JP2005097201A - 脂環式ケトン化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】脂環式アルコール化合物を原料として硫酸により酸化して高収率で脂環式ケトン化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】1−アダマンタノールや2−アダマンタノールなどの脂環式アルコール化合物を、溶媒中または無溶媒で、硫酸を用いて硫酸酸化して2−アダマンタノンなどの脂環式ケトン化合物を製造する際に、硫酸濃度が90〜94重量%の範囲にある濃硫酸を使用して、当該脂環式ケトン化合物を高単離収率で製造する。
【選択図】 なし
【解決手段】1−アダマンタノールや2−アダマンタノールなどの脂環式アルコール化合物を、溶媒中または無溶媒で、硫酸を用いて硫酸酸化して2−アダマンタノンなどの脂環式ケトン化合物を製造する際に、硫酸濃度が90〜94重量%の範囲にある濃硫酸を使用して、当該脂環式ケトン化合物を高単離収率で製造する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、2−アダマンタノン等の脂環式ケトン化合物の製造方法に関する。
脂環式ケトン化合物は、電子材料や医農薬の中間体として有用な化合物である。たとえば、脂環式ケトン化合物から得られる脂環式アルキルエステル化合物の一種であるアルキルアダマンチルエステル化合物を用いたレジストは、半導体製造プロセスにおけるドライエッチング耐性が高いことが報告され(例えば特許文献1参照)、半導体用レジスト材料としての可能性が注目されている。
また、電子材料等の分野においては競争が激しく製造コスト低減の要求も厳しくなっており、廉価な原材料を用いて簡便な方法で高純度の製品を得ることが極めて重要となっている。従って、中間体のアダマンタノンの製造においても、アダマンタノール等の誘導体を用いることなくアダマンタンから高純度のアダマンタノンを直接且つ簡便に得る方法が望まれている。
従来、2−アダマンタノン等の脂環式ケトン化合物を得る方法としては、アダマンタンまたは1−アダマンタノールを濃硫酸で酸化したのち水蒸気蒸留により精製する方法が知られている(以下硫酸酸化法という)。該方法では、2−アダマンタノンを47〜48%で得られている(非特許文献1を参照)。または、当該硫酸酸化法において、反応系40〜60℃で30分以上保持し、次いで60〜90℃まで昇温させて反応することにより高収率で2−アダマンタノンを得ている(特許文献2参照)。
上記硫酸酸化法は、硫酸という安価で工業的に入手が容易な反応試剤を用いているばかりでなく特殊な反応設備を特に必要としないという点で、工業的な脂環式ケトン化合物の製造方法として極めて魅力的な製造方法である。しかしながら、その収率は工業的な製造方法として採用するには今一歩十分ではなく、さらに収率を向上させることが望まれていた。
特に上記特許文献2による方法においては、タール分等の副生物の生成をより低く抑えるために前段の反応を下限である40℃にして行うと反応性が大きく低下する。反応性を高めるため硫酸濃度が99重量%を越えるようすると上記副生物の生成が一気に増加し、硫酸濃度を95重量%以下にすると反応終盤で十分な硫酸濃度が得られないために反応が終結しない。結果としてより高い収率で上記2−アダマンタノンを生成させることは実現できなかった。
本発明の課題は、硫酸酸化法の持つ前記特長を損なうことなく、2−アダマンタノン等の脂環式ケトン化合物の収率を向上させることにある。
本発明者らは上記の技術課題に鑑み、硫酸酸化法における反応条件について鋭意検討を行った。その結果、1−アダマンタノール等の脂環式アルコール化合物を原料として用いて硫酸酸化した場合に、使用する硫酸の濃度を90〜94重量%に下げて酸化を行うと、タール分等の副生を抑制することが可能となり、その結果収率が向上することを見出し本発明を完成するに至った。なお、本発明の方法は、脂環式炭化水素化合物の硫酸酸化法には適さない。
即ち、本発明は脂環式アルコール化合物を硫酸により酸化して脂環式ケトン化合物を製造する方法において、硫酸濃度を90〜94質量%として酸化することを特徴とする脂環式ケトン化合物の製造方法である。
本発明の製造方法は、原料として脂環式アルコール化合物を用いること並びに90〜94質量%の濃度の硫酸を用いて酸化反応を行うこと以外は、前出の硫酸法と変わる点は特にない。即ち、使用する原料等の反応試剤、反応装置等は従来の硫酸法で使用されている公知のものが使用でき、反応条件等も従来の条件が採用しうる。
原料として使用される脂環式アルコール化合物は、脂環式炭化水素化合物の少なくとも1位以上が水酸基(−OH基)に置換されている化合物である。酸化される位置が限られており単一の脂環式ケト化合物が得られやすいという観点から、対称性が高い飽和の脂環式アルコール化合物が好適である。
このような脂環式アルコール化合物を具体的に例示すれば、シクロヘキサノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール等が挙げられる。これらの中でも、酸化反応が選択的に効率よく進行し、しかも得られる脂環式ケトン化合物が電子材料や医農薬の中間体として有用な化合物であり、高純度のものが望まれているアダマンタノンの原料である、1−アダマンタノールあるいは2−アダマンタノールが最も好適である。
上記脂環式アルコール化合物は、試薬もしくは工業的に入手が可能であり市販されているものが何等制限無く使用できるが、以下の様にして合成することも可能である。
即ち、キヨシ タネムラ他4名著のジャーナル オブ ザ ケミカル ソサイェティ パーキン トランザクション 1(Journal of the Chemical Society Perkin Transaction 1)2001年、3230ページに記載のとおり、アダマンタンをトリフルオロ酢酸溶媒中、窒素雰囲気下、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノンを触媒として酸化させる方法、または、ロバート ダブリュウ ミューレイ(Robert W.Murray)他2名著のジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサイェティ(Journal of the American Chemical Society)1986年、108巻、2470ページに記載のとおり、ジメチルジオキシランを酸化剤としてアダマンタンを酸化する方法等が挙げられる。
本発明においては、脂環式アルコール化合物を硫酸により酸化して脂環式ケトン化合物を製造する際、硫酸濃度が90〜94質量%の硫酸を使用することが最大の特徴である。
硫酸濃度を従来法よりも低下させることにより、タール分等の副生物の生成が抑制されるために収率が向上する。90質量%未満の濃度を用いた際には、反応終盤において十分な硫酸濃度が得られないため反応が完結しない。94質量%を超える濃度の硫酸を用いた際には、反応は完結するもののタール分等の副生物の生成が増加する。
本発明に用いる硫酸は、試薬もしくは工業的に入手可能であり市販されているものが何等制限無く使用できるが、発煙硫酸、無水硫酸、クロロスルホン酸等を濃度の低い硫酸に加えることで調整することもできるし、濃度の高い硫酸を水で希釈することで調整することもできる。
使用する硫酸の量は特に制限はないが、大過剰に使用しても使用量に見合った効果が得られなく後処理に手間がかかり、あまり量が少ないと酸化力が低下し原料である脂環式アルコール化合物を懸濁させる能力が低下する。従って、通常、該脂環式アルコール化合物1重量部に対して3〜500重量部、好適には5〜300重量部で使用される。
本発明の脂環式ケトン化合物の製造は、無溶媒中で行うことも可能であるが、必要に応じて有機溶媒を用いることもできる。
使用される有機溶媒は、硫酸に対して安定であり、水と相溶せず、反応を阻害せず、且つ脂環式アルコール化合物を溶解する有機溶媒であれば何等制限無く使用できる。
これらの有機溶媒の種類を具体的に例示すると、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルカーボネート等のカーボネート類等を挙げる事ができる。これらの中でも、特に高い収率が可能なハロゲン化脂肪族炭化水素類或はハロゲン化芳香族炭化水素類が好適に採用される。
本発明におけるこれらの有機溶媒の使用量は特に制限は無いが、あまり量が多いと一バッチあたりの収量が小さくなるため経済的ではなく、あまり量が少ないと脂環式アルコール化合物を溶解させることができずに反応速度が低下する。従って、通常、反応液全体に対して、脂環式アルコール化合物の量が0.1〜60質量%、好ましくは1〜50質量%となるように有機溶媒を使用することが好ましい。
本発明の硫酸酸化法においては反応過程で二酸化硫黄を生じるため、反応は一般に常圧で行うのが好ましい。しかしながら、水分や溶媒の留去のために減圧下で反応する事も可能である。ま
反応圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれの状態でも実行可能であり、反応液は攪拌下で行うことが好ましい。
反応圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれの状態でも実行可能であり、反応液は攪拌下で行うことが好ましい。
反応温度は、公知の温度条件から適宜選択して採用しうる。非特許文献1記載の一定温度での反応も可能であるし、特許文献2記載の40〜60℃の温度範囲に30分保持した後、60〜90℃まで昇温して反応させる(以下2段階昇温法という)ことも可能である。一定温度に保って反応させる場合、反応温度が低すぎると反応速度が低下して反応時間が長くなり、反応温度が高すぎればタール分等の副生物が増加するため、通常0〜100℃、特に0〜70℃の範囲で行うのが好適である。
反応時間は、反応温度によっても異なるが、ガスクロマトグラフィー(GC)等の分析機器を用いて、反応の進行を確認しながら適宜決定すれば良い。反応温度にもよるが一般には0.5〜200時間で十分である。
反応装置としては、十分な撹拌が出来て加熱が可能な装置であり且つ硫酸に耐える材質を使用しているものであれば、何ら制限なく用いられる。例えば、通常のガラスライニング釜が好適に用いられる。
本発明を実施する操作手順としては、如何なる手順により実施しても良い。通常は、反応容器に所定の濃度に調整した硫酸を仕込み、次いで、所定量の脂環式アルコール化合物を加えたのち、必要に応じて活性化剤としてのハロゲン単体またはハロゲン化金属塩を加え、温度等の諸反応条件を設定して反応を行うのが一般的である。
本発明によって得られる脂環式ケトン化合物は、原料である脂環式アルコール化合物由来のケトンである。例えば、原料として1−アダマンタノールあるいは2−アダマンタノールを用いた場合は、2−アダマンタノンが得られる。
反応液からの脂環式ケトン化合物の単離精製方法としては、特に制限はなく公知の方法が採用される。例えば、反応後の反応液を氷に投入して析出する結晶をろ過や遠心分離すること方法、溶媒により抽出し、次いで洗浄、溶媒留去、および乾燥を行った後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで処理して分離精製する方法が挙げられる。更には、特開2000−012570号公報に示されるように、反応終了後硫酸濃度が60〜90重量%になるよう希釈したのち、有機溶媒にて抽出する方法も可能である。
このようにして得られた脂環式ケトン化合物は、用途によってはそのまま使用しても可能な純度であるが、さらに精製が必要な場合には再結晶、減圧蒸留、水蒸気蒸留あるいは昇華精製などの方法で精製することができる。
本発明の製造方法により、従来の硫酸法の特長を保ったまま、反応時間を大幅に短縮でき、しかもタール分等の副生を抑制できることにより、目的物の脂環式ケトン化合物の単離収率を向上させることが出来る。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1
90.0質量%の濃硫酸240g(硫酸分として2.20mol)に、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で40時間反応を行った。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.5%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン22.2g(0.18mol、収率90%)で得た。この2−アダマンタノンを、ドデカンを内部標準にしてGCで分析したところ、純度は99.3%であった。
90.0質量%の濃硫酸240g(硫酸分として2.20mol)に、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で40時間反応を行った。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.5%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン22.2g(0.18mol、収率90%)で得た。この2−アダマンタノンを、ドデカンを内部標準にしてGCで分析したところ、純度は99.3%であった。
実施例2
90.0質量%の濃硫酸240g(硫酸分として2.20mol)に、2−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で20時間反応を行った。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.5%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン23.2g(0.15mol、収率94%)で得た。この2−アダマンタノンを、ドデカンを内部標準にしてGCで分析したところ、純度は99.3%であった。
90.0質量%の濃硫酸240g(硫酸分として2.20mol)に、2−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で20時間反応を行った。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.5%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン23.2g(0.15mol、収率94%)で得た。この2−アダマンタノンを、ドデカンを内部標準にしてGCで分析したところ、純度は99.3%であった。
実施例3〜5
表1に示す反応条件で実施例1と同様の方法で実施した。結果も表1に併記した。
表1に示す反応条件で実施例1と同様の方法で実施した。結果も表1に併記した。
比較例1
96.5質量%濃硫酸224g(硫酸分として2.2mol)に、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、75℃で10時間反応させた。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.6%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン16.8g(0.11mol、収率68%)を得た。
96.5質量%濃硫酸224g(硫酸分として2.2mol)に、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、75℃で10時間反応させた。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.6%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン16.8g(0.11mol、収率68%)を得た。
比較例2
96.5質量%濃硫酸207gに30%発煙硫酸34gを加え、98.01%の濃硫酸(硫酸分として2.4mol)にし、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で20時間反応させた。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.3%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン17.8g(0.12mol、収率72%)を得た。
96.5質量%濃硫酸207gに30%発煙硫酸34gを加え、98.01%の濃硫酸(硫酸分として2.4mol)にし、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で20時間反応させた。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは1.3%だった。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン17.8g(0.12mol、収率72%)を得た。
比較例3
水30gに冷却下、96.5質量%濃硫酸224gを加え、85.0質量%の濃硫酸(硫酸分として2.2mol)にし、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で20時間反応させたところ、GCで1−アダマンタノールが33%残存していたので、さらに75℃で20時間反応させた。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは28.5%残存していた。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン22.2g(0.18mol、収率90%)を得た。しかしながら、この2−アダマンタノンを、ドデカンを内部標準にしてGCで分析したところ、純度は73.1%に過ぎず、1−アダマンタノールが26.4%残存していた。
水30gに冷却下、96.5質量%濃硫酸224gを加え、85.0質量%の濃硫酸(硫酸分として2.2mol)にし、1−アダマンタノール25g(0.16mol)を加えて、激しく攪拌しながら、60℃で20時間反応させたところ、GCで1−アダマンタノールが33%残存していたので、さらに75℃で20時間反応させた。反応終了時、GCで1−アダマンタノールは28.5%残存していた。放冷後、100gの氷に反応混合物をあけ、ジクロロメタン300mlで2回抽出した。有機層を1N−水酸化ナトリウム水溶液、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ジクロロメタンを減圧下留去し、2−アダマンタノン22.2g(0.18mol、収率90%)を得た。しかしながら、この2−アダマンタノンを、ドデカンを内部標準にしてGCで分析したところ、純度は73.1%に過ぎず、1−アダマンタノールが26.4%残存していた。
比較例1および2の結果から、96.5質量%以上の硫酸を用いた際には、反応時間は早いものの、タール分等の副生物の副生が増加し単離収率が低いことが分かる。また、比較例3から、85質量%のような低い濃度の硫酸を用いた際には、反応終盤で酸化反応を完結させるのに十分な硫酸濃度を維持できない為に反応が完結しないことがわかり、本発明の90〜94質量%の濃度の硫酸を用いることで、反応を完結させ且つタール分等の副生物の副生を抑制できることがわかる。
Claims (2)
- 脂環式アルコール化合物を硫酸により酸化して脂環式ケトン化合物を製造する方法において、硫酸濃度を90〜94質量%として酸化することを特徴とする脂環式ケトン化合物の製造方法。
- 脂環式アルコール化合物が1−アダマンタノールまたは2−アダマンタノールであり、得られる脂環式ケトン化合物が2−アダマンタノンである請求項1記載の脂環式ケトン化合物の製造方法。
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