以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1及び図2は、実施の形態1のリニアモータ1の構成を示す斜視図及び側面図である。図3及び図4は、実施の形態1のリニアモータ1における可動子2の構成例を示す平面図及び分解斜視図である。なお、図1及び図2では、可動子2のみは磁石の配置がわかるように可動方向に平行な方向からの断面を表している。
リニアモータ1は、可動子2とバックヨーク3と電機子4とを含む。可動子2に隙間をあけてバックヨーク3が対向配置され、可動子2に隙間をあけてバックヨーク3とは反対側に電機子4が対向配置されている。バックヨーク3及び電機子4は固定子として機能する。
長尺状をなす可動子2は、図4に示すように、複数の永久磁石21と保持枠22と固定板23とを含む。複数の永久磁石21の並置方向が、可動子2の長手方向となっている。各永久磁石21は矩形状をなす。各永久磁石21は例えば、Nd-Fe-B系の希土類磁石である。各永久磁石21は厚さ方向(図2の上下方向)に磁化されており、隣り合う永久磁石21,21同士でその磁化方向は逆向きである。即ち、磁石配列では、バックヨーク3側から電機子4側に向かう方向に磁化された永久磁石21と、電機子4側からバックヨーク3側に向かう方向に磁化された永久磁石21とが交互に配置されている。
図4に示すように、保持枠22は矩形板状をなしている。保持枠22の厚さは、永久磁石21の厚さより小さい。保持枠22には矩形状の孔221が複数設けてある。保持枠22は、例えばSUS、アルミニウムなどの非磁性材料により構成される。孔221は永久磁石21と対応する形状としてある。各永久磁石21は孔221に嵌め込まれ、接着剤で保持枠22に固定される。保持枠22に固定された各永久磁石21が等ピッチで並置されるように、孔221は設けてある。また、永久磁石21を保持枠22に固定する際には、隣り合う永久磁石21、21同士の磁化方向が逆向きとなるように、孔221に嵌め込む。図3に示すように、各永久磁石21は角度θでスキュー配置としてある。
複数の永久磁石21が保持枠22の孔221に挿入されて保持された状態で、保持枠22が固定板23に接着剤で固定されている。また、各永久磁石21の底面も固定板23に接着されている。固定板23は非磁性のSUS等で構成される。このように、磁石配列が保持枠22に保持されて固定板23に接着固定されているため、可動子2の剛性は高く、永久磁石21の抜け落ちも起こらない。固定板23がバックヨーク3に対向するように、バックヨーク3と電機子4との間隙に可動子2が配置される。なお、固定板23は必須ではなく、永久磁石21が保持枠22にて十分保持される場合には不要である。
バックヨーク3及び電機子4の可動方向(図2の左右方向)における長さは略等しく、可動子2の可動方向(図2の左右方向)における長さは、これらのバックヨーク3及び電機子4における長さよりも短く、この長さの差がリニアモータ1の動作可能なストロークとなる。このような構成により、エッジ効果の低減を図っている。
軟鋼製、好ましくは軟質磁性体(例えば、珪素鋼板)であるバックヨーク3の可動子2と対向しない側の面は平板状であるが、バックヨーク3の可動子2と対向する側の面は平板状ではなく、可動方向に等ピッチにて複数の矩形状の磁極歯31が形成されている。各磁極歯31の高さは、磁極歯31の形成ピッチの1/20倍以上2倍以下、好ましくは、1/10倍以上1倍以下である。例えば、各磁極歯31の高さは、磁極歯31の形成ピッチの半分程度である。
電機子4では、軟質磁性体製であるコア41に可動方向に等ピッチにて軟質磁性体製の複数の矩形状の磁極歯42が一体的に設けられており、各磁極歯42に駆動コイル43が捲かれている。
バックヨーク3における磁極歯31のピッチは、電機子4の磁極歯42のピッチに等しく、バックヨーク3における各磁極歯31の位置は、可動子2の可動方向において電機子4の各磁極歯42の位置と同じである。また、バックヨーク3の磁極歯31の可動子2に対向する磁極面の形状は、電機子4の磁極歯42の可動子2に対向する磁極面とほぼ同じ形の矩形状をなしており、前者の磁極面積は後者の磁極面積の0.9倍~1.1倍である。例えば、磁極歯31の磁極面と磁極歯42の磁極面とは、同一の矩形状であって、同一の面積を有する。また、可動子2とバックヨーク3との隙間は、可動子2と電機子4との隙間と同じかまたは大きい。例えば、後者の隙間は0.5mmであり、前者の隙間は0.5mm以上である。この場合の可動子2とバックヨーク3との隙間とは固定板23を構成として含む場合であっても、固定板23の厚さを含まず、可動子2そのものとバックヨーク3の間隔(最短距離)を示している。言い換えるとこの隙間は磁気的な隙間(磁気ギャップ)であり、非磁性体である固定板23の厚さを考慮する必要は無い。
実施の形態1のリニアモータ1は、7個の永久磁石21と6個の磁極歯31及び磁極歯42が対向する7極6スロットを基本構成としている。図1及び図2に示す形態では、基本構成を2倍した14極12スロット構成を有している。
実施の形態1のリニアモータ1では、バックヨーク3の可動子2に対向する側の面に、電機子4の磁極歯42と可動方向での同じ位置にほぼ同一形状の磁極面を有して磁極面積がほぼ同じである磁極歯31を形成している。よって、可動子2及びバックヨーク3間に生じる吸引力の大きさと、可動子2及び電機子4間に生じる吸引力の大きさとがほぼ等しくなり、図2の上下方向にあって両方の吸引力が効果的に相殺されるため、リニアモータ1全体として可動子2に働く吸引力は非常に小さくなる。このように、実施の形態1のリニアモータ1では、可動子2とバックヨーク3との隙間を大きくしなくても吸引力の大幅な低減を実現できる。よって、可動子2とバックヨーク3との隙間を大きくする必要がないため、推力の低下を起こすことがない。
また、実施の形態1のリニアモータ1では、上述したように、複数の磁極歯42を等ピッチで有する電機子4と、この電機子4の磁極歯42と可動方向にあって同じ位置に複数の磁極歯31を有するバックヨーク3との間に、可動子2を配置した構成であるので、可動方向に垂直な方向での磁石配列のコギングトルクが少なくなるため、可動子2のディテント力の低減を図ることができる。更に、磁石配列を保持枠22で保持して固定板23に接着固定するようにしたので、可動子2の剛性を大きくできるため、永久磁石21の撓み、曲げなどの変形が生じにくく、この点でも可動子2のディテント力の低減に寄与する。
実施の形態1のリニアモータ1では、バックヨーク3に複数の磁極歯31を形成しており、この可動子2に対向する凹凸形状により駆動磁束の剪断領域が発生するため、電機子4だけでなくバックヨーク3も推力の発生に寄与する。図5は、実施の形態1のリニアモータ1における磁束の流れを示す側面図である。図5において、矢印は磁束の流れを示している。リニアモータ1では、電機子4側における磁束の剪断によって推力が発生すると共に、バックヨーク3側における磁束の剪断によっても推力が発生することになり、リニアモータ1に生じる推力は、これらの両推力を合計したものとなる。なお、実施の形態1のような磁極歯31を形成せずにバックヨークが平板状であるようなリニアモータでは、バックヨーク側では推力が発生せず、電機子側における磁束の剪断による推力のみとなる。
実施の形態1のリニアモータ1では、可動子2とバックヨーク3との間にも隙間を設けるので、この隙間によって推力が低下することが懸念される。しかしながら、上述したようにバックヨーク3側でも推力を発生できるため、隙間に起因する推力の低下を補えて大きな推力を実現できる。
以上のことから、実施の形態1のリニアモータ1にあっては、大きな推力を維持しながら、可動子2に働く吸引力を大幅に低減することができる。したがって、可動子2には吸引力に伴う撓みがほとんど発生せず、リニアモータ1を用いた半導体製造装置での加工機などにおける寸法精度は非常に高くなる。
また、実施の形態1のリニアモータ1では、吸引力を小さくできるため、剛性が小さい永久磁石21及び保持枠22を使用しても支障は生じない。よって、可動子2の小型化を図れると共に、可動子2の軽量化に伴って大きな加速度を実現することが可能である。また、可動子2の摩耗も少ないため、リニアモータ1の長寿命化を図れる。
リニアモータでは、可動子の移動を平滑に行うために、後述するように可動子の側面にリニアガイドを設けることが一般的であるが、実施の形態1のリニアモータ1では吸引力が小さくなるので、リニアガイドも剛性が小さいものを使用でき、この点でもリニアモータの小型化と長寿命化に寄与できる。
実施の形態1のリニアモータ1では、可動子2の長さをバックヨーク3及び電機子4の長さよりも短くして、更なる小型化及び軽量化と高速化とを図っている。
以下、本発明者が作製した実施の形態1におけるリニアモータ1の具体的な構成と、作製したリニアモータ1の特性とについて説明する。
まず、可動子2を作製した。Nd-Fe-B系の希土類磁石(Br =1.395T、HcJ=1273kA/m)ブロックから、厚さ5mm、幅12mm、長さ82mmの矩形状の14個の永久磁石21を切り出した。切り出した永久磁石21を、厚さ方向に着磁した。次に、厚さ3mmのSUS板から図4に示すような保持枠22をワイアーカットにて切り出した。切り出した保持枠22を、厚さ0.2mmのSUS板からなる固定板23に接着固定した。そして、保持枠22の孔221に、隣り合う永久磁石21の磁化方向が互いに逆向きになるように、接着剤が塗布された14個の永久磁石21をスキュー角θ=3.2°を付与して嵌めこみ、永久磁石21を保持枠22及び固定板23に接着固定した。ここでは、可動子2の軽量化と磁石配列の大きな剛性との両立を実現できるように、永久磁石21の厚さ5mmに対して、保持枠22の厚さを3mmとした。
なお、上記の例とは異なり、厚さ0.5mmのSUS板にプレス加工で孔を空けたものを6枚重ねてカシメ処理で固定する手法にて、保持枠22を作製するようにしても良い。この場合には、作製コストの低減を図れる。
次いで、バックヨーク3を作製した。図6は、実施の形態1のリニアモータ1におけるバックヨーク3の側面形状を示す図である。
軟鋼(JIS規格 G3101 種類記号 SS400材)から図6に示すような寸法を有するブロックを削り出して、18個の同一形状の磁極歯31(幅:6mm、高さ:3mm、長さ:82mm、磁極面積492mm2 )を等ピッチ(15.12mm)に有するバックヨーク3を作製した。
次いで、電機子4を作製した。図7は、実施の形態1のリニアモータ1における電機子4の作製に用いる電機子素材を示す平面図である。図7に示すような形状をなす電機子素材44を0.5mm厚さの珪素鋼板(JIS規格 C2552 種類記号 50A800材)から164枚切り出し、切り出した164枚を重ねて側面をCO2 レーザにて溶融一体化させて、幅82mm、高さ31mm、長さ263.04mmのブロック体(コア41に18個の同一形状の磁極歯42(幅:6mm、高さ:25mm、長さ:82mm、磁極面積492mm2 )を等ピッチ(15.12mm)に有する構成)を得た。
次に、このブロック体に巻き線を挿入した。図8は、実施の形態1のリニアモータ1における電機子4の巻き線を示す図である。電機子4の各磁極歯42のアーム部に、直径2mmのエナメル被覆導線を17回捲き付けたものをワニス含浸させて固定することにより、駆動コイル43とした。
図8におけるU、V、Wは夫々3相交流電源のU相、V相、W相を示し、各相のコイルはすべて直列接続とした。Uコイル、Vコイル、Wコイルは上から見て電流が時計回りに流れるように結線し、-Uコイル、-Vコイル、-Wコイルは上から見て電流が反時計回りに流れるように結線して、電機子4を作製した。そして、6個ずつのUコイル、-Uコイル、Vコイル、-Vコイル、Wコイル、-Wコイルをスター結線して3相交流電源に接続した。
次いで、作製したバックヨーク3及び電機子4を、両者の間隔が一定の6mmに保たれるように、治具を用いて固定した。なお、バックヨーク3と電機子4との隙間が6mmになるように固定したが、この隙間はリニアモータ1組み立て後に調整できる構造とした。次いで、可動子2の側面にリニアガイド(図示せず)を取り付けた後、バックヨーク3及び電機子4の隙間に、バックヨーク3及び電機子4夫々と所定の距離を隔てて、厚さ5mmの可動子2を挿入して、リニアモータ1を作製した。この際、可動子2とバックヨーク3の磁極歯31との隙間の距離、及び、可動子2と電機子4の磁極歯42との隙間の距離を、何れも0.5mmとした。また、リニアガイドと電機子4間には、吸引力を測定できるようにロードセルを設けた。
バックヨーク3と電機子4との隙間を調整できる構造としているため、可動子2と電機子4(磁極歯42)との隙間の距離を一定とした状態で、可動子2とバックヨーク3(磁極歯31)との隙間の距離を任意に設定して可変とすることができる。なお、バックヨーク3及び電機子4の隙間への可動子2の挿入位置を調整することにより、可動子2とバックヨーク3(磁極歯31)との隙間の距離、及び、可動子2と電機子4(磁極歯42)との隙間の距離の比を所望の値に設定することも可能である。
その他、電機子4と可動子2を支持するリニアガイドの間及び電機子4とバックヨーク3の間における隙間を調節する機構として、隙間調整ネジを挿入して高さを調整する機構や断面形状がテーパ状になっているシム板をネジにより挿入して高さを調節する機構が採用可能である。
図9A及び9Bは、このようにして作製した実施の形態1の一例のリニアモータ1の構成を示す図であり、図9Aはその上面図、図9Bはその側面図である。図9Bにあって、白抜き矢符は永久磁石21の磁化方向を表し、実線矢符は、可動子2の可動方向を表している。また、このリニアモータ1の作製仕様の詳細は以下の通りである。
磁極構成:7極6スロット
永久磁石21の材質:Nd-Fe-B系希土類磁石(日立金属製NMX
-S49CH材)
永久磁石21の形状:厚さ5.0mm,幅12mm,長さ82mm
永久磁石21のピッチ:12.96mm
永久磁石21のスキュー角:3.2°
バックヨーク3の形状:厚さ6.0mm,幅90mm,長さ263.04mm
バックヨーク3の材質:軟鋼(JIS規格 G3101 種類記号 SS400材)
磁極歯31の形状:幅6.0mm,高さ:3.0mm,長さ:82mm
磁極歯31のピッチ:15.12mm
コア41の体格:高さ31mm,幅82mm,長さ263.04mm
コア41の材質:珪素鋼板(JIS規格 C2552 種類記号 50A800材)
磁極歯42の形状:幅6.0mm,高さ:25mm,長さ:82mm
磁極歯42のピッチ:15.12mm
駆動コイル43の形状:幅15.12mm,高さ23mm,長さ91.12mm
駆動コイル43の巻き厚:4.06mm
駆動コイル43の巻き線の径,巻き数:直径2mm,17ターン
巻き線抵抗(1個):0.0189Ω
可動子2の質量:516.6g
上述したリニアモータ1では、可動子2の長さ(190mm)は、バックヨーク3及び電機子4の長さ(何れも263.04mm)よりも短い。バックヨーク3における磁極歯31のピッチ、電機子4における磁極歯42のピッチは、何れも15.12mmであって等しく、磁極歯31及び磁極歯42は、可動方向において同じ位置にある。
磁石配列に対向する磁極歯31の磁極面の形状と、磁石配列に対向する磁極歯42の磁極面の形状とは、同一寸法の矩形状である。つまり、磁極歯31の幅(可動方向の寸法)及び磁極歯42の幅(可動方向の寸法)は、何れも6mmであって等しく、磁石配列に対向する磁極歯31の磁極面積及び磁石配列に対向する磁極歯42の磁極面積は、何れも492mm2 であって等しい。
このようにして組み立てたリニアモータ1を推力測定用テストベンチに設置し、可動子2(磁石配列)の位置に同期した3相定電流電源により駆動して可動子2を移動させ、推力と吸引力とを測定した。
図10は、実施の形態1の一例のリニアモータ1の電気角に対する推力変動を示すグラフである。この推力変動は、駆動起磁力(=駆動電流の大きさ×駆動コイル43の巻き数)を1200Aとした場合における可動子2位置に対する推力(U相、V相、W相の3相合成推力)の変化を表している。図10において、横軸は電気角[°]であり、縦軸は推力[N]である。また、図中aは電機子4による推力、図中bはバックヨーク3による推力、図中cは全体の推力(電機子4による推力とバックヨーク3による推力との加算推力)を夫々表している。図10に示すように、全域にわたってほぼ一定の大きな推力を得られていることが分かる。
図11は、実施の形態1の一例のリニアモータ1の推力特性を示すグラフである。この推力特性は、駆動コイル43への印加電流を変化させた場合の特性を表している。図11において、横軸は駆動起磁力[A]であり、左縦軸は推力[N]、右縦軸は推力起磁力比[N/A]である。また、図中aは推力、図中bは推力起磁力比を夫々表している。このリニアモータ1では、推力比例限(推力起磁力比が10%低下)が駆動起磁力1200A時の1000Nである。
図12は、実施の形態1の一例のリニアモータ1の吸引力特性を示すグラフである。この吸引力特性は、駆動コイル43への印加電流を変化させた場合の特性を表している。図12において、横軸は駆動起磁力[A]であり、縦軸は吸引力[N]である。なお、吸引力は、+側で可動子2が電機子4側へ吸引され、-側で可動子2がバックヨーク3側へ吸引されることを示している。駆動起磁力の増加に応じて吸引力も大きくなっていき、例えば駆動起磁力が1200Aである場合に、290Nほどの吸引力で可動子2がバックヨーク3側へ吸引されている。
ところで、実施の形態1のリニアモータ1を従来のリニアモータと比較して評価するために、従来例として2種のリニアモータ(第1従来例及び第2従来例)を作製して、それらの特性(推力と吸引力)を測定した。
まず、第1従来例の構成について説明する。図13は、第1従来例のリニアモータの構成を示す側面図である。第1従来例は、特許文献1または2に準じた構成を有するリニアモータ(一体型リニアモータ)である。
第1従来例のリニアモータ50は、磁石配列52とバックヨーク53とを一体化させてなる可動子51と、可動子51に隙間をあけて対向配置した電機子54とを有している。第1従来例では、磁石配列52及びバックヨーク53を一体化させた構造物が可動子として機能し、電機子54は固定子として機能する。
磁石配列52の構成は、前述した可動子2の磁石配列の構成と同様である。即ち、磁石配列52は、複数の矩形状の永久磁石55を、等ピッチで非磁性材の保持枠に保持固定して可動方向(図13の左右方向)に設置させて構成され、各永久磁石55は厚さ方向(図13の上下方向)に磁化されており、隣り合う永久磁石55,55同士でその磁化方向は逆向きである。第1従来例のリニアモータ50では、この磁石配列52が軟鋼製の平板状のバックヨーク53に接着している。また、電機子54の構成は、前述した電機子4の構成と同様であって、コア56に可動方向に等ピッチにて複数の磁極歯57が一体的に設けられており、各磁極歯57に駆動コイル58が捲かれている。
図14A及び14Bは、このような第1従来例のリニアモータ50の構成を示す図であり、図14Aはその上面図、図14Bはその側面図である。図14Bにあって、白抜き矢符は永久磁石55の磁化方向を表し、実線矢符は可動子51の可動方向を表している。なお、可動子51と電機子54との隙間の大きさは、0.5mmまたは1mmとした。このリニアモータ50の作製仕様の詳細は以下の通りである。
磁極構成:7極6スロット
永久磁石55の材質:Nd-Fe-B系希土類磁石(日立金属製NMX
-S49CH材)
永久磁石55の形状:厚さ5.0mm,幅12mm,長さ82mm
永久磁石55のピッチ:12.96mm
永久磁石55のスキュー角:3.2°
バックヨーク53の形状:厚さ6.0mm,幅90mm,長さ190mm
バックヨーク53の材質:軟鋼(JIS規格 G3101 種類記号 SS400材)
コア56の体格:高さ31mm,幅82mm,長さ263.04mm
コア56の材質:珪素鋼板(JIS規格 C2552 種類記号 50A800材)
磁極歯57の形状:幅6.0mm,高さ:25mm,長さ:82mm
磁極歯57のピッチ:15.12mm
駆動コイル58の形状:幅15.12mm,高さ23mm,長さ91.12mm
駆動コイル58の巻き厚:4.06mm
駆動コイル58の巻き線の径,巻き数:直径2mm,17ターン
巻き線抵抗(1個):0.0189Ω
可動子51(磁石配列52+バックヨーク53)の質量:1321.01g
可動子51(磁石配列52及びバックヨーク53の一体化構成)の可動方向(図13の左右方向)における長さは、電機子54の長さよりも短く、この長さの差がリニアモータ50の動作可能なストロークとなる。
次に、第2従来例の構成について説明する。図15は、第2従来例のリニアモータの構成を示す側面図である。第2従来例は、特許文献3~6に準じた構成を有するリニアモータ(分離型リニアモータ)である。なお、図15では、磁石配列62のみは磁石の配置がわかるように可動方向に平行な方向からの断面を表している。
第2従来例のリニアモータ60は、磁石配列62と、磁石配列62に隙間をあけて対向配置したバックヨーク63と、磁石配列62に隙間をあけてバックヨーク63とは反対側に対向配置した電機子64とを有している。磁石配列62のみが可動子として機能し、バックヨーク63及び電機子64は固定子として機能する。
磁石配列62の構成は、前述した可動子2の磁石配列の構成と同様である。即ち、磁石配列62は、複数の矩形状の永久磁石65を、等ピッチで非磁性材の保持枠に保持固定して可動方向(図15の左右方向)に設置させて構成され、各永久磁石65は厚さ方向(図15の上下方向)に磁化されており、隣り合う永久磁石65,65同士でその磁化方向は逆向きである。軟鋼製であるバックヨーク63は、磁石配列62に対向しない側の面だけでなく、磁石配列62に対向する側の面も平板状であり、実施の形態1のリニアモータ1のような磁極歯は存在しない。また、電機子64の構成は、前述した電機子4の構成と同様であって、コア66に可動方向に等ピッチにて複数の磁極歯67が一体的に設けられており、各磁極歯67に駆動コイル68が捲かれている。
図16A及び16Bは、このような第2従来例のリニアモータ60の構成を示す図であり、図16Aはその上面図、図16Bはその側面図である。図16Bにあって、白抜き矢符は永久磁石65の磁化方向を表し、実線矢符は磁石配列62(可動子)の可動方向を表している。なお、磁石配列62とバックヨーク63との隙間の大きさ、及び、磁石配列62と電機子64との隙間の大きさを、何れも0.5mmとした。また、このリニアモータ60の作製仕様の詳細は以下の通りである。
磁極構成:7極6スロット
永久磁石65の材質:Nd-Fe-B系希土類磁石(日立金属製NMX
-S49CH材)
永久磁石65の形状:厚さ5.0mm,幅12mm,長さ82mm
永久磁石65のピッチ:12.96mm
永久磁石65のスキュー角:3.2°
バックヨーク63の形状:厚さ6.0mm,幅90mm,長さ215mm
バックヨーク63の材質:軟鋼(JIS規格 G3101 種類記号 SS400材)
コア66の体格:高さ31mm,幅82mm,長さ263.04mm
コア66の材質:珪素鋼板(JIS規格 C2552 種類記号 50A800材)
磁極歯67の形状:幅6.0mm,高さ:25mm,長さ:82mm
磁極歯67のピッチ:15.12mm
駆動コイル68の形状:幅15.12mm,高さ23mm,長さ91.12mm
駆動コイル68の巻き厚:4.06mm
駆動コイル68の巻き線の径,巻き数:直径2mm,17ターン
巻き線抵抗(1個):0.0189Ω
可動子(磁石配列62)の質量:516.6g
磁石配列62の可動方向(図15の左右方向)における長さは、電機子64の長さよりも短く、この長さの差がリニアモータ60の動作可能なストロークとなる。
上述した第1従来例、第2従来例、及び実施の形態1の一例における特性(推力と吸引力)の比較について説明する。
図17は、第1従来例、第2従来例、及び実施の形態1の一例のリニアモータにおける平均推力を示すグラフである。図17は、駆動起磁力を1200Aとした場合の平均推力[N]を表している。また、図18は、第1従来例、第2従来例、及び実施例のリニアモータにおける平均吸引力を示すグラフである。図18は、駆動起磁力を1200Aとした場合の平均吸引力[N]を表している。ここで、平均推力と平均吸引力は、U相電気角0°から360°の範囲において15°間隔で25点の推力と吸引力を測定(計算)し、その平均を算出したものである。
図17及び図18にあって、Aは磁石配列52・バックヨーク53一体型の第1従来例にあって可動子51と電機子54との隙間を0.5mmとしたリニアモータ50(以下、リニアモータ50Aともいう)であり、Bは磁石配列52・バックヨーク53一体型の第1従来例にあって可動子51と電機子54との隙間を1mmとしたリニアモータ50(以下、リニアモータ50Bともいう)であり、Cは磁石配列62とバックヨーク63とを離隔させた第2従来例にあって磁石配列62とバックヨーク63との隙間、及び、磁石配列62と電機子64との隙間を何れも0.5mmとしたリニアモータ60であり、Dは可動子2(磁石配列)から離隔したバックヨーク3に磁極歯31を形成した実施の形態1の一例にあって可動子2とバックヨーク3との隙間、及び、可動子2と電機子4との隙間を何れも0.5mmとしたリニアモータ1である。
第1従来例のリニアモータ50A(図中A)では、推力が最も大きくて1030Nあるが、吸引力は4200Nで推力の4倍程度の大きな数値となっている。この吸引力を低減する対策としてのリニアモータ50B(図中B)では、得られる推力の低下が著しく909Nになるのに対して吸引力はあまり低減せずに3360Nである。よって、十分な対策になっていないことが理解される。
第2従来例のリニアモータ60(図中C)では、980Nの比較的大きい推力を得ることができるが、吸引力については1712Nもの大きな力によってバックヨーク63側に吸引されており、吸引力の十分な低減がなされていない。
これに対して、実施の形態1の一例のリニアモータ1(図中D)では、リニアモータ50Aと遜色がない1000Nの大きな推力を得ることができている。また、吸引力についてはバックヨーク3側に290N(リニアモータ50Aの1/14程度)まで大幅に低減できている。したがって、実施の形態1の一例のリニアモータ1では、大きな推力を維持しながら、吸引力を大幅に低減できることが立証されている。
ところで、実施の形態1の一例のリニアモータ1にあっては、図12にも示すように、吸引力の大きさは駆動起磁力の大きさによって変化する。よって、よく使用される推力領域(駆動起磁力)に合わせて、可動子2とバックヨーク3との隙間の大きさを調整するようにすれば、より吸引力を小さくできる。
前述した実施の形態1の一例では、可動子2とバックヨーク3との隙間、及び、可動子2と電機子4との隙間を何れも0.5mmと等しくしたが、実施の形態1の他の例では、可動子2と電機子4との隙間は0.5mmのままで、可動子2とバックヨーク3との隙間を0.74mmとした。なお、他の構成は前述した一例と同じである。
図19は、実施の形態1の他の例のリニアモータ1の推力特性を示すグラフであり、図20は、実施の形態1の他の例のリニアモータ1の吸引力特性を示すグラフである。図19において、横軸は駆動起磁力[A]であり、左縦軸は推力[N]、右縦軸は推力起磁力比[N/A]であり、aは推力、bは推力起磁力比を夫々表している。また、図20において、横軸は駆動起磁力[A]であり、縦軸は吸引力[N]である。
他の例では、駆動起磁力が1200Aである場合に推力は978Nとなって、前述した一例に比べて少し落ちるが、吸引力については駆動起磁力が1200Aである場合に18Nしかなくてほぼ零を実現できている。これは、リニアガイドや可動子や周辺の構造物に吸引力による変形や寿命低下が無視できるレベルの吸引力である。よって、1200A近傍の駆動起磁力にて使用する場合には、他の例のリニアモータ1の方が、前述した一例と比べて、吸引力の低減という目的には適していることが分かる。
また、実施の形態1の更に他の例として、可動子2と電機子4との隙間は0.5mmのままで、可動子2とバックヨーク3との隙間を0.66mmとしたリニアモータ1を作製した。なお、他の構成は前述した一例と同じである。
図21は、実施の形態1の更に他の例のリニアモータ1の推力特性を示すグラフであり、図22は、実施の形態1の更に他の例のリニアモータ1の吸引力特性を示すグラフである。図21において、横軸は駆動起磁力[A]であり、左縦軸は推力[N]、右縦軸は推力起磁力比[N/A]であり、aは推力、bは推力起磁力比を夫々表している。また、図22において、横軸は駆動起磁力[A]であり、縦軸は吸引力[N]である。
更に他の例では、駆動起磁力が1200Aである場合に推力は984Nとなって、前述した一例に比べて少し落ちるが、吸引力については駆動起磁力が600Aである場合に5Nしかなくてほぼ零を実現できている。よって、600A近傍の駆動起磁力にて使用する場合には、更に他の例のリニアモータ1が、吸引力を低減するためには最適であることが分かる。
以上のことから、頻度が高い使用領域に応じて、可動子2とバックヨーク3との隙間の大きさを最適に設定することにより、吸引力を大幅に低減できてほぼ零が達成可能である。この結果、可動子2(磁石配列)の撓みに起因した寸法精度の悪化、リニアガイドへの過重負荷による寿命の低下などを防止することができる。
なお、上述した形態では、可動子2と電機子4との隙間の大きさを固定して可動子2とバックヨーク3との隙間の大きさを変動させる例について説明したが、これとは逆に、可動子2とバックヨーク3との隙間の大きさを固定して可動子2と電機子4との隙間の大きさを変動させる例、バックヨーク3と電機子4との隙間の大きさを固定して可動子2の位置を変動させる例などにより、零に近い吸引力を実現することも可能である。
また、上述した形態では、可動子2が電機子4よりも短い構成のリニアモータ1について説明したが、これとは逆に、可動子が電機子よりも長い構成のリニアモータについても、本発明の特徴(バックヨークに磁極歯を形成)は適用可能である。
(実施の形態2の基本例)
図23及び図24は実施の形態2のリニアモータ1の構成例を示す斜視図及び側面図である。なお、図23及び図24では、可動子2のみは磁石の配置がわかるように可動方向に平行な方向からの断面を表している。
実施の形態2のリニアモータ1は、実施の形態1と同様に、可動子2とバックヨーク3と電機子4とを含み、バックヨーク3及び電機子4が固定子として機能する。
なお、実施の形態2のリニアモータ1における可動子2及び電機子4の構成は、前述した実施の形態1のリニアモータ1における可動子2及び電機子4の構成と同じであるので、その説明は省略する。
実施の形態2のリニアモータ1では、バックヨーク3の構成が、実施の形態1のリニアモータ1と異なっている。バックヨーク3は磁極歯31及びベース板32を含む。ベース板32は矩形板状をなしている。磁極歯31はベース板32に固定されている。磁極歯31は、その一部分がベース板32から突出するように固定されている。突出している部分の形状は直方体状である。複数の磁極歯31はベース板32の長手方向に沿って、等ピッチで配置されている。磁極歯31は例えば、後述するように積層珪素鋼板により形成する。ベース板32は例えば、SS400などの炭素鋼により形成する。
バックヨーク3と電機子4とは、間隙を隔てて対向配置される。そして、当該間隙に可動子2が配置される。可動子2の第一の面は隙間をあけてバックヨーク3と対向している。可動子2の第一の面と対向する第二の面は隙間をあけて電機子4と対向する。
図24に示すように、バックヨーク3及び電機子4の可動方向(図24の左右方向)における長さは略等しい。また、バックヨーク3における磁極歯31のピッチは、電機子4の磁極歯42のピッチに等しい。バックヨーク3における各磁極歯31の位置は、可動子2の可動方向において電機子4の各磁極歯42の位置と同じである。また、磁極歯31の磁極面と磁極歯42の磁極面とは、同一の矩形状であって、同一の面積を有する。また、可動子2とバックヨーク3との隙間は、可動子2と電機子4との隙間とほぼ同じである。
可動子2において、隣り合う永久磁石21、21の磁化方向が逆向きとなっている。可動子2をバックヨーク3と電機子4との間隙に配置すると、バックヨーク3側から電機子4側に向かう方向に磁化された永久磁石21と、電機子4側からバックヨーク3側に向かう方向に磁化された永久磁石21とが交互に配置される構成となる。
リニアモータ1の動作時には、バックヨーク3の磁極歯31と可動子2の永久磁石21との間に吸引力が発生する。また、電機子4の磁極歯42と可動子2の永久磁石21との間にも吸引力が発生する。可動子2に働く2つの吸引力は互いに反対方向である。磁極歯31の磁極面と磁極歯42の磁極面とを、同一の矩形状また同一の面積とする等磁気回路を調整することで、吸引力の大きさは略等しくすることができる。それによって、磁極歯31と永久磁石21との間に発生する吸引力、及び磁極歯42と永久磁石21との間に発生する吸引力をバランスさせることができる。すなわち、2つの吸引力を互いに打ち消すことができる。なお、加工誤差、組立誤差などの要因で、2つの吸引力をバランスさせることが困難な場合、磁極歯31と永久磁石21との間隔、または磁極歯42と永久磁石21との間隔を調整して、2つの吸引力をバランスさせる。
以上のように、実施の形態2のリニアモータ1は、前述した実施の形態1のリニアモータ1と同様な構成を有しているため、実施の形態2のリニアモータ1にあっても、実施の形態1のリニアモータ1と同じく、大きな推力を維持しながら、可動子2に働く吸引力を大幅に低減することができる。また、実施の形態2のリニアモータ1にあっても、実施の形態1のリニアモータ1と同じく、可動子2のディテント力の低減を図ることができる。
以下、実施の形態2の特徴であるバックヨーク3の構成について、詳細を説明する。図25はバックヨーク3に含まれる磁極歯31の構成例を示す斜視図である。磁極歯31は断面T字状をなしておりその底部(図25における下側)から短手方向に突出した2つの突出部31a、31aを有している。(このため図25においてはH字状を横にした形状としてある)突出部31a、31aは後述のアリ溝321の凹部32a、32aと係合する部位である。リニアモータ1の動作時において、磁極歯31の短手方向は可動子2の可動方向に平行な方向となる。
磁極歯31は磁極片311を積層してなる。磁極片311は矩形板状の一部を切り欠いて形成した係合用の突出部311aを含む。磁極片311は軟磁性を有する珪素鋼等の薄板により形成する。積層された磁極片311同士の固定は、熱溶着やカシメなどにて行う。熱溶着の場合は、例えば、まず、磁極片311の表面に熱硬化性の接着剤を塗布するか熱溶着性の塗膜を付したものを、積層した後に板面に圧力を掛けながら加熱する。加熱により磁極片311同士が固定される。
なお、磁極歯31を構成する磁極片311の板厚を薄くするほど、すなわち磁極片311の枚数を増やすほど渦電流損は低減する。強度や組み立ての手間を考慮すると、磁極片311の板厚は0.2~0.5mm程度とすることが望ましい。磁極歯31を構成する磁極片311の枚数や板厚は、求められる仕様に応じて適宜設計すれば良い。
図26はバックヨーク3に含まれるベース板32の構成例を示す部分斜視図である。図26は説明の都合上、図24及び図25と上下方向を逆にして描いている。ベース板32は短手方向に沿ってアリ溝321が設けてある。アリ溝321は磁極片311の突出部311a(磁極歯31の突出部31a)に対応した形状としてある。アリ溝321は突出部311a(突出部31a)に対応する凹部32aを有している。図24及び図25に示すように、ベース板32には複数のアリ溝321が形成してある。複数のアリ溝321は、可動子2の可動方向に沿って、等ピッチで設けてある。複数のアリ溝321の配列方向は、リニアモータ1動作時において、可動子2の可動方向に平行な方向である。
図27はバックヨーク3の部分斜視図である。図26と同様に、説明の都合上、図24及び図25と上下方向を逆にして描いている。バックヨーク3において、磁極歯31の突出部31aはアリ溝321に係合している。
磁極歯31のベース板32への固定は、例えば次のように行う。アリ溝321と磁極歯31片方あるいは両方に接着剤を塗布する。治具等を用い、アリ溝321に磁極歯31をはめ込み位置決めをする。接着剤が硬化したら治具を取り外す。なお、固定方法はこれに限らない。磁極歯31のピッチや、磁極歯31のベース板32から突出量が所定の誤差範囲内に収まるように固定できるのであれば、他の方法でもよい。
リニアモータ1は、電機子4の駆動コイル43に3相交流を印加することにより、電機子4の磁極歯42、可動子2の永久磁石21及びバックヨーク3の磁極歯31を流れる磁束が発生する。発生した磁束による可動子2と電機子4との間に発生する吸引力、及び可動子2とバックヨーク3との間に発生する吸引力が可動子2の推力となり、可動子2が移動する。
次に渦電流の低減について説明する。図28はリニアモータ1の部分側面図である。図28において、磁束の流れの一例を実線の矢印で、渦電流の一例を点線の矢印で示す。図28に示すように、磁極歯31において、磁束は紙面上下方向に流れる。すなわち、磁極歯31を構成する磁極片311の板面に平行な方向に流れる。渦電流は磁束の流れる方向と垂直な平面上で磁束の変化を妨げる方向に流れようとする。すなわち、図28に示す場合では、磁束の流れる方向に対して直交し反時計回りに流れようとする。この渦電流の方向は、磁極歯31を構成する磁極片311の板面を貫こうとする方向である。しかし、磁極歯31は複数の磁極片311を積層しており、磁極片311間の電気抵抗が大きいため、渦電流を低減することが可能となる。更に、磁極片311の板面(表面)に絶縁被膜を施した場合には、磁極片311間で流れる渦電流を更に低減することが可能となる。
図29A及び29Bは渦電流によるジュール損失の一例を示すグラフであって、図29Aは関連する技術によるリニアモータのジュール損失を示すグラフであり、図29Bは実施の形態2の基本例におけるリニアモータ1のジュール損失を示すグラフである。関連する技術によるリニアモータと実施の形態2におけるリニアモータとの構成の違いは次のとおりである。前者は磁極歯を積層構造としていない。例えば、前者における磁極歯は軟磁性体のブロックである。またはベース板32と磁極歯31が一体として軟磁性体で構成されていても良い。それに対して、後者は磁極歯31が積層構造となっている。それ以外の条件、リニアモータの構造、寸法、及びコイルの巻き数、並びに駆動条件は同一とした。例えばコイルの駆動電流は70.6Aであり可動子の移動速度は1000mm/sとした。
図29A及び29Bの横軸は可動子2の位置を示す電気角である。横軸の単位は度(°)である。図29A及び29Bの縦軸は渦電流によるジュール損失である。単位はワット(W)である。バックヨークと付したグラフはバックヨークでのジュール損失を示す。図29Aに示すように、磁極歯を積層構造としない関連する技術によるリニアモータでは、バックヨークでのジュール損失が80W前後であるのに対して、磁極歯31を積層構造とした実施の形態2のリニアモータ1では、バックヨーク3でのジュール損失が50W前後まで低減している。
図29A及び29Bにおいて、U、V、Wと付したグラフはそれぞれコイルU相、V相、W相で発生する通電によるジュール損失を絶対値で示したものである。なお、図29A及び29Bにおいてコイルへの通電によるコイルでのジュール損失は同じであるが、バックヨークでのジュール損失に大きな違いが出ている。本結果は、同一寸法形状下において磁極歯を積層構造としない場合に対して積層構造とした場合で渦電流によるジュール損失を低減できることを示す例であって、リニアモータの大きさやリニアモータの速度によって渦電流によるジュール損失の絶対値は変わってくるが同一速度における両者の効果の比率は維持される。
実施の形態2におけるリニアモータ1は、次のような効果を奏する。磁極歯31は珪素鋼板により形成した磁極片311を積層して構成してある。そのため、渦電流の方向は板面を貫こうとする方向となる。この際、磁極片311表面の隙間や磁極片同士の接触抵抗、磁極片311表面に形成される酸化皮膜などにより、磁極歯31における渦電流方向の電気抵抗は、磁極歯31を軟磁性体ブロックで形成した場合と比べて、大きくなっている。したがって、磁極歯31に流れる渦電流を低減することが可能となる。なお、磁極片311の表面(積層面)を、絶縁物質の被膜を形成するなどをした絶縁処理を施してもよい。絶縁処理を施した場合には、各珪素鋼板間で渦電流をより低減することが可能になる。
また、実施の形態2においては、バックヨーク3が有する磁極歯31を積層構造とした。例えばバックヨーク全体を積層鋼板で形成した場合には、剛性が下がることが懸念される。その場合は可動子2との間で発生する吸引力により、バックヨーク3に撓みが生じるおそれがある。しかし、基本例では、磁極歯31のみを積層構造とし、磁極歯31が固定されるベース板32は積層構造としない。そのため、バックヨーク3の撓みは関連する技術(磁極歯31とベース板32を軟磁性体でそれぞれ形成した場合や、磁極歯31とベース板32を軟質磁性体により一体で形成した場合)による構成と比較しても、軽微である。
(実施の形態2の第1変形例)
第1変形例は、バックヨーク3を構成するベース板の一部を積層構造とする形態に関する。図30はバックヨーク3の他の構成例を示す側面図である。バックヨーク3はベース部33及び磁極歯ブロック34を含む。磁極歯ブロック34は被嵌合部34a及び複数の磁極歯31を含む。
図31は磁極歯ブロック34の構成例を示す斜視図である。磁極歯ブロック34は複数の磁極歯片(板状部材)341を積層してなる。磁極歯片341の積層方向は、磁極歯31の配列方向に交差する方向である。磁極歯片341は被嵌合部341a、接続部341b及び複数の突出部341cを含む。被嵌合部341aは断面逆台形状をなす。被嵌合部341aは磁極歯ブロック34の被嵌合部34aとなる部分である。突出部341cは断面矩形状をなす。複数の突出部341cは、磁極歯片341の長手方向に等ピッチで形成してある。突出部341cは磁極歯ブロック34の磁極歯31となる部分である。接続部341bは磁極歯片341の高さ方向で被嵌合部341aと突出部341cとの間に位置する部分である。接続部341bは複数の突出部341cを接続している。磁極歯片341は例えば、珪素鋼板で形成する。接続部341bは、バックヨーク3のベース部分の一部となる積層部分を構成する板状部材である。突出部341cは磁極歯31を構成する板状部材である。磁極歯片341は、2つの板状部材を一体としたものである。
図32はベース部33の構成例を示す斜視図である。図32に示すベース部33は図30に示すベース部33とは、上下を反転している。ベース部33は矩形板状をなす。ベース部33は断面が台形状の嵌合溝33aが形成してある。
ベース部33の嵌合溝33aには磁極歯ブロック34の被嵌合部34aが嵌合する。なおベース部33において、可動子2の可動方向の長さは、磁極歯ブロック34の可動方向の長さに合わせて設定すれば良い。磁極歯ブロック34のベース部33への固定は次のように行う。嵌合溝33aまたは被嵌合部34aの片方または両方に接着剤を塗布した後に、嵌合し行う。それにより、ベース部33と磁極歯ブロック34とは、固定される。以上の結果、バックヨーク3が形成される。
次に渦電流の低減について説明する。図33はリニアモータ1の部分側面図である。図33において、磁束の流れの一例を実線の矢印で、渦電流の一例を点線の矢印で示す。磁極歯31における渦電流の低減については、前述した基本例と同様であるから、説明を省略する。ここでは、磁極歯ブロック34の接続部341bでの渦電流の低減について説明する。図33に示すように、接続部341bにおいて、磁束は紙面左右方向に流れる。すなわち、磁極歯ブロック34を構成する磁極歯片341の板面に平行な方向に流れる。渦電流は磁束の流れる方向と垂直な平面上で磁束の変化を妨げる方向に流れようとする。すなわち、図33に示すように、磁束の流れる方向を軸として反時計回りに流れようとする。この渦電流の方向は、磁極歯ブロック34を構成する磁極歯片341の板面を貫こうとする方向である。しかし、磁極歯ブロック34は複数の磁極歯片341を積層し、磁極歯片341間の電気抵抗は大きくなっているため、渦電流を低減することが可能となる。更に、板面に絶縁被膜が施した場合には、磁極歯片341間で流れる渦電流を更に低減することが可能となる。
更に、接続部341bの高さについて、説明する。図33に示すように、接続部341bの高さをdとする。隣接する磁極歯31間を流れる磁束は、紙面左右方向に流れる。磁束が流れる経路は最短となるような経路を辿る。そのため、磁極歯31から一定以上の距離が離れた部分には磁束は流れない。したがって、接続部341bの高さdは、紙面左右方向の磁束を十分に流せる値とすればよい。また、磁束が流れないベース部33については非磁性材で形成することが可能である。例えば、高剛性でヤング率が大きいアルミナなどにより、ベース部33を形成する。あるいは非磁性ステンレスやアルミニウム合金等が使用可能である。
図34A及び34Bは渦電流によるジュール損失の一例を示すグラフであり、図34Aは基本例におけるリニアモータ1のジュール損失を示すグラフである。図34Aは図29Bを再掲したものである。図34Bは第1変形例におけるリニアモータ1のジュール損失を示すグラフである。基本例は磁極歯31が積層構造となっているのに対し、第1変形例においては磁極歯及びベース板の一部が積層構造となっている。それ以外の条件、リニアモータの構造、寸法、及びコイルの巻き数、並びに駆動条件は同一とした。例えばコイルの駆動電流は70.6Aであり可動子の移動速度は1000mm/sとした。
図34Aに示すように、基本例におけるリニアモータ1では、バックヨーク3のジュール損失が50W前後であるのに対して、第1変形例のリニアモータ1では、図34Bに示すように、バックヨーク3のジュール損失が2.5W前後まで低減している。接続部341bが積層構造であるため、接続部341bに流れる磁束による渦電流も低減されるからである。図34A及び34Bにおいて、U、V、Wと付したグラフはそれぞれコイルU相、V相、W相で発生する通電によるジュール損失を絶対値で示したものである。なお、図34A及び34Bにおいてコイルへの通電によるコイルでのジュール損失は同じであるが、バックヨークでのジュール損失に大きな違いが出ている。本結果は、同一寸法形状下において磁極歯のみを積層構造とした場合と、磁極歯とバックヨークの一部を積層構造とした場合では、後者の方が渦電流によるジュール損失を低減できることを示す例であって、リニアモータの大きさやリニアモータの速度によって渦電流によるジュール損失の絶対値は変わってくるが同一速度における両者の効果の比率は維持される。
第1変形例におけるリニアモータ1では、磁極歯ブロック34は珪素鋼板(磁極歯片341)を積層して構成してある。リニアモータ1は、磁極歯31に加えて、バックヨーク3の磁極歯31との接続部分から厚さ方向の一部を積層構造としてある。そのため、隣接する磁極歯31間を接続部341bに流れる磁束は磁極歯片341の表面に平行な方向である。磁束の流れにより発生する渦電流の方向は磁極歯片341の板面を貫こうとする方向となる。しかし、磁極歯片341表面の隙間やその表面に形成される酸化皮膜などにより、接続部341bにおける渦電流方向の電気抵抗は、積層構造としない場合と比べて、大きくなっている。したがって、接続部341bに流れる渦電流を低減することが可能となる。よって、バックヨーク3に流れる渦電流を更に低減することが可能となる。
また、第1変形例においては、基本例1が奏する前述した効果に加えて、次のような効果を奏する。バックヨーク3の一部であるベース部33を非磁性材料で形成することが可能であるから、ヤング率の高い材料、例えばアルミナで構成することが可能となる。それにより、バックヨーク3全体の剛性が増加するので、可動子2との間で生じる吸引力による撓みを軽減することが可能なる。更にまた、ベース部33の材質によりバックヨーク3全体の剛性が求められる剛性を上回っている場合には、バックヨーク3を薄くすることが可能となる。
(実施の形態2の第2変形例)
第2変形例はバックヨーク3を構成するベース板32の一部を積層構造とする形態に関する。図35はバックヨーク3の他の構成例を示す側面図である。バックヨーク3は複数のバックヨークユニット301及びバックヨークユニット302を含む。バックヨークユニット301はベース部35及び磁極歯ユニット36を含む。バックヨークユニット302はベース部35及び磁極歯ユニット37を含む。バックヨークユニット301とバックヨークユニット302との違いは、含まれる磁極歯ユニットの違いである。バックヨーク3の一端部をバックヨークユニット301とし、他端部をバックヨークユニット302とする。それにより、図35に示すように、両端部に磁極歯31を備えるバックヨーク3を構成することが可能となっている。
図36A及び36Bは磁極歯ユニット36、37の構成例を示す斜視図であり、図36Aは磁極歯ユニット36の構成例を示し、図36Bは磁極歯ユニット37の構成例を示している。磁極歯ユニット36は櫛歯状に形成された複数の磁極歯31及び被嵌合部36aを含む。磁極歯31は断面矩形状をなしている。被嵌合部36aは断面逆台形状をなしている。
磁極歯ユニット36は複数の磁極歯片(板状部材)361を積層してなる。磁極歯片361の積層方向は、磁極歯31の配列方向に交差する方向である。磁極歯片361は被嵌合部361a、接続部361b及び複数の突出部361cを含む。被嵌合部361aは断面逆台形状をなす。被嵌合部361aは磁極歯ユニット36の被嵌合部36aとなる部分である。突出部361cは断面矩形状をなす。複数の突出部361cは、磁極歯片361の長手方向に等ピッチで形成してある。突出部361cは磁極歯ユニット36の磁極歯31となる部分である。接続部361bは磁極歯片361の高さ方向で被嵌合部361aと突出部361cとの間に位置する部分である。接続部361bは複数の突出部361cを接続している。磁極歯片361は例えば、珪素鋼板で形成する。接続部361bは、バックヨーク3のベース部分の一部となる積層部分を構成する板状部材である。突出部361cは磁極歯31を構成する板状部材である。磁極歯片361は、2つの板状部材を一体としたものである。
磁極歯ユニット37は複数の磁極歯片371を積層してなる。磁極歯片371の積層方向は、磁極歯31の配列方向に交差する方向である。磁極歯片371は磁極歯片361とほぼ同様な構成である。以下では、磁極歯片371が磁極歯片361と異なる点を主として説明する。磁極歯片371は被嵌合部371a、接続部371b及び複数の突出部371cを含む。磁極歯片361の接続部361bは長手方向の一方の端部において、長手方向に飛び出ている。それに対して、磁極歯片371の接続部371bは長手方向の両端部において、長手方向に飛び出てはいない。磁極歯片371のその他の構成は、磁極歯片361と同様であるから説明を省略する。
図37はベース部35の構成例を示す斜視図である。図37に示すベース部35は図35に示すベース部35とは、上下を反転している。ベース部35は矩形板状をなす。ベース部35は断面が台形状の嵌合溝35aが形成してある。
ベース部35の嵌合溝35aには磁極歯ユニット36の被嵌合部36a、または磁極歯ユニット37の被嵌合部37aが嵌合する。なおベース部35において、可動子2の可動方向の長さは、磁極歯ユニット36あるいは磁極歯ユニット37の可動方向の長さに合わせて設定すれば良い。ベース部35と磁極歯ユニット36または磁極歯ユニット37との固定は、次のように行う。嵌合溝35aと被嵌合部361aまたは被嵌合部371aの片方あるいは両方に接着剤を塗布した後に、嵌合し行う。それにより、ベース部35と磁極歯ユニット36または磁極歯ユニット37とは、固定される。以上の結果、バックヨークユニット301またはバックヨークユニット302が形成される。そして、リニアモータ1のストロークに応じて、バックヨークユニット301の個数を選択し、複数のバックヨークユニット301及び1つのバックヨークユニット302を結合することにより、図35に示すようにバックヨーク3が形成される。それぞれのバックヨークユニット301及び302は、公知の方法で結合、例えばバックヨークユニット301及び302の背面を矩形板状部材にて固定すればよい。
第2変形例におけるリニアモータ1では、磁極歯ユニット36及び37は珪素鋼板(磁極歯片361及び371)を積層して構成してある。リニアモータ1は、磁極歯31に加えて、バックヨーク3の磁極歯31との接続部分から厚さ方向の一部を積層構造としてある。そのため、隣接する磁極歯31間を接続部361b及び371bに流れる磁束は磁極歯片361及び371の表面に平行な方向である。磁束の流れにより発生する渦電流の方向は磁極歯片361及び371の板面を貫こうとする方向となる。しかし、磁極歯片361及び371表面の隙間やその表面に形成される酸化皮膜などにより、接続部361b及び371bにおける渦電流方向の電気抵抗は、積層構造としない場合と比べて、大きくなっている。したがって、接続部361b及び371bに流れる渦電流を低減することが可能となる。よって、バックヨーク3に流れる渦電流を更に低減することが可能となる。
また、第2変形例においては、基本例1が奏する前述した効果に加えて、次のような効果を奏する。バックヨーク3の一部であるベース部35を非磁性材料で形成することが可能であるから、ヤング率の高い材料、例えばアルミナで構成することが可能となる。それにより、バックヨーク3全体の剛性が増加するので、可動子2との間で生じる吸引力による撓みを軽減することが可能なる。更にまた、ベース部35の材質によりバックヨーク3全体の剛性が求められる剛性を上回っている場合には、バックヨーク3を薄くすることが可能となる。また、第2変形例においては、バックヨーク3に含めるバックヨークユニット301の個数を可変とすることにより、リニアモータ1のストロークを変えることが可能となる。
なお、バックヨークユニット301、302がそれぞれ備える磁極歯31は5本としたが、それに限らない。ベース部35は1つの磁極歯ユニット36または磁極歯ユニット37を備えるとしたが、それに限らない。磁極歯ユニット36及び磁極歯ユニット37はそれぞれ同じ個数の磁極歯31を備えるとしたが、それに限らない。
(実施の形態2の第3変形例)
第3変形例は第2変形例において、ベース部35を一枚板にした構成に関する。図38Aはバックヨーク3の他の構成例を示す側面図である。バックヨーク3はベース部33、複数の磁極歯ユニット36及び磁極歯ユニット37を含む。磁極歯ユニット36及び磁極歯ユニット37の構成は、上述の第2変形例と同様であるから、説明を省略する。
図38Bはベース部33の構成例を示す斜視図である。図38Bに示すベース部33は図38Aに示すベース部33とは上下を反転している。ベース部33は矩形状の板材に複数のアリ溝(嵌合溝)33aを形成してある。アリ溝33aの形状は、磁極歯ユニット36及び37の被嵌合部36a及び37aと対応した形状としてある。バックヨーク3は、ベース部33のアリ溝33aに、磁極歯ユニット36及び37の被嵌合部36a及び37aに嵌合後に、接着剤等で固定する。ベース部33は非磁性材料で形成する。
第3変形例においては、基本例1が奏する前述した効果に加えて、次のような効果を奏する。バックヨーク3の一部であるベース部33をヤング率の高い非磁性材料、例えば、アルミナで構成することが可能となる。それにより、バックヨーク3全体の剛性が増加するので、可動子2との間で生じる吸引力による撓みを軽減することが可能なる。
上述の基本例及び第1-第3変形例において、隣接する磁極歯31間の隙間を非磁性材料、例えば樹脂モールドなどにより埋めてもよい。それにより、バックヨーク3の強度が増し、可動子2との間で発生する吸引力に起因するバックヨーク3の撓みをより効果的に抑制可能となる。
上述した基本例でのベース板32は、磁極歯31の根元部から磁極歯31の突出する方向とは逆方向(厚さ方向)の一部を積層構造としてもよい。言い換えると積層構造である磁極歯31(突出部31a、31a)が、一部を積層構造としたベース板32の積層構造部分おいて、凹部32a,32aと係合されていても良い。それにより、第1変形例及び第2変形例と同様に、可動子2の可動方向に流れる磁束による渦電流を抑制することが可能となる。
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。