JP7361715B2 - 高純度コレステロールの製造方法 - Google Patents
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Description
市販のコレステロール中には、コレステロールの構造と類似する数種類の不純物が含まれ、たとえば、デスモステロール、ジヒドロコレステロール、またはラトステロール等が知られる。
(製造方法)
[1] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させ、生じるデスモステロール誘導体を晶析により分別除去することを含む、デスモステロールを実質的な量で含まない高純度コレステロールの製造方法。
[2] 高純度コレステロールの製造方法であって、下記工程:
1)デスモステロール(desmosterol)を含むコレステロールを、水および有機溶媒中でハロゲン化試薬と混合して、デスモステロールをハロゲン化試薬および水と反応させ(工程1)、
必要に応じて、得られた反応液に、還元剤を加えて脱色する;
2)必要に応じて、反応後に、水層を除去する(工程2);
3-1)反応後に有機層をそのまま次の工程に用いる、または、
3-2)有機層を、部分濃縮または完全に濃縮乾固して粗反応生成物を得る(工程3);
4)3-1)の有機層、または3-2)の粗反応生成物に、有機溶媒を加え、当該有機溶媒中で晶析させる(工程4)、
ことを含む、該製造方法(以下、「本発明の製造法」とも呼称する。)。
[2-2] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応(項[2]の工程1))を、約0℃~約100℃の温度で、約10分間~約12時間行う、[1]または[2]記載の製造方法。
[2-3] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応(項[2]の工程1))を、約0℃~約60℃の温度で、約30分間~約3時間行う、[1]または[2]記載の製造方法。
[2-5] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応(項[2]の工程1))において用いられるハロゲン化試薬が、N-ヨードスクシンイミド(NIS)またはヨウ素である場合に、亜硫酸ナトリウムまたはギ酸ナトリウムを加えて脱色することを含む、[1]または[2]記載の製造方法。
[2-6] 更に、5)前記4)において晶析したコレステロールを含む析出物を更に有機溶媒で洗浄して、精製されたコレステロールを得る(工程5)、および/または、
6)前記4)または5)において得られたコレステロールを、コレステロールに対する溶解度が高い溶媒中に溶解し、その後に溶液中にコレステロールに対する溶解度が低い溶媒を加えることによって、コレステロールの結晶を析出させる(工程6)、
ことを含む、[1]または[2]記載の製造方法。
[3-2] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応(項[2]の工程1))において用いられるハロゲン化試薬が、N-ヨードスクシンイミド(NIS)である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[3-4] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応(項[2]の工程1))において用いられる有機溶媒が、エーテル類である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[3-5] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応(項[2]の工程1))において用いられる有機溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4-2] デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応(項[2]の工程1))において用いられるハロゲン化試薬が、コレステロール中に含まれるデスモステロールの1モルに対して、約1モル~約4モル当量である、[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5-2] 晶析(項[2]の工程4))において用いられる有機溶媒が、エーテル類、ケトン類、エステル類、およびアルコール類からなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒である、[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5-3] 晶析(項[2]の工程4))において用いられる有機溶媒が、THF/メタノール、メタノール、ブタノール、酢酸エチル、またはアセトンである、[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5-4] 晶析(項[2]の工程4))において用いられる有機溶媒が、THF/メタノールである、[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5-5] 晶析(項[2]の工程4))において用いられる有機溶媒が、THFとメタノールの容量比が1:3であるTHF/メタノール混合液である、[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5-8] 晶析(項[2]の工程4))における晶析を、約0℃~約30℃の温度で行う、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6-2] 高純度コレステロールが、約99%以上の純度を有するコレステロールである、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7] [1]乃至[6]のいずれか1つに記載の製造方法で得られる、約1%以下の含有量のデスモステロールを含む、高純度コレステロール。
[7-2] [1]乃至[6]のいずれか1つに記載の製造方法で得られる、約0.3%以下の含有量のデスモステロールを含む、高純度コレステロール。
[8] 微量のコレステロールのハロゲン化誘導体を含む、[7]に記載の高純度コレステロール。
[9] コレステロールおよびデスモステロールを含む混合物を、ハロゲン化試薬および水と反応させ、続いてコレステロールを晶析することにより、コレステロールとデスモステロールとを分離する方法。
(定義)
以下に、本明細書および特許請求の範囲中で使用する用語の定義を示す。
デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させ、生じるデスモステロール誘導体を晶析により分別除去することを含む、デスモステロールを実質的な量で含まない高純度コレステロールの製造方法である。
本願発明の製造方法によれば、1)デスモステロールを主不純物として含むコレステロールの混合物を、ハロゲン化試薬および水と反応させることにより、コレステロールは反応せず、デスモステロールのみを選択的に反応させて誘導体化させることができる;2)デスモステロールを、コレステロールとは物理学性質(例えば、溶解度)が大きく相違する誘導体に変換することができる;3)有機合成において通常使用される有機溶媒を用いて、コレステロールとデスモステロールの誘導体を晶析によって容易に分離して、デスモステロールの誘導体を除去することができる;4)従来の精製方法(例えば、再結晶法)と比べて、コレステロールとデスモステロールとを極めて容易に且つ高効率で分離することができ、デスモステロールの除去効率が極めて大きく改善される;5)デスモステロールの含量を極めて少ない量にまで低減することができ、実質的な量のデスモステロールを含まない、高純度のコレステロールを、高収率で且つ高効率で得ることができる、との利点を有する。
高純度コレステロールの製造方法であって、下記工程:
工程1)デスモステロールを含むコレステロールを、水および有機溶媒中でハロゲン化試薬と混合して、デスモステロールをハロゲン化試薬および水と反応させ、
必要に応じて、得られた反応液に、還元剤を加えて脱色する;
工程2)必要に応じて、反応後に、水層を除去する;
工程3-1)有機層をそのまま次の工程に用いる、または、
工程3-2)有機層を、部分濃縮または完全に濃縮乾固して粗反応生成物を得る;
工程4)3-1)の有機層、または3-2)の粗反応生成物に有機溶媒を加えて、コレステロールを晶析する、
ことにより、精製されたコレステロールを得る。
工程1において、反応容器中、デスモステロールを含むコレステロールを、水および有機溶媒中に懸濁させ、該懸濁液中にハロゲン化試薬を加え、デスモステロールを選択的にハロゲン化試薬および水と反応させて、上述の通り、デスモステロールを、その極性化合物誘導体(例えば、デスモステロール内のアルケン部分にハロゲン原子およびヒドロキシ基が付加した化合物)に変換する。
反応時間は、使用するハロゲン化試薬の種類および反応温度によって変わり得るが、例えば、約10分間~約12時間(例えば、約30分間~約3時間)で行う。
クエンチの操作は、工程1の反応温度と同様な温度で、例えば約0℃~約100℃(例えば、約20℃~約60℃)で行うことができる。
必要に応じて、工程1の反応後(または脱色操作後)の反応液から水層を除去する。該水層中には、例えば、過剰量のハロゲン化試薬とその分解物、および無機塩が含まれ得る。水層の除去は、分離操作(例えば、分液ろうと)により行うことができる。
工程2において水層を除去して得られる有機層をそのまま工程4に用いるか(工程3-1))、または有機層を、部分濃縮または完全に濃縮乾固して粗反応生成物を得る(工程3-2)。
工程3-1の場合、工程2において得られた有機層は、次の工程4において用いる前に、一般的に有機合成において用いられる乾燥剤(例えば、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム)を用いて乾燥してもよい。
別法として、工程3-2の場合、工程2において得られた有機層を、部分濃縮または完全に濃縮乾固(例えば、エバポレーターを用いる減圧下での濃縮乾固)して、粗反応生成物を得る。
前記工程3-1の有機層、または工程3-2の粗反応生成物に、有機溶媒を加えて当該有機溶媒中でコレステロールを晶析する。
次いで、コレステロールの結晶化を促進させるために晶析液を冷却してもよい。
冷却の温度としては、コレステロールの結晶が成長する低い温度であればよく、例えば、-15℃~約10℃が挙げられ、好ましくは約0℃~約10℃(典型的には、約0℃~約5℃)が挙げられる。よって、冷却する場合には、晶析の操作時の温度は、例えば約-15℃~約60℃、好ましくは約0℃~約30℃が挙げられる。
また、冷却時間は、コレステロールの結晶が十分に成長する期間であればよいが、例えば、約10分間~約数日間が挙げられ、好ましくは約30分間~約12時間(典型的には、約1時間以上)が挙げられる。
工程4において用いられる有機溶媒の量は、目的物としてのコレステロールに対して適量であれば特に問題とならないが、量が多すぎる場合には、収率が低下し、一方で、少なさすぎる場合には、晶析するコレステロールの流動性が悪く、操作性が悪化し、且つ不純物が残存する恐れがある。
典型的には、工程5において、まず工程4において得られた析出物を含む反応液について、析出物をろ過する。次いで、ろ取した物を有機溶媒で洗浄する。洗浄後の湿結晶を乾燥(約50℃~約60℃)して、目的物としての精製されたコレステロール、すなわち、高純度コレステロールを得る。
上記本発明の製造により製造される、精製(された)コレステロールとは、約1%以下の含有量のデスモステロールを含み、適宜、微量の製造時に使用したハロゲン化試薬との反応に由来する、コレステロールのハロゲン化誘導体を含む、高純度コレステロールである。また、該精製コレステロールとは、GC測定時の面積百分率として約0.3%以下、LC測定時の面積百分率として約1.0%以下のデスモステロールしか含まず、適宜、微量のコレステロールのハロゲン化誘導体を含んでもよい、約98%以上の純度を有するコレステロールである、ことが好ましい。ここで、ハロゲン化誘導体の微量とは、検出可能な限度の量を意味し、例えば、GC測定時の面積百分率として約1%以下、約0.5%以下、約0.1%以下の量を意味する。
工程1において用いられるハロゲン化試薬がNISまたはI2であって、工程1において用いられる有機溶媒がTHFであって、工程3が工程3-1であり、工程4において用いられる有機溶媒がTHF/メタノールである、製造方法を提供する。
工程1において用いられるハロゲン化試薬がNBSであって、工程1において用いられる有機溶媒がTHFであって、工程3が工程3-1であり、工程4において用いられる有機溶媒がTHF/メタノールである、製造方法を提供する。
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL)(コレステロール純度が、HPLC測定時の面積百分率として約89%、GC測定時の面積百分率として96%であり、そして、デスモステロール含量が、HPLC測定時の面積百分率として約8%、GC測定時の面積百分率として約3%である))を、下記の実施例および比較例において用いた。
N-ヨードスクシンイミド(NIS)を用いる製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 10g(25.9mmol)を、THF 34mLに溶解後、水 20g(1.1mol)およびNIS 0.6g(2.6mmol)を加え、混合物を50℃で1時間撹拌反応させた。
反応液に、亜硫酸ナトリウム 0.5gを加えて有機層を脱色後、水層を除去した。有機層に、50~60℃でメタノール 76mLを加えた後に、混合物を5℃以下まで冷却し、その後に0~5℃で1時間以上保ち、結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール 13mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、精製コレステロール 8.5g(収率85%)を得た。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した。結果を表1に示す。
N-ブロモスクシンイミド(NBS)を用いる製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 10g(25.9mmol)を、THF 34mLに溶解後、水 20g(1.1mol)およびNBS 0.2g(1.3mmol)を加え、混合物を20℃で1時間撹拌反応させた。
反応後に、水層を除去した。有機層に、50~60℃でメタノール76mLを加えた後に、混合物を5℃以下まで冷却し、その後に0~5℃で1時間以上保ち、結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール 13mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、精製コレステロール 8.3g(収率83%)を得た。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した。結果を表1に示す。
ヨウ素(I2)を用いる製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 10g(25.9mmol)を、THF 34mLに溶解後、水 20g(1.1mol)およびヨウ素 0.7g(2.6mmol)を加え、混合物を50℃で2時間撹拌反応させた。
反応液に、亜硫酸ナトリウム 0.5gを加えて有機層を脱色後、水層を除去した。有機層に、50~60℃でメタノール 76mLを加えた後に、混合物を5℃以下まで冷却し、その後に0~5℃で1時間以上保ち、結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール 13mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、精製コレステロール 8.3g(収率83%)を得た。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した。結果を表1に示す。
N-ヨードスクシンイミド(NIS)を用いる製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 1.5kg(25.9mmol)を、THF 4.5kgに溶解後、水3.0kg(1.1mol)およびNIS 87.3g(2.6mmol)を加え、混合物を50℃で2.5時間撹拌反応させた。
反応液に、10%亜硫酸ナトリウム水溶液 750gを加えて有機層を脱色後、水層を除去した。有機層を20%食塩水 1.5kgで洗浄・分液したのち冷却し、室温で5%含水メタノール 9.0kgを加え、混合物を5℃以下まで冷却した。その後、0~5℃で1時間以上保ってから析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール 1.5kgで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、精製コレステロール 1.28kg(収率85%)を得た。
得られた精製コレステロールをガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した結果、純度:99.3%、デスモステロール含有量:0.04%であった。
また、この精製コレステロールを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定した結果では、純度:99.0%、デスモステロール含有量:0.2%であった。
N-ヨードスクシンイミド(NIS)を用いる製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 50g(12.9mmol)を、THF100gと水150gの混合溶媒に溶解させ、NIS 2.9g(13mmol)を加え、混合物を50℃で4時間撹拌反応させた。
反応液に、20%ギ酸ナトリウム水溶液17.5gを加えて有機層を脱色後、水層を分液除去した。有機層を少量の水で洗浄した後、5%含水メタノール370mLを滴下して晶析した。得られたスラリーを5℃以下まで冷却し、その後に0~5℃で1時間以上保った後、析出物をろ過した。得られた析出物をメタノール 60mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、45gの精製コレステロールを得た(収率:90%)。
得られた精製コレステロールを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定した結果、純度:99.0%、デスモステロール含有量:0.2%であった。
晶析のみの製造方法(つまり、ハロゲン化試薬を用いない製造方法)
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 6g(15.5mmol)を、THF 20mLに溶解後、50~60℃でメタノール 46mLを加え、混合物を5℃以下まで冷却した。その後、混合物を0~5℃で1時間以上保ち、結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール8mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、精製コレステロール 4.5g(収率75%)を得た。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した。結果を表1に示す。
晶析のみの製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 6g(15.5mmol)を、メタノール91mLに投入し、混合物を60℃で1時間保持した。その後、混合物を、30℃以下まで冷却し、20~30℃で1時間以上保ち結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール4mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、精製コレステロール5.7g(収率95%)を得た。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した。結果を表1に示す。
晶析のみの製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 3g(7.8mmol)を、1-ブタノール15mLに加熱溶解させた後、20~25℃まで冷却し、この温度を1時間以上保持し結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物を1-ブタノール2mLで洗浄後に、減圧乾燥し、精製コレステロール 2.1g(収率70%)を得た。
晶析のみの製造方法
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL) 12g(31mmol)を、トルエン28mLとメタノール10mLの混合溶媒に溶解させた後、メタノール180mLを加えて晶析したのち、0~5℃まで冷却し、この温度を1時間以上保持した。析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール約7mLで洗浄した後に、減圧乾燥し、精製コレステロール 9.8g(収率82%)を得た。
この精製コレステロールを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定した結果は、純度:93.1%、デスモステロール含有量:6.0%であった。
一方で、比較例としてハロゲン化試薬を用いない場合には、得られたコレステロールの純度は約98%以下であり、また、コレステロール中のデスモステロールの含有量は、有意な量であった。
次に、本発明の製造方法において、ハロゲン化試薬と反応させた反応混合物の晶析処理時の晶析溶媒の影響について調べた。具体的には、晶析溶媒として下記の表2に示す各種の溶媒を用いて、得られた精製コレステロールの純度、およびデスモステロールの含有量を調べた。
反応液に、亜硫酸ナトリウム 3.5gを加えて有機層を脱色後に、水層を除去した。有機層を、濃縮乾固し、粗コレステロール(純度96.19%、デスモステロール検出されず(ND))を得た。続いて、該粗コレステロールに対して、各種溶媒での晶析を行った。各溶媒を用いた場合の実施例を、実施例6~実施例17として示す。
粗コレステロール 5.5g(13.0mmol)に、コレステロール純分に対して2倍量のTHFおよび6倍量のメタノールを加え、加熱溶解させた。混合物を5℃以下まで冷却後、0~5℃で1時間以上保ち結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物を減圧乾燥し、精製コレステロールを得た(実施例16)。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって測定した。
以下同様の方法にて、それぞれの晶析溶媒毎の純度を確認した。実験結果を、表2に示す。
N-ヨードスクシンイミド(NIS)を用いる製造方法において、前記実施例1等で用いるTHF/水の溶媒を、各種有機溶媒に変えて、コレステロールの純度の向上、およびデスモステロールの含量の減少について、溶媒の影響を調べた。
市販コレステロール(日本精化(株)品:商品名CHOLESTEROL)5g(12.9mmol)を、有機溶媒20gと水10gの混合溶媒に懸濁させ、NIS 0.3g(1.3mmol)を加え、混合物を50℃で3時間撹拌反応させた。
反応液に、20%ギ酸ナトリウム水溶液1.75gを加えて有機層を脱色後、水層が分離するものは水層を除去した。反応液(有機層)を、メタノールで50mLに希釈し、混合物を5℃以下まで冷却し、その後に0~5℃で1時間以上保ち、結晶を析出させた。析出物をろ過し、分離した析出物をメタノール 7mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、精製コレステロールを得た。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定した。結果を表3に示す。
さらに、高純度のコレステロールを得るため、実施例4で調整した精製コレステロールを用いて、追加精製操作を行った。
精製コレステロール(実施例4の精製コレステロール) 12gを、数種の良溶媒に溶解しておき、貧溶媒を加えて結晶を析出させた。精製したスラリーを5℃以下まで冷却し、その後に0~5℃で1時間以上保った後、析出物をろ過した。得られた析出物を貧溶媒 10mLで洗浄した。析出物を減圧乾燥し、高純度の精製コレステロールを得た。
得られた精製コレステロールの純度およびデスモステロールの含有量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定した。結果を表4に示す。
追加精製前の各コレステロール原料の、コレステロール純度およびデスモステロール含量は、以下のとおりであった(以下、純度と含量は、HPLC測定時の面積百分率の値を記載した)。
ヨウ素化処理して得られたコレステロール原料(エントリー18~22で使用):
純度99.04 %、デスモステロール含量 0.19 %
低純度品のコレステロール(コレステロール純度が78.5%であり、そして、デスモステロール含量が12.3%である)をヨウ素化処理して得られたコレステロール原料(エントリー23で使用):
純度98.0 %、デスモステロール含量 0.6 %
ヨウ素化処理なしで得られたコレステロール原料(エントリー24で使用):
純度93.1 %、デスモステロール含量 6.0 %
上記の結果、エントリー18~22の場合、実施例4で得られたヨウ素化処理して得られたコレステロールを原料として用いて、追加精製を行った場合には、約99.5%程度の高純度コレステロールを得ることができた。また、エントリー23の場合、低純度のコレステロール原料を用いても、ヨウ素化処理することによって、有意な程度の高い純度および有意な程度の低いデスモステロール含量を有するコレステロールを得ることができるため、追加精製を行った場合には、約99.0%近い純度のコレステロールを得ることができた。
一方で、エントリー24として、ヨウ素化処理をせずに得られたコレステロールを原料に用いた場合には、追加精製を行っても95%以上の高純度のコレステロールを得ることはできなかった。
この結果より、本発明の製法におけるハロゲン化(例えば、ヨウ素化)処理した場合には、出発原料のコレステロール中に含まれるデスモステロールの含量を有意に低下させることができるため、続く、本実施例に示す追加精製により更にコレステロールの純度を向上することができることが分かった。一方で、ヨウ素化処理をせずに得られたコレステロールを用いた場合には、出発原料のコレステロール中に含まれているデスモステロールの含量を低下することができないために、本実施例の追加精製を行ってもコレステロールの純度を更に向上することが難しく、95%以上の純度を有するコレステロールを得ることはできなかった。
Claims (5)
- デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させ、生じるデスモステロール誘導体を晶析により分別除去することを含む、デスモステロールを実質的な量で含まない高純度コレステロールの製造方法、
高純度コレステロールとは、ガスクロマトグラフィー(GC)法による測定時の面積百分率として、純度が98%以上のコレステロールを意味し、また、
実質的な量で含まない、とは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法による測定時の面積百分率として、1.0%以下であることを意味する、
該製造方法。 - 高純度コレステロールの製造方法であって、下記工程:
デスモステロールを含むコレステロールを、水および有機溶媒中でハロゲン化試薬と混合して、デスモステロールをハロゲン化試薬および水と反応させ、
必要に応じて、得られた反応液に、還元剤を加えて脱色する
2)必要に応じて、反応後に、水層を除去する;
3-1)反応後に有機層をそのまま次の工程に用いる、または、
3-2)有機層を、部分濃縮または完全に濃縮乾固して粗反応生成物を得る;
4)3-1)の有機層、または3-2)の粗反応生成物に、有機溶媒を加え、当該有機溶媒中で晶析させる;
ことを含み、
高純度コレステロールとは、ガスクロマトグラフィー(GC)法による測定時の面積百分率として、純度が98%以上のコレステロールを意味する、
該製造方法。 - デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応において用いられるハロゲン化試薬が、N-ヨードスクシンイミド(NIS)、N-ブロモスクシンイミド(NBS)、臭素、ヨウ素、N-ブロモフタルイミド、N-ブロモサッカリン、N-ブロモアセトアミド、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、ジブロモイソシアヌル酸、トリメチルフェニルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ピリジニウムブロミドペルブロマイド、4-ジメチルアミノピリジニウムブロミドペルブロミド、1-ブチルー3-メチルイミダゾリウムトリブロミド、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセンヒドロゲントリブロミド、N-ヨードフタルイミド、N-ヨードサッカリン、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン、ピリジン一塩化ヨウ素、ジクロロヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、およびジクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウムからなる群から選ばれる1種以上の求電子的ハロゲン化試薬である、請求項1または2に記載の製造方法。
- デスモステロールを含むコレステロールをハロゲン化試薬および水と反応させる反応において用いられるハロゲン化試薬が、コレステロール中に含まれるデスモステロールの1モルに対して、1モル~10モル当量である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 晶析において用いられる有機溶媒が、エーテル類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭素類、炭化水素類、アミド類、ニトリル類、およびアルコール類からなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
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