JP7319947B2 - アンカーコート剤 - Google Patents
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Description
特許文献2に記載された水分バリア性積層体は、優れた水分バリア性を示し、例えば有機ELなどの電子デバイスの封止材として使用される。
しかしながら、従来公知の水分バリア性積層フィルムは、高湿度環境、特に劣化促進試験の様な高温高湿度雰囲気で水分バリア性を測定した場合、その層間密着力や水分バリア性が大きく低下するという問題があり、さらなる改良が必要となっている。
本発明の他の目的は、上記のアンカーコート剤を塗布し硬化することにより形成される硬化膜を提供することにある。
(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物と有機溶媒とを含み、
前記(メタ)アクリル樹脂の0.5~97質量%がグリシジル基含有(メタ)アクリレートに由来し、且つ該(メタ)アクリル樹脂の1質量%以上は、10mgKOH/g以上の水酸基価を示すことを特徴とするアンカーコート剤が提供される。
(1)前記(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物とが有機溶媒中に溶解もしくは分散されており、固形分濃度が1~60質量%の範囲にあること。
(2)前記イソシアネート化合物の1質量%以上が、重量平均分子量が400~1200の範囲にあるポリイソシアネートであること。
(3)前記(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物との合計量当り0.02~1.0質量%の範囲で触媒を含有していること。
(4)前記触媒が金属触媒であること。
(5)重合硬化により、40℃、90%RHでの透湿度が6.0×104g/m2/day以下であり、85℃での粘弾性測定における貯蔵弾性率E´(@2πrad/s)が30MPa以上の硬化物が形成されること。
(6)前記硬化物が、ウレタン(メタ)アクリレート重合体であり、85℃以上の高ガラス転移点を有すること。
本発明のアンカーコート剤は、(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物とを成膜成分として有するものであり、このような成膜成分が溶媒中に溶解或いは分散されている。このアンカーコート剤の最も重要な特徴は、(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物との反応に形成される硬化物(ウレタン(メタ)アクリレート重合体)が、40℃、90%RHでの透湿度が6.0×104g/m2/day以下であるという透湿条件と、85℃での粘弾性測定における貯蔵弾性率E´(@2πrad/s)が30MPa以上であるという粘弾性条件とを満足するように、成膜成分の種類や配合比、及び溶媒種が選択されていることである。
さらに、硬化物(ウレタン(メタ)アクリレート重合体)は、ガラス転移点Tgが高いほど、高温での分子の運動性が抑制されるので、水分トラップ層が吸湿した水分の移行を低減させるには有利となる。例えば、この硬化物のガラス転移点は、85℃以上であることが最適である。
これら有機溶媒は、アンカーコート剤がコーティングに適した粘度となるような量で使用され、例えば、このアンカーコート剤の固形分濃度が1~60質量%、特に3~50質量%程度となる量で有機溶媒が使用される。
このようなグリシジル基含有(メタ)アクリレートは、例えば下記式(1)で表される。
CH2=CH(R)-COO-(CH2)m-G (1)
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、
Gは、グリシジル基であり、
mは、0または1以上の整数である。
このグリシジル基含有(メタ)アクリレートの代表的なものは、グリシジル(メタ)アクリレート(式(1)中、m=0のもの)である。
アミン系触媒としては、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、PMDETA、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、N,N,N,N-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N,N-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミンなどを上げることが出来る。
金属触媒としては、ジブチルスズラウリレートなどの有機スズ化合物、有機亜鉛化合物などを挙げることができる。
これら触媒は、1種単独で使用されていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。また、金属触媒が特に好適である。
このような配合剤としては、例えば、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤等が例示できる。勿論、上記の密着性が損なわれない限り、イソシアネートに対して反応性を有していない樹脂、例えばオレフィン系樹脂などが少量配合されていてもよい。
上述した本発明のアンカーコート剤は、所定の基材層(例えば無機バリア層)上に塗布され、100℃以上の温度に加熱して焼き付けることにより水分トラップ層の下地膜となる硬化物(ウレタン(メタ)アクリレート重合体)を形成する。即ち、この硬化物(下地膜)上に後述する水分トラップ層が形成されることとなる。
このような水分トラップ層の下地膜の厚みは、前述した透湿度を達成するために0.1μm以上、特に0.2μm以上であるが、過度に厚いと、多層化により水分バリア性を高めたとき、必要以上に厚くなってしまうため、適度に薄いことが望ましく、例えば7μm以下、特に6μm以下であることが望ましい。即ち、本発明のアンカーコート剤では、このような適度な厚みで、40℃、90%RHでの透湿度が6.0×104g/m2/day以下、特に5.0×104g/m2/day以下でという優れた耐透湿性が実現できる。
上記のようなアンカーコート剤による下地膜上に水分トラップ層が形成されている水分バリア性積層フィルムは、高温高湿雰囲気に長期間保持された場合にも、アルカリ劣化や膜剥がれ等が生じることなく、安定して優れた水分バリア性を発揮する。
また、上記プラスチックフィルム(A)においては、図3に示されているように、無機バリア層(A1)上に保護層(D)が設けられていることもある。即ち、下地膜(C)は、無機バリア層(A1)上に直接積層されていてもよいし、図3に示されているように、無機バリア層(A1)上に適宜設けられている保護層(D)上に積層されていてもよい。
このフィルム(A)は、無機バリア層(A1)の下地となるものであり、通常、熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂により、その形態に応じて、射出乃至共射出成形、押出乃至共押出成形、フィルム乃至シート成形、圧縮成形性、注型重合等により成形される。
このような熱可塑性樹脂の例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、環状オレフィン共重合体など、そしてエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイドや、その他、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、或いはポリ乳酸などの生分解性樹脂等により形成される。さらに、これらのブレンド物や、これら樹脂が適宜共重合により変性されたもの(例えば、酸変性オレフィン樹脂など)であってもよい。
さらに、上記のプラスチックフィルム(A)の表面に設けられる無機バリア層(A1)は、例えば特開2015-96320号公報等により公知のものであってよく、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、プラズマCVDに代表される化学蒸着などによって形成される無機質の蒸着膜、例えば各種金属乃至金属酸化物により形成される膜であることが、高い酸素バリア性を確保できると言う点で好適である。特に、凹凸を有する面にも均一に成膜され、酸素のみならず水分に対しても優れたバリア性を発揮するという点で、プラズマCVDにより、プラスチックフィルム(A)を下地として形成されていることが好ましい。
水分トラップ層(B)は、前述した本発明のアンカーコート剤により形成された下地膜(C)上に形成されるものであり、この水分バリア性積層フィルム10に対して厚み方向に流れる水分を遮断する。また、特に水分に対して高い捕捉性を示すという観点から、成膜成分(即ち、マトリックス)として、イオン性ポリマーを含んでいる。さらに、最も好適には、イオン性ポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中にイオン性ポリマーよりも到達湿度が低い吸湿剤が分散された構造を有している。このような吸湿剤は、イオン性ポリマーにより捕捉された水分を閉じ込めるという機能を有しており、このような吸湿剤を分散させることにより、水分吸収に起因する膨潤などの変形を有効に回避することができる。
水分トラップ層(B)に用いるイオン性ポリマーには、下記のカチオン性ポリマーやアニオン性ポリマーがある。
カチオン性ポリマー中のカチオン性基量は、一般に、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K-7209-1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において5%以上、特に30%~45%となるような量であればよい。
このようなカチオン性ポリマーについては、特開2015-96320号等に詳述されており、その詳細は省略するが、一般的には、ポリアリルアミンが成膜性等の観点から好適である。
アニオン性ポリマー中のアニオン性官能基量は、官能基の種類によっても異なるが、前述したカチオン性ポリマーと同様、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K-7209-1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において5%以上、特に30%~45%となるような量であればよい。
このようなアニオン性ポリマーについても、特開2015-96320号等に詳述されており、その詳細は省略するが、一般的には、ポリ(メタ)アクリル酸及びその部分中和物(例えば一部がNa塩であるもの)である。
図2(a)或いは(b)を参照して、水分トラップ層(B)中には、上記のマトリックスを形成するイオン性ポリマー(カチオン性或いはアニオン性ポリマー)よりも到達湿度が低い吸湿剤が配合されていることが好適である。
このようにマトリックスよりも高い吸湿性を有する吸湿剤を分散させることにより、前述したイオン性ポリマーにより形成されたマトリックスに吸収された水分が直ちに吸湿剤に捕捉され、吸収された水分のマトリックス中への閉じ込めが効果的に行われることとなり、極めて低湿度雰囲気でも水分の吸湿能力を有効に発揮することができるばかりか、水分の吸収による水分トラップ層(B)の膨潤が有効に抑制される。
無機系の吸湿剤としては、ゼオライト、アルミナ、活性炭、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカゲル、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。
有機系の吸湿剤としては、アニオン系ポリマー若しくはその部分中和物の架橋物を挙げることができる。このアニオン系ポリマーとしては、カルボン酸系単量体((メタ)アクリル酸や無水マレイン酸など)、スルホン酸系単量体(ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ホスホン酸系単量体(ビニルリン酸など)及びこれら単量体の塩類等に代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、重合或いは他の単量体と共重合させて得られるものを挙げることができる。特に透明性が求められる用途においては、有機系の吸湿剤が有効である。例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸Na或いはKの微細粒子などが代表的な有機系吸湿剤である。
即ち、有機系ポリマーの吸湿剤は、イオン性ポリマーのマトリックスに対する分散性が極めて良好であり、均一に分散させることができるばかりか、これを製造するための重合法として乳化重合や懸濁重合などを採用することにより、その粒子形状を微細で且つ揃った球形状とすることができ、これをある程度以上配合することにより、極めて高い透明性を確保することが可能となる。
また、有機系の微細な吸湿剤では、前述した到達湿度が著しく低く、高い吸湿性を示すばかりか、架橋によって膨潤による体積変化も極めて少なくすることができ、従って、体積変化を抑制しながら、環境雰囲気を絶乾状態もしくは絶乾状態に近いところまで湿度を低下させる上で最適である。
このような有機系の吸湿剤の微粒子としては、例えば架橋ポリアクリル酸Na微粒子(平均粒子径約70nm)がコロイド分散液(pH=10.4)の形で東洋紡株式会社よりタフチックHU-820Eの商品名で市販されている。
例えば、上述した水分トラップ層(B)は、特に超水分バリア性が要求されるような用途では、水蒸気透過度が10-5g/m2/day以下となるような超バリア性を発揮させる程度の厚み(例えば、1μm以上、特に2~20μm程度)に設定されるが、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合には、水分トラップ層(B)中のイオン性ポリマー100質量部当り、50質量部以上、特に100~900質量部の量で存在することが好ましく、更には200~600質量部の量であることがより好ましい。また、マトリックスがアニオン性ポリマーにより形成されている場合には、水分トラップ層B中のアニオン性ポリマー100質量部当り、50質量部以上、特に100~1300質量部の量で存在することが好ましく、更には150~1200質量部の量であることがより好ましい。
このような架橋構造は、水分トラップ層(B)を形成するための塗布組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入することができる。特にアニオン性ポリマーの場合、カチオン性ポリマーとは異なって、水素結合による水の補足のみなので、吸湿に適した空間の網目構造(架橋構造)をマトリックス中に導入することにより、その吸湿性を大きく高めることができる。
X-SiR1 n(OR2)3-n
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
R1及びR2は、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピル基
であり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表されるシラン化合物が好適に使用される。
しかも、カチオン性ポリマーはアルカリ性であり、この結果、カチオン性ポリマーを含むコーティング組成物を塗布して水分トラップ層Bを形成する際、カチオン性基とエポキシ基の付加反応やシラノール基間の脱水縮合も速やかに促進され、容易に架橋構造を導入することができる。
また、上記式中のエポキシ基が、エポキシシクロヘキシル基のような脂環式エポキシ基であるものも架橋剤として好適である。例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのような脂環式エポキシ基を有する化合物を架橋剤として使用した場合には、マトリックスの架橋構造中に、シロキサン構造と共に、脂環構造が導入される。このような脂環構造の導入は、吸湿に適した空間の網目構造を形成するというマトリックスの機能を更に効果的に発揮させることができる。
G-O(C=O)-A-(C=O)O-G (2)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基である、
で表されるジグリシジルエステルを、架橋剤として使用することができる。このようなジグリシジルエステルの代表的なものは、下記の式(2-1)で表される。
G-O(C=O)-A-(C=O)O-G (2)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基である、
で表されるジグリシジルエステルが好適に使用される。
特に、上記のジグリシジルエステルの中でも好適なものは、先にも挙げられており、特に、吸湿に適した空間の網目構造を形成できるという観点から、先の式(2-1)で表されるジグリシジルエステルが最も好適である。
また、上述した水分トラップ層(B)は、マトリックスとなる樹脂中に吸湿剤及び必要により架橋剤を所定の溶媒に溶解乃至分散したコーティング組成物を使用し、このコーティング組成物を、前述した無機バリア層(A1)上に形成された下地膜(C)上に塗布し、加熱乾燥して溶媒を除去することにより形成される。かかる加熱乾燥は、通常、100~170℃程度の温度で3分以下、特に0.25~1分程度の短時間で行われ、これにより、下地膜(C)を介して、無機バリア層(A1)にしっかりと密着した水分トラップ層(B)を形成することができる。
このような非イオン性重合体としては、ポリビニルアルコール、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、或いは、これらに、各種のコモノマー(例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、α-ハロゲン化スチレン、α,β,β´-トリハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマーや、エチレン、ブチレン等のモノオレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンなど)を、共重合させたものなどを挙げることができる。
一方、無機バリア層(A1)は、アルカリに対して反応性を示すため、耐アルカリ性が極めて悪く、この無機バリア層(A1)上に水分トラップ層(B)が直接設けられていると、水分トラップ層(B)に含まれるアルカリに無機バリア層(A1)が反応してしまい、この結果、水分トラップ層(B)と無機バリア層(A1)との間、或いは無機バリア層(A1)とプラスチックフィルム(A)との界面にデラミネーションが発生してしまう。即ち、このような水分バリア積層フィルムを、温度が85℃以上、相対湿度RHが85%以上の高温高湿雰囲気下に保持して劣化促進試験を行ったとき、短時間で膜剥がれを生じてしまい、水分バリア性が大幅に低下してしまう。
尚、本発明において、上述した下地膜(C)は、水分トラップ層(B)の下地となっていればよく、従って、図3に示されているように、無機バリア層(A1)上に保護層(D)を設け、この保護層(D)上に上述した下地膜(C)を設けることもできる。
R1-Si(OR2)3 (4)
式中、R1は、有機基であり、
R2はアルキル基である、
で表される。
上記の有機基R1としては、アルキル基、或いは各種の官能基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基など)を有する基を挙げることができる。
また、R2が示すアルキル基としては、特に制限されないが、一般的には、炭素原子数が4以下の低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基)である。
M(OR2)n (5)
式中、Mは、金属原子であり、
R2は、前記式(4)と同様、アルキル基であり、
nは、金属原子Mの価数を示す整数である、
で表される化合物である。
このような金属アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン、トリプロポキシアルミニウム等を挙げることができ、かかる金属アルコキシドも、1種単独或いは2種以上を組み合わせて使用される。
このような加水分解物は、酸やアルカリを用いる公知の方法で得ることができ、加水分解に際しては、錫化合物などの反応触媒を必要に応じて使用することもできる。
これらのリン系化合物も、1種単独或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようにして形成される保護層(D)の厚さは、一般に、0.01~50μm、特に0.1~2μmの範囲が好適である。
例えば、ドライラミネートによって、水分トラップ層(B)に接着層を介して他の基材を貼り合わる場合に、水分トラップ層(B)と接着層の間に下地層(C)を設けることで、接着層側へのアルカリ成分移行も抑制することができる。結果として、積層体全体の密着性を安定的に保つことが出来る。
このような水分トラップ層(B)には、例えば、さらに下地膜(C)を形成してのドライラミネートにより他のバリアフィルム或いは他のバリアフィルムに設けられた水分トラップ層(B)に積層することもできる。
このような水分バリア性積層フィルムは、特に有機EL素子、太陽電池、電子ペーパーなどの電子回路を封止するためのフィルムとして好適に使用することができる。
(メタ)アクリル樹脂、試料約10mgに溶媒3mLを加え、室温で緩やかに攪拌した。溶解していることを目視で確認した後、0.45μmフィルターにてろ過し、ろ液についてGPC測定(ポリスチレン換算)を行い、重量平均分子量(Mw)を測定した。スタンダードとしてはポリスチレンを用いた。
装置:東ソー株式会社製HLC-8120
検出器:示差屈折率検出器RI
カラム:TSKgel SuperHM-H×2及びガードカラムとしてTSKguard column SuperH-H
溶媒:クロロホルム
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
各下地膜(C)の水蒸気透過度は、それぞれの樹脂層のみを単独で成膜し、PERMATRAN(MOCON社製)を使用し、40℃90%RHで測定した。
各下地膜(C)の塗膜を準備し、以下の条件で動的粘弾性測定を実施した時の値を記載した。
装置:日立ハイテクサイエンス株式会社製 DMS-6100
試験片:大きさ10mm×20mm、厚み60μm
測定温度:30~130℃
以下の式を用いて架橋点間分子量Mcを算出した。
Mc=3ρRT/Emin
Mc:架橋間分子量(g/mol)
ρ:試料塗膜の密度(g/cm3)
R:気体定数(8.314J/K/mol)
T:貯蔵弾性率がEminの時の絶対温度(K)
Emin:貯蔵弾性率の極小値(MPa)
23℃50%RHの条件下、固液界面解析システムDropMaster700(協和界面化学(株)製)を用い、3μLの純水を下地層(C)上にのせ、水接触角を測定した。
作製した水分バリア性積層フィルムに、厚さ100μmのPETフィルムを接着剤でドライラミネートし、接着層の硬化のため、50℃×3日間エージングを行い、T型剥離試験用サンプルを作製した。
23℃、50%RHの雰囲気下において、T型剥離試験により、幅15mm、長さ200mm(非接着部50mmを含む)の試験片を用いて、剥離速度300mm/minの測定条件で積層体の水分バリア性積層フィルム-PET間のラミネート強度(単位:N/15mm)を測定した(n=4)。
この時の値を初期値とし、1N/15mm以下の時を×、1N/15mmを越え2N/15mm以下ときを△、2N/15mmを越え3N/15mm以下ときを○、3N/15mmを越えるときを◎とした。
さらに、同様に作成したT型剥離試験用サンプルを85℃85%RHで5日間、10日間、及び20日間保管した後に、それぞれについて同様の測定を実施し、吸湿後のラミネート強度を測定した。
この時の値を初期値とし、1N/15mm以下の時を×、1N/15mmを越え2N/15mm以下ときを△、2N/15mmを越え3N/15mm以下ときを○、3N/15mmを越えるときを◎とした。
カチオン性ポリマーとしてポリアリルアミン(ニットーボーメディカル製、PAA-15C、水溶液品、固形分15%)を、固形分5重量%になるように水で希釈し、ポリマー溶液を得た。
一方、架橋剤として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、5重量%になるように水に溶かして架橋剤溶液を調製した。
次いで、ポリアリルアミン100重量部に対してγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが20重量部になるように、ポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、この混合溶液に、吸湿剤として、ポリアクリル酸Naの架橋物(東洋紡製、タフチックHU-820E、水分散品、固形分13%)を、ポリアリルアミンに対して420重量部になるように加え、更に固形分が5%になるよう水で調整した上で良く撹拌し、水分トラップ層用のコーティング液(B1)を調製した。
アニオン性ポリマーとしてポリアクリル酸(日本純薬製、AC-10LP)を用い、水/アセトン混合溶媒(重量比で80/20)に、固形分が5重量%になるように溶解し、水酸化ナトリウムをポリアクリル酸の中和率が80%になるように加え、ポリマー溶液を得た。
このポリマー溶液に、架橋剤として1,2―シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルが、ポリアクリル酸部分中和物に対して20重量部になるように配合し、次いで密着剤として、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランがポリアクリル酸部分中和物に対して3重量部になるように配合し、さらに、粒状吸湿剤(東洋紡製、タフチックHU-820E、水分散品、固形分13%)が、ポリアクリル酸部分中和物に対して431重量部になるように配合し、更に全体の固形分が5重量%になるよう水/アセトン混合溶媒(重量比で80/20)で調整した上で良く撹拌し、水分トラップ層用のコーティング液(B2)を調製した。
主剤として、アクリル系樹脂A(Mw=70,000、ガラス転移点=100℃、OHV=30、グリシジル基含有率=0質量%)とアクリル樹脂B(Mw=3,000、ガラス転移点=7℃、OHV=100、グリシジル基含有率=30質量%)を固形分比で95/5で含む主ポリマー溶液(固形分50%)を用意した。
この主ポリマー溶液に、硬化剤としてポリイソシアネート(Mw=700)を主ポリマー溶液の固形分100質量部に対して30質量部になるように配合し、メチルエチルケトンで希釈して固形分20%のアンカーコート剤を調製した。
このバリアフィルムの保護層(D)上に、上記のコーティング溶液をバーコーターにより塗工し、電気オーブンにより、ピーク温度100℃、ピーク温度保持時間1分の条件で熱処理し、1.0μmの下地層(C)を得た。
このコーティング層(C)上に、上記カチオン性ポリマーを用いた水分トラップ層コーティング液(B1)をバーコーターにより塗工し、ピーク温度100℃、ピーク温度保持時間1分の条件で熱処理し、厚み3μmの水分トラップ層(B)を形成し、水分バリア性積層フィルムを得た。
主剤としてアクリル系樹脂C(Mw=45,000、ガラス転移点=95℃、OHV=45、グリシジル基含有率=5質量%)を含む主ポリマー溶液(固形分50%)を用意した。
この主ポリマー溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
触媒としてアミン系化合物を、アクリル系樹脂100質量部当り0.2質量部添加したこと以外は、実施例2と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
触媒として有機スズ系化合物を、アクリル系樹脂100質量部当り0.2質量部添加したこと以外は、実施例2と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
触媒として有機亜鉛系化合物を、アクリル系樹脂100質量部当り0.2質量部添加したこと以外は、実施例2と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
アクリル系樹脂100質量部当りの触媒量を0.03質量へ変更したこと以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
下地層(C)の厚みを0.3μmとしたこと以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
コーティング層(C)の厚みを0.15μmとしたこと以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
アクリル系樹脂100質量部当りの硬化剤量を15質量部に変更した以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
酸化アルミニウムを無機バリア層として有し、且つ保護層(D)が設けられていない市販バリアフィルム(東レフィルム加工、バリアロックス1011HG、基材:PET12μm)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
酸化ケイ素を無機バリア層として有し、且つ保護層(D)を有する市販バリアフィルム(凸版印刷、GL-RD、基材:PET12μm)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
酸化ケイ素を無機バリア層として有し、且つ保護層(D)が設けられていない市販バリアフィルム(三菱ケミカル、テックバリアLX、基材:PET12μm)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
アニオン性ポリマーを用いた水分トラップ層コーティング液(B2)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
実施例6において、水分トラップ層(B)上に、さらに1.0μmの下地層(C)を形成した以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
硬化剤を配合しないこと以外は、実施例5と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
主剤として、アクリル系樹脂D(Mw=69,000、ガラス転移点=70℃、OHV=80、グリシジル基含有率=0質量%)を含む主ポリマー溶液(固形分40%)を用意した。
この主ポリマー溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で水分バリア性積層フィルムを得た。
上記で作製された水分バリア性積層フィルムについて、前述した方法で各種特性を測定し、その結果を表1に示した。
(A1):無機バリア層
(B):水分トラップ層
(C):下地膜
(D):保護層
10:水分バリア性積層フィルム
Claims (8)
- 水分バリア性積層フィルム中の水分トラップ層の下地膜の形成に使用されるアンカーコート剤において、
(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物と有機溶媒とを含み、
前記(メタ)アクリル樹脂の0.5~97質量%がグリシジル基含有(メタ)アクリレートに由来し、且つ該(メタ)アクリル樹脂の1質量%以上は、10mgKOH/g以上の水酸基価を示すことを特徴とするアンカーコート剤。 - 前記(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物とが有機溶媒中に溶解もしくは分散されており、固形分濃度が1~60質量%の範囲にある請求項1に記載のアンカーコート剤。
- 前記イソシアネート化合物の1質量%以上が、重量平均分子量が400~1200の範囲にあるポリイソシアネートである請求項1または2に記載のアンカーコート剤。
- 前記(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物との合計量当り0.02~1.0質量%の範囲で触媒を含有している請求項1~3の何れかに記載のアンカーコート剤。
- 前記触媒が金属触媒である請求項4に記載のアンカーコート剤。
- 重合硬化により、40℃、90%RHでの透湿度が6.0×104g/m2/day以下であり、85℃での粘弾性測定における貯蔵弾性率E´(@2πrad/s)が30MPa以上の硬化物が形成される請求項1~5の何れかに記載アンカーコート剤。
- 前記硬化物が、ウレタン(メタ)アクリレート重合体であり、85℃以上の高ガラス転移点を有する請求項6に記載のアンカーコート剤。
- 水分バリア性積層フィルム中に形成されている硬化膜であり、(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート化合物との反応により得られ、40℃、90%RHでの透湿度が6.0×104g/m2/day以下であり、85℃での粘弾性測定における貯蔵弾性率E´(@2πrad/s)が30MPa以上の範囲にある硬化膜。
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