JP7127409B2 - 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7127409B2
JP7127409B2 JP2018144188A JP2018144188A JP7127409B2 JP 7127409 B2 JP7127409 B2 JP 7127409B2 JP 2018144188 A JP2018144188 A JP 2018144188A JP 2018144188 A JP2018144188 A JP 2018144188A JP 7127409 B2 JP7127409 B2 JP 7127409B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid
liquid ejection
ejection head
surface treatment
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018144188A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020019205A (ja
Inventor
智 水上
隆彦 黒田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2018144188A priority Critical patent/JP7127409B2/ja
Publication of JP2020019205A publication Critical patent/JP2020019205A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7127409B2 publication Critical patent/JP7127409B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Description

本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
産業用、商用印刷分野において、信頼性の高い液体吐出ヘッドが求められている。
従来技術では、例えば表面処理膜を成膜した単結晶Siの液室基板とノズル基板を接着剤で接合している。しかし、液室基板と表面処理膜の密着性が悪く、これを適用した液体吐出ヘッドでは、初期不良、信頼性不良となったり、最悪の場合は、ノズル基板接合工程途中で液室基板表面と表面処理膜が剥離することがあり、安定した品質が得られないという問題がある。そのために、ヒートサイクル試験等を実製品で実施し、良品を選別する必要があり、工数、工期が掛かり、歩留低下、コスト増の問題がある。また、液体の流路を形成する流路形成部材の表面に形成された表面処理膜の密着性が悪いと、これを適用した液体吐出ヘッドの品質、信頼性が十分に得られないという問題がある。
例えば、特許文献1では、接着剤と流路形成部材の表面に形成された表面処理膜との密着性を向上させる目的で、表面処理膜はSiを含む酸化膜であり、酸化膜は、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、タングステンなどの不動態膜を形成する遷移金属を含んでいることが開示されている。
しかし、流路形成部材と表面処理膜の密着性向上については記載されておらず、検討されていない。
また、特許文献2では、表面処理膜として有機膜を用いることが開示されている。
しかし、有機膜では水分の透過を完全に遮断できないため、インクなどに腐食されにくい材料を流路形成部材として使用しなければならないという問題がある。
また、特許文献3では、表面処理膜としてSiO膜が開示されている。
しかし、表面処理膜としてのSiO膜は、強いアルカリ性の液体に対して水酸化物に変化し、イオン化されやすくなり、液中に溶け出してしまうため、結果として流路形成部材が損傷するという問題がある。
なお、Ni、Tiなどの金属やSUSなどの合金材を表面処理膜に利用する場合もあるが、金属膜は酸性に液体に触れると酸化され、イオン化されやすくなることが多く、SUSのように溶解しにくい材料の場合、接着剤との接着機能が損なわれるという問題がある。
本発明は、表面処理膜の密着性が良好であり、高い信頼性が得られる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、液体の流路を形成する流路形成部材を有する液体吐出ヘッドであって、前記流路形成部材は、液体吐出エネルギー発生手段を備えるアクチュエータ基板と、該アクチュエータ基板と接合され、ノズルが形成されたノズル基板と、を有し、前記アクチュエータ基板及び前記ノズル基板はSiからなり、前記流路形成部材における前記液体の流路となる箇所には、基板上に酸化膜が形成され、該酸化膜上に表面処理膜が形成され、前記表面処理膜は、Siの酸化物と、第4族及び第5族から選ばれる遷移金属の酸化物とを含み、前記流路形成部材側では前記Siの含有量が前記遷移金属の含有量よりも原子数比(atomic%)で多く、前記流路形成部材と反対側では前記遷移金属の含有量が前記Siの含有量よりも原子数比で多く、前記Siと前記遷移金属の比率が前記表面処理膜の膜厚方向で徐々に変化していることを特徴とする。
本発明によれば、表面処理膜の密着性が良好であり、高い信頼性が得られる液体吐出ヘッドを提供することができる。
本発明に係る液体吐出ヘッドの一例における斜視図である。 本発明に係る液体吐出ヘッドの一例における液室長手方向の断面図である。 本発明に係る液体吐出ヘッドの一例における液室短手方向の断面図である。 本発明に係る液体吐出ヘッドの一例における部分拡大図(A)及び(B)である。 表面処理膜におけるSiO及びTaの比率の関係を説明するための図である。 表面処理膜におけるSiO及びTaの比率の関係を説明するための図(A)、及び、比率と強度の関係を説明するための図(B)である。 表面処理膜におけるSiO及びTaの比率の関係を説明するためのその他の図(A)、及び、比率と強度の関係を説明するためのその他の図(B)である。 表面処理膜におけるSiO及びTaの比率の変化のパターンを説明するための図である。 本発明に係る液体吐出ユニットの一例を示す模式図である。 本発明に係る液体吐出ユニットの他の例を示す模式図である。 本発明に係る液体吐出ユニットの他の例を示す模式図である。 液体カートリッジの一例における斜視図である。 本発明の液体を吐出する装置の他の例における斜視図である。 本発明の液体を吐出する装置の他の例における側面図である。
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
本発明は、液体(インクと称することがある)の流路を形成する流路形成部材を有する液体吐出ヘッドであって、前記流路形成部材は、前記液体の流路において表面に表面処理膜が形成され、前記表面処理膜は、Siの酸化物と、第4族及び第5族から選ばれる遷移金属の酸化物とを含み、前記流路形成部材側では前記Siの含有量が前記遷移金属の含有量よりも原子数比(atomic%)で多く、前記流路形成部材と反対側では前記遷移金属の含有量が前記Siの含有量よりも原子数比で多いことを特徴とする。
(液体吐出ヘッド)
「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。
吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
<液体吐出ヘッドの基本構成>
本実施形態に係る液体吐出ヘッドの基本構成を説明する。
図1は本実施形態に係る液体吐出ヘッドの斜視図であり、図2は図1における液室長辺方向の断面模式図、図3は図1における液室短辺方向の断面模式図である。なお、本実施形態の液体吐出ヘッドは圧電型アクチュエータを有する液体吐出ヘッドとしている。
図に示すように、本実施形態の液体吐出ヘッド1は、基板面部に設けたノズル孔から液滴を吐出させるサイドシュータータイプのものであり、アクチュエータ基板100に液体吐出エネルギーを発生する圧電体素子2、振動板3を備え、加圧液室隔壁4、加圧液室5、流体抵抗部7、及び共通液室8を形成している。各加圧液室5は、加圧液室隔壁4で仕切られている。
また、サブフレーム基板200には、外部から液滴を供給する液滴供給口66と共通液滴流路9、及び振動板3が撓むことができるように空隙部67が形成されている。また、ノズル基板300には、個々の加圧液室5に対応した位置にノズル孔6が形成されている。また引き出し配線層を保護する目的でパッシベーション膜50が形成されている。これらアクチュエータ基板100、サブフレーム基板200、及びノズル基板300を接合することにより、液体吐出ヘッド1が形成されている。
アクチュエータ基板100は、図1、図2に示すように、加圧液室5の一部壁面を形成する振動板3と、振動板3を介して加圧液室5と対向する側に圧電体素子2とが形成されている。また、共通液室8の振動板3面は、共通液滴流路9が形成されており、ここから液体を外部から供給できるようになっている。図2に示すように、振動板3を介して加圧液室5に対向する側に形成されている圧電体素子2は、共通電極10、個別電極11、圧電体12から構成されている。
このように形成された液体吐出ヘッド1においては、各加圧液室5内に液体、例えば記録液(インク)が満たされた状態で、制御部から画像データに基づいて、記録液の吐出を行いたいノズル孔6に対応する個別電極11に対して、発振回路により、引き出し配線40、層間絶縁膜45に形成された接続孔30を介して例えば20Vのパルス電圧を印加する。
この電圧パルスを印加することにより、圧電体12は、電歪効果により圧電体12そのものが振動板3と平行方向に縮むことにより、振動板3が加圧液室5方向に撓む。これにより、加圧液室5内の圧力が急激に上昇して、加圧液室5に連通するノズル孔6から記録液が吐出する。
次にパルス電圧印加後は、縮んだ圧電体12が元に戻ることから撓んだ振動板3は、元の位置に戻るため、加圧液室5内が共通液室8内に比べて負圧となり、外部から液滴供給口66を介して供給されているインクが共通液滴流路9、共通液室8から流体抵抗部7を介して加圧液室5に供給される。
これを繰り返すことにより、液滴(液体)を連続的に吐出でき、液体吐出ヘッドに対向して配置した被記録媒体(用紙)に画像を形成する。
<本実施形態の液体吐出ヘッドの一例>
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの詳細について、製造方法を示しつつ説明する。
本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法は、液体の流路において流路形成部材の表面に表面処理膜を形成する工程を有し、必要に応じてその他の工程を有する。流路形成部材は、液体の流路を形成するための部材であり、例えば本実施形態のように、サブフレーム基板200、アクチュエータ基板100、ノズル基板300が挙げられる。
まず、図2等に示されるアクチュエータ基板100に、公知の方法により振動板3、圧電体素子2を形成する。次いで、公知の方法により、層間絶縁膜45、接続孔30、配線パターン42、引き出し配線40、引き出し配線パッド41を形成する。
次に、サブフレーム基板に対して、例えばリソエッチ法により貫通孔部60、空隙部67を形成する。サブフレーム基板200としては、Si基板を用いることが好ましい。
次いで、サブフレーム基板200とアクチュエータ基板100とを接合する。接合方法は、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能である。
なお、上記の工程に関して、アクチュエータ基板100の工程とサブフレーム基板200の工程はどちらを先に行ってもよい。
次に、アクチュエータ基板100に加圧液室5を形成する。加圧液室5の形成には、例えばICPエッチャーを用い、例えばCFガスを用いてドライエッチングで加工していく。しかし、この場合、加圧液室5の形成後にアクチュエータ基板100の表面にC、Fが汚染物として残りやすくなる。
そのため、本実施形態では、流路形成部材の表面のC、Fを除去する目的と、流路形成部材、特にSiで構成された流路形成部材の表面を酸化させる目的で、例えばICPエッチャー内でOプラズマ処理を行うことが好ましい。これにより、C、F等の汚染物を除去することができ、結合を阻害する要因を排除できるとともに、自然酸化させることで、Siよりも流路形成部材の表面と表面処理膜との密着力を向上させることができる。なお、流路形成部材と表面処理膜との界面における不純物量(C量、F量)は5atomic%以下であることが好ましい。
次に、表面処理膜を形成する。表面処理膜を形成することにより、流路形成部材の耐液性を確保することができ、液体と接することにより生じる流路形成部材の劣化を防止することができる。表面処理膜が形成されている箇所の一例における断面図を図4に示す。
流路形成部材は、液体吐出ヘッドの高精度化、高密度化に伴い、微細加工技術に適した単結晶Si基板を用いることが好ましい。この場合、結合力の強固なシロキサン結合(Si-O-Si結合)させるために、表面処理膜の流路形成部材側ではSiの比率(原子数比(atomic%))を所定の値よりも大きくすることが好ましく、これにより界面の密着性を向上させることができる。
ところが、表面処理膜をSiの酸化物のみで作製すると、強いアルカリ性の液体に対して水酸化物に変化し、イオン化されやすくなって、液中に溶け出してしまい、結果として流路形成部材が損傷するという問題が発生する。
このため、流路形成部材と反対側(流路側とも称する)では、第4族又は第5族の遷移金属の比率(原子数比)を所定の値よりも大きくすることが好ましく、これにより上記の問題を抑制することができる。
表面処理膜全体としては、Siと遷移金属の比率が表面処理膜の膜厚方向で変化していることが好ましい。これにより、表面処理膜の成膜時に内部応力を低減することができ、輸送環境中の温度影響によって生じる界面の剥がれを抑制することができる。
表面処理膜における遷移金属としては、Hf、Ta及びZrから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これにより、耐液体耐性(耐インク耐性)をより向上させることができる。
表面処理膜は、Ta-Siの結合状態を有することが好ましい。この場合、表面処理膜の界面の結合をより強くし、表面処理膜の密着力をより向上させることができるとともに、耐液体耐性をより向上させることができる。結合状態はXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析により特定することができる。
表面処理膜52の膜厚としては、30~100nmが好ましく、30~70nmがより好ましい。上記範囲の場合、表面処理膜の密着力向上と耐液滴(インク)耐性を得ることができる。
表面処理膜の成膜方法としては、適宜変更することが可能であり、例えばALD法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。被覆性の観点から、中でもALD法が好ましい。ALD法は凹凸に対して均一に成膜できるため、入組んだ構造体にも均一に成膜できるという利点を有する。
次に、表面処理膜の一例について説明する。ここでは、ALD法により、SiO膜とTa膜を交互に成膜する例を挙げて説明する。ALD法では、成膜したい膜を1分子層ごとにデジタル的に成膜することができる。しかし、その1分子層ごとの膜は、理想的には成膜する流路形成部材の表面に均一に成膜されるはずだが、表面エネルギーのバラツキから、実際には島状に成膜されている。従って、流路形成部材と表面処理膜との界面では、島状に成膜されたSiO膜とTa膜が混在している。このSiO膜とTa膜の界面の接触面積比に密着性は依存している。
通常は、SiO膜を成膜するステップの次にTa膜を成膜するステップを各1ステップずつ交互に成膜するが、Si含有量を大きくする場合は、SiO膜の成膜を連続して複数ステップ処理すればよい。すなわち、Si含有量はその複数ステップの回数を変えることにより調整できる。表面処理膜と流路形成部材との密着力や内部応力の観点からSiOとTaの膜組成比率を調整しながら成膜していく。
図5に、表面処理膜におけるSiO及びTaの比率の関係を説明するための図を示す。図5は表面処理膜の膜厚方向でのSiO及びTaの比率を示しており、縦軸をSiO量として表している。縦軸の値が大きい場合はSiOの比率が大きく、Taの比率が小さいことを意味し、縦軸の値が小さい場合はSiOの比率が小さく、Taの比率が大きいことを意味している。
また、SiOの比率はSiの比率(原子数比(atomic%))を示し、Taの比率はTaの比率(原子数比(atomic%))を示す。
図示されるように、従来は膜厚方向にばらつきがなく、SiO及びTaの比率が一定となっている。
一方、本発明の一実施形態では、以下のようにしている。
(1)流路形成部材と表面処理膜との密着力改善のため、流路形成部材側ではSiの含有量が遷移金属の含有量よりも原子数比(atomic%)で多くなっている。
(2)インク耐性改善のため、流路形成部材と反対側では遷移金属の含有量がSiの含有量よりも原子数比で多くなっている。
また、以下のようにすることが好ましい。
(3)流路形成部材側とその反対側との間は内部応力低減のため、Siと遷移金属の比率が表面処理膜の膜厚方向で単調に又は徐々に変化している。
図6に、表面処理膜におけるSiO及びTaの比率の関係を説明するための図(A)、及び、比率と強度の関係を説明するための図(B)を示す。図6(A)では、表面処理膜の流路側(流路形成部材と反対側)において、SiO及びTaの比率を変えた場合のグラフを示しており、図5と同様に縦軸をSiO量として表している。図6(B)では図6(A)のように比率を変えたときのピール試験強度とインク浸漬試験での結果を示している。なお、図6(A)の(a)、(c)、(e)は図6(B)の(a)、(c)、(e)に対応しており、図6(A)では(b)、(d)を省略している。
なお、ピール試験強度は表面処理膜の密着性評価の一つであり、所定のテープを貼り付けて引きはがすことにより評価する。また、インク浸漬試験は耐液性評価の一つであり、インクに所定期間浸漬し、前後での外観状況により評価する。
図示されるように、流路側のTa組成比率が小さくなってくると、全体的にSiOの割合が増えてピール試験強度が大きくなる傾向となる。ただし、ある領域を超えるとインク耐性が悪くなり、インク浸漬試験でNGが発生してくる。
図7に、表面処理膜におけるSiO及びTaの比率の関係を説明するためのその他の図(A)、及び、比率と強度の関係を説明するためのその他の図(B)を示す。図7(A)に示されるように、流路形成部材側もしくは流路側の膜厚領域を変えることで組成変調振りを実施している。
ここでは、(a)、(c)、(e)の3つの例を示しており、(a)、(c)、(e)は(a’)、(c’)、(e’)に対応している。流路形成部材側ではSiOの比率が大きい領域の膜厚を(a)、(c)、(e)の順に厚くしている。一方、流路側ではTaの比率が大きい領域の膜厚を(a’)、(c’)、(e’)の順に厚くしている。
そのときの表面処理膜のピール試験結果とHCT(ヒートサイクルテスト)試験での結果を図7(B)に示している。なお、HCT試験は、信頼性評価の一つである。
図示されるように、流路形成部材側のSiOの比率が大きい領域の膜厚、もしくは、流路側のTaの比率が大きい領域の膜厚が厚くなってくるとピール試験強度は上昇するが、あるところから今度は低下するようになり、HCT試験でもNGとなる領域が発生してくる。途中でピール試験強度が低下する理由としては、十分な組成変調ができないことにより、流路部材側では圧縮応力が大きくなり、流路側では引張応力が大きくなるといった表面処理膜の膜厚内で大きな応力差が生じてしまい、その影響でピール試験強度が低下したと考えている。
上記を考慮し、表面処理膜の流路形成部材側の表面処理膜としては、Siの比率が80atomic%以上となる領域が1nm以上20nm以下となることが好ましく、3nm以上から10nm以下であることがより好ましい。1nm以上である場合、流路形成部材と表面処理膜との密着力が低下することを防ぎ、剥がれをより抑制できる。また20nm以下である場合、表面処理膜の膜厚内で大きな応力差が生じることを防ぎ、ピール試験強度が低下することをより抑制できる。
流路形成部材側の表面処理膜として、Siの比率が90%以上であることがより好ましく、この場合、流路形成部材と表面処理膜との密着力をより高めることができ、剥がれを更に防止できる。
一方、流路側の表面処理膜としては、Ta(遷移金属)の比率が50%以上となっている領域が1nm以上20nm以下となることが好ましく、3nm以上10nm以下となることがより好ましい。1nm以上である場合、インク耐性が悪くなることを防ぎ、インク浸漬試験でNGが発生することをより抑制できる。また20nm以下である場合、表面処理膜の膜厚内で大きな応力差が生じることを防ぎ、ピール試験強度が低下することをより抑制できる。
流路側の表面処理膜として、Ta(遷移金属)の比率が70%以上であることがより好ましく、この場合、インク耐性がより向上し、インク浸漬試験でのNGを減らすことができる。
図5の(3)に示したように、Siの酸化物と遷移金属の酸化物は組成変調しており、傾斜している。傾斜のパターンとしては、これに限られるものではない。図8に傾斜パターン(1)~(3)を例として示す。Siと遷移金属の比率が表面処理膜の膜厚方向で単調に又は徐々に変化していることが好ましく、傾斜のパターンは1つに限られるものではない。
表面処理膜におけるSi、遷移金属及びその酸化物の比率の測定方法について説明する。表面処理膜を形成した後の流路形成部材について、表面処理膜の断面観察をTEM(透過電子顕微鏡)で実施し、各層の測長を行う。また組成に関してはEDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析を行い、Si、遷移金属及びその酸化物の定量化している。こちらは、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析でも同様な結果が得られるため可能である。
なお、ノズル基板300を接合した後などの液体吐出ヘッドに対しても同様にEDX分析を行い、定量化することができる。
表面処理膜を成膜する場合、サブフレーム基板200におけるアクチュエータ基板100とは反対側の面などには、ALD法による膜が形成されないようにサポートテープ等による保護が行われる。このようなサポートテープ等による保護は、引き出し配線パッド41にALD法による膜が付着し、電気的な導通が取れなくなる不具合等を防止する役割も担う。
しかし、サポートテープ等をサブフレーム基板につけた状態でALDチャンバーに入れると、サポートテープからのガスの影響で流路形成部材の表面にC等の汚染物が付着しやすくなる。この状態でALD法等により表面処理膜が成膜されると、表面処理膜と流路形成部材との膜密着力が低下することがある。
本実施形態では、ALD装置内でO処理を行うことが好ましく、これにより、C量の除去を実施する。C量を除去することにより、膜密着力の低下を抑制することができる。
本実施形態において、O処理は適宜変更することが可能であるが、O処理は表面処理膜を成膜する前に行うことが好ましい。通常は1分子層毎にOを供給するが、C量除去のために、基板表面にO処理を実施することが好ましい。
次に、ノズル孔6を形成したノズル基板300に対して、上記と同様に表面処理膜を形成する。なお、この工程は上記の工程の前に行ってもよい。
そして、上記工程で得られたアクチュエータ基板100と接合させる。接合方法は、公知の方法により行うことができる。本実施形態では接着剤を用いて行う。
表面処理膜は、流路形成部材における液体の流路、すなわち液体に触れ得る箇所に形成されていればよく、耐液性が確保される範囲内で適宜変更することができる。例えば、サブフレーム基板200の貫通孔部60や個別貫通孔部61表面、アクチュエータ基板100の共通液滴流路9、共通液室8、流体抵抗部7、加圧液室5、及びノズル基板300の両面、ノズル孔6の表面等が挙げられる。
図4(A)に、図2におけるA領域の拡大模式図を示す。図4(A)は、サブフレーム基板200の貫通孔部60における液体と接する部分に表面処理膜52が形成されていることを示している。
図2における領域Bの拡大模式図を図4(B)に示す。図4(B)は、アクチュエータ基板100の表面及びノズル基板300の表面に表面処理膜52が形成され、両基板は接着剤610を介して接合されている。
本実施形態の流路形成部材の一つであるノズル基板300においても、液体と接する領域に表面処理膜52が形成されている。本実施形態では、ノズル基板300における吐出面(アクチュエータ基板100とは反対側の面)にも表面処理膜52を形成しているが、これに限られるものではない。
アクチュエータ基板及びノズル基板はSiからなることが好ましい。この場合、同一材料での構成となるため、応力の影響が小さくなり、ノズル接合後の剥がれ防止に対してより効果が期待できる。
本実施形態によれば、表面処理膜を成膜する流路形成部材の表面と表面処理膜の密着性、表面処理膜と接着剤、あるいは撥水層などの密着性を向上させることができ、これを適用した液体吐出ヘッドの品質、信頼性を向上させることができる。
(液体吐出ユニット)
次に、本発明の液体吐出ユニットについて、図9~図11を用いて説明する。
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。一例を図9に示す。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。一例を図10に示す。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。一例を図11に示す。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
また、液体吐出ユニットの一例として、本発明の液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに液体を供給するインクタンクとを一体化した液体カートリッジが挙げられる。本実施形態によれば、耐久性、信頼性に優れ、高品位な液体カートリッジが得られる。
カートリッジの一例を図12に示す。このインクカートリッジ80は、ノズル81等を有する液体吐出ヘッド1と、この液体吐出ヘッド1に対してインクを供給するインクタンク82とを一体化したものである。このようにインクタンク82が一体型の液体吐出ヘッド1の場合、アクチュエータ部を高精度化、高密度化、及び高信頼化することで、インクカートリッジ80の歩留や信頼性を向上することができ、インクカートリッジ80の低コスト化を図ることができる。
(液体を吐出する装置)
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
次に、本発明に係る液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを有する液体を吐出する装置の一例について図13及び図14のインクジェット記録装置を参照して説明する。なお、図13は同記録装置の斜視説明図、図14は同記録装置の機構部の側面説明図である。
このインクジェット記録装置90は、装置本体の内部に走査方向に移動可能なキャリッジ98とキャリッジ98に搭載した液体吐出ヘッド1及び液体吐出ヘッド1へインクを供給するインクカートリッジ99等で構成される印字機構部91等を収納し、装置本体の下方部には前方側から多数枚の用紙92を積載可能な給紙カセット(あるいは給紙トレイでもよい)93を抜き差し自在に装着されている。また、用紙92を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ94を有し、給紙カセット93あるいは手差しトレイ94から給送される用紙92を取り込み、印字機構部91によって所要の画像を記録した後、後面側の装着された排紙トレイ95に排紙する。
印字機構部91は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド96と従ガイドロッド97とキャリッジ98を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ98には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンダ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッド1を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ98には液体吐出ヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ99を交換可能に装着している。
インクカートリッジ99は、上方に大気と連通する大気口、下方には液体吐出ヘッド1へインクを供給する供給口が設けられ、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液体吐出ヘッド1へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液体吐出ヘッド1としては各色の液体吐出ヘッド1を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液出ヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ98は後方側(用紙搬送下流側)を主ガイドロッド96に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送上流側)を従ガイドロッド97に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ98を主走査方向に移動走査するため、主走査モーター101で回転駆動される駆動プーリ102と従動プーリ103との間にタイミングベルト104を張装し、このタイミングベルト104をキャリッジ98に固定しており、主走査モーター101の正逆回転によりキャリッジ98が往復駆動される。
一方、給紙カセット93にセットした用紙92を液体吐出ヘッド1に下方側に搬送するために、給紙カセット93から用紙92を分離給装する給紙ローラー105及びフリクションパッド106と、用紙92を案内するガイド部材107と、給紙された用紙92を反転させて搬送する搬送ローラー108と、この搬送ローラー108の周面に押し付けられる搬送コロ109及び搬送ローラー108からの用紙92の送り出し角度を規定する先端コロ110とを有する。搬送ローラー108は副走査モーターによってギア列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ98の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラー108から送り出された用紙92を液体吐出ヘッド1の下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材111を設けている。この印写受け部材111の用紙搬送方向下流側には、用紙92を排紙方向へ送り出すための回転駆動される搬送コロ112と拍車113を設け、さらに用紙92を排紙トレイ95に送り出す排紙ローラー114と拍車115と排紙経路を形成するガイド部材116、117とを配設している。
このインクジェット記録装置90で記録時には、キャリッジ98を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している用紙92にインクを吐出して1行分を記録し、その後、用紙92を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙92の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙92を排紙する。
また、キャリッジ98の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液体吐出ヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置127を配置している。回復装置127はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ98は印字待機中にはこの回復装置127側に移動されてキャッピン手段で液体吐出ヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係ないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出状態を維持する。
また、吐出不良が発生した場合等には、キャピング手段で液体吐出ヘッド1の吐出出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともの気泡等を吸出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置90においては本発明で製造された液体吐出ヘッド1を搭載しているので、安定したインク吐出特性が得られ、画像品質が向上する。
上記の説明ではインクジェット記録装置90に液体吐出ヘッド1を使用した場合について説明したが、インク以外の液滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する装置に液体吐出ヘッド1を適用してもよい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例2~5とあるのは、本発明に含まれない参考例2~5とする。
(実施例1)
図1~図3に示されるSiからなるアクチュエータ基板100に振動板3、圧電体素子2を形成し、更に層間絶縁膜45、接続孔30、配線パターン42、引き出し配線40、引き出し配線パッド41を形成した。
次いで、Siからなるサブフレーム基板に対して、リソエッチ法により貫通孔部60、空隙部67を形成し、サブフレーム基板200とアクチュエータ基板100とを接合した。次いで、アクチュエータ基板100に対して、ICPエッチャーを用い、CFガスを用いてドライエッチングで加工し、加圧液室5を形成した。
次に、ICPエッチャー内でOプラズマ処理(50W、5分間)を行い、液体の流路となる箇所を自然酸化させた。
次に、表面処理膜をALD法により形成する。ALD法による膜が形成されないようにする箇所にはサポートテープを貼り付けた。この状態でALDチャンバーに入れ、1層目のSiO膜を膜厚0.1nmで形成した。次いで、SiO膜を成膜するステップの次にTa膜を成膜するステップを行った。SiとTaの比率が表面処理膜の膜厚方向で徐々に変化するようにステップの回数を変えることにより調整した。表面処理膜におけるSiO比率及びその膜厚、Ta比率及びその膜厚並びに表面処理膜の膜厚は下記表1のようにした。また、SiO及びTaの比率の変化は図8の傾斜パターン1のようにした。
また、ALD処理中にALD装置内でO処理を5分間行った。O処理は表面処理膜を成膜する前に行い、基板表面にO処理を実施した。
表面処理膜を形成した後、表面処理膜の断面観察をTEMで実施し、各層の測長を実施した。またこのときにEDX分析を行い、組成に関して定量化を行った。また、XPS分析を行ったところ、TaSiOxとして観測され、Ta-Siの結合状態で得られた膜であった。
次に、ノズル孔6を形成したノズル基板300に対して、上記と同様の作製条件で表面処理膜を形成した。次いで、上記工程で得られたアクチュエータ基板100と接着剤を用いて接合した。このようにして本実施例の液体吐出ヘッドを作製した。
(実施例2~6、比較例1~4)
実施例1において、下記表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様とした。
(評価)
<スクラッチ強度>
スクラッチ強度については、表面処理膜の密着力評価となり、レスカ社製scratch試験装置(CSR-5000)を用いた。評価するときの圧子状態によっても密着力が異なるため、今回の評価では球形圧子を用いて、スタイラス径は15μmを用いて実施している。50mN以上が好ましく、70mN以上がより好ましい。
<インク浸漬試験>
インク浸漬試験においては、アルカリ性インクに長時間(7日間)浸漬し、前後での外観状況から判断している。
[評価基準]
○:外観状況の変化なし
×:外観状況の変化あり
<信頼性試験>
信頼性試験については、図13及び図14に示すインクジェット記録装置を用い、HCT(ヒートサイクルテスト)を実施し、-70℃~30℃の温度サイクル(9サイクル)を行った。試験後に吐出評価を実施し、不具合有無について確認している。
[評価基準]
OK:吐出不良の不具合なし
NG:吐出不良の不具合あり
表1に、各実施例、比較例の作製条件、測定値、評価結果を示す。なお、表1中、「%」とあるのは「atomic%」を意味する。また、「ノズル部側」とあるのは流路側を意味する。
Figure 0007127409000001
実施例1から6を見ると、流路形成部材側のSiO比率が高く、流路側のTa比率が高いと密着力とインク浸漬の両面で優れたものとなっており、その後の信頼性試験でも良好な結果が得られている。
一方、比較例1、3ではスクラッチ試験は比較的良好だが、インク浸漬で不具合が発生し、その後の信頼性試験でもNGが発生している。比較例2、4ではスクラッチ試験での膜密着力が不十分で、その後の信頼性試験でもNGが発生している。
また、EDX分析により界面の不純物(C量、F量)の定量化したところ、比較例2、4で5atomic%を超えていた。界面の不純物が低減されているほどスクラッチ強度が高くなっている傾向があり、界面不純物が5atomic%を超えると強度は20mNを下回り、その後の信頼性試験にてNG(表面処理膜の剥がれ原因)が発生している。
1 液体吐出ヘッド
2 圧電体素子
3 振動板
4 加圧液室隔壁
5 加圧液室
6 ノズル孔
7 流体抵抗部
8 個別液滴供給孔
9 共通液滴流路
10 共通電極
11 個別電極
12 圧電体
30 接続孔
40 引き出し配線
41 引き出し配線パッド
42 配線パターン
45 層間絶縁膜
50 パッシベーション膜
52 表面処理膜
60 貫通孔部
61 個別貫通部
66 液滴供給口
67 空隙部
100 アクチュエータ基板
200 サブフレーム基板
300 ノズル基板
401 ガイド部材
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
405 主走査モータ
406 駆動プーリ
407 従動プーリ
408 タイミングベルト
412 搬送ベルト
413 搬送ローラ
414 テンションローラ
440 液体吐出ユニット
441 ヘッドタンク
442 カバー
443 コネクタ
444 流路部品
456 チューブ
491A、491B 側板
491C 背板
493 主走査移動機構
610 接着剤
特許第6194767号公報 特開2012-91381号公報 特開2004-98310号公報

Claims (7)

  1. 液体の流路を形成する流路形成部材を有する液体吐出ヘッドであって、
    前記流路形成部材は、液体吐出エネルギー発生手段を備えるアクチュエータ基板と、該アクチュエータ基板と接合され、ノズルが形成されたノズル基板と、を有し、
    前記アクチュエータ基板及び前記ノズル基板はSiからなり、
    前記流路形成部材における前記液体の流路となる箇所には、基板上に酸化膜が形成され、該酸化膜上に表面処理膜が形成され、
    前記表面処理膜は、Siの酸化物と、第4族及び第5族から選ばれる遷移金属の酸化物とを含み、前記流路形成部材側では前記Siの含有量が前記遷移金属の含有量よりも原子数比(atomic%)で多く、前記流路形成部材と反対側では前記遷移金属の含有量が前記Siの含有量よりも原子数比で多く、前記Siと前記遷移金属の比率が前記表面処理膜の膜厚方向で徐々に変化していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 前記遷移金属は、Hf、Ta及びZrから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記表面処理膜の膜厚は、30nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記表面処理膜は、Ta-Siの結合状態を有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  5. 請求項1~のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
  6. 前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする請求項に記載の液体吐出ユニット。
  7. 請求項1~のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項若しくはに記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
JP2018144188A 2018-07-31 2018-07-31 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法 Active JP7127409B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018144188A JP7127409B2 (ja) 2018-07-31 2018-07-31 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018144188A JP7127409B2 (ja) 2018-07-31 2018-07-31 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020019205A JP2020019205A (ja) 2020-02-06
JP7127409B2 true JP7127409B2 (ja) 2022-08-30

Family

ID=69587962

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018144188A Active JP7127409B2 (ja) 2018-07-31 2018-07-31 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7127409B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005028834A (ja) 2003-07-11 2005-02-03 Sony Corp 液体吐出ヘッド及びその製造方法
US20080313901A1 (en) 2005-12-23 2008-12-25 Telecom Italia S.P.A. Method of Manufacturing an Ink Jet Printhead
JP2014124876A (ja) 2012-12-27 2014-07-07 Seiko Epson Corp ノズルプレート、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
JP2015047855A (ja) 2013-09-04 2015-03-16 株式会社リコー 液体吐出ヘッド及び画像形成装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH106500A (ja) * 1996-06-24 1998-01-13 Ricoh Co Ltd インクジェットヘッド及びその製造方法
JPH10296973A (ja) * 1997-04-24 1998-11-10 Ricoh Co Ltd 記録ヘッド
JPH11170528A (ja) * 1997-12-16 1999-06-29 Ricoh Co Ltd 記録ヘッド

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005028834A (ja) 2003-07-11 2005-02-03 Sony Corp 液体吐出ヘッド及びその製造方法
US20080313901A1 (en) 2005-12-23 2008-12-25 Telecom Italia S.P.A. Method of Manufacturing an Ink Jet Printhead
JP2014124876A (ja) 2012-12-27 2014-07-07 Seiko Epson Corp ノズルプレート、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
JP2015047855A (ja) 2013-09-04 2015-03-16 株式会社リコー 液体吐出ヘッド及び画像形成装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020019205A (ja) 2020-02-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7059611B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP5251187B2 (ja) 液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
JP2013193445A (ja) 液滴吐出装置及び画像形成装置
JP2012061689A (ja) 液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、液体カートリッジ及び画像形成装置
JP2011018836A (ja) 圧電型アクチュエータの製造方法、及び該製造方法によって製造された圧電型アクチュエータ
JP7127409B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法
JP2017213713A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP7326912B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP2020019204A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法
JP7188068B2 (ja) 液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、液体カートリッジ、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
JP5728934B2 (ja) ヘッド回復装置及び画像形成装置
JP2009220421A (ja) ノズルプレート、液滴吐出ヘッド、液体カートリッジ及び画像形成装置
JP2004090297A (ja) 液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置
JP7494624B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP7107142B2 (ja) 液室部品及び記録ヘッド及び液滴吐出装置
JP2019155607A (ja) 積層体の製造方法、積層体、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP7392534B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP6701784B2 (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP2017087512A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法
JP2023070484A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP2022032211A (ja) 液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、液体カートリッジ、液体吐出ユニット及び液体吐出装置
JP2003320663A (ja) 液滴吐出ヘッド及びその製造方法、インクカートリッジ並びにインクジェット記録装置
JP2021142724A (ja) 圧電アクチュエータ及び記録ヘッド及び液滴吐出装置
JP2022080086A (ja) 液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドの製造方法、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
JP2021112851A (ja) 圧電アクチュエータ及び記録ヘッド及び液滴吐出装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210524

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220310

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220322

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220519

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220719

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220801

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7127409

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151