JP7028669B2 - オレフィン系樹脂、その製造方法およびプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
[1] 4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖およびプロピレン系重合体から構成される側鎖を有すグラフト型重合体[R1]を含み、下記要件(I)および(II)を満たす、オレフィン系樹脂(β)。
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
(i)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲である。
[3] 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(ii)を満たす、前記[1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(ii)側鎖を構成するプロピレン系重合体は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が合計で0~5mol%の範囲である。
[4] 下記要件(III)を満たす、前記[1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にある。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。
[6] 下記(A)および(B)の工程を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを、下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、重合温度90℃以上の溶液重合プロセスにより共重合する工程
[7] 下記(A)および(B)の工程を含む方法により得られ、下記要件(I)および(II)を満たす、オレフィン系樹脂(β)。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する工程
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが50~100J/gの範囲にある。
[8] 前記工程(B)を前記[6]に記載の一般式[1]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で実施する前記[7]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
[9] 前記工程(A)で製造する不飽和末端ポリプロピレンが、プロピレンから導かれる繰り返し単位を95~100mol%の範囲で有し、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位を合計で0~5mol%の範囲で有する、前記[7]または[8]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
[11] プロピレン系樹脂(α)と、前記[1]~[4]、[7]~[10]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)と、を含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
[12] 前記プロピレン系樹脂(α)50~98質量部およびオレフィン系樹脂(β)2~50質量部(プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有する前記[11]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
[13] 前記[1]~[4]、[7]~[10]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)から得られる成形体。
[14] 前記[11]~[13]のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体。
<オレフィン系樹脂(β)>
本発明のオレフィン系樹脂[β]は、オレフィン系重合体一種のみで構成されていてもよいし、二種以上のオレフィン系重合体から構成されていてもよいが、必ず、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖およびプロピレン系重合体から構成される側鎖を有すグラフト型重合体[R1]を含み、さらに下記要件(I)および(II)を満たす。
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
オレフィン系樹脂(β)は、前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]を必須の構成成分として含む。該グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、4-メチル-1-ペンテン系重合体からなる主鎖およびプロピレン重合系体からなる側鎖を有するグラフト共重合体である。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖にプロピレン系重合体からなる側鎖が化学的に結合した構造であるので、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)は、後述するプロピレン系樹脂(α)との相溶性に優れる。すなわち通常プロピレン系樹脂(α)と相溶しない4-メチル-1-ペンテン系重合体が、本発明によれば、プロピレン系樹脂に高い相溶性を示す。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]は、上述のとおり、主鎖および側鎖を有するグラフト共重合体である。グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖および側鎖は、下記(i)および(ii)の要件を満たすことが好ましく、さらに(iii)の要件を満たすことが好ましく、さらに(iv)の要件を満たすことが好ましい。
(i)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲である。
(ii)側鎖を構成するプロピレン系重合体は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位の合計の含有率が0~5mol%の範囲である。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。
以下、これらの要件(i)~(iv)について具体的に説明する。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲であることが好ましい。ただし、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖に含まれる全繰り返し単位の含有率を100mol%とし、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位と前記α-オレフィンから導かれる繰り返し単位との含有率の合計が100mol%である。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の合計の含有率が0~5mol%の範囲であることが好ましい。ただし、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖に含まれる全繰り返し単位の含有率を100mol%とし、プロピレンから導かれる繰り返し単位と、エチレンから導かれる繰り返し単位および前記α-オレフィンから導かれる繰り返し単位との含有率の合計が100mol%である。
グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は0.1~10dl/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは、0.2~5.0dl/gの範囲である。
側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5000~60000、さらに好ましくは10000~25000である。重量平均分子量Mwが上記範囲にあることにより、グラフト型オレフィン系重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)およびプロピレン系樹脂を含む樹脂組成物は、メチル-1-ペンテン系重合体とプロピレン系重合体との相溶性を良好に発現する。
次に下記要件(I)および(II)を具体的に説明する。
本発明のオレフィン系樹脂(β)は180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
オレフィン系樹脂(β)は、上記要件(I)~(II)に加え、下記要件(III)~(VI)のうち1つ以上を満たすことが好ましい。
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは、0.1~5dl/gの範囲にあり、さらにより好ましくは、0.2~2dl/gの範囲にある。
極限粘度[η]が上記範囲にあることにより、通常の混練設備によりオレフィン系樹脂(β)は、良好にプロピレン系樹脂(α)と複合化でき、成型性と機械的特性も両立することができ、実用上、本要件を満たしていることが特に好ましい。
前記オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン系重合体の割合(以下、割合Pともいう)が5~90wt%の範囲にある。ここで、オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン系重合体とは、たとえば、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造法において、重合工程(B)において主鎖に取り込まれ、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖となったプロピレン系重合体と主鎖に取り込まれなかったプロピレン系重合体の総和を示す。
割合Pが上記範囲にあると、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)との相溶性が高まり、オレフィン系樹脂(β)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体がプロピレン系樹脂に良好に分散したプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。割合Pが5wt%より小さいと、オレフィン系樹脂(β)のプロピレン系樹脂への相溶性が低く、4-メチル-1-ペンテン系重合体が良好に分散しない場合がある。割合Pが90wt%より大きいと、オレフィン系樹脂(β)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体の割合が低く、オレフィン系樹脂(β)をプロピレン系樹脂に配合しても4-メチル-1-ペンテン系重合体に由来する特性を十分発揮できない場合がある。
また、末端不飽和ポリプロピレンとは、下記末端構造(I)~(IV)で表される不飽和末端をもつポリプロピレンを意味する。末端構造(I)~(IV)における「Poly」は、末端構造と、該末端構造以外のプロピレン重合体分子鎖との結合位置を示す。
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、海相と島相からなる相分離構造を有し、透過型電子顕微鏡において観測される島相の円相当平均径が20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm~20μmの範囲にあり、さらにより好ましくは、1μm~20μmの範囲である。
まず、オレフィン系樹脂(β)を混練成形評価装置に投入し、260℃、50rpmで5分間溶融混練する。このオレフィン系樹脂を260℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間余熱後、10MPa加圧下、1分間かけて成形したのち、20℃で10MPaの加圧下で3分間冷却することにより所定の厚み、例えば2mm厚さのプレスシートを作製する。
オレフィン系樹脂(β)は、さらに、着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質を含まないことが好ましい。
オレフィン系樹脂(β)は、たとえば下記(A)、(B)の各工程を含む製造方法により製造される。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する工程
前記製造方法は、後述の工程(C)などを含んでもよい。
以下、(A)、(B)の工程について順に説明する。
工程(A)は、グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖を成すプロピレン系重合体の原料となる末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
末端不飽和ポリプロピレンを製造するオレフィン重合用触媒としては、Resconi, L. JACS 1992, 114, 1025-1032などで古くから知られているが、オレフィン系共重合体[R1]の側鎖としては、アイソタクチック又はシンジオタクチックな末端不飽和ポリプロピレン、より好ましくはアイソタクチックな末端不飽和ポリプロピレンが好適である。
工程(A)が、溶液重合で実施される場合、重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、後処理工程の負荷低減の観点から、ヘキサンが好ましい。
工程(B)は、 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合する工程であり、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖とプロピレン系重合体から構成される側鎖とを有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を生成する工程であり、本発明の目的を損ねない範囲で、前述の要件(i)に挙げた炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)を共重合してもよい。不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンおよび前記α-オレフィンとを共重合得る場合、4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの合計に対する4-メチル-1-ペンテンの比率は90mol%以上であることが好ましく、92~100mol%であることがより好ましい。
上記、架橋メタロセン化合物[B]を用いることで、後述する溶液重合法において、末端不飽和ポリプロピレンが良好に溶解するような高温の条件下においても、オレフィン重合用触媒として優れた重合活性を示し、生成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は高い立体規則性となる。このため、得られるオレフィン系樹脂(β)は4-メチル-1-ペンテン系重合体に由来する、耐熱性、耐スチーム性、離型性、ガス透過性、電気特性などの特性を良好に発現する。
本発明で用いられる化合物(C)は、工程(A)におけるジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]および工程(B)における周期表第4族の遷移金属化合物と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、(C-1)有機金属化合物、(C-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C-3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物からなる群より選択される。このような(C-1)~(C-3)の化合物については、国際公開第2015/147186号に記載された化合物(C-1)~(C-3)をそのまま制限なく使用できる。後述する実施例においては、トリイソブチルアルミニウムとメチルアルミノキサン用いているが、本願発明はこれら化合物に何ら限定されるものではない。
オレフィン系樹脂(β)の製造方法は、工程(A)および(B)に加え、必要に応じて、工程(B)で生成する重合体を回収する工程(C)を含んでも良い。本工程は、工程(A)および(B)において用いられる有機溶剤を分離してポリマーを取り出し製品形態に変換する工程であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する過程であれば特段制限はない。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(α)と前記オレフィン系樹脂(β)を含有することを特徴とする。
プロピレン系重合体(α)は、プロピレンの単独重合体であるか、または、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体から構成される。共重合体としては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても構わない。前述の炭素数4~20のα-オレフィンの具体例としては、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等を挙げることができる。この中でも1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンのα-オレフィンを好ましく用いることができる。
前記プロピレン系樹脂組成物は、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができ、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途の包材など公知の多様な用途に適用することができる。
以下の実施例において、オレフィン系樹脂(β)、末端不飽和ポリプロピレン、プロピレン系樹脂組成物の物性は、下記の方法によって測定した。
(1)融点(Tm)および融解熱量ΔHの測定
融点(Tm)および融解熱量ΔHの測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
末端不飽和ポリプロピレンの末端構造の分析のため、次の条件で1H-NMR測定を実施した。
装置:日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置、測定核:13H(400MHz)、測定モード:シングルパルス、パルス幅:45°(5.25μ秒)、ポイント数:32k、測定範囲:20ppm(-4~16ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:64回、測定溶媒:1,1,2,2,-テトラクロロエタン-d2、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:0.12Hz)、ケミカルシフト基準:1,1,2,2,-テトラクロロエタン(5.91ppm)。
ポリマーの分子量分析のために、次の条件でGPC分析を実施した。
装置:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:TSKgel GMH6-HTx2 TSKgel GMH6-HTLx2(いずれも東ソー社製、内径7.5mmx長さ30cm)、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)、検出器:示差屈折計、流量:1.0mL/分、試料濃度:0.15%(w/v)、注入量:0.5mL、サンプリング時間間隔:1秒、カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)。
末端不飽和ポリプロピレンについては、得られたポリスチレン換算分子量をポリプロピレンに換算して分子量を求めた。
オレフィン系樹脂の相構造の観察は透過型電子顕微鏡を用いて以下の通り実施した。
オレフィン系樹脂40gと耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.3重量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.3重量部を投入し、260℃、50rpmで5分間溶融混練し、プレス加工により2mm厚さのシート状に成形した。得られた成形体を、0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO4)によって染色した。さらにダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで得られた小片を約100nmの膜厚の超薄切片とした。この超薄切片にカーボンを蒸着させて透過型電子顕微鏡(日立製作所製H-7650)を用いて相構造を観察した。得られた観察像を、画像解析ソフト「macview」を用いて、画像処理および画像解析を行い、島相の平均円相当径を得た。
トルエンは、GlassContour社製有機溶媒精製装置を用いて市販の試薬を精製して用いた。アルミノキサンのトルエン溶液は、日本アルキルアルミ社製のメチルアルミノキサンの20wt%トルエン溶液を用い、必要に応じて揮発物質を取り除いた後、トルエンに再度溶解させて調製したもの(DMAOとも記す)を用いた。アルミノキサンのヘキサン溶液は、東ソー・ファインケム(株)製のメチルアルミノキサンのヘキサン溶液(TMAOとも記す)を用いた。
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M-1)の製造
触媒として使用したジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドは特許第3737134号に開示されている方法に従って合成した。
工程(B):オレフィン系樹脂(β-1)の製造
触媒として使用した下記式(1)で示される化合物(1)は公知の方法によって合成した。
なお、上記重合において末端不飽和ポリプロピレン(M-1)を装入しない以外は同様実施して得たオレフィン樹脂(β'-1)により、オレフィン樹脂(β-1)の4-メチル-1-ペンテン系重合体の構造解析を行った。
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(M-1)の製造
実施例1の工程(A)と同様に末端不飽和ポリプロピレン(M-1)を製造した。
工程(B):オレフィン系樹脂(β-2)の製造
触媒として使用した上記式(1)で示される化合物(1)は公知の方法によって合成した。
実施例1において、末端不飽和ポリプロピレン(M-1)を装入しない以外は同様に実施して得たオレフィン樹脂(β'-1)46.0gと、実施例1と同様にして得た末端不飽和ポリプロピレン(M-1)40.0gとを0.5Lのトルエンに投入し、窒素雰囲気下、攪拌しながら95℃で30分間保持し、オレフィン樹脂(β'-1)と末端不飽和ポリプロピレン(M-1)とを完全に溶解させた。得られた溶液を1.5リットルのメタノールに加え、析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、グラフト型オレフィン重合体[R1]を含まないオレフィン樹脂(β"-1 )86.0gを得た。得られた樹脂の分析結果を表1に示す。また、オレフィン樹脂(β"-1 )を電子顕微鏡により観察して得られた相構造を図2に示す。
プロピレン系樹脂組成物の製造
東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度260℃で、実施例1で得たオレフィン系樹脂(β-1)12gとプロピレン系樹脂(プライムポリマー製 F113G、MFR(230℃、2.16kg荷重)3g/10min)28gと、樹脂総量に対し耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.3重量部、および耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.3重量部とを投入し、50rpmで5分間溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物を得た。このプロピレン系樹脂組成物を電子顕微鏡により観察して得られた相構造を図3に示す。
図3および後述する図4の電子顕微鏡像において、相対的に濃い色に表示される部分が島相であり、淡い色に表示される部分が海相である。
プロピレン系樹脂組成物の製造
東洋精機社製ラボプラストミル(2軸バッチ式溶融混練装置)を用い、設定温度260℃で、比較例1で得たオレフィン系樹脂(β"-1)12gとプロピレン系樹脂28g(プライムポリマー製 F113G、MFR(230℃、2.16kg荷重)3g/10min)と、樹脂総量に対し耐熱安定剤IRGANOX1010(チバガイギー(株)商標)0.3重量部、および耐熱安定剤IRGAFOS168(チバガイギー(株)商標)0.3重量部とを投入し、50rpmで5分間溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物を得た。このプロピレン系樹脂組成物を電子顕微鏡により観察して得られた相構造を図4に示す。
図3および図4に示す通り、実施例3のように、末端不飽和ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンを共重合する工程を経ることで得られたグラフト型オレフィン重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)を用いた場合は、グラフト型オレフィン重合体[R1]を含まないオレフィン系樹脂を用いた比較例2に比べ、得られた相構造において、4-メチル-1-ペンテン系重合体成分である島相がプロピレン系樹脂である海相中に微細化しており、4-メチル-1-ペンテン系重合体がプロピレン系樹脂に良好に分散していることがわかる。
Claims (12)
- グラフト型重合体[R1]を含み、下記要件(I)~(III)を満たす、オレフィン系樹脂(β)であって、
前記グラフト型重合体[R1]が、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される主鎖およびプロピレン系重合体から構成される側鎖を有し、下記要件(iii)および(iv)を満たすグラフト型重合体である、オレフィン系樹脂(β)。
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが5~100J/gの範囲にある。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にある。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。 - 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(i)を満たす、請求項1に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(i)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる繰り返し単位の含有率が90~100mol%の範囲であり、かつ炭素原子数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が0~10mol%の範囲である。 - 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(ii)を満たす、請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(ii)側鎖を構成するプロピレン系重合体は、プロピレンから導かれる繰り返し単位の含有率が95~100mol%の範囲であり、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位の含有率が合計で0~5mol%の範囲である。 - 下記(A)および(B)の工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂の製造方法。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを、下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、重合温度90℃以上の溶液重合プロセスにより共重合する工程
- 下記(A)および(B)の工程を含む方法により得られ、下記要件(I)~(III)を満たす、オレフィン系樹脂(β)。
(A) 不飽和末端ポリプロピレンを製造する工程
(B) 工程(A)で得られた不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンとを共重合して、下記要件(iii)および(iv)を満たすグラフト型重合体[R1]を生成する工程
(I)180℃~220℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3~50J/gの範囲にある。
(II)120℃~150℃の範囲に示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピーク(Tm)を示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが50~100J/gの範囲にある。
(III)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~12dl/gの範囲にある。
(iii)主鎖を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1~10dl/gの範囲にある。
(iv)側鎖を構成するプロピレン系重合体の、GPCで測定した重量平均分子量Mwが5000~100000の範囲にある。 - 前記工程(B)を下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で実施する請求項5に記載のオレフィン系樹脂(β)。
- 前記工程(A)で製造する不飽和末端ポリプロピレンが、プロピレンから導かれる繰り返し単位を95~100mol%の範囲で有し、エチレンから導かれる繰り返し単位および炭素原子数4~20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる繰り返し単位を合計で0~5mol%の範囲で有する、請求項5または6に記載のオレフィン系樹脂(β)。
- 前記工程(B)において、不飽和末端ポリプロピレンと4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)とを共重合し、前記4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの合計に対する4-メチル-1-ペンテンの比率が90mol%以上である、請求項5~7のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)。
- プロピレン系樹脂(α)と、請求項1~3、5~8のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)と、を含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
- 前記プロピレン系樹脂(α)50~98質量部および前記オレフィン系樹脂(β)2~50質量部(プロピレン系樹脂(α)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有する請求項9に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1~3、5~8のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)から得られる成形体。
- 請求項9または10に記載のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体。
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