JP6997318B2 - 積層ペインを製造する方法 - Google Patents

Description

本発明は、積層ペインを製造する方法、この方法によって製造できる積層ペイン、及びこの積層ペインの使用に関する。

複数のフィルム又は層から構成されたフィルム積層体を備えた積層ペインは、独国実用新案第２０２ ２０ ４９４ Ｕ１号から知られている。この積層ペインは、通常、２つの積層フィルムの間に封入されたＰＥＴフィルム、及びガラス又はプラスチックの２つの外部硬質ペインを含む。外部積層フィルムは、ポリビニルブチラール（ＰＶＢ）でできており、かつ接着層としての役割を果たし、２つの硬質ペインの結合を確立する。ＰＥＴフィルムは、通常、薄層として実装され、かつ熱反射層として機能する赤外線反射導電性コーティングを具備しており、それによって、積層ペインが、極めて低い熱貫流率を有するようになっている。

独国特許出願公開第１９９ ０２ ４７１ Ａ１号公報は、薄層を具備するキャリアフィルムと外部接着層とから構成されている積層体を有する、湾曲した透明な積層ペインを開示している。この積層ペインは、適切な大きさに切断した、視界領域にわたって延在するキャリアフィルムを有する不透明な材料の周縁ストリップを有しており、それによって、その目に見える縁が、視界方向でこの周縁ストリップによってちょうど覆われるようになっている。

欧州特許出願公開第０ ３７１ ９４９ Ａ１号公報は、２つの積層フィルムと、その間に配置した、金属層及び誘電体層を有するキャリアフィルムとを含む、太陽光保護コーティングを有する積層ガラスペインを開示している。このようなペインを製造する方法は、第一工程で、三層構造体の積層フィルム及び被覆したキャリアフィルムを製造することを含み、キャリアフィルムを積層フィルムの間に設置する。このことは、積層フィルムによって、引っ掻きで傷つきやすいコーティング表面を保護するという利点を有する。

独国特許出願公開第１９５ ０３ ５１０ Ａ１号公報は、端部シールを具備する赤外線反射積層ガラスペインを製造する方法を開示している。この積層ガラスペインは、金属でできた赤外線反射層を有するキャリアフィルムを含む、熱可塑性ポリマーの積層体を有する。

赤外線反射導電性コーティングは、通常は透明であり、硬質ペインの内側のうちの一つに任意に配置することもできる。こうしたコーティングは、特に銀をベースとする導電層を含み、内部の不必要な加熱を低減するために適している。このタイプのコーティングは、例えば、国際公開第０３／０２４１５５ Ａ２号から知られている。

自動車の部門では、こうしたペインは、好ましくは、ルーフパネル又はウィンドシールドとして使用されている。ペインについての技術的な要求に加えて、乗物の審美的必要性も増加してきている。これは、視覚的に魅力のある積層ペインへの高まる需要をもたらす。これらの積層ペインは、しばしば複雑な形状を有している。これらの積層ペインは、従来からのペインの構成である、非常に強い湾曲とパノラマガラスペインとの両者を含んでいる。しかしながら、大きな放射領域に起因して、パノラマペインは、特に、乗物内部の強い加熱をもたらす。

複雑に湾曲したペインの形状は、通常は非平面状の表面を有している。そのようなペインは、球面状、円錐状、及び／又は放物面状であり、異なるタイプの材料で実施してフィルム複合体にすることが困難である。フィルム構成要素の材料特性が異なるせいで、フィルムは、特に高度に湾曲したペインの場合に、しわができる傾向がある。

多くのペインの形状は、角や縁の領域でより強く湾曲しているので、これらのしわは、主にペインの角や縁で生じる。先行技術では、このしわができることを防止するために、キャリアフィルムをペインの縁で切り詰めて短くしている。ウィンドシールドの場合、キャリアフィルムのない縁部領域を、製造サイクルにおいて後で適用する黒色スクリーンプリントで被覆する。キャリアフィルムの切り詰めは、ペインの可視領域に遠過ぎるものではない縁部領域について、高精度であることが必要である。

しわの発生や誤挿入などの製造誤差は、こうした欠陥があるペインを販売できないので、製造中に高い水準の廃棄物をもたらす。製造中の高水準の廃棄物は、最終製品の製造コストの増加を招く。現在まで、高度に複雑なペインの形状は、苦労して大量にフィルム複合体に積層することのみが可能であり、これは非常にコストが掛かるものであった。

本発明の目的は、積層ペインを製造する方法を提供することはもちろん、しわが生じることを回避した積層ペインを提供することであり、かつ、積層ペインの製造を簡素化することにある。

本発明の目的は、独立請求項の特徴にしたがって達成される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に示されている。

本発明は、積層ペイン（１）を製造する方法に関し、この方法において、
－ 第一の積層フィルム、キャリアフィルム、及び第二の積層フィルムを提供し、かつ接合して予備積層フィルムを形成し、ここで、第一の積層フィルム、キャリアフィルム、及び第二の積層フィルムが、同一のフィルム厚さを有しており、
－ 補償フィルムと予備積層フィルムとを配置して、第一のペインと第二のペインとの間に積層体を形成し、ここで、この積層体の２つの側端部に平行に、ストリップ状の周囲フィルムをそれぞれ配置し、かつ補償フィルムを提供して、予備積層フィルムと周囲フィルムとの間のオフセットを補償し、かつ
－ 第一のペイン、
－ 予備積層フィルム、
－ 周囲フィルムを有する補償フィルム、及び
－ 第二のペイン
を含む積層体を積層して、積層ペインを形成し、ここで、第一の積層フィルム及び第二の積層フィルムは、１５重量％未満、好ましくは１０重量％未満、特に好ましくは５重量％未満の可塑剤含有量を有し、好ましくは、可塑剤を含有しない。

本発明によるこの方法において、第一の積層フィルム、キャリアフィルム、及び第二の積層フィルムは、おおよそ同一のフィルム厚さを有している。このことは、キャリアフィルムの剛性について好ましい効果を有する。第一の積層フィルム、キャリアフィルム、及び第二の積層フィルムは、硬質ペインの複雑な形状により良く適合することができ、それによって、フィルムにしわができることを大幅に削減するようになっている。

有利な実施態様では、最初に、第一の積層フィルム、キャリアフィルム、及び第二の積層フィルムから、いわゆる三層構造体である、予備積層フィルムを作製する。キャリアフィルムは、断熱特性、例えば、赤外線反射コーティングを備えている。キャリアフィルムを、第一の積層フィルムと、第二の積層フィルムとの間に配置する。一例として、この予備積層フィルムは、おおよそ１．４ｍ（長手方向）（１４０ｃｍ）の長さ及びおおよそ１ｍ（１００ｃｍ）の幅を有することができる。任意に、予備積層フィルムをエンボス加工することができ、これにより三層構造体の接着を向上させることができる。こうした三層構造体は、特別な予備的手段なしでさらに加工することができ、かつ取り扱い中、特に頑丈である。

別の有利な実施態様では、積層フィルム、キャリアフィルム、第二の積層フィルム、及び補償フィルムから構成される層の積層体を、任意に、その周囲領域の複数の点で、スポット溶接によって予備的に固定することができる。この予備的な固定を積層前に行う。これによって、複雑に湾曲したペインの形状を有する積層ペインにおいても、実質的にしわのないフィルムとすることができる。

第一の積層フィルム及び第二の積層フィルムは、好ましくは、実質的に可塑剤を含まず、つまり、積層フィルムにおける可塑剤含有量が非常に少なく、それによって、可塑剤分子の拡散によるキャリアフィルムの劣化が実質的に生じないようになっている。これらのフィルムは、１５重量％未満の、好ましくは１０重量％未満の、特に好ましくは５重量％未満の可塑剤含有量を有する。

キャリアフィルムは、どちらかといえば高い剛性を有し、かつ補償フィルムは、比較的低い剛性を有する。第一の積層フィルム又は第二の積層フィルムは、非常に低い可塑剤含有量を有する（１５重量％未満、好ましくは１０重量％未満、特に好ましくは５重量％未満）。このことは、キャリアフィルムの剛性よりは低いが、補償フィルムの剛性よりも堅い積層フィルムの剛性をもたらす。これは、どちらかといえば堅いキャリアフィルムから、堅くない補償フィルムへの移行を生じさせる。フィルムの剛性に関して、この移行は、しわができることの減少を有利にもたらし、かつ実質的にしわのない積層ペインを提供する。

積層フィルムは、少なくとも一つの熱可塑性ポリマーを含み、好ましくは、エチレン酢酸ビニル（ＥＶＡ）、ポリビニルブチラール（ＰＶＢ）、若しくはポリウレタン、又はこれらの混合物、若しくはコポリマー、若しくは誘導体を含み、特に好ましくは、ポリビニルブチラールを含む。積層フィルムの厚さは、好ましくは２５μｍ～２５０μｍ（マイクロメートル）、好ましくは５０μｍである。

キャリアフィルムは、好ましくは、少なくともポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリエチレン（ＰＥ）、又はこれらの混合物、若しくはコポリマー、若しくは誘導体を含む。キャリアフィルムは、好ましくは、２５μｍ～２５０μｍ（マイクロメートル）の厚さを有し、特に好ましくは５０μｍの厚さを有する。

有利には、これらの厚さを有するフィルムと周囲フィルムとを組み合わせて有する積層ペインにおいて、向上した接着接合が生じ、かつしわができることを大幅に低減する。

特に有利には、周囲フィルムを、予備積層フィルムの長手方向に延在する予備積層フィルムの長手方向の縁に平行に配置する。予備積層フィルムの幅は、周囲フィルムの幅のおおよそ１０倍とすることができる。積層フィルム、キャリアフィルム、第二の積層フィルム、及び補償フィルムを、それぞれワンピースに形成することができる。その一方で、周囲フィルムを、少なくとも２つのストリップ状の片から形成し、ここで、第一に、周囲フィルムが、これらの層の積層体（積層フィルム、キャリアフィルム、第二の積層フィルム、及び補償フィルムからなる積層体）の周囲フィルムを形成し、かつ第二に、周囲フィルムを、硬質ペインの間に互いに隣接して配置する。加えて、さらに２つのストリップ状の周囲フィルムを予備積層フィルムのその他の２つの縁に配置することができ、それによって、周囲フィルムが四つの側でフレームのように予備積層フィルムを取り囲むようになっている。

好ましくは、周囲フィルムは、０．３８ｍｍの厚さを有する。積層フィルム及びキャリアフィルムは、著しく薄いフィルム厚さを有する。このことがオフセットを生じさせる。補償フィルムは、予備積層フィルムと周囲フィルムとの間を補償するものとして設けることができる。本発明に従う方法によって、オートクレーブで積層体を処理した後で、第一のペインと第二のペインとを、予備積層フィルム、補償フィルム、及び周囲フィルムを介して接合する。予備積層フィルム、補償フィルム、及び周囲フィルムは、オートクレーブで、強い変形を受ける。張力の影響にもかかわらず、積層ペインの形状に適合した、しわのない積層ペインの組立品を保証することができる。

別の実施態様では、第一の熱可塑性結合フィルムを、補償フィルムと第一のペインの間に配置することができる。代替的に、又は追加的に、第二の熱可塑性結合フィルムを、予備積層フィルムと第二のペインの間に配置することができる。

補償フィルム、並びに第一の熱可塑性結合フィルム及び第二の熱可塑性結合フィルムは、熱可塑性ポリマーを含み、好ましくは、エチレン酢酸ビニル（ＥＶＡ）、ポリビニルブチラール（ＰＶＢ）、若しくはポリウレタン、又はこれらの混合物、若しくはコポリマー、若しくは誘導体を含み、特に好ましくは、ポリビニルブチラールを含む。第一の熱可塑性結合フィルムの厚さは、好ましくは０．２ｍｍ～２ｍｍ、特に好ましくは０．３ｍｍ～１ｍｍ、例えば、０．５ｍｍである。補償フィルムの厚さは、フレームフィルムと、いわゆる三層構造体との間の厚さの差によって決定される。

さらに、積層前に、予備積層フィルムは、周囲領域に、好ましくは周囲フィルムに対して垂直に切り込みを具備することができる。切り込みの深さは、第一の積層フィルム及びキャリアフィルムの厚さよりも大きい。この周囲領域は、ペインの周囲縁部から少し離れた距離の範囲内にあるフィルムの部分として定義される。通常、この距離は、３ｍｍ～３５０ｍｍの値を有する。この値は、ペインの用途及び形状（例えば、サイドウィンドウ、リアウィンドウ、又はウィンドシールドなど）に依存するだけでなく、積層ペインの範囲内によっても変化する。特に、ウィンドシールドの場合は、ウィンドシールドのエンジンエッジで比較的大きなカットバックが存在し（例えば、２００ｍｍ～３５０ｍｍ）、一方、ルーフエッジ及びＡ－ピラー側ではかなり小さいカットバックが存在する（例えば、ルーフエッジで２０ｍｍ、Ａ－ピラー側で１０ｍｍ）。その小さい幅に起因して、従来技術で一般的なように、周囲領域を不透明なスクリーンプリントによって容易に覆うことができる。したがって、周囲領域とペインの残りの部分との間の移行は、スクリーンプリントによって隠され、かつ光学的に支障をきたす縁としては見えない。積層時に、積層フィルムの材料が、この切り込みを完全に充填し、それによって、積層後に、この切り込みをかさねて封鎖する。したがって、キャリアフィルムの縁は、積層ペインの周囲から分離される。

予備積層フィルムは、例えば、いわゆる三層構造体とすることができ、又は代替的に、四層構造体にすることもできる。四層構造体は、三層構造体と補償フィルムとを含み、すなわち、補償フィルムが、第一の積層フィルム、キャリアフィルム、及び第二の積層フィルムと共に四層構造体を形成する。三層構造体又は四層構造体として実施される予備積層フィルムは、好ましくは、１００℃までの温度で製造される。

別の有利な実施態様によれば、予備積層フィルムは、赤外線反射機能層、エレクトロクロミック機能層、又はエレクトロルミネセント機能層を有する。赤外線反射機能層は、特に、赤外線反射コーティングであってよい。赤外線反射コーティングは、導電的に接触することができる。赤外線反射コーティングとしてここで使用するものは、バスバーを介して外部電源に接続する導電性コーティングであり、それによって、バスバー間の導電性コーティングを通じて電流が流れる。このコーティングは、追加的に、加熱層として機能することができ、例えば、ペインの霜を取り除いたり、曇りをとったりするために、積層ペインを加熱するために使用される。

本発明による方法は、基本的に、あらゆる機能性層と共に実施することができる。機能性層は、例えば、ＳＰＤ（懸濁粒子デバイス）層、又はＰＤＬＣ（ポリマー分散型液晶）層である。

本発明は、さらに、本発明の方法によって得られる積層ペインを含む。この積層ペインは、上下に平らに配置した以下のものを少なくとも含む：
－ 外部ペイン（２）、
－ 第一の積層フィルム（４）、
－ キャリアフィルム（５）、
－ 第二の積層フィルム（６）、
－ 周囲フィルム（９）を有する補償フィルム（７）、及び
－ 第二のペイン（３）、
ここで、第一の積層フィルム（４）、第二の積層フィルム（６）、及びキャリアフィルム（５）が、同一のフィルム厚さを有する。

本発明に従う方法によって製造された積層ペインを、乗物ペイン、船舶ペイン、又は航空機ペインとして、構造グレージング又は建築グレージングとして、好ましくは、乗物ペインとして、特に好ましくは、サイドウィンドウ、ウィンドシールド、ルーフパネル、又はリアウィンドウとして、使用することができる。

外部ペイン及び／又は内部ペインは、好ましくは、ガラス、特に好ましくは、平面ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスを含み、あるいはプラスチック、好ましくは硬質プラスチック、特に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、及び／又はこれらの混合物、及び／又はコポリマーを含む。

第一のペイン及び／又は第二のペインの厚さを幅広く変えることができ、したがって、個々の場合の必要条件に理想的に適合させることができる。好ましくは、外部ペイン及び内部ペインの厚さは、０．５ｍｍ～１０ｍｍであり、好ましくは１．４ｍｍ～３ｍｍ、最も特に好ましくは２．１ｍｍである。

第一のペイン及び第二のペインは、任意の三次元形状を有することができ、一例として、およそ１．６ｍの長さと、およそ１．３ｍの幅を有する。好ましくは、ペインは、一つ又はそれを超える空間方向に、わずかに又は強く湾曲している。特に、第一のペイン及び第二のペインは、複雑に、例えば、円錐状又は放物面状を伴って、球面状に湾曲することができる。

第一のペイン、第二のペイン、第一の積層フィルム、第二の積層フィルム、又は熱可塑性フィルムは、無色透明であってよいが、薄く色がついていても、曇っていても、又は着色していてもよい。第一のペイン及び第二のペインは、強化していないガラスで、部分的に強化したガラスで、又は強化ガラスでできていてもよい。

有利には、しわができることが大幅に低減される。しわの発生を低減することは、特に、積層ペインが湾曲しているか又は激しく湾曲しているときに、積層ペインの製造時に廃棄物の低減した割合をもたらす。したがって、本発明による方法は、製造時に非常に経済的である。

結合したプロセス工程（予備積層フィルム及び補償フィルム及び周囲フィルムを第一のペインに取り付けること）は、任意の順序で実施することができる。

積層による複合ペインの製造は、当業者に知られている一般的な方法によって行われ、例えば、オートクレーブ法、真空バッグ法、真空リング法、カレンダー法、真空積層、又はこれらの組み合わせによって行われる。第一のペインと第二のペインの接合は、通常、熱、真空（減圧）、及び／又は圧力の作用の下で行われる。

言うまでもなく、上述した特徴及び以下に詳細に説明する特徴を、明示した組み合わせ及び形態としてのみならず、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせ及び形態としても又は分離しても、使用することができる。

以下に、図面及び例示的な実施形態を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図面は純粋に概略図であって、正確な縮尺ではない。図面は決して本発明を限定するものではない。

積層プロセス前の本発明による積層ペインの構造の断面図である。 周囲領域を有する本発明による積層ペインである。 積層プロセス前の本発明による積層ペインの構造の、別の実施形態の断面図である。 積層プロセス前の本発明による積層ペインの構造の、別の実施形態の断面図である。 積層ペインを製造するための本発明による方法のフローチャートである。

図１は、本発明による積層ペイン１の構造の、ここでは積層プロセス前の断面図を示したものである。積層ペイン１は、ソーダ石灰ガラスでできた厚さ１．４ｍｍの第一のペイン２、及びソーダ石灰ガラスでできた厚さ２．１ｍｍの第二のペイン３から構成されている。第一のペイン２及び第二のペイン３の間には、第一の積層フィルム４、赤外線反射コーティングを有するキャリアフィルム５、第二の積層フィルム６、及び補償フィルム７が配置されている。積層フィルム４及び６は、おおよそ５０μｍの非常に薄い厚さを有する実質的に可塑剤を含有しないＰＶＢフィルムである。積層フィルム４及び６並びにキャリアフィルム５は、およそ同じフィルム厚さを有している。キャリアフィルム５は、例えば、５０μｍの厚さのＰＥＴフィルムとすることができる。２つのストリップ状の周囲フィルム９は、それぞれ、第一のペイン２及び第二のペイン３の２つの向かい合った長手方向の縁に延在している。

補償フィルム７を第一のペイン２の片側の中央に設置する。補償フィルム７の形状は、およそ第一のペイン２の形状に対応しており、ここで、２つの向かい合った側で、第一のペイン２のストリップ状の周囲領域Ａは、補償フィルムによって覆われていない。周囲領域Ａは、ペインの縁部での、ペインの縁と補償フィルム７との間の最大距離を示す。

いわゆる三層構造体８を補償フィルム７の上に配置する。三層構造体８は、少なくとも、第一の積層フィルム４、キャリアフィルム５、及び第二の積層フィルム６を含み、ここで、１００℃までの温度で、キャリアフィルム５を第一及び第二の積層フィルム（４及び６）に前もって接合させて、三層構造体８を形成した。このプロセス工程では、この２つの積層フィルム（４及び６）の間にキャリアフィルム５を組み込み、それによって、キャリアフィルムを環境の影響から保護し、かつさらなる加工時に特に取り扱い易いようになっている。三層構造体８の形状及び大きさは、補償フィルム７の形状及び大きさにおおよそ対応しており、それによって、補償フィルム７及び三層構造体８を含む層の積層体を形成するようになっている。この積層体の２つの側端部に平行に、ストリップ状の周囲フィルム９を、それぞれ第一のペイン２の上に配置する。したがって、周囲フィルムが、第一のペイン２と第二のペイン３の間のフリーの周囲領域Ａを完全に塞ぐ。

三層構造体８は、周囲フィルム９よりも薄く、その結果、周囲フィルム９から三層構造体８へ移行するところでオフセットが生じる。補償フィルム７は、この空間を埋める。理想的には、周囲フィルムと、補償フィルム７及び三層構造体８からなる層の積層体とは、同一の厚さを有するべきである。補償フィルム７及び周囲フィルム９は、例えば、ＰＶＢフィルムであり、ここで、周囲フィルム９は、０．３８ｍｍの厚さを有する。

第一のペイン２は、積層プロセス前に、第二のペイン３と一緒に曲げられており、それによって、第一のペイン３と第二のペイン３とは球面状になっている。第一のペイン２及び第二のペイン３は、任意に複雑な形状であってよく、例えば、円錐状又は放物面状を伴って、球面状に曲げられていてよい。ペイン２及び３の湾曲は、例えば、曲げ半径Ｒ１及び／又は第二の曲げ半径Ｒ２を有し、Ｒ１がＲ２とは等しくない円筒形状を有することができる。

したがって、積層ペイン１は、補償フィルム７と第一のペイン２との間に第一の熱可塑性結合フィルム１０を含むことができる（図３）。同様に、予備積層フィルム８と第二のペイン３との間に、第二の熱可塑性結合フィルム１１を配置することができる（図４）。第一の熱可塑性結合フィルム１０及び第二の熱可塑性結合フィルム１１の両者は、０．３８ｍｍのフィルム厚さのＰＶＢフィルムとすることができ、これらは、第一のペイン２又は第二のペイン３を完全に覆う。第一及び第二の熱可塑性結合フィルム１０及び１１は、接着剤層としての役割を果たし、かつ第一のペイン２又は第二のペイン３への結合を構成する。

積層ペイン１を、例えば、動力乗物のルーフパネルとして提供することができる。

図２は、周囲領域Ａに複数の周囲フィルム９を有する、本発明による積層ペイン１の積層前の平面図を示す。ここでは、積層ペイン１が、積層ペイン１の周囲領域Ｂ及びＣに、２つの追加の周囲フィルム９を有しており、それによって、予備積層フィルム８が複数の周囲フィルム９によって、フレームのような様式で取り囲まれるようになっている。

図３は、本発明による積層体の第二の実施形態の断面図を示したものである。ここでは、積層ペイン１は、積層前に、第一のペイン２と、補償フィルム７又は周囲フィルム９との間に配置した、第一の熱可塑性結合フィルム１０を含んでいる。

図４は、本発明による積層体の別の実施形態を示したものである。ここでは、積層ペイン１は、積層前に、第二のペイン３と、第一の積層フィルム４又は周囲フィルム９との間に配置した、第二の熱可塑性結合フィルム１１をさらに含んでいる。

図５は、積層ペイン１を製造するための本発明による方法の好ましい実施態様のフローチャートを示したものである。図３に示す工程は以下のとおりである：
Ｉ 第一の積層フィルム４、キャリアフィルム５、及び第二の積層フィルム６を提供すること；及び第一の積層フィルム４、キャリアフィルム５、及び第二の積層フィルム６を接合して、予備積層フィルム（三層構造体）を形成すること；
ＩＩ 第一のペイン２の大きさに対応する、予備積層フィルム及び補償フィルムを提供すること；
ＩＩＩ 補償フィルム７を第一のペイン２の中央に配置しながら、第一のペインの上に補償フィルム７を配置し、それによって、第一のペインの２つの長手方向の縁に、２つのフリーの周囲領域Ａを作り出すこと；
ＩＶ 補償フィルム７と予備積層フィルム８を配置して積層体を形成すること、ここで、周囲領域Ａに対応する幅を有するストリップ状の周囲フィルム９を、この積層体の２つの側端部に平行にそれぞれ配置する；
Ｖ 予備積層フィルムの上に第二のペイン３を配置すること、ここで、第二のペイン３の片側を予備積層フィルム８及び周囲フィルム９の上に平らに置き、かつこれらを完全に覆う；
ＶＩ 第一のペイン２、補償フィルム７、周囲フィルム９を有する予備積層フィルム、及び第二のペイン３を含む積層体を、オートクレーブ中で積層して、積層ペイン１を形成すること。

任意に、工程Ｉで、予備積層フィルムは、第一の積層フィルム４、キャリアフィルム５、第二の積層フィルム６、及び補償フィルム７からなるもの（四層積層体）とすることができる。加えて、予備積層フィルムに、予備積層フィルムの接着を向上させるエンボス加工を施すことができる。別の実施態様では、積層フィルム、キャリアフィルム、第二の積層フィルム、及び補償フィルムからなる積層体を、その周囲領域の複数の点で、はんだごてを使ったスポット溶接によって予備的に固定することができる。

予備積層フィルムは、オートクレーブ中で激しい変形にさらされる。予備積層フィルムへの熱及び張力の影響にもかかわらず、しわのない積層ペインを保証することができる。第一の工程で、非常に薄いキャリアフィルム５を、非常に低い可塑剤含有量を有する２つの同様に薄い積層フィルム４及び６の間に組み込むので、その剛性は、後続の製造プロセスを妨げず、したがって、積層ペイン１におけるしわが生じる欠陥を著しく低減することができる。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む：
［１］積層ペイン（１）を製造する方法であって、
－ 第一の積層フィルム（４）、キャリアフィルム（５）、及び第二の積層フィルム（６）を提供し、かつ接合して予備積層フィルム（８）を形成し、ここで、前記第一の積層フィルム（４）、前記キャリアフィルム（５）、及び前記第二の積層フィルム（６）が、同一のフィルム厚さを有しており、
－ 補償フィルム（７）と前記予備積層フィルム（８）とを配置して、第一のペイン（２）と第二のペイン（３）との間に積層体を形成し、ここで、前記積層体の２つの側端部に平行に、ストリップ状の周囲フィルム（９）をそれぞれ配置し、かつ前記補償フィルム（７）を提供して、前記予備積層フィルム（８）と前記周囲フィルム（９）との間のオフセットを補償し、かつ
－ 前記第一のペイン（２）、
－ 前記予備積層フィルム（８）、
－ 前記周囲フィルム（９）を有する前記補償フィルム（７）、及び
－ 前記第二のペイン（３）
を含む積層体を積層して、積層ペイン（１）を形成し、ここで、前記第一の積層フィルム（４）及び前記第二の積層フィルム（６）は、１５重量％未満、好ましくは１０重量％未満、特に好ましくは５重量％未満の可塑剤含有量を有し、好ましくは、可塑剤を含有しない、
積層ペイン（１）を製造する方法。
［２］前記周囲フィルム（９）を、前記予備積層フィルム（８）の長手方向に延在する長手方向の縁に平行に配置する、上記［１］に記載の方法。
［３］第一の熱可塑性結合フィルム（１０）を、前記補償フィルム（７）と前記第一のペイン（２）との間に配置する、請求項上記［１］又は［２］に記載の方法。
［４］第二の熱可塑性結合フィルム（１１）を、前記予備積層フィルム（８）と前記第二のペイン（３）との間に配置する、上記［１］～［３］のいずれか一つに記載の方法。
［５］前記第一の積層フィルム（４）及び前記第二の積層フィルム（６）が、２５μｍ～２５０μｍ、好ましくは５０μｍの厚さを有する、上記［１］～［３］のいずれか一つに記載の方法。
［６］前記キャリアフィルム（５）が、２５μｍ～２５０μｍ、好ましくは５０μｍの厚さを有する、上記［１］～［４］のいずれか一つに記載の方法。
［７］前記第一の熱可塑性結合フィルム（１０）及び／又は前記第二の熱可塑性結合フィルム（１１）が、０．１ｍｍ～０．８ｍｍ、好ましくは０．３８ｍｍの厚さを有する、上記［３］又は［４］に記載の方法。
［８］前記周囲フィルム（９）が、０．３８ｍｍの厚さを有する、上記［２］～［６］のいずれか一つに記載の方法。
［９］積層前に、前記予備積層フィルム（８）が、周囲領域に、特に周囲フィルムに対して垂直に切り込みを具備しており、前記切り込みの深さが、前記第一の積層フィルム（４）及び前記キャリアフィルム（５）の厚さよりも大きい、上記［１］～［８］のいずれか一つに記載の方法。
［１０］積層前に、前記補償フィルム（７）を、前記第一の積層フィルム（４）、前記キャリアフィルム（５）、及び前記第二の積層フィルム（６）に接合して、前記予備積層フィルム（８）を形成する、上記［３］～［８］のいずれか一つに記載の方法。
［１１］前記予備積層フィルム（８）を、１００℃までの温度で製造する、上記［２］～［９］のいずれか一つに記載の方法。
［１２］前記予備積層フィルム（８）が、赤外線反射機能層、エレクトロクロミック機能層、又はエレクトロルミネセント機能層を有する、上記［２］～［９］のいずれか一つに記載の方法。
［１３］乗物ペイン、船舶ペイン、又は航空機ペインとしての、構造グレージング又は建築グレージングとしての、好ましくは、乗物ペインとしての、特に好ましくは、サイドウィンドウ、ウィンドシールド、ルーフパネル、又はリアウィンドウとしての、上記［１］～［１０］のいずれか一つに記載の方法によって製造された積層ペイン（１）の使用。
［１４］上下に平らに配置した以下のものを少なくとも含む、上記［１］～［１２］のいずれか一つに記載の方法によって得られる積層ペイン（１）：
－ 外部ペイン（２）、
－ 第一の積層フィルム（４）、
－ キャリアフィルム（５）、
－ 第二の積層フィルム（６）、
－ 周囲フィルム（９）を有する補償フィルム（７）、及び
－ 第二のペイン（３）、
ここで、前記第一の積層フィルム（４）、前記第二の積層フィルム（６）、及び前記キャリアフィルム（５）が、同一のフィルム厚さを有する。

１ 積層ペイン
２ 第一のペイン
３ 第二のペイン
４ 第一の積層フィルム
５ キャリアフィルム
６ 第二の積層フィルム
７ 補償フィルム
８ 予備積層フィルム
９ 周囲フィルム
１０ 第一の熱可塑性結合フィルム
１１ 第二の熱可塑性結合フィルム
Ａ 長手方向の周囲領域
Ｂ 横方向の周囲領域
Ｃ 横方向の周囲領域

Claims (13)

1. 積層ペイン（１）を製造する方法であって、
   － 第一の積層フィルム（４）、キャリアフィルム（５）、及び第二の積層フィルム（６）を提供し、かつ接合して予備積層フィルム（８）を形成し、ここで、前記第一の積層フィルム（４）、前記キャリアフィルム（５）、及び前記第二の積層フィルム（６）が、同一のフィルム厚さを有しており、
   － 補償フィルム（７）と前記予備積層フィルム（８）とを配置して、第一のペイン（２）と第二のペイン（３）との間に積層体を形成し、ここで、前記積層体の２つの側端部に平行に、ストリップ状の周囲フィルム（９）をそれぞれ配置し、かつ前記補償フィルム（７）を提供して、前記予備積層フィルム（８）と前記周囲フィルム（９）との間のオフセットを補償し、かつ
   － 前記第一のペイン（２）、
   － 前記予備積層フィルム（８）、
   － 前記周囲フィルム（９）を有する前記補償フィルム（７）、及び
   － 前記第二のペイン（３）
   を含む積層体を積層して、積層ペイン（１）を形成し、ここで、前記第一の積層フィルム（４）及び前記第二の積層フィルム（６）は、１５重量％未満、好ましくは１０重量％未満、特に好ましくは５重量％未満の可塑剤含有量を有し、好ましくは、可塑剤を含有しない、
   積層ペイン（１）を製造する方法。
2. 前記周囲フィルム（９）を、前記予備積層フィルム（８）の長手方向に延在する長手方向の縁に平行に配置する、請求項１に記載の方法。
3. 第一の熱可塑性結合フィルム（１０）を、前記補償フィルム（７）と前記第一のペイン（２）との間に配置する、請求項１又は２に記載の方法。
4. 第二の熱可塑性結合フィルム（１１）を、前記予備積層フィルム（８）と前記第二のペイン（３）との間に配置する、請求項１～３のいずれか一項に記載の方法。
5. 前記第一の積層フィルム（４）及び前記第二の積層フィルム（６）が、２５μｍ～２５０μｍ、好ましくは５０μｍの厚さを有する、請求項１～３のいずれか一項に記載の方法。
6. 前記キャリアフィルム（５）が、２５μｍ～２５０μｍ、好ましくは５０μｍの厚さを有する、請求項１～４のいずれか一項に記載の方法。
7. 前記第一の熱可塑性結合フィルム（１０）及び／又は前記第二の熱可塑性結合フィルム（１１）が、０．１ｍｍ～０．８ｍｍ、好ましくは０．３８ｍｍの厚さを有する、請求項３又は４に記載の方法。
8. 前記周囲フィルム（９）が、０．３８ｍｍの厚さを有する、請求項２～６のいずれか一項に記載の方法。
9. 積層前に、前記予備積層フィルム（８）が、周囲領域に、特に周囲フィルムに対して垂直に切り込みを具備しており、前記切り込みの深さが、前記第一の積層フィルム（４）及び前記キャリアフィルム（５）の厚さよりも大きい、請求項１～８のいずれか一項に記載の方法。
10. 積層前に、前記補償フィルム（７）を、前記第一の積層フィルム（４）、前記キャリアフィルム（５）、及び前記第二の積層フィルム（６）に接合して、前記予備積層フィルム（８）を形成する、請求項３～８のいずれか一項に記載の方法。
11. 前記予備積層フィルム（８）を、１００℃までの温度で製造する、請求項２～９のいずれか一項に記載の方法。
12. 前記予備積層フィルム（８）が、赤外線反射機能層、エレクトロクロミック機能層、又はエレクトロルミネセント機能層を有する、請求項２～９のいずれか一項に記載の方法。
13. 乗物ペイン、船舶ペイン、又は航空機ペインとしての、構造グレージング又は建築グレージングとしての、好ましくは、乗物ペインとしての、特に好ましくは、サイドウィンドウ、ウィンドシールド、ルーフパネル、又はリアウィンドウとしての、請求項１～１０のいずれか一項に記載の方法によって製造された積層ペイン（１）の使用。

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