本開示の一態様によれば、調理対象物を収容する容器を載置するトッププレートと、前記トッププレートに載置された前記容器を加熱する加熱部と、前記加熱部の加熱出力を制御する加熱制御部と、前記調理対象物に対する加熱時間または加熱出力の設定情報を含む調理プログラムを記憶する記憶部と、を備える本体と、前記トッププレートの上方に配置され、前記トッププレートにおける上面温度分布を検出して、検出された上面温度分布を示す上面温度検出信号を前記本体に出力する、上面温度検知ユニットと、を備え、前記本体は、前記上面温度検出信号に基づいて、前記トッププレートにおいて加熱された容器の領域を示す特定領域を検出する特定領域検出部と、前記特定領域における前記上面温度分布に応じて前記設定情報を変更する調理プログラム制御部と、を備える、加熱調理器である。
また、前記記憶部は、複数種類の前記調理プログラムを記憶し、複数種類の調理プログラムの中から1つの調理プログラムをユーザにより選択可能な設定部と、を備えてもよい。
また、前記調理プログラムは、前記設定情報を有する複数の調理工程を含み、前記調理プログラム制御部は、前記特定領域における前記上面温度分布に応じて前記調理工程の進行を判定する調理進行判定部を有してもよい。
また、前記調理進行判定部は、前記上面温度検出信号に基づいて、前記特定領域における予め定められた調理進行判定周期ごとの前記上面温度分布の温度変化量及び前記特定領域に対する前記温度変化を示す領域の割合を算出し、前記温度変化量及び前記領域の割合を基に、前記調理工程の進行を判定してもよい。
また、前記調理進行判定部は、前記温度変化量が予め定められた閾値以上、及び、前記変化面積の割合が予め定められた割合閾値以下の場合、前記調理工程に基づき、ユーザが調理行為を行ったと判定してもよい。
また、前記調理行為は、食材投入、調理対象物の裏返し、または、調理対象物のかき混ぜのいずれかでもよい。
また、前記調理進行判定部は、前記温度変化量が予め定められた閾値以上、及び、前記変化面積の割合が予め定められた割合閾値以上の場合、前記調理工程に基づき、蓋開け、または、蓋閉めが行われたと判定してもよい。
また、前記調理進行判定部は、食材投入を判定した場合に、前記特定領域に対する前記温度変化を示す領域の割合の情報を基に前記被調理物の量又は個数を推定し、前記調理プログラム制御部は、前記調理進行判定部の推定結果に基づいて、前記調理プログラムの加熱時間と加熱出力を調整してもよい。
また、前記調理進行判定部は、食材投入を判定した場合に、前記特定領域に対する前記温度変化を示す領域の平均温度が予め定められた閾値以上の場合に、前記調理工程の進行を許可してもよい。
また、前記調理進行判定部は、前記上面温度検出信号に基づいて、前記特定領域における最高温度が予め定められた温度閾値以上の場合に、前記調理工程の進行を許可してもよい。
また、前記調理プログラム制御部は、前記調理進行判定部による調理工程の進行許可の判定結果に基づき、次の調理工程の加熱出力と加熱時間の設定を前記加熱制御部へ出力してもよい。
また、前記本体は、前記調理プログラムの進行状態に応じて報知を行う報知部を備え、
前記調理プログラム制御部は、前記調理進行判定部による調理工程の進行許可の判定結果に基づき、次の調理工程の報知情報を前記報知部に出力してもよい。
また、上面温度検知ユニットは、64画素以上の画素数で構成された、赤外線センサ又は熱画像カメラでもよい。
(実施の形態1)
以下に、本開示の実施の形態1に係る加熱調理器について図1から図3を参照して説明する。図1は、本開示の実施の形態1に係る加熱調理器1の斜視図である。図2は、加熱調理器1の制御系を示すブロック図である。図3は、加熱調理器の設置状態を示す側面図である。なお、図において、X軸方向は加熱調理器の長手方向を示し、Y軸方向は前後方向を示し、Z軸方向は高さ方向を示す。また、X軸の正の方向を右方、負の方向を左方とする。
図1に示すように、加熱調理器1は、本体3と、本体3の上側部として、容器Crが載置されるトッププレート5を有する。容器Crには、例えば、シチューなどの調理対象としての調理対象物Tcが収容されている。
また、実施の形態1の場合、加熱調理器1は、誘導加熱調理器であって、図1に示すように、トッププレート5における容器載置領域の下方には、本体3の内部に加熱調理器1の加熱部7が配置されている。加熱部7は、加熱コイル7A、7B、7Cを備える。加熱コイル7A~7Cは、容器Crを加熱するために誘導磁界を発生させる。加熱制御部10(図2参照)は、加熱コイル7A~7Cに高周波電流を供給して容器Crの加熱を行う電気回路である。また、加熱制御部10は、加熱コイル7A~7Cに流す電流量を制御する。
本体31は、加熱部7をユーザが操作するための操作部9を備える。操作部9は、加熱コイル7A~7Cのそれぞれをユーザが操作するための複数の操作入力部9A、9B、9Cを有し、操作入力部9A、9B、9Cが加熱調理器1のトッププレート5の前側に配置されている。操作入力部9A~9Cは、例えば、タッチキーでもよいし、タッチパネルでもよい。操作入力部9Aと加熱コイル7A、操作入力部9Bと加熱コイル7B、操作入力部9Cと加熱コイル7Cとは、それぞれ対応している。操作入力部9Aの操作指示に応じて、加熱制御部10は、加熱コイル7Aの加熱の開始又は停止を制御する。
また、本体3は、加熱コイル7A~7Cの加熱に関する情報を報知する報知部4を備える。報知部4は、表示部11と音声出力部15とを有する。表示部11は加熱調理器1のトッププレート5の前側に配置され、加熱コイル7A~7Cの加熱レベルを表示する。表示部11は、例えば、トッププレート5の長手方向に延びる帯形状を有する。表示部11は、例えば、白黒の液晶パネルであるが、カラーの液晶パネルでもよい。また、音声出力部15は、加熱調理器1の前面側に配置され、ユーザに対して音声案内を出力する。音声出力部15は、例えば、スピーカである。
加熱コイル7A~7Cによる加熱を詳細に設定するために、設定部13が加熱調理器1の本体3の前面側に備えられている。設定部13は、本体3に対して出し入れ可能であって、加熱コイル7A~7Cによる加熱を詳細に設定するための設定キー13aと、その設定内容や加熱コイル7A~7Cの詳細な状態などを表示する設定表示部13bとを備える。この設定部13により、加熱コイル7A~7Cの加熱温度、加熱時間、タイマーなどが設定される。操作入力部9A~9Cまたは設定部13のそれぞれの操作指示、及び、調理プログラム制御部25の指示に応じて、加熱制御部10は、加熱コイル7A~7Cのそれぞれの加熱レベルを例えば10段階に調整する。なお、図2において、操作部9は、設定部13を介して調理プログラム制御部25等に接続されているが、直接接続されてもよく、操作部9からの入力信号が調理プログラム制御部25等に直接送信されてもよい。
また、加熱調理器1は、グリル調理部14と、グリル調理部14内で発生した空気を排出する排気口16と、を備える。グリル調理部14は、例えば、電気により加熱されるグリルヒータ(図示省略)を有する。グリル調理部14は、その庫内空間でグリルヒータにより調理対象を加熱する。グリル調理部14の庫内空間の熱気は、排気口16から本体3の外部へ排気される。
加熱調理器1の上方には、レンジフード17が設置されている。レンジフード17は、加熱調理器1の上方の空気を、下部に設けられたフード部分17aを通って、内部に吸い込んで屋外に連通した吐出口から排気する。
また、加熱調理器1は、トッププレート5上の調理対象物Tcの調理状況を上方から認識する上面温度検知ユニット19を備える。上面温度検知ユニット19は、トッププレート5から上方に離れた位置に配置され、例えば、本体3の奥方向に配置されている壁面18において、レンジフード17と本体3との間に設置されている。
上面温度検知ユニット19は、トッププレート5上の温度分布を上方から検知する温度検知部20を有する。温度検知部20は、視野範囲における温度分布を検出する温度センサであり、例えば、赤外線センサや熱画像カメラである。温度検知部20は、トッププレート5上の温度分布に関する情報を検出し、検出した温度分布に関する情報を含む上面温度検出信号を出力する。上面温度検出信号は、例えば、温度検知部20が検出したトッププレート5上の温度分布に関する情報を含む熱画像としての情報でもよい。上面温度検知ユニット19は、1つまたは複数個の温度検知部20を有し、温度検知部20は、解像度に応じて、トッププレート5全体を上方から撮影してもよいし、トッププレート5上を分割して加熱コイル7A~7Cごとの温度分布を検出してもよい。複数個の温度検知部20を用いる場合、画素数の低い赤外線センサであっても温度検知することができる。実施の形態1では、加熱コイル7A~7Cごとに配置されている。なお、上面温度検知ユニット19は、壁面18の他にも、レンジフード17、換気扇、ダクト、天井に配置されてもよい。
温度検知部20からトッププレート5までの距離は、例えば、600mm以上2000mm以下である。また、温度検知部20は、平面上に配列された64画素以上の画素数を有する。実施の形態1における温度検知部20は、一例として、縦8画素×横8画素の64画素を有する。
本体3と上面温度検知ユニット19との間の無線通信用に、本体3は第1通信部21を、上面温度検知ユニット19は第2通信部23をそれぞれ有する。温度検知部20により検出された熱画像は、第2通信部23により送信され、第1通信部21により本体3に受信される。第1通信部21及び第2通信部23はそれぞれアンテナを有し、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は、BLE(Bluetooth Low Energy)どの無線通信により無線接続されている。なお、第1通信部21及び第2通信部23を備える替わりに有線により、本体3と上面温度検知ユニット19とが接続されていてもよい。
加熱調理器1は、本体3の内部に、特定領域検出部24、調理プログラム制御部25及び記憶部27を備える。特定領域検出部24及び調理プログラム制御部25は、半導体素子などで実現可能である。特定領域検出部24及び調理プログラム制御部25は、例えばマイコン、CPU、マイクロプロセッサ、DSP、FPGA、またはASICなどで構成される処理装置である。特定領域検出部24及び調理プログラム制御部25は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。特定領域検出部24及び調理プログラム制御部25は、ROM、RAM、ハードディスク、SSDなどの記憶部27に記憶されているデータやプログラムを読み出して実行することによって種々の機能を果たすように構成されている。なお、特定領域検出部24及び調理プログラム制御部25は、1つの処理装置として統合されてもよい。
調理プログラム制御部25は、トッププレート5上の特定領域における上面温度分布に応じて、調理プログラム28の設定情報を変更する。調理プログラム28は、1つの料理を調理するために必要な各調理工程を含み、各調理工程は、調理内容、加熱量及び加熱時間等の調理情報を含む。複数種類の調理プログラム28が記憶部27に記憶されている。図4は、調理プログラム28の一例として、「ハンバーグ」の調理プログラム28aを示す。
調理プログラム28aは、フライパンを予熱する予熱工程CP1から終了工程CP9まで、9つの調理工程を有する。また、表を焼く工程CP4及び裏を焼く工程CP8には、それぞれ加熱時間Tm4、Tm8及び火力レベル等の決められた調理情報を有する。
特定領域検出部24は、上面温度検出信号に基づいて、トッププレート5において加熱された容器Crの領域を示す特定領域Asを検出する。図5は、特定領域の一例を示す説明図である。上面温度検出信号は、例えば、1℃単位の温度分布情報を有する。トッププレート5の熱画像としての温度分布情報Ufを示す。例えば、図5(a)に示すように、フライパンとしての容器Crが加熱されている場合、図5(b)に示すように、温度検知部20により検知された温度分布情報Ufにおいて、予め定められた第1閾値よりも高い温度を有する特定領域Asを検出する。図5(b)の温度分布情報Ufにおいて、白抜きのドットは、39℃以下の領域を示す。特定領域Asは、例えば、40℃以上の温度が検出された領域である。
調理プログラム制御部25は、調理進行判定部25aを有する。調理進行判定部25aは、上面温度検出信号に基づいて、特定領域Asにおける予め定められた調理進行判定周期ごとの上面温度分布の温度変化量及び特定領域Asに対する温度変化を示す領域の割合を算出し、温度変化量及び領域の割合を基に、調理工程の進行を判定する。調理進行判定周期は、例えば、5秒間隔である。
次に、図6~図8を参照して、調理プログラムの設定情報を変更する方法について説明する。図6は、上面温度検知ユニット19における処理手順を示すフローチャートである。図7及び図8は、本体3の調理プログラム制御部25における処理手順を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS1において、本体3の調理プログラム制御部25は、本体3の第1通信部21と上面温度検知ユニット19の第2通信部23との接続処理を行う。この接続処理には、第1通信部21及び第2通信部23間における接続要求送受信と上面温度検知ユニット19の温度検知部20と本体3の調理プログラム制御部25との間の状況確認も含まれる。上面温度検知ユニット19の第2通信部23と本体3の第1通信部21との接続が成功しなかった場合、再度接続処理を行う。上面温度検知ユニット19の第2通信部23と本体3の第1通信部21との接続が成功すると、ステップS2に進む。
ステップS2において、温度検知部20は、トッププレート5の上面の温度分布情報を取得する。温度分布情報として、例えば、温度検知部20の視野範囲内の熱画像を取得する。
ステップS3において、温度検知部20は、取得した温度分布情報を含む上面温度検出信号を、第2通信部23及び第1通信部21を介して本体3に送信し、本体3の記憶部27に記憶される。上面温度検出信号を送信した後、上面温度検知ユニット19の第2通信部23と、本体3の第1通信部21との接続を切断してもよい。これにより、上面温度検知ユニット19の消費電力を低減することができる。なお、予め定められた時間経過後、再び、ステップS1からの処理が実施され、予め定められた時間周期で上面温度検出信号が上面温度検知ユニット19から調理プログラム制御部25へ送られる。
次に図7を参照して、本体3の調理プログラム制御部25の処理手順を説明する。以下の処理手順は、本体3において電源ONした際に、操作入力部9A~9Cまたは設定キー13aを用いて、調理メニューごとに予め用意された調理モードがユーザにより選択された場合に実施される。それぞれの調理モードは、それぞれの調理プログラムを有している。調理メニューは、大きなカテゴリで、例えば、焼き物、煮物、あたため調理、デザート、揚げ物等に分類されている。カテゴリごとにさらに調理メニューが分類されており、焼き物であれば、例えば、鶏肉の焼き物、ハンバーグ、餃子等の調理メニューが存在する。
まず、ユーザは、操作入力部9A~9Cまたは設定キー13aを用いて、複数ある調理モードの中から所望の調理モードを選択する。ここで、操作入力部9A~9Cは設定部として機能する。ステップS11において、選択された調理モードは、調理プログラム制御部25へ送られる。調理プログラム制御部25は、受け付けた調理モードに対応する調理プログラムを記憶部27から読み出す。
ステップS12において、調理プログラム制御部25は、読み出した調理プログラム28から、さらに現在の調理工程情報を読み出す。調理プログラム制御部25は、例えば、1巡目のステップS12であれば最初の調理工程の情報を読み出し、2巡目のステップS12であれば2工程目の調理工程の情報を読み出し、それぞれの調理工程で必要な処理を行い、ユーザへ必要な案内を報知部4を介して行う。
ステップS13において、本体3の調理プログラム制御部25は、第1通信部21、第2通信部23を介して、上面温度検知ユニット19の温度検知部20との接続処理を実施する。
本体3の調理プログラム制御部25と上面温度検知ユニット19の温度検知部20とが接続されると、ステップS14において、調理プログラム制御部25及び特定領域検出部24は、上面温度検知ユニット19が検出したトッププレート5の上面温度分布情報(上面温度検出信号)を取得する。
ステップS15において、特定領域検出部24は、温度分布情報Uf上の容器Crの載置領域を特定領域として算出する。特定領域検出部24は、例えば、予め定められた第1閾値以上の温度を有する予熱状態の容器Crの加熱領域を検出する。特定領域検出部24は、この加熱領域を特定領域Asとして、その面積を算出する。面積は、例えば、温度分布情報Uf上の第1閾値以上の温度を有するドット数をカウントすることで算出される。
ステップS16において、調理進行判定部25aは、特定領域Asにおける上面温度情報を抽出する。
ステップS17において、抽出した上面温度情報を基に、調理進行判定部25aが次の調理工程へ進むか否かを判定する。ステップS17については、後で詳細に説明する。
ステップS17において、調理進行判定部25aは現在の調理工程が完了したと判定すると、ステップS18において、全調理工程が完了したか否かを判定する。調理進行判定部25aは、全調理工程が完了していないと判定すると(ステップS18のNo)、ステップS19において、調理進行判定部25aは次の調理工程へ進行するように指示する。ステップS12に戻り、調理プログラム制御部25は、次の調理工程の情報を読み取る。このように、調理プログラム制御部25は、調理進行判定部25aによる調理工程の進行許可の判定結果に基づき、次の調理工程の加熱出力と加熱時間の設定を加熱制御部10へ出力する。
ステップS18において、調理進行判定部25aは、全調理工程が終了したと判定すると(ステップS18のYes)、ステップS20において、調理進行判定部25aは、報知部4から調理完了の仕上がり報知をユーザに対して行う。
次に図8を参照して、ステップS17の調理進行判定処理について説明する。ステップS17の調理進行判定処理は、調理プログラム制御部25及び調理進行判定部25aが各調理工程の進行程度を特定領域の温度変化及び温度変化面積割合を基に判定する。また、調理工程の進行程度に応じて、調理プログラム制御部25は、加熱部7の加熱出力及び加熱時間を調整する。
ステップS21において、調理進行判定部25aは、記憶部27に記憶されている現在の特定領域Asの上面温度分布情報と1周期前に取得された上面温度分布情報とを用いて、上面温度の変化を算出する。調理進行判定部25aは、上面温度の変化として、例えば、画素ごとの、現在の上面温度と1周期前に取得された上面温度との差(変化量)を算出する。
ステップS22において、調理進行判定部25aは、算出した上面温度の変化量が予め定められた第2閾値以上であるか否かを判別する。上面温度の変化量が第2閾値以上でない場合(ステップS22のNo)、調理進行判定処理を終了し、次の周期で再びステップS21から調理進行判定処理を開始する。
ステップS22において、調理進行判定部25aは、上面温度の変化量が予め定められた第2閾値以上であると判別した場合(ステップS22のYes)、次に、ステップS23において、特定領域内で、第2閾値以上に温度変化した領域の面積を算出する。調理進行判定部25aは、第2閾値以上に温度変化した領域の面積として、例えば、第2閾値以上に温度変化した画素数を算出する。
ステップS24において、調理進行判定部25aは、温度変化面積の割合を算出する。調理進行判定部25aは、温度変化面積の割合として、例えば、第2閾値以上に温度変化した画素数を特定領域As全体の画素数で割った割合を算出する。
ステップS25において、調理進行判定部25aは、温度変化面積割合と予め定められた第3閾値と比較し、比較結果を基に、ステップS26において、調理進行判定部25aは、現在の調理工程が完了したか否かを判定する。例えば、10℃以上温度が下がった面積が特定領域Asの面積の50%以下になった場合、すなわち、-10℃以上温度変化のあった面積を特定領域Asの面積で割った値が閾値0.5以下の場合、食材投入、調理対象物の裏返し、または、調理対象物のかき混ぜのいずれかの調理行為が実施されたと調理進行判定部25aが判定する。
また、例えば、10℃以上温度が上がった面積が特定領域の面積の50%以下になった場合、すなわち、+10℃以上温度変化のあった面積を特定領域Asの面積で割った値が、閾値0.5以下の場合、ユーザが容器Crに油引きを行ったと調理進行判定部25aが判定する。
また、例えば、10℃以上温度が上がった面積が特定領域Asの面積の70%以上になった場合、すなわち、+10℃以上温度変化のあった面積を特定領域Asの面積で割った値が、割合閾値0.7以上の場合、調理進行判定部25aはユーザが容器Crから蓋を開けたと判定する。
また、例えば、10℃以上温度が下がった面積が特定領域の面積の70%以上になった場合、すなわち、-10℃以上温度変化のあった面積を特定領域Asの面積で割った値が、割合閾値0.7以上の場合、調理進行判定部25aはユーザが容器Crに蓋を閉めたと判定する。
このように、調理進行判定部25aは、温度変化量が予め定められた閾値以上、及び、特定領域Asに対する温度変化を示す領域の割合が予め定められた閾値以下の場合、調理工程に基づき、ユーザが調理行為を行ったと判定する。また、調理進行判定部25aは、温度変化量が予め定められた閾値以上、及び、特定領域Asに対する温度変化面積の割合が予め定められた割合閾値以上の場合、調理工程に基づき、蓋開け、または、蓋閉めが行われたと判定する。
調理進行判定部25aは、現在の調理工程が完了したと判定すると(ステップS26のYes)、ステップS27において、現在の調理工程の終了と次の調理工程の案内を報知部4からユーザに報知する。このように、本体3は、調理プログラムの進行状態に応じて報知を行う報知部4を備え、調理プログラム制御部25は、調理進行判定部25aによる調理工程の進行許可の判定結果に基づき、次の調理工程の報知情報を前記報知部に出力する。調理進行判定部25aは、現在の調理工程が完了していないと判定すると(ステップS26のNo)、調理進行判定処理を終了し、次の周期で再びステップS21から調理進行判定処理を開始する。
また、ステップS28において、調理プログラム制御部25は、温度変化面積割合や上面温度の変化量を基に、次の調理工程における予め定められた火力レベル及び加熱時間を調整する。調理プログラム制御部25は、温度変化面積割合や上面温度の変化量が想定よりも小さい場合、火力レベル及び加熱時間が大きくなるように調整する。また、逆に、調理プログラム制御部25は、温度変化面積割合や上面温度の変化量が想定よりも大きい場合、火力レベル及び加熱時間が小さくなるように調整する。また、火力レベル及び加熱時間が予め設定されていない場合、火力レベル及び加熱時間を、種々のパラメータに応じて、一例として、食材量に応じて設定する。このように、次の調理工程の火力レベル及び加熱時間が調整された場合、調理プログラム制御部25は、図7のステップS19において、調整された設定に基づき、次の調理工程の加熱出力と加熱時間の設定を加熱制御部10へ出力する。
以上のように、調理進行判定部25aは、上面温度検出信号に基づいて、特定領域Asにおける予め定められた調理進行判定周期ごとの上面温度分布の温度変化量及び特定領域Asに対する温度変化を示す領域の割合を算出し、温度変化量及び領域の割合を基に、調理工程の進行を判定する。図8における調理進行判定では、上面温度変化量と温度変化面積割合の両方の判定基準を用いて判定されていたが、調理工程の種類に応じて、いずれか一方の判定基準だけを用いて判定してもよい。
以上より、実施の形態1による加熱調理器1は、調理対象物Tcを収容する容器Crが載置されるトッププレート5と、トッププレート5に載置された容器Crを加熱する加熱部7と、加熱部7の加熱出力を制御する加熱制御部10と、調理対象物Tcに対する加熱時間または加熱出力の設定情報を含む調理プログラム28を記憶する記憶部27と、を備える本体3を備える。また、加熱調理器1は、トッププレート5の上方に配置され、トッププレート5における上面温度分布を検出して、検出された上面温度分布を示す上面温度検出信号を本体3に出力する、上面温度検知ユニット19を備える。本体3は、上面温度検出信号に基づいて、トッププレート5において加熱された容器Crの領域を示す特定領域Asを検出する特定領域検出部24と、特定領域Asにおける上面温度分布に応じて設定情報を変更する調理プログラム制御部25と、を備える。撮影画像または3Dデータを取得するのではなく、トッププレート5上の温度を検知する温度センサを用いて温度情報により調理状況を認識している。これにより、調理操作を認識するためのデータ処理の負荷を大幅に軽減することができ、処理時間を短くすることができる。したがって、処理装置のコストを軽減することもできる。また、特定領域Asにおける上面温度分布に応じて調理プログラムの設定情報が変更されるので、予め定められた調理プログラムと異なる食材量や調理手順であっても、適切に調理することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の加熱調理器1について図9、図10を参照して説明する。図9は、実施の形態2の調理プログラムに沿ったフローチャートである。図10は、調理手順にしたがって変化する火力レベルと温度との関係を示すグラフである。実施の形態2は、実施の形態1の調理進行判定方法をより具体的な調理手順について説明するものであり、実施の形態2における加熱調理器1は、以下に記載した事項以外の構成は、実施の形態1の加熱調理器1と共通である。
実施の形態2において、複数ある調理プログラムの1つとして、「ハンバーグ」の調理手順について説明する。
ユーザが「ハンバーグ」の調理モードを選択することで、調理プログラム制御部25はハンバーグの調理モードを受け付ける(ステップS31)。調理プログラム制御部25は、記憶部27からハンバーグ調理の調理プログラム28a(図4参照)を読み出す。調理プログラム制御部25は、さらに最初の調理工程である予熱工程CP1の情報を読み出す。予熱工程CP1の情報の中に、次の食材投入工程CP2に進む条件として、容器Crの予熱目標温度が、例えば、180℃に到達することが含まれる。
調理プログラム制御部25は、上面温度検知ユニット19との接続処理を実施する。また、調理プログラム制御部25は、加熱制御部10に加熱部7を加熱することを指示する。また、調理プログラム制御部25は、報知部4を介してユーザに現在の調理工程が予熱工程CP1であることを報知する。
加熱制御部10は加熱部7に電流を供給し、加熱部7が容器Crを加熱する。容器Crにはまだ食材が投入されていないので、予熱される。調理プログラム制御部25は、温度検知部20からトッププレート5の上面温度情報を取得する。
図10を参照する。図10において、グラフgr1は、上面温度の最高値の変化を示すグラフである。グラフgr2は、設定火力のレベルの変化を示すグラフである。グラフgr3は、トッププレートの下部に設けられた温度素子が検知する容器Crの底の温度変化を示すグラフである。図10に示すように、加熱部7に設定火力がONされると特定領域Asの上面温度が上昇する。ステップS32において、調理進行判定部25aは、特定領域Asの上面温度分布が予熱目標温度に到達しているか否かを判定する。このように、調理進行判定部25aは、上面温度検出信号に基づいて、例えば、特定領域Asにおける最高温度が予め定められた温度閾値以上の場合に、調理工程の進行を許可する。
調理進行判定部25aが、特定領域Asの上面温度分布が予熱目標温度に到達していないと判定した場合(ステップS32のNo)、調理プログラム制御部25は、次の周期の温度検出結果を取得して、ステップS32の判定を再び実施する。
調理進行判定部25aが、特定領域Asの温度分布が予熱目標温度に到達したと判定した場合(ステップS32のYes)、調理進行判定部25aは調理工程の進行を許可し、調理プログラム制御部25は、次の調理工程である食材投入工程CP2の情報を読み出す。食材投入工程CP2の情報の中に、温度変化量の第2閾値と温度変化領域の第3閾値とが含まれる。調理進行判定部25aは、食材投入の案内を報知部4を介してユーザに報知する。
図11(a)は、食材Grが投入される前の容器Crと上面温度分布情報Uf1を示し、図11(b)は、食材Grが投入された後の容器Crと上面温度分布情報Uf2を示す。食材Grは調理対象物Tcの一例である。報知部4からの食材投入の案内にしたがい、ユーザが食材Grを容器Cr内に投入すると、容器Cr内の食材領域の温度が予熱温度よりも低い温度として検出される。また、特定領域As内の30℃以下の食材領域が温度変化領域としても検出される。この温度変化領域は、図11(b)において、8画素であり、特定領域Asの全画素数である82画素に対して25%の変化割合を示す。図10のグラフgr1は最高温度の変化であるので変化量は少ないが、食材投入の温度変化Tg1が示されている。
図9において、ステップS34において、調理進行判定部25aは、温度変化量及び温度変化領域の割合をそれぞれ第2閾値、第3閾値と比較することで、食材Grが容器Crに投入が完了しているか否かを判定する。調理進行判定部25aは、食材投入を判定した場合に、例えば、特定領域Asに対する温度変化を示す領域の平均温度が予め定められた閾値以上の場合に、調理工程の進行を許可する。調理進行判定部25aは、ユーザによる食材投入がまだ完了していないと判定すると(ステップS34のNo)、調理プログラム制御部25は、報知部4からの食材投入案内を維持し続ける。
調理進行判定部25aは、ユーザによる食材投入が完了したと判定すると(ステップS34のYes)、調理プログラム制御部25は、タイマー25bを開始して加熱時間を測定する。ユーザがタイマーを設定する必要がないので、タイマーの設定し忘れを防止することができる。
調理進行判定部25aは、食材Grが容器Crに投入された直後の初期温度を上面温度分布情報を用いて検出する。調理進行判定部25aは、食材の初期温度が予め定められた第4閾値よりも大きいか否かを判定する。第4閾値は、例えば、0℃である。この場合、調理進行判定部25aは、投入された食材が、冷凍されたものか、冷凍されていないものかを判定する。
調理進行判定部25aは、食材の初期温度が第4閾値よりも大きいと判定すると、ステップS37において、調理コースA-1を選択し、食材の初期温度が第4閾値以下と判定すると、ステップS38において、調理コースA-2を選択する。このように、調理プログラム制御部25は、投入された食材Grが冷凍されたものとそうでないものとで、異なる調理を実施する。図9において、ステップS37は、符号Aを介して図12のステップS41に進む。調理コースA-2における調理プログラム28ab(図4参照)については後で説明する。
次に、図12を参照して、投入された食材が冷凍されたもので無い場合の調理手順を説明する。
ステップS41において、調理進行判定部25aは、上面温度情報を基に、特定領域において投入された食材の個数を検出する。食材が、例えば、ハンバーグの場合、投入されたハンバーグの個数を検出する。図11(b)において、説明を簡易にするために低い解像度で示しているので上面温度分布情報Uf2において2個の食材Grが連結して検出されているが、解像度を高くすることでそれぞれ食材Grに対応して分離して検出することができる。
ステップS42において、調理進行判定部25aは、上面温度分布情報を基に、特定領域Asにおいて投入された食材Grの面積を検出する。食材Grが、例えば、ハンバーグの場合、ハンバーグ1個当たりの面積を検出する。これにより、投入されたハンバーグが、通常の大きさなのか、小さいサイズの大きさなのかを第5閾値を用いて判定することができる。
ステップS43において、調理プログラム制御部25は、検出された食材の個数及び面積に応じて、調理プログラム28aに予め設定されている標準の火力レベル及び加熱時間を調整する。例えば、調理プログラム28aの標準設定は、1個当たり80gの標準の大きさのハンバーグを4個調理することを想定している。この場合、表を焼く工程CP4と裏を焼く工程CP8の加熱時間Tm4及びTm8は、それぞれ、4分に設定されている。検出された食材が、例えば、標準の大きさで2個の場合、調理プログラム制御部25は、標準設定の半分の個数であるので、加熱時間Tm4及びTm8を標準加熱時間の半分の2分に調整する。なお、以下の説明では、標準設定のハンバーグの大きさ及び個数の調理について説明する。
調理進行判定部25aは、容器Crに投入された食材Grの個数及び面積を検出すると、ステップS44において、蓋閉めの案内を報知部4からユーザへ報知する。
図13(a)は、蓋が閉められる前の容器Crと上面温度分布情報Uf3を示し、図13(b)は、蓋が閉められた後の容器Crと上面温度分布情報Uf4を示す。蓋Cvが容器Crに閉められると、特定領域Asの温度が一様に常温の蓋Cvの温度に変化する。図13(b)において特定領域As内の24画素が変化しているので、温度変化領域の割合は、75%である。この変化は、図10のグラフgr1における温度変化Tg2としても示される。したがって、調理進行判定部25aは、周期的に送られる上面温度分布情報を基に、温度変化及び温度変化領域の割合を検出することで、ユーザが蓋Cvを閉めたことを検出することができる。
調理進行判定部25aは、ユーザが蓋閉めを完了したと判定すると(ステップS45のYes)、調理進行判定部25aが蓋閉め工程CP3の終了を判定し、次の、表を焼く工程CP4へ進む。ステップS46において、調理プログラム制御部25は、タイマー25bを開始して、蓋Cvを閉めた状態での加熱時間を測定する。
調理進行判定部25aは、予め定められた時間経過してもユーザが蓋閉めを完了していないと判定すると(ステップS45のNo)、ステップ47において、蓋を閉めずに調理する調理コースA-3に変更する。調理コースA-3については、後で説明する。
ステップS46に戻って、調理プログラム制御部25は、表を焼く工程CP4での標準加熱時間が4分であることを認識し、タイマーが4分に到達すると、ステップS48において、報知部4からユーザに蓋開けの案内を報知する。
図14(a)は、蓋が開けられる前の容器Crと上面温度分布情報Uf5を示し、図14(b)は、蓋が開けられた後の容器Crと上面温度分布情報Uf6を示す。蓋Cvが容器Crから開けられると、特定領域Asの温度が全体的に上昇する。図14(b)において特定領域As内の24画素が変化しているので、温度変化領域の割合は、75%である。この変化は、図10のグラフgr1における温度変化Tg3としても示される。したがって、調理進行判定部25aは、周期的に送られる上面温度分布情報を基に、温度変化及び温度変化面積割合を検出することで、ユーザが蓋Cvを開けたことを検出することができる。
ステップS49において、調理進行判定部25aは蓋開けが完了していないと判定すると(ステップS49のNo)、ステップS42の蓋開け案内を維持する。調理進行判定部25aは蓋開けが完了したと判定すると(ステップS49のYes)、符号Cを経て、図15のステップS51へ続く。
次に、図15を参照して、調理手順を説明する。ステップS51において、調理プログラム制御部25は、食材Grの裏返し案内を報知部4からユーザに報知する。
図16(a)は、食材Grが裏返される前の容器Crと上面温度分布情報Uf7を示し、図16(b)は、食材Grが裏返された後の容器Crと上面温度分布情報Uf8を示す。食材Grを裏返す際に、裏返すための調理器具Cdや人の手により特定領域Asの一部の温度が下がる。図16(a)と(b)において特定領域Asの画素数が変化しており、温度変化領域の割合は、9%である。したがって、調理進行判定部25aは、周期的に送られる上面温度分布情報を基に、温度変化及び温度変化面積割合を検出することで、ユーザが食材Grを裏返ししたことを検出することができる。
ステップS52において、調理進行判定部25aは食材Grの裏返しが完了したと判定すると(ステップS52のYes)、次の蓋閉め工程CP7に進み、ステップS53において、調理プログラム制御部25は、蓋閉め案内を報知部4からユーザに報知する。ステップS45と同様に、調理進行判定部25aは蓋閉め完了を判定すると(ステップS54)、ステップS56において、調理プログラム制御部25はタイマーを開始する。なお、蓋Cvの開閉のタイミングに応じて、調理プログラム制御部25は、タイマー時間を調整してもよい。4分経過後、ステップS57において、調理プログラム制御部25は、仕上がり案内を報知部4からユーザに報知する。さらに、ステップS58において、調理プログラム制御部25は、加熱制御部10へ加熱停止の指示を送り、加熱制御部10は、加熱部7への電流供給を停止して、加熱部7から容器Crへの加熱を終了する。
図17は、蓋Cvの有り無しで調理した際の温度プロファイルを示すグラフである。グラフTp1は、標準の調理プログラム28aによって、ハンバーグを調理した際の温度プロファイルである。グラフTp2は、標準の調理プログラムによって、蓋無しの状態で調理した際の温度プロファイルである。グラフTp3は、調理進行判定部25aは蓋Cvが閉められていないことを判定して、変更した調理コースA-3の調理プログラムによって調理した際の温度プロファイルである。それぞれの温度プロファイルは、上面温度とは異なる食材Grの中心温度である。
調理コースA-3の調理プログラムは、標準の調理プログラム28aの表を焼く工程CP4と裏を焼く工程CP8の設定温度およびそれぞれの加熱時間Tm4、Tm8と、裏返し工程CP7の回数が変更されている。蓋無しの調理プログラムの表を焼く工程CP4及び裏を焼く工程CP8の設定温度は、標準よりも低く設定されている。例えば、標準の調理プログラム28aの設定温度は180℃であり、蓋無しの調理プログラムの設定温度は、160℃である。また、蓋無しの調理プログラムの表を焼く工程CP4及び裏を焼く工程CP8の加熱時間Tm4、Tm8の設定時間は、標準よりも短く設定されており、例えば、2分である。その代わり、標準のプログラム28aでは裏返し工程CP7が1回だけであったが、蓋無しの調理プログラムでは5回に増やしている。したがって、蓋無しの調理プログラムは、食材投入工程CP2の後に、表を焼く工程CP4、裏返し工程CP6、裏を焼く工程CP8、及び裏返し工程CP6の4つの工程を2回繰り返し、さらに、表を焼く工程CP4、裏返し工程CP6、裏を焼く工程CP8を行って終了工程CP9へ続く。
蓋無しで標準の調理プログラム28aで調理したグラフTp2において、食材の中心温度が60℃以上になる時間は短いが、変更した調理プログラムによるグラフTp3によれば、60℃以上となる時間が5分程度あり、充分に長い。したがって、蓋を閉めなくても、表と裏のそれぞれを焼く設定温度を低くし、1回の加熱時間は短いものの裏返し回数を増やし、総加熱時間を長くすることで、焦げ付くこと無く中心温度を上げることができ、ハンバーグを適切に調理することができる。
図18は、冷凍状態の食材を調理した際の温度プロファイルを示すグラフである。グラフTp4は、冷凍状態の食材に対して標準の調理プログラム28aで調理した際の温度プロファイルである。グラフTp5は、冷凍状態の食材に対して、変更した調理コースA-2の調理プログラムによって調理した際の温度プロファイルである。図4に示すように、調理コースA-2の調理プログラム28abは、食材投入工程CP2と表を焼く工程CP4との間に、前焼き工程CP10と裏返し工程CP6とを繰り返す食材温度調整工程が追加されている。前焼き工程CP10における設定温度は表を焼く工程CP4よりも低く設定されており、例えば、140℃である。前焼き工程CP10と裏返し工程CP6は、例えば、5回繰り返される。5回分の前焼き工程CP10における加熱時間は、例えば、9分に設定されている。また、表を焼く工程の加熱時間Tm4は、4分から3分に変更されている。
冷凍状態の食材を標準の調理プログラム28aで調理すると食材の中心の最高温度は40℃にも満たない。しかしながら、グラフTp5において、前加熱を長い時間行うことで、蓋閉め工程CP3前の状態において充分に解凍することができ、蓋閉め工程CP3前の温度Te1は、調理プログラム28aで調理した場合とほぼ同じである。解凍後は標準の調理プログラム28aで調理した場合と同じ温度プロファイルで調理することができる。裏返し工程CP6の後の温度Te2及び終了工程CP9後の仕上がり温度Te3についても、調理プログラム28aで調理した場合と調理プログラム28abで調理した場合とでほぼ同じ温度である。したがって、冷凍状態の食材Grに対しても、適切に調理することができる。
図19は、標準サイズよりも小さいサイズの食材を調理した際の温度プロファイルを示すグラフである。グラフTp6は、標準サイズよりも小さいサイズの食材に対して標準の調理プログラム28aで調理した際の温度プロファイルである。グラフTp7は、標準サイズよりも小さいサイズの食材に対して、変更した調理プログラムによって調理した際の温度プロファイルである。
標準サイズよりも小さいサイズの食材Grを標準の調理プログラム28aで調理すると、食材Grに対して火力が強いので最高温度が100℃に達して、焼き過ぎ状態になる。そこで、変更した調理プログラムは、表を焼く工程CP4及び裏を焼く工程CP8のそれぞれの加熱時間Tm4、Tm8を標準の調理時間よりも短く、例えば、半分の2分に調整する。このように変更した調理プログラムに沿って調理すると、食材の最高温度は80℃程度になり、標準サイズの食材Grを調理するときと同じ程度の温度にすることができる。したがって、小さなサイズの食材Grに対しても、適切に調理することができる。
以上のようにして、調理進行判定部25aは、食材投入を判定した場合に、特定領域Asに対する温度変化を示す領域の割合の情報を基に調理対象物の量又は個数を推定する。調理プログラム制御部25は、調理進行判定部25aの推定結果に基づいて、調理プログラムの加熱時間と加熱出力を調整するので、より適切に調理することができる。従来、食材投入をした後、加熱出力180℃で表裏合計で8分の加熱時間で設定されていた調理プログラムが、調理対象物の裏返しや蓋の開け閉めをライブで検知することで、調理操作に応じた調理プログラムの調整をすることができ、より適切に調理することができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る加熱調理器について説明する。実施の形態2における調理メニューは「ハンバーグ」であったが、実施の形態3における調理メニューは「肉類の焼き物」である。なお、実施の形態3における加熱調理器1は、以下に記載した事項以外の構成は、実施の形態1及び2の加熱調理器1と共通である。
実施の形態3における調理メニューは「肉類の焼き物」である。肉類の焼き物において、調理プログラム制御部25は、蓋Cvの開け閉めを行うか否かに応じて図20に示される調理プログラム28baまたは28bbを選択する。ユーザにより調理モードとして「肉類の焼き物」が選択されると、調理プログラム制御部25は、蓋Cvを閉めて調理を行う調理プログラム28baの調理情報を取得する。調理プログラム制御部25は、蓋閉め工程CP3において、蓋Cvを閉める行為が検出されない場合、蓋Cvをせずに調理する調理プログラム28bbに変更する。蓋Cvを閉めないで調理する場合、それぞれの加熱時間が蓋Cvを閉めて調理する場合の2倍に設定されている。予熱工程CP1において設定される予熱温度は230℃である。表を焼く工程CP4における加熱時間Tm4aは、6分である。蓋Cvをしてから裏を焼く工程CP8の加熱時間Tm8aは3分である。
常温の食材に対して蓋Cvをしないで調理する場合、蓋Cvが無くても食材Grに均一に加熱するために、図20に示される蓋無し用の調理プログラム28bbは、表を焼く工程CP4、及び裏を焼く工程CP8がそれぞれ1回多く含まれ、裏返し工程CP6は2回多く含まれる。また、調理プログラム28bbにおける加熱温度は、蓋有り調理プログラム28baにおける加熱温度よりも低い160℃に設定することで、長時間加熱しても焦げ付かないようにしている。
投入された食材Grの初期温度が低い場合、調理プログラム制御部25は、図20に示される調理プログラム28caのように、食材投入工程CP2の次に、加熱温度が140℃に設定された前焼き工程CP11を追加する。調理プログラム制御部25は、さらに、前焼き工程CP11の次に、裏返し工程CP6と、前焼き工程CP12を追加する。前焼き工程CP11は、数分間設定されている。
なお、調理メニューとして「焼き餃子」の調理プログラムの場合、調理プログラム28baにおいて、食材Grの個数に応じて、表を焼く工程CP4及び裏を焼く工程CP8の火力レベルと加熱時間を調理プログラム制御部25が設定してもよい。また、裏返し工程CP6及び蓋閉め工程CP7は省略される。調理プログラム制御部25は、食材Grの個数に応じて、例えば、表を焼く工程CP4の設定温度を200℃とし、調理時間を3分と設定してもよい。また、焼き餃子は裏返ししないので、裏を焼く工程CP8は、単なる加熱工程として、例えば、設定温度200℃、加熱時間2分と設定されてもよい。
このように、肉類の焼き物調理においても、調理プログラム制御部25が、上面温度分布を基に適切に調理プログラムの設定情報を変更することで、ユーザの調理状況に応じて適切に調理支援することができる。肉類を蓋Cvを用いて焼く場合も、蓋Cvを用いずに焼く場合もそれぞれ適切な調理プログラムが選択される。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4に係る加熱調理器について説明する。実施の形態2における調理メニューはハンバーグであったが、実施の形態4における調理メニューは煮物のような温め調理である。なお、実施の形態4における加熱調理器1は、以下に記載した事項以外の構成は、実施の形態1及び2の加熱調理器1と共通である。
蓋Cvをする場合と、蓋Cvをしない場合とで調理コースが2種類用意されている。また、調理進行判定部25aは特定領域Asの大きさから、容器Crの大きさを推定し、調理プログラム制御部25は、容器Crの大きさに応じて加熱時間を設定する。例えば、ユーザが調理メニューとして「鶏と根菜の煮物」を選択すると、調理進行判定部25aにより蓋Cvをしたと判定された場合、火力設定はレベル2~3の弱火で、加熱時間が7分に設定される。蓋Cvをしていないと判定された場合、火力設定はレベル2~3の弱火で、加熱時間が10分に設定される。
また、ユーザが調理メニューとして「レトルトカレー」を選択すると、通常設定の18cm鍋において、火力設定はレベル2~3の弱火で、加熱時間が4分に設定される。調理進行判定部25aが、検出された特定領域Asの大きさから、例えば、24cm鍋が使用されていると推定すると、火力設定はレベル2~3の弱火で、加熱時間が6分に設定される。なお、上面温度分布が予め定められた閾値よりも高くなると、調理プログラム制御部25は、報知部4より鍋内をかき混ぜる案内をユーザに報知する。
このように、煮物や温め調理においても、調理プログラム制御部25が、上面温度分布を基に適切に調理プログラムの設定情報を変更することで、ユーザの調理状況に応じて適切に調理支援することができる。
本開示は、上記実施の形態のものに限らず、次のように変形実施することができる。
(1)上記実施の形態において、本体3のトッププレート5において容器Crが載置される載置領域の下部に容器Crの底の温度を検出する温度検出素子を設けてもよい。この温度検出素子と上面温度検知ユニット19とで調理対象物Tcの調理制御に用いることで、より精度の高い調理を実現できる。
(2)上記実施の形態において、各種の案内は表示部および音声出力部を有する報知部から出力されていたが、これに限られない。例えば、報知部は、振動を発生させるバイブレータ又は発光部6A~6Cでもよい。種々の振動または発光パターンにより、ユーザへ種々の案内を伝えることができる。
なお、上記様々な実施の形態及び変形例のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施の形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。