JP6898254B2 - 缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、缶ボディ用アルミニウム合金板及びその製造方法に係り、特に、缶ボディの製造時に優れた特性を発揮し得るアルミニウム合金板と、その有効な製造方法に関するものである。
従来から、缶ボディ用アルミニウム(Al)合金板は、よく知られているように、Al合金鋳塊に均質化処理、熱間圧延及び冷間圧延を施して、製造されてきている。そして、この缶ボディ用Al合金板に対して、必要に応じて脱脂洗浄、塗油等が施された後、更にカップ成形、DI成形、トリミング、洗浄、乾燥、塗装、焼付け、ネッキング及びフランジ加工等の工程を経て、飲料用等の缶ボディが製造されているのである。
ところで、飲料用等の缶ボディは、使用に耐え得る缶体強度を有していることが必要とされているのであるが、上述した塗装後の焼付けの工程(以下、塗装焼付け工程という)において、缶体強度は大きく低下するようになるのである。このため、そのような缶体強度の低下防止に関して、各種の提案が為されてきており、例えば、以下の如き技術が明らかにされている。
すなわち、特開2012−92431号公報(特許文献1)には、特定の合金組成からなるボトル缶用Al合金冷間圧延板であって、板組織中のα相として代表される重心直径が1μm未満の分散粒子を少なくすると共に、Al6(Fe,Mn) 系金属間化合物であるβ相と、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物であるα相との存在割合を、かかるβ相のX線回折ピークの最大高さ:Hβ とα相のX線回折ピークの最大高さ:Hα との比:Hβ/Hαにおいて、0.50以上として、熱間圧延板の板幅方向の再結晶率を均一化することにより、板幅方向の耳率のばらつきを小さくし得ることが、明らかにされている。
また、特開2011−202273号公報(特許文献2)においては、特定の合金組成からなるボトル缶用Al合金冷間圧延板であって、板組織中のFeとMnとの固溶量を規制することによって、熱間圧延板における再結晶の核生成サイトとなる比較的大きな分散粒子の個数密度を増加せしめ、熱間圧延板での板幅方向の中央部側の、特に板厚中心部の再結晶を促進せしめ、熱間圧延板の板幅方向の再結晶率を均一化し、ひいては板幅方向の耳率のばらつきを小さくすることが、開示されている。
一方、近年、環境保護の観点から、飲料缶ボディの製造において、使用済み飲料缶(UBC:Used Beverage Can)の再生塊をリサイクル利用することが重要な課題となっている。更に、材料使用量を削減するために、缶体の薄肉軽量化も進められている。しかして、UBCの再生塊には、SiやFe等が混入することが多いために、UBCの再生塊をリサイクル使用すると、得られるAl合金鋳塊にSiやFeが高濃度に含まれるようになるのである。その場合、Al合金鋳塊の加熱処理時に、SiがMnやFeと金属間化合物を形成し、Mn固溶量の減少をもたらすこととなる。その結果、Al合金板の耐熱軟化性が低下して、塗装焼付け工程における缶体強度の低下が一層顕著となる問題を惹起する。また、塗装焼付け工程における強度低下を考慮して、Al合金板の初期強度を高くした場合においては、缶体の薄肉軽量化によって缶壁部の板厚が薄くなる程、DI成形時に胴切れを起こし易くなる問題がある。従って、UBCの再生塊をリサイクル利用して、飲料缶ボディを製造する場合において、その使用量を制限し、新地金を加えて、Siの含有量を調整する必要があった。
なお、特許文献1には、1μm未満の析出粒子(α相)の発生を抑制することが開示されており、また特許文献2には、FeとMnの固溶量のみを規定して、熱間圧延時の再結晶を促進せしめ、耳率のみを制御することが開示されているのであるが、そこでは、缶体強度と耳率を両立させるものではなく、しかもFe,Mn,Siの固溶量並びに冷間圧延中の微細な析出粒子(α相)に着目するものではなかったのである。
特開2012−92431号公報 特開2011−202273号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、缶ボディ用として優れた特性を有するAl合金板とその製造方法を提供することにあり、また、Al合金の冷間圧延板中のFe,Mn,Siの固溶量並びに冷間圧延中の微細な析出粒子(α相)を最適化することにより、缶体強度の低下、特に胴切れ等の問題に影響する熱処理後の缶体強度の低下を、効果的に抑制し得る缶ボディ用Al合金板及びその製造方法を提供することにある。
そして、本発明にあっては、上述の如き課題を解決するために、質量基準にて、Mn:0.7〜1.3%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金を材質とする熱間圧延板を用いて得られた冷間圧延板からなる板材であって、該熱間圧延板における、固溶Mn量が0.25質量%以上、固溶Fe量が0.02質量%以上及び固溶Si量が0.07質量%以上であり、且つ導電率が30.0〜40.0%IACSであり、該冷間圧延板における、圧延方向の引張強さ(TS)が280〜320MPaであり、205℃×10分の熱処理後の圧延方向の引張強さ(ABTS)が270〜310MPaであると共に、前記圧延方向の引張強さ(TS)と205℃×10分の熱処理後の圧延方向の耐力(ABYS)との差が50MPa以下であることを特徴とする缶ボディ用Al合金板を、その要旨とするものである。
また、本発明にあっては、質量基準にて、Mn:0.7〜1.3%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を材質とする熱間圧延板であって、0.25質量%以上の固溶Mn量と、0.02質量%以上の固溶Fe量と、0.07質量%以上の固溶Si量とを含有し、且つ30.0〜40.0%IACSの導電率を有していることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金熱間圧延板をも、その要旨とするものである。
さらに、本発明にあっては、質量基準にて、Mn:0.7〜1.3%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を材質とする板材であって、圧延方向の引張強さ(TS)が280〜320MPaであり、205℃×10分の熱処理後の圧延方向の引張強さ(ABTS)が270〜310MPaであると共に、前記圧延方向の引張強さ(TS)と205℃×10分の熱処理後の圧延方向の耐力(ABYS)との差が50MPa以下であることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金板をも、その要旨とするものである。
なお、かかる本発明に従う缶ボディ用Al合金板は、有利には、28.4%IACS〜39.8%IACSの導電率を有している。
そして、上記の如き本発明に従う缶ボディ用Al合金板を製造するために、(a)質量基準にて、Mn:0.7〜1.3%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を材質とするアルミニウム合金鋳塊を準備する工程と、(b)かかるアルミニウム合金鋳塊を用いて、熱間圧延を実施し、固溶Mn量が0.25質量%以上、固溶Fe量が0.02質量%以上及び固溶Si量が0.07質量%以上であり、且つ導電率が30.0〜40.0%IACSである熱間圧延板材を得る工程と、(c)該熱間圧延板材を冷間圧延して、圧延方向の引張強さ(TS)が280〜320MPaであり、205℃×10分の熱処理後の圧延方向の引張強さ(ABTS)が270〜310MPaであると共に、前記圧延方向の引張強さ(TS)と205℃×10分の熱処理後の圧延方向の耐力(ABYS)との差が50MPa以下である冷間圧延板材を形成する工程とを含む製造方法が、有利に採用されるのである。
また、本発明にあっては、上述の如き缶ボディ用Al合金板を有利に製造するために、質量基準にて、Mn:0.7〜1.3%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金を材質とするAl合金鋳塊を面削した後、30〜120℃/時間の昇温速度で550〜620℃の範囲内の均質化処理温度(T)まで加熱昇温せしめ、そして該均質化処理温度(T)において、(145−0.24T)時間以上の間、保持することにより、均質化処理を施し、次いでかかる均質化処理の終了後、直ちに、又は10〜90℃/時間の冷却速度で、500℃を下回ることのない熱間圧延開始温度まで冷却した後、出側温度:430〜550℃となるように熱間粗圧延を実施して、板厚:20〜40mmの板材を形成せしめ、続いて出側温度:300〜390℃となるように熱間仕上圧延を行って、板厚:1.5〜4.0mmの板材とした後、総加工度が75%以上且つ最終パスの定常部の平均圧延速度が700〜1600m/分となるように冷間圧延を行って、0.2〜1.0mmの板厚とすることを特徴とする缶ボディ用Al合金板の製造方法を、その要旨とするものである。
なお、かかる本発明に従う缶ボディ用Al合金板の製造方法の好ましい態様の一つにあっては、前記熱間仕上圧延にて得られる板材の導電率(S1)と前記冷間圧延にて得られる板材の導電率(S2)との差(S1−S2)が、0.2〜1.6%IACSであるように調整されることとなる。
また、本発明に従う缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法の好ましい他の態様にあっては、前記均質化処理の施されたAl合金鋳塊に対する走査型電子顕微鏡写真において、直径:0.1μm〜1μmの粒子の面積率が、3.5%以上となるように、構成されることとなる。
さらに、本発明にあっては、上記した缶ボディ用アルミニウム合金板からなることを特徴とする飲料缶ボディをも、その対象とするものである。
なお、そのような本発明に従う飲料缶ボディの好ましい態様の一つにおいては、所定の塗装焼付け処理が、上記した缶ボディ用アルミニウム合金板に対して施されている。
従って、このような本発明に従う構成とされた缶ボディ用Al合金板にあっては、それを与える、特定の合金組成からなるAl合金の熱間圧延板材中のFe,Mn,Siの固溶量、並びにかかる熱間圧延板材の冷間圧延中に析出する微細な析出粒子(α相)が最適化されていることにより、優れた成形性を確保しつつ、高い耐熱軟化特性が付与され、更に熱処理後においても、優れた缶体強度を発揮し得るものであって、これにより、缶ボディ用材料として有利に用いられ得ることとなったのである。
また、本発明に従う缶ボディ用Al合金板の製造方法によれば、上述の如き成形性と熱処理後の缶体強度の両立等の優れた特性を有する缶ボディ用Al合金板が、工業的に有利に製造され得るのである。
合金組成の異なる2つのAl合金材料に対して、150℃の温度で圧縮加工を施した際における導電率の変化量を示すグラフである。
先ず、本発明に従う缶ボディ用Al合金板を与えるAl合金は、Mn:0.7〜1.3%(質量基準、以下同じ)、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる合金組成を有するものであって、それら合金成分の限定理由は、以下の通りである。
[Mn:0.7〜1.3%]
Mn(マンガン)は、本発明に従うAl合金板において、基本となる合金元素であり、強度を増加させる他、特に、固溶状態で耐熱軟化性の向上に寄与する。また、製造工程中に、不可避的に含まれる不純物元素でもあるFe及びSiと、α相化合物(Al−Mn−Fe−Si系)を形成する。この金属間化合物の粒子は極めて高硬度であり、成形時の素材と成形型との焼付きを防止して、容器の表面性状を向上させる働きがある。このMnの含有量が0.7%未満であると、それらの効果が充分に発現され得ず、また1.3%を超えるようになると、強度が高くなり過ぎる問題を惹起する。なお、このMnの好ましい含有量は、0.8〜1.2%である。
[Mg:0.8〜1.5%]
Mg(マグネシウム)は、Alに固溶することで、容器の強度の増加に寄与する成分である。このMgの含有量が0.8%未満となると、最終製品に必要な強度を得ることが難しくなる問題があり、また1.5%を超えるようになると、缶体強度が高くなり過ぎるために、成形性が損なわれる問題を惹起する。なお、このMgの好ましい含有量は、1.0〜1.3%である。
[Fe:0.25〜0.6%]
Fe(鉄)は、鋳造時に、Mnと共に、Al6(Mn,Fe) 相化合物やα相化合物(Al−Mn−Fe−Si系)を形成し、またAl−Fe−Si系化合物を形成し、そしてそれら金属間化合物の固体潤滑作用により、成形時における素材と成形型との焼付きを防止する成分である。このFeの含有量が0.25%未満となると、それら金属間化合物の数が少なくなり、DI成形時にダイスに凝着して、表面性状が低下する問題を惹起する。一方、このFeの含有量が0.6%を超えるようになると、Al−Fe−Mn系の金属間化合物が過剰に形成されるようになり、それが割れの起点となるために、成形性が損なわれる問題を生じる。なお、このFeの好ましい含有量は、0.30〜0.50%である。
[Si:0.25〜0.50%]
Si(珪素)は、上記したMn及び/又はFeと共に、固体潤滑作用を有するα相化合物(Al−Mn−Fe−Si系)やAl−Fe−Si系化合物を形成して、成形時におけるダイスへの凝着を防止する効果を有する。この効果は、Siの含有量が0.25%未満では充分でなく、またSiの含有量が0.50%を超えるようになると、Al−Mn−Fe−Si系の金属間化合物が過剰に形成されて、それが割れの起点となって、成形性が損なわれ、更に固溶Mn量が減少して、耐熱軟化性が低下する問題を生じる。なお、このSiの好ましい含有量は、0.30〜0.40%である。
[Cu:0.10〜0.30%]
Cu(銅)は、塗装焼付け工程において、Al−Cu−Mg系の金属間化合物を形成して、析出せしめ、塗装焼付け工程における強度低下を抑制乃至は阻止する効果を発揮する。この効果は、Cuの含有量が0.10%未満では、充分に得られず、逆に0.30%を超えるようになると、成形加工時の加工硬化性が大きくなり、成形性が低下する問題を惹起する。なお、このCuの好ましい含有量は、0.15〜0.25%である。
[Zn:0.25%以下]
Zn(亜鉛)は、成形性を向上させる成分ではあるが、その含有量が多くなると、高コストとなることに加え、粗大な金属間化合物を形成して、成形性を損なう問題を惹起するようになる。従って、Znの含有量は、0.25%以下となるように、調整されることとなる。なお、このZnの好ましい含有量は、0.05〜0.20%である。
[Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下]
Ti(チタン)及びB(ホウ素)は、鋳造組織を微細化して、鋳造時に生成する晶出物の分散形態及び結晶粒組織を均一化する機能を有している。しかしながら、Tiの含有量が0.10%を超えたり、Bの含有量が0.05%を超えたりすると、粗大な金属間化合物が生成して、成形性が低下するようになる。なお、これらTi及びBの好ましい含有量は、それぞれ、0.03%以下及び0.04%以下である。
[Al+不可避的不純物:残部]
本発明に従う缶ボディ用Al合金板の材質であるAl合金は、上記した合金成分に加えて、残部が、Al(アルミニウム)と、不可避的不純物、即ち上記した合金成分以外の元素にて、構成されるものである。なお、そのような不可避的不純物は、板特性が悪化しないように、その含有量は少ない程好ましく、一般に、JIS規格等にて規定されているAl合金の各元素の上限値程度以下の含有量とされることとなる。そして、そのような不可避的不純物となる各元素の合計含有量は、一般に、0.15%以下、好ましくは0.10%以下である。
そして、かくの如き合金組成のAl合金を材質とする、本発明に従うAl合金板にあっては、熱間圧延後(冷間圧延前)の固溶Mn量が0.25質量%以上、固溶Fe量が0.02質量%以上、及び固溶Si量が0.07質量%以上であり、且つ導電率が30.0〜40.0%IACSとなるように構成され、これによって、高い耐熱軟化性を示すものとなる。それら元素の固溶量が多くなると、後述するように、冷間圧延によって、Mn,Fe,Siからなる化合物粒子が微細に形成されるようになるのである。また、それら元素の熱間圧延板における固溶量は、それぞれの元素のAl合金中の含有量によって制限を受け、それら元素の固溶量によって実現される最大の導電率は、40.0%IACSであり、更に、添加元素が最大限固溶した場合であっても、導電率は、30.0%IACS以上となる。なお、それら元素の固溶量が、上記で規定された下限値よりも少なくなると、塗装焼付け工程において、強度が著しく低下するようになる。
また、本発明に従うAl合金板は、元板特性として、その圧延方向の引張強さ(TS)が280〜320MPaである特性を有している。かかる引張強さ(TS)が280MPaよりも小さくなると、そのようなAl合金板を用いて製造される缶体の強度が不足する問題があり、また320MPaを超えるようになると、DI成形が困難となる問題が生じる。更に、本発明に従うAl合金板は、その205℃×10分の熱処理後の圧延方向の引張強さ(ABTS)が270〜310MPaである特性を有している。この熱処理後の圧延方向の引張強さ(ABTS)が270MPaよりも小さくなると、缶体強度が不足する問題があり、一方310MPaを超えるようになると、DI成形が困難となる問題を惹起する。加えて、本発明に従うAl合金板は、その圧延方向の引張強さ(TS)と205℃×10分の熱処理後の圧延方向の耐力(ABYS)の差(TS−ABYS)が50MPaを超えないように、調整されており、これによって、Al合金板の成形性と、そのようなAl合金板を用いて得られる缶体の熱処理後の缶体強度とを有利に両立せしめることが可能となったのである。
ところで、かくの如き本発明に従うAl合金板を製造するに際しては、先ず、前述の如きAl合金組成を与える材料を溶解し、Al合金溶湯とした後、公知の鋳造手法、例えばDC鋳造法によって、Al合金鋳塊が造塊される。なお、そのようなAl合金鋳塊は、本発明にて規定される、Mn,Mg,Fe,Si,Cu,Zn,Ti及びBの含有量からなる合金組成を有するものである。
次に、かかるAl合金鋳塊には、従来と同様な面削が施された後、本発明に従うAl合金板の特性を得るべく、特定の均質化処理が施されることとなる。即ち、そのような均質化処理は、面削の施されたAl合金鋳塊を、30〜120℃/時間の昇温速度において、550〜620℃の範囲内の均質化処理温度(T:℃)まで加熱昇温せしめ、そして、かかる均質化処理温度(T)において、(145−0.24T)時間(Hr)以上の間、保持することにより、実施されることとなるのである。なお、かかる昇温速度が30℃/時間よりも遅くなると、装置の占有時間が長くなり、製造コストが増加し、また120℃/時間よりも早くなると、微細な粒子が多量に形成されて、強度が高くなり過ぎ、成形性が悪化する問題がある。また、均質化処理温度(T)が550℃よりも低くなると、均質化処理の効果が充分に得られず、一方、620℃以上となると、材料が部分溶融して、成形性が著しく低下する問題を惹起する。この均質化処理は、Al合金鋳塊に存在する元素の偏析を解消して、均一な組織とする他、粗大なα相化合物を析出させて、成形時の焼付きを防止する働きを発揮させる特徴も有している。そして、この均質化処理の保持時間を(145−0.24T)時間以上とすることにより、その処理されたAl合金鋳塊の断面組織について、走査型電子顕微鏡を用いて倍率:100倍〜20000倍で観察した写真において、直径:0.1μm〜1μmの粒子の面積率が3.5%以上となり、これによって焼付き防止効果が得られ、且つ有効な耐熱軟化性を得るために必要なMn,Fe,Siの固溶量を確保することが出来る状態となる。なお、この均質化処理の保持時間の上限としては、生産性等の観点から、一般に、30時間以下、好ましくは20時間以下が有利に採用されることとなる。
そして、上記した均質化処理の終了後、Al合金鋳塊は、そのまま(直ちに)、熱間圧延に供される他、10〜90℃/時間の冷却速度で、500℃を下回ることのない(500℃以上の)熱間圧延開始温度まで冷却された後、熱間圧延を施すようにすることも可能である。なお、Al合金鋳塊に対して冷却が施される場合において、その冷却速度が10℃/時間よりも小さい(遅い)場合、或いは500℃よりも低い温度まで冷却した場合には、その冷却工程中において、Mn,Fe,Siが析出して、それら元素の固溶量が低下するようになり、これによって、後の冷間圧延時のMn,Fe,Siからなる微細粒子の析出が不十分となって、耐熱軟化性が低下する問題を生じる。また、かかる冷却速度が90℃/時間よりも大きい(速い)場合においては、Al合金鋳塊内の温度分布が不均一となり、最終製品の特性が不安定となる問題がある。
本発明において、Al合金鋳塊に対する熱間圧延は、従来と同様に熱間粗圧延と熱間仕上圧延とを組み合わせて実施され、熱間仕上圧延終了後の板厚が1.5〜4.0mmとなる板材を形成することとなるが、そこにおいて、熱間粗圧延は、上記した均質化処理されたままのAl合金鋳塊又は所定の温度まで冷却されたAl合金鋳塊に対して、出側温度(熱間粗圧延終了時の材料温度)が430〜550℃となるように実施されて、板厚が20〜40mmの板材が形成されることとなる。そこで、かかる出側温度が430℃よりも低くなると、熱間粗圧延に続く熱間仕上圧延の出側温度が低めに外れる問題が生じ、また出側温度が550℃を超えるようになると、熱間圧延中に粗大な再結晶粒が生じて、成形性を損なう恐れがある。また、この熱間粗圧延にて得られる板材の厚さが20mmより薄くなると、続く熱間仕上圧延での加工度が不足し、熱間仕上圧延後に有効な再結晶組織を得ることが出来なくなる恐れがあり、一方、その厚さが40mmを超えるようになると、熱間仕上圧延での加工度が大きくなり過ぎて、DI成形時の異方性が強くなる問題が惹起されるようになる。
さらに、かかる熱間粗圧延に続く熱間仕上圧延においては、出側温度(熱間仕上圧延終了時の材料温度)が300〜390℃となるようにして、公知の圧延操作が実施され、板厚が1.5〜4.0mmの板材が形成されることとなる。この熱間仕上圧延では、得られた板材のコイル巻取り後の冷却中に再結晶組織に調整することが重要である。かかる熱間仕上圧延の出側温度が300℃よりも低くなると、再結晶組織の形成が不充分となり、異方性が強くなったり、製品の強度が高くなり過ぎる問題が惹起される。なお、この出側温度が390℃を超えるようになると、再結晶粒が粗大となり、DI成形性を損なう恐れがある。また、板厚が1.5mmよりも薄くなると、その後の冷間圧延工程での加工度が不足して、強度が低くなり、逆に4.0mmより厚くなり過ぎると、冷間圧延工程での加工度が高くなり、強度が高くなり過ぎる問題を生じる。そして、この熱間仕上圧延によって、前記固溶Mn,Fe,Si量が確保され得るようになっている。
そして、上述の如くして得られた熱間圧延板には、更に冷間圧延が施されることとなるが、本発明にあっては、かかる冷間圧延の総加工度が75%以上で且つ最終パスの定常部の平均圧延速度が700〜1600m/分となるように、冷間圧延を実施して、0.2〜1.0mmの板厚のAl合金板が形成されるのである。なお、その冷間圧延は、従来と同様な手法に従って実施されるものであるが、その際、冷間圧延の総加工度が75%よりも低くなると、或いは定常部の平均圧延速度が1600m/分よりも大きくなると、Mn系化合物粒子の析出が充分でなく、耐熱軟化性が低下する恐れがある。また、かかる定常部の平均圧延速度が700m/分よりも小さい場合には、生産性が著しく低下する問題がある。更に、そこで得られるAl合金板の板厚が0.2mmよりも薄くなると、缶体強度を確保することが困難となる問題があり、一方、板厚が1.0mmよりも厚くなると、重量が重くなり、飲料缶として不適となる。
さらに、本発明にあっては、前記した熱間仕上圧延にて得られる板材(熱間圧延板)の導電率(S1)と上記の冷間圧延にて得られる板材(冷間圧延板)の導電率(S2)との差(S1−S2)が、0.2〜1.6%IACSとなるように、換言すれば冷間圧延板の導電率が28.4%IACS〜39.8%IACSの範囲内となるように、目的とするAl合金板を製造することが好ましい。固溶Mnが十分に存在すると、Mn,Fe,Siからなる化合物粒子が、冷間加工により誘起されて微細に析出し、耐熱軟化性が向上せしめられ得ることとなるのである。因みに、図1には、Mnの含有量の異なるAl合金からなる二つの試験片について、それぞれ冷間圧延を模擬した150℃での圧縮試験前後の導電率の差を調べた結果が示されているが、そこでは、Mnを含むAl合金からなる試験片では、冷間加工で導電率が増加しているのに対して、Mnを添加していないAl合金からなる試験片では、冷間加工による導電率の変化は殆ど認められないのであって、このことは、冷間加工によりMn系化合物粒子が析出していることを裏付けるものである。そして、基本的に、冷間圧延では、加工歪により導電率が下がるものの、Mn系の化合物粒子の析出により、導電率は増加するようになるところから、全体として、導電率の低下量は0.2〜1.6%IACSの範囲内となるのである。なお、そのような導電率の低下量が0.2%IACSよりも小さくなると、冷間加工度が不足して、強度不足の問題を惹起し、一方、1.6%IACSよりも大きくなると、冷間圧延にて誘起されるMn,Fe,Si系の析出粒子が不足し、耐熱軟化性の改善が充分でない問題を惹起することとなる。
そして、かくの如くして得られた本発明に従うAl合金板は、従来と同様にして、必要な加工が施されて、目的とする缶ボディが形成され、Al系飲料缶等として有利に用いられることとなる。例えば、本発明に従うAl合金板には、必要に応じて脱脂洗浄や塗油等が施され、更に、カップ成形、DI成形、トリミング、洗浄、乾燥、塗装、焼付け、ネッキング及びフランジ加工の工程を経て、飲料缶ボディ(缶胴体)とされ、これに缶蓋(缶エンド)を取り付けることにより、目的とするAl系飲料缶が有利に製造されることとなるのである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
なお、以下の実施例及び比較例において、得られたAl合金板(元板:冷間圧延板)又はその中間製品である熱間圧延板から作製された試験材については、以下の手法に従って、測定乃至は評価した。
(1)元板の圧延方向の引張強さ(TS)
実施例及び比較例において得られた、それぞれのAl合金板(元板)から、その圧延方向において、JIS 5号試験材を作製し、JIS−Z−2241に従って引張試験を実施することにより、圧延方向の引張強さ(TS)を測定した。
(2)205℃×10分間の熱処理後の圧延方向における引張強さ(ABTS)と耐力(ABYS)
それぞれのAl合金板(元板)からなる試験材に対して、塗装焼付け工程相当の熱処理(205℃×10分間)を施した後、上記(1)と同様にして引張試験を実施し、かかる熱処理後の試験材における圧延方向での引張強さ(ABTS)と耐力(ABYS)を、それぞれ測定した。
(3)Si、Fe及びMn固溶量の測定(フェノール溶解法)
実施例及び比較例においてそれぞれ得られた熱間仕上圧延後の熱間圧延板から切り出した小片サンプルを、170℃のフェノールに浸漬することにより、Al合金中のマトリックス成分を溶解せしめた後、ベンジルアルコールを添加して、その溶液を液体状態に保ちつつ、0.1μmの孔径を有するフィルターを用いてろ過を行う。そして、そのフィルター上に捕捉された析出物を、塩酸・フッ酸混合液にて溶解し、その得られた溶解液を希釈した液を用いて、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析を行うことにより、析出Mn,Fe,Si量を求めた。また、固溶Mn,Fe,Si量は、鋳塊中の含有量から、上記析出量を差し引くことにより、求めた。
(4)導電率
熱間仕上圧延後の板材(熱間圧延板)及び冷間圧延後の板材(元板:冷間圧延板)に対して、それぞれ、導電率測定器(フェルスター社製SIGMATEST2.069)を用いて、周波数:960kHzにおいて測定し、n=3の平均値を求めた。なお、試験材の板厚が1mm未満の場合には、総厚が1mm以上となるように試験材(板)を重ね合わせて、測定に供した。
(5)製缶性評価
実施例及び比較例で得られた各種Al合金板(元板)について、それぞれ、通常の製缶手法に従って、しごき率66%にて、カップ成形及びDI成形を行い、更にトリミングの後、従来と同様な塗装焼付けを実施して、製缶の可否を確認した。また、かかる製缶操作における缶壁の焼付き状況についても、目視評価した。
−実施例1−
先ず、下記表1に示される合金成分組成を有する各種のAl合金:A1〜A10を、常法に従って溶製した後、半連続鋳造法により、それぞれ、Al合金鋳塊を造塊した。次いで、この得られたAl合金鋳塊に対して、従来と同様に面削を施した後、空気炉を用いて、40℃/時間の昇温速度にて、600℃の温度まで加熱、昇温せしめ、引き続き600℃の温度で10時間の均質化処理を施した。なお、本発明で規定される(145−0.24T)時間以上の値は、1時間以上となり、上記の10時間の均質化処理は、その条件を充分に満たしている。
次いで、かかる均質化処理の後、そのまま(直ちに)、熱間圧延に供し、先ず、出側温度が460〜510℃の範囲となるように、板厚が28mmとなるまで、リバース式圧延機を用いて、従来と同様な熱間粗圧延を実施し、次いで、出側温度が300〜330℃の温度となるように、板厚が2.2mmとなるまで、熱間仕上圧延を、4スタンドのタンデム式圧延機を用いて、従来と同様な手法によって実施した。最後に、3パスの冷間圧延を行い、0.28mmの板厚のAl合金板を製造した。この冷間圧延工程における総加工度は、87.3%であった。また、このとき、最終パスの平均圧延速度は900〜1100m/分の範囲とした。なお、冷間圧延における最終パスの出側温度は、145〜155℃であった。
上記の各工程で得られたA1〜A10のAl合金からなる各種の板材のそれぞれについて、試験材(A1〜A10)を作製し、上記した評価法に従って、それぞれの性能評価を行い、その結果を、下記表2に示した。なお、下記表2においては、熱間圧延板の導電率(S1)と冷間圧延板の導電率(S2)との差(S1−S2)が、冷間圧延における導電率低下量として示されている。
Figure 0006898254
Figure 0006898254
かかる表1及び表2の結果より明らかなように、A1〜A10のAl合金からなる板材は、何れも、塗装焼付け工程を通過していない状態での圧延方向の引張強さ(TS)が高過ぎず、それらの製缶性は良好であった。また、それらA1〜A10のAl合金板(試験材)は、熱処理した後の圧延方向での引張強さ(ABTS)が高く、耐熱軟化性においても、優れていることを認めた。
−比較例1−
下記表3に示される各種の合金成分組成において、上記実施例1と同様な条件下において、B1〜B13の各種Al合金からなる板材を製造した。そして、それらAl合金板材の製造工程において得られた試験材(B1〜B13)について、その特性を、上記と同様にして評価し、その結果を、下記表4に示した。
Figure 0006898254
Figure 0006898254
かかる表3及び表4の結果より明らかなように、B1試験材は、Mnの添加量が不足したため、固溶Mn量が規定範囲より少なくなり、冷間圧延時の析出が不足して導電率が大きく低下した。その結果として、塗装焼付け処理時の強度低下量が大きく、缶体強度が不足した。また、B2試験材にあっては、Mnの添加量が過多であり、元板の強度が高くなり過ぎたために、製缶時に破断する問題を惹起した。更に、B3試験材は、Mgの添加量が不足したため、元板、塗装焼付け後の強度が不足した。B4試験材においては、Mgの添加量が過多であるところから、元板の強度が高くなり過ぎ、そのために、製缶時に破断する問題が惹起された。B5試験材では、Feの添加量が不足したため、粗大な金属間化合物が不足し、製缶後に表面荒れが惹起された。また、固溶Fe量が不足し、冷間圧延時の析出が不足したため、塗装焼付け時に大きく強度が低下した。
そして、B6試験材にあっては、Feの添加量が過多であるため、粗大な金属間化合物が形成されて、製缶時に破断する問題を惹起した。またB7試験材は、Siの添加量が不足し、冷間圧延時の析出が不足したため、塗装焼付け時の強度低下が大きく、缶体強度が不足した。B8試験材は、Siの添加量が過多であり、粗大な金属間化合物が過剰に形成されて、製缶時に破断する問題を惹起した。また、B9試験材は、Cuの添加量が不足しており、そのために塗装焼付け処理時の析出強化が不足することとなったため、塗装焼付けによる強度低下が大きく、缶体強度が不足した。更に、B10の試験材にあっては、Cuの添加量が過多であるために、元板強度が高くなり過ぎ、製缶時に破断する問題を惹起した。加えて、B11、B12及びB13の試験材にあっては、それぞれ、Zn,Ti,Bの添加量が過多であって、そのために粗大な金属間化合物粒子が過剰に形成されて、製缶時に破断する問題が惹起された。
−実施例2−
実施例1におけるA9試験材を与える合金成分組成(Al合金:A9)を採用して、下記表5に示される各種製造条件下において、C1〜C13の各種Al合金板材を、それぞれ製造した。なお、かかる表5に示されていない基本的な製造条件は、実施例1と同様とした。そして、その製造工程において得られたC1〜C13の各種のAl合金板材を用いて、それぞれ試験材(C1〜C13)を作製し、上記の実施例と同様の評価を行って、その結果を、下記表6に示した。
Figure 0006898254
Figure 0006898254
かかる表5及び表6の結果から明らかなように、C1〜C13のAl合金板材(試験材)は、それぞれ、塗装焼付けが施されていない状態下における圧延方向の引張強さ(TS)が高過ぎず、適切な値とされているところから、何れも、製缶性が良好となるものであった。
−比較例2−
実施例1におけるAl合金:A9の合金成分組成を採用して、下記表7に示される各種製造条件下において、D1〜D9の各種Al合金板材を製造した。なお、かかる表7に記載のない製造条件は、実施例1の場合と同様とした。そして、それらD1〜D9のAl合金板材(冷間圧延板)からなる試験材(D1〜D9)について、その板材特性を評価し、その結果を、下記表8に示した。
Figure 0006898254
Figure 0006898254
かかる表7及び表8の結果より明らかなように、D1試験材は、均質化処理に際しての昇温速度が速いために、昇温中に、微細なMn,Fe,Si系粒子が形成されて、強度が増加し、製缶時において破断する問題を惹起した。また、D2試験材にあっては、均質化処理における保持温度が低いために、均質化効果が充分でなく、組織が不均一となって、製缶時に破断する問題があり、一方、均質化処理における保持温度が高過ぎるD3試験材にあっては、共晶融解を起した組織となり、組織が不均一となって、製缶時に破断する問題が惹起された。更に、D4試験材にあっては、均質化処理における保持時間が(145−0.24T)よりも短い時間であったために、個体潤滑効果を示す円相当径で、0.1〜1.0μmのMn,Fe,Si系化合物粒子の形成が不充分となり、製缶後の表面に焼き付きが生じた。
また、D5試験材にあっては、熱間圧延(熱延)開始温度までの冷却速度が小さいために、冷却中において析出が進み、Mn,Fe,Siの固溶量が減少して、冷延(冷間圧延)時においてMn,Fe,Si系微細粒子の析出が不充分となって、耐熱軟化性が低下したものとなり、一方、熱延開始温度までの冷却速度が大きいD6試験材にあっては、鋳塊内部の温度が不均一となって、材料組織にバラツキが生じ、製缶時に破断する問題を惹起した。加えて、D7試験材においては、熱延開始温度が低いために、熱延開始温度まで冷却する過程で析出が進んで、Mn,Fe,Siの固溶量が減少し、冷延時のMn,Fe,Si系微細粒子の析出が不十分となって、耐熱軟化性が低下し、その結果、塗装焼付け後の缶体強度が不足した。
さらに、D8の試験材にあっては、冷間圧延における総加工度が不足しているため、強度が不足する問題を内在するものであった。加えて、D9試験材においては、冷間圧延工程における最終パスの圧延速度が速いために、冷間圧延中において、Mn,Fe,Si系微細粒子の析出が不十分となり、耐熱軟化性が低下する問題を惹起するものであった。

Claims (5)

  1. 質量基準にて、Mn:0.7〜1.3%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を材質とする熱間圧延板であって、0.25質量%以上の固溶Mn量と、0.02質量%以上の固溶Fe量と、0.07質量%以上の固溶Si量とを含有し、且つ30.0〜40.0%IACSの導電率を有していることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金熱間圧延板。
  2. 質量基準にて、Mn:0.7〜1.3%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.25〜0.6%、Si:0.25〜0.50%、Cu:0.10〜0.30%、Zn:0.25%以下、Ti:0.10%以下及びB:0.05%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金を材質とするAl合金鋳塊を面削した後、30〜120℃/時間の昇温速度で550〜620℃の範囲内の均質化処理温度(T)まで加熱昇温せしめ、そして該均質化処理温度(T)において、(145−0.24T)時間以上の間、保持することにより、均質化処理を施し、次いでかかる均質化処理の終了後、直ちに、又は10〜90℃/時間の冷却速度で、500℃を下回ることのない熱間圧延開始温度まで冷却した後、出側温度:430〜550℃となるように熱間粗圧延を実施して、板厚:20〜40mmの板材を形成せしめ、続いて出側温度:300〜390℃となるように熱間仕上圧延を行って、板厚:1.5〜4.0mmの板材とした後、総加工度が75%以上且つ最終パスの定常部の平均圧延速度が700〜1600m/分となるように冷間圧延を行って、0.2〜1.0mmの板厚とすることにより、圧延方向の引張強さ(TS)が280〜320MPaであり、205℃×10分の熱処理後の圧延方向の引張強さ(ABTS)が270〜310MPaであると共に、前記圧延方向の引張強さ(TS)と205℃×10分の熱処理後の圧延方向の耐力(ABYS)との差が50MPa以下であるアルミニウム合金板材を得ることを特徴とする缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
  3. 前記アルミニウム合金板材の導電率が、28.4%IACS〜39.8%IACSである請求項に記載の缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法
  4. 前記熱間仕上圧延にて得られる板材の導電率(S1)と前記冷間圧延にて得られる板材の導電率(S2)との差(S1−S2)が、0.2〜1.6%IACSであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. 前記均質化処理の施されたAl合金鋳塊に対する走査型電子顕微鏡写真において、直径:0.1μm〜1μmの粒子の面積率が、3.5%以上である請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の缶ボディ用アルミニウム合金板の製造方法。
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