JP7171492B2 - 麺生地、麺類の製造方法、及び麺類の透明性を高める方法 - Google Patents
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また麺類の見た目の透明感を高める技術とは別に、麺の原料粉に炭酸水素ナトリウム(重曹、重炭酸ナトリウム)を配合することが知られている(特許文献3及び4参照)。
特許文献3においては、炭酸水素ナトリウムを、ハチミツなどの甘味料とともに含有する添加混合液を、原料粉に配合混錬している。特許文献3には、麺類の透明性についての言及がある。しかしながら、特許文献3には、添加混合液中における甘味料の配合量が6.7質量%未満であると透明性が損なわれる旨の記載があり、特許文献3に記載の発明においては、透明性の向上は甘味料の配合による効果である上に、炭酸水素ナトリウムの配合量を、原料粉100質量部に対する割合に換算すると多くても1.15質量部以下である。
本発明の麺類の製造方法によれば、見た目の透明感に優れる麺類が簡単に得られる。本発明の麺類の透明性を高める方法によれば、簡便に、麺類の透明性を高めることができる。
穀粉類原料とは、穀粉、澱粉類及び任意に配合される穀物由来の蛋白である。
前記穀粉としては、麺類の製造に一般に使用される穀粉を特に制限なく使用することができ、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉などが挙げられる。穀粉は、好ましくは小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉である。これらの穀粉は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。穀粉は、全部又は一部が小麦粉であることが好ましい。小麦粉は、麺類の製造に一般に使用されるものを特に制限なく使用することができ、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、使用される穀粉の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、なお好ましくは100質量%が、小麦粉である。本発明の麺生地に使用される穀粉は、前記穀粉類原料中の全質量中の割合が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
前記穀粉類原料中、澱粉類の配合量が50質量%以上であり、且つ麺生地が後述する他の条件を満たすことにより、本発明の麺生地は、見た目の透明性に優れた麺類を提供し得るものとなる。
任意に配合される穀物由来の蛋白としては、例えば、穀物を供給源とするグルテンを用いることができ、その製法や形態(生グルテンであるか、粉末状であるかなど)は問わない。グルテンの供給源である穀物としては、例えば、小麦、大麦、ライ麦等が挙げられる。好ましくは、小麦由来のグルテンである小麦グルテンである。小麦グルテンの好ましい供給源としては、パンコムギ、デュラムコムギ、クラブコムギ、スペルトコムギ、エンマコムギ(以上、イネ科コムギ属);タルホコムギ、クサビコムギ(以上、イネ科エギロプス属)が挙げられる。
同様の観点から、本発明の麺生地は、別添蛋白の配合量が、穀粉類原料中、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、別添蛋白が配合されていないことが好ましい。
炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられ、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムの何れか一方又は両方を使用することが好ましい。炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム及び/又は炭酸水素アンモニウムのみを配合しても良いし、炭酸水素塩以外の成分との混合体等として配合してもよい。炭酸水素塩は、ベーキングパウダーの態様でも構わない。
得られる麺類の見た目の透明性の一層の向上の観点から、炭酸水素塩として、炭酸水素アンモニウムを使用することがより好ましい。炭酸水素アンモニウムの使用には、炭酸水素アンモニウムの単独使用、及び炭酸水素アンモニウムと他の炭酸水素塩との併用の両者が含まれる。炭酸水素アンモニウムの配合量は、使用する炭酸水素塩中、好ましくは炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムの合計量中、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは、炭酸水素アンモニウムの単独使用を意味する100質量%である。
なお、炭酸水素ナトリウムは、かんすいの一種として中華麺等に使用することが記載されている文献は存在するが、実験例等に具体例に記載されているかんすいは、炭酸水素塩ではなく炭酸塩である場合が多い。またかんすいは、風味の向上や麺の着色に使用されており、本発明のように、見た目の透明感を向上させる目的で、炭酸水素ナトリウムを配合することは従来知られていない。
本発明の麺生地は、加水量が、穀粉類原料100質量部に対して45質量部超である。加水量が45未満、特に40質量部以下であると、見た目の透明感に優れた麺類が得られにくくなる。見た目の透明感の向上の観点から、加水量は、穀粉類原料100質量部に対して、好ましくは48質量部、さらに好ましくは50質量部以上、なお好ましくは52質量部以上、特に好ましくは55質量部以上である。加水量の上限は、特に制限されないが、混捏できる状態として製麺性を確保する観点から、穀粉類原料100質量部に対して70質量部以下が好ましく、より好ましくは60質量部以下である。
表1に示す組成の原料粉(穀粉類原料)100質量部に対し、表1に示す各種成分を穀粉類原料に対して表1に示す質量部含む水の加水を行い、それらを製麺用ミキサーを用いて混合して麺生地を作製した。次いで、作製した麺生地を、製麺ロールを用いて圧延及び複合して麺帯にした後、16番の切り刃を通して、麺厚2.1mmの生麺線を作製した。次いで、作製した生麺線を沸騰した湯を用いて45秒間茹で処理した後、水洗して冷却して、茹で麺類(茹でうどん)を得た。
実施例3において、加水量を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例3と同様にして、茹で麺類を得た。
実施例3において、原料粉(穀粉類原料)の組成を表3に示すとおりに変更し、表3に示す各種成分(炭酸水素ナトリウム、乳酸、炭酸ナトリウム)を、穀粉類原料に対して表1に示す質量部含む水の加水を行った以外は、実施例3と同様にして、茹で麺類を得た。
小麦粉(穀粉):中力粉(蛋白含量9%)
α化小麦粉::アルファフラワーP(日清製粉)
澱粉:タピオカ澱粉
α化澱粉:プリジェルVA70T(松谷化学)
グルテン(蛋白含量約85%、日本コロイド社「スーパーグル85H」)
アセチル化澱粉:アセチル化タピオカでんぷん粉(あじさい;松谷化学)
エーテル化澱粉:エーテル化タピオカでんぷん粉(ゆり8:松谷化学)
キサンタンガム(増粘剤):太陽化学
表1及び表2中の穀粉由来蛋白の配合量(内在と別添との合計量)は、小麦粉の配合量(例えば30質量部)に蛋白含量(0.09)を乗じて求めた内在蛋白の量(0.27質量部)と、別添蛋白の量との合計値である。別添蛋白の量は、グルテンの配合量(例えば10質量部)に、使用したグルテン中の蛋白含量(0.85)を乗じて求めた。
各実施例及び各比較例において得られた調理済み麺の透明感及び食感を、それぞれ、下記評価基準にて評価した。評価は訓練された10名のパネラーによって行い評価結果(パネラー10人の平均点)を表1~表3に示した。
比較例1を対照品とし、対象品との比較で評価した。
5点:対照品よりも極めて透明感がある
4点:対照品よりも透明感がある
3点:対照品よりもやや透明感がある
2点:対照品と同等の透明感である
1点:対照品よりも透明感がない
5点:麺の粘弾性のバランスが極めて良好である。
4点:麺の粘弾性のバランスが良好である。
3点:麺の粘弾性のバランスがやや良好である。
2点:麺の粘弾性のバランスがやや悪い。
1点:麺の粘弾性のバランスが極めて悪い。
表3に示す結果から、キサンタンガム等の増粘剤の配合すること、澱粉として加工澱粉を用いること、酸を配合すること、アルカリ剤を配合することが、見た目の透明感の一層の向上の観点から好ましいことが判る。
なお、実施例1~25の茹で麺類の製造においては、製造時の作業性も良好であった。また実施例1~25の結果から、本発明の麺類の透明性を高める方法においては、穀粉類原料100質量部に対して炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上を2.0~6.0質量部配合させることによって、得られる麺類の透明性を向上させることができることも判る。
Claims (8)
- 穀粉及び澱粉類を含む穀粉類原料を含み、
前記穀粉類原料中、前記澱粉類の配合量が50質量%以上、前記穀粉中の蛋白を含めた穀物由来の蛋白の含有量が9質量%以下であり、
前記穀粉類原料100質量部に対して炭酸水素塩が2.5~6.0質量部配合されており、且つ加水量が前記穀粉類原料100質量部に対して45質量部超であることを特徴とする、麺生地。 - 前記炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムの一方又は両方であることを特徴とする、請求項1の麺生地。
- 更に増粘剤が配合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の麺生地。
- 前記澱粉類の少なくとも一部が加工澱粉である、請求項1~3の何れか1項に記載の麺生地。
- 前記穀粉類原料100質量部に対して0.1~3質量部の酸が配合されている請求項1~4の何れか1項に記載の麺生地。
- 前記穀粉類原料100質量部に対して0.1~3質量部のアルカリ剤が配合されている、請求項1~5の何れか1項に記載の麺生地。
- 請求項1~6の何れか1項に記載の麺生地を用いて麺類を製造することを特徴とする麺類の製造方法。
- 穀粉及び澱粉類を含み、該澱粉類の配合量が50質量%以上、該穀粉中の蛋白を含めた穀物由来の蛋白の含有量が9質量%以下である穀粉類原料100質量部に対して、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上を2.5~6.0質量部配合させ、且つ麺生地を製造するための加水量を前記穀粉類原料100質量部に対して45質量部超とすることを特徴とする、麺類の透明性を高める方法。
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武山 進一ら,冷麺の茹で伸び防止の検討,岩手県工業技術センター研究報告,2002年,第9号 |
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