JP7316825B2 - スクラッチ‐冷凍生地兼用改良剤及び当該剤を使用した加糖中種パンの製造方法 - Google Patents

スクラッチ‐冷凍生地兼用改良剤及び当該剤を使用した加糖中種パンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、加糖中種製法で作製したパン生地を冷凍保存しても、冷凍障害を軽減することの出来るパン生地改良剤と当該剤を使用した加糖中種製法のパンの製造方法に関する。
食事にパンを食べる習慣は高齢者世代にも根付き、一世帯あたりのパン消費量は近年増加傾向にある。さらに、パン食の習慣が根付いた結果、消費者にパンを提供するスタイルも多様化し、従来通りのスーパー、コンビニ、リテイルベーカリーに加えて、カフェやホテルなど他業種のサービスでもパンを提供するシーンが増えている。一方で、人口減少、少子高齢化が進行し、就労人口の減少が問題視される中で、製パン業界においても、人手不足は深刻な問題であり、人手不足と未熟な製パン技術を穴埋めするための製造方法や原材料が開発、改良されている。
パンを製造する工程は、仕込み、混捏、フロアタイム(一次発酵)、分割、ベンチタイム、成型、ホイロ(二次発酵)、焼成に大きく分けられ、仕込みから焼成までの工程を連続的に行う製法はスクラッチ法または単にスクラッチと呼ばれている。一方で、上記の工程に冷凍保存の工程を挟み、作業を分割して製造者やパン職人の負担を軽減する冷凍生地製法があり、人手不足を解決する方法として取り組まれている。冷凍生地製法は、冷凍するタイミングによって、板生地冷凍法、生地玉冷凍法、成型後冷凍法、ホイロ後冷凍法、焼成後冷凍法などに分けられるが、最も代表的に行われる方法は成型後冷凍法である。
冷凍生地製法は、製造途中の生地または完成したパンを冷凍保存出来るため、製造または販売スケジュールに合わせて大量製造も可能であり、同時に製造ロスや販売ロスも軽減することが出来る。成型後冷凍法においては、セントラルベーカリーで成型して冷凍した後、冷凍保存してホイロとオーブンを備えたチェーンベーカリーに配送することで、少量、多品種のパンを複数のチェーンベーカリーで販売することが出来る。また、製パン技術の習得度が低い従業員でも焼き立てのパンを店舗に出すことが出来るため、人材雇用がしやすく、人手不足の問題を解決しやすい等の長所がある。
一方で、冷凍生地製法に生じやすい外観、内相及び食感の品質的低下は、冷凍障害と呼ばれ、成型後冷凍法でも改善の難しい短所として挙げられる。冷凍障害が発生するメカニズムは完全には解明されていないが、冷凍保存中に形成される氷結晶とイースト菌体からの還元型グルタチオンの漏洩が主な要因とされている。パン生地中の氷結晶は冷凍保管中に成長し、パン生地の骨格を損傷させる。また、フロア工程を経過したイーストは、生育・増殖のためにエネルギーを消費した状態で凍結されるため、細胞破壊を起こしやすく、菌体内から還元型グルタチオンを漏洩させる。還元型グルタチオンはグルテンのS-S結合の一部を開裂させるため、パン生地を軟化または弱化させる。これらの変化を受けたパンは、解凍後のイーストによる発酵が不十分になり、さらに発酵や焼成で発生するガスを保持できないため、ボリューム低下、ロール成型時に見られる腰落ち、クラム部の内相の荒れ、硬くパサついた食感等、品質の悪化が目立つようになる。
上記の冷凍障害を軽減するために冷凍生地製法で最も行われる改良方法としては、グルテンやイーストの添加量を多くしたり、水の添加量を少なくするなど、冷凍障害が発生しにくい配合を組むことである。また、冷凍保存前のイーストの生育・増殖を抑制するため、捏上温度を低くしたり、フロアタイムをスクラッチ法の場合より短時間にするなど、工程条件も変える必要があった。
そのため、パンに使用する小麦粉の一部をイーストと水で予めしっかりと発酵し、発酵後の生地を残りの原材料と混捏して、さらにフロアタイムをとってから分割する中種法は、冷凍障害を受けやすいポイントが複数あるため、冷凍生地にすることが技術的に難しいと考えられてきた。特に、配合する糖が多ければ多いほどパン生地は軟化してだれやすいため、ロール成型で冷凍保存すると腰落ちが顕著に目立つ等の課題が残されていた。
上記のような特徴から、スクラッチと冷凍生地製法は、配合と工程が初めから異なるため、仕込み段階から別々の製造スケジュールを立てる必要があり、リテイルベーカリー等で両方の製法を行う場合には、冷凍生地製法は必ずしも労力削減に繋がらず、依然として従業員の負担は軽減出来なかった。また、スクラッチの中種法で作製したパンは、他の製法で作製したパンよりもソフト性が高く、老化抑制にも優れているため、冷凍生地工場を持つ大手製パンメーカーは、スクラッチの中種法で得たパン生地を、工程の途中で冷凍保存出来るような原材料の開発、改良が従来より求められていた。
先行技術文献では中種法で作製した生地を冷凍保存する技術が開示されている。特許文献1では、イーストドーナツの中種生地に多量の酸化剤を添加することで、やわらかさとボリュームが維持され、吸油低減にも高い効果があることを開示している。当該文献のように、還元型グルタチオンによる影響を酸化剤で抑制することは幅広く行われているが、酸化剤の過剰添加は、機械耐性を低下させたり、成型の巻きを剥がす要因にもなるため、他の乳化剤や酵素と合わせて適度に伸展性を持たせながら使用することが好ましく、複数の素材を適した配合で組み合さなければならなかった。そのため、特許文献2および特許文献3では、冷凍生地パンのボリューム低下や腰落ちを酸化剤で抑制しているが、パンの種類に合わせて酸化剤以外の物質を選択し、配合検討する必要があることを示唆しており、より汎用性の高いパン生地物性改良剤が求められている。また、従来の技術においては、生地だれしやすい条件がそろい、ボリューム低下や腰落ちが発生しやすい加糖中種製法に対しては、冷凍障害を抑制する報告は開示されていなかった。
特開平5-219877号公報 特開平8-106200号公報 特許公報第3632723号公報
本発明が解決しようとする課題は、スクラッチ法と同様の配合で、混捏、フロアタイムを取り、分割、成型後に冷凍保存できる加糖中種生地を作製し、腰持ちとボリューム維持の出来るパン生地改良剤を提供することである。
仕込み時からスクラッチで配合を組んだパン生地は、スクラッチの工程条件で製造しており、途中で冷凍保存すると高品質のパンを得ることが出来なかった。同様に、冷凍生地製法で配合を組んだパン生地は、いずれかの工程で冷凍保存することを想定しており、仕込みから焼成まで連続してパンを作製しても、本来のスクラッチのパンより硬くパサついた食感であり、発酵時間も十分に取らないことから発酵風味も弱かった。そのため、スクラッチ法と冷凍生地製法は、別々のスケジュールを立てる必要があり、リテイルベーカリー等では依然として従業員の負担は軽減出来なかった。また、冷凍生地工場を持つ大手製パンメーカーにとっても、冷凍生地パンをスクラッチの中種法で作製したパンのような品質にまで高めることが出来なかった。
また、冷凍生地製法における冷凍障害に対して、ビタミンCなどの酸化剤が用いられてきたが、酸化剤は添加量が過剰になると機械耐性を低下させたり、成型を困難にすることから、生地状態を調節するために他の素材との配合検討が必要あり、使い方が限られていた。
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究を重ねた結果、カルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸でグルテンを加熱処理した組成物は、加糖中種製法で作製したパン生地に添加すると、冷凍保存しても、とりわけ腰持ちとボリュームの維持に効果的であり、さらに、内相の荒れを改善することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、
(1)冷凍・解凍したパン生地を用いるパンの製造方法において、発酵開始2時間後におけるトータルガス発生量が0.3mL/g以上0.7mL/g未満である中種生地を作製し、該中種生地を本捏生地と混捏したパン生地中に、グルテンと、該グルテン100重量部に対して0.5重量部以上のカルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸とを含有する溶液を、65℃以上で30分以上加熱処理して得られる組成物を含有させる方法。
(2)パン生地が高糖生地である、上記(1)の方法。
を提供するものである。
本発明のパン生地改良剤を加糖中種製法の生地に添加すると、加糖中種製法の配合と工程で仕込んだ生地を冷凍保存しても、冷凍障害を軽減することが出来る。特に軽減されやすい冷凍障害としては、腰持ちとボリュームの維持であり、さらに、内相の荒れを改善することが出来る。
従来は冷凍生地製法を用いる場合には、スクラッチ法の配合と比較して、水の添加量や発酵時間を減らし、イーストの添加量を増やすことで、冷凍障害を軽減する方法が取られてきたが、本発明のパン生地改良剤を用いると、加糖中種製法と同様に仕込んで、発酵させたパン生地を板生地冷凍法、生地玉冷凍法、成型後冷凍法、ホイロ後冷凍法、焼成後冷凍法へ途中の工程から切り替えることが出来る。
実施例1における腰もち度の測定方法 糖濃度の異なる中種生地におけるトータルガス発生量 実施例1におけるパンの高さの継時的変化 実施例1におけるパンの腰もちの継時的変化 実施例1におけるパンの底面のホワイトライン 実施例1におけるパンの切断面の内相
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる中種生地は、常法の作製方法に従ってよく、表1及び表3に記載される原材料及び工程により作製することが出来る。強力粉、イーストフード、グルコース、イースト、水を秤量し、ミキサーで混捏後、発酵温度を管理した発酵槽または発酵室で一定時間発酵させる。発酵時間は作製するパンの種類によって適宜調整してもよく、15分‐6時間、好ましくは0.5-4時間、より好ましくは1-3時間である。発酵温度は使用するイーストの特性に合わせてよく、20-30℃が望ましい。
本発明に用いられる本捏生地は、常法の作製方法に従ってよく、表2に記載される原材料及び工程により作製することが出来る。中種生地、強力粉、砂糖、食塩、脱脂粉乳、油脂、水、品質改良剤より構成され、ミキサーで混捏後、発酵温度を管理した発酵槽または発酵室で一定時間発酵させる。砂糖の添加量は適宜調整してもよく、対粉0-30%、好ましくは5-25%、より好ましくは10-20%である。
本発明におけるトータルガス発生量は、中種生地中のイーストが一定時間で生成した二酸化炭素を主要とするガス全量であり、イーストの活性が高いほど、トータルガス発生量は高い。活性が高いイーストはフロア工程で対数増殖期から定常期に移行した後、冷凍障害を受けると、グルタチオンを漏出しやすい。
本発明におけるパン生地改良剤は、グルテンと、該グルテン100重量部に対して1重量部以上のカルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸とを含有する溶液を、70℃以上で30分以上加熱処理する工程により得られる組成物である。
本発明において用いられるグルテンは、由来となる穀物も分離方法も特に限定されないが、小麦由来のグルテンが好ましい。また、分離されたグルテンは、分離したままのウェットタイプ(生グルテン)であっても、また、気流乾燥法(フラッシュドライ法)、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、真空乾燥法、凍結乾燥法(フリーズドライ法)などの各種乾燥方法を用いて乾燥させて粉末状にした活性グルテンのいずれであってもよいが、活性グルテンが好ましい。活性グルテンを用いる場合、その水分含量は、好ましくは10%未満、より好ましくは9%未満、さらに好ましくは8%未満、最も好ましくは6%未満である。
本発明において用いられる有機酸は、カルボニル基を同一分子内に2つ以上、好ましくは、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸で、異性体はシス体であってもトランス体であってもよく、ラセミ体であってもよい。カルボニル基を2つ以上、同一分子内に有する有機酸としては、コハク酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸が好ましく、コハク酸またはリンゴ酸がより好ましく、コハク酸がさらに好ましい。また、有機酸は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、グルテンと、カルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸(以下、単に有機酸という)とを含有する溶液を加熱処理する際、グルテンに対する有機酸の量は、例えばグルテン100重量部に対し、0.5重量部以上、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは2.0重量部以上、さらに好ましくは4.0重量部以上である。また、グルテンに対する有機酸の量の上限は、特に限定されないが、グルテンと有機酸が十分に反応し、最終製品に有機酸の味が残らないようにするために、例えば、グルテン100重量部に対し、100重量部未満、好ましくは50重量部未満、より好ましくは15重量部未満、さらに好ましくは13.5重量部未満、さらにより好ましくは12重量部未満、最も好ましくは10重量部以下である。
上記加熱処理は、有機酸を液体の媒体に溶解させた状態で用いることが好ましく、その媒体となる液体は、水が好ましい。グルテンと有機酸を含む溶液の調製方法は、グルテンを液体に分散させた後、有機酸や有機酸の溶解液を添加する方法、グルテンに対して、有機酸の溶解液を添加する方法、グルテンと有機酸を混合したものに、液体を添加する方法、グルテンと有機酸を混合したものを、液体に添加する方法のいずれであってもよい。
上記加熱処理の温度は、65℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。40℃では、グルテン等がダマになり、50℃~60℃では、ダマにはならないが、目的の改良されたグルテンを得ることができない。また、加熱処理の温度の上限は特にないが、水溶液での反応であり、反応物が熱変性を受けるタンパク質ということを考慮すると、100℃以下、好ましくは100℃未満、より好ましくは95℃未満、さらに好ましくは90℃以下である。
上記加熱処理より得られたグルテンと有機酸の反応物(以下、「パン生地改良剤」とする)は、そのまま、または、乾燥させて、固形化や粉末化し、本発明のパン生地改良剤として用いることができる。乾燥方法は特に限定されず、気流乾燥法(フラッシュドライ法)、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、ドラム乾燥法(ドラムドライ法)、真空乾燥法、凍結乾燥法(フリーズドライ法)などの各種乾燥方法を用いることができる。
本発明におけるパン生地改良剤は、単独で用いることもできるが、パンを製造する際に一般的に使用する、他の食品材料や、添加物、香料、色素などを混合して、製剤化してもよい。例えば、当該加糖中種生地用改良剤には、各種食用油脂、乳製品、果汁、穀物粉等や、モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、ステアロイル乳酸ナトリウムやステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ(ペントサナーゼ)、セルラーゼ、グルコースオキシダーゼ、プロテアーゼ等の酵素、システイン、シスチン、メチオニン、アラニン、アスパラギン酸、グリシン等のアミノ酸、コラーゲンや大豆タンパクやペプチド等、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸2水素カルシウム等の無機塩、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC(L-アスコルビン酸)、ビタミンE等のビタミン、エタノール、グリセロール等のアルコール、ショ糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖等の糖類、アラビアガム、アルギン酸、カラギナン、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドガム、ペクチン等の増粘多糖類、デキストリン、各種澱粉等の賦形剤等を含有させてもよい。また、パン生地改良剤の形態は特に限定されず、液状、顆粒状、ペースト状、乳液状のいずれの形状であってもよい。
本発明におけるパン生地改良剤は、穀物粉を原材料とするパン及びパン生地に用いることができ、当該改良剤を他の原材料に添加する以外は、従来の配合及び工程と同様に用いることができる。本発明のパン生地改良剤の穀物粉に対する添加量は、穀粉100重量部に対して通常0.1~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~5重量部である。
本発明において、パン及びパン生地に用いられる穀物粉には、小麦、米、大麦、ライ麦等の穀類から得られる穀粉があげられ、好ましくは小麦粉が用いられる。小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉および薄力粉のいずれの種類ならびに等級のものを用いてもよい。
本発明において、パン及びパン生地に用いられる穀物粉以外の原材料には、主原料として穀粉(小麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉等)、副材料として水、酵母(イースト)、食塩、糖類、油脂(ショートニング、ラード、マーガリン、バターなど)、乳製品(牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、練乳等)、卵、イーストフードなどが含まれる。
本発明において製造されるパンの種類は、限定されず、穀粉、イースト、食塩および水を主原料として、混捏、一次発酵、分割、成型、二次発酵、焼成などの工程により製出される加工食品であり、各工程間で冷凍保存しても良い。具体的な種類としては、食パン、ライ麦パン、フランスパン、バライティブレッド、ロールパン、クロワッサン、ホットドッグ、ハンバーガー、サンドイッチ、ジャムパン、あんぱん、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、ブリオッシュ、コロネ等、が挙げられるが、加糖中種生地を用いたパンが好ましい。
本発明におけるパン生地改良剤は、スクラッチ法で作製したパン生地を適宜途中の工程で冷凍保存することを可能とする。スクラッチ法とは、混捏、フロアタイム(一次発酵)、分割、ベンチタイム、成型、ホイロ(二次発酵)、焼成からなる工程を連続的に行う製パン法であり、代表的な製パン法としてはストレート法、2度捏法、ノーパンチ法、70%中種法、フル・フレーバー法、短時間中種法、長時間中種法(S780法)、オーバーナイト中種法(宵種法)、100%中種法、加糖中種法、が挙げられる。当該スクラッチ法で作製したパン生地を冷凍するタイミングは、従来の冷凍生地製法で知られるタイミングに倣って良く、混捏直後に生地を冷凍する板生地冷凍法、分割・丸め後に成型せずに生地を冷凍する生地玉冷凍法、成型後に生地を冷凍する成型後冷凍法、ホイロ後に生地を冷凍するホイロ後冷凍法、焼成した後に冷凍する焼成後冷凍法のいずれかの製法と同様の工程で保存することが出来る。
本発明において腰落ちとは、パン生地を冷凍し、一定期間冷凍保存した後、解凍して焼成した際に、パン生地がだれて底面が広がる状態をいう。
本発明において腰もちとは、パン生地を冷凍し、一定期間冷凍保存した後、解凍して焼成した際に、パン生地がだれることなく高さがあり、パンの側面は丸みを帯びて持ちあがって底面が小さく保たれる状態をいう。
本発明において、冷凍生地製法とは、混捏、フロアタイム(一次発酵)、分割、ベンチタイム、成型、ホイロ(二次発酵)、焼成からなる工程に、冷凍保存工程を挿入することによって、製パン作業を中断し、切り離すことが出来る製パン法である。冷凍保存工程をどの工程間に挿入するかによって、板生地冷凍法、生地玉冷凍法、成型後冷凍法、ホイロ後冷凍法、焼成後冷凍法に分けられる。
以下に、本発明の内容について実施例を用いて説明する。ただし、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で作製するパンの原材料の配合比は、強力粉を100重量部としてベイカーズ%(重量部)で記載した。冷凍生地用イーストは、ダイヤイーストFRZ(MCフードスペシャリティーズ)を用いた。当該イーストは、スクラッチ用としても用いることが出来る。また、イーストフードにはパンダイヤN(MCフードスペシャリティーズ)を用いた。
(発酵力の測定)
本発明におけるトータルガス発生量は、ファーモグラフを用いて測定した。表1に記載される原材料を秤量し、ピンミキサーで混捏後、20gずつに分割し、ファーモグラフのサンプル瓶にセットした。発酵温度は28℃とし、5分間の予備加温を終了した後、120分間発酵させ、トータルガス発生量を得た。
本発明におけるパン生地改良剤について、当該剤の添加効果は、加糖中種製法の生地を成型後冷凍することで評価した。加糖中種製法の生地は糖濃度が高く、かつ、フロアタイムとして十分な発酵時間が設けられた生地であることから、成型後冷凍した場合には、イーストからのグルタチオン漏洩等により冷凍障害を起こしやすい。また、当該実施例においては、水の配合比もスクラッチ法で仕込む場合と同じ配合比で仕込み、冷凍保存中の氷結晶の形成が生じやすい条件として評価した。
(試料の作製方法)
パン生地改良剤は、蒸留水500mLに、コハク酸4.00g(0.034mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて80℃まで加熱した。80℃達温後、300分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対してホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液をバットに広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量7.0W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、本発明におけるパン生地改良剤とした。
(製パン方法)
表1にパンの原材料の配合比を、表2に製パン工程及び各工程における条件を示した。
中種生地は全試験区とも同じ配合と工程で作製した。具体的には、強力粉、イーストフード、グルコース、イースト、水をそれぞれ秤量し、縦型ミキサーで混捏後、恒温槽で発酵した。
本捏生地には、何も加えない比較区1とグルテンを改良剤として添加した比較区2、および本発明のパン生地改良剤を添加した実施区1を用いて比較評価した。具体的には、強力粉、グラニュー糖、食塩、脱脂粉乳、水、発酵を終了した中種生地、グルテンまたはパン生地改良剤、をそれぞれ秤量し、縦型ミキサーで混捏した。ミキサーの撹拌速度を適宜調整し、生地内にグルテンが形成されたことを確認した後、ショートニングを添加し、再度混捏した。生地とショートニングが十分に混ざり合い、生地内にグルテンが再度形成させたことを確認してミキシングを終了し、この時の生地温度を捏上温度とした。また、ミキシング中に生地を適宜冷却することによって、捏上温度を28±0.5℃以内に調節した。捏ね上げた生地は恒温槽で一次発酵させた(フロアタイム)。フロアタイム終了後、生地を分割し、丸めて、ベンチタイムで生地を休ませた。ベンチタイム終了後、丸めた生地をモルダーでロール成型し、冷凍保存した。
冷凍期間は最長1ヶ月間とし、冷凍保存1日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後について添加効果を比較した。
冷凍庫から取り出した加糖中種生地は、ドウコンディショナーで解凍し、ホイロで二次発酵した後、焼成した。
焼成したパンは室温冷却し、粗熱が取れた後、恒温槽で一晩保管し、翌日評価した。
(添加効果の評価方法)
添加効果はパンの高さと腰もち度の測定、及び内相の外観について比較した。
<パンの高さ>
本発明においてロールパンは、ロール成型時の綴じ目線と並行した一辺を長辺とし、生地が巻かれて渦巻き状を示す一辺を短辺と定義した。ロールパンの高さは、長辺の長さ1/2の位置から長辺に対し前後2cmの部位で最も底部からの高さがある位置をロールパンの高さと定義した。
<パンの腰もち度>
ロールパンの高さとして測定した位置を長辺に対して垂直または短辺に対して平行にカットしたときの切断面を図1に示した。図1中のγはロールパンの底面と切断面が付着する短辺の長さを示し、αは切断面において最も長い短辺の長さを示した。腰もち度は、αに対するγの短さ、またはαからγを引いたロールパンが底面と接していない短辺の長さをαに対して比較した数値とした。腰もち度は1からγ/αを減じた値と定義し、0に近いほど腰もちは悪く、1に近いほど腰もちが良いことを示すが、1未満の数値とする。
腰もち度は目視での官能評価も可能である。腰もちの良いロールパンの底面は、底面の周囲にホワイトラインが残り、中心部より白い色調を呈する。一方、腰もちの悪いロールパンはホワイトラインがなく、底面全体が焼き色を呈するため、腰もちの良し悪しを識別することが可能である。
<内相>
内相は、上記の切断面について、切断面内側の気泡の細かさを比較することにより評価した。冷凍障害によるダメージが大きい内相は気泡の大きさが大きく、切断面全体で気泡の入り方が荒い様相を呈する。一方、冷凍障害によるダメージが少ない場合には、気泡の大きさが小さく、入り方が細かく均一な様相を呈する。
(結果)
<トータルガス発生量>
糖濃度3-20%の中種生地におけるイースト(ダイヤイーストFRZ)のトータルガス発生量を図2に示した。28℃で120分発酵させた後のトータルガス発生量は、濃度依存的に減少し、糖濃度3%から20%において0.3mL/g以上0.7mL/g未満だった。糖濃度3%はイーストの活性が最も高いため、冷凍障害を受けやすく、グルタチオン漏洩量も多いことが示唆された。
ロールパンの高さと腰もち度における継時的変化を図3及び図4に示した。
図3及び図4において、冷凍保存1日後を「冷凍1D」、冷凍保存1週間後を「冷凍1W」、冷凍保存2週間後を「冷凍2W」、冷凍保存1か月後を「冷凍1M」と記した。
ロールパンの高さについて比較すると、冷凍保存1日後から冷凍保存1ヶ月後まで実施区1の値が最も大きく、パン生地改良剤を添加することによって、ロールパンの高さが維持されることが示された。
ロールパンの腰もち度について比較すると、高さと同様に、冷凍保存1日後から冷凍保存1ヶ月後まで実施区1の値が最も大きく、パン生地改良剤を添加することによって、ロールパンの腰もちが維持されることが示された。
実施区1は高さと腰もち度が共に大きい値を示したことから、ボリュームも3つの試験区の中で最も大きいことが示唆された。
ロールパンの高さと腰もち度について冷凍1ヵ月間で継時的変化を比較すると、3試験区とも同様に減退したが、実施区1の冷凍保存1ヶ月後の値は、比較区1及び比較区2の冷凍保存1日後の数値よりも著しく高かった。実施区1は、比較区1および比較区2と比較すると、従来の冷凍生地製法で行ってきた水の配合量を減らしたり、発酵時間を短くするなどの変更を必要とせず、糖濃度が高く、発酵時間を長く取って作製しても、十分に冷凍障害を抑制出来ることを示した。
ロールパンの底面の様相を図5に示した。図5では、左から順に比較区1、比較区2、実施区1とした。比較区1の底面にホワイトラインが見当たらないのに対し、比較区2及び実施区1にはホワイトラインを確認することが出来た。実施区1のホワイトラインは比較区2よりも太く、底面において広い面積を占めていたことから、比較区2よりも腰もちが改善されていることが示唆された。
ロールパンの切断面の様相を図6に示した。図6では、左から順に比較区1、比較区2、実施区1とした。比較区1及び比較区2の内相は外側から中央部に向かって大きな気泡が増加するのに対し、実施区1は外側と中央部の気泡の大きさはほぼ同じであり、均一な内相を示した。このことから、本発明におけるパン生地改良剤は氷結晶によるパン生地の骨格の破壊を防ぎ、内相を均一に維持するのに有効であることが示された。
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Figure 0007316825000002
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以上説明してきたように、本発明のパン生地改良剤をスクラッチの加糖中種製法の生地に添加すると、製造工程の途中から冷凍保存しても、冷凍障害を軽減することが出来る。特に軽減されやすい冷凍障害としては、腰持ちとボリュームの維持であり、さらに、内相の荒れを改善することが出来る。従来は冷凍生地製法を用いる場合には、スクラッチ法の配合と比較して、水の添加量や発酵時間を減らし、イーストの添加量を増やすことで、冷凍障害を軽減する方法が取られてきたが、本発明のパン生地改良剤を用いると、加糖中種製法と同様に仕込んで、発酵させて、分割、成型したパン生地を冷凍保存することができる。さらに、焼成されたパンは、発酵時間を十分に取っているため、冷凍生地パンでは高められなかった発酵風味を高めることも可能である。本発明においては、冷凍障害が最も起こりやすい評価系で効果を確認した。そのため、パン生地改良剤を用いれば、その他のスクラッチ法に分類される製パン法でも、途中の工程から適宜冷凍保存した場合にも、高品質のパンが作製できると考えられた。当該改良剤の使用により、より冷凍生地製法の利用が広がり、製パン業界における人手不足を解消する一助となると考えられる。

Claims (2)

  1. 冷凍・解凍したパン生地を用いるパンの製造方法において、発酵開始2時間後におけるトータルガス発生量が0.3mL/g以上0.7mL/g未満である中種生地を作製し、該中種生地を本捏生地と混捏したパン生地(本捏混合の際にイーストが添加されることを特徴とする多糖パン類を除く)中に、グルテンと、該グルテン100重量部に対して0.5重量部以上のカルボニル基を同一分子内に2つ以上有する有機酸とを含有する溶液を、65℃以上で30分以上加熱処理して得られる組成物を含有する方法。
  2. パン生地が高糖生地である、請求項1の方法。
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