JPH0155565B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の属する技術分野〕 本発明は複数の矩形板状コイルよりなる高圧巻
線および低圧巻線を軸方向に交互配置した変圧器
巻線の構造に関する。

〔従来技術とその問題点〕

高圧巻線と低圧巻線とを軸方向に交互配置した
外鉄形変圧器においては、巻線相互間に作用する
電磁機械力を極力小さくすることが求められてい
る。

第１図は高圧巻線と複数の低圧巻線とを交互配
置した変圧器の断面図で、１ａおよび１ｂは外鉄
形鉄心１の矩形断面を有する主脚部および継鉄
部、１ｃは主脚部１ａに被着された絶縁筒であ
る。２は高圧巻線で例えば３個の矩形板状のコイ
ルを相互に直列接続し、その始端と終端とは口出
しリード５ａにより１対の高圧端子４ａに接続さ
れている。また３ａ，３ｂ，３ｃ，３ｄは複数個
の低圧巻線で、それぞれ矩形板状のコイルとして
形成され、それぞれの巻線の始端と終端とは１対
の口出しリード５ｂにより低圧端子４ｂに接続さ
れている。そして図の例では高圧巻線２をはさん
で低圧巻線３ａ，３ｂと３ｃ，３ｄとが軸方向の
両側に配置されて、いわゆる交互配置巻線が形成
されている。また各巻線間あるいは各コイル間に
はダクトスペーサを有するバリヤ６が介装されて
各コイル間に冷却ダクトが形成されるとともに、
コイル間の絶縁が保たれている。また積み鉄心１
の脚部に巻線２および３を挿着した変圧器中身は
分割されたタンク７ａ，７ｂに間隔片８を介して
圧入され、巻線の軸方向に所定の締め着け荷重が
加わるよう組立てられる。

ところで前述のように交互配置された巻線にお
いて、短絡電流によつて巻線相互間に作用する電
磁機械力は主として矩形板状のコイルの積層方向
（以下同軸配置巻線にならつて軸方向とよぶ）に
働き、コイルの巻き重ね幅（図のＷ）方向（以下
同軸配置巻線にならつて径方向とよぶ）には働か
ない。したがつてコイルを円形にする必要がなく
高、低圧両巻線とも矩形板状のコイルに形成され
ている。ただし上述のように電磁機械力が軸方向
にのみ作用するためには、各矩形板状コイルの幅
Ｗ方向のアンペアターン分布が対称になる磁気中
心の幾何学的位置Moが各コイルとも軸方向の一
致した位置にあることが条件になる。すなわち絶
縁被覆導体を矩形板状に巻回したコイルでは、コ
イルの幅Ｗ方向の中央位置と磁気中心位置とは一
致するので、各コイルの幅方向の中央位置がコイ
ルの軸方向に互いに一致した位置になるよう巻線
を配置すれば上述の条件を満たすことができる。
ところが、矩形板状のコイル相互を接続するため
の渡り線や口出しリード５ａ，５ｂ等のある部分
では主に高・低圧両巻線の導体断面積が異なるこ
とに起因して上述の条件を満足しないことが多
く、この部分で径方向の電磁機械力が発生すると
いう問題がある。

第２図および第３図は従来の矩形板状コイルの
概念図である。第２図において３は１条の絶縁被
覆導体を矩形状の巻き枠に例えば３ターン巻回し
た矩形板状のコイルで、コイルの内側に渡り部９
がコイルの外側に口出しリード５が設けられてい
る。渡り部９においては絶縁被覆導体がコイルの
軸方向に曲げられて軸方向に引き出されるため図
のハツチを施した部分に孔ができる。そこでこの
部分に絶縁物製の詰め物１０を介装してコイル３
の内周面が第１図のように絶縁物１ｃを被着した
鉄心の脚部１ａに密着するよう形成される。第２
図のように形成された矩形板状コイル３の磁気中
心位置Moは、コイルの周方向のＡ，Ｂ，Ｃ，Ｄ
等詰め物１０が介装されていない部分においては
コイル幅の中央位置と一致する位置、すなわちコ
イル３の内周面から等しい距離にあるが、詰め物
１０が介装されている部分においては詰め物の厚
みt₁だけ外側に移つた位置E₁が磁気中心Moとな
り、他のＡ，Ｂ，Ｃ，Ｄ各位置のの磁気中心位置
と異なつた位置になる。

また第３図は３条の並列絶縁被覆導体をコイル
３の軸方向に互いに重ね合わせて２ターン巻回し
た矩形板状コイルで、詰め物１０の厚みt₂が導体
３本分の厚みになるために、詰め物１０を介装さ
れたＦ位置における磁気中心Moの位置の偏位が
非常に大きくなつている。

一般に高圧巻線は導体断面積が小さく、詰め物
の厚みｔも小さいので、磁気中心Moの位置のず
れが小さい。ところが低圧巻線は第３図のように
並列導体を径方向に重ねて巻回する場合が多く、
そのために磁気中心Moの位置のずれが大きく、
かつ四辺形のコイルの渡り部がある一方側で磁気
中心Moの位置が複雑に変化する。したがつて
高・低両巻線の磁気中心のずれに対応して矩形板
状コイル３に径方向の電磁機械力が発生する。ま
た低圧巻線が一対の矩形板状コイルからなる双成
巻線であつた場合には、一対のコイル間にも径方
向の電磁機械力が作用する。ところが矩形板状の
コイルは円板状コイルに比べて径方向の機械力に
対して変形しやすい性質があるため、従来構造に
おいては、矩形板状コイルの径方向の変形を抑え
るための対策が大がかりになる欠点があつた。

〔発明の目的〕

本発明は前述の状況に鑑みてなされたもので、
径方向に働く電磁機械力の発生量が少ない交互配
置の矩形板状巻線を備えた小形軽量な変圧器を提
供することを目的とする。

〔発明の要点〕

本発明によれば、上述の目的は、矩形板状の双
成コイルよりなる低圧巻線の口出しリード側に設
けられた渡り部を、並列導体がある場合は巻回方
向に位置をずらしていずれの渡り部も前記矩形状
コイルの一辺の部分の巻線内周面に接する位置に
配し、渡り部に介装される詰め物を径方向の最大
厚みが絶縁被覆導体の厚みと等しい寸法のくさび
状に形成し、口出しリード側のコイル幅が絶縁被
覆導体の厚みと並列導体数とコイルの巻回数との
積にほぼ等しくなるようにして磁気中心Moの径
方向の位置ずれを低減するよう構成することによ
り達成された。

〔発明の実施例〕

以下本発明の実施例を添付図面を参照しつつ説
明する。

第４図は本発明本発明を説明するための矩形板
状コイルの平面図である。図において矩形板状コ
イル２１は、１条の絶縁被覆導体２２を渡り部２
３を始端、口出しリード２４を終端として３回径
方向に重なるよう巻回したもので、渡り部２３は
コイルの内周面に接して配されコイル２１の軸方
向に曲げられて後述するように対をなす他方の矩
形板状コイルに導かれる。また渡り部に形成され
る孔を埋めるために介装される詰め物２５は図の
ハツチ部のようにくさび状に形成され、渡り部２
３を始端としてほぼ１ターン巻回された導体２２
がａ部において詰め物２５のくさび状の傾斜に沿
つてて外側にひろがり、渡り部２３の外側に重な
るよう形成されている。このように構成すること
により、従来構造に比べて磁気中心Moの径方向
のずれの大きさとずれを生ずる周方向の範囲とが
ともに縮小され、その結果矩形板状コイルの口出
しリード側において径方向に作用する電磁機械力
を低減できる。

第５図は本発明の実施例を示す矩形板状コイル
の平面図で、第４図と異なる点は、３条の並列導
体３２ａ，３２ｂ，３２ｃを径方向に重ねて２回
巻回して矩形板状コイル３１を形成した点にあ
る。図の例では、並列導体３２ａ，３２ｂ，３２
ｃのそれぞれの渡り部３３ａ，３３ｂ，３３ｃ
が、コイルの巻回方向に所定の間隔でずれて配設
され、かつ渡り部がいずれも矩形板状コイルの一
辺の部分の内周面に接するように配設されてい
る。また詰め物３５は３５ａ，３５ｂ，３５ｃに
３分割されたくさび状に形成され、渡り部３３
ａ，３３ｂ，３３ｃの間に介装されている。矩形
板状コイル３１をこのように形成したことによ
り、口出しリード３４側におけるコイルの幅は、
絶縁被覆導体の厚みｔと並列導体数ｎと巻回数Ｎ
との積にほぼ等しい寸法になり、磁気中心Moの
径方向の偏位を最小限に抑えることができ、その
結果径方向に作用する電磁機械力を従来構造に比
べて大幅に低減できた。

また絶縁被覆導体３２の径方向の厚みｔを高圧
巻線の被覆導体の厚みとほぼ等しくなるよう並列
導体数を調整すれば、両巻線間に作用する径方向
の電磁機械力を極小にすることも可能である。

第６図は一対の矩形板状コイルからなる双成巻
線の渡り部の状態を示すもので、一対の矩形板状
コイル３１および４１は第５図と同様に３条の並
列導体３２ａ，３２ｂ，３２ｃを径方向に重ねて
巻回し、渡り部３３ａ，３３ｂ，３３ｃによつて
直列接続され、各コイルの外周側から一対の口出
しリードが引き出されて双成巻線が形成される。
第６図において３条の並列導体３２ａ，３２ｂ，
３２ｃは、コイル３１においては導体３２ｃが最
も内側にあり、その外側に３２ｂ，３２ａが重ね
巻きされているが、渡り部３３ａ，３３ｂ，３３
ｃにおいて径方向に転位され、コイル４１におい
ては導体３２ａがコイルの最も内側に導体３２ｃ
が最も外側にあるよう形成される。本発明では渡
り部の位置をコイルの周方向に互いにずらして配
置したので、渡り部における並列導体の転位が容
易になる利点がある。

また渡り部に介装される詰め物は図にハツチを
施した部分に介装され、例えば詰め物３５ｂが渡
り部３３ｂと係合する部分が斜めに切り欠かれ、
この部分で厚く他方で薄いくさび状に形成され、
絶縁被覆導体の表面に接着剤等によつて接着され
る。

〔発明の効果〕

本発明によれば、前述のように矩形板状コイル
が複数の並列導体で形成される双成巻線の各導体
の渡り部を、矩形板状コイルの一辺の部分に周方
向にずらして各渡り部に介装される詰め物を最大
厚みが絶縁被覆導体の厚みとほぼ等しいくさび状
に形成し配設するとともに、詰め物を導体数に対
応して複数個に分割して各渡り部に介装すること
によりコイル幅が増大しないように形成した。そ
の結果矩形板状コイルの幅方向の磁気中心位置の
ずれが大幅幅に低減され、コイルの径方向に作用
する電磁機械力を最小限に抑えることができ、か
つ双成巻線における導体の転位が容易になつた。

また径方向に作用する電磁機械力が低減された
ことにより、巻線の径方向の変形を防ぐための機
械的補強が不要または簡単化され、矩形板状コイ
ルの特徴を生かした小形軽量な交互配置巻線を有
する変圧器を提供することに貢献できた。

【図面の簡単な説明】

第１図は交互配置巻線を有する変圧器の断面
図、第２図および第３図は従来の矩形板状コイル
の平面図、第４図は本発明の実施例を示す矩形板
状コイルの平面図、第５図は本発明の実施例の変
形例を示す平面図、第６図は双成巻線におけり渡
り部の構造図である。 図において、１……外鉄形鉄心、１ａ……主脚
部、１ｃ……絶縁筒、２……高圧巻線、３……低
圧巻線、３，２１，３１……矩形板状コイル、２
２，３２……絶縁被覆導体、３２ａ，３２ｂ，３
２ｃ……並列導体、２３，３３ａ，３３ｂ，３３
ｃ……渡り部、２４，３４……口出しリード、２
５，３５……詰め物、Mo……磁気中心位置、Ｗ
……コイルの幅である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 絶縁被覆された導体を矩形板状に複数回巻回
   した矩形コイルがそれぞれ複数層直列接続されて
   なる低圧巻線および高圧巻線が外鉄形積み鉄心の
   絶縁物を被着した脚部に交互に嵌着され、前記低
   圧巻線が巻線の内側に渡り部を有する双成巻線で
   あり、前記渡り部と１対の口出し部とが前記積み
   鉄心の積層方向のいずれか一方側に設けられたも
   のにおいて、低圧巻線が、矩形コイルの巻き重ね
   方向に複数層に分割された並列導体よりなり、各
   並列導体の渡り部が矩形コイルの内周側の前記矩
   形コイルの一辺の部分に周方向に所定の間隔をお
   いて配され、前記くさび状の詰め物が並列導体数
   に対応して分割され、各並列導体の渡り部および
   詰め物が前記絶縁物の周方向の異なる位置に接す
   るよう形成されたことを特徴とする変圧器巻線。