JP7391533B2 - 溶接用Ni基合金および溶加材 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、溶接用Ni基合金および溶加材に関する。
近年、蒸気タービンにおいては、蒸気温度の高温化が図られており、それに伴い、蒸気タービンを構成する材料に対して、耐熱強度の向上が求められている。特に、現在開発が進められているA-USC(先進超々臨界圧)蒸気タービンでは、700℃を超える、もしくはそれに近い蒸気温度が想定されている。そのため、従来のCrMoV鋼などの耐熱低合金鋼の使用可能な温度を超えるため、Ni基合金の適用が検討されている。
このNi基合金として、例えば、600系合金などの適用が検討されている。蒸気タービンのタービンロータ材としては、例えば、617合金やTOS1X(東芝社製)などがある。また、タービンロータを構成する構成部品を溶接する際に使用される溶加材の代表的なものとして、例えば、617合金からなる溶加材などが使用されている。
特許第5703177号 特許第5254693号 特許第6323188号 特開2017-221965号公報
溶接学会論文集 第27巻 第2号 p144-148 (2009) Effect of Ce addition to filler metal on microcracking susceptibility of alloy 690 multipass wel metal K.Nishimoto,I.Woo and M.Shirai:Underlying Mechanism in the improvement of HAZ cracking Susceptibility by Rare Earth Metal Addition, -Study on Weldability of Cast alloy 718(Report8)-Quarterly,J.JWS,20-1,(2002),p87-95 Welding Jounal/August 2018,vol 98 page243-252 Savage W. F., and Lundin C.D.; "The Varestraint Test", The Welding Journal, October, 1965, pp. 433- 442. 溶接学会誌 2009年 78巻 4号 p.298-300
高温における強度特性が向上されたTOS1XなどのNi基合金に対し適用される、従来の617合金の溶加材では、その溶接に起因して凝固割れや液化割れが生じることが報告されており、継手品質上でいくつかの問題例が報告されている。また、TOS1Xのように高温の機械的特性が高い材料に対して使用するには、強度的に不十分である問題点がある。そのため、高温における強度特性を有し、かつ、高温割れ感受性を低減したNi基合金の溶加材が求められている。
これまでNi基合金溶接金属や溶接材料に関しては以下のような取り組みがなされている。Ni基合金溶接用材料に対する機械的性質向上の先行技術文献は多く知られている(例えば、特許文献1,3,4)。しかし、高温割れ感受性に関して合わせて具体的な記述のあるものはない。
一方、高温割れ感受性低減の取り組みとしては、近年Ni基合金の溶接材料にREMと呼ばれる希土類を、既存の成分系に添加して、高温割れの一つである液化割れ感受性を改善できることが分かっているが、凝固割れ感受性の低減には効果が乏しいことが分かっている(例えば、非特許文献1,2)。
また溶接高温割れを抑制する技術も提案されている(例えば、特許文献2)。当該技術ではREM添加によるNi基合金の凝固割れ感受性の低減も図っているが、REM添加に伴う液化割れ感受性および機械的性質への影響については不明である。
こうしたことを踏まえるに、REM添加により得られる効果は、添加する元材料の成分系により異なると考えられ、例えば溶接高温割れだけでなく熱間加工性を向上させることを意図して添加する場合もある(例えば、特許文献3)。このようにREM添加によるNi基合金の性能向上については、一義的な効果にとどまらない。
半面、Ni基合金においてREMを過剰に添加した場合、Niとの金属間化合物を生じ、性能が低下するという負の効果も報告されている(例えば、非特許文献1)。したがってNi基合金においてREM添加により、選択的に望ましい効果を享受することについては、REM添加量の調整、元材料の成分系のREM添加への適否判断や元材料成分調整を行う等が必要となり、容易ではない。
以上のように、Ni基合金の溶接金属または溶接材料については機械的性質に関する例は多数あるものの、溶接時の高温割れへの抑制の取り組みとしては例が少なく、特に凝固割れ、液化割れ双方において、既知の材料を凌駕する耐割れ性能を有した溶接金属を提供する溶接材料はない。
ここで、Ni基合金は低温から高温まで優れた機械的性質を有し、多くの場合、他の金属類に比して高価であるため、過酷環境下で使用される機器、またはそれらの重要な一部に使用される。加えてNi基合金が採用される機器の多くは公益性が高く、また安全であることを強く求められる機器である場合が多い。こうした重要機器の溶接部は通常、放射線透過検査や超音波探傷試験により溶接部内部に割れや空孔等有害な欠陥がないことが確認され、欠陥発見に至った場合は補修溶接を行い健全な溶接継手とし使用される。
しかしながら、高温割れに伴う割れは数十μm程度の微細なものもあり、現在の技術による検査や試験では検出が困難な場合がある。溶接部において高温割れを内在したままそれら機器の運用を行った場合、内在欠陥に起因して設計想定外の破壊に至る可能性もあり、そもそも想定しえないため、前触れなく破壊に至ったり、予想しえない規模の事故や損害を引き起こす可能性がある。こうした背景によりNi基合金の溶接部において高温割れの発生を抑制することは強く求められている。
上記の従来の事情を踏まえ本発明が解決しようとする課題は、高温機械的特性に優れ、かつ、従来の溶加材に比較して高温割れが生じづらく、溶接性および製造性に優れた溶接用Ni基合金および溶加材を提供することにある。
実施形態の溶接用Ni基合金は、質量%で、C:0.01~0.15、Cr:15~25、Co:9~15、Mo:8~12、Al:0.3~1.8、Ti:0.5~3、Ta:0.05~1.5、Nb:0.4以下、Si:0.01~0.5、Mn:0.5以下、N:0.02以下、REM:0.002~0.03、P:0.03以下、S:0.015以下、を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
バレストレイン試験装置の概略構成を示す図。 トランスバレストレイン試験の手順を説明するための図。 トランスバレストレイン試験の手順を説明するための図。 トランスバレストレイン試験の手順を説明するための図。 試験結果からBTRSCを求める方法を説明するための図。 ロンジバレストレイン試験の手順を説明するための図。 Ce添加量とBTRSCの関係を示すグラフ。 Ce添加量とBTRLCの関係を示すグラフ。
以下、実施形態に係る溶接用Ni基合金および溶加材について説明する。
実施形態に係る溶接用Ni基合金は、以下に示す組成成分範囲で構成される。なお、以下の説明において組成成分を表す%は、特に明記しない限り質量%とする。
質量%で、C:0.01~0.15、Cr:15~25、Co:9~15、Mo:8~12、Al:0.3~1.8、Ti:0.5~3、Ta:0.05~1.5、Nb:0.4以下、Si:0.01~0.5、Mn:0.5以下、N:0.02以下、REM:0.002~0.03、P:0.03以下、S:0.015以下、を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。
上記した成分範囲の溶接用Ni基合金は、例えば、溶接用の溶加材として使用することができる。例えば、Ni基合金からなるタービンロータ構成部材どうしを溶接する際の溶加材として使用することができる。また、Ni基合金からなるタービンロータ構成部材と、低合金鋼(例えば、CrMoV鋼や12Cr鋼)からなるタービンロータ構成部材とを溶接する際の溶加材として使用することができる。この溶加材は、TIG溶接などに使用される。
上記した溶加材を用いて溶接されるタービンロータとしては、例えば、700℃を超える、もしくはそれに近い高温蒸気環境下で使用可能なタービンロータなどが挙げられる。なお、この溶加材を用いて溶接される構成部品は、タービンロータの構成部品に限られるものではなく、例えば、700℃を超える、もしくはそれに近い高温蒸気環境下および高温二酸化炭素環境下で使用される他の構成部品であってもよい。
また、上記した組成成分範囲のNi基合金は、高温割れ感受性が低く、溶接性および製造性に優れている。このNi基合金を用いて作製された溶加材においても高温割れ感受性が低く、溶接性および製造性に優れている。
次に、上記した実施形態における溶接用Ni基合金における各組成成分範囲の限定理由を説明する。
(1)C(炭素)
Cは、強化相であるM23型炭化物の構成元素として有用であり、ピーニング効果によって結晶粒粗大化の抑制効果がある。また、Ti、Nb、REM(Ce、La、Nd)との炭化物を形成し、溶接凝固中の固相線温度を上昇させる効果があり、高温割れの抑制効果がある。Cの含有率が0.01%未満の場合には、炭化物の十分な析出量を確保することができないため、上記した効果を発揮できない。一方、Cの含有率が0.15%を超えると、製造性が低下する。そのため、Cの含有率を0.01~0.15%とした。また、Cの含有率を0.01~0.06%とすることがより好ましい。
(2)Cr(クロム)
Crは、Ni基合金の耐酸化性、耐食性および機械的強度を高めるのに不可欠な元素である。Crの含有率が15%未満の場合には、耐酸化性が低下する。一方、Crの含有率が25%を超えると、有害相であるσ相の析出により機械的強度が低下する。そのため、Crの含有率を15~25%とした。また、Crの含有率を15~21%とすることがより好ましい。
(3)Co(コバルト)
Coは、Ni母相内に固溶して、母相の機械的強度を向上させる固溶強化元素である。Coの含有率が9%未満の場合には、機械的強度が低下する。一方、Coの含有率が15%を超えると、熱間加工性が低下する。そのため、Coの含有率を9~15%とした。また、Coの含有率を9~13%とすることがより好ましい。
(4)Mo(モリブデン)
Moは、Ni母相中に固溶して、母相の機械的強度を向上させる固溶強化元素である。Moの含有率が8%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Moの含有率が12%を超えると、σ相析出により機械的強度を低下させる。そのため、Moの含有率を8~12%とした。また、Moの含有率を8~10%とすることがより好ましい。
(5)Al(アルミニウム)
Alは、Niとともにγ’(NiAl)相を生成し、析出によるNi基合金の機械的強度を向上させる。Alの含有率が0.3%未満の場合には、Ni母相中に完全に固溶するため、γ’(NiAl)相による効果が得られない。一方、Alの含有率が1.8%を超えると、σ相析出が助長され、機械的強度を低下させる。さらに、γ’(NiAl)相の生成によって固溶温度が上昇し、熱間加工性が低下する。そのため、Alの含有率を0.3~1.8%とした。また、Alの含有率を0.9~1.7%とすることがより好ましい。
(6)Ti(チタン)
Tiは、γ’(NiAl)相中のAlと置換して(Ni(Al,Ti))となり、γ’相の固溶強化に役立つ元素である。Tiの含有率が0.5%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Tiの含有率が3%を超えると、σ相析出が引き起こされ、熱間加工性が低下する。そのため、Tiの含有率を0.5~3%とした。Tiの含有率を0.5~2%とすることがより好ましい。
(7)Ta(タンタル)
Taは、γ’(Ni(Al,Ti))相に固溶して、γ’相を強化し、γ’相の安定化を図ることができる。Taの含有率が0.05%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Taの含有率が1.5%を超えると、溶接性および熱間加工性が低下する。そのため、Taの含有率を0.05~1.5%とした。また、Taの含有率を0.05~0.1%とすることがより好ましい。
(8)Nb(ニオブ)
Nbは、Taと同様に、γ’(Ni(Al,Ti))相に固容して、γ’相を強化し、安定化させる。Nbの含有率が0.4%を超えると、液化割れ感受性が高まる。そのため、Nbの含有率を0.4%以下とした。また、Nbの含有率を0.2~0.3%とすることがより好ましい。ここで、Nbの上記効果を得るために、Nbは、少なくとも0.2%以上含有される。
(9)Si(ケイ素)
Siは、湯流れを向上させる効果がある。Siの含有率が0.01%未満の場合には、この効果が得られない。一方、Siの含有率が0.5%を超えると、溶接性を低下させる。そのため、Siの含有率を0.01~0.5%とした。また、Siの含有率を0.01~0.25%とすることがより好ましい。
(10)Mn(マンガン)
Mnは、脆性に起因するS(硫黄)とMnSとなり、脆性を防止し、湯流れを向上させる効果がある。一方、Mnの含有率が0.5%を超えると、溶接性を低下させる。そのため、Mnの含有率を0.5%以下とした。また、Mnの含有率を0.15~0.4%とすることがより好ましい。ここで、Mnの上記効果を得るために、Mnは、少なくとも0.1%以上含有される。
(11)N(窒素)
Nは溶融金属の凝固過程において(Ti、Nb)(N、C)の複合化合物の生成を促す。その結果、凝固中の相形成およびその形成順序に影響を与える。このため、凝固温度域の拡大を引き起こし、凝固割れ感受性を増大させる。これを抑制するため、0.02%以下とした。さらに望ましいのは0.01%以下である。
(12)REM(表1におけるCe)
REMはSc、Yおよびランタノイド(原子番号57~71)の総称である。REMはミッシュメタルと呼ばれる複数種類のREMの混合物として添加してもよいし、分離された1種又は2種以上の元素で添加してもよい。なお含有量としては0.002~0.03%が望ましい。Ce、La、NdをはじめとするREMは金属組織中の粒内においてP,Sと共に微細生成相を生じることによりP,Sの粒界偏析を抑制し、粒界結合力を向上させる。また、溶接時の凝固中に化合物を形成することにより固相線温度をあげる効果がある。そのためCe、La、NdをはじめとするREMは溶接部の凝固割れ感受性を低減させるのに有用な元素でありその含有量としては0.002%以上が望ましい。一方REMを過剰に添加した場合、上記効果が飽和してしまうことに加えて、低融点の金属間化合物であるREM-Ni金属間化合物が形成され粒界の結合力低下を招き高温割れ感受性が増大する。そのため0.03%以下とした。
(13)P(リン)、S(硫黄)
P、Sは、実施形態における溶接用Ni基合金においては、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。また、これらの不可避的不純物のうち、少なくとも、Pは0.03%以下、およびSは0.015%以下に抑制されることが好ましい。
PおよびSは、融点を降下させるとともに、Niと低融点の共晶を形成するため、割れ感受性が高まる。そのため、Pの含有率を0.03%以下およびSの含有率を0.015%以下とし、可能な限りそれぞれの残存含有率を0%に近づけることがさらに望ましい。なお、PやSの含有率が上記範囲を超える場合には、脱リン処理や脱硫処理を施し、上記範囲内の含有率とする。
ここで、実施形態における溶接用Ni基合金、およびこの溶接用Ni基合金を用いて製造される溶加材について説明する。実施形態における溶接用Ni基合金は、この溶接用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、その溶湯を所定の型枠に注入して鋳塊を形成すること等で作製する。
また、実施形態の溶加材は、実施形態における溶接用Ni基合金を構成する組成成分を真空誘導溶解(VIM)し、その溶湯を所定の型枠に注入して鋳塊を形成し、その鋳塊を機械加工した部材を線引き加工して、ワイヤ状にすること等で作製する。
次に、実施形態の化学組成範囲にあるNi基合金が、高温割れ感受性が低いことを説明する。表1は、高温割れ感受性の評価に用いられた試料の化学組成を示す。これらのうち、実施例1~3は実施形態の化学組成範囲にあるNi基合金であり、比較例1~3は、その組成が実施形態の化学組成範囲にないNi基合金である。
Figure 0007391533000001
表1に示す実施例1~3及び比較例1~3は、高温割れ感受性を評価する試験に供したものであり、表1に示す化学組成を有する。なお、表1に示す溶接用Ni基合金において、Cu(銅)、B(ホウ素)、Fe(鉄)は、不可避的不純物に相当するものである。後述するJIS Z 3334 SNi6617では、Cu(銅)は、0.5以下、Feは、3.0以下とされている。
高温割れ感受性評価試験は、非特許文献4及び非特許文献5に記載のあるバレストレイン試験により実施した。トランスバレストレイン試験により得られるBTRSCは凝固割れ感受性を、ロンジバレストレイン試験により得たBTRLCは液化割れ感受性を示す指標として広く知られており、それぞれ値が小さい方が、高温割れが生じづらい。
ここで実施例の凝固割れ感受性を評価するために用いたトランスバレストレイン試験について説明する。凝固割れは、溶融金属が凝固する過程中、液相―固相が混在する凝固最終状態で凝固収縮力に耐えきれず開口し、そのまま凝固することにより生じる。
前述の液相―固相混在領域を温度の観点から見た場合、凝固開始まもなく通過する極めて延性が低くなる温度領域(凝固脆性温度域)を含んでおり、そのため液相―固相混在領域が広いほど凝固割れが生じやすい。例えば同一の組成を有する溶接基材に対してより高い入熱で溶接を行った場合は、被溶接基材がより加熱され、溶融部の冷却に時間を要するため凝固に要する時間が長くなることから、溶融部位の液相―固相混在領域が広くなり、凝固割れが生じやすくなる。
トランスバレストレイン試験では、液相―固相混在領域を発生させ、その領域に強制的に割れを発生させることにより、その割れ長さを通して液相固相混在領域を測定し凝固脆性温度域(Brittleness Temperature Range)を得る試験手法である。液相―固相混在温度領域と凝固脆性温度域は厳密には異なるが、便宜上同一とみなす。トランスバレストレイン試験の結果から得られる指標をBTRSCと表記する。
次にトランスバレストレイン試験の手順を説明する。図1にバレストレイン試験装置100の構成を示す。バレストレイン試験装置100は、試験片を曲げることで規定のひずみが与えられるよう試験片との接触面に規定の曲率(R)を有するベンディングブロック101、試験片をベンディングブロック101に押し当て塑性変形をさせるのに十分な押し当て力を有する可動式のヨーク102、溶接用アークを発生させ試験片上で溶融池を形成させることを目的とした溶接トーチ103で構成される。
トランスバレストレイン試験実施時は図2に示すように、ヨーク102とベンディングブロック101の間に評価対象の試験片110を挟み、その後、溶接トーチ103と試験片110との間にアークを発生させ試験片表面を溶融させる。次にアークを発生させたまま溶接トーチ103を規定の速度で図3に示すように規定位置まで移動させる。次に図4に示すように規定位置到達後は、アークを消弧させると同時にヨーク102を押し下げる。この結果、試験片110が溶接線の方向に沿って規定の曲率に曲がり、溶融面に指定のひずみが生じるため、溶融池近傍に強制的に割れを発生させることができる。
なおアーク消弧時の溶融池近傍の状態としては、溶接トーチ103直下では消弧前に形成された溶融池により完全な液相だが、トーチ進行方向と逆に向かうと、凝固開始に伴い液相―固相が混在する領域があり、やがて完全に凝固が完了した固相状態となる。試験実施で生じた割れは液相―固相混在領域に生じる。
次に、試験実施により得られた割れからBTRSC導出する方法について説明する。図5(a)にアーク消弧時概念図、図5(b)に再溶融部の溶融池境界からの距離-温度の関係を表すグラフを示す。なお、図5(b)のグラフの上部には、図5(a)に示す溶融池を含むA部を拡大して示してある。まず、試験実施により得られた割れのうち最大の長さの割れ(例えば図5(b)に示す割れ110a)を選定し長さを計測する。その後、事前に同一の試験条件で取得しておいた図5(b)に示される、アーク消弧時の溶融池からの各距離における温度分布と、測定した割れ長さより、割れの起点・終点の各温度が導出される。ここで得られた起点・終点の温度の差をBTRSCとして表記する。BTRSCの値が小さいほど、割れ感受性が低く、耐凝固割れ性を有する。なお本指標は同種の材料間での相対比較に用いるのが一般的である。
次に、液化割れ感受性を評価するために用いたロンジバレストレイン試験について説明する。液化割れは、溶接時の加熱により粒界で低融点化合物や共晶を生成したり、成分偏析が生じると共に溶融され、凝固時の収縮ひずみにより開口し生じる。発生する箇所は凝固割れと異なり被溶接基材であり、溶接熱影響部粗粒域で生じるため、液化割れ感受性評価を行うロンジバレストレイン試験では、試験片110を図6(a)に示すように配置し、溶接トーチ103を図中矢印で示す方向に進行させる。アークを発生させた後、割れ長さから起点・終点の温度差を得る手法についてはトランスバレストレイン試験と同様でありその結果をBTRLCとして表記する。BTRLCの値が小さいほど、割れ感受性が低く、耐液化割れ性を有する。なお本指標は同種の材料間での相対比較に用いるのが一般的である。
表1に示す化学組成を有する実施例1~3、比較例1~3はNi基合金をそれぞれ真空誘導溶解炉にて溶解し、鋼塊を作製し、この鋼塊を熱間鍛造した後、所定のサイズの部材にするよう機械加工等を行ったもので、これら試料を用いてトランスバレストレイン試験を実施した。その結果を表2内のBTRSC及び図7のグラフに記載した。ここで実施例1~3は実施形態に記載の成分を有するものである。
一方、比較例1はJIS Z 3334 SNi6617を満足する市販されている製品の標準の成分を有している。また比較例2、3は、Ceを含まない点のみが相違し、他の成分については、実施例1~3と同様な成分を有している。
Figure 0007391533000002
表2及び図7のグラフに示されるように、比較例1~3と比べいずれの実施例1~3もBTRSCが低下しており、凝固割れ感受性が低いことが分かる。また実施例1はCeを20ppm添加したものであり、実施例1~3中最小のCe添加量であるが比較例1~3のいずれに対してBTRSCの低下が確認できる。
次に、液化割れ感受性を評価するためにロンジバレストレイン試験を実施した結果をBTRLCとして表2および図8のグラフに示す。実施例1~3と比較例1を比較すると、BTRLCにおいても実施例1~3のほうがその値が小さいことが分かる。また、比較例2、3との比較においても、実施例1~3のBTRLCが悪化していないことが分かる。ここで実施例1~3は市販材(比較例1)に比べて凝固割れ、液化割れ感受性共に低く高温割れ感受性に優れると言える。また、実施例1~3と比較例2、3を比較した場合、BTRSCは実施例1~3の方が値が小さく、BTRLCは差異がないことから、実施例1~3は、比較例2、3に総じて高温割れ感受性に優れると言える。
一方、図7、8のグラフから、Ceの添加量増加に伴い、BTRSC、BTRLC共に上昇の傾向が見られ、先に説明した通り過剰添加は高温割れ感受性に悪影響を及ぼすことが分かる。そのためCe添加の上限は300ppmが望ましく、さらに望ましいのは200ppm以下である。なおバレストレイン試験実施条件は表3に示す。これらより実施形態に係る溶接用Ni基合金および溶加材によれば、従来のNi基合金および溶加材と比較して、高温割れ感受性に優れることが分かる。
Figure 0007391533000003
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100……バレストレイン試験装置、101……ベンディングブロック、102……ヨーク、103……溶接トーチ、110……試験片。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.01~0.15、Cr:15~25、Co:9~15、Mo:8~12、Al:0.3~1.8、Ti:0.5~3、Ta:0.05~1.5、Nb:0.4以下、Si:0.01~0.5、Mn:0.5以下、N:0.02以下、REM:0.002~0.03、P:0.03以下、S:0.015以下を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることを特徴とする溶接用Ni基合金。
  2. 請求項1記載の溶接用Ni基合金であって、
    前記REMは、少なくともCeを含む
    ことを特徴とする溶接用Ni基合金。
  3. 請求項1又は2に記載の溶接用Ni基合金を用いて作製されたことを特徴とする溶加材。
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Citations (6)

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