JP3593484B2 - 静止誘導電器の円板巻線 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は変圧器やリアクトル等の静止誘導電器の円板巻線に係わり、特に、対雷遮蔽用のシールド線を巻き込んだ静止誘導電器の円板巻線に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内鉄型静止誘導電器の巻線として、機械的強度が大きい円板巻線が広く用いられている。円板巻線は、ターン数が少なく対向面積が比較的小さい円板コイルを積み重ねて構成されていることから、コイル間の直列静電容量が小さく雷サージ等の衝撃電圧に対する特性が悪いという欠点がある。これに対して、離れたコイルに負荷電流を流さないシールド導体によって、静電的に結合してコイル間に直列静電容量を付加するCCシールド巻線や、2個のコイルを一組として素線を互いに入り組ませて巻くことにより、等価的にコイル間直列静電容量を増加させるインターリーブ巻線が発明され、変圧器の高圧巻線等に用いられている。
【0003】
図8は、CCシールドを使用した円板巻線の結線図である。同図において、3は負荷電流を流す電線、6aは負荷電流を流さないシールド線であり、電線3を6ターン巻き回し、その外周側にシールド線6aを3ターン巻き込んだ円板コイル9a及び9b,9c…を、軸方向に複数個積み重ねた構造の巻線を模式的に示している。ここで、電線3は無接続で巻き上げられている。また、偶数層目の円板コイル9bに巻き込まれたシールド線6bは線路端に接続されている。奇数層目のシールド線6aはそれから数えて4層番目のシールド線6dにシールド用渡り線12によって接続されており、電気的にはフロート電位になっている。
【0004】
この構成では、コイル間の直列静電容量が増し、雷サージ等の衝撃電圧に対する電位分布特性が改善される。しかしながら、このような結線では、線路端から衝撃電圧が侵入した場合に、線路端から偶数番目の円板コイル9bと円板コイル9cの間に大きな電圧が発生して絶縁的に厳しくなる。
【0005】
図8において、線路端から衝撃電圧を印加した時の各ノードn0、n1、n2、…の間の発生電圧を簡単にするためにすべてVとすると、その幾何学的配置からシールド用渡り線12a、12b、12c、…の電位はノードn1、n2、n3、…の電位にほぼ等しいので、円板コイル9a、9b、9cに巻き込まれたシールド線6aと6bとの間及び6bと6cの間には電圧V及び2Vが交互に発生することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そのため、線路端から偶数番目の円板コイル9bと9cとのコイル間は図9,図10に示すようにコイル間スペーサ10bをコイル間スペーサ10aより厚くして絶縁距離を大きくとるのが一般的である。またシールド線6は図10に示すようにシールド導体7を絶縁被覆8により被覆して構成されている。絶縁被覆8の絶縁距離も衝撃電圧を考慮して必然的に厚くなる。この厚くしたシールド線6bを基準に全てのシールド線6aを配置しているから、円板巻線の周方向の巻線占有率は上がらない。またコイル間スペーサ10bを厚くするので、円板巻線の積層方向の巻線占有率も上がらない。
【0007】
ところで、変圧器等の静止誘導電器は高電圧・大容量化が進む一方、輸送重量・寸法や変電所立地条件の制限があることから、高信頼性を維持しつつ小型軽量化を図ることは決して絶えることのない要求である。円板巻線のような油と油浸紙の複合絶縁構成では、巻線占積率を上げるためには絶縁上の弱点である油くさびの電界を緩和する必要がある。
【0008】
図9はCCシールドを使用した円板巻線の部分斜視図である。同図において、1は巻筒となる絶縁筒、2は絶縁筒1の軸にほぼ平行で円周上に複数配置される直線スペーサ、3は負荷電流が流れる電線、6a〜dは負荷電流を流さないシールド線である。電線3は連続的に巻回されており、円板コイル9a〜dの外周側のターン間にはシールド線6a〜dが3ターン巻き込まれている。円板コイル間には直線スペーサ2と同様に放射状に複数のコイル間スペーサ10が挿入されており、コイル間の絶縁を保持するとともに冷却媒体が流れる流路を確保している。
【0009】
図10,図11は、図9の部分拡大断面のA矢視図である。同図において、3は導体4にクラフト紙テープを巻回して絶縁被覆5を施した電線、6は平角導体7にクラフト紙テープを巻回して絶縁被覆8を施したシールド線、10bはプレスボードからなるコイル間スペーサである。ここで、シールド線6とコイル間スペーサ10bとの間の三角形形状の空間部15aの隅角部がコイル間くさび15である。電線3とシールド線6との間の三角形形状の空間部16aの隅角部がターン間くさび16である。尚、シールド線6と対応しない三角形形状の空間部の隅角部は電界が集中しないので、問題を生じない。
【0010】
このような構成の巻線3に雷サージ等の過電圧が印加されると、油に比べて絶縁被覆や水平スペーサのような油浸紙の誘電率が高いために、コイル間くさび15やターン間くさび16に電界が集中して、絶縁破壊の弱点になることは周知の通りである。従って、絶縁信頼性を損なわずに巻線の占積率を上げて巻線を小型軽量化するためには、コイル間やターン間の油くさびの電界を緩和する必要がある。
【0011】
これに対して、電線の被覆やコイル間スペーサを比誘電率の小さい材料で構成する案が、それぞれ特開平5−291060号公報及び特開平5−190354号公報に開示されている。また、コイル間スペーサを軟らかい材料で構成して油くさびを充填する案が特開平5−190355号公報に記載されている。
【0012】
上記従来技術によれば、油入静止誘導電器巻線内に形成される油くさびの電界を緩和することが原理的には可能で、絶縁信頼性を維持しつつ巻線占積率を向上させることが可能であったが、これをCCシールドを使用した円板巻線に適用しようとすると以下に述べるような問題が生じる。
【0013】
まず、図10,図11の電線3やシールド線6の絶縁被覆5,8を比誘電率が小さい材料で構成すると、ターン間くさび16の電界は緩和されるが、コイル間の直列静電容量が減少して発生電圧が高くなるので、その効果は相殺される。また、比誘電率の小さい材料は一般に密度が小さく、一旦部分放電が発生すると比較的容易に貫通破壊するという問題がある。
【0014】
次に、コイル間スペーサ10を比誘電率の小さい材料で構成すると、コイル間くさび15の電界はある程度緩和されるが、ターン間くさび16の電界は変わらない。図12は、図10に示したような複合絶縁構成において電界解析を実施し、コイル間スペーサの比誘電率と厚さ、及びシールド線の被覆厚さを変えた場合のコイル間くさび15とターン間くさび16の電界を示したものである。同図より、コイル間スペーサ10の低誘電率化はターン間くさび16の電界緩和には効果がないことが分かる。
【0015】
また、図13に示したように、占積率を犠牲にしてコイル間スペーサの厚さを増せばコイル間くさび15の電界はある程度緩和できるが、ターン間くさび16の電界はほとんど変わらない。
【0016】
一方、図14に示したように、シールド線の絶縁被覆の厚さを増せば、コイル間くさび15だけでなくターン間くさび16の電界も緩和されるが、シールド線と電線の間の静電容量が減少するので、発生電圧自体が高くなり、その効果は相殺される。
【0017】
更に、コイル間スペーサを軟らかい材料で構成すれば、コイル間くさび15を充填して電界を緩和することが可能であったとしても、同程度に高電界となるターン間くさび16の電界は緩和されない。また、実際の静止誘導電器の巻線には運転中の振動だけでなく、外部短絡時の機械力等が作用して少なからず変位するので、油くさびを完全に無くすことは現実的には極めて困難である。
【0018】
このように、従来技術ではCCシールドを使用した円板巻線の巻線占積率を向上したり、或いは油くさび及びターン間くさび16の電界を緩和したりするのはむずかしかった。
【0019】
本発明の目的は、円板巻線の巻線占積率が向上し、かつ油くさび及びターン間くさびの電界を緩和できる静止誘導電器の円板巻線を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との間の距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれ対応するシールド導体の端部とに空間部を形成し、この空間部に絶縁物を設け、このように絶縁強化を必要する個所のみに絶縁物を配置し、この絶縁物によりコイル間スペーサ円板の厚みとシールド導体を被覆した絶縁被覆を薄く、円板巻線の占積率を上げると共に、コイル間の直列静電容量を増加し、かつコイル間くさび及びターン間くさびの電界を緩和したことを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図示に基づいて詳細に説明する。図1に本発明の静止誘導電器の円板巻線の縦断面図を示す。
【0022】
同図において、1は巻筒となる絶縁筒、2は絶縁筒1の軸方向にほぼ平行で円周上に複数配置される直線スペーサ、3は負荷電流を流す導体4に絶縁被覆5を施した電線、電線3はコイル状に巻回した6本の電線3を周方向に配置した。6は負荷電流を流さないシールド導体7に絶縁被覆8を施したシールド線である。電線3を6ターン巻き回し、その外周側にシールド線6を3ターン巻き込んだ円板コイル9aを軸方向に積み重ねて円板巻線を構成している。
【0023】
この円板コイル9aと円板コイル9bとの間にコイル間スペーサ10aを配置している。また他の円板コイル9c,9d,9e間にもいずれかのコイル間スペーサ10a,10bを配置している。コイル間スペーサ10a,10bは直線スペーサ1と同様に放射状に配置されている。コイル間スペーサ10a,10bはコイル間の絶縁を保持すると共に、冷却媒体が流れる流路を確保している。
【0024】
奇数層目のコイル間スペーサ10aの両側に配置された円板コイル9a,9bの内周側の電線3間を内周側渡り線9yで接続している。内周側渡り線9yと接続している円板コイル9b側の外周側の電線3とこれに隣接する偶数層目のコイル間スペーサ10bの外周側の電線3とを外周側渡り線9zで接続している。内周側渡り線9y及び外周側渡り線9zにより各円板コイル9a〜9e間を電気的に直列に接続している。円板コイル9aの外周側の電線3には線路端側のリード線11が接続されている。
【0025】
各円板コイル9a〜9eの電線3と電線3との間にシールド線6a〜6dを複数ターン巻回している。シールド線6はシールド導体7を絶縁被覆8で被覆している。円板コイル9bに巻き込まれたシールド線6bは線路端側のリード線11に接続されている。奇数番目のシールド線6aは電線3には接続されず、互いに4個離れた円板コイル9dの電線3間のシールド線6dにシールド用渡り線12によって接続されており、電気的にはフロート電位になっている。また奇数番目のシールド線6cも4個離れた偶数層目のシールド線にシールド用渡り線12によって接続されている。通常のCCシールド円板巻線は以上のように構成されている。
【0026】
本実施例では、図2(この図は説明の都合上接続線は省略している。)に示すように偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18とこれに対応するシールド導体20の端部との距離L1を、奇数層目のコイル間スペーサ10aの一方面19とこれに対応するシールド導体8の端部との間の距離L2より長くし、偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18と対応するシールド導体20の端部と絶縁被覆21とに空間部を形成し、この空間部に絶縁物22を設ける。
【0027】
シールド導体20に絶縁物22を設けるには、図4に示すように絶縁物22に開口溝22aを設け、開口溝22aにシールド導体20を挿入し、絶縁物22及びシールド導体20を絶縁被覆21とすれば、シールド導体20と絶縁物22との一体化絶縁に挿入する作業が容易にできる。絶縁物22及び開口溝22aは成形絶縁物として一体に形成するのが好ましい。尚、油入静止誘導電器の場合には、成形絶縁物としては、耐油性が高く比誘電率が小さいポリメチルペンテンやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂が好適である。
【0028】
この本実施例では、絶縁物22を設けたので、次の効果を生じる。即ち、電位の一番厳しい偶数番目のコイル間スペーサ10bに対向する従来のシールド線6は、シールド導体7を絶縁被覆8している。この絶縁被覆8の厚みを例えば10とする。これに対して、本実施例では絶縁物22の厚みを例えば4とし、絶縁被覆21の厚みを6とすれば、円板コイル9bに巻き込まれたシールド線6bの絶縁被覆21の厚みを薄くできるから、薄くした分だけ円板巻線の周方向の寸法を縮小できるので、円板巻線の周方向の巻線占積率を向上することができる。また絶縁被覆21の厚みを薄くすることは、電線3とシールド線6bの間の静電容量が大きくなり、コイル間の直列静電容量が増加する。その結果、シールド線6bの巻き込み長さを短くできるので、円板巻線の巻線占積率は向上する。
【0029】
また本実施例では絶縁被覆21の厚みを例えば8とし、絶縁物22の厚みを2とすれば、2だけ偶数番目のコイル間スペーサ10bの厚みを冷却上の制限が許す限り薄くでき、円板巻線の積層方向を縮小できるので、円板巻線の積層方向の巻線占積率を向上することができると共に、電線3とシールド線6bの間の静電容量が大きくなり、コイル間の直列静電容量が増加する。この場合、コイル間スペーサ10bの厚みを更に薄くするときには、絶縁物22の厚みを上述より増せば良い。
【0030】
このように本発明では、線路端から偶数番目のコイル間スペーサ10bを冷却上の制限が許す限り薄くしているので、円板巻線9の積層方向の巻線占積率を向上させることができる。また、シールド線6bの絶縁被覆21を薄くすることができるので、シールド線6bと電線3の間の静電容量が大きくなり、コイル間直列静電容量が増加する。その結果、シールド線6bの巻き込み長さを短くできるので、円板巻線9の周方向の巻線占積率を向上することができる。従って、偶数番目のコイル間スペーサ10bに対応するシールド線6bのシールド導体端面に絶縁物22を設けることにより、円板巻線の積層方向又は周方向の巻線占積率を向上することができると共に、コイル間直列静電容量が増加する。従って、巻線占積率を向上することにより、絶縁信頼性に優れた小型軽量された静止誘導電器の円板巻線を製作することが出来る。
【0031】
更に図2,図3に示すように本実施例では三角形形状の空間部15aの隅角部のコイル間油くさび15とシールド導体20の端部との距離L3は、絶縁物22を設けて距離L1だけシールド導体20の端部をコイル間油くさび15より離し、絶縁距離を増したので、コイル間油くさび15の電界を大幅に緩和できる。また、三角形形状の空間部16aの隅角部のターン間油くさび16とシールド導体20の端部との距離L4は、絶縁物22を設けて距離L1だけシールド導体20の端部をターン間油くさび16より離し、絶縁距離を増したので、ターン間油くさび16の電界を大幅に緩和できる。具体的には、成形絶縁物例えば絶縁物22の比誘電率が絶縁被覆8(油浸紙)と同じで、厚さが1mmの場合でも、油くさびの電界は約40%低減される。
【0032】
次に本発明の他の実施例を図5,図6を用いて説明する。
【0033】
図5において、図1と同じ構成要素には同一の番号を付し説明は省略する。
【0034】
本実施例では、シールド導体6aの構造は従来と同じであるが、その幅hが電線3の幅Hより小さいが、シールド導体21とシールド導体6aとの関係は、上述と同様に距離L1>距離L2の関係にある。そして、線路端から偶数番目のコイル間スペーサ10bとシールド線6bとの間にシールド線6bの形状に合わせて成形された図6に示した絶縁物24が配置されている。絶縁物24の一方面にシールド線6bの形状に合わせた接触面24bを形成すると共に、接触面24bの両側に突起部24aを形成する。この突起部24aはシールド導体20の両端と電線3の間に形成された三角形形状の空間部の隅角部のターン間油くさび16に挿入した。この結果、絶縁物24の両側と電線3との間の三角形形状の空間部16´aの隅角部に新たなターン間油くさび16´を形成する。
【0035】
この本実施例では、シールド導体20の端部と新たなターン間油くさび16´との間の距離が、シールド導体20の幅hを幅Hに比べてコイル間スペーサ10bより離したこと、及び突起部24aを設けて新たターン間油くさび16´を形成したことにより、絶縁距離が増したので、ターン間油くさび16´の電界を大幅に緩和できる。
【0036】
この絶縁物24の材質も、上述の実施例と同じく、油入静止誘導電器ではポリメチルペンテンやPTFEが好適である。また、この充填物を多孔質のPTFEで成形すれば、比誘電率が油に近いので、油くさびの電界緩和には一層効果的である。
【0037】
このように、本実施例によれば、絶縁物24を配置することにより、絶縁物24とこの両側の電線3との間に形成されているターン間油くさび16に突起部24aを充填することができるので、絶縁耐力は増加する。また線路端から偶数番目のコイル間スペーサ10bを薄くしたり、或いはシールド線6bの絶縁被覆21を薄くすることができるので、本実施例も上述の実施例と同じく、コイル間の直列静電容量が大きく、絶縁信頼性に優れた小型軽量の静止誘導電器巻線を提供することができる。
【0038】
図7の実施例において、図1及び図4と同じ構成要素には同一の番号を付し説明は省略する。本実施例は、充填物の形状のみ上述の実施例と異なり、絶縁物23の断面が矩形である。図2のように偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18とこれに対応するシールド導体20の端部との距離L1を、奇数層目のコイル間スペーサ10aの一方面19とこれに対応するシールド導体8の端部との距離L2より長くし、偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18とこれ対応するシールド線6bとに空間部を形成し、この空間部に絶縁物23を設けているので、上述と同様に絶縁物23の厚みを調整して、偶数番目のコイル間スペーサ10Bの厚みを絶縁耐力を損なうことなく薄くしたり、或いは絶縁皮膜を薄くしたり調整して、円板巻線の巻線占積率を向上したり、コイル間直列静電容量が増加したり、或いは上述と同様にコイル間油くさび15の電界を大幅に緩和したりすることが出来る。
【0039】
尚、以上の実施例は油入静止誘導電器の例を説明したが、本発明はこれにとらわれるものではなく、ガス絶縁静止誘導電器に対しても適用できることは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との間の距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれ対応するシールド導体の端部とに空間部を形成し、この空間部に絶縁物を設け、絶縁物の厚み分だけ、絶縁被覆の厚みを薄くしたり、或いは偶数番目のコイル間スペーサの厚みを薄く出来るから、円板巻線の巻線占積率を向上することができること、絶縁被覆の厚みを薄くしてコイル間の直列静電容量を大きくできること、コイル間油くさび及びターン間油くさびの電界を緩和することができること等により、絶縁信頼性に優れた小型軽量された静止誘導電器巻線の円板巻線を製作することが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静止誘導電器の円板巻線の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1の円板巻線の説明する部分拡大縦断面図である。
【図3】図2のコイル間油くさび及びターン間油くさびを説明する部分拡大縦断面図である。
【図4】図1乃至図3に使用した本発明のシールド線の概略斜視図である。
【図5】本発明の静止誘導電器の円板巻線の他の実施例を示す縦断面図である。
【図6】図4のシールド線に使用する絶縁物の概略斜視図である。
【図7】本発明の他の実施例である静止誘導電器の円板巻線の縦断面図である。
【図8】従来のCCシールド巻線の接線図である。
【図9】従来のCCシールド巻線の構成の一部を示す部分斜視図である。
【図10】図9のCCシールド巻線の部分拡大断面図である。
【図11】図10のコイル間油くさび及びターン間油くさびを説明する部分拡大縦断面図である。
【図12】図9のCCシールド巻線を使用した円板巻線におけるコイル間スペーサの比誘電率と電界との関係を示す特性図である。
【図13】図9のCCシールド巻線を使用した円板巻線におけるコイル間スペーサの厚さと電界との関係を示す特性図である。
【図14】図9のCCシールド巻線を使用した円板巻線におけるシールド線の絶縁被覆の厚さと電界との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
3…電線、4…導体、5…絶縁被覆、6,6a,6b,6c,6d…シールド線、7…平角電線、8…絶縁被覆、9,9a,9b,9c,9d,9e…円板コイル、10…コイル間スペーサ、12…シールド用渡り線、15…コイル間油くさび、16…ターン間油くさび、20…シールド導体、21…絶縁被覆、22,23,24…絶縁物。
【発明の属する技術分野】
本発明は変圧器やリアクトル等の静止誘導電器の円板巻線に係わり、特に、対雷遮蔽用のシールド線を巻き込んだ静止誘導電器の円板巻線に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内鉄型静止誘導電器の巻線として、機械的強度が大きい円板巻線が広く用いられている。円板巻線は、ターン数が少なく対向面積が比較的小さい円板コイルを積み重ねて構成されていることから、コイル間の直列静電容量が小さく雷サージ等の衝撃電圧に対する特性が悪いという欠点がある。これに対して、離れたコイルに負荷電流を流さないシールド導体によって、静電的に結合してコイル間に直列静電容量を付加するCCシールド巻線や、2個のコイルを一組として素線を互いに入り組ませて巻くことにより、等価的にコイル間直列静電容量を増加させるインターリーブ巻線が発明され、変圧器の高圧巻線等に用いられている。
【0003】
図8は、CCシールドを使用した円板巻線の結線図である。同図において、3は負荷電流を流す電線、6aは負荷電流を流さないシールド線であり、電線3を6ターン巻き回し、その外周側にシールド線6aを3ターン巻き込んだ円板コイル9a及び9b,9c…を、軸方向に複数個積み重ねた構造の巻線を模式的に示している。ここで、電線3は無接続で巻き上げられている。また、偶数層目の円板コイル9bに巻き込まれたシールド線6bは線路端に接続されている。奇数層目のシールド線6aはそれから数えて4層番目のシールド線6dにシールド用渡り線12によって接続されており、電気的にはフロート電位になっている。
【0004】
この構成では、コイル間の直列静電容量が増し、雷サージ等の衝撃電圧に対する電位分布特性が改善される。しかしながら、このような結線では、線路端から衝撃電圧が侵入した場合に、線路端から偶数番目の円板コイル9bと円板コイル9cの間に大きな電圧が発生して絶縁的に厳しくなる。
【0005】
図8において、線路端から衝撃電圧を印加した時の各ノードn0、n1、n2、…の間の発生電圧を簡単にするためにすべてVとすると、その幾何学的配置からシールド用渡り線12a、12b、12c、…の電位はノードn1、n2、n3、…の電位にほぼ等しいので、円板コイル9a、9b、9cに巻き込まれたシールド線6aと6bとの間及び6bと6cの間には電圧V及び2Vが交互に発生することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そのため、線路端から偶数番目の円板コイル9bと9cとのコイル間は図9,図10に示すようにコイル間スペーサ10bをコイル間スペーサ10aより厚くして絶縁距離を大きくとるのが一般的である。またシールド線6は図10に示すようにシールド導体7を絶縁被覆8により被覆して構成されている。絶縁被覆8の絶縁距離も衝撃電圧を考慮して必然的に厚くなる。この厚くしたシールド線6bを基準に全てのシールド線6aを配置しているから、円板巻線の周方向の巻線占有率は上がらない。またコイル間スペーサ10bを厚くするので、円板巻線の積層方向の巻線占有率も上がらない。
【0007】
ところで、変圧器等の静止誘導電器は高電圧・大容量化が進む一方、輸送重量・寸法や変電所立地条件の制限があることから、高信頼性を維持しつつ小型軽量化を図ることは決して絶えることのない要求である。円板巻線のような油と油浸紙の複合絶縁構成では、巻線占積率を上げるためには絶縁上の弱点である油くさびの電界を緩和する必要がある。
【0008】
図9はCCシールドを使用した円板巻線の部分斜視図である。同図において、1は巻筒となる絶縁筒、2は絶縁筒1の軸にほぼ平行で円周上に複数配置される直線スペーサ、3は負荷電流が流れる電線、6a〜dは負荷電流を流さないシールド線である。電線3は連続的に巻回されており、円板コイル9a〜dの外周側のターン間にはシールド線6a〜dが3ターン巻き込まれている。円板コイル間には直線スペーサ2と同様に放射状に複数のコイル間スペーサ10が挿入されており、コイル間の絶縁を保持するとともに冷却媒体が流れる流路を確保している。
【0009】
図10,図11は、図9の部分拡大断面のA矢視図である。同図において、3は導体4にクラフト紙テープを巻回して絶縁被覆5を施した電線、6は平角導体7にクラフト紙テープを巻回して絶縁被覆8を施したシールド線、10bはプレスボードからなるコイル間スペーサである。ここで、シールド線6とコイル間スペーサ10bとの間の三角形形状の空間部15aの隅角部がコイル間くさび15である。電線3とシールド線6との間の三角形形状の空間部16aの隅角部がターン間くさび16である。尚、シールド線6と対応しない三角形形状の空間部の隅角部は電界が集中しないので、問題を生じない。
【0010】
このような構成の巻線3に雷サージ等の過電圧が印加されると、油に比べて絶縁被覆や水平スペーサのような油浸紙の誘電率が高いために、コイル間くさび15やターン間くさび16に電界が集中して、絶縁破壊の弱点になることは周知の通りである。従って、絶縁信頼性を損なわずに巻線の占積率を上げて巻線を小型軽量化するためには、コイル間やターン間の油くさびの電界を緩和する必要がある。
【0011】
これに対して、電線の被覆やコイル間スペーサを比誘電率の小さい材料で構成する案が、それぞれ特開平5−291060号公報及び特開平5−190354号公報に開示されている。また、コイル間スペーサを軟らかい材料で構成して油くさびを充填する案が特開平5−190355号公報に記載されている。
【0012】
上記従来技術によれば、油入静止誘導電器巻線内に形成される油くさびの電界を緩和することが原理的には可能で、絶縁信頼性を維持しつつ巻線占積率を向上させることが可能であったが、これをCCシールドを使用した円板巻線に適用しようとすると以下に述べるような問題が生じる。
【0013】
まず、図10,図11の電線3やシールド線6の絶縁被覆5,8を比誘電率が小さい材料で構成すると、ターン間くさび16の電界は緩和されるが、コイル間の直列静電容量が減少して発生電圧が高くなるので、その効果は相殺される。また、比誘電率の小さい材料は一般に密度が小さく、一旦部分放電が発生すると比較的容易に貫通破壊するという問題がある。
【0014】
次に、コイル間スペーサ10を比誘電率の小さい材料で構成すると、コイル間くさび15の電界はある程度緩和されるが、ターン間くさび16の電界は変わらない。図12は、図10に示したような複合絶縁構成において電界解析を実施し、コイル間スペーサの比誘電率と厚さ、及びシールド線の被覆厚さを変えた場合のコイル間くさび15とターン間くさび16の電界を示したものである。同図より、コイル間スペーサ10の低誘電率化はターン間くさび16の電界緩和には効果がないことが分かる。
【0015】
また、図13に示したように、占積率を犠牲にしてコイル間スペーサの厚さを増せばコイル間くさび15の電界はある程度緩和できるが、ターン間くさび16の電界はほとんど変わらない。
【0016】
一方、図14に示したように、シールド線の絶縁被覆の厚さを増せば、コイル間くさび15だけでなくターン間くさび16の電界も緩和されるが、シールド線と電線の間の静電容量が減少するので、発生電圧自体が高くなり、その効果は相殺される。
【0017】
更に、コイル間スペーサを軟らかい材料で構成すれば、コイル間くさび15を充填して電界を緩和することが可能であったとしても、同程度に高電界となるターン間くさび16の電界は緩和されない。また、実際の静止誘導電器の巻線には運転中の振動だけでなく、外部短絡時の機械力等が作用して少なからず変位するので、油くさびを完全に無くすことは現実的には極めて困難である。
【0018】
このように、従来技術ではCCシールドを使用した円板巻線の巻線占積率を向上したり、或いは油くさび及びターン間くさび16の電界を緩和したりするのはむずかしかった。
【0019】
本発明の目的は、円板巻線の巻線占積率が向上し、かつ油くさび及びターン間くさびの電界を緩和できる静止誘導電器の円板巻線を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との間の距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれ対応するシールド導体の端部とに空間部を形成し、この空間部に絶縁物を設け、このように絶縁強化を必要する個所のみに絶縁物を配置し、この絶縁物によりコイル間スペーサ円板の厚みとシールド導体を被覆した絶縁被覆を薄く、円板巻線の占積率を上げると共に、コイル間の直列静電容量を増加し、かつコイル間くさび及びターン間くさびの電界を緩和したことを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図示に基づいて詳細に説明する。図1に本発明の静止誘導電器の円板巻線の縦断面図を示す。
【0022】
同図において、1は巻筒となる絶縁筒、2は絶縁筒1の軸方向にほぼ平行で円周上に複数配置される直線スペーサ、3は負荷電流を流す導体4に絶縁被覆5を施した電線、電線3はコイル状に巻回した6本の電線3を周方向に配置した。6は負荷電流を流さないシールド導体7に絶縁被覆8を施したシールド線である。電線3を6ターン巻き回し、その外周側にシールド線6を3ターン巻き込んだ円板コイル9aを軸方向に積み重ねて円板巻線を構成している。
【0023】
この円板コイル9aと円板コイル9bとの間にコイル間スペーサ10aを配置している。また他の円板コイル9c,9d,9e間にもいずれかのコイル間スペーサ10a,10bを配置している。コイル間スペーサ10a,10bは直線スペーサ1と同様に放射状に配置されている。コイル間スペーサ10a,10bはコイル間の絶縁を保持すると共に、冷却媒体が流れる流路を確保している。
【0024】
奇数層目のコイル間スペーサ10aの両側に配置された円板コイル9a,9bの内周側の電線3間を内周側渡り線9yで接続している。内周側渡り線9yと接続している円板コイル9b側の外周側の電線3とこれに隣接する偶数層目のコイル間スペーサ10bの外周側の電線3とを外周側渡り線9zで接続している。内周側渡り線9y及び外周側渡り線9zにより各円板コイル9a〜9e間を電気的に直列に接続している。円板コイル9aの外周側の電線3には線路端側のリード線11が接続されている。
【0025】
各円板コイル9a〜9eの電線3と電線3との間にシールド線6a〜6dを複数ターン巻回している。シールド線6はシールド導体7を絶縁被覆8で被覆している。円板コイル9bに巻き込まれたシールド線6bは線路端側のリード線11に接続されている。奇数番目のシールド線6aは電線3には接続されず、互いに4個離れた円板コイル9dの電線3間のシールド線6dにシールド用渡り線12によって接続されており、電気的にはフロート電位になっている。また奇数番目のシールド線6cも4個離れた偶数層目のシールド線にシールド用渡り線12によって接続されている。通常のCCシールド円板巻線は以上のように構成されている。
【0026】
本実施例では、図2(この図は説明の都合上接続線は省略している。)に示すように偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18とこれに対応するシールド導体20の端部との距離L1を、奇数層目のコイル間スペーサ10aの一方面19とこれに対応するシールド導体8の端部との間の距離L2より長くし、偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18と対応するシールド導体20の端部と絶縁被覆21とに空間部を形成し、この空間部に絶縁物22を設ける。
【0027】
シールド導体20に絶縁物22を設けるには、図4に示すように絶縁物22に開口溝22aを設け、開口溝22aにシールド導体20を挿入し、絶縁物22及びシールド導体20を絶縁被覆21とすれば、シールド導体20と絶縁物22との一体化絶縁に挿入する作業が容易にできる。絶縁物22及び開口溝22aは成形絶縁物として一体に形成するのが好ましい。尚、油入静止誘導電器の場合には、成形絶縁物としては、耐油性が高く比誘電率が小さいポリメチルペンテンやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂が好適である。
【0028】
この本実施例では、絶縁物22を設けたので、次の効果を生じる。即ち、電位の一番厳しい偶数番目のコイル間スペーサ10bに対向する従来のシールド線6は、シールド導体7を絶縁被覆8している。この絶縁被覆8の厚みを例えば10とする。これに対して、本実施例では絶縁物22の厚みを例えば4とし、絶縁被覆21の厚みを6とすれば、円板コイル9bに巻き込まれたシールド線6bの絶縁被覆21の厚みを薄くできるから、薄くした分だけ円板巻線の周方向の寸法を縮小できるので、円板巻線の周方向の巻線占積率を向上することができる。また絶縁被覆21の厚みを薄くすることは、電線3とシールド線6bの間の静電容量が大きくなり、コイル間の直列静電容量が増加する。その結果、シールド線6bの巻き込み長さを短くできるので、円板巻線の巻線占積率は向上する。
【0029】
また本実施例では絶縁被覆21の厚みを例えば8とし、絶縁物22の厚みを2とすれば、2だけ偶数番目のコイル間スペーサ10bの厚みを冷却上の制限が許す限り薄くでき、円板巻線の積層方向を縮小できるので、円板巻線の積層方向の巻線占積率を向上することができると共に、電線3とシールド線6bの間の静電容量が大きくなり、コイル間の直列静電容量が増加する。この場合、コイル間スペーサ10bの厚みを更に薄くするときには、絶縁物22の厚みを上述より増せば良い。
【0030】
このように本発明では、線路端から偶数番目のコイル間スペーサ10bを冷却上の制限が許す限り薄くしているので、円板巻線9の積層方向の巻線占積率を向上させることができる。また、シールド線6bの絶縁被覆21を薄くすることができるので、シールド線6bと電線3の間の静電容量が大きくなり、コイル間直列静電容量が増加する。その結果、シールド線6bの巻き込み長さを短くできるので、円板巻線9の周方向の巻線占積率を向上することができる。従って、偶数番目のコイル間スペーサ10bに対応するシールド線6bのシールド導体端面に絶縁物22を設けることにより、円板巻線の積層方向又は周方向の巻線占積率を向上することができると共に、コイル間直列静電容量が増加する。従って、巻線占積率を向上することにより、絶縁信頼性に優れた小型軽量された静止誘導電器の円板巻線を製作することが出来る。
【0031】
更に図2,図3に示すように本実施例では三角形形状の空間部15aの隅角部のコイル間油くさび15とシールド導体20の端部との距離L3は、絶縁物22を設けて距離L1だけシールド導体20の端部をコイル間油くさび15より離し、絶縁距離を増したので、コイル間油くさび15の電界を大幅に緩和できる。また、三角形形状の空間部16aの隅角部のターン間油くさび16とシールド導体20の端部との距離L4は、絶縁物22を設けて距離L1だけシールド導体20の端部をターン間油くさび16より離し、絶縁距離を増したので、ターン間油くさび16の電界を大幅に緩和できる。具体的には、成形絶縁物例えば絶縁物22の比誘電率が絶縁被覆8(油浸紙)と同じで、厚さが1mmの場合でも、油くさびの電界は約40%低減される。
【0032】
次に本発明の他の実施例を図5,図6を用いて説明する。
【0033】
図5において、図1と同じ構成要素には同一の番号を付し説明は省略する。
【0034】
本実施例では、シールド導体6aの構造は従来と同じであるが、その幅hが電線3の幅Hより小さいが、シールド導体21とシールド導体6aとの関係は、上述と同様に距離L1>距離L2の関係にある。そして、線路端から偶数番目のコイル間スペーサ10bとシールド線6bとの間にシールド線6bの形状に合わせて成形された図6に示した絶縁物24が配置されている。絶縁物24の一方面にシールド線6bの形状に合わせた接触面24bを形成すると共に、接触面24bの両側に突起部24aを形成する。この突起部24aはシールド導体20の両端と電線3の間に形成された三角形形状の空間部の隅角部のターン間油くさび16に挿入した。この結果、絶縁物24の両側と電線3との間の三角形形状の空間部16´aの隅角部に新たなターン間油くさび16´を形成する。
【0035】
この本実施例では、シールド導体20の端部と新たなターン間油くさび16´との間の距離が、シールド導体20の幅hを幅Hに比べてコイル間スペーサ10bより離したこと、及び突起部24aを設けて新たターン間油くさび16´を形成したことにより、絶縁距離が増したので、ターン間油くさび16´の電界を大幅に緩和できる。
【0036】
この絶縁物24の材質も、上述の実施例と同じく、油入静止誘導電器ではポリメチルペンテンやPTFEが好適である。また、この充填物を多孔質のPTFEで成形すれば、比誘電率が油に近いので、油くさびの電界緩和には一層効果的である。
【0037】
このように、本実施例によれば、絶縁物24を配置することにより、絶縁物24とこの両側の電線3との間に形成されているターン間油くさび16に突起部24aを充填することができるので、絶縁耐力は増加する。また線路端から偶数番目のコイル間スペーサ10bを薄くしたり、或いはシールド線6bの絶縁被覆21を薄くすることができるので、本実施例も上述の実施例と同じく、コイル間の直列静電容量が大きく、絶縁信頼性に優れた小型軽量の静止誘導電器巻線を提供することができる。
【0038】
図7の実施例において、図1及び図4と同じ構成要素には同一の番号を付し説明は省略する。本実施例は、充填物の形状のみ上述の実施例と異なり、絶縁物23の断面が矩形である。図2のように偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18とこれに対応するシールド導体20の端部との距離L1を、奇数層目のコイル間スペーサ10aの一方面19とこれに対応するシールド導体8の端部との距離L2より長くし、偶数層目のコイル間スペーサ10bの一方面18とこれ対応するシールド線6bとに空間部を形成し、この空間部に絶縁物23を設けているので、上述と同様に絶縁物23の厚みを調整して、偶数番目のコイル間スペーサ10Bの厚みを絶縁耐力を損なうことなく薄くしたり、或いは絶縁皮膜を薄くしたり調整して、円板巻線の巻線占積率を向上したり、コイル間直列静電容量が増加したり、或いは上述と同様にコイル間油くさび15の電界を大幅に緩和したりすることが出来る。
【0039】
尚、以上の実施例は油入静止誘導電器の例を説明したが、本発明はこれにとらわれるものではなく、ガス絶縁静止誘導電器に対しても適用できることは言うまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との間の距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれ対応するシールド導体の端部とに空間部を形成し、この空間部に絶縁物を設け、絶縁物の厚み分だけ、絶縁被覆の厚みを薄くしたり、或いは偶数番目のコイル間スペーサの厚みを薄く出来るから、円板巻線の巻線占積率を向上することができること、絶縁被覆の厚みを薄くしてコイル間の直列静電容量を大きくできること、コイル間油くさび及びターン間油くさびの電界を緩和することができること等により、絶縁信頼性に優れた小型軽量された静止誘導電器巻線の円板巻線を製作することが出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の静止誘導電器の円板巻線の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1の円板巻線の説明する部分拡大縦断面図である。
【図3】図2のコイル間油くさび及びターン間油くさびを説明する部分拡大縦断面図である。
【図4】図1乃至図3に使用した本発明のシールド線の概略斜視図である。
【図5】本発明の静止誘導電器の円板巻線の他の実施例を示す縦断面図である。
【図6】図4のシールド線に使用する絶縁物の概略斜視図である。
【図7】本発明の他の実施例である静止誘導電器の円板巻線の縦断面図である。
【図8】従来のCCシールド巻線の接線図である。
【図9】従来のCCシールド巻線の構成の一部を示す部分斜視図である。
【図10】図9のCCシールド巻線の部分拡大断面図である。
【図11】図10のコイル間油くさび及びターン間油くさびを説明する部分拡大縦断面図である。
【図12】図9のCCシールド巻線を使用した円板巻線におけるコイル間スペーサの比誘電率と電界との関係を示す特性図である。
【図13】図9のCCシールド巻線を使用した円板巻線におけるコイル間スペーサの厚さと電界との関係を示す特性図である。
【図14】図9のCCシールド巻線を使用した円板巻線におけるシールド線の絶縁被覆の厚さと電界との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
3…電線、4…導体、5…絶縁被覆、6,6a,6b,6c,6d…シールド線、7…平角電線、8…絶縁被覆、9,9a,9b,9c,9d,9e…円板コイル、10…コイル間スペーサ、12…シールド用渡り線、15…コイル間油くさび、16…ターン間油くさび、20…シールド導体、21…絶縁被覆、22,23,24…絶縁物。
Claims (7)
- コイル状に巻回した電線の複数本を周方向に配置した円板コイルと、この円板コイルの複数個を絶縁筒の軸方向に積層し、円板コイルと円板コイルの間にコイル間スペーサを配置し、奇数層目のコイル間スペーサの両側に配置された内周側電線間を接続した内周側渡り線と、内周側渡り線と接続した外周側電線とこれに対応する偶数層目のコイル間スペーサの間の外周側電線とを接続した外周側渡り線と、各円板コイルの電線と電線との間にシールド導体を絶縁被覆したシールド線を複数ターン巻回し、奇数層目のシールド線とこれから数えて4層目のシールド線とをシールド用渡り線で接続し、偶数層目のシールド線とこれに隣接する電線とを線路端リード線に接続した静止誘導電器の円板巻線において、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との間の距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれ対応するシールド導体の端部とに空間部を形成し、この空間部に絶縁物を設けたことを特徴とする静止誘導電器の円板巻線。
- 偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との間の距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面と対応するシールド導体の端部と絶縁被覆との間に空間部を形成し、この空間部に絶縁物を設けたこと特徴とする請求項1に記載の静止誘導電器の円板巻線。
- 偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド線との間に空間部を形成し、この空間部に絶縁物を設けたこと特徴とする請求項1に記載の静止誘導電器の円板巻線。
- 偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離を、奇数層目のコイル間スペーサの一方面とこれに対応するシールド導体の端部との距離より長くし、偶数層目のコイル間スペーサの一方面とこれ対応するシールド線及び電線との間に空間部を形成し、この空間部に絶縁物を充填すること特徴とする請求項1に記載の静止誘導電器の円板巻線。
- 絶縁物に開口溝を設け、開口溝に前記シールド導体を挿入し、絶縁物及びシールド導体を絶縁被覆することを特徴とする請求項2に記載の静止誘導電器の円板巻線。
- 絶縁物の一方面に形成したシールド線の形状に合わせた接触面と、接触面の両側にシールド線と電線との間のくさびに挿入する突起部とを備えていることを特徴とする請求項4に記載の静止誘導電器の円板巻線。
- 絶縁物は、ポリメチルペンテン樹脂、又はポリテトラフルオロエチレン樹脂、又はポリテトラフルオロエチレンの多孔体を備えていることを特徴とする請求項1かた5のいずれか1項に記載の静止誘導電器の円板巻線。
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