JP2006283112A - 飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ボトムしわ性に優れかつ高い缶胴強度が得られ、高い生産精度及び生産性で生産できる表面品質の優れた飲料缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の飲料用アルミニウム合金板はMg:0.8〜1.5%(重量%,以下同じ)、Mn:0.7〜1.5%、Fe:0.35〜0.5%、Si:0.1〜0.5%、Cu:0.1〜0.3%と、Ti、B、残部がAlと不可避的不純物からなり、加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値を0.1以上として加工硬化指数(n値)を厳密な指標として規定して加工硬化性を一定以上に保持して高精度な生産を可能とし、導電率を30.0〜39.0%IACSとして溶質元素のAlマトリックスへの固溶程度を調整すると共に素板の引張強度を320MPa以下として成形中に材料の変形抵抗が過大になることを防止した。
【選択図】図2

Description

本発明は炭酸飲料用、ビール用および清涼飲料等の各種飲料缶の缶胴材として使用される飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法に関するものである。
アルミニウム合金からなる飲料缶の缶胴体としては、アルミニウム合金板に塗油を施し、カッピング、DI成形(Draw−Ironing : 絞り−しごき)を施して缶胴とし、トリミング、洗浄、乾燥、外面および内面塗装・焼付け、ネッキングおよびフランジ加工を行い、これに飲料を充填して缶蓋の巻き締めを行った2ピース缶が多く用いられている。
前記アルミニウム合金板は、アルミニウム合金鋳塊に均質化処理を施した後に熱間圧延を行い、その後必要に応じて焼鈍処理を施し、次いで冷間圧延を行うことで製造される。通常はこれに加えて焼鈍、脱脂、洗浄、潤滑油塗布等の仕上処理が施される。
近年、飲料缶のコストダウンの必要性から、缶胴の薄肉化(ゲージダウン)ならびに缶蓋の小径化が進んでいる。缶胴体の薄肉化は絞り加工時に成形力を弱めるため、缶底チャイム部への材料流入量が増加し座屈やくびれを生じ易くさせ、缶底(ボトム)しわと呼ばれる外観の形状不良を発生させる。また、缶蓋の小径化は缶同士を積み重ねた時のスタッキング性を確保するため、これに対応した缶底接地径の小径化が必要になるが、この缶底接地径の小径化は缶底チャイム部に座屈現象を生じ易くさせるため、ボトムしわ発生を促進する。
図3を参照して以上のボトムしわ発生のメカニズムを説明する。
飲料缶缶胴体1の薄肉化によって缶側壁2から缶底チャイム部3への材料流入量が増加して座屈やくびれを生じ易くさせ、缶底チャイム部3に缶底(ボトム)しわ3a、3a・・・を発生させる。また、缶蓋(図示せず)の小径化によって缶底接地部4の径である缶底接地径の小径化が必要になり、この缶底接地径の小径化によっても缶底チャイム部3座屈現象が生じ易くなり、これによってもボトムしわ3a、3a・・・の発生が促進される。
以上の問題を解決し、缶胴の薄肉化ならびに缶蓋の小径化に対応し得るボトムしわ性に優れた缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法として、特許文献1にはMg,Mn,Fe,Si,CuおよびTiの含有量を規定するとともに、引張強さと伸び率を規制し、さらに均質化処理、熱間圧延、次いで冷間圧延の出側温度を制御した3パスからなる冷間圧延を行う改善方法が提案され
ている。
さらに、特許文献2ではCu,Mg,Mn,FeおよびSiの含有量を規定し、伸び率、加工硬化指数および耐力といった缶底成形に影響する機械的特性を規制し、均質化処理および熱間圧延を順次に施し、次いで冷間圧延の出側温度および冷却速度を制御した改善方法が提案されている。
特開2001−262261号公報 特開2004−300537号公報
ボトムしわ性はアルミニウム合金板の素板強度を下げて素板の伸び率を向上させることで改善されることが明らかになっており、この伸び率を向上させるためには、冷間圧延後に焼鈍処理を施すことが有効である。
しかし、冷間圧延後に焼鈍処理を施すことは生産性の低下からコストアップになるとともに缶胴強度が低下する問題があった。さらに、今後さらなる缶胴の薄肉化と缶蓋の小径化に対応するためには、高い缶胴強度を有しかつボトムしわ性に優れた材料が必要不可欠であった。
この様な要請に基づき特許文献1に記載の缶底成形性に優れた缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法では、出側温度を制御した3パスからなる冷間圧延を行うことが提案された。しかし、このアルミニウム合金板およびその製造方法は、きわめて有効な手段ではあっても高い缶胴強度を有しかつボトムしわ性に優れた材料を得るために直接必要な条件を明らかにするものではなく、高精度かつ高効率な生産性の実現という点で更なる検討が必要であった。
一方、特許文献2では伸び率が5.5%以上、加工硬化指数が0.06以上、かつ、耐力が290N/mm以下である旨ただ漫然と規定されるのみであって、缶胴用アルミニウム合金板に求められる品質を実現する確実な手段としての検討は未だ不十分であって、高い缶胴強度を有しかつボトムしわ性に優れた材料を高精度かつ高効率で生産することを可能として、今後のさらなる缶胴の薄肉化と缶蓋の小径化に対応することを可能とするという要請には実質的に応え得るものではない。
また以上何れの場合についても連続焼鈍を行うことによりアルミニウム合金板表面の酸化皮膜が厚くなり、DI成形時に黒筋が発生するという表面品質の低下に関する問題は未解決であった。
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、ボトムしわ性に優れかつ高い缶胴強度 が得られ、缶胴の更なる薄肉化が可能であって、高い生産精度及び生産性で生産できる表面品質の優れた飲料缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明者らは鋭意研究を行った結果、ボトムしわ性に優れかつ高い缶胴強度を実現するため、特定歪領域での最大n値及び導電率を規定して高強度を維持することで有効に加工硬化性を規定することが可能であることを見いだし本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板に想到した。さらに、本発明合金に示す所定量を含有したアルミニウム合金に対して冷間圧延パスの出側温度および合計圧延率の冷間圧延プロセスを最適制御することに加えて、熱間圧延後の連続焼鈍の諸条件(熱処理温度、熱処理時間、冷却速度)を規制することで、本発明のアルミニウム合金板を構成するための加工硬化性ならびに導電率が適切に設定され得ることを見いだし、本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法に想到した。加えて本発明合金に示す所定量を含有したアルミニウム合金で熱間圧延後の連続焼鈍の雰囲気の露点(水蒸気圧)を規定することにより、板表面の酸化皮膜の厚さをコントロールし、表面品質の低下の問題を解決し得ることを見出し、そのために特定のアルミニウム合金板につき素材特性ならびに製造条件に関する最適値を検討し本発明に至った。
本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板はMn:0.7〜1.5%(質量%,以下同じ)、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.35〜0.5%、Si:0.1〜0.5%、Cu:0.1〜0.3%と、Ti:0.1%以下、B:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であり、材料特性として均一塑性ひずみ領域全域における歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値が0.1以上で、導電率が30.0〜39.0%IACSであり、素板の圧延方向における引張強度が320MPa以下とされ、塗装焼付後の強度が圧延方向の耐力で250MPa以上であることを特徴とする。
以上の本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板に施される塗装焼き付けは180〜220℃で5〜30分間保持し、または最高到達温度210〜260℃で2分以内保持して行われる塗装焼付とすることができる。
また、板表面の酸化皮膜の厚さを20nm以下に規定することが有効である。
本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法は、Mn:0.7〜1.5%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.35〜0.5%、Si:0.1〜0.5%、Cu:0.1〜0.3%と、Ti:0.1%以下、B:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を製造し、このアルミニウム合金鋳塊を面削した後、均質化処理を行い、次いで熱間圧延を施して1.5〜2.5mmの板厚とし、さらにこの合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して300秒以下の時間保持し、材料特性として均一塑性ひずみ領域全域における歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値が0.1以上で、導電率が30.0〜39.0%IACSであり、素板の圧延方向における引張強度が320MPa以下とされ、塗装焼付後の強度が圧延方向の耐力で250MPa以上であることを特徴とする。
以上の本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法によって製造される本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板に施される塗装焼き付けは180〜220℃で5〜30分間保持し、または最高到達温度210〜260℃で2分以内保持して行われる塗装焼付とすることができる。
以上の本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法では合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して300秒以下の時間保持した後、800℃/秒以下の冷却速度で冷却を施す工程を行うことが有効である。
また以上の本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法では合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して300秒以下の時間保持した後、冷間圧延を70%以上の合計圧延率で最終パスの出側温度を130℃以上、それ以外の圧延パスの出側温度を130℃以下とする温度条件で施すことで材料組織の回復処理を行う様にすることができる。
また以上の本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法では均質化処理を550〜620℃の温度範囲で行い、合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して焼鈍炉内の雰囲気ガスの露点が10℃以下である雰囲気中で300秒以下の時間保持し、板表面の酸化皮膜の厚さを20nm以下に管理することができる。
[作用]
本発明者らがボトムしわ発生要因について詳細に検討したところ、絞り加工時にブランクホ ルダーとリドローダイス肩部での曲げ・曲げ戻し変形の抵抗力が小さいことで成形力が低下し、缶底(ボトム)部での軸方向の引張応力が減少して円周方向の圧縮歪が大きくなることでボトムしわが発生する。
したがって、本発明によれば加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値を0.1以上として加工硬化指数(n値)を厳密な指標として規定し、これにより缶成形加工中の加工硬化性を一定以上に保持して高精度な生産を可能とし、さらに導電率を30.0〜39.0%IACSとして溶質元素のAlマトリックスへの固溶程度を調整すると共に素板の引張強度を320MPa以下として成形中に材料の変形抵抗が過大になることを防止してしごき加工時の割れの発生を防止し、加えて塗装焼付後の耐力を250MPa以上とすることによってアルミニウム飲料缶として中身が充填された際の内圧変化に耐える強度を保証することを可能とした。
以上述べたように、本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板は、歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値が0.1以上、導電率が30.0〜39.0%IACSで、素板の圧延方向における引張強度が320MPa以下とされ、空焼き後の耐力が250MPa以上あるため、高強度かつ優れたボトムしわ性を実現し得る。本発明のアルミニウム合金板は均質化処理条件、熱間圧延後の板厚、連続焼鈍条件、冷間圧延の合計圧延率および各パスでの冷間圧延パスの出側温度を規制することで製造可能となる。これによって、アルミニウム缶胴の薄肉化および缶蓋の小径化に対応可能なボトムしわ性に優れかつ高い缶胴強度を有するアルミニウム缶胴材を製造することができ、工業上顕著な効果が得られる。
以下に本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板に関して、合金組成の限定理由を示す。
[Mnの成分範囲:0.7〜1.5%]
Mnは缶胴材の強度向上に寄与するともにDI成形性向上に有効な元素であり、成分範囲をMn:0.7〜1.5%とする。この範囲内で含有させることにより、固体潤滑作用を有する晶出物(Al−Mn系,Al−Mn−Fe系,Al−Mn−Fe−Si系)が十分に形成されるため、潤滑不足により成形金型にアルミニウムが凝着するビルドアップが原因となって発生するゴーリングまたはスコアリングと呼ばれる擦り傷や焼付き不具合の発生を抑制することができる。0.7%未満ではその効果は十分に得られず、逆に1.5%以上含有されると、溶解鋳造時Al−Mn−Fe系の巨大な初晶化合物が生じるため、DI加工時に割れやピンホール等を誘発させ、成形性が損なわれる。
[Mgの成分範囲:0.8〜1.5%]
MgはMnと同様に缶胴体の強度向上に寄与する元素で、ボトム部の高強度化ならびに加工硬化性の向上に有効である。その成分範囲を0.8〜1.5%に設定する。0.8%未満では必要とされる強度を十分に得ることは難しく、さらに成形加工時に十分な加工硬化が起こらないため、ボトムしわは発生し易くなる。また、1.5%を超えて含有されると強度が高くなり過ぎるため、DI成形時に缶胴切れと割れの発生頻度が増加して成形性が損なわれる。望ましい含有量は1.0〜1.4wt%である。
[Feの成分範囲:0.35〜0.5%]
FeはMnやMgと同様に缶胴体の強度向上に寄与する元素であるとともに、前記したMnを含む固体潤滑作用を持つ硬質なAl−Mn−Fe(−Si)系の金属間化合物の生成を促進するとともに、その分布状態を均一化させて成形性を向上させる。成分範囲は0.35〜0.5%とする。0.35%未満では十分な強度を付与することが困難であり、さらにはダイスへの凝着を防止するのに必要な金属間化合物が十分に形成されない。0.5%を超えると強度が高くなり過ぎるため、成形性が低下する。
[Cuの成分範囲:0.1〜0.3%]
Cuはそれ自体の固溶により缶胴体の強度向上に寄与する元素であるとともに、製缶時の塗装焼付処理において、Al−Cu−Mg系析出物の析出硬化によって強度向上に寄与する元素である。これにより缶胴強度、特にボトム部の強度向上が得られる。成分範囲は0.1〜0.3%とする。0.1%未満では十分な材料強度は得られず、0.3%を超えて含有されると強度が高くなり過ぎるため、DI成形時に缶胴切れと割れの発生頻度が増加して成形性が損なわれる。
[Siの成分範囲:0.1〜0.5%]
Siは均質化処理において、Al−Mn−Fe系の金属間化合物に相変態を起こさせ、より硬度の高いAl−Mn−Fe−Si系の金属間化合物の形成に寄与する。これによって、前記したダイスクリーニング効果が十分に得られるため、成形時のダイス金型への焼付き不具合が防止されるとともに、成形性の向上に寄与する。成分範囲は0.1〜0.5%とする。0.1%未満では前記の金属間化合物が十分形成されず、焼付き不具合が発生し易くなる。0.5%を超えると、金属間化合物が巨大化して成形性が低下する。
[不可避的不純物]
飲料缶胴用アルミニウム合金板では、結晶粒微細化のためTiおよびBを微量添加することが多い。そのTiの含有量は0.1%以下に制限され、好ましくは0.005%以上、0.05%以下とする。Tiの含有量が0.005%未満だと結晶粒微細化効果が十分に得られず、0.05%を超えるとAl−Ti系の巨大な金属間化合物が生成される傾向が生じ、0.1%を超えるとAl−Ti系の巨大な金属間化合物が生じる傾向が増大し、成形加工中に割れやピンホールを発生させて成形性は低下する。
Bは結晶粒微細化を助長させる効果を有する。そのBの含有量は0.1%以下に制限され、好ましくは0.001%以上、0.01%以下とする。0.001%未満であればその効果は十分に得られず、0.01%を超えるとTi−B系の巨大な金属間化合物が生成される傾向が生じ、0.1%を超えるとTi−B系の巨大な金属間化合物が形成される傾向が増大し、成形加工時に割れやピンホールが発生し易くなる。その他の不可避的不純物として、Znは0.3%以下、Crは0.3%以下、Zrは0.1%以下、Vは0.1%以下であれば、本発明の効果を損なわない程度で許容できる。
次に本発明のアルミニウム合金板の製造方法について説明する。まず、本発明の合金組成のアルミニウム合金を水冷式連続鋳造法によりスラブ(板状鋳塊)に鋳造する。本発明では、均質化処理の温度および時間について特に規制するものではないが、均質化処理が不十分である場合、溶質の分布の偏析が十分解消されず、成形性が低下する。この点、本発明では均質化効果と生産性を考慮して均質化処理を550〜620℃の温度範囲で行うのが好ましい。均質化処理時間については、1h以上保持しないとその効果は十分でなく、ある程度の時間保持が必要である。均質化効果と生産性を考慮して3〜12時間が望ましく、5〜10時間が適切である。均質化処理が550℃以下あるいは1時間未満では十分な均質化効果は得られず、620℃を超えると鋳造表面に膨れが生じ、さらには共晶部分が融解する。
均質化処理後に熱間圧延を施す。その際、均質化処理後に再加熱することなくそのまま熱間圧延を施す処理、あるいは一旦室温に冷却した後に再加熱して熱間圧延を施す処理のどちらでも良い。熱間圧延開始温度は400〜550℃とするのが好ましく、さらに好ましくは450〜550℃とする。450℃未満であれば、十分な圧延加工性は得られないため、板幅エッジ部で割れが生じる懸念があり、400℃以下の場合、熱間圧延終了温度が低くなるため、立方体方位の再結晶粒が十分生成されないため、板幅エッジ部で圧延割れが生じる。550℃を越える場合は熱間圧延板の表面酸化、あるいは再結晶粒の粗大化によってDI成形性が低下する。
一方で、熱間圧延終了温度は280℃〜380℃とするのが好ましい。280℃未満の場合、立方体方位の再結晶粒が十分生成されないため板幅エッジ部で圧延割れを生じたり、耳率が高くなったりする恐れがある。さらに、材料強度が過度に上昇するため、DI成形性が低下する。380℃を超えると、ロールコーティングが不均一になり表面欠陥が生じ易くなる。
本発明では、熱間圧延板の板厚を1.5〜2.5mmに規制する。1.5mm未満であれば熱間圧延板に焼付きや肌荒れが生じ易くなり、さらに、板厚プロフィールが悪化するためである。一方、板厚が2.5mmを超えると冷間圧延率が高くなり、材料強度が上昇してDI成形性が低下する。
本発明では熱間圧延後にCAL(Continuous Annealing Line)により、550〜600℃の温度に急速加熱し300秒以下の時間保持後急速冷却を施す。その際、冷却速度は800℃/秒以下の速度とするのが好ましい。この冷却には、ミスト冷却による急速冷却、あるいは外気導入による空冷のどちらをも適用できる。
係る連続焼鈍処理により、溶質元素が十分に固溶されて本発明規定の導電率になるとともに加工硬化性(n値)が向上してボトムしわ性が改善する。さらに固溶された溶質元素は、固溶体硬化によって材料強度を高める。550℃未満ではボトムしわ性の改善ならびに強度向上の効果が十分に得られず、600℃を超えると過度な強度上昇によってDI成形性が低下する。好ましい保持温度は560〜580℃である。
連続焼鈍処理における550〜600℃の温度での保持時間は300秒以下と定める。300秒を超えると、溶質元素が過飽和に固溶されるため材料強度が過度向上しDI成形性が低下する。以上のようにボトムしわ性、DI成形性、材料強度の観点から焼鈍条件を設定する。さらに、焼鈍炉内の雰囲気ガスの露点を10℃以下に規定する。雰囲気ガスの露点が10℃を超えると、雰囲気中の水蒸気量が多いため、550〜600℃の焼鈍時、アルミニウム合金板表面の酸化皮膜が水蒸気と反応して皮膜が厚くなり、DI成形性時に黒筋が発生して表面品質が低下する。本発明において連続焼鈍を行う場合は、雰囲気ガスで雰囲気を加熱する直接焼鈍とする。雰囲気ガスは窒素ガス、アルゴンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス還元性ガスあるいは大気から選ばれる少なくとも一種とする。
熱間圧延後に冷間圧延を施す。最終冷間圧延の出側温度を130℃以上、好ましくは200℃以下、それ以外の圧延パスの出側温度を130℃以下、好ましくは110℃以下とする。
このように本発明では最終冷間圧延の出側温度を130℃以上にして、途中パスの冷間圧延で生成された加工転位密度を減少させて過度に上昇した素板強度をコントロールして素材の伸びを向上させDI成形性の向上に寄与する。
一方で、途中パスの圧延の出側温度は130℃以下、好ましくは110℃以下とすることにより、冷間圧延中に生成されるAl−Cu−Mg系析出物やAl−Cu−Mg−Si系析出物の生成量を抑制することに寄与する。これにより、成形時に析出物を起点とした転位の局在化が起こり難くなるため、動的回復による局所的な加工軟化が抑制されてボトムしわ性は改善される。冷間圧延の合計圧延率は70%以上とする。70%未満では十分な缶胴強度を維持できないとともに、必要とされる最終冷間圧延時の出側温度を十分に確保できない。この冷間圧延の合計圧延率は好ましくは90%以下とする。90%を超えると過度に加工硬化してDI成形性が低下する。
次に本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板に関して、歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値ならびに導電率の限定理由を示す。
引張試験を行い公称応力sと公称ひずみeを求めた公称応力−公称ひずみ曲線を模式的に図1に示す。図1(a)は軟鋼やAl−Mg合金のように明瞭な上降伏点および下降伏点が現れる材料、また図1(b)は銅やアルミニウムのように明瞭な降伏点を示さない材料を表す。図1(a)のように明瞭な降伏点を示す材料の場合には下降伏点sy1、図1(b)のように明瞭な降伏点を示さない材料の場合には、一定の永久ひずみ(通常は0.2%の永久ひずみ)を生じる公称応力s0.2を降伏応力(耐力)とみなしている。この降伏応力を過ぎると、さらに塑性変形させるために必要な応力は増加し、公称応力の最大荷重点Bに達する。この最大荷重点Bに達するまでは、加工対象となる材料はほぼ一様に変形しているとみなすことができる。
すなわち本発明にいう均一塑性ひずみ領域は図1(a)のように明瞭な降伏点を示す材料の場合では下降伏点sy1から最大荷重点Bまでの塑性ひずみ領域であり、図1b)のように明瞭な降伏点を示さない材料の場合には、公称応力s0.2から公称応力の最大荷重点Bまでの塑性ひずみ領域であっる。
したがって本発明にいう均一塑性ひずみ領域は図1(b)のように明瞭な降伏点を示さない材料の場合には、0.2%耐力から最大荷重点B間の塑性ひずみ領域として理解することができる。
本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板では材料特性として以上の均一塑性ひずみ領域全域若しくは0.2%耐力から最大荷重点間の塑性変形領域における歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値が0.1以上である様に管理される。
アルミニウム合金は、一般的に圧延加工によって歪量が増加し、材料が硬化することが知られている。缶胴材に用いられるJIS3004合金は材料強度を高めるため、冷間圧延における加工硬化現象を積極的に利用している。この加工硬化現象の程度を示す加工硬化性は、n値(加工硬化指数:work hardening exponent)と呼ばれる加工硬化特性を示す定数によって表現することができる。このn値は、真応力をσ、真歪をε、加工硬化指数をnとした時に真応力σと真歪εとの関係をσ=Fε によって近似させたHollomonの公式により算出される。この加工硬化指数(n値)は絞り加工性の目安にもなる特性値で、n値が大きいほど、局部収縮発生までの伸びが大きいため絞り性が良くなる。
図1に本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板がその材料特性として有する均一塑性ひずみ領域全域若しくは0.2%耐力から最大荷重点間の塑性変形領域における歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線を模式的に示す。
図1に示される様に本発明の飲料缶胴用アルミニウム合金板では均一塑性ひずみ領域全域若しくは0.2%耐力から最大荷重点間の塑性変形領域における最大n値が0.1を超えるものとされる。
これにより缶成形加工中の加工硬化性が高くなるため、成形力が向上し缶底部の歪が緩和されてボトムしわ性が向上する。0.1未満であるとその効果が十分に得られず、缶底にしわが発生し易くなる。
導電率は30.0〜39.0%IACSとする。これにより、溶質元素が適度に固溶されて加工硬化性の向上が得られる。39.0%IACS以上であると、その効果は十分に得られず缶底部にしわが発生し易くなる。一方、30.0%IACS以下であると、溶質元素が過飽和に固溶されるため、強度上昇によってDI成形性が低下する。
次に、本発明のアルミニウム合金板の素板の引張強度と空焼き後の耐力の限定理由について説明する。
素板の引張強度は320MPa以下とする。320MPaを超えると、成形中に材料の変形抵抗が大きくなるため、しごき加工時に割れの発生頻度が増す。塗装焼付後の耐力は250MPa以上とする。250MPa未満だと耐圧強度が不足し、アルミニウム缶として中身が充填された際、内圧変化に耐える強度を維持できない。
以下に本発明を実施例に基づき、具体的に説明する。
表1に示す合金成分の本発明のアルミニウム合金を常法により、溶解鋳造して厚さ500mmのスラブ(板状鋳塊)を得た。このスラブを厚さ490mmに面削した後、600℃で6時間均質化処理した後、室温まで冷却する。次いで、圧延開始温度490℃、圧延終了温度は320℃で熱間圧延を行い、厚さ2.2mmの熱間圧延板とし、これをコイルに巻取って室温まで冷却する。熱間圧延については粗圧延をシングルミルのリバース式圧延機で行い、仕上げ圧延には4スタンドのタンデム式圧延機を使用した。この合金板を連続焼鈍炉により、560℃に急速加熱し30秒保持後、20℃/秒の速度で冷却を施す。次いで、冷間圧延を行い厚さ0.3mmの飲料缶胴用アルミニウム合金板を製造する。冷間圧延では3パスの合計圧延率を86%とする。
(比較例1)
合金組成を本発明規定値外とした他は、実施例1と同じ方法により、アルミニウム合金板を製造した。
表1に本発明実施例1および比較例1の合金組成を示す。
Figure 2006283112
実施例1及び比較例1で製造した各々のアルミニウム合金について、(1)機械的特性、(2)(2)導電率、(3)最大n値、(4)DI成形性、(5)缶底成形性(ボトムしわ性)、(6)耐圧強度の評価を行った。
(1)機械的特性は、製造したアルミニウム合金板の圧延方向における素板の引張強度と空焼き後の耐力を測定して行った。
空焼きとは製缶時の塗装焼付け条件を想定したものであり、205℃×10分で行った。素板の引張強度は320MPaを基準としてこれ以下を合格(本発明規定値内)と評価し、空焼き後の耐力は250MPa以上を合格と判定した。
(2)導電率は20℃の恒温室中で一定温度に保持した後、渦電流法により測定した。
(3)n値は、均一塑性ひずみ領域全域において、公称歪を0.05%の間隔で公称応力を測定し、これら測定値から真応力と真歪を計算した後、JISZ2253に基づき、公称歪の前後1%を計算範囲として最小自乗法によってn値を求めた。次いで、計算したn値を用いて真歪に対するn値の変化曲線を作成し、最大n値が0.1以上であるものを良好(○)とし、0.1未満のものを不良(×)とした。
(4)DI成形性は一般飲料用の缶胴(内径66mmΦ、側壁板厚100μm、側壁先端板厚150μm)にDI成形し、10000缶の製缶で、割れおよび破断等が全く発生しないで連続製缶できたものを良好(○)とし、割れおよび破断が発生したものを不良(×)として判定した。
(5)ボトムしわ性はブランクからカップを絞り、その後、再絞り缶(ブランク径140mmΦ、カップ径87mmΦ、再絞り径66mmΦ)について、缶底テーパー部の起状を形状測定器にて全周の測定を行い、その最大振幅にて評価した。最大振幅が180μm以下を良好(○)、180μm以上を不良(×)と判定した。
(6)耐圧強度はDI成形後、空焼き(205℃×10分)を施し、缶胴内部にエアー圧を掛けて缶底ドームが反転する圧力を測定した。反転圧力が650kPa以上のものを良好(○)とし、650kPa以下を不良(×)として判定した。これら調査結果を表2に示す。表2は、実施例1および比較例1で製造した各々のアルミニウム合金の各種特性評価を示す。
Figure 2006283112
表2より明らかなように、実施例1の試料NO.1(合金No.A)、試料NO.2(合金No.B)、試料NO.3(合金No.C)のアルミニウム合金板はいずれもボトムしわ性、DI成形性、耐圧強度に優れる良好な結果を示した。
これに対して、比較例1の試料NO.4(合金No.D)のアルミニウム合金板はMg量が多いため、素板の引張強度が上昇してDI成形性が低下し、しごき割れが発生した。
試料NO.5(合金No.E)のアルミニウム合金板はMg量が少ないため、空焼き後の耐力が本発明規定外となり耐圧強度が劣る結果となった。さらには導電率が高くかつ最大n値が0.1を超える部分がないためボトムしわ発生が認められた。
試料NO.6(合金No.F)のアルミニウム合金板はMn量が多いため、素板の引張強度が上昇するとともに巨大晶出物が生成し、そこが起点となってDI成形時に割れが発生した。
試料NO.7(合金No.G)のアルミニウム合金板はMn量が少ないため固体潤滑作用を有する晶出物が少なくなり、しごきダイスに焼付けが生じて缶表面が荒れて成形不良となった。さらに、空焼き後の耐力が本発明規定外となり耐圧強度が低下した。
試料NO.8(合金No.H)のアルミニウム合金板はCu量が少ないため、空焼き後の耐力が本発明規定外となり耐圧強度が劣る結果となった。
試料NO.9(合金No.I)のアルミニウム合金板はCu量が多いため、素板の引張強度が上昇しDI成形性が低下した。
表1に示した本発明規定組成の(合金No.A)のアルミニウム合金を常法により溶解鋳造して厚さ500mmの板状鋳塊(スラブ)とし厚さ490mmに面削した後、均質化処理と熱間圧延を施す。この合金板を連続焼鈍炉により急速加熱し一定時間保持した後冷却を施す。次に、冷間圧延を行い厚さ0.3mmの飲料缶胴用アルミニウム合金板を本発明の規定値内で種々変化させて製造した。
(比較例2)製造条件を本発明規定値外とした他は、実施例2と同じ方法によりアルミニウム合金板を製造した。実施例2または比較例2で得られた各々のアルミニウム合金板について、実施例1の場合と同じ方法により、諸特性を調査し良否を判定した。製造条件を表3に示し調査結果を表4に示す。表3は、本発明実施例2および比較例2のアルミニウム合金板製造条件を示す。
Figure 2006283112
表4は、本発明実施例2および比較例2で製造したアルミニウム合金各種特性評価を示す。
Figure 2006283112
表4により明らかなように、本発明実施例2のアルミニウム合金(試料NO.10、試料NO.11、試料NO.12、試料NO.13、試料NO.14、試料NO.15、試料NO.16)はいずれもボトムしわ性が良好で最大n値、導電率ならびに素板の引張強度、空焼き後の耐力も本発明の条件を満足する値を示した。
これに対して、比較例である試料NO.17のアルミニウム合金板は均質化処理温度が低く十分な均質化効果が得られず、DI成形性が低下した。さらに、導電率が本発明規定値外であるとともに最大n値が0.1を超える部分がなくボトムしわが発生した。
試料NO.18のアルミニウム合金板は熱間圧延開始温度が高いため、再結晶粒が粗大化しDI成形性が低下した。
試料NO.19のアルミニウム合金板は熱間圧延終了温度が低いためコイル端部に圧延割れが生じるとともに、素板の引張強度が上昇したためDI成形性が低下した。
試料NO.20のアルミニウム合金板は熱間圧延後の板厚が薄いため、冷間圧延率が低下して空焼き後の耐力および耐圧強度が低下した。さらに、熱間圧延板に肌荒れが生じ、表面性状が劣化した。
試料NO.21は熱間圧延後の板厚が厚いため冷間圧延率が大きくなり、素板の引張強度が高くなるためDI成形性が低下してしごき割れが発生した。
試料NO.22は熱間圧延後の連続焼鈍温度が低いため、導電率が高くなるとともに最大n値が0.1を超える部分がなくボトムしわ発生が顕著に認められた。
試料NO.23は連続焼鈍時間が長く、溶質元素が過飽和に固溶されるため素板の引張強度が上昇し、DI成形性が低下してしごき割れが発生した。
試料NO.24は連続焼鈍後の冷却速度が高く溶質元素の固溶量が増加して素板の引張強度が上昇したためDI成形性が低下した。
試料NO.25と試料NO.26は冷間圧延の1パス目あるいは2パス目の出側温度が高く、析出物生成によって導電率が高くなり、かつ最大n値が0.1を超える部分がなくボトムしわが発生した。
試料NO.27は最終冷間圧延の出側温度が低く、素板の引張強度が上昇してDI成形性が低下した。
試料NO.28は合計圧延率が低いため、空焼き後の耐力が低くなり耐圧強度が低下した。
表5のアルミニウム合金に実施例1と同様に常法により、溶解鋳造・面削・均質化処理し、室温まで冷却して得られた合金板を連続焼鈍炉により、580℃に急速加熱し30秒保持後冷却する処理を施す。その際に焼鈍炉内の雰囲気ガスの露点を0℃とする。次いで、圧延開始温度490℃、圧延終了温度は320℃で熱間圧延を行い、厚さ2.2mmの熱間圧延板とし、これをコイルに巻取って室温まで冷却する。この合金板を連続焼鈍炉により、580℃に急速加熱し30秒保持後冷却を施す。次いで、冷間圧延を行い厚さ0.3mmの飲料缶胴用アルミニウム合金板を製造する。冷間圧延は3パスとし、合計圧延率を86%とする。
(比較例3)
合金組成を本発明規定値外とした他は、実施例3と同じ方法により、アルミニウム合金板を製造した。
表5に本発明実施例3および比較例3の合金組成を示す。
Figure 2006283112
実施例3で製造した各々のアルミニウム合金について、(1)機械的特性、(2)導電率、(4)DI成形性、(6)耐圧強度に関しては実施例1及び比較例1で製造した各々のアルミニウム合金に対する特性評価と同様にして、(3)最大n値、(5)ボトムしわ性、(7)酸化皮膜の厚さ、(8)DI成形時の表面品質(黒筋発生の有無)については以下のようにして評価を行った。
(3)n値の計算は0.2%耐力から最大荷重点までの塑性変形領域について、公称応力と公称歪を0.05%の間隔で測定し公称歪の各々1%を測定範囲として、真応力と真歪を計算し最小自乗法を用いて算出を行った。そして、最大n値が0.1以上であるものを良好(○)とし、0.1未満のものを不良(×)とした。
(5)ボトムしわ性は、DI成形後の缶底しわの有無を目視にて判定した。
(7)酸化皮膜の厚さについては、オージェ電子分光装置により板表面から深さ方向への元素プロファイルにより測定を行った。
(8)黒筋発生の有無に関しては、DI成形後目視にて評価を行った。
表6は、本発明実施例3および比較例3の各種特性評価を示す。
Figure 2006283112
表6より明らかなように、本発明実施例3の試料NO.1(合金No.A)、試料NO.2(合金No.B)、試料NO.3(合金No.C)のアルミニウム合金板は、いずれもボトムしわ性およびDI成形性に優れる良好な結果を示した。
これに対して、比較例3の試料NO.4(合金No.D)のアルミニウム合金板はMg量が多いため、素板強度が上昇しDI成形性が低下してしごき割れが発生した。
試料NO.5(合金No.E)はMg量が少ないため、空焼き後の耐力が本発明規定外となり耐圧強度が低下した。さらに、最大n値が0.1を超える部分がなく、ボトムしわが発生した。
試料NO.6(合金No.F)のアルミニウム合金板はMn量が多いため巨大晶出物が生成し、そこが起点となってDI成形性時にしごき割れが発生するとともに、最大n値が0.1を超える部分がなくボトムしわ発生が認められた。
試料NO.7(合金No.G)のアルミニウム合金板はMn量が少ないため固体潤滑作用を有する晶出物が少なくなり、しごきダイスに焼付けが生じ、缶表面が荒れて成形不良となった。さらに、空焼き後耐力が本発明規定外となり耐圧強度が低下した。
試料NO.8(合金No.H)のアルミニウム合金板はSi量が多いため、溶質原子の固溶度が減少し空焼き後の缶胴強度を高める効果が十分に得られず耐圧強度がした。さらに、最大n値が0.1を超える部分がなくボトムしわが発生した。
試料NO.9(合金No.I)はSi量が少ないため、固体潤滑作用を有する晶出物が少なくなり、しごきダイスに焼付けが生じ、缶表面が荒れて成形不良となった。
試料NO.10(合金No.J)はCu量が多いため、素板強度が上昇しDI成形性が低下した。
表5に示した本発明実施例3の合金成分に示した本発明規定組成の(合金No.A)のアルミニウム合金を用い、実施例2と同様にして溶解鋳造・面削・均質化処理・熱間圧延を施し、この合金板を連続焼鈍炉により急速加熱し一定時間保持後冷却を施した後、冷間圧延を3パス行い、厚さ0.3mmの飲料缶胴用アルミニウム合金板を本発明の規定値内で種々変化させて製造した。
(比較例4) 製造条件を本発明規定値外とした他は実施例4と同じ方法によりアルミニウム合金板を製造した。表7は、本発明実施例4および比較例4のアルミニウム合金板製造条件を示す。
Figure 2006283112
実施例4及び比較例4で得られた各々のアルミニウム合金板について、実施例3および比較例3の場合と同じ方法により、諸特性を調査し良否を判定した。調査結果を表8に示す。表8は、実施例4および比較例4で得られた各々のアルミニウム合金板の各種特性評価を示す。
Figure 2006283112
表8より明らかなように、本発明例のアルミニウム合金(試料NO.11、試料NO.12、試料NO.13、試料NO.14、試料NO.15、試料NO.16、試料NO.17)は最大n値、素板の引張強度、空焼き後の耐力ならびに導電率も本発明の条件を満足する値を示し、いずれもボトムしわ性とDI成形性が良好であった。
これに対して、比較例である試料NO.18は均質化処理温度が低くDI成形性が低下し、さらに導電率が高いため、ボトムしわ発生が顕著に認められた。
試料NO.19のアルミニウム合金板は熱間圧延開始温度が高いためDI成形性が低下した。
試料NO.20のアルミニウム合金板は熱間圧延終了温度が低いため、圧延加工性が低下してコイル端部に割れが生じるとともに、DI成形性が低下した。
試料NO.21のアルミニウム合金板は熱間圧延後の連続焼鈍温度が低いため、導電率が高くなりボトムしわが発生した。
試料NO.22のアルミニウム合金板は熱間圧延後の連続焼鈍時間が長く、溶質原子が過飽和に固溶されるため材料強度が上昇し、DI成形性が低下してしごき割れが発生した。
試料NO.23のアルミニウム合金板は焼鈍炉内の雰囲気ガスの露点が高いため、板表面の酸化皮膜が水蒸気と反応して厚くなりDI成形時に黒筋が発生した。
試料NO.24のアルミニウム合金板は合計圧延率が低いため、空焼き後の耐力と耐圧強度が低い値となった。
本発明は炭酸飲料用、ビール用および清涼飲料等の各種飲料缶の缶胴材として使用されるアルミニウム合金板に関して、ボトムしわ性に優れ、かつ高い缶胴強度が得られる飲料缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法として適用することができる。
引張試験を行い公称応力sと公称ひずみeを求めた公称応力−公称ひずみ曲線を示す模式図で、(a)は軟鋼等の明瞭な上降伏点および下降伏点が現れる材料の場合を示し、(b)は非鉄金属一般の明瞭な降伏点を示さない材料の場合を示す。 均一塑性ひずみ領域全域における歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線である。 ボトムしわが発生する部位(缶底チャイム部)を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1・・・飲料缶缶胴体、2・・・缶側壁、3・・・缶底チャイム部、4・・・缶底接地部

Claims (8)

  1. Mn:0.7〜1.5%(質量%,以下同じ)、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.35〜0.5%、Si:0.1〜0.5%、Cu:0.1〜0.3%と、Ti:0.1%以下、B:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であり、材料特性として均一塑性ひずみ領域全域における歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値が0.1以上で、導電率が30.0〜39.0%IACSであり、素板の圧延方向における引張強度が320MPa以下とされ、塗装焼付後の強度が圧延方向の耐力で250MPa以上であることを特徴とする飲料缶胴用アルミニウム合金板。
  2. 塗装焼き付けが180〜220℃で5〜30分間保持し、または最高到達温度210〜260℃で2分以内保持して行われる塗装焼付である請求項1記載の飲料缶胴用アルミニウム合金板。
  3. 板表面の酸化皮膜の厚さが20nm以下である請求項1または請求項2記載の飲料缶胴用アルミニウム合金板。
  4. Mn:0.7〜1.5%、Mg:0.8〜1.5%、Fe:0.35〜0.5%、Si:0.1〜0.5%、Cu:0.1〜0.3%と、Ti:0.1%以下、B:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金鋳塊を製造し、このアルミニウム合金鋳塊を面削した後、均質化処理を行い、次いで熱間圧延を施して1.5〜2.5mmの板厚とし、さらにこの合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して300秒以下の時間保持し、材料特性として均一塑性ひずみ領域全域における歪量に対する加工硬化指数(n値)の変化曲線の最大n値が0.1以上で、導電率が30.0〜39.0%IACSであり、素板の圧延方向における引張強度が320MPa以下とされ、塗装焼付後の強度が圧延方向の耐力で250MPa以上であることを特徴とする飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. 塗装焼き付けは180〜220℃で5〜30分間保持し、または最高到達温度210〜260℃で2分以内保持して行われる塗装焼付である請求項4記載の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法。
  6. 合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して300秒以下の時間保持した後、800℃/秒以下の冷却速度で冷却を施す請求項4または請求項5記載の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法。
  7. 合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して300秒以下の時間保持した後、冷間圧延を70%以上の合計圧延率で最終パスの出側温度を130℃以上、それ以外の圧延パスの出側温度を130℃以下とする温度条件で施すことで材料組織の回復処理を行う請求項4乃至請求項6のいずれか一に記載の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法。
  8. 均質化処理を550〜620℃の温度範囲で行い、合金板を連続焼鈍炉により550〜600℃の温度に急速加熱して焼鈍炉内の雰囲気ガスの露点が10℃以下である雰囲気中で300秒以下の時間保持し、板表面の酸化皮膜の厚さを20nm以下に管理する請求項4乃至請求項7のいずれか一に記載の飲料缶胴用アルミニウム合金板の製造方法。
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