JP7014080B2 - 情報処理装置、情報処理方法及びプログラム - Google Patents
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Description
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
周期的な運動を行う物体の異常診断を行う技術として、運動を行っている物体から得られる信号を測定し、その信号における振幅の時間的な推移に基づいて、その物体が正常であるか異常であるかの判定を行う方法がある。
特許文献1には、検出した信号から診断に必要な周波数帯域の信号を取り出し、取り出された信号のエンベロープ信号を求め、得られたエンベロープ信号の周波数帯域を低帯域化し、低帯域化した後のエンベロープ信号を間引きし、間引きした後のエンベロープ信号を周波数解析し、解析結果に基づいて異常を診断するシステムが開示されている。
特許文献1には、検出した信号から診断に必要な周波数帯域の信号を取り出し、取り出された信号のエンベロープ信号を求め、得られたエンベロープ信号の周波数帯域を低帯域化し、低帯域化した後のエンベロープ信号を間引きし、間引きした後のエンベロープ信号を周波数解析し、解析結果に基づいて異常を診断するシステムが開示されている。
特許文献1に開示された方法では、ローパスフィルタにかけることで低帯域化されたエンベロープ信号に対して周波数解析を行うことで、診断を行う。ローパスフィルタにおける遮断周波数は、ユーザによって定性的に決定される。しかし、ローパスフィルタを用いる場合、遮断周波数によっては、重要な信号が減衰し、その信号を検知できなくなる可能性がある。そのため、特許文献1では、診断の精度には限界があった。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、周期的な運動を行う物体の異常診断をより精度よく行うことができるようにすることを目的とする。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、周期的な運動を行う物体の異常診断をより精度よく行うことができるようにすることを目的とする。
本発明の情報処理装置は、周期的な運動を行う物体の前記周期的な運動に係る計測データに基づいて、前記計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記推移データに基づいて、修正された自己回帰モデルにおける係数を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記係数に基づいて、前記物体の異常を診断する診断手段と、を有し、前記修正された自己回帰モデルは、前記推移データの実績値と、前記実績値に対する前記係数と、を用いて、前記推移データの予測値を表す式であり、前記決定手段は、前記推移データから導出される自己相関行列を特異値分解することで導出される前記自己相関行列の固有値を対角成分とする対角行列と、前記自己相関行列の固有ベクトルを列成分とする直交行列と、から導出される第1の行列を係数行列とし、前記推移データから導出される自己相関ベクトルを定数ベクトルとする方程式を用いて、前記係数を決定し、前記自己相関ベクトルは、時差が1から前記修正された自己回帰モデルで用いられる前記実績値の数であるmまでの前記推移データの自己相関を成分とするベクトルであり、前記自己相関行列は、時差が0からm-1までの前記推移データの自己相関を成分とする行列であり、前記第1の行列は、前記自己相関行列の固有値のうち支配的な固有値として決定されたs個の固有値と前記対角行列とから導出される第2の行列Σsと、前記s個の固有値と前記直交行列とから導出される第3の行列Usと、から導出される行列UsΣsUs
Tであり、前記第2の行列は、前記対角行列の部分行列であって、前記s個の固有値を対角成分とする行列であり、前記第3の行列は、前記直交行列の部分行列であって、前記s個の固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列である。
本発明によれば、周期的な運動を行う物体の異常診断をより精度よく行うことができる技術を提供することができる。
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
(本実施形態の処理の概要)
本実施形態では、診断システムが鉄道台車に利用される軸受から測定された振動の信号に基づいて、その軸受の異常を診断する処理について説明する。
診断システムは、軸受の振動に応じた信号を測定し、測定された信号に基づいて、その信号における振幅の時間的な推移の様子を示す信号である推移データを取得し、取得した推移データを自己回帰モデルで表現し、自己回帰モデルの係数に関する条件式における行列を特異値分解し、その行列の固有値を求め、求めた固有値から支配的な固有値を決定し、決定した支配的な固有値を用いて、自己回帰モデルの係数を決定する。そして、診断システムは、決定した係数で特定される修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルに基づいて、軸受の異常を診断する。
本実施形態では、診断システムが鉄道台車に利用される軸受から測定された振動の信号に基づいて、その軸受の異常を診断する処理について説明する。
診断システムは、軸受の振動に応じた信号を測定し、測定された信号に基づいて、その信号における振幅の時間的な推移の様子を示す信号である推移データを取得し、取得した推移データを自己回帰モデルで表現し、自己回帰モデルの係数に関する条件式における行列を特異値分解し、その行列の固有値を求め、求めた固有値から支配的な固有値を決定し、決定した支配的な固有値を用いて、自己回帰モデルの係数を決定する。そして、診断システムは、決定した係数で特定される修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルに基づいて、軸受の異常を診断する。
(軸受異常の診断実験)
鉄道台車に利用されている軸受の異常診断精度の評価のために行った実験について説明する。
図1(a)は、本実験の状況を説明する図である。図1(a)の状況は、実験室に鉄道台車における車輪の駆動機構が設置されている状況である。駆動モータ101は、駆動モータ軸102、歯車継手103、小歯車軸100を介して、小歯車105を回転させる。小歯車105は、回転することで、大歯車107を回転させる。それに合わせて、車軸109が回転し、車軸109に接続される車輪が回転することになる。本実験では、車軸109には、車輪の代わりにダイナモ110が接続されている。ダイナモ110は、疑似的な走行負荷を与えるために接続されている発電機である。本実験では、ダイナモ110を回転させるための負荷を、走行の際の負荷として想定する。
小歯車105が嵌められた小歯車軸100と大歯車107が嵌められた車軸109とは、歯車箱104に固定されている。そして、歯車箱104には、小歯車軸との間に軸受106が装着されており、車軸109との間に軸受108が装着されている。図1(b)は、歯車箱104に取り付けられている軸受を側面から見た様子を示す図である。
鉄道台車に利用されている軸受の異常診断精度の評価のために行った実験について説明する。
図1(a)は、本実験の状況を説明する図である。図1(a)の状況は、実験室に鉄道台車における車輪の駆動機構が設置されている状況である。駆動モータ101は、駆動モータ軸102、歯車継手103、小歯車軸100を介して、小歯車105を回転させる。小歯車105は、回転することで、大歯車107を回転させる。それに合わせて、車軸109が回転し、車軸109に接続される車輪が回転することになる。本実験では、車軸109には、車輪の代わりにダイナモ110が接続されている。ダイナモ110は、疑似的な走行負荷を与えるために接続されている発電機である。本実験では、ダイナモ110を回転させるための負荷を、走行の際の負荷として想定する。
小歯車105が嵌められた小歯車軸100と大歯車107が嵌められた車軸109とは、歯車箱104に固定されている。そして、歯車箱104には、小歯車軸との間に軸受106が装着されており、車軸109との間に軸受108が装着されている。図1(b)は、歯車箱104に取り付けられている軸受を側面から見た様子を示す図である。
歯車箱104上の位置111は、振動計測装置が設置される位置である。振動計測装置は、加速度センサ、レーザ変位計等のセンサを含み、センサを介して物体の振動を検知し、検知した振動に応じた信号を出力する。位置111に設置された振動計測装置が位置111に伝達される振動を計測し、計測した振動を示す信号を外部の情報処理装置等に有線又は無線による通信を介して出力する。本実験では、振動計測装置は、位置111に設置されるとするが、軸受106に起因する振動が伝達される位置であるならば、任意の位置に設置することとしてもよい。
ここで、軸受106について、説明する。図2は、軸受106の一例の構成を説明する図である。軸受106は、外輪、内輪、転動体、保持器の4つの部分から構成される。図2には、軸受106の外輪、内輪、転動体、保持器の概要が示されている。軸受106は、外輪と内輪との間に保持器により保持された転動体が挟まれる構成となっている。
本実験では、小歯車105に装着されている軸受106として、疵のない正常な軸受、外輪に疵のある軸受のそれぞれを利用した。外輪に疵のある軸受については、他の種類の疵がないことも確認した。それぞれの軸受106毎に、駆動モータ101を駆動させ、位置111に設置された振動計測装置が振動を計測することで、軸受106の異常診断を行うための計測データを取得した。本実験では、駆動モータ101は、軸受106の内輪の回転数が3000rpm(round per minute)となるように駆動した。また、軸受106の外輪の疵の回転周期に対応する基本周波数は、約260Hzである。また、軸受106の外輪につけた疵に係る信号は、この基本周波数の信号と、この基本周波数の信号の整数倍の信号(高調波)と、の重ね合された信号(例えば、矩形波等)となることが知られている。そのため、約260Hzの信号と、約260Hzの整数倍の信号と、が検知されると、軸受106の外輪に疵が存在すると診断できることとなる。
以上のように、軸受106が正常な場合、軸受106の外輪に疵がある場合について、位置111における振動の計測データを取得した。
ここで、軸受106について、説明する。図2は、軸受106の一例の構成を説明する図である。軸受106は、外輪、内輪、転動体、保持器の4つの部分から構成される。図2には、軸受106の外輪、内輪、転動体、保持器の概要が示されている。軸受106は、外輪と内輪との間に保持器により保持された転動体が挟まれる構成となっている。
本実験では、小歯車105に装着されている軸受106として、疵のない正常な軸受、外輪に疵のある軸受のそれぞれを利用した。外輪に疵のある軸受については、他の種類の疵がないことも確認した。それぞれの軸受106毎に、駆動モータ101を駆動させ、位置111に設置された振動計測装置が振動を計測することで、軸受106の異常診断を行うための計測データを取得した。本実験では、駆動モータ101は、軸受106の内輪の回転数が3000rpm(round per minute)となるように駆動した。また、軸受106の外輪の疵の回転周期に対応する基本周波数は、約260Hzである。また、軸受106の外輪につけた疵に係る信号は、この基本周波数の信号と、この基本周波数の信号の整数倍の信号(高調波)と、の重ね合された信号(例えば、矩形波等)となることが知られている。そのため、約260Hzの信号と、約260Hzの整数倍の信号と、が検知されると、軸受106の外輪に疵が存在すると診断できることとなる。
以上のように、軸受106が正常な場合、軸受106の外輪に疵がある場合について、位置111における振動の計測データを取得した。
次に、振動計測装置が計測した計測データを用いた軸受106の異常診断の方法を説明する。以下では、振動計測装置が計測した計測データを、計測データvとする。この計測データvから、計測データvにおける振幅の時間的な推移を示す推移データyを求めることとした。本実験では、推移データyとして、計測データvのエンベロープを求めた。
ここで、計測信号vに基づいて、計測信号vのエンベロープを求める方法について説明する。
エンベロープとは、計測信号が振幅と角周波数が時刻によって変化する実信号(時刻tの実関数)であるとしたときに、この計測信号の解析信号の瞬時振幅として定義されるものである。計測信号vの解析信号vaとは、以下の式1で定義される複素信号(時刻tの複素関数)である。
ここで、計測信号vに基づいて、計測信号vのエンベロープを求める方法について説明する。
エンベロープとは、計測信号が振幅と角周波数が時刻によって変化する実信号(時刻tの実関数)であるとしたときに、この計測信号の解析信号の瞬時振幅として定義されるものである。計測信号vの解析信号vaとは、以下の式1で定義される複素信号(時刻tの複素関数)である。
ここで、iは、虚数単位であり、v^(式において^はvの上に付けて表記)は、以下の式2で定義される実信号であって、vのヒルベルト変換と呼ばれるものである。
ここで、πは、円周率である。そして、計測信号vのエンベロープvmとは、以下の式3で定義される実信号である。
解析信号vaは、必ずしも式2の計算を行わなくともよく、フーリエ変換(FFT)を用いて、以下の手順で比較的簡単に算出することができる。先ず、計測信号vのフーリエ変換Vを求める。次に、以下の式4を用いて、解析信号vaのフーリエ変換Vaを求める。最後に、Vaに逆フーリエ変換を施して解析信号vaを求める。
式3に示されるvm(t)は、vのエンベロープと呼ばれる信号であり、計測信号vにおける振幅の時間的な推移の様子を示す信号の一例である。
本実験では、計測データvから上述のフーリエ変換を用いる方法で解析信号vaを算出し、式3を用いて、vのエンベロープ(vm(t))を、推移データyとして求めた。推移データには、エンベロープ以外にも以下のような信号がある。
エンベロープ(vm(t))に正の実数を乗じたデータは、推移データの一例である。推移データは、時間的な値の推移の様子が示せればよいため、各時刻における値自体は重要でないためである。また、エンベロープ(vm(t))の各時刻の値に、予め定められた値を足したデータについても、推移データの一例である。
また、例えば、v(t)における値がマイナスの部分について、-1を乗じて正の値にした関数v’(t)=|v(t)|を想定し、このv’(t)について、予め定められた閾値以上の周波数の信号をカットするようなローパスフィルタをかけることで求まる信号も、vの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データの一例である。また、関数v’(t)における山の部分を特定し、特定した部分を補間(例えば、多項式補間)することで、求まる関数が示す信号も、vの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データの一例である。
本実験では、計測データvから上述のフーリエ変換を用いる方法で解析信号vaを算出し、式3を用いて、vのエンベロープ(vm(t))を、推移データyとして求めた。推移データには、エンベロープ以外にも以下のような信号がある。
エンベロープ(vm(t))に正の実数を乗じたデータは、推移データの一例である。推移データは、時間的な値の推移の様子が示せればよいため、各時刻における値自体は重要でないためである。また、エンベロープ(vm(t))の各時刻の値に、予め定められた値を足したデータについても、推移データの一例である。
また、例えば、v(t)における値がマイナスの部分について、-1を乗じて正の値にした関数v’(t)=|v(t)|を想定し、このv’(t)について、予め定められた閾値以上の周波数の信号をカットするようなローパスフィルタをかけることで求まる信号も、vの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データの一例である。また、関数v’(t)における山の部分を特定し、特定した部分を補間(例えば、多項式補間)することで、求まる関数が示す信号も、vの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データの一例である。
推移データyは、計測データvにおける比較的高い周波数の成分が除かれ、比較的低い周波数の成分の特徴が残っているデータとみなすことができる。そのため、軸受106に異常が生じた場合、推移データyでは、例えば、軸受106に生じた異常に対応する計測データvにおける比較的低い周波数の信号(例えば、疵の回転周期に係る信号等)が強調されることとなる。そこで、例えば、軸受106の異常により生じた信号が比較的高い周波数に現れず、疵の固有振動数と比較し、比較的低い周波数に現れる場合、推移データyを用いることで、軸受106に生じた異常を診断できることとなる。
続いて、本実験では、推移データyから、修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータから特徴量を算出することとした。
ある時刻k(1≦k≦M)における推移データyの値をykとする。Mは、推移データyがどの時刻までのデータを含むかを示す数であり、予め設定されている。ykを近似する自己回帰モデルは、例えば、以下の式5のようになる。式5に示すように、自己回帰モデルとは、時系列データにおけるある時刻k(m+1≦k≦M)のデータの予測値y^k(式において^はyの上に付けて表記)を、時系列データにおけるその時刻よりも前の時刻k-l(1≦l≦m)のデータの実績値yk-lを用いて表す式である。
続いて、本実験では、推移データyから、修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータから特徴量を算出することとした。
ある時刻k(1≦k≦M)における推移データyの値をykとする。Mは、推移データyがどの時刻までのデータを含むかを示す数であり、予め設定されている。ykを近似する自己回帰モデルは、例えば、以下の式5のようになる。式5に示すように、自己回帰モデルとは、時系列データにおけるある時刻k(m+1≦k≦M)のデータの予測値y^k(式において^はyの上に付けて表記)を、時系列データにおけるその時刻よりも前の時刻k-l(1≦l≦m)のデータの実績値yk-lを用いて表す式である。
式5におけるαは、自己回帰モデルの係数である。また、mは、自己回帰モデルにおいてある時刻kに対応する推移データyの値であるykを、その時刻よりも前の過去幾つのデータを用いて近似するかを示すM未満の整数であり、本実験では、500とする。
続いて、最小二乗法を用いて、自己回帰モデルによる予測値y^kが実測値であるykに近似するための条件式を求める。自己回帰モデルによる予測値y^kが実測値であるykに近似するための条件として、式5で与えられるy^kとykとの二乗誤差を最小化することを考える。即ち、本実験では、自己回帰モデルによる予測値y^kをykに近似するために最小二乗法を用いる。以下の式6は、推移データと自己回帰モデルによる予測値との二乗誤差を最小にするための条件式である。
続いて、最小二乗法を用いて、自己回帰モデルによる予測値y^kが実測値であるykに近似するための条件式を求める。自己回帰モデルによる予測値y^kが実測値であるykに近似するための条件として、式5で与えられるy^kとykとの二乗誤差を最小化することを考える。即ち、本実験では、自己回帰モデルによる予測値y^kをykに近似するために最小二乗法を用いる。以下の式6は、推移データと自己回帰モデルによる予測値との二乗誤差を最小にするための条件式である。
式6より、以下の式7の関係を満たす。
また、式7を変形(行列表記)することで、以下の式8のようになる。
式8におけるRjlは推移データyの自己相関と呼ばれるもので、以下の式9で定義される値である。このときの|j-l|を時差という。
式8を基に、以下の自己回帰モデルの係数に関する関係式である式10を考える。式10は、自己回帰モデルによる推移データの予測値と、その予測値に対応する時刻における推移データと、の誤差を最小化する条件から導出される方程式で、ユール・ウォーカー(Yule-Walker)方程式と呼ばれるものである。また、式10は自己回帰モデルの係数から成るベクトルを変数ベクトルとする線形方程式で、式10における左辺の定数ベクトルは、時差が1からmまでの推移データの自己相関を成分とするベクトルで、以下では、自己相関ベクトルとする。また、式10における右辺の係数行列は、時差が0からm-1までの推移データの自己相関を成分とする行列であり、以下では、自己相関行列とする。
また、式10における右辺の自己相関行列(Rjlで構成されるm×mの行列)を、以下の式11のように、自己相関行列Rと表記する。
一般に、自己回帰モデルの係数を求める際には、式10を係数αについて解くという方法が用いられる。式10では、自己回帰モデルで導出されるある時刻kにおける推移データの予測値y^kが、その時刻kにおける推移データの実績値ykにできるだけ近づくように係数αを導出する。よって、自己回帰モデルの周波数特性に、各時刻における推移データの実績値ykに含まれる多数の周波数成分が含まれる。したがって、例えば、推移データyに含まれるノイズが多い場合には、軸受106の振動に係る信号を抽出できなかったり、軸受106の故障の態様に応じた特徴を抽出することができなかったりするという問題が生じる。
そこで、本発明者らは、自己回帰モデルの係数αに乗算される自己相関行列Rに着目し、鋭意検討した結果、自己相関行列Rの固有値の一部を用いて、推移データyに含まれるノイズの影響が低減され、軸受に生じた異常(例えば、疵、汚れ等)に係る信号成分が強調される(SN比を高める)ように自己相関行列Rを書き換えればよいという着想に至った。
以下で、このことの具体例を説明する。
自己相関行列Rを特異値分解する。自己相関行列Rの成分は、対称であるので、自己相関行列Rを特異値分解すると以下の式12のように、直交行列Uと、対角行列Σと、直交行列Uの転置行列との積となる。
そこで、本発明者らは、自己回帰モデルの係数αに乗算される自己相関行列Rに着目し、鋭意検討した結果、自己相関行列Rの固有値の一部を用いて、推移データyに含まれるノイズの影響が低減され、軸受に生じた異常(例えば、疵、汚れ等)に係る信号成分が強調される(SN比を高める)ように自己相関行列Rを書き換えればよいという着想に至った。
以下で、このことの具体例を説明する。
自己相関行列Rを特異値分解する。自己相関行列Rの成分は、対称であるので、自己相関行列Rを特異値分解すると以下の式12のように、直交行列Uと、対角行列Σと、直交行列Uの転置行列との積となる。
式12の行列Σは、式13に示すように、対角成分が自己相関行列Rの固有値となる対角行列である。対角行列Σの対角成分を、σ11、σ22、・・・、σmmとする。また、行列Uは、各列成分ベクトルが自己相関行列Rの固有ベクトルとなる直交行列である。直交行列Uの列成分ベクトルを、u1、u2、・・・、umとする。自己相関行列Rの固有ベクトルujに対する固有値がσjjという対応関係が有る。自己相関行列Rの固有値は、自己回帰モデルによる推移データの予測値の時間波形に含まれる各周波数の成分の強度に反映する変数である。
図3は、軸受106に外輪に疵がある軸受を用いた場合に計測された計測データから得られた推移データについて、上記手順で求められた自己相関行列Rの固有値の分布を示す図である。
図3のグラフは、自己相関行列Rを特異値分解して得られた固有値σ11~σmmを昇順に並べ替え、プロットしたグラフであり、横軸が固有値のインデックス、縦軸が固有値の値を示す。
図3を見ると、他よりも顕著に高い値をもつ固有値が1つあるのが分かる。また、その他の固有値の値を見てみると2つの固有値が、他の固有値よりも比較的高い値を持つことが分かる。
図3のグラフは、自己相関行列Rを特異値分解して得られた固有値σ11~σmmを昇順に並べ替え、プロットしたグラフであり、横軸が固有値のインデックス、縦軸が固有値の値を示す。
図3を見ると、他よりも顕著に高い値をもつ固有値が1つあるのが分かる。また、その他の固有値の値を見てみると2つの固有値が、他の固有値よりも比較的高い値を持つことが分かる。
また、軸受106に疵がない正常な軸受を用いた場合に計測された計測データから得られた推移データについて、上記手順で求められた自己相関行列Rの固有値の分布についても、図3と同様に、他よりも顕著に高い値をもつ固有値が1つあり、その他の固有値のうち、幾つかの固有値が他よりも比較的高い値を持つような分布となった。
何れの場合でも、自己相関行列Rの固有値のうち値が他よりも顕著に高い固有値の数は、固有値全体の数よりも顕著に少ないことが分かる。そのため、固有値全体の数よりも顕著に少ない個数の、他よりも値が顕著に高い固有値が、自己相関行列Rの支配的な成分に対応する固有値であると判断できる。行列の支配的な成分とは、その行列における大部分を占める成分である。そこで、発明者らは、全ての固有値のうち、支配的な固有値だけを用いて、他の固有値を用いずに、自己相関行列Rを修正(行列R’を生成)することで、支配的な成分を残したまま、余計なノイズ等の成分を除外することができるという着想を得た。行列の支配的な固有値とは、その行列の支配的な成分に対応する固有値である。
何れの場合でも、自己相関行列Rの固有値のうち値が他よりも顕著に高い固有値の数は、固有値全体の数よりも顕著に少ないことが分かる。そのため、固有値全体の数よりも顕著に少ない個数の、他よりも値が顕著に高い固有値が、自己相関行列Rの支配的な成分に対応する固有値であると判断できる。行列の支配的な成分とは、その行列における大部分を占める成分である。そこで、発明者らは、全ての固有値のうち、支配的な固有値だけを用いて、他の固有値を用いずに、自己相関行列Rを修正(行列R’を生成)することで、支配的な成分を残したまま、余計なノイズ等の成分を除外することができるという着想を得た。行列の支配的な固有値とは、その行列の支配的な成分に対応する固有値である。
そこで、行列Rの固有値σ11、σ22、・・・、σmmを求めた後、σ11、σ22、・・・、σmmのうち、支配的な固有値を決定した。
本実験では、σ11、σ22、・・・、σmmの全ての平均を求めて、求めた平均よりも大きい固有値の全てを、支配的な固有値として決定した。本実験では、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合の双方において、σ11、σ22、σ33の3個の固有値を、支配的な固有値として決定した。即ち、使用する固有値の数である使用固有値数sの値は、3となる。
また、支配的な固有値を、以下のようにして決定することもできる。例えば、選択した固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、95パーセント等)以上となるように、大きいものから選択した固有値を、支配的な固有値として決定できる。また、選択した固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、75パーセント等)以上となるように、選択した予め定められた閾値(例えば、1個、3個、5個、固有値全体の個数の1パーセント等)以下の個数の固有値を、支配的な固有値として決定することもできる。
自己相関行列Rの特異値分解の結果得られる対角行列Σの対角成分であるσ11、σ22、・・・、σmmの値は、数式の表記を簡略にするために降順とする。これらの自己相関行列Rの固有値のうち、支配的な固有値として決定したs個の固有値を用いて、以下の式14のように、行列R’を定義する。行列R’は、自己相関行列Rの固有値のうち使用固有値数s個の固有値用いて自己相関行列Rを近似した行列である。
本実験では、σ11、σ22、・・・、σmmの全ての平均を求めて、求めた平均よりも大きい固有値の全てを、支配的な固有値として決定した。本実験では、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合の双方において、σ11、σ22、σ33の3個の固有値を、支配的な固有値として決定した。即ち、使用する固有値の数である使用固有値数sの値は、3となる。
また、支配的な固有値を、以下のようにして決定することもできる。例えば、選択した固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、95パーセント等)以上となるように、大きいものから選択した固有値を、支配的な固有値として決定できる。また、選択した固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、75パーセント等)以上となるように、選択した予め定められた閾値(例えば、1個、3個、5個、固有値全体の個数の1パーセント等)以下の個数の固有値を、支配的な固有値として決定することもできる。
自己相関行列Rの特異値分解の結果得られる対角行列Σの対角成分であるσ11、σ22、・・・、σmmの値は、数式の表記を簡略にするために降順とする。これらの自己相関行列Rの固有値のうち、支配的な固有値として決定したs個の固有値を用いて、以下の式14のように、行列R’を定義する。行列R’は、自己相関行列Rの固有値のうち使用固有値数s個の固有値用いて自己相関行列Rを近似した行列である。
式14における行列Usは、式12の直交行列Uの左からs個の列成分ベクトル(使用される固有値に対応する固有ベクトル)により構成されるm×s行列である。つまり、行列Usは、直交行列Uから左のm×sの成分を切り出して構成される部分行列である。また、Us
TはUsの転置行列であり、式12の行列UTの上からs個の行成分ベクトルにより構成されるs×m行列である。式14における行列Σsは、式12の対角行列Σの左からs個の列と上からs個の行により構成されるs×s行列である。つまり、行列Σsは、対角行列Σから左上のs×sの成分を切り出して構成される部分行列である。
行列Σs及び行列Usを行列成分表現すれば、以下の式15のようになる。
行列Σs及び行列Usを行列成分表現すれば、以下の式15のようになる。
自己相関行列Rの代わりに行列R’を用いることで、式10の関係式を、以下の式16のように書き換える。
式16を変形することで、係数αを求める式17が得られる。式17によって求められた係数αを用いて、式5により予測値y^kを算出するモデルを「修正された自己回帰モデル」とする。
これまで対角行列Σの対角成分であるσ11、σ22、・・・、σmmの値を降順として説明したが、係数αの算出過程において対角行列Σの対角成分は降順である必要はなく、その場合には、行列Usは直交行列Uから左のm×sの成分を切り出すのではなく、使用される固有値に対応する列成分ベクトル(固有ベクトル)を切り出して構成される部分行列であり、行列Σsは対角行列Σから左上のs×sの成分を切り出すのではなく、使用される固有値を対角成分とするように切り出される部分行列である。
式17は、修正された自己回帰モデルの係数の決定に利用される方程式である。式17の行列Usは、自己相関行列Rの特異値分解により得られる直交行列の部分行列であって、利用される固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列である第3の行列の一例である。また、式17の行列Σsは、自己相関行列Rの特異値分解により得られる対角行列の部分行列であって、利用される固有値を対角成分とする行列である第2の行列の一例である。そして、式17の行列UsΣsUs Tは、行列Σsと行列Usとから導出される行列である第1の行列の一例である。
これまで対角行列Σの対角成分であるσ11、σ22、・・・、σmmの値を降順として説明したが、係数αの算出過程において対角行列Σの対角成分は降順である必要はなく、その場合には、行列Usは直交行列Uから左のm×sの成分を切り出すのではなく、使用される固有値に対応する列成分ベクトル(固有ベクトル)を切り出して構成される部分行列であり、行列Σsは対角行列Σから左上のs×sの成分を切り出すのではなく、使用される固有値を対角成分とするように切り出される部分行列である。
式17は、修正された自己回帰モデルの係数の決定に利用される方程式である。式17の行列Usは、自己相関行列Rの特異値分解により得られる直交行列の部分行列であって、利用される固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列である第3の行列の一例である。また、式17の行列Σsは、自己相関行列Rの特異値分解により得られる対角行列の部分行列であって、利用される固有値を対角成分とする行列である第2の行列の一例である。そして、式17の行列UsΣsUs Tは、行列Σsと行列Usとから導出される行列である第1の行列の一例である。
式17の右辺を計算することにより、修正された自己回帰モデルの係数αが求まる。以上、修正された自己回帰モデルの係数の導出方法の一例について説明してきたが、その基となる自己回帰モデルの係数の導出については直感的に分かり易いように予測値に対して最小二乗法を用いる方法で説明した。しかしながら、一般的には確率過程という概念を用いて自己回帰モデルを定義し、その係数を導出する方法が知られている。その場合に、自己相関は確率過程(母集団)の自己相関で表現されており、この確率過程の自己相関は時差の関数として表されるものである。従って、本実施形態における計測データの自己相関は、確率過程の自己相関を近似するものであれば他の計算式で算出した値に代えても良く、例えば、R22~Rmmは時差が0の自己相関であるが、これらをR11に置き換えてもよい。
次に、求めた係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを求める。
次に、求めた係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを求める。
本実験では、得られた推移データ毎に、式9と式11を用いて自己相関行列Rを求め、式12で表される特異値分解を行うことによって自己相関行列Rの固有値を求め、自己相関行列Rの固有値の分布を求めた。また、得られた推移データ毎に、推移データの波形を求めた。また、得られた推移データ毎に、上記手順で求められた自己相関行列Rの特異値分解から式15を用いて行列Σsと行列Usとを求め、式9と式17を用いて修正された自己回帰モデルの係数αを求め、求めた係数αで特定される修正された自己回帰モデルの波形を求めた。そして、得られた推移データ毎に、求めた修正された自己回帰モデルの波形について、フーリエ変換を施すことで、この波形のパワースペクトルを求めた。
また、比較の対象として、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合のそれぞれについて、計測データvの解析信号vaから式3を用いて求められた推移データy(エンベロープ)それぞれについて、フーリエ変換を施すことで、推移データyのパワースペクトルを求めた。
また、比較の対象として、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合のそれぞれについて、計測データvの解析信号vaから式3を用いて求められた推移データy(エンベロープ)に対して、ローパスフィルタをかけて求まる信号について、フーリエ変換を施すことで、このローパスフィルタをかけて求まる信号のパワースペクトルを求めた。ここで、推移データyに、1500Hzを遮断周波数としたローパスフィルタをかけた場合、800Hzを遮断周波数としたローパスフィルタをかけた場合、600Hzを遮断周波数としたローパスフィルタをかけた場合それぞれについて、パワースペクトルを求めた。
また、比較の対象として、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合のそれぞれについて、計測データvの解析信号vaから式3を用いて求められた推移データy(エンベロープ)それぞれについて、フーリエ変換を施すことで、推移データyのパワースペクトルを求めた。
また、比較の対象として、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合のそれぞれについて、計測データvの解析信号vaから式3を用いて求められた推移データy(エンベロープ)に対して、ローパスフィルタをかけて求まる信号について、フーリエ変換を施すことで、このローパスフィルタをかけて求まる信号のパワースペクトルを求めた。ここで、推移データyに、1500Hzを遮断周波数としたローパスフィルタをかけた場合、800Hzを遮断周波数としたローパスフィルタをかけた場合、600Hzを遮断周波数としたローパスフィルタをかけた場合それぞれについて、パワースペクトルを求めた。
求められた実験結果を、図4~9を用いて説明する。
図4は、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合のそれぞれについて計測された計測データvを示す図である。
図4(a)のグラフは、疵のない正常な軸受106を用いた場合に計測された計測データvの波形を示す。図4(a)のグラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、振幅を示す。図4(b)のグラフは、外輪に疵のある軸受106を用いた場合に計測された計測データvの波形を示す。図4(b)のグラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、振幅を示す。
図4(a)のグラフと図4(b)のグラフとを見ると、似通った波形をしている。そのため、これらの波形から、軸受106が正常であるか、異常であるかを診断することが困難である。
図4は、疵のない正常な軸受106を用いた場合、外輪に疵のある軸受106を用いた場合のそれぞれについて計測された計測データvを示す図である。
図4(a)のグラフは、疵のない正常な軸受106を用いた場合に計測された計測データvの波形を示す。図4(a)のグラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、振幅を示す。図4(b)のグラフは、外輪に疵のある軸受106を用いた場合に計測された計測データvの波形を示す。図4(b)のグラフの横軸は、時間を示し、縦軸は、振幅を示す。
図4(a)のグラフと図4(b)のグラフとを見ると、似通った波形をしている。そのため、これらの波形から、軸受106が正常であるか、異常であるかを診断することが困難である。
図5は、疵のない正常な軸受106を用いた場合に、計測データvの解析信号vaから式3を用いて求められた推移データyについてのパワースペクトルを示す図である。図5のパワースペクトルは、0Hz~1600Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルである。パワースペクトルの横軸は、周波数を示し、縦軸は、対応する周波数の信号の強度を示す。
図6は、疵のない正常な軸受106を用いた場合に求められた推移データyから、上記手順で求められた係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより求められる推移データの予測値からなるデータについてのパワースペクトルを示す図である。図6のパワースペクトルは、0Hz~1600Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルである。
図5と図6とのパワースペクトルを見てみると、図6のパワースペクトルでは、図5のパワースペクトルと比べて約800Hz以上の周波数の信号が顕著に減衰していることが分かる。図6のパワースペクトルでは、推移データyについての自己相関行列の固有値のうち、支配的なものだけを用いて求められた修正された自己回帰モデルについてのパワースペクトルである。そのため、推移データyについて、本質的な成分は、0Hz~約800Hzの信号であると判断できる。そこで、軸受106に何らかの異常が生じて、推移データyがその異常の影響を受ける場合、その影響は、推移データyにおける本質的な成分である0Hz~約800Hzの信号(修正された自己回帰モデルにおける本質的な成分)に表れると判断できる。
図6は、疵のない正常な軸受106を用いた場合に求められた推移データyから、上記手順で求められた係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより求められる推移データの予測値からなるデータについてのパワースペクトルを示す図である。図6のパワースペクトルは、0Hz~1600Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルである。
図5と図6とのパワースペクトルを見てみると、図6のパワースペクトルでは、図5のパワースペクトルと比べて約800Hz以上の周波数の信号が顕著に減衰していることが分かる。図6のパワースペクトルでは、推移データyについての自己相関行列の固有値のうち、支配的なものだけを用いて求められた修正された自己回帰モデルについてのパワースペクトルである。そのため、推移データyについて、本質的な成分は、0Hz~約800Hzの信号であると判断できる。そこで、軸受106に何らかの異常が生じて、推移データyがその異常の影響を受ける場合、その影響は、推移データyにおける本質的な成分である0Hz~約800Hzの信号(修正された自己回帰モデルにおける本質的な成分)に表れると判断できる。
図7は、外輪に疵のある軸受106を用いた場合に、計測データvの解析信号vaから式3を用いて求められた推移データyについてのパワースペクトルを示す図である。図7(a)のパワースペクトルは、0Hz~40000Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルである。図7(b)のパワースペクトルは、0Hz~18000Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルであり、図7(a)のパワースペクトルの一部を拡大したパワースペクトルである。図7(c)のパワースペクトルは、0Hz~1600Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルであり、図7(a)のパワースペクトルの一部を拡大したパワースペクトルである。
図8は、外輪に疵のある軸受106を用いた場合に求められた推移データyから、上記手順で求められた係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより求められる推移データの予測値からなるデータについてのパワースペクトルを示す図である。図8(a)のパワースペクトルは、0Hz~40000Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルである。図8(b)のパワースペクトルは、0Hz~1600Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルであり、図8(a)のパワースペクトルの一部を拡大したパワースペクトルである。
図8は、外輪に疵のある軸受106を用いた場合に求められた推移データyから、上記手順で求められた係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより求められる推移データの予測値からなるデータについてのパワースペクトルを示す図である。図8(a)のパワースペクトルは、0Hz~40000Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルである。図8(b)のパワースペクトルは、0Hz~1600Hzまでの周波数の信号のパワーを示すパワースペクトルであり、図8(a)のパワースペクトルの一部を拡大したパワースペクトルである。
図7(c)のパワースペクトルを見ると、260Hz付近と、その倍の周波数である520Hz付近と、その3倍の周波数である780Hz付近と、にピークが見られ、軸受106の外輪の疵に対応する信号が出ているのが分かる。しかし、図7(b)のパワースペクトルを見ると、推移データyの本質的な成分と判断される0Hz~約800Hzの範囲以上の周波数において、0Hz~約800Hzの範囲で見られるピークと同程度の強度のピークが多数存在していることが分かる。また、図7(a)のパワースペクトルを見ると、図7(b)に示される周波数(18000Hz)以上の周波数においても、ピークが多数存在していることが分かる。疵の種類によっては18000Hz以上の範囲においてピークが生じる場合もあることから、推移データyのパワースペクトルに基づいて軸受106の異常を診断する場合には、異常が過検知されてしまう可能性がある。
図8(b)のパワースペクトルと図6のパワースペクトルとを比べてみると、図8(b)のパワースペクトルには、軸受106の外輪の疵の回転周期に対応する周波数である260Hz付近と、その倍の520Hz付近と、にピークが立っていることが分かる。即ち、図8(b)のパワースペクトルに、軸受106の外輪の疵に係る回転周波数に対応するピークが生じていることとなる。
また、図8(a)のパワースペクトルと、図7(a)及び(b)のパワースペクトルと、を見ると、図8(a)のパワースペクトルにおける800Hz以上の周波数の成分が、図7(a)及び(b)のパワースペクトルに比べて、顕著に減衰していることが分かる。そのため、発明者らは、図8のパワースペクトルに基づいて軸受106の異常を診断することで、図7のパワースペクトルに基づいて軸受106の異常を診断する場合に比べて、異常を過検知してしまうような事態を防止できるという知見を得た。
図8(b)のパワースペクトルと図6のパワースペクトルとを比べてみると、図8(b)のパワースペクトルには、軸受106の外輪の疵の回転周期に対応する周波数である260Hz付近と、その倍の520Hz付近と、にピークが立っていることが分かる。即ち、図8(b)のパワースペクトルに、軸受106の外輪の疵に係る回転周波数に対応するピークが生じていることとなる。
また、図8(a)のパワースペクトルと、図7(a)及び(b)のパワースペクトルと、を見ると、図8(a)のパワースペクトルにおける800Hz以上の周波数の成分が、図7(a)及び(b)のパワースペクトルに比べて、顕著に減衰していることが分かる。そのため、発明者らは、図8のパワースペクトルに基づいて軸受106の異常を診断することで、図7のパワースペクトルに基づいて軸受106の異常を診断する場合に比べて、異常を過検知してしまうような事態を防止できるという知見を得た。
図9は、外輪に疵のある軸受106を用いた場合に求められた推移データyにローパスフィルタをかけたデータについてのパワースペクトルを示す図である。
図9(a)のパワースペクトルは、推移データyに対して、1500Hz以上の周波数をカットするよう設計されたローパスフィルタをかけたデータについてのパワースペクトルである。図9(b)のパワースペクトルは、推移データyに対して、800Hz以上の周波数をカットするよう設計されたローパスフィルタをかけたデータについてのパワースペクトルである。図9(c)のパワースペクトルは、推移データyに対して、600Hz以上の周波数をカットするよう設計されたローパスフィルタをかけたデータについてのパワースペクトルである。
図9(a)のパワースペクトルを見ると、260Hz付近と、520Hz付近と、において、他のピークに比べて顕著に高いピークが存在し、軸受106の外輪の疵に対応する信号が出ているのが分かる。
図9(a)のパワースペクトルは、推移データyに対して、1500Hz以上の周波数をカットするよう設計されたローパスフィルタをかけたデータについてのパワースペクトルである。図9(b)のパワースペクトルは、推移データyに対して、800Hz以上の周波数をカットするよう設計されたローパスフィルタをかけたデータについてのパワースペクトルである。図9(c)のパワースペクトルは、推移データyに対して、600Hz以上の周波数をカットするよう設計されたローパスフィルタをかけたデータについてのパワースペクトルである。
図9(a)のパワースペクトルを見ると、260Hz付近と、520Hz付近と、において、他のピークに比べて顕著に高いピークが存在し、軸受106の外輪の疵に対応する信号が出ているのが分かる。
図9(b)のパワースペクトルを見ると、260Hz付近において、他のピークに比べて顕著に高いピークが存在することが分かる。しかし、520Hz付近のピークは、0Hz~200Hz付近で見られるピークと同程度のピークとなっており、0Hz~200Hz付近で見られるピークとの違いが明確でないため、520Hz付近のピークが未検知となってしまう可能性がある。
図9(c)のパワースペクトルを見ると、260Hz付近において、他のピークに比べて顕著に高いピークが存在することが分かる。しかし、520Hz付近のピークは、0Hz~200Hz付近で見られるピークよりも低いピークとなっており、0Hz~200Hz付近で見られるピークとよりも小さい重要でないピークとして、520Hz付近のピークが未検知となってしまう可能性がある。
図9(a)のパワースペクトルには、軸受106の外輪の疵に対応する信号のピークが見られるため、図9(a)のパワースペクトルに基づいて、軸受106の診断を適切に行うことができる。しかし、図9(b)、(c)のパワースペクトルでは、軸受106の外輪の疵に対応する信号のピークのうち520Hz付近のピークが未検知となる可能性があるため、軸受106の診断を適切に行うことができない可能性がある。
図9(c)のパワースペクトルを見ると、260Hz付近において、他のピークに比べて顕著に高いピークが存在することが分かる。しかし、520Hz付近のピークは、0Hz~200Hz付近で見られるピークよりも低いピークとなっており、0Hz~200Hz付近で見られるピークとよりも小さい重要でないピークとして、520Hz付近のピークが未検知となってしまう可能性がある。
図9(a)のパワースペクトルには、軸受106の外輪の疵に対応する信号のピークが見られるため、図9(a)のパワースペクトルに基づいて、軸受106の診断を適切に行うことができる。しかし、図9(b)、(c)のパワースペクトルでは、軸受106の外輪の疵に対応する信号のピークのうち520Hz付近のピークが未検知となる可能性があるため、軸受106の診断を適切に行うことができない可能性がある。
このように、ローパスフィルタを用いる場合、カットする周波数によっては、診断に重要な成分の信号が減衰することで、その信号が検知できないようになる可能性があることが確認された。また、ローパスフィルタをどの周波数をカットするように設計するかについては、ユーザの経験による判断によって決定せざるを得ない。そのため、ローパスフィルタを適切な周波数をカットするように設計することは困難である。
対して、本実験で行った方法では、計測データvから推移データyを取得し、取得した推移データyの自己相関行列Rの固有値から定量的に選択された支配的な固有値を用いて、推移データyの修正された自己回帰モデルの係数αを求め、求めた係数αに基づいて診断を行った。このように、本実験で行った方法では、ユーザによる定性的な判断によるパラメータの決定を要しないため、ユーザの判断によって診断の質が低下するような事態を防止できる。また、図8(b)のパワースペクトルを見てみると、自己相関行列Rの固有値から定量的に選択された支配的な固有値を用いて決定された係数αで特定される自己回帰モデルにより、診断に重要な信号(260Hz付近と520Hz付近とのピークに対応する信号)が維持されていることが分かる。
対して、本実験で行った方法では、計測データvから推移データyを取得し、取得した推移データyの自己相関行列Rの固有値から定量的に選択された支配的な固有値を用いて、推移データyの修正された自己回帰モデルの係数αを求め、求めた係数αに基づいて診断を行った。このように、本実験で行った方法では、ユーザによる定性的な判断によるパラメータの決定を要しないため、ユーザの判断によって診断の質が低下するような事態を防止できる。また、図8(b)のパワースペクトルを見てみると、自己相関行列Rの固有値から定量的に選択された支配的な固有値を用いて決定された係数αで特定される自己回帰モデルにより、診断に重要な信号(260Hz付近と520Hz付近とのピークに対応する信号)が維持されていることが分かる。
このように本発明者らは、推移データyの自己相関行列Rの固有値のうち、支配的な固有値のみを用いて、推移データyの修正された自己回帰モデルの係数αを求めることで、推移データyに含まれる成分のうち、物体の異常診断に有用な成分を抽出したデータを求めることができるとの知見を得ることができた。
本実施形態の処理は、以下のような処理である。即ち、本実験で得られた知見を基づいて、物体の振動の計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データから求められる自己相関行列Rを特異値分解し、得られる固有値のうちの支配的な固有値を用いて、推移データを近似する修正された自己回帰モデルの係数を求める。次に、求めた係数で特定される修正された自己回帰モデルから、式5の右辺の計算を行って推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを取得する。そして、取得したパワースペクトルに基づいて、物体の異常を診断する処理である。
本実施形態の処理は、以下のような処理である。即ち、本実験で得られた知見を基づいて、物体の振動の計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データから求められる自己相関行列Rを特異値分解し、得られる固有値のうちの支配的な固有値を用いて、推移データを近似する修正された自己回帰モデルの係数を求める。次に、求めた係数で特定される修正された自己回帰モデルから、式5の右辺の計算を行って推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを取得する。そして、取得したパワースペクトルに基づいて、物体の異常を診断する処理である。
(システム構成)
図10は、本実施形態の診断システムのシステム構成の一例を示す図である。診断システムは、周期的な運動を行う物体についての異常診断を行うシステムである。診断システムは、情報処理装置1000、振動計測装置1001を含む。本実施形態では、診断システムは、鉄道台車に利用されている軸受の異常診断を行う。
情報処理装置1000は、振動計測装置1001により計測された信号に基づいて、軸受の異常診断を行うパーソナルコンピュータ(PC)、サーバ装置、タブレット装置等の情報処理装置である。また、情報処理装置1000は、電車に組み込まれたコンピュータ等であってもよい。
振動計測装置1001は、加速度センサ等のセンサを含み、センサを介して物体の振動を検知し、検知した振動に応じた信号を有線又は無線で情報処理装置1000等の外部の装置に出力する計測装置である。
図10は、本実施形態の診断システムのシステム構成の一例を示す図である。診断システムは、周期的な運動を行う物体についての異常診断を行うシステムである。診断システムは、情報処理装置1000、振動計測装置1001を含む。本実施形態では、診断システムは、鉄道台車に利用されている軸受の異常診断を行う。
情報処理装置1000は、振動計測装置1001により計測された信号に基づいて、軸受の異常診断を行うパーソナルコンピュータ(PC)、サーバ装置、タブレット装置等の情報処理装置である。また、情報処理装置1000は、電車に組み込まれたコンピュータ等であってもよい。
振動計測装置1001は、加速度センサ等のセンサを含み、センサを介して物体の振動を検知し、検知した振動に応じた信号を有線又は無線で情報処理装置1000等の外部の装置に出力する計測装置である。
(情報処理装置の機能構成)
図10を参照しながら、情報処理装置1000が有する機能の一例を説明する。
情報処理装置1000は、取得部1010、決定部1020、診断部1030、出力部1040を含む。
≪取得部1010≫
取得部1010は、周期的な運動を行う物体について、この周期的な運動に係る計測データvを取得し、取得した計測データvに基づいて、計測データvにおける振幅の時間的な推移の様子を示す推移データyを取得する。
本実施形態では、取得部1010は、小歯車軸100を回転させ、位置111に設置された振動計測装置1001により計測された振動の計測データvを取得し、取得した計測データvに基づいて、計測データにおける振幅の時間的な推移の様子を示す推移データyを取得する。
図10を参照しながら、情報処理装置1000が有する機能の一例を説明する。
情報処理装置1000は、取得部1010、決定部1020、診断部1030、出力部1040を含む。
≪取得部1010≫
取得部1010は、周期的な運動を行う物体について、この周期的な運動に係る計測データvを取得し、取得した計測データvに基づいて、計測データvにおける振幅の時間的な推移の様子を示す推移データyを取得する。
本実施形態では、取得部1010は、小歯車軸100を回転させ、位置111に設置された振動計測装置1001により計測された振動の計測データvを取得し、取得した計測データvに基づいて、計測データにおける振幅の時間的な推移の様子を示す推移データyを取得する。
≪決定部1020≫
決定部1020は、取得部1010により取得された推移データyに基づいて、修正された自己回帰モデルにおける係数αを決定する。修正された自己回帰モデルは、推移データyの実績値yk-1~yk-mと、この実績値に対する係数α(=α1~αm)と、を用いて、推移データyの予測値y^kを表す式5である。決定部1020は、推移データyから求まる式11で表される自己相関行列Rの固有値から支配的な固有値を決定して、決定した支配的な固有値に基づいて、自己相関行列Rから本質的な成分を抽出した式14に示される行列R’を生成する。行列R’は、第1の行列の一例である。決定部1020は、修正された自己回帰モデルにおける係数αを、一般的に知られている自己回帰モデルにおける係数の決定に用いる式10(ユール・ウォーカー方程式)において、式11で表される自己相関行列Rの代わりに、生成した行列R’(式14)を用いる式である式16を用いて決定する。式10は、時差が0からm-1までの推移データyの自己相関を成分とする自己相関行列Rを係数行列とし、時差が1からmまでの推移データyの自己相関を成分とする自己相関ベクトルを定数ベクトルとする方程式である。
式10は、式5で算出される推移データyの予測値y^kと、推移データyの予測値y^kに対応する時刻kにおける推移データyの実測値ykとの二乗誤差を最小化する条件を示す条件式として導出することができる。行列R’は、自己相関行列Rを特異値分解(式12)することで導出される自己相関行列Rの固有値を対角成分とする対角行列Σと、自己相関行列Rの固有ベクトルを列成分とする直交行列Uと、から導出される。行列R’は、自己相関行列Rの固有値のうち支配的な固有値として決定されたs個の固有値を用いて、対角行列Σの部分行列であって、s個の固有値を対角成分とする行列Σsと、直交行列Uの部分行列であって、s個の固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列Usと、から導出される行列UsΣsUs Tである。
決定部1020は、取得部1010により取得された推移データyに基づいて、修正された自己回帰モデルにおける係数αを決定する。修正された自己回帰モデルは、推移データyの実績値yk-1~yk-mと、この実績値に対する係数α(=α1~αm)と、を用いて、推移データyの予測値y^kを表す式5である。決定部1020は、推移データyから求まる式11で表される自己相関行列Rの固有値から支配的な固有値を決定して、決定した支配的な固有値に基づいて、自己相関行列Rから本質的な成分を抽出した式14に示される行列R’を生成する。行列R’は、第1の行列の一例である。決定部1020は、修正された自己回帰モデルにおける係数αを、一般的に知られている自己回帰モデルにおける係数の決定に用いる式10(ユール・ウォーカー方程式)において、式11で表される自己相関行列Rの代わりに、生成した行列R’(式14)を用いる式である式16を用いて決定する。式10は、時差が0からm-1までの推移データyの自己相関を成分とする自己相関行列Rを係数行列とし、時差が1からmまでの推移データyの自己相関を成分とする自己相関ベクトルを定数ベクトルとする方程式である。
式10は、式5で算出される推移データyの予測値y^kと、推移データyの予測値y^kに対応する時刻kにおける推移データyの実測値ykとの二乗誤差を最小化する条件を示す条件式として導出することができる。行列R’は、自己相関行列Rを特異値分解(式12)することで導出される自己相関行列Rの固有値を対角成分とする対角行列Σと、自己相関行列Rの固有ベクトルを列成分とする直交行列Uと、から導出される。行列R’は、自己相関行列Rの固有値のうち支配的な固有値として決定されたs個の固有値を用いて、対角行列Σの部分行列であって、s個の固有値を対角成分とする行列Σsと、直交行列Uの部分行列であって、s個の固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列Usと、から導出される行列UsΣsUs Tである。
≪診断部1030≫
診断部1030は、決定部1020により決定された係数αに基づいて、物体の異常を診断する。診断部1030は、決定部1020により決定された係数αで特定される修正された自己回帰モデルから、推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを求め、このパワースペクトルに基づいて、物体の異常を診断してもよい。更に、診断部1030は、パワースペクトルにおけるピークを示す周波数に基づいて、物体における異常の有無を診断の結果としてもよいし、物体における異常を有する部位を診断の結果としてもよい。
本実施形態では、軸受106における疵の有無を診断の結果とする。
≪出力部1040≫
出力部1040は、診断部1030による診断の結果に係る情報を出力する。
診断部1030は、決定部1020により決定された係数αに基づいて、物体の異常を診断する。診断部1030は、決定部1020により決定された係数αで特定される修正された自己回帰モデルから、推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを求め、このパワースペクトルに基づいて、物体の異常を診断してもよい。更に、診断部1030は、パワースペクトルにおけるピークを示す周波数に基づいて、物体における異常の有無を診断の結果としてもよいし、物体における異常を有する部位を診断の結果としてもよい。
本実施形態では、軸受106における疵の有無を診断の結果とする。
≪出力部1040≫
出力部1040は、診断部1030による診断の結果に係る情報を出力する。
(情報処理装置のハードウェア構成)
図11は、情報処理装置1000のハードウェア構成の一例を示す図である。
情報処理装置1000は、CPU1100、主記憶装置1101、補助記憶装置1102、入出力I/F1103を含む。各構成要素は、システムバス1104を介して、相互に通信可能に接続されている。
CPU1100は、情報処理装置1000を制御する中央演算装置である。主記憶装置1101は、CPU1100のワークエリアやデータの一時的な保管場所として機能するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。補助記憶装置1102は、各種のプログラム、設定データ、振動計測装置1001から出力される計測データ、診断情報等を記憶するROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。入出力I/F1103は、振動計測装置1001等の外部の装置との間での情報のやり取りに利用されるインターフェースである。
CPU1100が、補助記憶装置1102等に記憶されたプログラムに基づき処理を実行することによって、図10で説明した情報処理装置1000の機能及び図12で後述するフローチャートの処理等が実現される。
図11は、情報処理装置1000のハードウェア構成の一例を示す図である。
情報処理装置1000は、CPU1100、主記憶装置1101、補助記憶装置1102、入出力I/F1103を含む。各構成要素は、システムバス1104を介して、相互に通信可能に接続されている。
CPU1100は、情報処理装置1000を制御する中央演算装置である。主記憶装置1101は、CPU1100のワークエリアやデータの一時的な保管場所として機能するRAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。補助記憶装置1102は、各種のプログラム、設定データ、振動計測装置1001から出力される計測データ、診断情報等を記憶するROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。入出力I/F1103は、振動計測装置1001等の外部の装置との間での情報のやり取りに利用されるインターフェースである。
CPU1100が、補助記憶装置1102等に記憶されたプログラムに基づき処理を実行することによって、図10で説明した情報処理装置1000の機能及び図12で後述するフローチャートの処理等が実現される。
(異常診断処理)
本実施形態では、診断システムは、図1と同様の状況で位置111に設置された振動計測装置1001により計測された振動の計測データに基づいて計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移デ―タを取得し、取得した推移データに基づいて、軸受106の異常を診断することとする。本実施形態では、診断システムは、軸受106に疵が存在するか否かを特定することで、軸受106の異常を診断することとする。本実施形態では、診断システムは、予め振動計測装置1001により測定された測定データに基づいて、軸受106の異常を診断することとする。
図12は、情報処理装置1000の処理の一例を示すフローチャートである。
S1201において、取得部1010は、振動計測装置1001により計測された振動の計測データvとして、時刻1~Mまでの計測データであるv1~vMを取得する。そして、取得部1010は、式4を用いて、取得した計測データvからフーリエ変換を用いる方法で解析信号vaを取得する。取得部1010は解析信号vaに基づいて、式3を用いて、計測データvのエンベロープを、推移データyとして取得する。取得部1010は、推移データyとして、時刻1~Mまでの推移データであるy1~yMを取得する。
また、取得部1010は、例えば、v(t)における値がマイナスの部分について、-1を乗じて正の値にした関数v’(t)=|v(t)|を求め、求めたv’(t)について、予め定められた閾値以上の周波数の信号をカットするようなローパスフィルタをかけることで求まる信号を、推移データyとして取得することとしてもよい。また、取得部1010は、関数v’(t)における山の部分を特定し、特定した部分を補間(例えば、多項式補間)することで求まる関数が示す信号を、推移データyとして取得することとしてもよい。
本実施形態では、診断システムは、図1と同様の状況で位置111に設置された振動計測装置1001により計測された振動の計測データに基づいて計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移デ―タを取得し、取得した推移データに基づいて、軸受106の異常を診断することとする。本実施形態では、診断システムは、軸受106に疵が存在するか否かを特定することで、軸受106の異常を診断することとする。本実施形態では、診断システムは、予め振動計測装置1001により測定された測定データに基づいて、軸受106の異常を診断することとする。
図12は、情報処理装置1000の処理の一例を示すフローチャートである。
S1201において、取得部1010は、振動計測装置1001により計測された振動の計測データvとして、時刻1~Mまでの計測データであるv1~vMを取得する。そして、取得部1010は、式4を用いて、取得した計測データvからフーリエ変換を用いる方法で解析信号vaを取得する。取得部1010は解析信号vaに基づいて、式3を用いて、計測データvのエンベロープを、推移データyとして取得する。取得部1010は、推移データyとして、時刻1~Mまでの推移データであるy1~yMを取得する。
また、取得部1010は、例えば、v(t)における値がマイナスの部分について、-1を乗じて正の値にした関数v’(t)=|v(t)|を求め、求めたv’(t)について、予め定められた閾値以上の周波数の信号をカットするようなローパスフィルタをかけることで求まる信号を、推移データyとして取得することとしてもよい。また、取得部1010は、関数v’(t)における山の部分を特定し、特定した部分を補間(例えば、多項式補間)することで求まる関数が示す信号を、推移データyとして取得することとしてもよい。
S1202において、決定部1020は、S1201で取得した推移データyと、予め設定された定数Mと、修正された自己回帰モデルにおいて、ある時刻のデータを過去の幾つのデータで近似するかを示す数mと、に基づいて、式9と式11とを用いて自己相関行列Rを生成する。決定部1020は、予め記憶されているM、mの情報を読み出すことで、Mとmとを取得する。本実施形態では、mの値は、500である。また、Mは、mよりも大きい整数である。
S1203において、決定部1020は、S1202で生成した自己相関行列Rを特異値分解することで、式12の直交行列Uと対角行列Σを取得し、対角行列Σから自己相関行列Rの固有値σ11~σmmを取得する。
S1203において、決定部1020は、S1202で生成した自己相関行列Rを特異値分解することで、式12の直交行列Uと対角行列Σを取得し、対角行列Σから自己相関行列Rの固有値σ11~σmmを取得する。
S1204において、決定部1020は、自己相関行列Rの固有値のうちの支配的な固有値を決定する。決定部1020は、例えば、行列Rの全ての固有値の平均値を求め、行列Rの固有値のうち、求めた平均値よりも大きい固有値を全て特定し、特定した固有値を支配的な固有値として決定する。そして、決定部1020は、使用固有値数sを、支配的な固有値として選択した固有値の数に決定する。
また、決定部1020は、例えば、選択される固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、95パーセント等)以上となるように、固有値を選択(例えば、値の大きいものから選択)し、選択した固有値を支配的な固有値として決定してもよい。また、決定部1020は、選択された固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、75パーセント等)以上となるように、予め定められた閾値(例えば、1個、3個、5個、固有値全体の個数の1パーセントの個数等)以下の個数の固有値を選択し、選択した固有値を支配的な固有値として決定してもよい。
また、決定部1020は、例えば、選択される固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、95パーセント等)以上となるように、固有値を選択(例えば、値の大きいものから選択)し、選択した固有値を支配的な固有値として決定してもよい。また、決定部1020は、選択された固有値の合計のσ11、σ22、・・・、σmmの総和に対する割合が予め定められた閾値(例えば、75パーセント等)以上となるように、予め定められた閾値(例えば、1個、3個、5個、固有値全体の個数の1パーセントの個数等)以下の個数の固有値を選択し、選択した固有値を支配的な固有値として決定してもよい。
S1205において、決定部1020は、計測データyと、S1204で決定した支配的な固有値σ11~σssと、自己相関行列Rの特異値分解により得られた直交行列Uと、に基づいて、式17を用いて、修正された自己回帰モデルの係数αを決定する。
S1206において、診断部1030は、S1205で決定した係数αにより特定される修正された自己回帰モデルから、推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを取得する。
S1206において、診断部1030は、S1205で決定した係数αにより特定される修正された自己回帰モデルから、推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータについて、フーリエ変換を施すことで、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを取得する。
S1207において、診断部1030は、S1206で取得したパワースペクトルに基づいて、軸受106の異常を診断する。
本実施形態では、診断部1030は、例えば、S1206で取得したパワースペクトルにおいて、予め定められた閾値以上の強度を示す信号に対応する周波数を特定する。そして、診断部1030は、特定した周波数の中に、他の周波数の整数倍となっている周波数が存在するか否かを判定する。診断部1030は、例えば、特定した周波数の中から順に1つずつ選択して、選択した周波数ごとに、選択した周波数を整数倍(例えば、2倍)した値と、特定した周波数に含まれる他の周波数それぞれの値と、の差を取得する。そして、診断部1030は、取得した差の中に予め定められた閾値(例えば、1、5等)以下のものがあったら、特定した周波数の中に、他の周波数の整数倍となっている周波数が存在すると判定し、軸受106に疵が生じていると診断する。
また、診断部1030は、取得した差の中に予め定められた閾値以下のものがなかったら、特定した周波数の中に、他の周波数の整数倍となっている周波数が存在しないと判定し、軸受106が未知の状態にあると診断する。
また、診断部1030は、閾値以上の強度を示す信号に対応する周波数が存在しない場合、軸受106に異常が生じておらず、正常であると診断する。
S1208において、出力部1040は、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を出力する。出力部1040は、例えば、表示装置に、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を表示することで出力する。また、出力部1040は、例えば、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を、補助記憶装置1102に記憶することで出力することとしてもよい。また、出力部1040は、例えば、外部のサーバ装置等の設定された送信先に、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を送信することで出力することとしてもよい。
本実施形態では、診断部1030は、例えば、S1206で取得したパワースペクトルにおいて、予め定められた閾値以上の強度を示す信号に対応する周波数を特定する。そして、診断部1030は、特定した周波数の中に、他の周波数の整数倍となっている周波数が存在するか否かを判定する。診断部1030は、例えば、特定した周波数の中から順に1つずつ選択して、選択した周波数ごとに、選択した周波数を整数倍(例えば、2倍)した値と、特定した周波数に含まれる他の周波数それぞれの値と、の差を取得する。そして、診断部1030は、取得した差の中に予め定められた閾値(例えば、1、5等)以下のものがあったら、特定した周波数の中に、他の周波数の整数倍となっている周波数が存在すると判定し、軸受106に疵が生じていると診断する。
また、診断部1030は、取得した差の中に予め定められた閾値以下のものがなかったら、特定した周波数の中に、他の周波数の整数倍となっている周波数が存在しないと判定し、軸受106が未知の状態にあると診断する。
また、診断部1030は、閾値以上の強度を示す信号に対応する周波数が存在しない場合、軸受106に異常が生じておらず、正常であると診断する。
S1208において、出力部1040は、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を出力する。出力部1040は、例えば、表示装置に、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を表示することで出力する。また、出力部1040は、例えば、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を、補助記憶装置1102に記憶することで出力することとしてもよい。また、出力部1040は、例えば、外部のサーバ装置等の設定された送信先に、軸受106の異常の診断の結果を示す情報を送信することで出力することとしてもよい。
(まとめ)
以上、本実施形態では、診断システムは、物体の周期的な運動から計測された計測データに基づいて、計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データを取得し、取得した推移データから、自己相関行列Rを生成し、自己相関行列Rを特異値分解し、得られた固有値から定量的に支配的な固有値を決定した。そして、診断システムは、決定した支配的な固有値を用いて、推移データを近似する修正された自己回帰モデルの係数αを決定した。そして、診断システムは、決定した係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを求め、求めたパワースペクトルに基づいて、軸受106の異常を診断した。診断システムは、自己相関行列Rの固有値のうち一部の固有値を用いることで、軸受106の異常診断に有用な成分が残り、有用でない成分が残らないように、推移データを近似する修正された自己回帰モデルの係数αを決定できる。これにより、診断システムは、推移データの軸受106の異常診断に有用な成分に基づいて、より精度よく異常診断を行うことができる。
また、本実施形態の処理により、診断システムは、ローパスフィルタを用いる場合のようにカットする周波数を定性的に決定する必要もないため、ローパスフィルタを用いた場合のように診断に重要な信号が検知できない程減衰する事態を防止できる。
また、本実施形態の処理により、診断システムは、予め異常診断に用いる信号がどのような周波数の信号であるか等の想定を要することなく、推移データから異常診断に有用な成分を、抽出できる。
以上、本実施形態では、診断システムは、物体の周期的な運動から計測された計測データに基づいて、計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データを取得し、取得した推移データから、自己相関行列Rを生成し、自己相関行列Rを特異値分解し、得られた固有値から定量的に支配的な固有値を決定した。そして、診断システムは、決定した支配的な固有値を用いて、推移データを近似する修正された自己回帰モデルの係数αを決定した。そして、診断システムは、決定した係数αで特定される修正された自己回帰モデルにより推移データの予測値を求め、この推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを求め、求めたパワースペクトルに基づいて、軸受106の異常を診断した。診断システムは、自己相関行列Rの固有値のうち一部の固有値を用いることで、軸受106の異常診断に有用な成分が残り、有用でない成分が残らないように、推移データを近似する修正された自己回帰モデルの係数αを決定できる。これにより、診断システムは、推移データの軸受106の異常診断に有用な成分に基づいて、より精度よく異常診断を行うことができる。
また、本実施形態の処理により、診断システムは、ローパスフィルタを用いる場合のようにカットする周波数を定性的に決定する必要もないため、ローパスフィルタを用いた場合のように診断に重要な信号が検知できない程減衰する事態を防止できる。
また、本実施形態の処理により、診断システムは、予め異常診断に用いる信号がどのような周波数の信号であるか等の想定を要することなく、推移データから異常診断に有用な成分を、抽出できる。
本実施形態では、診断システムは、鉄道台車の軸受の異常診断を行うこととした。しかし、診断システムは、歯車等の回転体、振動子等の振動体、バネ等の伸縮体、生物の心臓等の周期的な運動を行う他の物体についての異常診断を行うこととしてもよい。
本実施形態では、mは、予め設定された500という数であるとした。しかし、診断対象に応じて実験を行う等して適切に計測データを近似できる過去のデータの数を特定し、特定した数をmの値としてもよい。例えば、情報処理装置1000は、診断対象から計測された計測データから求められた推移データについて、ある時刻の推移データを、その時刻よりも過去の推移データを複数用いて自己回帰モデル等を利用して近似して、近似した値とその時刻の推移データとの差分が設定された閾値未満となる場合の近似に用いられた過去の推移データの数を、mとして決定してもよい。
本実施形態では、診断システムは、予め振動計測装置1001により測定された測定データに基づいて、軸受106の異常を診断することとした。しかし、診断システムは、リアルタイムで振動計測装置1001により測定されて出力され続けている測定データを用いて、稼働中の軸受106の異常を診断することとしてもよい。即ち、情報処理装置1000は振動計測装置1001から新たな計測データvが取得される度に、取得された計測データvから推移データy1~yMを更新して、図12の処理を行うようにしてもよい。
本実施形態では、情報処理装置1000は、補助記憶装置1102に記憶されたプログラムを実行することで、図12の処理を実現することとした。しかし、情報処理装置1000は、外付けの記憶媒体や外部の記憶サーバ等に記憶されたプログラムを実行することで、図12の処理を実現することとしてもよい。
また、例えば、上述した情報処理装置1000の機能の一部又は全てをハードウェアとして情報処理装置1000に実装してもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本実施形態では、mは、予め設定された500という数であるとした。しかし、診断対象に応じて実験を行う等して適切に計測データを近似できる過去のデータの数を特定し、特定した数をmの値としてもよい。例えば、情報処理装置1000は、診断対象から計測された計測データから求められた推移データについて、ある時刻の推移データを、その時刻よりも過去の推移データを複数用いて自己回帰モデル等を利用して近似して、近似した値とその時刻の推移データとの差分が設定された閾値未満となる場合の近似に用いられた過去の推移データの数を、mとして決定してもよい。
本実施形態では、診断システムは、予め振動計測装置1001により測定された測定データに基づいて、軸受106の異常を診断することとした。しかし、診断システムは、リアルタイムで振動計測装置1001により測定されて出力され続けている測定データを用いて、稼働中の軸受106の異常を診断することとしてもよい。即ち、情報処理装置1000は振動計測装置1001から新たな計測データvが取得される度に、取得された計測データvから推移データy1~yMを更新して、図12の処理を行うようにしてもよい。
本実施形態では、情報処理装置1000は、補助記憶装置1102に記憶されたプログラムを実行することで、図12の処理を実現することとした。しかし、情報処理装置1000は、外付けの記憶媒体や外部の記憶サーバ等に記憶されたプログラムを実行することで、図12の処理を実現することとしてもよい。
また、例えば、上述した情報処理装置1000の機能の一部又は全てをハードウェアとして情報処理装置1000に実装してもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
1000 情報処理装置
1010 取得部
1020 決定部
1030 診断部
1040 出力部
1001 振動計測装置
1100 CPU
1010 取得部
1020 決定部
1030 診断部
1040 出力部
1001 振動計測装置
1100 CPU
Claims (11)
- 周期的な運動を行う物体の前記周期的な運動に係る計測データに基づいて、前記計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記推移データに基づいて、修正された自己回帰モデルにおける係数を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記係数に基づいて、前記物体の異常を診断する診断手段と、
を有し、
前記修正された自己回帰モデルは、前記推移データの実績値と、前記実績値に対する前記係数と、を用いて、前記推移データの予測値を表す式であり、
前記決定手段は、前記推移データから導出される自己相関行列を特異値分解することで導出される前記自己相関行列の固有値を対角成分とする対角行列と、前記自己相関行列の固有ベクトルを列成分とする直交行列と、から導出される第1の行列を係数行列とし、前記推移データから導出される自己相関ベクトルを定数ベクトルとする方程式を用いて、前記係数を決定し、
前記自己相関ベクトルは、時差が1から前記修正された自己回帰モデルで用いられる前記実績値の数であるmまでの前記推移データの自己相関を成分とするベクトルであり、
前記自己相関行列は、時差が0からm-1までの前記推移データの自己相関を成分とする行列であり、
前記第1の行列は、前記自己相関行列の固有値のうち支配的な固有値として決定されたs個の固有値と前記対角行列とから導出される第2の行列Σsと、前記s個の固有値と前記直交行列とから導出される第3の行列Usと、から導出される行列UsΣsUs Tであり、
前記第2の行列は、前記対角行列の部分行列であって、前記s個の固有値を対角成分とする行列であり、
前記第3の行列は、前記直交行列の部分行列であって、前記s個の固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列である情報処理装置。 - 前記取得手段は、前記計測データに基づいて、前記計測データのエンベロープのデータを、前記推移データとして取得する請求項1記載の情報処理装置。
- 前記s個の固有値は、前記自己相関行列のうち、前記自己相関行列の全ての固有値の平均値よりも大きい固有値である請求項1又は2記載の情報処理装置。
- 前記s個の固有値は、予め定められた閾値以下の個数の固有値であり、
前記s個の固有値の合計の前記自己相関行列の固有値の全体の合計に対する割合は、予め定められた閾値以下となる請求項1又は2記載の情報処理装置。 - 前記自己相関行列は、前記推移データの予測値と前記推移データの予測値に対応する時刻における前記推移データの実測値との二乗誤差を最小化する条件を示す条件式に含まれる行列である請求項1乃至4何れか1項記載の情報処理装置。
- 前記診断手段は、前記修正された自己回帰モデルにより求められる前記推移データの予測値からなるデータのパワースペクトルを導出し、前記パワースペクトルに基づいて、前記物体の異常を診断する請求項1乃至5何れか1項記載の情報処理装置。
- 前記計測データは、前記物体の振動に係る計測データである請求項1乃至6何れか1項記載の情報処理装置。
- 前記診断手段による診断の結果に係る情報を出力する出力手段を更に有する請求項1乃至7何れか1項記載の情報処理装置。
- 前記物体は、鉄道台車に利用される軸受であり、
前記診断手段は、前記決定手段により決定された前記係数に基づいて、前記物体における疵の存在を含む異常を診断する請求項1乃至8何れか1項記載の情報処理装置。 - 情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
周期的な運動を行う物体の前記周期的な運動に係る計測データに基づいて、前記計測データの振幅の時間的な推移の様子を示す推移データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記推移データに基づいて、修正された自己回帰モデルにおける係数を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定された前記係数に基づいて、前記物体の異常を診断する診断ステップと、
を含み、
前記修正された自己回帰モデルは、前記推移データの実績値と、前記実績値に対する前記係数と、を用いて、前記推移データの予測値を表す式であり、
前記決定ステップでは、前記推移データから導出される自己相関行列を特異値分解することで導出される前記自己相関行列の固有値を対角成分とする対角行列と、前記自己相関行列の固有ベクトルを列成分とする直交行列と、から導出される第1の行列を係数行列とし、前記推移データから導出される自己相関ベクトルを定数ベクトルとする方程式を用いて、前記係数を決定し、
前記自己相関ベクトルは、時差が1から前記修正された自己回帰モデルで用いられる前記実績値の数であるmまでの前記推移データの自己相関を成分とするベクトルであり、
前記自己相関行列は、時差が0からm-1までの前記推移データの自己相関を成分とする行列であり、
前記第1の行列は、前記自己相関行列の固有値のうち支配的な固有値として決定されたs個の固有値と前記対角行列とから導出される第2の行列Σsと、前記s個の固有値と前記直交行列とから導出される第3の行列Usと、から導出される行列UsΣsUs Tであり、
前記第2の行列は、前記対角行列の部分行列であって、前記s個の固有値を対角成分とする行列であり、
前記第3の行列は、前記直交行列の部分行列であって、前記s個の固有値に対応する固有ベクトルを列成分ベクトルとする行列である情報処理方法。 - コンピュータを、請求項1乃至9何れか1項記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
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