JPH0338283B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は塩化ビニル系重合体の製造に用いられ
る、液面での泡立ちを除去し、その破泡による飛
散を防止する手段を備えた重合装置に関するもの
である。 従来、塩化ビニル等の重合では反応開始前の真
空操作時や還流コンデンサーの使用時での泡の発
生が多く、これがために得られる重合体粒子の品
質を損ねるという問題があつた。このため液面で
の泡立ちを除去する方法として、消泡剤を添加す
る方法あるいは機械的手段で破泡する方法などが
提案されている。しかし、この消泡剤を添加する
方法は例えば塩化ビニルの懸濁重合においてその
重合の比較的初期に発生するいまだポリマー粒子
をそれほど伴なつていない懸濁剤水溶液による泡
に対してはかなりの効果が認められるが、重合反
応が進行し還流コンデンサーの除熱時または重合
反応終了後の未反応単量体回収時に発生する泡に
関しては、その泡が多量のポリマー粒子（ポリ塩
化ビニル粒子）を伴なつているため、満足すべき
消泡効果は得られない。 これに対し、機械的手段による消泡の具体的方
法としては、“液体スプレー法”（ポリマー製造プ
ロセス」佐伯康治著、工業調査会出版、1977年３
月20日発行第４版第283ページ）あるいは“回転
式消泡機”〔スイス国Chemap 社製消泡装置、
Process Biochem.June，37（1972）〕が知られて
いるが、いずれも設備が複雑となり、保守管理、
経済性の面で難があるばかりでなく、重合器が大
型になつたり、また大量の泡に対して充分な効果
を発揮することができないという不利がある。 したがつて、これまでは泡発生による悪影響を
できるだけ回避する目的で、重合開始時の仕込量
を少なくして重合器内気相部を大きくとる、還流
コンデンサーでの除熱を抑制する、あるいは重合
後の未反応単量体の回収時に速度をおさえて操作
する等の方法が一般的に採られてきた。 しかして、本発明者らはこうした泡の発生およ
び機械的手段による破泡について観察研究した結
果、還流コンデンサー操作時および重合反応終了
後の未反応単量回収時での液面に発生する泡は、
多量の重合体粒子を含んだ状態で液面上に堆積し
重力による排液作用で見掛上脱水された流動性の
とぼしい強固な泡になることを確認すると共に、
この泡は回転羽根による機械的破泡（衝撃および
せん断）によつてかなり効果的に消泡されるけれ
ども、いま一つ十分でなく、同時にその回転羽根
の先端および上端から重合体粒子を含む泡やその
破片が飛散し、これが重合器蓋部内壁等に付着し
てスケールを形成するほか、原料仕込口とか還流
コンデンサー連結口あるいは未反応単量体回収パ
イプ口等が閉塞される原因となることが判つた。 本発明はこうした問題点を解決したものであつ
て、これは重合器本体、かくはん翼付回転軸、お
よび必要に応じて設けられる還流コンデンサーか
らなる重合装置において、前記かくはん翼付回転
軸の上部液面上に破泡用の回転羽根を設けると共
に、この回転羽根の各々の先端部上面に、それぞ
れの上方と周側方とを被覆する飛散防止用の扇型
のカバーを、カバーの外周側下縁と回転羽根の下
縁との高低差ｃと回転羽根の上下の幅ｂとの割合
ｃ／ｂが1.0以下で、各カバーの内周縁を結ぶ円
の直径ａと各回転羽根の外周縁を結ぶ円の直径ｄ
との割合ａ／ｄが0.25≦ａ／ｄ≦0.8となるよう
に設けたことを特徴とする塩化ビニル用重合装置
を提供するものである。 この本発明によれば液面に発生する多量の泡が
確実に破泡・消泡されると共に、重合器内上部へ
の泡またはその破片の飛散が防止され、この結
果、還流コンデンサー除熱量の増大、未反応単量
体の回収時間の短縮による生産性の向上、収率、
品質（フイツシユアイ等）の向上、さらには重合
器内の気相部壁面におけるスケール付着の防止と
いう工業的にきわめて注目すべき効果が与えられ
る。 本発明にかかわる重合装置を図面に基づいて説
明する。 第１図は本発明の重合装置の全体を示す概略図
であり、同図において１は重合器本体、２は回転
軸で、これには重合液かくはんのためのかくはん
翼３、消泡のための回転羽根４およびカバー５が
設けられている。カバー５は、第２図に示される
ように、回転羽根４の各々の先端部上面に固定さ
れていて、それぞれが外周方向へ向け広がつたの
ち、先端が下方に折れ曲がつている扇型をしてい
る。液面Ｌから発生する泡Ｆは回転軸２によつて
回転する回転羽根４でもつて機械的（せん断力、
衝撃力）に破泡・消泡され、その際回転羽根４の
先端等から飛散される泡やその破片はカバー５に
よつて受け止められ消泡除去される。なお、６は
必要に応じ設けられる還流コンデンサー、７は駆
動モーター、８は原料仕込み兼未反応単量体回収
のためのパイプである。 回転羽根４については、パドル型、タービン
型、フアウドラー型、プロペラ型等その形状およ
び設ける枚数についてとくに制限はないが、これ
らの内ではパドル型が泡に対してせん断力および
衝撃力を効果的に与えて破泡、消泡することがで
きるので最も好ましい。 この回転羽根４の取付けは、重合相液相かくは
んのための回転軸と同軸で回転するようにするの
が設計上好都合であるが、その回転軸とはフリー
の状態で設置しかつ別の動力源で回転されるよう
にしてもよい。この回転羽根の大きさ（寸法）は
重合器の内径の0.2倍以上には0.3倍以上とするこ
とがよく、これよりも小さいと、重合器壁付近の
重合相液面から上昇してくる泡の破泡が困難とな
る。 回転羽根４の設置位置は重合相液面上の適当な
高さ位置に設ければよく、特に限定されるもので
はないが、本発明の目的からは重合相液面に近い
方が望ましい。しかし、この回転羽根が重合相液
面に近すぎてかくはん流動されている重合相と接
触すると、重合による重合体粒子の形成に悪影響
がもたらされるので、このような接触は回避しな
ければならない。この接触による悪影響は特に重
合反応の初期（重合率がおおむね５％に達するま
で）の間において大きい。したがつて、重合開始
後重合率が約５％に達するまでは回転羽根と重合
相液面との間隔がとれるように位置設定されるべ
きである。 つぎに、回転羽根４の上に設置されるカバー５
は、回転羽根４の回転による遠心力でその羽根の
先端および上端から飛散する泡やその破片を受け
止め、その際の衝突作用で破泡・消泡させると共
に、飛散する泡の運動エネルギーを減少ないし消
滅させ、特に上方向への飛散は完全に防止し、重
合相液面に発生する泡を効果的に消泡し泡面を一
定レベルに制御する働きを示すものである。 カバー５は回転羽根による飛散量が先端付近で
多いため、回転羽根の先端部側の上方から周側方
にかけて覆うことが望まれるが、飛散する泡によ
つてカバー自体での付着量も増大するため被覆す
る範囲は最小限にすることが重要である。それに
は図ｂに示すように、カバーの外周側下縁と回転
羽根の下縁との高低差ｃと回転羽根の上下の幅ｂ
との割合：ｃ／ｂを1.0以下、好ましくは0.8以下
とし、各カバーの内周縁を結ぶ円の直径ａと各回
転羽根の外周縁を結ぶ円の直径ｄとの割合：ａ／
ｄが0.25≦ａ／ｄ≦0.8の範囲内となるように設
けなければならない。 なお、回転羽根４とカバー５の本体との間隙は
泡の飛散角度等を考慮して適宜決定される。 本発明の装置は塩化ビニル系単量体を水性媒体
中で重合する場合たとえば懸濁重合法、乳化重合
法等に適用されるが特に懸濁重合法の場合に大き
な効果がもたらされる。 重合は塩化ビニル単独に限られず、塩化ビニル
と他の単量体（コモノマー）との共重合であつて
もよく、このコモノマーとしてはエチレン、プロ
ピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウ
リルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテ
ル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが
例示される。 重合開始剤は従来塩化ビニル単量体の重合に使
用されている油溶性触媒あるいは水溶性触媒でよ
く、油溶性触媒としてはアゾビス−α，α′−ジメ
チルパレロニトリル、２，2′−アゾビス−２，４
−ジメチル−４−メトキシバレロニトリル等のア
ゾ化合物、ジイソプロピルパ−オキシジカ−ボネ
ート、ジ−２−エチルヘキシルパ−オキシジカ−
ボネート、ジ−（β−エトキシエチル）パーオキ
シジカーボネート、ｔ−ブチルパ−オキシネオデ
カネート、アセチルシクロヘキシルスホニルパー
オキサイド、ｔ−ブチルパーオキシピパレート、
ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物等が例示
される。また、水溶性触媒としては過硫酸カリウ
ム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、キユメン
ハイドロパーオキサイド等が例示される。単量体
の水媒体への分散助剤は従来知られているものの
いずれでもよく、これにはスチレン−マレイン酸
コポリマー、部分ケン化ポリビニルアルコール、
メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース、エチルセルロース、ゼラチン、炭酸カ
ルシウム、リン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナト
リウム、ソルビタンモノセテアレート、ドデシル
ベンゼンスルホン酸ナトリウム等が例示される。 その他従来必要に応じて添加される例えば重合
度調節剤、架橋剤、安定剤、充てん剤、酸化防止
剤、緩衝剤、スケール防止剤等を添加することは
差支えない。 以上のように本発明は塩化ビニル系重合体の製
造時に生成する泡の除去対策を確立したもので、
その工業的価値は非常に大きいものである。 以下具体的実施例を挙げて説明するが、本発明
はそれらにより制限されるものではない。 実施例 １ 内容積2.1m³（内径1.05ｍ）のステンレス製重
合器に、伝熱面積7.5m²の還流コンデンサーを付
設し、重合器内には通常の重合相かくはんのため
のパドル型かくはん翼のほか、重合中液相に接し
ない回転軸の上部に、径d400mm、巾b50mmのパド
ル型２枚羽根（消泡のための回転羽根）を取付
け、その羽根上に第２図ａに示すカバーを羽根上
端と15mmのクリアランスを設けて取付けた（実験
No.１を除く）。ただし、その際の第２図ａおよび
ｃに相当する寸法は第１表に示すとおりとした。 この重合器に脱イオン水900Kg、部分ケン化ポ
リビニルアルコール600ｇ、ジ−２−エチルヘキ
シルパ−オキシジカ−ボネート300ｇを仕込み、
重合器内を50mmHgになるまで脱気した後、塩化
ビニル単量体を600Kg仕込み、かくはん軸の回転
数を230rpmでかくはんしながら、57℃に昇温し
重合を行つた。また重合開始後、１時間より還流
コンデンサーで30000Kcal／Ｈの除熱を重合終了
まで行つた。重合器内圧が6.5Kg／cm²Ｇに下つた
時点で重合反応を停止し、器内で発泡が起こらな
い程度の低速度で未反応単量体の回収を行つた。
つぎに、スラリー状の重合内容物を取出した後、
かくはんを停止し、重合器内の壁面における重合
体の付着がどの程度であるかを調べると共に、還
流コンデンサー内の重合体粒子の付着状況を確認
した。 重合体粒子の重合器内壁への付着高さ（mm）
は、消泡のための回転羽根下端面の延長上の器壁
を基準として測定した。 また、この装置における回転羽根下端と重合器
上部にある還流コンデンサーとの接続ノズル及び
未反応単量体の回収ノズルとの間隔は600mmであ
る。 この結果を第１表に示す。 ただし同表中の「製品のフイツシユアイ（個
数）」は、重合体粉末（製品）50ｇ、DOP25ｇ、
三塩基性硫酸鉛0.3ｇ、ステアリン酸鉛1.0ｇ、酸
化チタン0.01ｇおよびカーボンブラツク0.005ｇ
を混合し、30分間放置後これを140℃のロールで
７分間混練し、厚さ0.2mmのシート状として該ロ
ールから取り出して、このシート100cm²当りの透
明粒子（フイツシユアイ）の個数を数えたもので
ある。

【表】 第１表からわかるように、実験No.３では回転羽
根の上方向でのカバーが少く、このため飛散の十
分な防止ができず、また実験No.５では回転羽根の
横方向でのカバーがないために飛散を防止できな
かつた。 実施例 ２ カバーを第２表に示すように取付けた（ただ
し、実験No.６は使用せず）ほかは実施例１と同じ
装置で、還流コンデンサーは使用せずに重合反応
を行い、重合が終りに近づき、重合器内の圧力が
6.5Kg／cm²Ｇに下つた時点で重合反応を停止し、
かくはんを続けながら未反応単量体を3Nm³／分
の速度で重合器上部回収用配管より回収した。 このときの重合体粒子の重合器内壁への付着高
さmmと、単量体回収用配管中への重合体の飛散状
態を第２表に示す。

【表】 実施例 ３ 実施例１においてカバーを第３表に示す通りに
取付けたほかは同様の装置を用いて、同様に重合
を行い、還流コンデンサー内への重合体粒子の付
着状況の確認、製品のフイツシユアイ量の測定、
および重合終了後器内を下記の方法で水洗した後
におけるカバーへの重合体粒子の付着残留状況の
確認を行つた。その後、再度重合を行い同様の測
定を反復した。 この結果を第３表に併記した。 ●器内水洗方法： スラリー状の重合内容物を器内から取出した
後、かくはんを停止し、上部マンホールから水圧
２Kg／cm²Ｇの脱イオン水100で洗浄する。

【表】

【表】 これよりカバーの形状が0.25≦ａ／ｄ≦0.8の
範囲内にないと、重合終了後の器内水洗において
カバーに付着した重合体粒子が充分に除去できな
いため、次の重合時の製品のフイツシユアイに影
響することが判る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係わる重合装置の全体を示す
概略説明図で、第２図ａ，ｂはそれぞれ回転羽根
とこれに設けるカバーの詳細を示す平面図および
正面図である。 １……重合器本体、２……回転軸、３……かく
はん翼、４……回転羽根、５……カバー、６……
還流コンデンサー、７……駆動モーター、８……
パイプ、Ｌ……重合相液面、Ｆ……泡。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 重合器本体、かくはん翼付回転軸、および必
   要に応じて設けられる還流コンデンサーからなる
   重合装置において、前記かくはん翼付回転軸の上
   部液面上に破泡用の回転羽根を設けると共に、こ
   の回転羽根の各々の先端部上面に、それぞれの上
   方と周側方とを被覆する飛散防止用の扇型のカバ
   ーを、カバーの外周側下縁と回転羽根の下縁との
   高低差ｃと回転羽根の上下の幅ｂとの割合ｃ／ｂ
   が1.0以下で、各カバーの内周縁を結ぶ円の直径
   ａと各回転羽根の外周縁を結ぶ円の直径ｄとの割
   合ａ／ｄが0.25≦ａ／ｄ≦0.8となるように設け
   たことを特徴とする塩化ビニル用重合装置。