JP2019034539A - 水分バリア性多層構造体 - Google Patents

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瞬也 南郷
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真平 奥山
美理 八木澤
Misato Yagisawa
美理 八木澤
圭将 高山
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圭将 高山
芳弘 太田
Yoshihiro Ota
芳弘 太田
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Abstract

【課題】水分バリア層と水分トラップ層とを備えた水分バリア性多層構造体において、水分トラップ層の水分トラップ性能の経時による低下を有効に回避し、水分に対する超バリア性を長期にわたって発現させる。【解決手段】高水分雰囲気に対面しているプラスチック基材1の高水分雰囲気には対面していない側に、水分バリア層3,7と、水分バリア層3,7の間に位置する水分トラップ層5とが設けられており、さらに、水分トラップ層5と水分バリア層7とを接合するための第1の有機層9が設けられている水分バリア性多層構造体11において、第1の有機層9の厚みtが0.1μm以上3μm未満の範囲にあることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチック基材の少なくとも一方の面に複数の水分バリア層と水分トラップ層とが設けられている水分バリア性多層構造体に関するものである。
各種プラスチック基材の特性、特にガスバリア性を改善するための手段として、プラスチック基材の表面に、蒸着により、ケイ素酸化物などからなる水分バリア層を形成することが知られている(特許文献1)。
ところで、近年において開発され、実用されている各種の電子デバイス、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパーなどでは、電荷のリークを嫌うため、デバイスの内部は低水分雰囲気に保たれており、その回路基板などを形成するプラスチック基材や回路基板を封止するフィルムなどに対して高い水分バリア性が要求されている。上記で述べた水分バリア層の形成では、このような水分バリア性に対する高い要求に応えることができないため、水分バリア性を向上させる種々の提案がなされている。
例えば、特許文献2〜4には、本出願人により、特定の粒状吸湿剤がイオン性ポリマーのマトリックス中に分散された水分トラップ層がプラスチック基材上の水分バリア層の上に形成されているガスバリア性積層体が提案されている。
このように、水分バリア性を高度に高めるために、水分バリア層と水分トラップ層(吸湿層や捕水層など)とを組み合わせた層構成の種々の積層体が提案されている。このような水分バリア性の積層体では、該積層体の厚み方向(面方向)を流れる水分に対して高いバリア性を示すのであるが、その側面(端面)から流入する水分に対してのバリア性は十分であるとは言い難い。また、このような端面からの水分の流入に対しては、これまで検討されていなかった。
このような端面からの水分流入の問題が解決された水分バリア性の構造体として、特許文献5には、水分トラップ層及び水分バリア層に加えて、低水分雰囲気に対面する面もしくは該面から20μm以内の領域に補助水分トラップ層が設けられた構造体が、本出願人により提案されている。
特許文献5の技術は、端面からの水分流入を有効に防止することができ、これにより水分に対して超バリア性が確保できるのであるが、水分トラップ層の水部トラップ性能の経時による低下を抑制し、水分に対する超バリア性をより長期にわたって発現させることが求められていることが現状である。
特開2000−255579号公報 WO2014/123197 特開2014−168949号公報 特開2014−168950号公報 特開2017−39315号公報
従って、本発明の目的は、水分バリア層と水分トラップ層とを備えた水分バリア性多層構造体において、水分トラップ層の水分トラップ性能の経時による低下を有効に回避し、水分に対する超バリア性を長期にわたって発現させることにある。
本発明者等は、特許文献5の技術をさらに推し進めた結果、水分トラップ層の性能には、多層構造体中の水分トラップ層と水分バリア層の間に設けられる有機層の厚みが大きく関係しており、この有機層の厚みを薄く制御することにより、水分トラップ層のパフォーマンスを長期にわたって維持し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、高水分雰囲気に対面しているプラスチック基材の高水分雰囲気には対面していない側に、複数の水分バリア層と、該水分バリア層の間に位置する水分トラップ層とが設けられており、さらに、該水分トラップ層と該水分トラップ層よりも、低水分雰囲気側に位置する水分バリア層の間に有機層が設けられている水分バリア性多層構造体において、前記有機層の厚みが0.1μm以上3μm未満の範囲にあることを特徴とする水分バリア性多層構造体が提供される。
尚、本発明において、水分トラップ層とは、水分を吸収することにより水分の透過を遮断する層であり、水分バリア層とは、水分を吸収せずに水分の透過を遮断する(即ち、水分を堰き止める)層を意味する。
本発明の水分バリア性多層構造体においては、
(1)前記有機層が接着剤層であること、
(2)前記有機層がエポキシ樹脂、アクリル樹脂またはウレタン樹脂よりなること、
(3)前記水分トラップ層が、吸湿性の無機粒子を含む樹脂、吸湿性のイオン性ポリマー、吸湿性の非イオン性ポリマーよりなること、
(4)特にイオン性ポリマーからなる吸湿性マトリックス中に、該マトリックスよりも到達湿度が低湿度である吸湿剤が分散された構造を有していること、
が好適である。
本発明の重要な特徴は、水分トラップ層と、該水分トラップ層よりも低水分雰囲気側に位置する水分バリア層とを接着するための有機層の厚みを0.1μm以上3μm未満に設定することにより、水分トラップ層の短期でのパフォーマンスの低下が抑制され、この結果、この水分バリア性多層構造体が示す超水分バリア性を長期にわたって発揮させることが可能となったものである。
即ち、プラスチック基材に水分バリア層及び水分トラップ層が積層された構造を有する多層構造体において、水分バリア性を高めるためには、水分バリア層や水分バリア層が複数設けられ、2つの水分バリア層の間に水分トラップ層がサンドイッチされた基本構造が採用され、このような基本構造に、さらに水分バリア層や水分トラップ層が積層され、このような多層構造により超水分バリア性が発揮される。
長期間にわたって超水分バリア性を維持するには、水分トラップ層の吸湿性能も重要であるが、水分トラップ層に隣接する層も重要である。例えば、水分トラップ層が外部からの水分を吸湿して蓄えて行く際、水分トラップ層に含まれる吸湿材の膨潤や、化学変化(例:CaO+HO → Ca(OH))に伴い体積が増加するような場合、水分トラップ層に水分バリア層が直接隣接していると、僅かな体積増加の影響でもナノメートルオーダーの水分バリア層の欠陥発生に繋がってしまう恐れがある。また、水分トラップ層の吸湿剤自体が化学変化を伴う場合、水分バリア層との相互作用で欠陥を生じさせる可能性が有る(例:CaOと水の反応で生じたCa(OH)の塩基性により、水分バリア層のSiOx蒸着薄膜の架橋ネットワークの破壊を伴う)。しかるに、このような多層構造において長期間にわたって超水分バリア性を維持するには、水分トラップ層と水分バリア層とを隣接させないように水分トラップ層と水分バリア層との間に、水分トラップ層の吸湿に伴う膨潤による体積変動を緩和するための有機層を形成する。
このように、2つの水分バリア層の間に水分トラップ層がサンドイッチされた基本構造を形成し、長期間にわたって超水分バリア性能を維持するには、両者の間に必ず有機層が必要となるのであるが、このとき、水分トラップ層と、水分トラップ層よりも低水分雰囲気側に位置する水分バリア層との間の有機層の厚みが厚いと、水分トラップ層の超水分バリア性能の維持期間が短くなってしまう。本発明の水分バリア性多層構造体が高湿度雰囲気と低湿度雰囲気の間に置かれた際、高湿度雰囲気側の水分バリア層を透過した僅かな水分は水分トラップ層で吸湿されるが、水分トラップ層の吸湿容量は有限であり、吸湿量が増えると吸湿能力が徐々に減少し、水分トラップ層を透過した水分は低湿度側の有機層に拡散する。このとき、水分トラップ層と低水分雰囲気側に位置する水分バリア層の間の有機層の厚みが薄ければ、低湿度側の水分バリア層で堰き止められた水分が水分トラップ層に再吸湿されることで水分の透過を抑制することが可能になる。
例えば、有機層の厚みが厚い場合はトラップ層に再吸湿されるよりも早く水分が低湿度側の水分バリア層を透過してしまい、水分が低湿度雰囲気側に移行してしまう。また、有機層の厚みが厚いと、有機層の端面からの水分流入が無視できないレベルとなり、かかる水分が水分トラップ層に流入し、より多くの水分が水分トラップ層に流れ込む結果、水分トラップ層のパフォーマンスが短期で低下してしまうこととなる。
しかるに、本発明では、有機層の厚みを上記のように薄く設定することにより、効率良くトラップ層で水分を吸湿出来、有機層の端面からの水分流入を抑制し、水分トラップ層のパフォーマンスを長期にわたって高いレベルに維持することが可能となったのである。
このような本発明の水分バリア性積層体は、水分の侵入を嫌う各種デバイスに有効に使用され、各種デバイスの基板や封止層として有用であり、特に有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)パネルにも好適に適用される。
本発明の水分バリア性積層体の代表的な層構造を示す図。 水分トラップ層の代表的な構造を示す図。
図1を参照して、全体として11で示されている本発明の水分バリア性多層構造体は、プラスチック基材1上に、第1の水分バリア層3、水分トラップ層5及び第2の水分バリア層7を、この順に有しており、水分トラップ層5と第2の水分バリア層7との間には第1の有機層9が設けられている。また、第2の水分バリア層7は、第2の有機層10を下地として有しており、第1の有機層9は、水分バリア層7の対面する位置に存在している。
このような多層構造体11は、プラスチック基材1側が高湿度雰囲気側(即ち、デバイス等に装着したときに外側となる)に位置し、第2の水分バリア層7が、第1の水分バリア層3に対して、相対的に低湿度となる雰囲気側(即ち、デバイス等に装着したときに内側となる)に位置するように配置されて使用される。
このような水分バリア性多層構造体11は、外側から厚み方向に流れて流入する水分は、水分トラップ層5で遮断され、第1の有機層9の端面からの水分流入は、第1の有機層9の厚み調整により、可及的に抑制されている。
<プラスチック基材1、第2の有機層10>
プラスチック基材1は、それ自体公知の熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂により、例えば、その形態に応じて、射出乃至共射出成形、押出乃至共押出成形、フィルム乃至シート成形、圧縮成形性、注型重合等により成形されるが、一般には、成形性やコスト等の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、環状オレフィン共重合体など、そしてエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイドや、その他、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、或いはポリ乳酸などの生分解性樹脂等により形成される。さらに、これらのブレンド物や、これら樹脂が適宜共重合により変性されたもの(例えば、酸変性オレフィン樹脂など)であってもよい。
また、プラスチック基材1は、エチレン・ビニルアルコール共重合体の如き酸素バリア性に優れたガスバリア性樹脂などにより形成されていることも好適であり、さらには、このようなガスバリア性樹脂により形成された層を含む多層構造を有していてもよい。
本発明においては、入手のし易さ、コスト、成形性、或いは酸素や酸素に対して多少なりともバリア性を示し、さらには、後述する水分バリア層3の下地として好適であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるオレフィン樹脂をプラスチック基材1として使用することがより好適である。
また、水分バリア層7の下地となっている第2の有機層10も、プラスチック基材1と同様の樹脂材料からなるものであり、当然、ガスバリア性樹脂により形成された層を含む多層構造を有するものであってよい。
尚、端面からの水分流入を阻止するという観点から、この第2の有機層10の厚みは可及的に薄いことが好ましく、例えば100μm以下であることが好適である。
<第1及び第2の水分バリア層3,7>
水分トラップ層5を挟むようにしてプラスチック基材1の内面側(高湿度雰囲気に対面する面とは反対側)に設けられている第1の水分バリア層3及び第2の水分バリア層7は、例えば特開2015−96320号公報等により公知であり、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、プラズマCVDに代表される化学蒸着などによって形成される無機質の蒸着膜、例えば酸化ケイ素膜や酸窒化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜などの各種金属乃至金属酸化物により形成される膜であるが、特に、凹凸を有する面にも均一に成膜され、水分のみならず酸素等に対しても優れたバリア性を発揮するという点で、プラズマCVDにより形成される蒸着膜であることが好ましい。
また、コーティングにより形成される水分バリア層としては、ポリ塩化ビニリデンなどの水蒸気バリア性の高い樹脂や、ポリシラザンや、重縮合性のシラン化合物(例えばアルコキシシランなど)、重縮合性のアルミナ化合物(例えばアルコキシアルミニウムなど)等の無機成膜成分として含み、適宜、シリカやアルミナ等の無機微粒子が混合された有機溶媒溶液を用い、これを所定の面に塗布し、加熱して有機溶媒を揮散して成膜するものを用いることも好ましい。
例えば、図1の例において、第1の水分バリア層3は、プラスチック基材1の表面(内面側)を下地としての蒸着により形成され、第2の水分バリア層7は、第2の有機層10を下地としての蒸着により形成される。また、第2の水分バリア層7は第1の有機層9を下地として形成することも出来る。
即ち、プラズマCVDによる蒸着膜は、所定の真空度に保持されたプラズマ処理室内に水分バリア層の下地となる基材を配置し、膜形成する金属若しくは該金属を含む化合物のガス(反応ガス)及び酸化性ガス(通常酸素やNOxのガス)を、適宜、アルゴン、ヘリウム等のキャリアガスと共に、ガス供給管を用いて、金属壁でシールドされ且つ所定の真空度に減圧されているプラズマ処理室に供給し、この状態でマイクロ波電界や高周波電界などによってグロー放電を発生させ、その電気エネルギーによりプラズマを発生させ、上記化合物の分解反応物をプラスチック基材の表面に堆積させて成膜することにより得られる。
上記の反応ガスとしては、一般に、下地の基材との界面に炭素成分を含む柔軟な領域を有し且つその上に酸化度の高いバリア性に優れた領域を有する膜を形成できるという観点から有機金属化合物、例えばトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物等のガスを用いることが好ましく、特に、水分に対するバリア性に加え、酸素に対してもバリア性の高い水分バリア層3或いは5を比較的容易に効率良く形成できるという点で、有機ケイ素化合物が最も好ましい。
このような有機ケイ素化合物の例としては、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これら以外にも、アミノシラン、シラザンなどを用いることもできる。
上述した有機金属化合物は、単独でも或いは2種以上の組合せでも用いることができる。
また、上述した水分バリア層3,7の厚みは、水分バリア性積層体の用途や要求されるバリア性のレベルによっても異なるが、一般的には、蒸着に際しての下地となるプラスチック基材1等の特性が損なわれずに、且つ40℃90%RHで10−2g/m・day/atom以下、特に10−3g/m・day/atom以下の水蒸気透過度が確保できる程度の厚みとするのがよく、上述した高酸化度領域が占める割合によっても異なるが、一般に、4乃至500nm、特に30乃至400nm程度の厚みを有していればよい。あるいは、上述した水蒸気透過度を確保するため、水分バリア層を有するフィルムを複数重ねても良い。
上述したプラスチック基材1及び第2の有機層10と水分バリア層、及び第1の有機層9と水分トラップ層5の間には、密着性の向上を目的に、アンカーコート層を設けてもよい。
アンカーコート層を形成する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂としては、溶剤性及び水性の樹脂がいずれも使用することができ、具体的には、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコン系樹脂、アルコール性水酸基含有樹脂(ビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂等)、ビニル系変性樹脂、イソシアネート基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アルキルチタネート等を単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
<水分トラップ層5>
水分トラップ層5は、この水分バリア性多層構造体11に対して厚み方向に流れる水分を遮断するものであり、このような水分遮断性を示すものであれば、特に制限されず、所定の樹脂層中にゼオライトやシリカゲル等の物理的乾燥剤や、酸化カルシウム等の化学的乾燥剤を分散させたものや、ポリビニルアルコールや水溶性ナイロン、ポリエチレンオキサイドなどの吸湿性を有する非イオン性ポリマー等、それ自体公知の層であってよいが、特に、水分に対する高いバリア性が要求される場合には、例えば、特開2015−96320号等に開示されているイオン性ポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中にイオン性ポリマーよりも到達湿度が低い吸湿剤が分散された構造を有するものが好適である。このようなイオン性ポリマーをマトリックスとするものは、水分捕捉性が優れ、しかも水分吸収に起因する膨潤などの変形を有効に回避することができるからである。
図2には、上記のようなイオン性ポリマーをマトリックスとした水分トラップ層5の代表的な構造が示されており、図2(a)は、イオン性基としてカチオン性基(NH基など)を有するカチオン性ポリマーをマトリックスする水分トラップ層が示されており、図2(b)には、イオン性基としてアニオン性基(COONa基,COOH基など)を有しているアニオン性ポリマーをマトリックスする水分トラップ層が示されている。
即ち、上記のイオン性ポリマーをマトリックスとする水分トラップ層5では、前述した第1の水分バリア層3を通って流入した微量の水分は、このマトリックス(イオン性ポリマー)に吸収されることとなる。マトリックス自体が高い吸湿性を示すため、水分を漏れなく捕水し、吸収するわけである。
ところで、単に水分がマトリックスに吸収されたに過ぎない場合には、温度上昇などの環境変化により、吸収された水分は容易に放出されてしまうこととなる。また、水分の侵入により、マトリックスを形成するポリマー分子の間隔を広げ、この結果、この水分トラップ層5は膨潤してしまうことにもなる。
しかるに、マトリックス(イオン性ポリマー)よりも到達湿度が低い吸湿剤が分散されている場合には、マトリックス中に吸収された水分は、このマトリックスよりも吸湿性の大きい(即ち、到達湿度が低い)吸湿剤によってさらに捕捉されることとなり、吸収された水分子による膨潤が有効に抑制されるばかりか、この水分子は、水分トラップ層5中に閉じ込められ、この結果、水分トラップ層5からの水分の放出も有効に防止されることとなる。
このように、イオン性ポリマー中に吸湿剤を分散させることにより水分トラップ層5を形成した場合には、高い吸湿能力と共に水分の捕捉と閉じ込めとの2重の機能を有しているため、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、水分が水分バリア層を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉して更に層全体で水分を補足するために外部へ漏らすことも無く、著しく高い水分バリア性を実現することができる。
イオン性ポリマー(カチオン性ポリマー);
本発明において、上記のようなマトリックスの形成に使用するイオン性ポリマーの内、カチオン性ポリマーは、水中で正の電荷となり得るカチオン性基、例えば、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウムなどを分子中に有しているポリマーである。このようなカチオン性ポリマーは、カチオン性基が、求核作用が強く、かつ水素結合により水を補足するため、吸湿性を有するマトリックスを形成することができる。
カチオン性ポリマー中のカチオン性基量は、一般に、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K−7209−1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%〜45%となるような量であればよい。
また、カチオン性ポリマーとしては、アリルアミン、エチレンイミン、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4−(4−ビニルフェニル)−メチル]−トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体;及び、それらの塩類;に代表されるカチオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に、重合乃至共重合し、さらに必要により、酸処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
また、上記のカチオン性単量体を使用する代わりに、カチオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等を使用し、重合後に、アミノ化、アルキル化(第4級アンモニウム塩化)などの処理を行ってカチオン性ポリマーを得ることもできる。
本発明においては、上記のカチオン性ポリマーの中でも、特にアリルアミンが成膜性等の観点から好適である。
本発明においては、前述したカチオン性ポリマーを用いて形成されるマトリックスには、架橋構造を導入しておくことが、吸湿能力を低下させることなく機械的強度を確保すると同時に、寸法安定性を向上させる上で好ましい。
即ち、吸湿性のマトリックス中に架橋構造が導入されていると、該マトリックスが水を吸収したとき、カチオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束されることとなり、膨潤(水分吸収)による体積変化を抑制し、機械的強度や寸法安定性の向上がもたらされる。
上記の架橋構造は、水分トラップ層5を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入することができる。
イオン性ポリマー(アニオン性ポリマー);
本発明において、吸湿性のマトリックスの形成に使用するアニオン性ポリマーは、水中で負の電荷となり得るアニオン性の官能基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基や、これらの基が部分的に中和された酸性塩基を分子中に有しているポリマーである。このような官能基を有するアニオン性ポリマーは、上記官能基が水素結合により水を補足するため、吸湿性マトリックスを形成することができる。
アニオン性ポリマー中のアニオン性官能基量は、官能基の種類によっても異なるが、前述したカチオン性ポリマーと同様、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K−7209−1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%〜45%となるような量であればよい。
上記のような官能基を有するアニオン性ポリマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体;α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体;及びこれら単量体の塩類;などに代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に重合乃至共重合させ、さらに必要により、アルカリ処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
また、上記のアニオン性単量体を使用する代わりに、上記のアニオン性単量体のエステルや、アニオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類等を使用し、重合後に、加水分解、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化などの処理を行ってアニオン性ポリマーを得ることもできる。
本発明において、好適なアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸及びその部分中和物(例えば一部がNa塩であるもの)である。
また、本発明においては、前述したアニオン性ポリマーを用いて形成される吸湿性マトリックスにおいても、架橋構造を導入しておくことが特に好ましく、これにより、水分トラップ層5の水分トラップ能力がさらに高められ、しかも、寸法安定性のさらなる向上がもたらされている。
即ち、アニオン性ポリマーの場合、カチオン性ポリマーとは異なって、水素結合による水の補足のみなので、吸湿に適した空間の網目構造(架橋構造)をマトリックス中に導入することにより、その吸湿性を大きく高めることができる。このような架橋構造は、例えば、網目構造中に脂環構造のような疎水部位を有しているものであり、これにより、親水部位の吸湿効果がより高められる。
さらに、吸湿性マトリックス中に架橋構造を導入することにより、該マトリックスが水を吸収したとき、アニオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束され、膨潤(水分吸収)による体積変化が抑制され、寸法安定性が向上する。このような寸法安定性向上効果は、前述したカチオン性ポリマーの場合と同様である。
上記の架橋構造は、カチオン性ポリマーの場合と同様、水分トラップ層5を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入される。
吸湿剤;
上述したイオン性ポリマーをマトリックスとする水分トラップ層5中に分散される吸湿剤は、上記のマトリックスを形成するイオン性ポリマー(カチオン性或いはアニオン性ポリマー)よりも到達湿度が低く、極めて高い吸湿性能を有するものでる。このようにマトリックスよりも高い吸湿性を有する吸湿剤を分散させることにより、前述したイオン性ポリマーにより形成されたマトリックスに吸収された水分が直ちに吸湿剤に捕捉され、吸収された水分のマトリックス中への閉じ込めが効果的に行われることとなり、極めて低湿度雰囲気でも水分の吸湿能力を有効に発揮することができるばかりか、水分の吸収による水分トラップ層5の膨潤も有効に抑制される。
上記のような高吸湿性の吸湿剤としては、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いことを条件として、例えば後述する実施例で示されているように、湿度80%RH及び温度30℃の環境条件での到達湿度が6%以下のものが好適に使用される。即ち、この吸湿剤の到達湿度がイオン性ポリマーよりも高いと、マトリックスに吸収された水分の閉じ込めが十分でなく、水分の放出等を生じ易くなるため、水分バリア性の著しい向上が望めなくなってしまう。また、到達湿度がイオン性ポリマーよりも低い場合であっても、上記条件で測定される到達湿度が上記範囲よりも高いと、例えば低湿度雰囲気での水分のトラップが不十分となり、水分バリア性を十分に発揮できないおそれがある。
上記のような吸湿剤は、一般に湿度80%RH及び温度30℃雰囲気下において50%以上の吸水率(JIS K−7209−1984)を有しており、無機系及び有機系のものがある。
無機系の吸湿剤としては、ゼオライト、アルミナ、活性炭、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカゲル、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。
有機系の吸湿剤としては、アニオン系ポリマー若しくはその部分中和物の架橋物を挙げることができる。このアニオン系ポリマーとしては、カルボン酸系単量体((メタ)アクリル酸や無水マレイン酸など)、スルホン酸系単量体(ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ホスホン酸系単量体(ビニルリン酸など)及びこれら単量体の塩類等に代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、重合或いは他の単量体と共重合させて得られるものを挙げることができる。特に透明性が求められる用途においては、有機系の吸湿剤が有効である。例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸Naの微細粒子などが代表的な有機系吸湿剤である。
本発明においては、比表面積が大となり、高い吸湿性を示すという観点から粒径が小さな吸湿剤が好ましく(例えば、平均一次粒子径が100nm以下、特に80nm以下)、特に粒径の小さな有機系ポリマーの吸湿剤が最適である。
即ち、有機系ポリマーの吸湿剤は、イオン性ポリマーのマトリックスに対する分散性が極めて良好であり、均一に分散させることができるばかりか、これを製造するための重合法として乳化重合や懸濁重合などを採用することにより、その粒子形状を微細で且つ揃った球形状とすることができ、これをある程度以上配合することにより、極めて高い透明性を確保することが可能となる。
また、有機系の微細な吸湿剤では、前述した到達湿度が著しく低く、高い吸湿性を示すばかりか、架橋によって膨潤による体積変化も極めて少なくすることができ、従って、体積変化を抑制しながら、環境雰囲気を絶乾状態もしくは絶乾状態に近いところまで湿度を低下させる上で最適である。
このような有機系の吸湿剤の微粒子としては、例えば架橋ポリアクリル酸Na微粒子(平均粒子径約70nm)がコロイド分散液(pH=10.4)の形で東洋紡株式会社よりタフチックHU−820Eの商品名で市販されている。
本発明において、上記のような吸湿剤の量は、その特性を十分に発揮させ、水分バリア性の著しい向上及び膨潤による寸法変化を有効に抑制させると同時に、水分バリア層3が示すバリア性よりも高い水分バリア性を長期間にわたって確保するという観点から、イオン性ポリマーの種類に応じて設定される。
例えば、上述したイオン性ポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中に吸湿剤が分散されている水分トラップ層5は、特に超水分バリア性が要求されるような用途では、水蒸気透過度が10−5g/m/day以下となるような超バリア性を発揮させる程度の厚み(例えば、1μm以上、特に2乃至20μm程度)に設定されるが、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合には、水分トラップ5中のイオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至900重量部の量で存在することが好ましく、更には200乃至600重量部の量であることがより好ましい。また、マトリックスがアニオン性ポリマーにより形成されている場合には、水分トラップ層5中のアニオン性ポリマー100重量部当り、50重量部以上、特に100乃至1300重量部の量で存在することが好ましく、更には150乃至1200重量部の量であることがより好ましい。
水分トラップ層5の形成;
また、上述した水分トラップ層5は、マトリックスとなるイオン性ポリマーに吸湿剤及び必要により架橋剤を所定の溶媒に溶解乃至分散したコーティング組成物を使用し、このコーティング組成物を、第1の水分バリア層3上に塗布し、乾燥して溶媒を除去することにより形成されるが、このような成膜後、乾燥雰囲気中、減圧下に保持し、この層5中に含まれる水分を放出せしめることが必要である。水分トラップ層5が水分を含む状態で多層構造体11が作製された場合には、短期間で水分が飽和状態に達してしまうからである。
である。
尚、上記の水分トラップ層5形成用のコーティング組成物の組成は、特開2015−96320号等に記載されているとおりであり、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合(以下、単に「カチオン性マトリックス」と呼ぶ)と、アニオン性ポリマーにより形成されている場合(以下、単に「アニオン性マトリックス」と呼ぶ)とで多少異なる。
カチオン性マトリックスの場合;
かかるコーティング組成物において、カチオン性ポリマーと吸湿剤とは、前述した量比で使用される。即ち、100重量部のカチオン性ポリマーに対して、前述した量で、カチオン性ポリマーと共に、吸湿剤はコーティング組成物中に配合される。
また、カチオン性ポリマーの吸湿性マトリックスに架橋構造を導入するための架橋剤により、例えば、架橋構造にシロキサン構造または多脂環構造を導入することができ、これにより、吸湿に適した空間の網目構造を形成する。
この場合の架橋剤としては、カチオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えば、エポキシ基)と、加水分解と脱水縮合を経て架橋構造中にシロキサン構造を形成し得る官能基(例えば、アルコシシリル基)を有している化合物を使用することができ、特に、下記式(1):
X−SiR (OR3−n (1)
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
及びRは、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソプロピル基
であり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表されるシラン化合物が好適に使用される。
このようなシラン化合物は、官能基としてエポキシ基とアルコキシシリル基とを有しており、エポキシ基がカチオン性ポリマーの官能基(例えばNH)と付加反応する。一方アルコキシシリル基は、加水分解によりシラノール基(SiOH基)を生成し、縮合反応を経てシロキサン構造を形成して成長することにより、最終的にカチオン性ポリマー鎖間に架橋構造を形成する。これにより、カチオン性ポリマーのマトリックスには、シロキサン構造を有する架橋構造が導入されることとなる。
しかも、このコーティング組成物は、カチオン性ポリマーを含んでいるため、アルカリ性であり、この結果、カチオン性基とエポキシ基の付加反応やシラノール基間の脱水縮合も速やかに促進されることとなる。
本発明において、上記式(1)中のエポキシ基を有する有機基Xとしては、γ−グリシドキシアルキル基が代表的であり、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが架橋剤として好適に使用される。
また、上記式(1)中のエポキシ基が、エポキシシクロヘキシル基のような脂環式エポキシ基であるものも架橋剤として好適である。例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのような脂環式エポキシ基を有する化合物を架橋剤として使用した場合には、マトリックスの架橋構造中に、シロキサン構造と共に、脂環構造が導入される。このような脂環構造の導入は、吸湿に適した空間の網目構造を形成するというマトリックスの機能を更に効果的に発揮させることができる。
さらに、架橋構造中に脂環構造を導入するために、複数のエポキシ基と脂環基とを有している化合物、例えば、下記式(2):
G−O(C=O)−A−(C=O)O−G (2)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基である、
で表されるジグリシジルエステルを、架橋剤として使用することができる。このようなジグリシジルエステルの代表的なものは、下記の式(2−1)で表される。
即ち、式(2)のジグリシジルエステルは、アルコキシシリル基を有していないが、架橋構造中に脂環構造を導入するため、マトリックス中に吸湿に適した空間の網目構造を形成するという点で効果的である。
このようなカチオン性マトリックスの場合においてのコーティング組成物では、上述した架橋剤は、カチオン性ポリマー100重量部当り、5乃至60重量部、特に15乃至50重量部の量で使用することが望ましく、このような架橋剤の少なくとも70重量%以上、好ましくは80重量%以上が、前述した式(1)のシラン化合物であることが望ましい。
架橋剤の使用量が多すぎると、機械強度的に脆くなりハンドリング性が損なわれたり、塗料にした際に増粘が速く有効なポットライフが確保できなくなるおそれがあり、また、少なすぎると、これに伴い、厳しい環境下(例えば高湿度下)に曝された場合の耐性(例えば機械的強度)が確保できなくなるおそれがある。
上述した各種成分を含むコーティング組成物に使用される溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、或いはこれら溶媒と水との混合溶媒、或いは水、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などを使用することができるが、特にコーティング組成物中の架橋剤中のアルコキシシリル基を有するシラン化合物の加水分解を促進させるために、水或いは水を含む混合溶媒を使用することが望ましい。
尚、上述した溶媒は、コーティング組成物がコーティングに適した粘度となるような量で使用されるが、コーティング組成物の粘度調整のため、或いは形成される吸湿性マトリックスの吸水率を適宜の範囲に調整するため、非イオン性重合体を適宜の量で配合することもできる。
このような非イオン性重合体としては、ポリビニルアルコール、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、或いは、これらに、各種のコモノマー(例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、α,β,β´−トリハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマーや、エチレン、ブチレン等のモノオレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンなど)を、共重合させたものなどを挙げることができる。
アニオン性マトリックスの場合;
この場合の水分トラップ層5を形成するためのコーティング組成物において、アニオン性ポリマーと吸湿剤とは、100重量部のアニオン性ポリマーに対しての吸湿剤の量が前述した範囲となるように、コーティング組成物中に配合される。
また、このコーティング組成物においても、前述したカチオン性マトリックスの場合と同様、適宜、架橋剤が配合される。
この架橋剤としては、アニオン性ポリマーが有しているイオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えばエポキシ基)を2個以上有している化合物を使用することができ、カチオン性マトリックス用のコーティング組成物でも挙げられた式(2):
G−O(C=O)−A−(C=O)O−G (2)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基である、
で表されるジグリシジルエステルが好適に使用される。
即ち、上記式(2)のジグリシジルエステルにおいては、エポキシ基がアニオン性基と反応し、2価の基Aによる脂環構造を含む架橋構造がマトリックス中に形成される。このような脂環構造を含む架橋構造によりされ、膨潤の抑制がもたらされる。
特に、上記のジグリシジルエステルの中でも好適なものは、先にも挙げられており、特に、吸湿に適した空間の網目構造を形成できるという観点から、先の式(2−1)で表されるジグリシジルエステルが最も好適である。
このようなアニオン性マトリックス用のコーティング組成物において、上記の架橋剤は、アニオン性ポリマー100重量部当り、1乃至50重量部、特に10乃至40重量部の量で使用することが望ましい。架橋剤の使用量が多すぎると、機械強度的に脆くなりハンドリング性が損なわれたり、塗料にした際に増粘が速く有効なポットライフが確保できなくなるおそれがあり、また、少なすぎると、これに伴い、厳しい環境下(例えば高湿度下)に曝された場合の耐性(例えば機械的強度)が確保できなくなるおそれがある。
上述した各種成分を含むコーティング組成物に使用される溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、カチオンマトリックス用のコーティング組成物でも挙げられたものと同種のものを使用することができる。
さらに、上述したアニオンマトリックス用のコーティング組成物には、pH調整のために、アルカリ(例えば水酸化ナトリウムなど)を添加することもでき、例えば、pHが8乃至12程度となるようにアルカリを添加するのがよい。
上述した溶媒は、カチオンマトリックス用のコーティング組成物と同様、コーティング組成物がコーティングに適した粘度となるような量で使用され、且つコーティング組成物の粘度調整のため、或いは形成される吸湿性マトリックスの吸水率を適宜の範囲に調整するため、先にも例示した非イオン性重合体を適宜の量で配合することができる。
図1に示されている積層構造の水分バリア性多層構造体11において、上述したカチオン性マトリックス形成用或いはアニオン性マトリックス形成用のコーティング組成物を用いての成膜は、上述したコーティング組成物を、第1の水分バリア層3に塗布し、80〜160℃程度の温度に加熱することにより行われる。加熱時間は、例えば加熱オーブン等の加熱装置の能力にも依るが、一般に、数秒から数分間である。この加熱により、溶媒が除去され、さらに、架橋剤がイオン性ポリマーと反応し、架橋構造がマトリックス中に導入された水分トラップ層5を形成することができる。
<第1の有機層9>
上記のようにして形成された水分トラップ層5は、水分放出処理が行われた後、第2の有機層10上に形成された第2の水分バリア層7に接着剤を用いて接着固定され、これにより、水分トラップ層5と水分バリア層7との間に、第1の有機層9が形成されることとなる。
なお、上記の説明から理解されるように、第1の有機層9は、基本的には接着剤から形成されるが、接着剤に限定されるものではなく、原理的には、水分トラップ性(さらには水分バリア性)以外の機能を示す材料からなる機能層であってよい。例えば、水分トラップ層と水分バリア層とを隣接させないように水分トラップ層と水分バリア層との間に、水分トラップ層の吸湿に伴う膨潤による体積変動を緩和するための緩衝層、バリア層を成膜するための平滑化層などの機能を有する層であってもよく、更にバリア性や無機層との密着性などを向上させるために、無機フィラーやシラン系化合物が加えられた有機層(密着性向上層)であってもよい。一般に、第1の有機層9を形成する有機材料としては、ウレタン系接樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、などが挙げられる。
本発明においては、かかる第1の有機層9の厚みtが3μm未満、特に2.5μm以下の極めて薄い範囲に設定される。即ち、この厚みtが上記範囲よりも厚いと、透過水分のトラップ性能が低下する上、この第1の有機層9の端面からの水分流入量が多くなり、この結果、短期間で水分トラップ性能が消失してしまう。
また、第1の有機層9の厚みtの下限値は、第1の有機層9により水分トラップ層5と水分バリア層7とが強固に接着固定される限り特に制限されないが、一般的には、少なくとも0.1μm以上に設定される。
上記の第1の有機層9を形成する接着剤としては、感圧性接着剤や、接着性の樹脂成分を有機溶剤に溶解乃至分散させた所謂ドライラミネート接着剤として知られているもの、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などを使用することができる。本発明では、飽和吸湿率が低く、比較的高い水分バリア性を示すという観点から、ドライラミネート接着剤のウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤が好適である。
上述のウレタン系接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとを樹脂成分として含んでいる。
ポリオール成分としては、これに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等のジオールや、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール等の少なくとも1種が使用される。さらに、ポリエステルポリオール、水酸基含有アクリレート(例えばペンタエリスリトールトリアクリレートなど)などもポリオール成分として使用することができる。
ポリイソシアネートとしては、やはりこれに限定されるものではないが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びこれらイソシアネートの多核縮合体などの少なくとも1種を挙げることができる。
尚、上記のポリイソシアネートの末端は、ブロック化剤で封鎖されていてもよく、このようなブロック化剤としては、メタノール、エタノール、乳酸エステル等のアルコール;フェノール、サリチル酸エステル等のフェノール性水酸基含有化合物;ε−カプロラクタム、2−ピロリドン等のアミド;アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム等のオキシム;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等の活性メチレン化合物;などが代表的である。
上述のエポキシ系接着剤は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものが好ましい。このような樹脂としては、例えば、脂肪族グリシジルエーテル、ビスフェノールA型、AD型、S型又はF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル、アリル化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの重縮合物、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、アミノ基末端のポリウレタン、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられ、これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
上記感圧性接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシ基含有アクリル共重合体、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、イソブチレン系樹脂、及びエポキシ樹脂硬化剤からなる半硬化状態のエポキシ熱硬化系樹脂から選ばれる少なくとも一種からなるものが挙げられる。
上記のドライラミネート接着剤による第1の有機層9は、例えば、第2の有機層10上に形成された第2の水分バリア層7に該接着剤を塗布し、乾燥した後、第1の水分バリア層3上に形成された水分トラップ層5に圧着することにより形成される。
<他の層構造>
本発明においては、上記の基本層構造が確保されている限り、例えば第2の有機層10の第2の水分バリア層7が設けられている側とは反対側の面に、他の層が積層されて、さらなる多層構造が形成されていてもよく、これにより、水分バリア性をより向上させることができる。
例えば、第2の有機層10の上記面に、さらに水分バリア層が形成されていてもよい。このような水分バリア層は、一般的には、前述した水分バリア層3,7と同様、蒸着やコーティングにより形成されるものであってもよい。
また、上記の水分バリア層を介して、水分トラップ層や水分バリア層をさらに形成することもでき、また、第2の有機層10に直接水分トラップ層を形成し、この上に水分バリア層、水分トラップ層を形成することもできる。
勿論、さらに形成される多層構造において、水分バリア層や水分トラップ層は前述した方法に即して形成されるが、水分トラップ層と低水分雰囲気側の水分バリア層との間に有機層などの有機層が形成されるときには、当然、かかる有機層の厚みも、前述した第1の有機層9と同様の厚みに設定されていなければならない。
<用途>
このような本発明の水分バリア性多層構造体11は、各種の電子デバイス、例えば有機EL素子、太陽電池、電子ペーパーなどの電子回路を封止するためのフィルムとして好適に使用することができ、前述したプラスチック基材1が高湿度雰囲気側(具体的には大気側)となり、第2の有機7側が低湿度雰囲気側(具体的にはデバイス側)となるように、各種デバイスに装着し、優れた水分バリア性を発揮し、水分による電荷のリーク等を有効に回避することができ、例えば、有機ELの発光素子や太陽電池の光発電素子の保護にも使用することができる。
本発明の水分バリア性多層構造体の優れた性能を、以下の実験例により説明する。
<水蒸気透過度(g/m/day)の測定>
水分バリア性多層構造体を、高感度水蒸気透過度測定装置(technolox社製「デルタパーム」)を用い、60℃90%RH相当の水蒸気による圧力をサンプルの両側で形成して、水蒸気透過率を測定した。
<トラップ性能の維持時間>
上記の評価において、トラップ性能が失活するまでの時間を評価した。60℃90%の雰囲気環境下において、トラップ層が失活し、バリア性が初期から一桁悪くなるまでの時間が1000時間未満のものを×、1000時間以上のものを〇、2000時間以上のものを◎とした。
<水分バリア層被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの作製>
厚み12μmの2軸延伸PETフィルムの片面に、プラズマCVD装置を用いて、酸化ケイ素の水分バリア層を形成した。以下に、製膜条件を示す。
周波数27.12MHz、最大出力2kWの高周波出力電源、マッチングボックス、直径300mm、高さ450mmの金属型円筒形プラズマ処理室、処理室を真空にする油回転真空式ポンプを有するCVD装置を用いた。処理室内の並行平板にプラスチック基材を設置し、ヘキサメチルジシロキサンを3sccm、酸素を45sccm導入後、高周波発振器により50Wの出力で高周波を発振させ、2秒間の製膜を行い、密着層を形成した。次に、高周波発振器により200Wの出力で高周波を発振させ、50秒間の製膜を行い、酸化ケイ素の水分バリア層を形成し、水分バリア層被覆PETフィルムA1を得た。得られた上記水分バリア層被覆PETフィルムA1は、60℃90%RH雰囲気下で測定した水蒸気透過率が、5×10−2g/m/dayであった。
<実施例1>
イオン性ポリマーとしてポリアリルアミン(ニットーボーメディカル社製、PAA−15C、水溶液品、固形分15%)を、固形分5重量%になるように水で希釈し、ポリマー溶液を得た。一方、架橋剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、5重量%になるように水に溶かして架橋剤溶液を調製した。次いで、ポリアリルアミン100重量部に対してγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが15重量部になるように、ポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、この混合溶液に、吸湿剤として、ポリアクリル酸Naの架橋物(東洋紡製、タフチックHU−820E、水分散品、固形分13%)を、ポリアリルアミンに対して400重量部になるように加え、更に固形分が5%になるよう水で調整した上で良く撹拌し、水分トラップ層用のコーティング液Aを調製した。
前記で得られたコーティング液Aを、バーコーターにより、厚み50μmのPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4300)の片面に塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み3μmの水分トラップ層5を形成し、コーティングフィルムA1を得た。
次いで、窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムA1の、水分トラップ層5が形成されていない面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤(三井化学社製、タケラックA‐980(主剤)/タケネートA‐19(エポキシ系硬化剤))を介して、前記水分バリア層被覆PETフィルムを水分バリア層が内側になるようにドライラミネートし、ラミネートフィルムA1を得た。
ポリエステル樹脂(東洋紡社製、バイロンGK880)を、2―ブタノンに固形分が3重量%になるように溶解して、有機層用のコーティング液Bを調整した。
上記コーティング液Bを、前記で得られたラミネートフィルムA1の水分トラップ層5上に、水分トラップ層形成後速やかに、バーコーターにより塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み0.1μmの第1の有機層9を形成し、コーティングフィルムB1を得た。
次いで、前記コーティングフィルムB1の第1の有機層9上に、プラズマCVD装置を用いて、水分バリア層被覆PETフィルムA1の作成と同じ条件で、第2の水分バリア層7を速やかに形成し、ガスバリア性積層体12を得た。
<実施例2>
水分バリア層被覆PETフィルムA1の作成において、使用する樹脂基材を12μmの2軸延伸PETフィルムから厚み50μmのPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4300)に置き換え、水分バリア層被覆PETフィルムB1を作成した。次いで、前記で得られたコーティング液Aを、バーコーターにより、水分バリア層被覆PETフィルムB1の水分バリア層に塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み3μmの水分トラップ層5を形成し、コーティングフィルムA2を得た。
実施例1と同様のコーティング液Bを用いて、上記コーティングフィルムA2の水分トラップ層5上にバーコーターにより塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み0.1μmの第1の有機層9を形成し、コーティングフィルムB2を得た。
次いで、前記コーティングフィルムB2の第1の有機層9上に、プラズマCVD装置を用いて、水分バリア層被覆PETフィルムA1の作成と同じ条件で、第2の水分バリア層7を速やかに形成し、ガスバリア性積層体13を得た。
<実施例3>
主材樹脂(荒川化学社製、DA105 固形分35%)と硬化剤(荒川化学社製、CL102H 固形分40%)を、重量比5:2となるように配合し、2―ブタノンで固形分が20重量%になるように調整して、有機層用のコーティング液Cを調整した。
上記コーティング液Cを、厚み50μmの水分バリア層被覆PETフィルムB1に、バーコーターにより塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度150℃、ピーク温度保持時間2分の条件で熱処理し、厚み1μmの有機層4を形成し、コーティングフィルムC1を作成した。
前記コーティングフィルムC1の有機層4上に、前記で得られたコーティング液Aを、バーコーターにより塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み3μmの水分トラップ層5を形成し、コーティングフィルムA3を得た。
上記コーティング液Cを、前記で得られたコーティングフィルムA3の水分トラップ層5上に、水分トラップ層形成後速やかに、バーコーターにより塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度150℃、ピーク温度保持時間2分の条件で熱処理し、厚み1μmの第1の有機層9を形成し、コーティングフィルムC2を作成した。
次いで、前記コーティングフィルムC2の第1の有機層9上に、プラズマCVD装置を用いて、水分バリア層被覆PETフィルムA1の作成と同じ条件で、第2の水分バリア層7を速やかに形成し、ガスバリア性積層体14を得た。
<実施例4>
実施例2において、窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムA2の水分トラップ層の上に、厚さ1.8μmの前記ウレタン系接着剤を介して、前記水分バリア層被覆PETフィルムA1を水分バリア層が内側になるようにドライラミネートし、図1に示すような層構造のガスバリア性積層体11を得た。
<実施例5>
水分トラップ層として、吸湿材の酸化カルシウム含有LLDPEマスターバッチ(近江化学工業株式会社製、Bell―CML)と、マトリックス樹脂層のLDPE(住友化学株式会社製、スミカセン)を樹脂成分75重量部に対して吸湿機能成分(ここでは酸化カルシウム)が25重量部になるよう混合し、吸湿性樹脂層用の押出機に投入して、厚み25μmの吸湿フィルムD1を作成した。
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記吸湿フィルムD1の両面に、厚さ1.8μmの前記ウレタン系接着剤を介して、前記水分バリア層被覆PETフィルムを水分バリア層が内側になるようにドライラミネートし、ガスバリア性積層体15を得た。
<実施例6>
市販のPVD法により形成された蒸着PETフィルム(凸版印刷社製、GL−RD)2枚を、水分バリア層と基材PET面同士を、厚さ1.8μmの前記ウレタン系接着剤によってドライラミネートをし、水分バリアフィルム積層体E1を作成した。次いで、前記水分バリアフィルム積層体E1の、水分バリア層と基材PET面同士を貼り合わせた水分バリアフィルム積層体E2と、前記水分バリアフィルム積層体E1の、基材PET面同士を貼り合わせた水分バリアフィルム積層体E3を、それぞれ厚さ1.8μmの前記ウレタン系接着剤によるドライラミネートによって作成した。
水系ウレタン樹脂(三井化学社製、WPB−341 固形分30%)とブロックイソシアネート(三井化学社製、XWB−F206 固形分70%)を、重量比5:1となるように配合し、水で固形分が20重量%になるように調整して、有機層用のコーティング液Dを調整した。
前記水分バリアフィルム積層体E3の両面に、前記で得られたコーティング液Dを、バーコーターにより塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度150℃、ピーク温度保持時間2分の条件で熱処理し、無機バリアフィルム積層体E3の両面にそれぞれ厚さ0.3μmの有機層を形成した。次いで、コーティング液Aを、バーコーターにより、前記の水分バリアフィルム積層体E3の両面の有機層の上に順次塗布し、ボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み3μmの水分トラップ層5を両面に有する、コーティングフィルムA4を得た。更に、前記コーティング液Cを、コーティングフィルムA4の両面に形成された水分トラップ層の上に順次バーコーターにより塗布をし、ボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度150℃、ピーク温度保持時間2分の条件で熱処理し、厚み1μmの有機層を両面に有するコーティングフィルムC3を作成した。
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムの片面に、厚さ1.8μmの前記ウレタン系接着剤を介して、前記水分バリアフィルム積層体E2を水分バリア層が内側になるようにドライラミネートし、ガスバリア性積層体16を得た。
<実施例7>
前記無機バリアフィルムE2の水分バリア層上に、実施例6と同様にコーティング液D、コーティング液A、コーティング液Cを順次塗布・熱処理を実施して、フィルム片側の表面に厚み1μmの有機層を有するコーティングフィルムC4を作成した。
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記水分バリアフィルム積層体E1の水分バリア層上に、厚さ1.8μmの前記ウレタン系接着剤を介して、前記コーティングフィルムC4の有機層側が内側になるようにドライラミネートし、さらに前記水分バリアフィルム積層体E1のPET面側にも、厚さ1.8μmの前記ウレタン系接着剤を介して、前記コーティングフィルムC3をドライラミネートし、ガスバリア性積層体17を得た。
<比較例1>
実施例1において、第1の有機層9の厚みを4μmとする以外は、実施例1と同様の方法で、ガスバリア性積層体18を得た。
<比較例2>
実施例4において、前記ウレタン系接着剤の厚みを3μmとする以外は、実施例4と同様の方法で、ガスバリア性積層体19を得た。
<評価試験>
上記で作製された試料のラミネート積層体について、前述した方法で各種特性を測定し、その結果を、表1に示した。
1:プラスチック基材
3:第1の水分バリア層
5:水分トラップ層
7:第2の水分バリア層
9:第1の有機層
10:第2の有機層
11:水分バリア性多層構造体

Claims (8)

  1. 高水分雰囲気に対面しているプラスチック基材の高水分雰囲気には対面していない側に、複数の水分バリア層と、該水分バリア層の間に位置する水分トラップ層とが設けられており、さらに、該水分トラップ層と、該水分トラップ層よりも、低水分雰囲気側に位置する水分バリア層との間に有機層が設けられている水分バリア性多層構造体において、
    前記有機層の厚みが0.1μm以上3μm未満の範囲にあることを特徴とする水分バリア性多層構造体。
  2. 前記有機層が接着剤層である、請求項1に記載の水分バリア性多層構造体。
  3. 前記有機層がエポキシ樹脂、アクリル樹脂またはウレタン樹脂よりなる請求項1または2に記載の水分バリア性多層構造体。
  4. 前記水分バリア層が、前記プラスチック基材の少なくとも一方の面に形成された無機薄膜からなる請求項1〜3の何れかに記載の水分バリア性多層構造体。
  5. 前記無機薄膜が、蒸着により形成された無機酸化物の薄膜である請求項1〜4の何れかに記載の水分バリア性多層構造体。
  6. 前記水分トラップ層が、吸湿性の無機粒子を含む樹脂、吸湿性のイオン性ポリマー、吸湿性の非イオン性ポリマーから選ばれる請求項1〜5の何れかに記載の水分バリア性多層構造体。
  7. 前記水分トラップ層が、イオン性ポリマーからなる吸湿性マトリックス中に、該マトリックスよりも到達湿度が低湿度である吸湿剤が分散された構造を有している請求項6に記載の水分バリア性多層構造体。
  8. 請求項1〜7の水分バリア性多層構造体からなる電子デバイス用部材。
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