伴って回転カム１
５の他端側を上方に押圧可能な係合ピン８を設け、上型
３の降下途中でまずエンボスパンチ１８による加工を行
い、その後、ダイ１１とポンチ５で成形出来るようにす
る。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、薄金属板にエンボス加工を行う際にデフォーム等の不具合発生を防 止するようにした成形金型装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、例えば自動車のドアパネル等の把手部にはエンボス加工によって局部的 に凹部が成形されるが、かかる成形装置として例えば実開昭５９―１４２９号の ようなプレス型が提案されている。 このプレス型は、それまでの絞りプレスがパネル面の面形状の成形と局部的な 凹部の成形を同時に行っていたため、成形時にシワ等のデフォームが発生しやす いという問題を解決するためなされたものであり、下型に対して上下動可能な上 型を、夫々別個に上下動可能な主ダイと補助ダイによって構成し、当初、主ダイ を作動させてパネル面を成形し、パネル面を成形し終えた時点で補助ダイを作動 させて凹部を成形するというものである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、上記のようなプレス型にあっては、主ダイがパネル面を拘束したまま の状態で補助ダイが局部的に変形を起こさせるため、材料の流れが円滑に行われ 難いうえ加工部に集中応力が発生しやすく、くぼみを一定量以上にしようとする と依然として凹部周辺にデフォームが発生しやすいという問題があった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

かかる課題を解決するため、本考案は、下型と、この下型に対して上下動可能 な上型を備えた成形金型装置において、前記上型を、成形面を有するダイと、こ のダイの一部に設けられる回転カムホルダと、この回転カムホルダの円弧面に沿 って先端側を下方に向けて摺動回転する回転カムによって構成した。又、下型を 、前記ダイの成形面に対応した成形面を有するポンチと、上型の降下に伴って前 記回転カムの後端側を上方に押圧可能な係合ピンによって構成し、前記回転カム の先端側に、該回転カムの摺動回転によってダイの成形面より下方に突出するエ ンボスパンチを設けた。

【０００５】

【作用】

上型の降下に伴って回転カムの後端側を下型側の係合ピンに当接させ、回転カ ムをカムホルダの円弧面に沿って摺動回転させる。そして、上型の降下途中でエ ンボスパンチをダイの成形面より下方に突出させてエンボス加工するが、この回 転カムの作用によってエンボスパンチの降下速度はダイの降下速度を上回るよう になり、成形途中でまずエンボスパンチによる成形がなされ、その後、ダイによ る最終の成形がなされることになる。 そしてこのエンボスパンチによる成形を、素材に所定の張り剛性が得られ且つ 最終的な成形の前の段階とすることで、局部的な応力集中が避けられ、加工部周 辺にデフォーム等の不具合が発生しない。

【０００６】

【実施例】

本考案の成形金型装置の実施例について添付した図面に基づき説明する。 図１は金型装置の正面からの断面図、図２は平面図、図３は側面図である。

【０００７】 本考案の金型装置は、図６に示すような自動車のドアパネルＰを成形するため の絞り金型装置１として構成され、図１から図３に示すように、下型２に対して 上型３が上下動自在とされている。

【０００８】 そして、下型２は、ダイベース４上に設けられたポンチ５と、クッションピン ６に支えられるブランクホルダ７を備え、このクッションピン６は付勢部材によ って上方に付勢されている。

【０００９】 ポンチ５の上面は、製品形状に合せた形状の成形面５ａとされている。そして このポンチ５の成形面５ａと、後述するダイ１１下面の成形面１１ａによって素 材Ｐｏを所望の形状に絞り成形する訳であるが、このポンチ５の成形面５ａの一 部には、局部的に凹部となるエンボスダイ１０が形成されている。

【００１０】 そして、このエンボスダイ１０が、後述するエンボスパンチ１８の位置に符合 している。

【００１１】 又、この下型２には係合ピン８が立設されている。そして、この係合ピン８は エンボスダイ５の最上端より更に上方に突出し、上部に球面状の受け座８ａを備 えている。

【００１２】 一方、上型３は下型２に対して上下動自在とされており、前記のように下面中 央部に成形面１１ａを備えたダイ１１を備えている。

【００１３】 そして、このダイ１１の周縁部下面には、前記ブランクホルダ７との当接面に ビード１２が設けられている。

【００１４】 又、このダイ１１の一部には回転カムホルダ１３を設けている。この回転カム ホルダ１３はダイ１１に埋め込まれるが如く設けられるとともに、内部が円弧状 に繰り抜かれ且つ下方側が開放される繰り抜き部１４を備えている。つまり、こ の繰り抜き部１４の上面が円弧面１４ａとして構成されている。

【００１５】 この繰り抜き部１４の中には、半円板状の回転カム１５が設けられている。こ の回転カム１５は前記円弧面１４ａに沿って摺動出来る円弧状の摺動面１５ａを 備えるとともに、この摺動面１５ａの円中心に相当する箇所には、落下防止用の 支軸１６が水平方向に設けられ、回転カム１５を支えている。

【００１６】 この回転カム１５の後端側の上部には、戻しスプリング１７が配設され、回転 カム１５の後端側を下方に付勢している。 又、この後端側の下面には、前記係合ピン８の受け座８ａに対応する球面状の 凹部１５ｂを設け、この凹部１５ｂの位置を受け座８ａの位置に符合させている 。

【００１７】 一方、回転カム１５の先端側の下方には、エンボスパンチ１８を設けている。 そしてこのエンボスパンチ１８は、前記エンボスダイ１０とともに図６に示すド アパネルＰの把手部Ｔの凹部を成形するための成形面１８ａを備えており、該成 形面１８ａの下端をダイ１１の成形面１１ａより僅かに上方に位置させている。

【００１８】 すなわち、このエンボスパンチ１８は、後述するように、上型３の降下によっ て素材Ｐｏに一定の張り剛性が与えられた時に、ダイ１１による成形に先立って 素材Ｐｏをしぼり成形するため、ダイ１１の成形面１１ａの近傍に位置させて下 方に突出させやすくしているものである。

【００１９】 そして、上型３が降下する際に、まず素材Ｐｏの周縁部をダイ１１とブランク ホルダ７によって保持し、成形面５ａによって素材Ｐｏに適当な張り剛性を付与 した後、前記回転カム１５の凹部１５ｂと係合ピン８を当接せしめてエンボスパ ンチ１８によってエンボス加工を行い、最後にダイ１１とポンチ５による最終段 階の成形が行われるようにしている。

【００２０】 このように構成した金型装置１の作用について、図４及び図５をも参照しつつ 説明する。

【００２１】 図１に示すように、上型３を上昇させて成形素材Ｐｏを下型２上にセットし、 次いで上型３を降下させる。この際、回転カム１５は戻しスプリング１７によっ て後端部側が上方に押され、エンボスパンチ１８の成形面１８ａがダイ１１の成 形面１１ａより上部側に位置している。

【００２２】 やがて上型３が降下すると素材Ｐｏはブランクホルダ７によってその周縁部が 保持され、更に上型３が降下することによってクッションピン６が下方に没入す る。そしてこれに並行して素材Ｐｏはポンチ５の成形面５ａに当接した後、成形 面５ａに沿って概略形状に成形され適度な張り剛性が与えられる。

【００２３】 更に上型３が降下すると、図４に示すように、回転カム１５の後端部下面の凹 部１５ｂが係合ピン８の受け座８ａに当接し、後端部側を回転カム１５の回転方 向である上方に押圧する。このため、回転カム１５は回転カムホルダ１３の円弧 面１４ａに沿って摺動し、落下防止用支軸１６を中心として左回りに回転する。

【００２４】 又、回転カム１５の先端側のエンボスパンチ１８は、上型３自体の降下速度に 加えて、回転カム１５の回転作用によっても上型３の降下速度と同速度で下方に 移動することとなり、結局、上型３の降下速度の倍の速度で下方に向けて移動し 、ダイ１１の成形面１１ａより下方に突出することとなる。

【００２５】 そして、このエンボスパンチ１８が、該ダイ１１の成形面１１ａより先に素材 Ｐｏに当接し、局部的なエンボス加工を行うこととなる。

【００２６】 又、かかる段階で行う局部的なエンボス加工は、エンボスパンチ１８周辺の素 材Ｐｏがダイ１１によって拘束されていないために材料の流れが円滑であるとと もに応力の集中が避けられ、加工部周辺にしわ、亀裂等の不具合が発生しない。

【００２７】 そして、その後更に上型３が降下して、図５に示すように、ダイ１１の成形面 １１ａとポンチ５の成形面５ａによって素材Ｐｏの最終的な成形を行う。

【００２８】

【考案の効果】

以上のように本考案の成形金型装置は、最終的な形状加工を行う前の素材に張 り剛性が得られた時点で局部的にエンボス加工するようにしたため、従来のよう に局部的に応力が集中して周辺にデフォーム等が発生するような不具合がない。 又、かかる装置に回転カムを使用することによって、まず局部的なエンボス加 工を行った後最終的に素材を成形するという成形が簡易に構成できる。 このため、従来に較べて成形品質を高めたしぼり成形が可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】金型装置の正面からの断面図

【図２】同平面図

【図３】同側面図

【図４】成形途中の作用図

【図５】成形の最終段階を示す作用図

【図６】成形品の１例であるドアパネル

【符号の説明】

１ 金型装置 ２ 下型 ３ 上型 ５ ポンチ ５ａ 成形面 ８ 係合ピン １１ ダイ １１ａ 成形面 １３ 回転カムホルダ １４ａ 円弧面 １５ 回転カム １８ エンボスパンチ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 若林 徹也 埼玉県狭山市新狭山１丁目10番地１ ホン ダエンジニアリング株式会社内

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 下型と、この下型に対して上下動自在な
   上型によって薄金属板をしぼり成形する金型装置におい
   て、前記上型は、成形面を有するダイと、このダイの一
   部に設けられた回転カムホルダと、この回転カムホルダ
   の円弧面に沿って先端側を下方に向けて摺動回転する回
   転カムを備えるとともに、前記下型は、前記ダイの成形
   面に対応した成形面を有するポンチと、上型の降下に伴
   って前記回転カムの後端側を上方に押圧可能な係合ピン
   を備え、前記回転カムの先端側に、該回転カムの回転に
   よって前記ダイの成形面より下方に突出するエンボスパ
   ンチを設けたことを特徴とする薄金属板の成形金型装
   置。