JPH0413230Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、自動車の前部位置で弾性部材を介し
て車体に支持されるラジエータの支持構造に関す
る。

（従来技術） 従来より、ラジエータを弾性支持することは知
られている。例えば特開昭57−60991号公報や特
開昭57−84223号公報などでは、車体前部のラジ
エータを弾性的に支持し該ラジエータをダイナミ
ツクダンパとして利用して車両に生じる低周波振
動を合理的に抑制する技術が提案されている。し
かし上記両公知技術ともラジエータのダイナミツ
クダンパとしての利用性に主眼を置き、弾性支持
構造に対する配慮、例えばラジエータの組付性や
組付誤差に対する配慮等には欠けるものである。

このラジエータのダイナミツクダンパとしての
機能は、ラジエータの全重量を支える下部支持構
造によつてもたらされるものであり、上部支持構
造は、下部支持構造のダイナミツクダンパ機能に
影響を与えないことが重要である。より具体的に
は、ラジエータ上部の組付誤差があると、上部側
の弾性部材による弾性性能が、ラジエータの全体
の支持剛性に影響を与え、ダイナミツクダンパ機
能を悪化させてしまう問題があり、この意味で、
ラジエータの上部支持構造としては、組付誤差、
とりわけ上下方向の組付誤差を有効に吸収するこ
とが要求される。

（考案の目的） そこで本考案は、ラジエータの弾性支持構造、
特に上部の支持構造につき組付上のバラツキや位
置の誤差等に起因する前後ないし上下方向の支持
剛性のバラツキを可能な限り低減し要求性能の均
一化を図るとともに組付性を向上することを目的
とする。

（考案の構成） このため、本考案は、ラジエータの上部に突出
するボスが形成され、該ボスを受け入れる筒状部
と、該筒状部の外側につば状部が形成された弾性
体によりラジエータ上部の弾性部材が構成され、
上記つば状部の外側部を支持するブラケツトが上
記車体側に固定されており、上記ラジエータの上
方への変位が上記つば状部の内側部の弾性変形に
よつて吸収されるように構成したことを基本的な
特徴とする。

上記筒状部は、その下端部がボの径より大きい
開口径を有するように形成され、その中間部内周
には、少なくとも部分的にボスの外周に密接した
状態でボスを嵌合支持する嵌合部が形成されてい
る。また、上記つば状部の付け根部には、他の部
分より変形しやすい変形部が設けられている。

好ましくは、上記筒状部の下端にラジエータ側
部材の上面を受けて弾性変形可能なスカート部を
形成し、上下方向の取付位置のバラツキにより大
きな弾性係数変化が生じるのを防止する。

そして上記筒状部、つば状部及びスカート部を
ゴム等の弾性部材で一体に構成するのがより好ま
しい。

（考案の効果） 上記考案の構成によれば、ブラケツトに支持し
た弾性体の筒状部を上方からラジエータのボスに
嵌め合せかつブラケツトを車体の所定箇所に固定
するだけでよいから組付作業が簡易かつワンタツ
チで行える。

この場合、筒状部の下端部はボスの径より大き
いので容易に嵌合でき、筒状部の嵌合部はボスの
外周に点的もしくは線的に接触するのみであるか
ら、つば状部の付け根部に設けた変形部とあいま
つて、横方向や上下方向の組付誤差を確実に吸収
することができ、また、弾性体を支持したブラケ
ツトの固定点と弾性体の支持点間の長さは一定で
かつ弾性変形するつば状部の内側部は車体に直接
固定される構造でないので、弾性体の弾性係数を
比較的小さくかつ一定にでき、全体として組付上
のバラツキや位置の誤差等による前後ないし上下
の剛性のバラツキを低減し、要求性能を均一化で
きる効果がある。

（実施例） 以下、本考案を添付図面に示す実施例に基づい
て具体的に説明する。

第１図、第２図に示すように、１は自動車の前
部位置に付設されるラジエータで、ラジエータ１
の下部は左、右二箇所Ａ，Ｂにおいて、弾性部材
２とこれを支持するブラケツト３を介して車体の
下部クロスメンバー４に支持されている。ラジエ
ータ１の上部も同様、左、右二箇所Ｃ，Ｄにおい
て、以下に詳述する弾性部材５を介しさらにこれ
を支持するブラケツト６を介して、車体の上部ク
ロスメンバー７に支持されている。

第２図によりよく示すように、ラジエータ１の
上面８には、この上面８から上方に突出するボス
９が上記取付箇所Ｃ，Ｄで各々該当する位置に形
成されている。弾性部材５は、上記ラジエータ１
のボス９を受け入れる筒状部１０と、筒状部１０
の上下方向の中間位置で筒状部１０の外側に張り
出すつば状部１１とからなる。好ましくは、筒状
部１０とつば状部１１とはゴム等で一体に成形す
る。ブラケツト６は上記弾性部材５のつば状部１
１の外側部を支持し、端部が上部クロスメンバー
７に２組のボルト、ナツト１３，１４，１５，１
６により固定される。

第３図にこの部分の詳細を示す。同図ａの平面
図で示すように、ブラケツト６は、矩形状の板金
をプレス加工により大略平底の船形に形成したも
ので、上部クロスメンバー７の側部７ａに位置す
る回り止め部６ａと上部クロスメンバー７の上部
７ｂに位置する固定部６ｂとラジエータ１のボス
９の方へ延びる折曲部６ｃと弾性部材５の支持部
６ｄとからなり、固定部６ｂ、折曲部６ｃ及び支
持部６ｄの外縁には、上方に立上つたリブ６ｅが
連続して形成され、このリブ６ｅでブラケツト６
の上下方向の剛性を充分に確保するようにしてい
る。

上記固定部６ｂには、ブラケツト６の長手方向
に若干長い長孔６ｆ，６ｇが穿設されているボル
ト１３，１５が挿通される。長孔６ｆ，６ｇは、
ブラケツト６の長手方向に若干の距離ｌだけ編位
させて、設けており、これによつてラジエータ１
の特に上下方向の変位に対しブラケツト６の強度
を確保するようにしている。

上記弾性部材５の支持部６ｄには、大径の円形
穴６ｈが形成され、円形穴６ｈの周辺部６ｉがつ
ば状部１１の外側環状部１１ａに外周囲から埋込
んだ状態で固定されている。これは弾性部材５の
成形時に加硫接着等の技法により達成できる。な
お、ブラケツト６に弾性部材５を支持する構造は
これに限らず他の簡易な固定手段によつても可能
である。

弾性部材５の筒状部１０は特有の構造に形成し
ている。すなわち、ボス９の嵌入する筒状部１０
は、第３図ｂにも示す如く、上、下端部の内径を
ボス９の外径より適当に大きく形成するととも
に、上下方向中間部内面には、嵌入されるボス９
の周面に向けて突出する***部１７，１７，……
を等角度間隔に形成し、ボス９の周面と点ないし
点状に接触させるようにして、本願考案にいう嵌
合部を形成している。このため、ボス９の外径
は、予め***部１７，１７，……の頂点が形成す
る円の直径に対しわずかに大きく形成するように
している。

この山形の***部１７，１７，……により、た
とえボス９がラジエータ上面に垂直に直立する形
で設けられなくとも（多少斜めにゆがんでいて
も）、また垂直に直立していてラジエータ１自体
が傾斜していたりする場合でも、筒状部１０は常
に***部１７の頂点でボスに当ることになりその
組付時の誤差により内側環状部１１ｂが変形し弾
性係数が変化するのを防止する。上記***部１
７，１７，……は、複数個設けられボスと点接触
しているが、それらを連結させ、すなわち全周に
わたつて***部を形成し、ボス９と線接触するよ
うにしてもよい。なお、車体に対するボス９の位
置は、上部クロスメンバー７の側部７ａから筒状
部１０の中心までもしくはボルト１３，１５の取
付位置から筒状部１０の中心までの距離で決めら
れる。また、ラジエータ１の水平方向の誤差は長
孔６ｆ，６ｇを介して調整することができる。

筒状部１０の下端周囲には、組付時、ボス９を
形成したラジエータ１の上面８を弾性的に押圧す
るスカート部１８を形成することが好ましい。ス
カート部１８は自然の状態では、第４図ｂに示す
ごとく筒状部１０の下端から「八」字状に開いて
いるが、組付けると、開きが大きくなりラジエー
タ１を下方に押圧する。これによつてラジエータ
１の上下方向におけるバラツキが吸収でき、組付
誤差に基づく大きな弾性係数の差がなくなり性能
の低下が防止できる。

第３図ｂに示すように、ラジエータ１の上下方
向の変位は筒状部１０とボス９の圧接とボスまわ
りのラジエータの上面８と筒状部１０の当接によ
り、つば状部１１の内側環状部１１ｂの剪断方向
の弾性変形を生じる。この内側環状部１１ｂ，１
１ｂの弾性変形の係数（上下方向の弾性係数）お
よび弾性部材２，２の上下方向の弾性係数をラジ
エータ１の重量に対して所定の関係式を満足する
ように選ぶと車両に生じる特定周波数の振動を最
適に抑圧できる。弾性係数は、最も問題となる低
周波の振動を吸収するためにはなるべく小さくす
る方が好ましく、このため、上下変位を弾性係数
の小さい内側環状部１１ｂの剪断方向変位で吸収
するとともに、第３図に示すように、内側環状部
１１ｂを部分的に凹状に切り欠いて窪み１９，１
９，……を設け（本例では４箇所の対称位置）、
部分的に薄肉部を形成し、本願考案にいう変形部
を構成する。薄肉部を形成した分だけ弾性係数を
小さくすることができる。

また、第４図ａに示すように、内側環状部１１
ｂの全周にわたり環状の溝２０を形成して本願考
案にいう変形部を構成するようにしてもよい。さ
らには、肉厚にかかわらずこの内側環状部１１ｂ
に貫通孔を穿設して弾性係数を小さくしてもよ
い。要は、内側環状部１１ｂの質量を減らすこと
によつて本願考案にいう変形部を構成するように
すればよい。

一方、弾性部材５は、ラジエータの上下方向に
垂直な方向の変位に対しては、内側環状部１１ｂ
の圧縮と引張りで吸収することになり、剛性が高
くなるよう構成されている。

第４図に示すように、弾性体５を取付けたブラ
ケツト６を単体として構成し、組付時、ラジエー
タのボス９に上側から筒状部１０を嵌入し、ブラ
ケツト６の長孔６ｆ，６ｇを上部クロスメンバー
４のボルト孔に合せてボルト・ナツトで上下方向
に固定するだけでよい。従来ではその構造から多
くは横方向（水平方向）の固定作業が要求されて
いたことに比較すれば、組付の作業性が極めて良
好である。しかも取付の位置決め等の煩雑な作業
がなくワンタツチの取付が可能である。

なお、第４図に示した単体に構成した弾性部材
は、第１図のような左右の上下高さが異なる上部
クロスメンバー７にも容易に適合できる汎用性を
備え、また、ラジエータの構造に何ら依存しない
といつた利点も有る。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図は本考案の実施例の該用を示す
説明図、第３図は実施例の支持構造の詳細を示し
同図ａは平面図、同図ｂはａの−線断面図で
ある。第４図は実施例に係るブラケツト支持の弾
性部材単体を示し同図ａは平面図、同図ｂはａの
−線断面図である。 １……ラジエータ、２……ラジエータ上部の弾
性部材、６……ブラケツト、７……車体の上部ク
ロスメンバー、８……ラジエータ上面、９……ボ
ス、１０……筒状部、１１……つば状部、１１ａ
……つば状部の外側部、１１ｂ……つば状部の内
側部（変形部）、１７……***部（嵌合部）。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 自動車の前部位置でラジエータの上部が弾性部
   材を介して車体に支持されるラジエータの上部支
   持構造において、 上記ラジエータの上部に上方に突出するボスが
   形成され、該ボスは、該ボスを受け入れる筒状部
   と該筒状部の外側に形成されたつば状部とからな
   る弾性部材によつて、上記つば状部外周を支持す
   るブラケツトを介して車体に支持されるようにな
   つており、上記弾性部材の筒状部は、その下端部
   の内径が上記ボスの外径より大きく形成され、中
   間部内周に、上記ボスの周方向に少なくとも部分
   的に接触した状態で上記ボスを嵌合する嵌合部が
   形成された構造を有し、上記弾性部材のつば状部
   の付け根部には他の部分より変形しやすい変形部
   が形成されていることを特徴とする自動車のラジ
   エータ上部支持構造。