JPH11170528A - 記録ヘッド - Google Patents

記録ヘッド

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JPH11170528A
JPH11170528A JP36417297A JP36417297A JPH11170528A JP H11170528 A JPH11170528 A JP H11170528A JP 36417297 A JP36417297 A JP 36417297A JP 36417297 A JP36417297 A JP 36417297A JP H11170528 A JPH11170528 A JP H11170528A
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JP
Japan
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nitride film
carbon nitride
recording head
recording medium
diaphragm
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JP36417297A
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Inventor
Hidekazu Ota
英一 太田
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Ricoh Co Ltd
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Ricoh Co Ltd
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Publication date
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクの濡れ性及び侵食性に絡んだ問題を解
決し、安定したインクの飛翔を実現しかつ耐摩耗性をも
達成し、更には、コーティング膜の密着力を向上させ
る。 【解決手段】 記録体を吐出する複数の吐出口10と、
記録体に吐出の圧力を与える加圧室7と、該加圧室の記
録体を加圧する圧力発生手段(振動板6、電極3との間
の静電力)とを備えている。圧力発生手段によって加圧
された記録体は、ノズルプレート11に設けられた吐出
口10より噴射される。ノズルプレート11の吐出口1
0の吐出面は炭素と窒素を主構成元素とし非晶質、或い
は、微結晶質を一部含む状態の窒化炭素膜で被覆されて
いる。撥水性を有するので、吐出口周辺に液溜り等がで
きず、インクの飛翔方向が一定となり、ひいては高速、
高画質の印刷が実現できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記録ヘッド、より
詳細には、インクジェットヘッドの撥水処理対策、ヘッ
ド構造体の耐インク性向上対策、静電型ヘッドの電極、
振動板の保護対策に関し、その利用分野として、インク
ジェットヘッドとしてはカラープリント等の高画質印
刷、その他には、マイクロポンプ等の流路、内壁等の撥
水処理等に適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】オンデマンド型インクジェットとして
は、液室の壁の一部を薄い振動板にしておき、そこに電
気機械変換素子として圧電素子を設け、電圧印加に伴っ
て発生する圧電素子の変形で前記振動板を変形せしめ、
液室の圧力を変化させてインクを吐出する方式(ピエゾ
オンデマンド型)、或いは、加圧室内部に発熱体素子を
設け、通電による発熱体の加熱によって気泡を発生せし
め、気泡の圧力によってインクを吐出する方式(バブル
ジェット方式)が広く一般に知られている。もう一つの
別の方式として、静電力型インクジェットが提案されて
いる。静電力型インクジェットは液室に設けた薄い振動
板を静電力で変形させ、その変形によって液室の圧力を
上昇させてインクを吐出させるものである。
【0003】特開平5−50601号公報に記載の発明
は、シリコンからなる中基板に、ノズル、吐出室、イン
クキャビティー及び振動板をエッチングにて形成し、イ
ンク供給口を有する上基板と前記振動板に対向して電極
を設けた下基板とを一体化してヘッドを構成し、振動板
と電極間に電界を印加して、前記の原理でインクを吐出
させるものである。また、特開平6−71882号公報
に記載の発明は、低電圧駆動を目的として、振動板と電
極の距離を0.05μ〜2.0μと限定している。
【0004】これら方式は、小型化、高密度化、高速
化、高画質化等に適している点で利点であるが、とも
に、以下の共通の問題点を有していた。 吐出口の表面の一部に液溜りが発生すると、インク
の飛翔方向が乱れる。 吐出口の全面がインクに覆われると、いわゆるスプ
ラッシュ現象が生じ、インクの散乱が起こり安定した吐
出が得られない。
【0005】これらを解決するものとして、例えば、フ
ルオルアルキルアルコキシシラン等(特開昭56−89
5669号公報)、或いは、ポリビニルアルコール/
2.2.2−トリフルオロエチルメタクリメート系樹脂
(特開平8−156262号公報)等で、吐出口周辺を
撥水処理することが提案されているが、 これら有機材料は耐摩耗性のような長期信頼性が劣
り実用に問題があった。 更に、インクは一般にアルカリ性が強く液室や吐出
口等を侵食するという問題もあった。
【0006】更に、吐出口の目詰まりを防止する目的
で、吐出口面をブレード(ゴム製)でワイピングするこ
ともしばしば行われるが、 この際、コーティング膜が剥離するあるいは摩耗す
る等の問題が発生する。
【0007】また、先に説明した静電型インクジェット
特有の問題点として、 微小ギャップ内での放電、あるいは、 電極表面を保護する保護膜の絶縁破壊、 保護膜の表面に吸着した水分あるいはOH基による
電極と振動板との固着等の問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のイン
クの濡れ性及び侵食性に絡んだ問題を解決し、安定した
インクの飛翔を実現し、かつ、耐摩耗性をも達成するこ
と、及び、コーティング膜の密着力を向上させることを
目的としてなされたものである。
【0009】本発明は、また、前述の静電型インクジェ
ット特有の問題点を解決するための優れた保護膜及び形
成構造を与えることを目的としてなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、記録
体を吐出する吐出口と、記録体に吐出の圧力を与える加
圧室と、該加圧室内の記録体に圧力を与えるための圧力
発生手段とを備えた記録ヘッドにおいて、前記吐出口の
吐出面を炭素と窒素を主構成元素とした非晶質、或い
は、微結晶質を一部含む状態の窒化炭素膜で被覆したこ
とを特徴とし、もって、吐出口を炭素と窒素を主構成元
素とし、非晶質、或いは、微結晶質を一部含む状態の窒
化炭素膜で被覆することにより、その撥水性のゆえに吐
出口周辺に液溜り等ができないようにして、インクの飛
翔方向を一定とし、ひいては高速、高画質の印刷が実現
でき、更には、耐摩耗性を向上させるようにしたもので
ある。
【0011】請求項2の発明は、記録体を吐出する吐出
口と、記録体に吐出の圧力を与える加圧室と、記録体の
輸送のための流路と、該加圧室内の記録体を加圧するた
めの圧力発生手段とを備えた記録ヘッドにおいて、少な
くとも前記加圧室及び流路の内面を炭素と窒素を主構成
元素とした非晶質、或いは、微結晶質を一部含む状態の
窒化炭素膜で被覆したことを特徴とし、もって、少なく
とも加圧室及び流路の内面を窒化炭素膜で被覆すること
により、前記加圧室及び流路部分のインクによる侵食等
を防げ、インク成分の変化変質を低減し、かつ、長期使
用時のインクの漏洩をも防止し、信頼性の高い記録ヘッ
ドを実現するようにしたものである。
【0012】請求項3の発明は、請求項1又は2の発明
において、前記窒化炭素膜の膜厚が7〜500nmであ
ることを特徴とし、もって、窒化炭素膜の剥離を防止
し、更に高速、高画質、高信頼性の記録ヘッドを実現す
るようにしたものである。
【0013】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいず
れかの発明において、前記窒化炭素膜の元素組成比N/
Cが0.15以上であることを特徴とし、もって、膜の
撥水性をさらに向上し、更に高速、高画質、高信頼性の
記録ヘッドを実現できるようにしたものである。
【0014】請求項5の発明は、記録体を吐出する吐出
口と、記録体に吐出の圧力を与える加圧室と、該加圧室
内の記録体を加圧するための圧力発生手段とを備えた記
録ヘッドであって、前記圧力発生手段が前記加圧室の一
部を形成する振動板と該振動板に対向して設けられた電
極との間に印加された電界により動作する静電型アクチ
ュエータである記録ヘッドにおいて、前記電極の一部、
或いは、全面が窒化炭素膜で被覆されていることを特徴
とし、もって、電極の一部及び全面を該窒化炭素膜で被
覆することにより、窒化炭素膜に表面は水分等が吸着し
にくいのを利用して、水分が吸着することによる不安定
さ(ギャップ内の容量変化に起因する振動板変位の変
動、振動板と電極の固着等)を改善し、また、電極の
一部に設けた時は、振動板の変位に対して機械的なスト
ッパー機能を持たせ、インク吐出の安定性及び長期信頼
性を向上させるようにしたものである。
【0015】請求項6の発明は、記録体を吐出する吐出
口と、記録体に吐出の圧力を与える加圧室と、該加圧室
内の記録体を加圧するための圧力発生手段とを備えた記
録ヘッドであって、前記圧力発生手段が前記加圧室の一
部を形成する振動板と該振動板に対向して設けられた電
極との間に印加された電界により動作する静電型アクチ
ュエータである記録ヘッドにおいて、前記振動板の表面
の一部、或いは、全面が窒化炭素膜で被覆されているこ
とを特徴とし、もって、振動板の表面の一部及び全面を
窒化炭素膜で被覆することにより、窒化炭素膜の表面が
水分等が吸着しにくいのを利用して、水分が吸着するこ
とによる不安定さ(ギャップ内の容量変化に起因する
振動板変位の変動、振動板と電極の癒着等)を改善
し、更に、窒化炭素膜は剛性が高いのを利用して振動板
の構造部材をも兼ねさせて、振動板の設計自由度を増大
し、また、振動板の一部に設けた時は、振動板の変位に
対して機械的なストッパー機能を持たせ、高速、高画
質、高信頼性の記録ヘッドを実現するようにしたもので
ある。
【0016】請求項7の発明は、請求項5又は6の発明
において、前記窒化炭素膜の膜厚が0.02〜10μm
であることを特徴とし、もって、吐出の不安定さ(ギ
ャップ内の容量変化に起因する振動板変位の変動、振
動板と電極の固着等)を改善し、更に、窒化炭素膜の剛
性が高いのを利用して振動板の構造部材をも兼ねさせ
て、振動板の設計自由度を増大し、また、振動板の一部
に設けた時は、振動板の変位に対して機械的なストッパ
ー機能を持たせ、高速、高画質、高信頼性の記録ヘッド
を実現するようにしたものである。
【0017】請求項8の発明は、請求項1又は2又は5
又は6の発明において、前記窒化炭素膜の内部応力が5
00Mpa以下であることを特徴とし、もって、窒化炭
素膜の剥離を防止でき、長期信頼性に優れた高速、高画
質の記録ヘッドを実現するようにしたものである。
【0018】請求項9の発明は、請求項1又は2又は5
又は6の発明において、前記窒化炭素膜が少なくとも2
層からなる積層体であることを特徴とし、もって、窒化
炭素膜の剥離を防止し、長期信頼性に優れた高速、高画
質の記録ヘッドが実現するようにしたものである。
【0019】請求項10の発明は、請求項2又は6の発
明において、前記窒化炭素膜と基体の界面にa−SiC
からなる中間層を設けたことを特徴とし、もって、基体
と窒化炭素膜の密着力を向上させて、窒化炭素膜の剥離
を防止し、長期信頼性に優れた高速、高画質の記録ヘッ
ドを実現するようにしたものである。
【0020】請求項11の発明は、請求項2又は6の発
明において、前記窒化炭素膜の中間層中のSi濃度が基
体に近づくに従って連続的に増加していることを特徴と
し、もって、基体と窒化炭素膜の密着力を向上させて窒
化炭素膜の剥離を防止し、長期信頼性に優れた高速、高
画質の記録ヘッドを実現するようにしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は、本発明による静電型イン
クジェットヘッドの要部構成例を示す図で、同図はイン
クジェットヘッドの断面を示し、図中の矢印はインクの
移動、吐出方向を示しており、先端には吐出口10が設
けられているノズルプレート11が設置されている。基
板1の上面には電極3とそれに対向する振動板6とのギ
ャップを一定に保つための凹部2が設けられている。電
極3上には電気的な絶縁を保つために保護層4が形成さ
れている。更に、基板5には振動板6及び加圧室7とな
る凹部が形成されている。基板8にはインク供給口9が
形成されており、基板1、基板5、基板8を順次接合し
てインクジェットヘッドが完成されている。
【0022】ここで、基板1,5,8の材料としては、
ガラス(とくにはパイレックス#7740,#707
0,#7059等)或いは結晶シリコンが、微細加工の
面からはのぞましいが、とくにこれらに限定されるもの
ではない。但し、基板5に関しては電圧を印加するため
に抵抗の低い材料が望ましく、この意味では低抵抗の結
晶シリコンが好適である。いま、電極3と振動板6の間
に電界を印加すると両者間に働く静電引力によって振動
板6が電極3側にたわむように変形する。この状態で電
界を零にすると、振動板6はその復元力でもとにもどり
加圧室7内のインクに圧力がかかり、インクが吐出す
る。
【0023】図2は、図1に示したノズルプレート11
の詳細を説明するための拡大斜視図で、ノズルプレート
11の表面には、図示のように、インク吐出口を被服す
るように炭素と窒素を主構成元素とし、非晶質或いは微
結晶質を一部含む状態の窒化炭素膜12が設けられてい
る。窒化炭素膜12の表面エネルギーは低く撥水性が確
保され、インクの吐出安定性を向上することができる。
【0024】図3は、本発明の他の実施例を説明するた
めの要部拡大図で、図示のように、振動板6及び加圧室
7のインクと接する側に窒化炭素膜12が設けられてい
る。窒化炭素膜12は強靱な化学耐性を有しており、こ
れにより加圧液室及び流路等インクと直接、接する部分
の構造体がインクに侵食されインク成分が変化変質する
のを防止できる。
【0025】ここで、本発明の窒化炭素膜についてその
製法及び特性について説明する。窒化炭素膜を形成する
ためには、炭素源として有機化合物ガス、特に、炭化水
素ガスが、また、窒素源として窒素を含有する化合物が
夫々用いられる。これら原料ガスにおける相状態は常温
常圧において必ずしも気体である必要はなく加熱あるい
は減圧によって溶融、蒸発、昇華等を経て気化しうるも
のであれば液体でも固体でも使用可能である。
【0026】炭素源としてはC26,C38,C410
等のパラフィン系炭化水素、C24等のアセチレン系炭
化水素あるいはジオレフィン系炭化水素、更には芳香族
系炭化水素などすべての炭化水素を含むガスが使用でき
る。さらに、炭化水素以外でも、例えば、アルコール
類、ケトン類、エーテル類、エステル類、CO,CO2
等少なくとも炭素原子を含む化合物であれば使用可能で
ある。また、窒素源としては、N2,NH3,N2O,ピ
リジン等が使用できる。
【0027】本発明における原料ガスからの窒化炭素膜
の形成方法としては成膜活性種が直流、低周波、高周
波、あるいはマイクロ波等を用いたプラズマ法により生
成されるプラズマ状態を経て形成される方法が好ましい
が、大面積化、均一向上、成膜温度の低温化等の目的で
磁場効果をも併用した方法(ECRプラズマCVD法
等)が更に好ましい。その他にもイオンプレーティン
グ、クラスターイオンビーム等により生成されるイオン
状態を経て形成しても良いし、ECRスパッタあるいは
スパッタ等により生成される中性粒子から形成してもよ
いし、更には、これらを組み合わせた方法で形成しても
良い。但し、スパッタ或いはイオンプレーティング法の
場合には、原料として固体ターゲットを使用する必要が
あり、通常は高純度のグラファイトターゲットを用い
た。
【0028】上述のようにして作製される窒化炭素膜の
成膜条件の一例はプラズマCVDの場合おおむね表1に
示す通りである。
【0029】
【表1】
【0030】このようにして得られた窒化炭素膜は炭素
と窒素を主要な構成元素とし、非晶質及び微結晶質の少
なくとも一方を含む膜状物質であった。窒化炭素膜の特
徴は以下のとおりである。 気相成長で比較的低温で合成できる。 膜の表面エネルギーで低く撥水性がある。 化学的安定性に優れている(concアルカリまたは酸
に24時間浸漬して重量変化がない)。 硬度が高くかつ摩擦係数が小さい(0.3〜0.1)
ので耐摩耗性が優れている。 比抵抗が大きく(107〜1012Ohm.cm)かつ絶縁
性に優れている。 これらの特性に鑑み窒化炭素膜は本発明の目的を達成す
るためには好適な材料であった。
【0031】上述のようにして得られた膜のうち、撥水
性、耐摩耗性の向上の目的に適している窒化炭素膜の膜
厚は7〜500nmであった。7nm以下では基板の表
面性にもよるが膜が連続的でなくなるためにコーティン
グ膜としての機能が著しく低下し、かつ、長期使用時に
おける摩耗によって機能の劣化が著しい。さらに、50
0nm以上ではコーティングの際にノズル口径及び形状
が所望のものから著しくずれてしまう。これらの理由か
ら膜厚の範囲としてより好ましいは15〜400nmで
あった。
【0032】更に、本出願人は膜の硬度と耐摩耗性を向
上すべく鋭意研究した結果、膜中組成比N/C及びC−
Nの結合様式が特にそれらに影響を与えていることを見
出した。実験結果をまとめれば、N/C比は0.1〜0.
5の範囲で変化し、一方、ヌープ硬度はN/C比が0.
15以上であれば約3000以上の値を示した。さら
に、作製条件とC−Nの結合様式との関係をXPS装置
に用いて調べた結果、基板に印加されるバイアス電圧が
高くなるに従って、それまでピリジンライクあるいはア
ニリンライクはSP2平面構造だったものが次第に三次
元的なC−N構造に変化していくことが明らかとなっ
た。膜の硬度はN/C比とC−Nの結合様式の両方に依
存している。
【0033】次に、図1で説明した静電型インクジェッ
ト特有の問題点として、 微小ギャップ内での放電あるいは、 電極表面を保護する保護膜の絶縁破壊、 保護膜の表面に吸着した水分あるいはOH基による
電極と振動板との固着、等の問題点があった。 本発明は、かかる静電型特有の問題点を解決するための
優れた保護膜及び形成構造をも与えるものである。
【0034】図4は、本発明の他の実施例を説明するた
めの要部概略構成図で、図4(A)は、電極3の表面全
面にわたった窒化炭素膜13を設けたものである。従来
素子では電極の保護膜としてはSiO2,Si34等の
無機酸化物が使用されていた。電極及び保護膜の表面に
は空気中の水分、−OH基が吸着しており、電極と保護
膜が接触した場合に、水素結合的な化学結合が生じ電圧
を零にしても両者が固着した状態のままになってしま
う。この現象は電極を透明電極にしたときに特に著し
い。これに対して窒化炭素膜は水分、−OH基の吸着量
が非常に少なく、上記のような問題は生じなかった。更
に、窒化炭素膜は比抵抗及び絶縁耐圧が高く、電気的な
絶縁層の機能を果たすことは言うまでもない。図4
(B)は、電極3上の一部だけに窒化炭素膜13′を設
けたもので、この構成でも上記目的は達成できる。
【0035】図5は、窒化炭素膜14を振動板6側に設
けた構成例を示す図で、図5(A)は振動板6の表面全
面にわたって窒化炭素膜14を設けたものであり、図5
(B)の振動板6上の一部だけに窒化炭素膜14′を設
けたものである。この場合も窒化炭素膜の主機能は、図
4で説明した場合と同様、電極と振動板の固着防止及び
電気絶縁であるが、この構成の特徴は上記主機能に加え
て、窒化炭素膜が振動板の一部としても機能するところ
にある。すなわち、図5(A)のように振動板の全面に
コートしたときは、振動板6は窒化炭素膜14と基体と
で構成された複合体となり、両者の厚さと物性(ヤング
率、強靱性)とによって自由に設計できる。更に、窒化
炭素膜は化学耐性が優れているために、振動板形成時の
マスク層をもかねることができるというメリットもあ
る。
【0036】上記の構成において、部分的に窒化炭素膜
を設ける場合(機械的なストッパー及び絶縁層として作
用する場合)では、その膜厚は0.02μm以上必要で
あった。これ以下では、ピンホールの確率が急増し絶
縁耐圧が十分ではなくなる、ストッパーとしての機能
が著しく低下するために実用に供せない。一方、振動板
の一部を構成する場合には、10μm以上では振動板の
トータルの剛性が高くなりすぎて、インクを吐出するの
に十分な変位が得られない。従って、この構成における
窒化炭素膜の膜厚は0.02〜10μmであることが望
ましい。また、膜厚の均一性、制御性の観点及び膜剥離
の観点から0.1〜5μmが更に好ましい範囲であっ
た。
【0037】一方、窒化炭素膜は内部応力が通常では大
きく(1000Mpa度)、基体の表面状態にも依存す
るが、厚く堆積しようとすると膜剥離を起こしやすかっ
た。本出願人は、この点を解決すべく膜質の改良を試み
た結果、膜の電気的、熱的安定性及び比抵抗、誘電率は
従来膜と同等で、内部応力を従来の1/2以下に低減す
ることに成功した。具体的には、製膜時の原料ガスとし
て主構成元素ガスと希ガス(He,Ar,Ne,Xe,
Kr等)あるいは水素ガスを混合したガスを使用するこ
とで達成できる。低応力膜の得られる製膜条件を表2に
まとめた。
【0038】
【表2】
【0039】表2から混合ガスを使用し、より低パワ
ー、高圧力の条件範囲で低応力の窒化炭素膜が得られる
ことがわかる。こうして得られた200nmの膜のガラ
ス基板に対する付着強度を従来膜と比較すると、表3の
ようになった。剥離頻度は100mm角の基板内で発生
した剥離エリアの面積%である。
【0040】
【表3】
【0041】さらに、図6に示すように、窒化炭素膜自
体を少なくとも2層からなる積層構成とすることによっ
て付着力と耐摩耗性及び撥水性の劣化の少ないコート膜
を得ることができる。すなわち、図6に示すように基体
1と接する側に低応力な第一の窒化炭素膜15aを堆積
し、さらにその上に内部応力は大きい硬度が比較的高い
膜第二の窒化炭素膜15bを積層することにより、両者
の特徴をあわせ持つコート膜15を得ることができる。
製膜の過程においては、上記2種類の膜は連続的に製膜
することが望ましい。第1の窒化炭素膜15aを堆積し
てから一度大気開放してしまうとその表面に空気中の不
純物ガスが吸着し、第二の窒化炭素膜15bとの界面に
密着性を劣化させる層が形成されてしまう。第一の窒化
炭素膜15aの膜厚としては5〜100nmが適当であ
った。
【0042】次に、図7に示すように、主にSiを基体
としたときに、基体1との界面にa−SiCからなる中
間層16を設け窒化炭素膜17の密着力を向上せしめ
た。SiCはSi原子とC原子が存在しているためにS
i基体並びに窒化炭素膜17に対する密着性がともに優
れている。さらに、a−SiCはP−CVD法にて作製
できるのみでなく、条件も窒化炭素膜のそれに非常に近
い。具体的には、窒化炭素膜の原料ガスの一方である炭
化水素系ガスにシラン系のガス(SiH4,Si26
SiH22等)を所望量、混合したガスを使用すればよ
い。従って、a−SiCと窒化炭素膜は同一装置を用い
て、原料ガスの組成を徐々に切り替えることによって容
易に積層できる。上記の点は製造上大きな利点となる。
中間層16としてのa−SiCは膜厚は15nm程度で
あれば十分な効果がある。
【0043】Si濃度とC濃度の関係を図8(A)に示
す構成を採用することにより、主にSiを基体としたと
きの窒化炭素膜の密着性をさらに強固なものにすること
ができる。本発明の構成は、図8(B)に拡大して示す
ように、基体1に近づくにしたがって中間層(a−Si
C)16中のSiの濃度が連続的に増加するようにした
(C濃度に注目すれば減少する)ことを特徴としてお
り、これにより基体1と中間層16の接合部には明確な
界面が存在しなくなる。従って、界面からの剥離等は生
じない。このような構成の膜を作製するためには、a−
SiC製膜初期に供給する原料ガスはその混合比(=シ
ラン系ガス/炭化水素系ガス)を無限大(100%シラ
ン系)とし、製膜が進むにしたがって徐々に混合比を連
続的に減少させてゆき、窒化炭素膜17に近づくに従っ
て混合比を1/1にし化学量論比に近いa−SiC膜を
作製する。最終的にはその上に窒化炭素膜を形成する組
成比(例えば、窒素源ガス/炭化水素系=1/1)の原
料ガスを供給すればよい。
【0044】(実施例1)図1のような静電気型インク
ジェットの作製法を説明する。最初に、基板1に振動板
6と電極3の間隔を制御する凹部2の形成方法について
述べる。凹部の形成には大別して、エッチング法と堆積
法とがある。まず、図9に従ってエッチング法を説明す
る。基板1表面に凹部以外のパターン(凸部21)に相
当するレジストパターン22を形成し基板をエッチング
し、レジストを除去すれば凹部2が形成できる。基板と
してはパイレックスガラス#7740を使用し、エッチ
ャントはBHFであった。
【0045】一方、堆積法は上記のエッチング法の丁度
逆で、図10に示すように、基板1に、凸部21(凹部
2の逆のパターン)に相当する厚さの絶縁膜23を堆積
し、凸部21に相当するレジストパターン22を使用し
てエッチングを行い、凹部2を形成した。絶縁膜には後
工程の陽極接合性を考慮して、パイレックスガラス#7
740を使用してスパッタ法にて作製した。エッチング
法と堆積法を比較すれば、高さ方向の寸法制御性を考慮
すれば、堆積法の方が優れている。凹部の形成方法は上
記に限定されるわけではなく、所謂マイクロマシーニン
グの手法を適用できる。
【0046】次に、電極3及び保護層4の形成方法につ
いて説明する。凹部2の形成された基板1上に電極材料
として、主として、金属材料の薄膜をスパッタ法、蒸着
法、EB蒸着法等の気相合成法にて堆積せしめ、フォト
リソ、エッチングにて電極3とした。より具体的には金
属材料とし、Ti/Pt,Ni,Cu,W,Ta,Ni
−Cr,Cr等を用いて膜厚0.05から1.0ミクロン
形成した。金属のほかに透明導電体(ITO,ZnO,
SnO)等が使用できるが、これらの材料に特に限定さ
れるものではない。ただし、Ti/Ptなどのエッチン
グしにくい材料ではリフトオフ法を採用してパターンニ
ングした。また、保護層材料としては、SiO2,Si
X,SiOyNX等の無機絶縁膜が使用され、スパッタ
法、蒸着法、EB蒸着法等の気相合成法にて堆積せしめ
フォトリソ、エッチングにて保護層4とした。
【0047】さらに、振動板6(基板5)の作製方法を
説明する。Si(110)の両面にSiO2を2ミクロ
ンつけたものを基体として、その上の振動板に対応した
位置のSiO2をエッチングして開口部をあけて、その
部分のSiのみをKOH水溶液(数%〜約45%)をエ
ッチャントとして、80℃において振動板の厚さまで異
方性エッチングした。このほかにウエットの異方性エッ
チャントとしてはヒドラジン、TMHAなどが使用でき
る。また、Siの高ドープ層を利用した選択エッチング
やPN接合基板の電気化学的手法によるエッチストップ
等を利用すれば振動板厚の制御性向上が図れる。
【0048】次に、天井板の役目を果たす基板8として
は、陽極接合、或いは、直接接合が可能な基板、具体的
には、パイレックスガラス、Si基板等を囲い、これら
をエッチングしてインク供給口9を取り付けた。このよ
うにして作製された基板1,5,8を順次接合し、先端
に吐出口10を設けたノズルプレート11を固着して図
1に示したような一般的な静電型ヘッドを完成した。な
お、接合条件は温度320℃、電圧100V程度であっ
た。
【0049】本実施例は、上述のようにして得られたヘ
ッドの吐出口面に、図2に示したように、窒化炭素膜1
2を設け、さらに加圧室及び流路にも図3のごとく窒化
炭素膜12を配置したものである。窒化炭素膜は表4に
示す製膜条件で約100nm形成した。
【0050】
【表4】
【0051】また、本実施例のヘッド吐出口面の水との
接触角変化は表5の通りであった。
【0052】
【表5】
【0053】さらに、1000hr放置後の液室内のイ
ンクを成分分析した結果、Si成分は検出されなかっ
た。
【0054】(実施例2)静電型ヘッドに関しては、実
施例1とほぼ同様な作製プロセスによって作製したもの
を使用した。本実施例はヘッドの吐出口面に元素組成比
N/Cが0.2の窒化炭素膜を設けたものである。窒化
炭素膜の膜厚は約200nmであり、製膜条件は表6に
示した通りであった。
【0055】
【表6】
【0056】こうして得られたヘッドを上記実施例と同
様な試験を行ったところ、以下の結果が得られた。これ
より表7に示すように耐摩耗性と撥水性が向上したこと
がわかる。
【0057】
【表7】
【0058】(実施例3)静電型ヘッドに関しては、実
施例1とほぼ同様な作製プロセスによって作製したもの
を使用した。本実施例は電極3の表面全面或いは一部分
に保護層として、以下にあげる2種類の窒化炭素膜を設
けたものである。先ず、(a)第一番目は膜の内部応力
が500Mpa以下の窒化炭素膜を電極全面に被覆した
ものであり、膜厚は約150nmであり、製膜条件は表
8に示す通りであった。
【0059】
【表8】
【0060】上述のようにして得られた窒化炭素膜の内
部応力は約400Mpaであった。さらに、50V駆動
におけるヘッドの連続動作試験(1000hr)を行っ
たところ、絶縁破壊による故障或いは電極と振動板の固
着等は生じなかった。
【0061】次に、第二番目の例として窒化炭素膜が2
層構成をとっているヘッドを作製した(ヘッドの基本構
成は図1のものと同等である)。電極3と接する側に低
応力な第一の窒化炭素膜を堆積し、さらにその上に内部
応力は大きいが硬度が比較的高い膜第二の窒化炭素膜を
堆積した。それぞれの膜の製膜条件及び膜厚は表9の通
りであった。
【0062】
【表9】
【0063】上述のようにして得られたヘッドに50V
印加し、連続動作試験(1000hr)を行ったとこ
ろ、絶縁破壊による故障、或いは、電極と振動板の固着
による故障は皆無であった。さらに、窒化炭素膜と電極
との密着力の評価としてスクラッチ試験を行ったとこ
ろ、表10に示すように、従来の通常の窒化炭素膜単層
の場合と比較して、上記2例の窒化炭素膜の密着力は著
しく改善されていることがわかる。
【0064】
【表10】
【0065】(実施例4)静電型ヘッドに関しては、実
施例1とほぼ同様な作製プロセスによって作製したもの
を使用した。本実施例は振動板6の電極3と対向する側
の表面全面に保護層、或いは、保護層兼、振動板の一部
として、以下にあげる2種類の窒化炭素膜を設けたもの
である。まず、第一番目は保護層として機能するもの
で、(c)窒化炭素膜と振動板の界面にa−SiCを設
けた構成である。それぞれの膜の製膜条件及び膜厚は表
11に示す通りであった。
【0066】
【表11】
【0067】上述のようにして得られたヘッドに50V
印加し、連続動作試験(1000hr)を行ったとこ
ろ、絶縁破壊による故障、或いは、電極と振動板の固着
による故障は皆無であった。
【0068】次に、第二番目の例は保護層兼、振動板の
一部として機能するもので、(d)中間層(a−Si
C)中のSi濃度が基体(振動板6)に近づくにしたが
って連続的に増加する構成をとっている(ヘッドの基本
構成は図1のものと同等である)。このような膜を作製
するには、図11に示すように、原料ガスの組成を時間
とともに変化させながら製膜すればよい。原料ガス以外
の固定条件及び膜厚は表12の通りであった。
【0069】
【表12】
【0070】上述のようにして得られたヘッドに50V
印加し、連続動作試験(1000hr)を行ったとこ
ろ、絶縁破壊による故障、或いは、電極と振動板の固着
による故障は皆無であった。また、この時のSi振動板
の板厚とヤング率はそれぞれ2μ,1.88×104Kg
/mm2であり、窒化炭素膜の板厚とヤング率はそれぞ
れ3μ,5.0×104Kg/mm2であったので、両者
が積層されてできた振動板の特性、板厚と合成されたヤ
ング率はそれぞれ5μ,3.75×104Kg/mm2
Si単独のときよりも改善されていることがわかる。
【0071】さらに、窒化炭素膜と振動板との密着力の
評価としてスクラッチ試験を行ったところ、表13に示
すように、従来の通常の窒化炭素膜単層の場合と比較し
て、上記2例(c),(d)の窒化炭素膜の密着力は著
しく改善されていることがわかる。ただし、(d)の場
合の膜厚はトータル150nm
【0072】
【表13】
【0073】
【発明の効果】請求項1の発明によると、記録体を吐出
する複数の吐出口と、記録体に吐出の圧力を与える加圧
室と、該加圧室内の記録体に圧力を与えるための圧力発
生手段とを備えた記録ヘッドにおいて、前記吐出口の吐
出面を炭素と窒素を主構成元素とし非晶質、或いは、微
結晶質を一部含む状態の窒化炭素膜で被覆したので、該
窒化炭素膜の撥水性のゆえに吐出口周辺に液溜り等がで
きず、インクの飛翔方向が一定となり、ひいては高速、
高画質の印刷が実現でき、更には、耐摩耗性が向上す
る。
【0074】請求項2の発明によると、記録体を吐出す
る複数の吐出口と、記録体に吐出の圧力を与える加圧室
と、記録体の輸送のための流路と、前記加圧室内の記録
体を加圧するための圧力発生手段とを備えた記録ヘッド
において、少なくとも前記加圧室及び流路の内面を炭素
と窒素を主構成元素とし非晶質、或いは、微結晶質を一
部含む状態の窒化炭素膜で被覆したので、前記加圧室及
び流路部分のインクによる侵食等を防げることができ、
従って、インク成分の変化変質が低減でき、かつ、長期
使用時のインクの漏洩をも防止でき、信頼性の高い記録
ヘッドが実現できる。
【0075】請求項3の発明によると、請求項1又は2
の発明において、前記窒化炭素膜の膜厚を7〜500n
mとしたので、窒化炭素膜の剥離を防止でき、かつ、請
求項1,2に効載した効果が有効に発揮され、高速、高
画質、高信頼性の記録ヘッドが実現できる。
【0076】請求項4の発明によると、請求項1乃至3
のいずれかの発明において、前記窒化炭素膜の元素組成
比N/Cが0.15以上であるので、膜の撥水性がさら
に向上され、高速、高画質、高信頼性の記録ヘッドが実
現できる。
【0077】請求項5の発明によると、記録体を吐出す
る複数の吐出口と、記録体に吐出の圧力を与える加圧室
と、記録体の輸送のための流路と、前記加圧室内の記録
体を加えるための圧力発生手段とを備えた記録ヘッドに
おいて、前記圧力発生手段が加圧室の一部を形成する振
動板とそれに対向して設けられた電極との間に印加され
た電界により動作する静電型アクチュエータである記録
ヘッドにおいて、電極の一部、或いは、全面が該窒化炭
素膜で被覆されているので、窒化炭素膜の表面に水分等
が吸着しにくく、水分が吸着することによる不安定さ
(ギャップ内の容量変化に起因する振動板変位の変
動、振動板と電極の固着等)が改善される。また、電
極の一部に設けた時は、振動板の変位に対して機械的な
ストッパーの機能を果たし、従って、インク吐出の安定
性及び長期信頼性が向上する。
【0078】請求項6の発明によると、記録体を吐出す
る吐出口と、記録体に吐出の圧力を与える加圧室と、記
録体の輸送のための流路と、前記加圧室内の記録体を加
圧するための圧力発生手段とを備えた記録ヘッドであっ
て、前記圧力発生手段が加圧室の一部を形成する振動板
とそれに対向して設けられた電極との間に印加された電
界により動作する静電型アクチュエータである記録ヘッ
ドにおいて、振動板の表面の一部、或いは、全面が該窒
化炭素膜で被覆されているので、窒化炭素膜の表面に水
分等が吸着しにくく、水分が吸着することによる不安定
さ(ギャップ内の容量変化に起因する振動板変位の変
動、振動板と電極の癒着等)が改善される。更に、窒
化炭素膜は剛性が高く振動板の構造部材をも兼ねること
が出来るため、振動板の設計自由度が増大する。一方、
振動板の一部に設けた時は、振動板の変位に対して機械
的なストッパーの機能を果たす。従って、高速、高画
質、高信頼性の記録ヘッドが実現できる。
【0079】請求項7の発明によると、前記窒化炭素膜
の膜厚が0.02〜10μmであるので、吐出の不安定
さ(ギャップ内の容量変化に起因する振動板変位の変
動、振動板と電極の固着等)が改善される。更に、窒
化炭素膜は剛性が高く振動板の構造部材をも兼ねること
が出来るため、振動板の設計自由度が増大する。一方、
振動板の一部に設けた時は、振動板の変位に対して機械
的なストッパーの機能を果たす。従って、高速、高画
質、高信頼性の記録ヘッドが実現できる。
【0080】請求項8の発明によると、請求項1又は2
又は5又は6の発明において、前記窒化炭素膜の内部応
力が500Mpa以下であるので、窒化炭素膜の剥離が
防止でき長期信頼性に優れた高速、高画質の記録ヘッド
が実現できる。一般に窒化炭素膜は内部応力が大きく厚
膜に堆積すると膜剥離が起こるが、本発明によると、内
部応力の小さな成膜方法を提供することができる。
【0081】請求項9の発明によると、請求項1又は2
又は5又は6の発明において、前記窒化炭素膜が少なく
とも2層からなる積層体(下層に内部応力の小さな膜を
上層には内部応力は大きいが硬度の高い膜を配置する)
であるので、窒化炭素膜の剥離が防止でき、長期信頼性
に優れた高速、高画質の記録ヘッドが実現できる。
【0082】請求項10の発明によると、請求項2又は
6の発明において、前記窒化炭素膜と基体の界面にa−
SiCからなる中間層を設けたので、基体と窒化炭素膜
の密着力が向上し、窒化炭素膜の剥離が防止でき長期信
頼性に優れた高速、高画質の記録ヘッドが実現できる。
【0083】請求項11の発明によると、請求項2又は
6の発明において、前記窒化炭素膜の中間層中のSi濃
度が基体に近づくに従って連続的に増加しているので、
基体と窒化炭素膜の密着力が向上し窒化炭素膜の剥離が
防止でき長期信頼性に優れた高速、高画質の記録ヘッド
が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による静電型インクジェットヘッドの
要部断面構成図である。
【図2】 本発明によるノズルプレートの一例を説明す
るための拡大斜視図である。
【図3】 本発明の他の実施例を説明するための要部拡
大図である。
【図4】 本発明による静電型インクジェットヘッドの
他の実施例を説明するための要部概略断面構成図であ
る。
【図5】 本発明による静電型インクジェットヘッドの
他の実施例(窒化炭素膜を振動板側に設けた例)を示す
要部概略断面図である。
【図6】 窒化炭素膜を2層から成る積層構造とした場
合の例を示す要部概略構成図である。
【図7】 基板と窒化炭素膜の間に中間層を設けた場合
の例を示す要部概略構成図である。
【図8】 Si濃度とC濃度を関係を説明するための図
である。
【図9】 基板に凹部を形成する方法の一例を説明する
ための図である。
【図10】 基板に凹部を形成する方法の他の例を説明
するための図である。
【図11】 保護層兼振動板に機能する膜を形成する方
法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
1…基板1、2…凹部、3…電極、4…保護層、5…基
板、6…振動板、7…加圧室、8…基板、9…インク供
給口、10…吐出口、11…ノズルプレート、13,1
3′,14,14′…窒化炭素膜、16…中間層、17
…窒化炭素膜、21…パターン凹部、22…レジスト、
23…絶縁膜。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 記録体を吐出する吐出口と、記録体に吐
    出の圧力を与える加圧室と、該加圧室内の記録体に圧力
    を与えるための圧力発生手段とを備えた記録ヘッドにお
    いて、前記吐出口の吐出面を炭素と窒素を主構成元素と
    した非晶質、或いは、微結晶質を一部含む状態の窒化炭
    素膜で被覆したことを特徴とする記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 記録体を吐出する吐出口と、記録体に吐
    出の圧力を与える加圧室と、記録体の輸送のための流路
    と、該加圧室内の記録体を加圧するための圧力発生手段
    とを備えた記録ヘッドにおいて、少なくとも前記加圧室
    及び流路の内面を炭素と窒素を主構成元素とした非晶
    質、或いは、微結晶質を一部含む状態の窒化炭素膜で被
    覆したことを特徴とする記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記窒化炭素膜の膜厚が7〜500nm
    であることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録ヘ
    ッド。
  4. 【請求項4】 前記窒化炭素膜の元素組成比N/Cが
    0.15以上であることを特徴とする請求項1乃至3の
    いずれかに記載の記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 記録体を吐出する吐出口と、記録体に吐
    出の圧力を与える加圧室と、該加圧室内の記録体を加圧
    するための圧力発生手段とを備えた記録ヘッドであっ
    て、前記圧力発生手段が前記加圧室の一部を形成する振
    動板と該振動板に対向して設けられた電極との間に印加
    された電界により動作する静電型アクチュエータである
    記録ヘッドにおいて、前記電極の一部、或いは、全面が
    窒化炭素膜で被覆されていることを特徴とする記録ヘッ
    ド。
  6. 【請求項6】 記録体を吐出する吐出口と、記録体に吐
    出の圧力を与える加圧室と、該加圧室内の記録体を加圧
    するための圧力発生手段とを備えた記録ヘッドであっ
    て、前記圧力発生手段が前記加圧室の一部を形成する振
    動板と該振動板に対向して設けられた電極との間に印加
    された電界により動作する静電型アクチュエータである
    記録ヘッドにおいて、前記振動板の表面の一部、或い
    は、全面が窒化炭素膜で被覆されていることを特徴とす
    る記録ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記窒化炭素膜の膜厚が0.02〜10
    μmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の記
    録ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記窒化炭素膜の内部応力が500Mp
    a以下であることを特徴とする請求項1又は2又は5又
    は6に記載の記録ヘッド。
  9. 【請求項9】 前記窒化炭素膜が少なくとも2層からな
    る積層体であることを特徴とする請求項1又は2又は5
    又は6に記載の記録ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記窒化炭素膜と該窒化炭素膜が形成
    される基体の界面にa−SiCからなる中間層を有する
    ことを特徴とする請求項2又は6に記載の記録ヘッド。
  11. 【請求項11】 前記窒化炭素膜の中間層中のSi濃度
    が該窒化炭素膜が形成されている基体に近づくに従って
    連続的に増加していることを特徴とする請求項2又は6
    に記載の記録ヘッド。
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