本発明の車両用パーキングロック機構は、例えばシフトレバー等のシフトレンジ選択装置によって選択されたシフトレンジを、電動式や油圧式等の電気制御式アクチュエータにより電気的に成立させるシフトバイワイヤ(SBW)方式のパーキングロック機構に適用されるが、シフトレバーによってリンクやケーブル等の連動装置を介してシフトレンジが機械的に切り替えられる手動操作式のパーキングロック機構にも適用され得る。シフトレンジとしては、少なくとも動力伝達を遮断するとともに出力軸の回転を機械的に阻止する駐車用のP(パーキング)レンジを有し、そのPレンジが選択された場合にパーキングロック機構がパーキングロック状態とされる。Pレンジの他には、例えば前進走行が可能なD(ドライブ)レンジや、後進走行が可能なR(リバース)レンジなどがある。車両としては、燃料の燃焼によって動力を発生するエンジン駆動車両や、電動モータによって駆動する電気自動車、或いは複数の動力源を備えているハイブリッド車両など、種々の車両に適用され得る。
パーキングギヤは、車輪の回転に伴って機械的に回転させられる回転軸(出力軸など)に設けられ、そのパーキングギヤにパーキングポールが噛み合わされることにより、その回転軸の回転、更には車輪の回転が機械的に阻止される。パーキングポールは、例えば長手形状を成していて、一端部においてパーキングギヤの中心線(回転中心)と平行なポール軸の軸心まわりに回動可能に配設されるが、パーキングギヤに対して接近離間させられるように直線往復移動可能に配設しても良いなど、種々の態様が可能である。ロック部材は、例えばパーキングロッドの先端部に配設されて、パーキングロッドと共にロック位置およびロック解除位置へ往復移動させられる。
カム機構は、パーキングポールに設けられたカム凸部と、ロック部材に設けられたカム係合部とが係合させられることにより、パーキングポールをパーキングギヤに接近させて嵌合部をパーキングギヤに噛み合わせるように構成され、例えばカム凸部およびカム係合部の少なくとも何れか一方には傾斜面が設けられ、その傾斜面に基づいてパーキングポールがパーキングギヤに対して接近離間させられる。カム係合部およびカム凸部は滑り接触させるだけでも良いが、例えばカム凸部およびカム係合部の何れか一方に傾斜面を設け、他方に傾斜面と係合させられて転がり回転させられるローラを設けるようにしても良い。すなわち、カム凸部としてローラが設けられても良い。上記傾斜面は円錐面であっても良い。
第1パーキングポール部材は、例えば長手形状を成していて、一端部においてパーキングギヤの中心線と平行なポール軸の軸心まわりに回動可能に配設される一方、第2パーキングポール部材は第1パーキングポール部材の長手形状の長手方向へ相対移動可能に配設され、その長手方向に離間して定められた通常位置と手動解除位置との間を移動可能とされるが、第1パーキングポール部材の長手方向と直角方向へ移動可能に第2パーキングポール部材を配設することもできる。第1パーキングポール部材に対する第2パーキングポール部材の移動形態(連結態様)は、カム機構によるパーキングポールの移動形態等に応じて適宜定められる。
ロック解除部材は、例えば直線移動操作や回転移動操作によって第2パーキングポール部材を通常位置から手動解除位置へ移動させるように構成されるが、その操作態様は第2パーキングポール部材の移動形態等に応じて適宜定められる。ロック解除部材は、例えば第2パーキングポール部材と係合させられた係合部と操作部とを有して構成され、係合部および操作部が一体に設けられても良いが、係合部と操作部との間にリンクやケーブル等の連動装置が設けられても良い。すなわち、操作部は、変速機ケース等のケースに設けられても良いが、車室内の運転席の近傍等に設けられても良い。ロック解除部材は、例えば操作部を取り外し可能に構成し、必要に応じて操作部を係合部に連結して第2パーキングポール部材を手動解除位置へ移動可能としても良い。
ロック部材には、例えば外周面が互いに転がり接触させられるように一対の第1ローラおよび第2ローラが配設され、第1ローラはガイド部材と係合させられる一方、第2ローラはカム係合部としてカム凸部に係合させられるように構成される。その場合、一対の第1ローラおよび第2ローラは、例えば取付ピン等を介してロック部材に変位不能に取り付けられるが、少なくとも一方をロック部材の移動方向と直角な方向、すなわちパーキングポールやガイド部材に対して接近離間させられる方向へ変位可能として、両者の外周面が確実に転がり接触させられるようにすることもできる。一対の第1ローラおよび第2ローラを、互いに独立に回転できるように非接触状態でロック部材に配設しても良いし、第1ローラおよび第2ローラの何れか一方或いは両方を省略することもできる。カム係合部およびカム凸部の何れか一方がローラで転がり接触させられ、第2パーキングポール部材が通常位置と手動解除位置との間を直線移動させられる場合、その移動方向は、ロック部材がロック位置とロック解除位置との間を移動させられる際の移動方向と平行であることが望ましい。カム係合部およびカム凸部が滑り接触させられる場合には、第2パーキングポールの移動方向とロック部材の移動方向とは必ずしも平行である必要はない。
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比や形状、角度等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例である車両用パーキングロック機構10を説明する概略構成図である。この車両用パーキングロック機構10は、シフトレバー等のシフトレンジ選択装置によって選択されたシフトレンジを、電気制御式のSBW駆動モータ12等により電気的に成立させるシフトバイワイヤ(SBW)方式のパーキングロック機構であり、SBW駆動モータ12は電気制御式アクチュエータに相当する。シフトレンジは、自動変速機の動力伝達状態であり、駐車用のPレンジの他に、後進走行用のRレンジ、動力伝達を遮断するNレンジ、前進走行用のDレンジ等が定められる。例えばシフトレバーがP選択位置へ操作されると動力伝達を遮断するとともに自動変速機の出力軸16の回転を機械的に阻止するPレンジとし、シフトレバーがR選択位置へ操作されると自動変速機を後進走行が可能なRレンジとし、シフトレバーがN選択位置へ操作されると自動変速機をNレンジとし、シフトレバーがD選択位置へ操作されると自動変速機を前進走行が可能なDレンジとする。
SBW駆動モータ12は、変速機ケース18の内部に配設されたレンジ切替シャフト20を回転駆動できるように、その変速機ケース18の内部或いは外部に設けられている。変速機ケース18は自動変速機を収容しているもので、本実施例の車両用パーキングロック機構10の主要部を収容しているケースに相当する。レンジ切替シャフト20は、選択されたシフトレンジに応じてSBW駆動モータ12によって軸心まわりに回動させられる。レンジ切替シャフト20にはディテントプレート22が固設されており、シフトレンジに応じてディテントプレート22がレンジ切替シャフト20の軸心まわりに回動させられるとともに、PレンジとするP位置、RレンジとするR位置、NレンジとするN位置、DレンジとするD位置の4つの回動位置に位置決めされる。ディテントプレート22の先端部には4箇所の位置決め凹所24を有する凹凸が設けられており、その位置決め凹所24に係止部26が係合させられるようになっている。係止部26はばね板28の先端部を丸めたもので、そのばね板28の弾性変形により凹凸形状に倣って変位させられるとともに、P、R、N、Dの各回動位置でディテントプレート22に所定の節度(位置決め力)が付与される。ばね板28は、変速機ケース18に直接または間接的に取り付けられている。図1は、Pレンジが選択されてディテントプレート22がレンジ切替シャフト20の反時計まわりに回動させられ、P位置に位置決めされた状態である。
ディテントプレート22には連結穴32が設けられ、パーキングロッド34が相対回動可能に連結されており、ディテントプレート22の回動に伴ってパーキングロッド34が長手方向、すなわち図1における左右方向へ略直線的に往復移動させられる。パーキングロッド34の先端部にはロック部材36が配設されており、そのロック部材36が、パーキングロッド34の移動に伴って図1の右方向であるロック位置と、左方向のロック解除位置とへ移動させられる。ロック位置は、図1に示されるようにディテントプレート22がレンジ切替シャフト20の反時計まわりにP位置まで回動させられた位置である。ロック解除位置は、ディテントプレート22がレンジ切替シャフト20の時計まわりにR位置等の非P位置へ回動させられた位置である。本実施例では、R位置~D位置の非P位置では、少なくともロック部材36が設けられたパーキングロッド34の先端部が一定のロック解除位置に保持されるように、ディテントプレート22とパーキングロッド34との間またはパーキングロッド34の中間部に、遊び機構が設けられている。
パーキングロッド34の先端部に設けられたロック部材36は、パーキングポール40と係合可能に配設されており、そのロック部材36がロック解除位置からロック位置へ移動させられる過程で、パーキングポール40が図1の上方側へ回動させられ、噛合い歯40pがパーキングギヤ50と噛み合わされる。パーキングギヤ50は、自動変速機の出力軸16に相対回転不能に取り付けられており、噛合い歯40pがパーキングギヤ50と噛み合わされることにより、そのパーキングギヤ50の回転、更には出力軸16および車輪の回転が機械的に阻止されるパーキングロック状態となる。パーキングポール40は長手形状を成しており、その一端部において出力軸16と平行なポール軸46の軸心Oまわりに回動可能に変速機ケース18内に配設されているとともに、付勢装置であるリターンスプリング48によって噛合い解除方向(図1における時計まわり方向)へ付勢されており、ロック部材36はリターンスプリング48の付勢力に抗してパーキングポール40を噛合い方向(図1における反時計まわり方向)へ回動させる。
パーキングポール40には、パーキングギヤ50と対面する側すなわち図1における上側の面に、パーキングギヤ50側へ向かって突き出すように嵌合部として前記噛合い歯40pが設けられている一方、その反対側の面には、反対側である図1の下側へ向かって突き出すようにカム凸部40cが設けられている。そして、そのカム凸部40cにロック部材36が係合させられることにより、パーキングポール40が反時計まわりに回動させられて、噛合い歯40pがパーキングギヤ50と噛み合わされる。カム凸部40cのロック解除位置側の側面は傾斜面40sとされており、その傾斜面40sの作用でパーキングポール40がポール軸46の軸心Oまわりに回動させられる。すなわち、パーキングポール40は、パーキングギヤ50に対して接近離間可能に配設されており、パーキングポール40がロック部材36によって図1の上方側である噛合い方向へ回動させられると、噛合い歯40pがパーキングギヤ50に接近させられて噛み合わされ、そのパーキングギヤ50の回転が阻止されるパーキングロック状態となる。図1は、このパーキングロック状態を示した図である。車両用パーキングロック機構10の構成要素であるディテントプレート22、パーキングロッド34、ロック部材36、パーキングポール40、パーキングギヤ50等は、図示しない自動変速機と共に変速機ケース18内に配設されている。
上記ロック部材36は、付勢装置であるばね部材(実施例では圧縮コイルスプリング)52によってパーキングロッド34の先端側へ付勢され、ロック位置側の先端位置に保持されてパーキングポール40を噛合い方向へ回動させるが、パーキングポール40の噛合い歯40pとパーキングギヤ50とが干渉した場合には、ばね部材52の付勢力に抗してロック部材36がパーキングロッド34に対して相対的にロック解除位置方向へ後退することが許容される。ロック部材36を挟んでパーキングポール40と反対側には、ロック部材36がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制しつつロック位置とロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部材54が配設されており、ロック部材36はガイド部材54によって支持された状態でロック位置とロック解除位置との間を直線往復移動させられる。また、前記レンジ切替シャフト20は出力軸16と平行な姿勢で、出力軸16に対してポール軸46と同じ側に配設されており、ロック部材36はパーキングポール40の長手方向と略平行な方向(図1における左右方向)へ直線往復移動させられる。上記ガイド部材54は、変速機ケース18内に配設されて変速機ケース18に固設されている。
ロック部材36は、パーキングロッド34に連結された連結ヘッド60と、その連結ヘッド60に配設された一対の第1ローラ62および第2ローラ64と、を備えて構成されている。連結ヘッド60は、略U字状の二股形状を成しており、その二股形状の一対の側壁部の間に一対の第1ローラ62および第2ローラ64が取り付けられている。一対の第1ローラ62および第2ローラ64は、それぞれロック部材36の移動方向に対して直角で互いに平行な軸心まわりに回転可能、具体的には出力軸16と平行な軸心まわりに回転可能で、且つ外周面が互いに転がり接触させられるように、取付ピン66、68を介して連結ヘッド60に配設されている。一対の第1ローラ62および第2ローラ64は、ロック部材36の上下方向の両側に配置されているパーキングポール40とガイド部材54との間に、上下に並んで配置されており、第1ローラ62はガイド部材54に接触させられて転がり回転させられ、第2ローラ64はパーキングポール40に接触させられて転がり回転させられる。また、第1ローラ62および第2ローラ64は、それぞれ取付ピン66、68に対して所定の遊びを有して回転可能に支持されており、連結ヘッド60に対してそれぞれ上下方向に所定量だけ変位可能で、互いの外周面が確実に転がり接触させられるようになっている。なお、第1ローラ62および第2ローラ64に取付ピン66、68を一体的に固設し、取付穴70、72を上下方向に長い長円形として、それ等の第1ローラ62および第2ローラ64を連結ヘッド60に対して上下変位可能としても良い。また、第1ローラ62、第2ローラ64の少なくとも一方を連結ヘッド60に対して上下変位可能に配設すれば、他方が上下変位不能であっても、両者の外周面を確実に転がり接触させることができる。また、取付ピン66、68を省略し、第1ローラ62、第2ローラ64を連結ヘッド60に直接配設することもできる。
このような車両用パーキングロック機構10においては、Pレンジが選択されてSBW駆動モータ12によりディテントプレート22が非P位置からP位置へ回動させられると、パーキングロッド34を介してロック部材36がロック解除位置からロック位置へ移動させられる。その際に、第1ローラ62がガイド部材54と接触させられて転がり回転させられることにより、ロック部材36がパーキングポール40と反対側へ変位することが規制される一方、第2ローラ64がパーキングポール40に接触させられて転がり回転しつつカム凸部40cと係合させられることにより、そのパーキングポール40が円滑にパーキングギヤ50に接近させられて噛み合わされ、図1に示すパーキングロック状態になる。すなわち、ロック部材36がロック解除位置からロック位置へ移動させられる際には、第1ローラ62および第2ローラ64がパーキングポール40とガイド部材54との間で挟圧され、両者の外周面が接する状態で相対回転させられることにより、ロック部材36がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制しつつ、第2ローラ64とカム凸部40cとの係合によりパーキングポール40を噛合い方向へ回動させてパーキングギヤ50と噛み合わせることができる。そして、ロック部材36がロック位置まで移動させられたパーキングロック状態では、ロック部材36の移動方向と平行になるように形成されたカム凸部40cの先端面に第2ローラ64が乗り上げることにより、第1ローラ62および第2ローラ64の転がり抵抗と相まってパーキングロック状態が安定的に維持される。本実施例では、上記第2ローラ64およびカム凸部40cを含んで、パーキングポール40をパーキングギヤ50に接近させて噛み合わせるカム機構74が構成されている。第2ローラ64は、ロック部材36に設けられたカム係合部に相当する。
また、図1に示すパーキングロック状態において、Rレンジ等のPレンジ以外のレンジが選択され、SBW駆動モータ12によりディテントプレート22がP位置からR位置等の非P位置へ回動させられると、図4に示すようにパーキングロッド34を介してロック部材36がロック位置からロック解除位置へ移動させられる。これにより、第2ローラ64とカム凸部40cとの係合が解除されるとともに、パーキングポール40がリターンスプリング48の付勢力に従ってポール軸46の時計まわり方向へ回動させられ、噛合い歯40pがパーキングギヤ50から抜け出して、パーキングギヤ50が回転可能なロック解除状態になる。図4は、パーキングポール40とパーキングギヤ50との噛合いが解除されたロック解除状態である。
ここで、SBW駆動モータ12が故障したり、ディテントプレート22からロック部材36に至るまでの伝達経路で異常が生じたりして、ロック部材36をロック位置からロック解除位置へ移動できなくなると、図1に示すパーキングロック状態を解除できないため、出力軸16を回転させて車両を自力で移動させることができなくなる。これに対し、本実施例では図2および図3に示すようにパーキングポール40を、第1パーキングポール部材42および第2パーキングポール部材44の2つの部材に分割し、ロック解除部材80を用いて第2パーキングポール部材44を移動させることにより、上記パーキングロック状態を手動操作で解除できるようになっている。図3は、図2における III-III 矢視部分の拡大断面図である。
図2および図3において、第1パーキングポール部材42は長手形状の略直方体形状を成しており、一端部において前記ポール軸46の軸心Oまわりに回動可能に変速機ケース18に配設されているとともに、パーキングギヤ50と対面する上面には前記噛合い歯40pが上方へ突き出すように一体に設けられている。第2パーキングポール部材44は、第1パーキングポール部材42の長手形状の先端側部分であってパーキングギヤ50と反対の下面側に、その長手形状の長手方向(図2における左右方向で、以下単に長手方向という)へ相対移動可能に配設されており、第2パーキングポール部材44の下面側には前記カム凸部40cが下方へ突き出すように一体に設けられている。第1パーキングポール部材42の下面には長手方向に沿って凸部43が設けられている一方、第2パーキングポール部材44の上面には、凸部43が摺動可能に嵌合される凹溝45が設けられており、それ等の凸部43と凹溝45との係合により第2パーキングポール部材44の移動方向が規定される。第2パーキングポール部材44に凸部を設け、第1パーキングポール部材42に凹溝を設けても良い。
第2パーキングポール部材44には連結穴82が設けられており、その連結穴82に係合部84が係止されているロック解除部材80により、長手方向に離間して定められた通常位置と手動解除位置との間で第2パーキングポール部材44を往復移動させることができる。本実施例では、ポール軸46に近い側が通常位置で、ポール軸46から遠い側が手動解除位置とされている。ロック解除部材80はL字形状に曲げられた一体の棒状部材で、一端部が係合部84で他端部が操作部86とされており、その操作部86が長手方向へ延び出す姿勢で変速機ケース18に配設されている。具体的には、図1に示されるように、操作部86は変速機ケース18に設けられた挿通穴88から変速機ケース18の外部へ突き出す状態でその変速機ケース18に保持されているとともに、変速機ケース18にはプラグ90が着脱可能に取り付けられて、操作部86によるロック解除部材80の移動操作が不能とされている。変速機ケース18の挿通穴88にはオイルシール92が取り付けられており、ロック解除部材80との間が油蜜にシールされている。
図2に実線で示した第2パーキングポール部材44は手動解除位置へ移動させられた状態で、一点鎖線は、第2パーキングポール部材44が通常位置へ移動させられた状態である。前記図1および図4は、第2パーキングポール部材44が通常位置へ移動させられた状態で、変速機ケース18にプラグ90が装着されてロック解除部材80の操作が不能とされた状態では、第2パーキングポール部材44は通常位置に保持される。第2パーキングポール部材44は、例えば摩擦等により通常位置に保持されるように構成されるが、スプリング等により第2パーキングポール部材44を通常位置に位置決めする位置決め機構等を設けることもできる。この状態では、第2パーキングポール部材44は第1パーキングポール部材42と一体的にポール軸46の軸心Oまわりに回動させられる。したがって、SBW駆動モータ12によってロック部材36がロック解除位置とロック位置との間を往復移動させられると、カム凸部40cの傾斜面40sと第2ローラ64との係合によりパーキングポール40は一体的にポール軸46の軸心Oまわりに回動させられ、車両用パーキングロック機構10が図1に示すパーキングロック状態と図4に示すロック解除状態とに切り替えられる。連結穴82と係合部84との間には、パーキングポール40が一体的にポール軸46の軸心Oまわりに回動できるように遊びが設けられている。
一方、前記手動解除位置は、図1に示すようにロック部材36がロック位置へ移動させられた状態において、カム凸部40cとカム係合部である第2ローラ64との係合が解除される位置である。したがって、図1に示すパーキングロック状態において、SBW駆動モータ12の故障やディテントプレート22からロック部材36に至るまでの伝達経路での異常等により、ロック部材36をロック位置からロック解除位置へ移動させることができなくなった場合には、図5に示すようにプラグ90を外してロック解除部材80の操作部86を矢印A方向へ引っ張り操作すれば、第2パーキングポール部材44を手動解除位置へ移動させてパーキングロック状態を解除することができる。すなわち、第2パーキングポール部材44が手動解除位置へ移動させられてカム凸部40cと第2ローラ64との係合が解除されると、第1パーキングポール部材42はリターンスプリング48の付勢力に従ってポール軸46の時計まわり方向へ回動させられ、噛合い歯40pがパーキングギヤ50から抜け出すロック解除状態になる。これにより、パーキングギヤ50の回転、更には出力軸16および車輪の回転が可能となり、車両を自力で移動させることができる。図5では、第1パーキングポール部材42と第2パーキングポール部材44とが折れ曲がっているが、図2に実線で示すように第2パーキングポール部材44が手動解除位置とされた状態で、第1パーキングポール部材42と一体的にポール軸46の軸心Oまわりに回動させられるようにすることもできる。なお、操作部86を矢印Aと逆方向へ押し込み操作すれば、カム凸部40cの傾斜面40sと第2ローラ64との係合によりカム凸部40cを第2ローラ64上に乗り上げさせて第2パーキングポール部材44を通常位置へ移動させることが可能で、図1のパーキングロック状態に戻すことができる。
このように本実施例の車両用パーキングロック機構10においては、パーキングポール40が、噛合い歯40pを有する第1パーキングポール部材42とカム凸部40cを有する第2パーキングポール部材44とを備えて構成されており、ロック解除部材80によって第2パーキングポール部材44が通常位置から手動解除位置へ移動させられると、ロック部材36がロック位置へ移動させられた状態においてもカム凸部40cと第2ローラ64との係合が解除され、第1パーキングポール部材42の噛合い歯40pがパーキングギヤ50から抜け出してパーキングロック状態が解除される。すなわち、カム凸部40cと第2ローラ64との係合を解除してパーキングギヤ50から噛合い歯40pを抜け出させるため、SBW駆動モータ12に異常が発生した場合や、そのSBW駆動モータ12からロック部材36に至るまでの伝達経路で異常が生じた場合に、ロック解除部材80によってパーキングロック状態を確実に手動で解除することができる。
また、特許文献1のようにSBW駆動モータ12にロック解除部材を設ける場合に比較して、SBW駆動モータ12からロック部材36に至るまでの伝達経路で異常が生じた場合でも、ロック解除部材80によってパーキングロック状態を確実に手動で解除することができる。また、SBW駆動モータ12にロック解除部材を設けると、SBW駆動モータ12が大型化して車両への搭載性が悪化する可能性があるが、パーキングポール40を第1パーキングポール部材42と第2パーキングポール部材44とに分割してロック解除部材80により第2パーキングポール部材44を移動させるだけで良いため、部品点数が少なくてコンパクトに構成することが可能であり、車両への搭載性を損なうことなく簡便に実施することができる。
また、第1パーキングポール部材42が長手形状を成していて、パーキングギヤ50の中心線と平行なポール軸46の軸心Oまわりに回動可能に配設されているとともに、第2パーキングポール部材44は第1パーキングポール部材42の長手方向へ相対移動可能に配設されており、その長手方向に離間して通常位置および手動解除位置が定められているため、第2パーキングポール部材44を通常位置から手動解除位置へ直線的に移動させれば良く、ロック解除部材80を用いてパーキングロック状態を簡単に解除することができる。
また、ロック解除部材80が、変速機ケース18の外部に設けられた操作部86と変速機ケース18の内部で第2パーキングポール部材44と係合させられた係合部84とを備えており、操作部86が移動操作されることにより第2パーキングポール部材44が通常位置から手動解除位置へ移動させられるため、操作部86を移動操作することにより変速機ケース18内の車両用パーキングロック機構10のパーキングロック状態を簡単に解除することができる。
また、ロック解除部材80が操作部86および係合部84を一体的に備えており、操作部86が変速機ケース18から外部に突き出す状態で変速機ケース18に移動操作可能に配設されているとともに、操作部86が往復移動させられることにより第2パーキングポール部材44が通常位置と手動解除位置との間を往復移動させられるため、パーキングロック状態を解除するだけでなく、必要に応じて再びパーキングロック状態に戻すことが可能であり、利便性が向上する。
また、ロック部材36に一対の第1ローラ62および第2ローラ64が配設されており、第1ローラ62がガイド部材54と係合させられることにより、ロック部材36がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制しつつ、そのロック部材36をロック位置とロック解除位置とへ移動させる一方、第2ローラ64はカム係合部としてカム凸部40cに係合させられる。このため、ロック部材36の移動に伴ってパーキングポール40が円滑にパーキングギヤ50に対して接近離間させられ、車両用パーキングロック機構10がパーキングロック状態とロック解除状態とに円滑に切り替えられる。また、第1ローラ62および第2ローラ64は互いに外周面が接触させられており、それ等の第1ローラ62および第2ローラ64を介してパーキングポール40からガイド部材54に荷重が伝達されるため、ロック部材36を簡単且つ安価に構成することができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図6~図9は車両用パーキングロック機構100を説明する図で、図6は図1に対応する図でパーキングロック状態の概略構成図、図7は図2に対応する図でパーキングポール102の正面図、図8は図4に対応する図でロック部材36がロック解除位置へ移動させられたロック解除状態を示した図、図9は図5に対応する図でロック解除部材80により第2パーキングポール部材44が手動解除位置へ移動させられたロック解除状態を示した図である。この車両用パーキングロック機構100は、パーキングポール102が前記実施例のパーキングポール40と相違しており、具体的には第2パーキングポール部材44に設けられたカム凸部102cが部分的にパーキングギヤ50と反対方向へ突き出す三角山形状を成していて、その両側に傾斜面102sa、102sbが設けられている。この実施例では、カム係合部である第2ローラ64およびカム凸部102cを含んでカム機構74が構成されている。
また、図7に示されているように、ポール軸46に近い側が手動解除位置で、ポール軸46から遠い側が通常位置とされており、図7の実線は第2パーキングポール部材44が手動解除位置へ移動させられた状態で、一点鎖線は第2パーキングポール部材44が通常位置へ移動させられた状態である。図6および図8は、第2パーキングポール部材44が通常位置に保持されている状態で、変速機ケース18にプラグ90が装着されてロック解除部材80の操作が不能とされた状態では、第2パーキングポール部材44が通常位置に保持される。この状態では、第2パーキングポール部材44は第1パーキングポール部材42と一体的にポール軸46の軸心Oまわりに回動させられる。したがって、SBW駆動モータ12によってロック部材36がロック解除位置とロック位置との間を往復移動させられると、カム凸部102cの一方の傾斜面102saと第2ローラ64との係合によりパーキングポール102は一体的にポール軸46の軸心Oまわりに回動させられ、車両用パーキングロック機構10が図6に示すパーキングロック状態と図8に示すロック解除状態とに切り替えられる。
一方、手動解除位置は、図6に示すようにロック部材36がロック位置へ移動させられた状態において、カム凸部102cとカム係合部である第2ローラ64との係合が解除される位置であり、図9に示すようにプラグ90を外してロック解除部材80の操作部86を矢印B方向へ押し込み操作すれば、第2パーキングポール部材44を手動解除位置へ移動させてパーキングロック状態を解除することができる。すなわち、第2パーキングポール部材44が手動解除位置へ移動させられてカム凸部102cと第2ローラ64との係合が解除されると、第1パーキングポール部材42はリターンスプリング48の付勢力に従ってポール軸46の時計まわり方向へ回動させられ、噛合い歯40pがパーキングギヤ50から抜け出すロック解除状態になる。図9では、第1パーキングポール部材42と第2パーキングポール部材44とが折れ曲がっているが、図7に実線で示すように第2パーキングポール部材44が手動解除位置とされた状態で、第1パーキングポール部材42と一体的にポール軸46の軸心Oまわりに回動させられるようにすることもできる。なお、図9の状態で操作部86を矢印Bと逆方向へ引っ張り操作すれば、カム凸部102cの他方の傾斜面102sbと第2ローラ64との係合によりカム凸部102cを第2ローラ64上に乗り上げさせて第2パーキングポール部材44を通常位置へ移動させることが可能で、図6のパーキングロック状態に戻すことができる。
このような車両用パーキングロック機構100においても、図9に示すようにロック解除部材80によって第2パーキングポール部材44を手動解除位置へ移動させることによりパーキングロック状態を解除することが可能で、実質的に前記実施例と同様の作用効果が得られる。
また、前記各実施例は何れもSBW駆動モータ12によりディテントプレート22を回動させてパーキングロック状態とロック解除状態とに切り替えるシフトバイワイヤ方式のパーキングロック機構であったが、図10に示すようにシフトレンジ選択装置であるシフトレバー112の操作に従ってリンクやケーブル等の連動装置114を介して機械的にディテントプレート22が回動させられる手動操作式のパーキングロック機構とすることもできる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。